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特許7156947向上した光安定性を有するプライマー配合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】向上した光安定性を有するプライマー配合物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20221012BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20221012BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20221012BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 D
C09D7/48
B32B27/18 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018542752
(86)(22)【出願日】2017-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 US2017015567
(87)【国際公開番号】W WO2017142697
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-01-08
(31)【優先権主張番号】15/043,725
(32)【優先日】2016-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】カルナカラン,ラグフラマン・ゴヴィンダン
(72)【発明者】
【氏名】ムルゲサン,カーシケヤン
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナン,インドゥマシ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ,ロバート
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-261012(JP,A)
【文献】特開2010-066740(JP,A)
【文献】特開2013-227520(JP,A)
【文献】特開平08-325507(JP,A)
【文献】特表2017-508014(JP,A)
【文献】特開平5-221640(JP,A)
【文献】特開2011-102359(JP,A)
【文献】特開2011-62877(JP,A)
【文献】特開2002-97423(JP,A)
【文献】国際公開第2004/044063(WO,A1)
【文献】特開平4-226546(JP,A)
【文献】特開平6-64938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0298989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式
【化1】

(式中、R、R、R、およびRが、独立してC1~C10アルキルから選択される)
のシランで修飾された金属酸化物粒子、
(b)有機ポリマー、および
(c)溶媒
ここで、(a)のシラン対金属酸化物粒子の重量比が、0.9:1~2:1である、
を含むプライマー組成物。
【請求項2】
、R、R、およびRが、独立してC1~C4アルキルから選択される、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子が、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記有機ポリマーが、アルキルアクリレートのホモポリマー、アルキルアクリレートのコポリマー、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記溶媒が、アルコール、アセトン、ケトン、エーテル、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
基材および前記基材の表面の少なくとも一部に配置されたプライマーフィルムであって、前記プライマーフィルムが
(a)式
【化2】

(式中、R、R、R、およびRは、独立してC1~C10アルキルから選択される)
のシランで修飾された金属酸化物粒子、および
(b)有機ポリマーを含む、
ここで、(a)のシラン対金属酸化物粒子の重量比が、0.9:1~2:1である、
基材。
【請求項7】
、R、R、およびRが、独立してC1~C4アルキルから選択される、請求項6に記載の基材。
【請求項8】
前記金属酸化物粒子が、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項6または7に記載の基材。
【請求項9】
前記有機ポリマーが、アルキルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載の基材。
【請求項10】
前記プライマーフィルムが、乾燥フィルムの重量を基準とした重量%で、(i)10重量%~25重量%の量の前記金属酸化物粒子、および(ii)10重量%~30重量%の量の前記シランを含み、ここでシラン対金属酸化物粒子の重量比が1:1から2:1である、請求項6~9のいずれか一項に記載の基材。
【請求項11】
(iii)前記有機ポリマーが、前記乾燥フィルムの重量を基準にして、45重量%~80重量%の量で存在する、請求項10に記載の基材。
【請求項12】
前記プライマーフィルムが、乾燥フィルムの重量を基準とした重量%で、10重量%~20重量%の量の前記金属酸化物粒子、および10重量%~20重量%の量の前記シランを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の基材。
【請求項13】
前記基材が、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリイミド、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエンターポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、コポリカーボネート、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項6~12のいずれか一項に記載の基材。
【請求項14】
前記プライマーフィルムを覆うシリコーンハードコートを含む、請求項6~13のいずれか一項に記載の基材。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載のプライマー組成物を製造するための方法であって、
