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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】逐次的抗癌治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20221012BHJP
   A61K 31/175 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61K35/76 ZMD
A61K31/175
A61K31/4188
A61K39/395 E
A61K39/395 M
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018549578
(86)(22)【出願日】2017-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 US2017023148
(87)【国際公開番号】W WO2017165266
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2018-10-17
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】62/310,874
(32)【優先日】2016-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514312365
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ビグナー ダレル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】グローマイヤー マサイヤス
(72)【発明者】
【氏名】デジャルダン アニック
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン ヘンリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン アラン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】サンプソン ジョン エイチ.
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】鳥居 敬司
【審判官】渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500108号公報
【文献】Oncogene,2008年,Vol.27,pp.264-273
【文献】脳外誌,2015年,Vol.24,No.6,pp.386-398
【文献】Oncolytic virotherapy,2016年1月6日,Vol.5,pp.1-13
【文献】Molecular Therapy,2010年,Vol.18,No.2,pp.251-263
【文献】Molecular Therapy,2013年,Vol.21,No.6,pp.1212-1223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ球枯渇化学療法剤と組み合わせて用いられる、NECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する腫瘍を治療するための、キメラポリオウイルス構築物を含む医薬であって、
NECL5を発現する脳腫瘍を有し、リンパ球枯渇化学療法剤による治療を受けた後に該脳腫瘍の増殖が進行した患者に、該キメラポリオウイルス構築物が投与され、且つ
該キメラポリオウイルス構築物が投与された後にも該脳腫瘍の増殖が進行した患者に、該リンパ球枯渇化学療法剤が投与される
ように用いられることを特徴と
該キメラポリオウイルス構築物は、ポリオウイルスのSabin I型株を含み、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する
医薬。
【請求項2】
キメラポリオウイルス構築物と組み合わせて用いられる、NECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する腫瘍を治療するための、リンパ球枯渇化学療法剤を含む医薬であって、
NECL5を発現する脳腫瘍を有し、リンパ球枯渇化学療法剤による治療を受けた後に該脳腫瘍の増殖が進行した患者に、該キメラポリオウイルス構築物が投与され、且つ
該キメラポリオウイルス構築物が投与された後にも該脳腫瘍の増殖が進行した患者に、該リンパ球枯渇化学療法剤が投与される
ように用いられることを特徴と
該キメラポリオウイルス構築物は、ポリオウイルスのSabin I型株を含み、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する
医薬。
【請求項3】
前記リンパ球枯渇化学療法剤が一過性リンパ球減少を引き起こす、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
前記リンパ球枯渇化学療法剤がアルキル化剤である、請求項1~のいずれか項に記載の医薬。
【請求項5】
前記リンパ球枯渇化学療法剤がロムスチンである、請求項1~のいずれか項に記載の医薬。
【請求項6】
前記リンパ球枯渇化学療法剤がテモゾロミドである、請求項1~のいずれか項に記載の医薬。
【請求項7】
前記腫瘍がグリア芽細胞腫である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
前記腫瘍が星細胞腫または乏突起膠腫である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
前記腫瘍が乏突起星細胞腫である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
前記腫瘍が髄芽腫である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
前記キメラポリオウイルス構築物が、対流増加送達を用いた大脳内注入による投与のために製剤化されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項12】
ポリオウイルスのSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、キメラポリオウイルス構築物と、
リンパ球枯渇化学療法剤と
を含む、NECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する腫瘍を治療するためのキットであって、
NECL5を発現する脳腫瘍を有し、リンパ球枯渇化学療法剤による治療を受けた後に該脳腫瘍の増殖が進行した患者に、該キメラポリオウイルス構築物が投与され、且つ
該キメラポリオウイルス構築物が投与された後にも該脳腫瘍の増殖が進行した患者に該リンパ球枯渇化学療法剤が投与される
ように用いられることを特徴とる、
キット。
【請求項13】
NECL5に特異的な抗体をさらに含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記リンパ球枯渇化学療法剤がメトロノーム的なスケジュールに従って投与されるように用いられる、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
前記リンパ球枯渇化学療法剤が前記キメラポリオウイルス構築物の投与後少なくとも3ヶ月目に投与されるように用いられる、請求項12に記載のキット。
