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特許7156946液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20221012BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20221012BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20221012BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C08F2/50
C08K5/3415
C09K3/10 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018540897
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2018025999
(87)【国際公開番号】W WO2019013194
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017138032
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋
(72)【発明者】
【氏名】松井 慶枝
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532083(JP,A)
【文献】特開2006-178053(JP,A)
【文献】特開2015-231985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08F 2/50
C08K 5/3415
C08L 101/00
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と光重合開始剤とマレイミド化合物とを含有し、
前記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物及びエポキシ化合物を含み、
前記光重合開始剤は、波長430nmにおける吸光係数が0.8×10mL/g・cm以上であり、かつ、下記式(1)で表される構造を有する化合物である
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【化1】
式(1)中、*は、結合位置である。
【請求項2】
式(1)で表される構造を有する化合物は、1分子中に1個の該式(1)で表される構造を有する化合物である請求項記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項3】
式(1)で表される構造を有する化合物は、下記式(2-1)で表される化合物及び/又は下記式(2-2)で表される化合物である請求項記載の液晶表示素子用シール剤。
【化2】
式(2-1)、(2-2)中、Rは、単官能エポキシ化合物に由来する構造である。式(2-1)中、mは、1~5の整数である。
【請求項4】
マレイミド化合物は、1分子中に2個以上のマレイミド基を有する多官能マレイミド化合物である請求項1、2又は3記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項5】
マレイミド化合物は、分子量が400以上である請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料。
【請求項7】
請求項1、2、3、4若しくは5記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項記載の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長波長の光に対する硬化性に優れ、かつ、異物の発生を抑制できる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンスにより枠状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐに他方の透明基板を貼り合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、液晶アニール時に加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。基板の貼り合わせを減圧下で行うようにすれば、極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができ、現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。装置の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
【0004】
しかしながら、狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られ、シール剤の内部まで光が到達せず硬化が不充分となるという問題があった。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出し、溶出したシール剤成分による硬化反応が液晶中において進行することで液晶汚染が発生するという問題があった。
【0005】
また、通常、シール剤を光硬化させる方法として紫外線の照射が行われているが、液晶滴下工法おいては、液晶を滴下した後にシール剤を硬化させるため、紫外線を照射することによって液晶が劣化するという問題があった。紫外線による液晶の劣化を防止するためには、長波長の光に対する反応性に優れる光重合開始剤を配合し、カットフィルター等を介した長波長の光により光硬化させることが考えられる。しかしながら、このような光重合開始剤を用いた場合、光硬化工程前にシール剤が僅かな光によって部分的に硬化し、異物が発生する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長波長の光に対する硬化性に優れ、かつ、異物の発生を抑制できる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化性樹脂と光重合開始剤とマレイミド化合物とを含有し、上記光重合開始剤は、波長430nmにおける吸光係数が0.8×10mL/g・cm以上である液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、シール剤にマレイミド化合物を配合することにより、長波長の光に対する反応性に優れる光重合開始剤を用いても、光硬化工程前にシール剤が部分的に硬化することによる異物の発生を抑制できる液晶表示素子用シール剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、光重合開始剤を含有する。
上記光重合開始剤は、波長430nmにおける吸光係数が0.8×10mL/g・cm以上である。以下、波長430nmにおける吸光係数が0.8×10mL/g・cm以上である光重合開始剤を、「本発明にかかる光重合開始剤」ともいう。
本発明にかかる光重合開始剤は、波長430nmにおける吸光係数が0.8×10mL/g・cm以上であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤が長波長の光に対する硬化性に優れるものとなる。本発明にかかる光重合開始剤の波長430nmにおける吸光係数の好ましい下限は1.0×10mL/g・cmである。