(a)金属酸化物粒子を(b)有機ポリマーおよび(c)溶媒と合わせること、ここで前記金属酸化物粒子(a)が式
【化3】

(式中R、R、R、およびRは、独立してC1~C10アルキルから選択される)のシランで修飾され、
ここで、(a)のシラン対金属酸化物粒子の重量比が、0.9:1~2:1である、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、プライマー配合物、そのような配合物を含むコーティング、およびそのような配合物でコーティングされた物品に関する。特に、本開示の技術は、シランで修飾または機能化された金属酸化物粒子を含むプライマー配合物に関する。該配合物は、優れた光学特性および接着特性ならびに良好な光学的、貯蔵安定性、熱的およびUV安定性を有するフィルムを製造するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
有機UV吸収剤の代わりに無機UV吸収剤を含有するプライマーコートアセンブリは、基礎となるポリマー基材に拡張された耐候性を提供することができる。しかしながら、有機UV吸収剤を無機UV吸収剤で置き換えることに起因するいくつかの問題は、これらの無機UV吸収剤のプライマーマトリックス中への分散性が乏しいこと、および無機UV吸収剤の存在によるプライマーの光分解である。
【0003】
ポリカーボネート用の保護コーティングの耐候性能に影響する重要な要因は、コーティング層に組み込まれたUV吸収剤の光安定性である。TiO、ZnOおよびCeOのような無機金属酸化物は、化学的に不活性であり、優れた熱安定性を有し、強いUV吸収を示し、そしてそれらの光分解速度は著しく低いが、それらを有機またはシリコンマトリックス中のナノサイズに組み込むことは困難であった。主な課題の1つは、光学特性および接着特性を維持しながらも、UV曝露時に安定性を維持するようにマトリックスに酸化物を組み込むことである。種々の金属酸化物粒子の中で、酸化セリウム(CeO)は、高い酸素貯蔵能力、高いイオン伝導率、比較的高い機械的強度、紫外線領域における強い吸収/発光、高い硬度およびより低い光触媒活性などのその組み合わされた独特な特性によりはるかに魅力的である。シリコーン樹脂ハードコートにおける紫外線吸収剤としてのコロイド状酸化セリウムの使用は、米国特許第4,799,963号に記載されている。当該’963号特許に記載された実施例は、コーティングを合成するために使用されるコロイド状酸化セリウムまたはコロイド状シリカのグレードに関しては具体的ではない。さらに、当該’963号特許は、乾燥フィルムの重量で約5%のCeOのみを含有する配合物を記載している。得られたコーティングの光学特性に悪影響を及ぼすことなく、セリアのような無機UV吸収剤を有機プライマーコーティング組成物中に組み込むことは困難である。重要な課題は、凝集を起こすことなくこれらの無機酸化物を有機プライマーマトリックス中に分散させる長期安定性である。
【0004】
また、これらの無機酸化物のより高い添加量の使用は、コーティングの光学的透明性を維持しながら最大のUVスクリーニングを提供することが困難である。例えば、EP0732356は、アクリルプライマー配合物中のセリアオルガノゾルの使用を開示している。それはまた、プライマー調合物中にセリアを分散させるための共溶媒として水を開示している。水の存在は、得られる塗膜の光学特性に著しく影響を及ぼす。また、水は、PMMAプライマー配合物のための逆溶剤である。実用的な用途にて、より高い固形分のUV吸収剤を有するプライマー配合物を有することは、屋外の気象条件において適切な保護を維持することができる乾燥フィルムの厚さを提供することができるようにコーティングにとって望ましい。このような解決策での従来の試みは、十分な長期の屋外の耐候性、光学的透明性および耐磨耗性を提供するのに有効なポリマー基材用の保護コーティング組成物を提供していない。結果として、上述した課題を克服するポリマー基材のための保護コーティング組成物を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本技術および本発明は、基材をコーティングするためのプライマー配合物、そのような組成物から形成されたフィルム、およびかかる組成物またはフィルムでコーティングされた物品および基材を提供する。本発明は、無機UV吸収材料を含む安定なプライマー組成物を提供する。本発明はまた、このような組成物から形成されたコーティングまたはフィルムを提供する。当該コーティングは、良好な接着特性、良好な光学特性、良好な貯蔵安定性、良好な熱安定性、またはこれらの特性の2つ以上の組み合わせを示し得る。
【0006】
一態様では、本発明は機能化された金属酸化物粒子を含むプライマー組成物を提供する。
【0007】
一実施形態では、プライマー組成物は、
(a)次式のシランで修飾された金属酸化物粒子:
【化1】

(式中、R、R、R、およびRは、独立してC1~C10アルキルから選択される)
(b)有機ポリマー、および
(c)溶媒、を含む。
【0008】
先の態様または実施形態のいずれかのプライマー組成物の一実施形態では、R、R、R、およびRは、独立してC1~C4アルキルから選択される。
【0009】
先の態様または実施形態のいずれかのプライマー組成物の一実施形態では、R、R、R、およびRは、各々がメチルである。
【0010】
先の態様または実施形態のいずれかのプライマー組成物の一実施形態では、金属酸化物粒子は、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0011】
先の態様または実施形態のいずれかのプライマー組成物の一実施形態では、有機ポリマーは、アルキルアクリレートのホモポリマー、アルキルアクリレートのコポリマー、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、またはその2以上の組合せから選択される。
【0012】
先の態様または実施形態のいずれかのプライマー組成物の一実施形態では、シラン対金属酸化物粒子の重量比は、少なくとも0.9:1である。
【0013】
先の態様または実施形態のいずれかのプライマー組成物の一実施形態では、シラン対金属酸化物粒子の重量比は0.9:1~約2:1である。
【0014】
先の態様または実施形態のいずれかのプライマー組成物の一実施形態では、溶媒は、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、またはそれらの2以上の組合せから選択される。
【0015】
一態様では、本発明は、先の実施形態のいずれかによるプライマー組成物でコーティングされた基材を提供する。
【0016】
一態様では、本発明は、先の実施形態のいずれかによるプライマー組成物から形成されたプライマーフィルムを提供する。
【0017】
一実施形態では、プライマーフィルムは、乾燥フィルムの重量に基づく重量%で、(i)約45重量%~約80重量%の量の有機ポリマー、(ii)約10重量%~約20重量%の量の金属酸化物粒子、および(iii)約10重量%~約30重量%の量のシランを含み、ここでシラン対金属酸化物粒子の重量比は0.9:1またはそれよりも大きい。
【0018】
一実施形態では、シラン対金属酸化物粒子の重量比は0.9:1~約2:1である。
【0019】
一態様では、本発明は、本発明の態様および実施形態によるプライマー組成物から形成されたコーティングを含む基材を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、基材および基材の表面の少なくとも一部に配置されたプライマーフィルムを提供し、プライマーフィルムは、
(a)次式のシランで修飾された金属酸化物粒子:
【化2】

(式中、R、R、R、およびRは、独立してC1~C10アルキルから選択される)
および
(b)有機ポリマーを含む。
【0021】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、R、R、R、およびRは、独立してC1~C4アルキルから選択される。
【0022】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれメチルである。
【0023】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、金属酸化物粒子は、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、またはそれらの2以上の組み合わせから選択される。
【0024】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、有機ポリマーは、アルキルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0025】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、シラン対金属酸化物の重量比は、少なくとも0.9:1である。
【0026】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、シラン対金属酸化物粒子の重量比は0.9:1~約2:1である。
【0027】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、プライマーフィルムは、乾燥フィルムの重量に基づく重量%で、(i)約45重量%~約80重量%の量の有機ポリマー、(ii)約10重量%~約25重量%の量の金属酸化物粒子、および(iii)約10重量%~約30重量%の量のシランを含み、ここでシラン対金属酸化物粒子の重量比は0.9:1またはそれよりも大きい。一実施形態では、シランはアルキルトリアルコキシシランであってもよい。
【0028】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、基材は、プライマーフィルムを覆うシリコーンハードコート層を含む。
【0029】
任意の先の態様または実施形態の基材の一実施形態では、基材は、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリイミド、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエンターポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、コポリカーボネート、またはそれらの2以上の組み合わせから選択される。
【0030】
これらおよび他の態様および実施形態は、以下の詳細な説明によりさらに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、酢酸イオンを含む水性媒体中で安定化されたCeOのUV-Visスペクトルである。
【0032】
図2図2は、本技術の実施形態によるシラン機能化CeOのUV-Visスペクトルである。
【0033】
図3図3は、市販のCeOの粒子サイズ分布を示すグラフである。
【0034】
図4図4は、本技術の実施形態による機能化CeOの粒子サイズ分布を示すグラフである。
【0035】
図5図5は、有機官能性シランで修飾したCeOと比較した、本技術に従って修飾されたCeOを使用するプライマーフィルムについてのガラススライド上の加速太陽試験の結果を示すグラフである。
【0036】
図6図6は、異なるプライマーフィルムについての加速太陽試験時間によるヘイズの変化を示すグラフである。
【0037】
図7図7は、異なるプライマーフィルムについての加速太陽試験時間による透過率(%T)の変化を示すグラフである。
【0038】
図8図8は、本技術の実施形態によるプライマーおよびシリコーン系トップコートでコーティングされたポリカーボネート(PC)基材の加速太陽試験を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本技術は、コーティング組成物中の表面修飾無機粒子の使用に関する。表面修飾無機粒子は、コーティング組成物中のUV吸収剤として使用することができる。本発明の表面修飾無機粒子は、ポリマーマトリックス中の無機粒子を安定化させることが見出されている。これは、そのような分散液または組成物から形成されたポリマーマトリックス中およびコーティング配合物中の粒子のより均一な分散を可能にする。このような修飾された金属粒子を含む組成物は、コーティング用途でのプライマー組成物として使用され得る。修飾された金属粒子は、一般に、凝集することなくコーティング中に均一に分散される。結果として、組成物は、最終的なコーティングにおいて長い貯蔵寿命および良好な光学特性を示す。プライマーは、シリコーンハードコートとの使用に特に適しており、高い透過率、低いヘイズ、および基材に対する良好な接着性を有する全体的なコーティングを提供する。
【0040】