また、本発明にかかる光重合開始剤の波長430nmにおける吸光係数の好ましい上限は1.0×10mL/g・cmである。
なお、上記吸光係数は、濃度が0.1mg/mLとなるように測定対象の化合物を溶媒に溶解した後、分光光度計を用いて測定することができる。
上記溶媒は、測定対象の化合物を溶解することができ、かつ、測定する吸収波長での吸光がないものであれば特に限定されず、例えば、アセトニトリル、メタノール等が挙げられる。
【0011】
本発明にかかる光重合開始剤は、長波長の光に対する反応性に優れることから、下記式(1)で表される構造を有する化合物であることが好ましく、1分子中に1個の該式(1)で表される構造を有する化合物であることがより好ましく、下記式(2-1)で表される化合物及び/又は下記式(2-2)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)中、*は、結合位置である。
【0014】
【化2】
【0015】
式(2-1)、(2-2)中、Rは、単官能エポキシ化合物に由来する構造である。式(2-1)中、mは、1~5の整数である。
【0016】
上記(2-1)で表される化合物を製造する方法としては、例えば、塩基性触媒の存在下で、2-(カルボキシメトキシ)-9H-チオキサンテン-9-オンと単官能エポキシ化合物とを80℃以上130℃以下の条件で6~72時間撹拌しながら反応させる方法等が挙げられる。
また、上記(2-2)で表される化合物を製造する方法としては、例えば、塩基性触媒の存在下で、2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オンと単官能エポキシ化合物とを80℃以上130℃以下の条件で6~72時間撹拌しながら反応させる方法等が挙げられる。
以下、2-(カルボキシメトキシ)-9H-チオキサンテン-9-オンと2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オンとについては、「原料チオキサントン誘導体」ともいう。
【0017】
上記単官能エポキシ化合物は、炭素数1以上の置換基を少なくとも1つ以上有する芳香族環又は炭素数1以上の置換基を少なくとも1つ以上有する脂肪族環を有することが好ましい。
上記芳香族環又は上記脂肪族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ノルボルネン環、トリシクロデカン環等の芳香族環又は脂肪族環における少なくとも1つ以上の水素原子が炭素数1以上の置換基に置換されたものが挙げられる。
【0018】
上記炭素数1以上の置換基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。上記炭素数1以上の置換基が直鎖状である場合は、炭素数6以上であることが好ましく、炭素数10以上であることがより好ましい。上記炭素数1以上の置換基が分岐鎖状である場合は、炭素数4以上であることが好ましい。また、上記芳香族環又は上記脂肪族環の有する炭素数1以上の置換基の炭素数は、上記単官能エポキシ化合物の分子量が後述する300以下となる数であることが好ましい。
上記芳香族環又は上記脂肪族環の有する炭素数1以上の置換基としては、アルキル基が好ましい。
【0019】
上記単官能エポキシ化合物としては、例えば、アルキルフェニルグリシジルエーテル、グリシジル基を有するトルエンスルホネート、2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。
上記アルキルフェニルグリシジルエーテルとしては、例えば、o-メチルフェニルグリシジルエーテル、m-メチルフェニルグリシジルエーテル、p-メチルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0020】
上記単官能エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ナガセケムテックス社製の単官能エポキシ化合物、ADEKA社製の単官能エポキシ化合物、三菱ケミカル社製の単官能エポキシ化合物、東京化成工業社製の単官能エポキシ化合物、ダイセル社製の単官能エポキシ化合物等が挙げられる。
上記ナガセケムテックス社製の単官能エポキシ化合物としては、例えば、デナコールEX-146等が挙げられる。
上記ADEKA社製の単官能エポキシ化合物としては、例えば、ED-509S、ED-509E、ED-529等が挙げられる。
上記三菱ケミカル社製の単官能エポキシ化合物としては、例えば、YED-122等が挙げられる。
上記東京化成工業社製の単官能エポキシ化合物としては、例えば、グリシジル2-メトキシフェニルエーテル、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン等が挙げられる。
上記ダイセル社製の単官能エポキシ化合物としては、例えば、セロキサイド2000、サイクロマーM100等が挙げられる。
【0021】
上記単官能エポキシ化合物の分子量は、本発明にかかる光重合開始剤の硬化性樹脂との相溶性の観点から、300以下であることが好ましい。
【0022】
上記原料チオキサントン誘導体と上記単官能エポキシ化合物とを反応させる際の使用割合としては、モル比で、原料チオキサントン誘導体:単官能エポキシ化合物=1:1~10:1であることが好ましい。上記原料チオキサントン誘導体と上記単官能エポキシ化合物との使用割合がこの範囲であることにより、上記式(2-1)で表される化合物又は上記式(2-2)で表される化合物を高収率で製造することができる。
【0023】
上記原料チオキサントン誘導体と上記単官能エポキシ化合物と反応させる際に用いる塩基性触媒としては、3価の有機リン酸化合物及び/又はアミン化合物が好ましい。
上記塩基性触媒としては、具体的には例えば、トリフェニルホスフィン、トリエチルアミン、トリプロミルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルラウリルアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルセチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。なかでも、トリフェニルホスフィンが好ましい。
また、上記塩基性触媒は、ポリマーに担持させて、ポリマー担持塩基性触媒として使用することもできる。
【0024】
本発明にかかる光重合開始剤のうち、上記式(1)で表される構造を有する化合物以外のものとしては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0025】
本発明にかかる光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂とマレイミド化合物との合計100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。本発明にかかる光重合開始剤の含有量が0.1重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が長波長の光に対する硬化性により優れるものとなる。本発明にかかる光重合開始剤の含有量が20重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が異物の発生を抑制する効果により優れるものとなる。本発明にかかる光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.2重量部、更に好ましい下限は0.3重量部、更により好ましい下限は0.5重量部、特に好ましい下限は1重量部である。本発明にかかる光重合開始剤の含有量のより好ましい上限は10重量部、更に好ましい上限は5重量部である。