プライマー組成物は、(a)アルキルトリアルコキシシランのようなシランで表面修飾された無機金属酸化物粒子;(b)有機ポリマー;および(c)溶媒を含む。表面修飾無機粒子は、アルキルトリアルコキシシランで表面修飾された無機金属粒子を含む。本明細書で使用される場合、表面修飾された無機金属粒子は、機能化された無機金属粒子と呼ぶこともありえる。特定の理論に拘束されることを望まないが、アルキルトリアルコキシシランによる無機粒子の表面修飾または機能化は、非共有結合によるものと考えられる。アルキルトリアルコキシシランはネットワークを形成し、実質的に粒子を封入すると考えられる。特定の理論に縛られることを望まないが、アルキルトリアルコキシシランは、例えば、コアシェル形態によって無機粒子をカプセル化することがありえる。さらに、個々のシラン部分は、シラン部分に起因する立体反発のために、懸濁状態の表面修飾ナノ粒子に物理的安定性を与えると考えられている。
【0041】
本発明の組成物に使用される金属粒子は、特に限定されない。一般に、金属粒子は金属酸化物粒子である。適切な例には、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛の粒子、またはそれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、金属酸化物ナノ粒子は、酸化セリウムナノ粒子である。
【0042】
金属酸化物粒子のサイズは、特定の目的または意図される用途のために所望されるように選択することができる。実施形態において、金属酸化物粒子は、ナノサイズの粒子である。ナノ粒子は、1~約500ナノメートルの範囲のサイズを有することができる。クリアコート用途では、粒子は、コーティングを通過する光を散乱させないように、一定の限界を下回るサイズを有するべきである。λ/2未満のサイズを有する粒子は、λの光を散乱させず、ここでλは光の波長であり、それらが組み込まれるマトリックスの透明性を乱さない。ある実施形態では、金属粒子は190ナノメートルまたはそれ未満の直径を有する。他の実施形態では、金属粒子は、約1nm~約190nm、約5nm~約175nm、25nmより大きく約150nmまで、または約50nm~約100nmの直径を有する。ここでは、明細書および特許請求の範囲の他の部分と同様に、数値を組み合わせて新たな開示されていない範囲を形成することができる。
【0043】
本発明の組成物中のアルキルトリアルコキシシラン部分で表面修飾された金属酸化物ナノ粒子の量は、約0.1~約10重量%、好ましくは約0.1~約5重量%、より好ましくは約0.5~約3重量%、そして最も好ましくは約1重量%~約3重量%の範囲であり、これらは全て組成物の全重量に基づく。ここでは、明細書および特許請求の範囲の他の部分と同様に、数値を組み合わせて新たな開示されていない範囲を形成することができる。
【0044】
金属酸化物ナノ粒子を表面修飾するシラン部分の量は、金属酸化物粒子の総重量に基づいて約200~約420重量%、好ましくは金属酸化物粒子の総重量に基づいて約200~約280重量%、金属酸化物粒子の総重量に基づいて約340~400重量%である。これは、約0.9:1~約2:1のシラン対金属の重量比をもたらす。ここでは、明細書および特許請求の範囲の他の部分と同様に、数値を組み合わせて新たな開示されていない範囲を形成することができる。
【0045】
無機粒子を機能化するために使用されるアルキルトリアルコキシシランは、特定の目的または意図された用途のために所望されるように選択することができる。実施形態において、アルキルトリアルコキシシランは、下記式である:
【化3】

(式中、R、R、R、およびRは独立してC1~C10アルキルから選択される)。実施形態では、R~Rは、独立してC1~C4アルキルまたはC1~C2アルキルから選択される。実施形態では、R~Rはメチルである。アルキルトリアルコキシシランの組み合わせを使用して、無機粒子を修飾または機能化することができることが理解されよう。好適なトリアルコキシシランの例には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の有機ポリマー成分は、特に限定されるものではない。本発明の組成物に有用な適切なポリマーには、限定されるものではないが、アルキルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ならびにこれらの組合せが挙げられる。ある実施形態では、有機ポリマーはポリメチルメタクリレートである。本発明の組成物中の有機ポリマーの量は、好ましくは約0.5~約15重量%、約2~約10重量%、または約3~約8重量%の範囲でありえ、全ては組成物の総重量に基づく。
【0047】
本明細書に記載される有機ポリマーおよびシラン部分で修飾された金属粒子に加えて、本発明のプライマー組成物はさらに溶媒を含む。溶媒としては、特に限定されるものではない。適切な溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tertブタノール、メトキシプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、またはそれらの組み合わせなどのアルコールが含まれるが、これらに限定されない。アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテルおよび2-ブトキシエタノールのような他の極性有機溶媒も利用することができる。実施形態において、使用される溶媒は、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール(DAA)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メトキシプロピルアセテート、ケトン、グリコールエーテル、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される1つ以上である。組成物中の溶媒の量は、好ましくは約70重量%~約95重量%、より好ましくは約75重量%~約85重量%、最も好ましくは約85重量%~約95重量%の範囲であり、全ては組成物の総重量に基づく。
【0048】
本発明のプライマー組成物は、UV吸収剤、防汚剤、レベリング剤、表面潤滑剤、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、IR吸収剤、およびこれらの組み合わせなどの任意の追加の添加剤をさらに含むことができる。
【0049】
シラン部分で表面修飾された金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子とシランとを適当な溶媒中で混合し、水と溶媒を除去して、例えば、真空下で粘性の液体またはゲル残留物を生成し、およびジアセトンアルコールまたは1-メトキシ-2-プロパノールなどの有機溶媒に溶解することにより調製することができる。本発明のプライマー組成物は、表面修飾された粒子、アクリルポリマーおよび他の好適な任意の成分を溶媒中で単に混合することによって調製することができる。成分の混合の順序は重要ではない。混合は、当業者に知られている任意の手段、例えば粉砕、混合、攪拌などによって達成することができる。様々な充填による表面修飾されたナノ粒子CeOを有するプライマー組成物は、数ヶ月または1年を超えて安定であることが見出されている。