【0026】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、熱重合開始剤を含有してもよい。
上記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイルオキシ基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0027】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、硬化性樹脂と容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0028】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物としては、例えば、V-65、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0029】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0030】
上記熱重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂とマレイミド化合物との合計100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱重合開始剤の含有量が0.05重量部以上であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤が熱硬化性により優れるものとなる。上記熱重合開始剤の含有量が10重量部以下であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤が低液晶汚染性や保存安定性により優れるものとなる。上記熱重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0031】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
後述するように、本発明においてマレイミド化合物は、上記硬化性樹脂には含まない。
【0032】
上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。更に、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0037】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0038】
上記ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱ケミカル社製)、エピクロン850CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、RE-810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX-4000H(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱ケミカル社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ZX-1542(新日鉄住金化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX-611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも新日鉄住金化学社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC-1312、YSLV-80XY、YSLV-90CR(いずれも新日鉄住金化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱ケミカル社製)、EXA-7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0039】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレート、ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EA-1010、EA-1020、EA-5323、EA-5520、EA-CHD、EMA-1020等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA等が挙げられる。
上記ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、デナコールアクリレートDA-141、デナコールアクリレートDA-314、デナコールアクリレートDA-911等が挙げられる。
【0040】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0041】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
また、上記イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0043】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0044】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN-330、アートレジンSH-500B、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-9000H等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6HA、U-6LPA、U-10H、U-15HA、U-108、U-108A、U-122A、U-122P、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4000、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AH-600、AI-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T等が挙げられる。
【0045】
上記硬化性樹脂は、得られる液晶表示素子用シール剤の接着性を向上させることを目的として、更に、エポキシ化合物を含有することが好ましい。上記エポキシ化合物としては、例えば、上述したエポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物や、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物とは、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味し、例えば、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる。
【0046】