【0050】
本発明のプライマー組成物は、プラスチック表面などの高分子基材上に適切にコーティングすることができる。このようなプラスチックの例には、限定されるものではないが、合成有機ポリマー材料、例えばアクリルポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)など、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)など、ポリアミド、ポリイミド、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルブタジエンターポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなど、ポリカーボネート、コポリカーボネートおよび高熱ポリカーボネートが挙げられる。
【0051】
特に好適な基材は、ポリカーボネートまたはアクリル樹脂から形成される。ポリカーボネートは、それらの優れた物理的、機械的および化学的特性のために、透明基材のための特に適切な材料である。一般に、基材の選択は最終的に意図された最終用途によって決定される。
【0052】
本発明のプライマー組成物を、フローコート、ディップコート、スピンコートまたは他の当該分野で適切な方法によってコーティングした後、任意の溶剤を除去することによって、例えば蒸発によって乾燥させて、乾燥コーティングを残すようにさせる。溶媒の蒸発を助けるために、プライマー組成物の加熱は、基材の熱変形温度によって定まる最高温度までにて行い、溶媒を含まないプライマー層を提供することができる。
【0053】
プライマー組成物から形成されたプライマーフィルムは、フィルムの総重量に基づいて少なくとも約45重量%の有機ポリマーを含むことができる。実施形態において、プライマーフィルムは、フィルムの総重量に基づいて、約45重量%~約80重量%の有機ポリマー;約50重量%~約80重量%;約55重量%~約75重量%;または約60重量%~約70重量%である。実施形態において、プライマーフィルムは、フィルムの総重量に基づいて、有機ポリマーを約45重量%~約65重量%、さらには約50重量%~約60重量%含む。このフィルムは、アルキルトリアルコキシシラン対無機金属粒子の重量比が少なくとも0.9:1(重量/重量)であるように提供される。アルキルトリアルコキシシラン対無機金属粒子の重量比は、約0.9:1~約2:1、約0.95:1~約1.8:1、約1:1~1.6:1、さらには約1.2:1~約1.4:1でありえる。実施形態において、フィルムは、約10重量%~約25重量%、約12重量%~約20重量%、さらには約14重量%~約16重量%の量の無機金属酸化物粒子、および、約10重量%~約30重量%、約12重量%~約25重量%、約15重量%~約20重量%の量のアルキルトリアルコキシシランを含む。ここでは、明細書および特許請求の範囲の他の部分と同様に、数値が組み合わされて新規で開示されていない範囲を形成してもよい。フィルム中の成分の濃度を指す場合、重量パーセントは乾燥フィルムの重量に基づく。
【0054】
一実施形態では、プライマーフィルムは、約10重量%からの無機金属粒子および約10重量%のアルキルトリアルコキシシランを含む。別の実施形態では、プライマーフィルムは、約15重量%からの無機金属粒子および約15重量%のアルキルトリアルコキシシランを含む。別の実施形態において、プライマーフィルムは、約20重量%からの無機金属粒子および約20重量%のアルキルトリアルコキシシランを含む。別の実施形態において、プライマーフィルムは、約10重量%からの無機金属粒子および約20重量%のアルキルトリアルコキシシランを含む。さらに別の実施形態において、プライマーフィルムは、約15重量%からの無機金属粒子および約30重量%のアルキルトリアルコキシシランを含む。
【0055】
本発明のプライマー組成物から形成されたプライマー層は、耐摩耗性トップコート層の基材への接着を提供するのに有効であり、本発明のコーティングされた物品の一部として使用することができる。したがって、本発明の別の実施形態によれば、ポリマー基材、該基材の少なくとも1つの表面上に配置されたプライマー層、および該プライマー層上に配置された耐磨耗性シリコーンハードコート層を含むコーティングされた物品が提供され、ここで該プライマー層は、前記シラン修飾金属粒子を含むプライマー組成物から製造される。
【0056】
プライマーは、フローコート、ディップコート、スピンコート、または当業者に知られている任意の他の方法によって基材上にコーティングされてもよく、任意の溶媒の除去によって、例えば蒸発によって乾燥させ、それにより乾燥コーティングを残すことができる。その後、プライマーを硬化させることができる。さらに、フローコート、ディップコート、スピンコート、または当業者に知られている任意の他の方法によって、乾燥したプライマー層の上にトップコート(例えば、ハードコート層)を適用することができる。任意にて、プライマー層のない基材にトップコート層を直接適用してもよい。
【0057】
プライマーは、任意の適切な基材に適用することができる。適切な基材の例には、限定されるものではないが、有機ポリマー材料、例えばアクリルポリマー、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリイミド、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエンターポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、コポリカーボネート、高熱ポリカーボネート、これらの組み合わせ、および任意の他の適切な材料を含む。
【0058】
最初にコーティング組成物をプライマー層上に適用し、続いて組成物を硬化させることによって、シリコーンハードコートが形成される。シリコーンハードコート組成物は、特に限定されるものではない。シラクサノール樹脂/コロイドシリカ分散物を含むシリコーンハードコートは、トップコートとして使用することができるコーティング組成物の一例である。シリコーンハードコートは、必要に応じて、追加の有機UV吸収剤を含むことができるが、その充填量は、プライマー層またはハードコート層のいずれかに無機吸収剤を含まないものより低くてもよい。したがって、耐摩耗性は維持され、ある場合には、有機UV吸収剤の量を制限することによって改善されると同時に、耐候性が改善される。
【0059】
以下の実施例は例示的なものであり、本明細書に開示され請求される本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。明記されていない限り、すべての部およびパーセンテージは重量によるものであり、すべての温度は摂氏である。本明細書で引用したすべての特許出願、特許および他の刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。
【実施例
【0060】
シランを用いたセリアの表面機能化
オルガノゾル[S-1]の調製
メチルトリメトキシシラン(MTMS)を用いた表面機能化
10.0gの酸化セリウム分散液(Nyacol(登録商標)CeO ACT、水性媒体中20重量%、2.5%酢酸で安定化、2.0gのCeO)を清浄な250mL丸底フラスコ中に入れ、そして50mLの1-メトキシ-2-プロパノール(MP)をそれに加えて数分攪拌した。次いで、激しく撹拌しながら4.0gのMTMS(Momentive Performance Materials、Silquest(登録商標)A-163シラン)(CeOに対して200重量%)を滴下して上記溶液に添加した。20分の攪拌後、4mLの0.001M NaOH溶液を滴下して加え(約1mL/分)、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、70℃および80mbarの圧力の減圧下で溶媒を除去した。得られた有機ゾルを貯蔵容器に移した。固体の最終重量パーセンテージを測定した。水性媒体中および有機ゾル中のMTMSで機能化した後のCeOのUV-Visスペクトルをそれぞれ図1および2に示した。
【0061】
市販のCeOナノ粒子およびそれを200重量%のMTMSで機能化した後のサイズを、図3および4にそれぞれ示した。
【0062】
オルガノゾル[S-2]の調製
メチルトリメトキシシラン(MTMS)を用いた表面機能化
10.0gの酸化セリウム分散液(Nyacol(登録商標)CeO ACT、水性媒体中20重量%、2.5%酢酸で安定化、2.0gのCeO)を清浄な250mL丸底フラスコ中に入れ、そしてそれに50mLの1-メトキシ-2-プロパノール(MP)を加えて数分間撹拌した。次いで、激しく撹拌しながら8.0gのMTMS(Momentive Performance Materials、Silquest(登録商標)A-163シラン)(CeOに対して400重量%)を滴下して上記溶液に添加した。20分撹拌後に、4mLの0.001M NaOH溶液を滴下にて加え(約1mL/分)、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、70℃および80mbarの圧力の減圧下で溶媒を除去した。得られた有機ゾルを貯蔵容器に移した。固体の最終重量パーセンテージを測定した。
【0063】
オルガノゾル[S-3]の調製
トリメトキシシリルプロピルオリゴ(エチレングリコール)メチルエーテル(Silquest(登録商標)A-1230シラン)を使用した表面機能化
10.0gの酸化セリウム分散液(Nyacol(登録商標)CeO ACT、水性媒体中20重量%、2.5%酢酸で安定化、2.0gのCeO)を清浄な250mL丸底フラスコ中に入れ、そしてそれに1-メトキシ-2-プロパノール(MP)50mLを加え、数分間攪拌した。次いで、激しく撹拌しながら0.4gのPEG-シラン(Momentive Performance Materials、Silquest(登録商標)A-1230シラン)(CeOに対して20重量%)を滴下して上記溶液に添加した。20分撹拌後、4mLの0.001M NaOH溶液を滴下して加え(約1mL/分)、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、70℃および80mbarの圧力の減圧下で溶媒を除去した。得られた有機ゾルを貯蔵容器に移した。固体の最終重量パーセンテージを測定した。
【0064】
オルガノゾル[S-4]の調製
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A-174シラン)を用いた表面機能化
10.0gの酸化セリウム分散液(Nyacol(登録商標)CeO ACT、水性媒体中20重量%、2.5%酢酸で安定化、2.0gのCeO)を清浄な250mL丸底フラスコ中に入れ、そしてそれに1-メトキシ-2-プロパノール(MP)50mLを加え、数分間攪拌した。次いで、激しく撹拌しながら、0.4gのメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials、Silquest(登録商標)A-174シラン)(CeOに対して20重量%)を上記溶液に滴下して加えた。20分撹拌後、4mLの0.001M NaOH溶液を滴下して加え(約1mL/分)、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、70℃および80mbarの圧力の減圧下で溶媒を除去した。得られた有機ゾルを貯蔵容器に移した。固体の最終重量パーセンテージを測定した。
【0065】
オルガノゾル[S-5]の調製
ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A187シラン)を用いた表面機能化
10.0gの酸化セリウム分散液(Nyacol(登録商標)CeO ACT、水性媒体中20重量%、2.5%酢酸で安定化、2.0gのCeO)を清浄な250mL丸底フラスコ中に入れ、そしてそれに1-メトキシ-2-プロパノール(MP)50mLを加え、数分間攪拌した。次いで、激しく撹拌しながら、4.28gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials、Silquest(登録商標)A-187シラン)(CeOに対して214重量%)を上記溶液に滴下により添加した。20分撹拌後、4mLの0.001M NaOH溶液を滴下して加え(約1mL/分)、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、70℃および80mbarの圧力の減圧下で溶媒を除去した。得られた有機ゾルを貯蔵容器に移した。固体の最終重量パーセンテージを測定した。表1は、CeOおよびシランの%固体および重量分率(%)を示す。
【表1】
【0066】
プライマー溶液の調製