本発明の液晶表示素子用シール剤が上記エポキシ化合物を含有する場合、上記硬化性樹脂中の(メタ)アクリロイル基とエポキシ基との合計中における(メタ)アクリロイル基の比率を30モル%以上95モル%以下になるようにすることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基の比率が30モル%以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が低液晶汚染性により優れるものとなる。上記(メタ)アクリロイル基の比率が95モル%以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなる。
【0047】
上記硬化性樹脂は、液晶汚染をより抑制する観点から、-OH基、-NH-基、-NH基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0048】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、マレイミド化合物を含有する。
上記マレイミド化合物を用いることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、本発明にかかる光重合開始剤を用いても異物の発生を抑制できるものとなる。
なお、本発明において上記マレイミド化合物は、硬化性樹脂には含まない。
【0049】
上記マレイミド化合物の分子量の好ましい下限は400である。上記マレイミド化合物の分子量が400以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が、長波長の光に対する硬化性の向上と異物の発生の抑制とを両立する効果により優れるものとなる。上記マレイミド化合物の分子量のより好ましい下限は500である。
また、反応性の観点から、上記マレイミド化合物の分子量の好ましい上限は1500、より好ましい上限は1000である。
【0050】
上記マレイミド化合物は、反応性の観点から、1分子中に2個以上のマレイミド基を有する多官能マレイミド化合物であることが好ましい。
【0051】
上記多官能マレイミド化合物としては、下記式(3)で表される化合物や下記式(4)で表される化合物が好適に用いられる。
【0052】
【化3】
【0053】
式(3)中、Rは、炭素数2~3のアルキレン基を表し、nは、2~40の整数である。
【0054】
【化4】
【0055】
式(4)中、Rは、炭素数1~40の2価の脂肪族基を表す。
【0056】
上記式(4)中、Rの炭素数は、12~36であることが好ましい。また、Rは、脂肪族環を有することが好ましい。
上記式(4)で表される化合物としては、具体的には例えば、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,20-ビスマレイミド-10,11-ジオクチル-エイコサン(下記式(5-1)で表される化合物)、1-ヘプチレンマレイミド-2-オクチレンマレイミド-4-オクチル-5-ヘプチルシクロヘキサン(下記式(5-2)で表される化合物)、1,2-ジオクチレンマレイミド-3-オクチル-4-ヘキシルシクロヘキサン(下記式(5-3)で表される化合物)等が挙げられる。
上記式(4)で表される化合物は、例えば、米国特許第5973166号明細書に記載の方法等によって合成することができる。
【0057】
【化5】
【0058】
上記マレイミド化合物のうち、1分子中に1個のマレイミド基を有する単官能マレイミド化合物としては、例えば、N-ビオチニル-N’-(3-マレイミドプロピオニル)-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン等が挙げられる。
【0059】
上記硬化性樹脂と上記マレイミド化合物との合計100重量部中における上記マレイミド化合物の含有量の好ましい下限は2重量部、好ましい上限は50重量部である。上記マレイミド化合物の含有量が2重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が異物の発生を抑制する効果により優れるものとなる。上記マレイミド化合物の含有量が50重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が光硬化性により優れるものとなる。上記マレイミド化合物の含有量のより好ましい下限は3重量部、更に好ましい下限は5重量部、特に好ましい下限は10重量部である。上記マレイミド化合物の含有量のより好ましい上限は45重量部、更に好ましい上限は40重量部、更により好ましい上限は35重量部、特に好ましい上限は30重量部、最も好ましい上限は25重量部である。
【0060】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0061】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J等が挙げられる。
【0062】
上記熱硬化剤の含有量は、硬化性樹脂とマレイミド化合物との合計100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく、より熱硬化性に優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0063】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0064】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
上記充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0065】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0066】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0067】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらは、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
【0068】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0069】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0070】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、本発明にかかる光重合開始剤と、マレイミド化合物と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等とを混合する方法等が挙げられる。
【0071】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0072】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0073】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0074】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、以下の各工程を有する方法等が挙げられる。
まず、ITO薄膜等の電極付きのガラス基板やポリエチレンテレフタレート基板等の2枚の基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤を、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、本発明の液晶表示素子用シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシールパターンの枠内に滴下塗布し、真空下で別の基板を重ね合わせる工程を行う。その後、本発明の液晶表示素子用シール剤のシールパターン部分に420nmカットフィルター等を介して光を照射することにより、長波長の光によってシール剤を光硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。また、上記シール剤を光硬化させる工程に加えて、シール剤を加熱して熱硬化させる工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、長波長の光に対する硬化性に優れ、かつ、異物の発生を抑制できる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0077】
(式(2-1)で表される化合物の作製)
2-(カルボキシメトキシ)-9H-チオキサンテン-9-オン87重量部と、単官能エポキシ化合物としてp-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(ADEKA社製、「ED-509S」)62重量部とを、塩基性触媒の存在下で、110℃で48時間撹拌しながら反応させることにより、上記式(2-1)で表される化合物(m=1)を得た。塩基性触媒としては、PS-PPh(バイオタージ・ジャパン社製、ポリスチレン(PS)にトリフェニルホスフィンを担持した塩基性触媒)5.2重量部を用いた。
なお、得られた上記式(2-1)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
また、2-(カルボキシメトキシ)-9H-チオキサンテン-9-オンとp-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテルとの配合割合は、モル比で、2-(カルボキシメトキシ)-9H-チオキサンテン-9-オン:p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル=1:1である。
【0078】
(式(2-2)で表される化合物の作製)
2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オン69重量部と、単官能エポキシ化合物としてp-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(ADEKA社製、「ED-509S」)62重量部とを、塩基性触媒の存在下で、110℃で48時間撹拌しながら反応させることにより、上記式(2-2)で表される化合物を得た。塩基性触媒としては、PS-PPh(バイオタージ・ジャパン社製、ポリスチレン(PS)にトリフェニルホスフィンを担持した塩基性触媒)5.2重量部を用いた。
なお、得られた上記式(2-2)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
また、2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オンとp-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテルとの配合割合は、モル比で、2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オン:p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル=1:1である。
【0079】
(実施例1~4、6~、参考例5、及び比較例1~3)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1~4、6~、参考例5、及び比較例1~3の液晶表示素子用シール剤を調製した。
なお、実施例、参考例、及び比較例で用いた光重合開始剤について、濃度が0.1mg/mLとなるようにアクリロニトリルに溶解した後、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、「U-3900」)を用いて波長430nmおける吸光係数を測定した。結果を表1、2に示した。
また、マレイミド化合物として表中に記載したポリテトラメチレンエーテルグリコールのジマレイミド酢酸エステル(DIC社製、「LUMICURE MIA200」)は、上記式(3)で表される化合物である。
【0080】
<評価>
実施例、参考例、及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0081】
(光硬化性)
実施例、参考例、及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部にスペーサ微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を分散させた。次いで、シール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY-10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にてガラス基板上に塗布した。その基板に真空貼り合わせ装置にて5Paの減圧下にて同サイズのガラス基板を貼り合わせた。貼り合わせたガラス基板のシール剤部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの光を10秒照射した。光照射は420nmカットフィルター無しの場合と420nmカットフィルター有りの場合との2パターンを行った。
赤外分光装置(BIORAD社製、「FTS3000」)を用いてシール剤のFT-IR測定を行い、(メタ)アクリロイル基由来ピークの光照射前後での変化量を測定することで硬化性の評価を行った。光照射後に(メタ)アクリロイル基由来のピークが80%以上減少した場合を「◎」、70%以上80%未満減少した場合を「○」、50%以上70%未満減少した場合を「△」、光照射後の(メタ)アクリロイル基由来のピークの減少が50%未満であった場合を「×」として光硬化性を評価した。
【0082】
(異物防止性)
実施例、参考例、及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部にスペーサ微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を分散させ、蛍光灯直下で3時間放置した。次いで、シール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY-10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にてガラス基板上に塗布した。その基板に真空貼り合わせ装置にて5Paの減圧下にて同サイズのガラス基板を貼り合わせた。この際、先の蛍光灯直下で放置した際にシール剤中に異物が発生していると、その異物が基板間に噛みこむことにより、ギャップ不良が発生することになる。
貼り合わせた基板を確認し、ギャップ不良が全く発生していなかった場合を「○」、ギャップ不良が僅かに発生していた場合を「△」、ギャップ不良が明らかに発生していた場合を「×」として異物防止性を評価した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、長波長の光に対する硬化性に優れ、かつ、異物の発生を抑制できる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。