3つ口の500mLの丸底フラスコに、還流濃縮器およびオーバーヘッドスターラーが取り付けられ、1-メトキシ-2-プロパノール(382.5g)とジアセトンアセトンアルコール(DAA)(67.5g)(85:15の重量比)の混合溶媒を加え、40℃で攪拌した。この溶媒混合物に50gのPMMA(Elvacite(登録商標)2041、Lucite International, Inc.、Cordova、TN)を少しずつ加え、そしてPMMAの完全な溶解により透明な溶液となるまで攪拌を続けた。その後、溶液を室温まで冷却し、固形分の重量%を130℃のオーブンで20分間測定した。
【0067】
例[E-1]
Silquest(登録商標)A-163シラン-CeOゾルを用いたプライマー配合物の調製
20.0gの9.02%PMMA溶液に、12.24gのセリアゾルS-1を、15mgのBYK(商標)-331と共に加えた。プライマー混合物をよく振り混ぜてセリアゾルを溶解させて、12ヶ月にわたって沈殿することがない安定したストローイエローの配合物を得た。固体含量を測定し、1-メトキシ-2-プロパノールとジアセトンアルコールとの85:15混合物を用いて、配合物を5.14%固体含量に希釈した。得られた溶液を使用前に0.45μmフィルターで濾過した。
【0068】
例[E-2]
Silquest(登録商標)A-163シラン-CeOゾルを用いたプライマー配合物の調製
20.0gの11.03%PMMA溶液に、8.3gのセリアゾルS-1を15mgのBYK(商標)-331と共に加えた。プライマー混合物をよく振り混ぜてセリアゾルを溶解させ、ストローイエローの配合溶液を得た。固体含量を測定し、1-メトキシ-2-プロパノールとジアセトンアルコールとの85:15混合物を用いて、配合物を7.19%固体含量に希釈した。得られた溶液を使用前に0.45μmフィルターで濾過した。
【0069】
例[E-3]
Silquest(登録商標)A-163シラン-CeOゾルを用いたプライマー配合物の調製
20.0gの11.03%のPMMA溶液に、4.9gのセリアゾルS-1を、15mgのBYK(商標)-331と共に加えた。プライマー混合物をよく振り混ぜてセリアゾルを溶解させて、ストローイエローの配合溶液を得た。固体含量を測定し、1-メトキシ-2-プロパノールとジアセトンアルコールの85:15混合物を用いて、配合物を7.12%固体含量に希釈した。得られた溶液を使用前に0.45μmフィルターで濾過した。
【0070】
例[E-4]
Silquest(登録商標)A-163シラン-CeOゾルを用いたプライマー配合物の調製
20.0gの11.03%PMMA溶液に、11.2gのセリアゾルS-2を15mgのBYK(商標)-331と共に加えた。プライマー混合物をよく振り混ぜてセリアゾルを溶解させ、ストローイエローの配合溶液を得た。固体含量を測定し、1-メトキシ-2-プロパノールとジアセトンアルコールとの85:15混合物を用いて、配合物を6.97%固体含量に希釈した。得られた溶液を使用前に0.45μmフィルターで濾過した。
【0071】
例[E-5]
Silquest(登録商標)A-163シラン-CeOゾルを用いたプライマー配合物の調製
20.0gの11.03%PMMA溶液に、5.90gのセリアゾルS-2を15mgのBYK(商標)-331と共に加えた。プライマー混合物をよく振り混ぜてセリアゾルを溶解させて、ストローイエローの配合溶液を得た。固体含量を測定し、1-メトキシ-2-プロパノールとジアセトンアルコールとの85:15混合物を用いて、配合物を7.05%固体含量に希釈した。得られた溶液を使用前に0.45μmフィルターで濾過した。
【0072】
比較例[CE-1]
UV吸収剤をなにも含まないプライマーの調製
調製したプライマー溶液に、1-メトキシ-2-プロパノール(382.5g)とジアセトンアセトンアルコール(DAA)(67.5g)(重量比85:15)の混合溶媒を加えて、固形分7.37%の配合物を得た。
【0073】
比較例[CE-2]
有機UV吸収剤を含むプライマーの調製
オーバーヘッドスターラーおよび還流濃縮器を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに、41.85gのジアセトンアルコールおよび237.15gの1-メトキシ-2-プロパノールを加えて撹拌した。次に、15.77gのPMMA(Elvacite(登録商標)2041、Lucite International, Inc.、Cordova、TN)を40℃で激しく撹拌しながら漏斗を介して少しずつ加えた。室温に冷却後、5.2gの2,4-ジベンゾイルレゾルシノール(Aldrich)および0.02gのBYK(商標)-331を加え、1時間撹拌した。得られた淡黄配合物は7.0%の固体含量を有する。
【0074】
比較例[CE-3]
Silquest(登録商標)A1230シラン-CeOゾルを用いたプライマー配合物の調製
20.0gの9.02%PMMA溶液に、10.2gのセリアゾルS-3を15mgのBYK(商標)-331と共に加えた。プライマー混合物をよく振り混ぜてセリアゾルを溶解させて、12ヶ月にわたって沈殿することがない安定したストローイエローの配合物を得た。固体含量を測定し、1-メトキシ-2-プロパノールとジアセトンアルコールとの85:15混合物を用いて、配合物を4.95%固体含量に希釈した。得られた溶液を使用前に0.45μmフィルターで濾過した。
【0075】
比較例[CE-4]
Silquest(登録商標)A-174シラン-CeOゾルを用いたプライマー配合物の調製
20.0gの9.02%PMMA溶液に、6.88gのセリアゾルS-4を15mgのBYK(商標)-331と共に加えた。プライマー混合物をよく振り混ぜてセリアゾルを溶解させて、12ヶ月にわたって沈殿することがない安定したストローイエローの配合物を得た。固体含量を測定し、1-メトキシ-2-プロパノールとジアセトンアルコールとの85:15混合物を用いて、配合物を4.8%固体含量に希釈した。得られた溶液を使用前に0.45μmフィルターで濾過した。
【0076】
比較例[CE-5]
Silquest(登録商標)A187シラン-CeOゾルを用いたプライマー配合物の調製
20.0gの9.02%PMMA溶液に、11.24gのセリアゾルS-5を15mgのBYK(商標)-331と共に加えた。プライマー混合物をよく振り混ぜてセリアゾルを溶解させて、12ヶ月にわたって沈殿することがない安定したストローイエローの配合物を得た。固体含量を測定し、1-メトキシ-2-プロパノールとジアセトンアルコールの85:15混合物を用いて、配合物を5.13%固体含量に希釈した。得られた溶液を使用前に0.45μmフィルターで濾過した。
【表2】
【0077】
フローコーティング法による顕微鏡スライドガラス上のプライマー配合物の適用
顕微鏡スライドガラスをイソプロパノールで洗浄し、室温で20分間乾燥させた。上記プライマー配合物の濾過された溶液を、スクイズボトルを使用してコーティング溶液を適用することにより、顕微鏡スライドガラス上にフローコーティングした。コーティングされた基材を、室温で20分間風乾し、次いで循環エアーオーブン中にて125℃で20分間風乾した。これらのプライマー配合物をコーティングした顕微鏡スライドガラスを、光学的測定および加速風化試験に供した。
【0078】
フローコーティング法によるPC基材へのプライマーおよびトップコートの適用:
ポリカーボネート(PC)基材をイソプロパノールで洗浄し、室温で20分間乾燥させた。プライマー組成物の濾過された溶液を、スクイズボトルを使用してコーティング溶液を適用することによって、PC基材上にフローコーティングした。コーティングされた基材を室温で20分間、次いでエアーオーブン中にて125℃で20分間風乾した。MTMSまたはSilquest(登録商標)A-1230シラン修飾セリアを含むPMMAプライマーでコーティングされた基材は、他のプライマーより光学的に優れてあらわれる。続いて、これらのプライマーコーティングされたPC基材をシリコーンハードコート配合物(SilFORT(登録商標)AS4700、Momentive Performance Materials)でコーティングし、室温で20分間、次いでエアーオーブン中にて130℃で40分間風乾した。
【0079】
コーティングされた基材の測定
BYK Gardner Haze Gard(商標)装置およびASTM D 1003による試験を使用して、光学特性(透過およびヘイズ)を測定した。ASTM D3002/D3359によるクロスハッチ接着試験を用いて初期接着性を測定した。接着性は5B-OBのスケールで評価され、5Bは最高接着性を示す。水浸漬後の接着性は、コーティングされたPCプレートを65℃の熱水中に浸漬し、その後異なる時間間隔でクロスハッチ接着試験が行われた。加速(風化)太陽試験は、Atlas sun test CPS+機器によって実施された。基材をチャンバー内に置き、1時間当たり2700KJ/mのUV線量に供した。
【0080】
光学的および接着特性
BYK Haze Gard(商標)装置を用いて%透過率およびヘイズ値を測定し、その値を表3にまとめた。表4のデータに示されるように、Silquest(登録商標)A-174シラン機能化CeO充填プライマーコーティングのヘイズ値は非常に高いが、一方でSilquest(登録商標)A1230シラン機能化CeOナノ粒子およびMTMS機能化CeOナノ粒子は、光学的透明度に関して有望な結果を示した。メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A174シラン)およびガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A-187シラン)機能化に相当する比較例CE-4およびCE-5のPC基材上の光学特性は、最も高いヘイズ値を示している。
【0081】
セリア充填プライマーコーティングおよびトップコート(SilFORT(登録商標)AS4700ハードコート)でコーティングされたPC基材をクロスハッチ接着に供して、コーティングの初期接着性を測定した。全てのコーティングは5Bの接着性を示し、次いで基材を65℃に維持された水浴に浸漬した。基材を様々な時間間隔(30日まで)で取り出し、接着性を測定した。すべてのコーティング配合物は、PC基材上に非常に良好な接着性を示し、その結果を表3にまとめた。
【表3】
【0082】
加速風化試験
異なる重量比のCeOおよびメチルトリメトキシシランを用いてプライマー配合物を調製し、そしてコーティングを評価し、加速太陽試験研究に供した。加速太陽試験研究は、Atlas Sun Test CPS +(フロリダ条件)およびプライマーコーティングで被覆された顕微鏡スライドガラスを用いて行った。次いで、UV吸収剤がなにもない(CE-1)および有機UV吸収剤を有する(CE-2)PMMAを伴う基材を試験装置に配置した。サンプルを200時間ごとに回収し、光学特性および厚さを測定した。Silquest(登録商標)A-1230-CeOおよびMTMS-CeOを充填したプライマーの厚さを、通常条件で1年間に相当する1200時間サイクルまで測定した。その値を表4にまとめている。太陽試験照射時間に対する厚さ変動のプロットを測定し、図5に示した。
【0083】
表4は、UV吸収剤がなにもない(CE-1)および有機UV吸収剤(CE-2)のプライマー配合物を、異なるシランで機能化されたセリアを用いる他の配合物と比較した結果を示す。比較例CE-3~CE-5は、特定の有機官能性シランで機能化されたセリアを使用し、例(E-1~E-5)は、本発明の態様または実施形態に従う機能化セリアを使用している。結果を図5に示す。加速太陽試験照射の間に、比較例CE-3、CE-4およびCE-5は、厚さの損失および光学的透明度の損失をもたらした。MTMSで機能化されたCeOを使用するプライマーの場合、有機UV吸収剤を有する(CE-2)プライマー配合物と比較して、厚さおよび光学的透明度がより大きく維持される。
【表4】
【0084】
異なる重量比のCeOおよびMTMSシランを有するプライマー配合物を調製し[E-1~E-5]、次いで加速太陽試験研究に供した。結果を表4および図5にまとめている。表4および図5のデータは、0.9:1および2:1(シラン:金属酸化物)の重量比にてMTMSで保護されたCeOが優れた特性を示すことを示している。MTMSのより高い充填は、オルガノゾル中および保護シェルを有するプライマーマトリックス中に安定した分散を提供するのに役立ち、そしてまたCeOにより加速されたPMMAの光分解を回避する組成物を提供することが見出されている。
【0085】
SilFORT(登録商標)AS4700トップコートを有するプライマー配合物E-3でコーティングされたPC基材を加速太陽試験研究に供した。初期光学特性、接着特性、プライマーおよびトップコートの厚さを測定し、次いで太陽試験研究に供した。基材を200時間の間隔ごとに取り出し、特性を測定し、表5にまとめた。照射時間に対するプライマーおよびトップコートの厚さの変化をプロットし、図8に示した。
【表5】
【0086】
上述した記載は、熱管理アセンブリの様々な非限定的な実施形態を特定するものである。当業者および本発明を利用し使用することができる者には、改変が生じ得る。開示された実施形態は、単に説明を目的とするものであり、本発明の範囲または特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図していない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8