【請求項16】
前記リンパ球枯渇化学療法剤が前記キメラポリオウイルス構築物の投与後少なくとも5ヶ月目に投与されるように用いられる、請求項12に記載のキット。
【請求項17】
前記リンパ球枯渇化学療法剤が前記キメラポリオウイルス構築物の投与後少なくとも7ヶ月目に投与されるように用いられる、請求項12に記載のキット。
【請求項18】
前記リンパ球枯渇化学療法剤が一過性リンパ球減少を引き起こす、請求項12に記載のキット。
【請求項19】
前記リンパ球枯渇化学療法剤がアルキル化剤である、請求項12に記載のキット。
【請求項20】
前記リンパ球枯渇化学療法剤がロムスチンである、請求項12に記載のキット。
【請求項21】
前記リンパ球枯渇化学療法剤がテモゾロミドである、請求項12に記載のキット。
【請求項22】
前記脳腫瘍がグリア芽細胞腫である、請求項12に記載のキット。
【請求項23】
前記脳腫瘍が星細胞腫または乏突起膠腫である、請求項12に記載のキット。
【請求項24】
前記脳腫瘍が乏突起星細胞腫である、請求項12に記載のキット。
【請求項25】
前記腫瘍が髄芽腫である、請求項12に記載のキット。
【請求項26】
前記キメラポリオウイルス構築物が、対流増加送達を用いた大脳内注入による投与のために製剤化されている、請求項12に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国政府によって提供された資金を用いて行われた。米国政府は、国立衛生研究所からの助成金番号CA154291、CA197264の条件に従って一定の権利を保持する。2015年5月20日に出願された米国特許出願第14/646,233号の内容は、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、抗腫瘍療法の分野に関する。特に、本発明は、腫瘍溶解性ウイルスによる抗腫瘍療法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
PVS-RIPOは、腫瘍溶解性ポリオウイルス(PV)組換え体である。これは、ヒトライノウイルス2型(HRV2)の外来性内部リボソーム進入部位(IRES)を含有する弱毒化生1型(Sabin)PVワクチンからなる。IRESは、PVゲノムの5’非翻訳領域に位置するシス作用性遺伝要素であり、ウイルスのMGキャップ非依存性翻訳を媒介する。このウイルスは、ヒトにおいて喜ばしい有効性の兆候を示している。それにもかかわらず、より効果的な、より多くのヒト、特に脳腫瘍を有する患者に有効な抗癌治療を同定及び開発する継続的な必要性が、当該技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様によれば、患者の腫瘍を治療する方法が提供される。キメラポリオウイルス構築物が患者に投与される。構築物は、ポリオウイルスのSabin I型株を含み、ポリオウイルスは、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する。化学療法剤は、ポリオウイルス投与後に腫瘍の増殖が進行した場合に、または進行に関係なく予定通りに、患者に投与される。
【0005】
本発明の別の態様によれば、第1の薬剤、及びその後に少なくとも3ヶ月の間隔を空けて第2の薬剤を用いて腫瘍を治療するためのキットが提供される。キットは、第1の薬剤として、ポリオウイルスのクローバーリーフとポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間のポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有するポリオウイルスのSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物を含む。キットは、第2の薬剤として化学療法剤を含む。
【0006】
また、本発明のさらなる態様として、化学療法剤による治療の前に腫瘍を治療するための組成物も提供される。組成物は、ポリオウイルスのSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物を含み、ポリオウイルスは、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する。
【0007】
さらに、本発明のさらなる態様として、ポリオウイルスのSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物による治療の後に腫瘍を治療するための組成物が提供され、ポリオウイルスは、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する。組成物は、化学療法剤を含む。
【0008】
本明細書を読むことにより当業者に明らかとなるこれらの及び他の態様は、癌を治療するための新たな治療レジメンを当該技術分野に提供する。
[本発明1001]
患者の腫瘍を治療する方法であって、
ポリオウイルスのSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、前記ポリオウイルスのクローバーリーフと前記ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の前記ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、キメラポリオウイルス構築物を、前記患者に投与することと、
前記キメラポリオウイルス構築物を投与した後に腫瘍の増殖が進行した場合に、または前記キメラポリオウイルス構築物の投与後少なくとも3ヶ月目に、前記患者に化学療法剤を投与することと
を含む、方法。
[本発明1002]
前記化学療法剤は一過性リンパ球減少を引き起こす、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記化学療法剤はアルキル化剤である、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記化学療法剤はロムスチンである、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記化学療法剤はテモゾロミドである、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記化学療法剤は、メトロノーム的なスケジュールに従って投与される、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記化学療法剤はテモゾロミドである、本発明1006の方法。
[本発明1008]
前記化学療法剤は、前記キメラポリオウイルス構築物の投与後少なくとも3ヶ月目に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記化学療法剤は、前記キメラポリオウイルス構築物の投与後少なくとも5ヶ月目に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記化学療法剤は、前記キメラポリオウイルス構築物の投与後少なくとも7ヶ月目に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記腫瘍の進行は、画像によって評価される、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記腫瘍の進行は、臨床指標によって評価される、本発明1001の方法。
[本発明1013]
前記腫瘍は脳腫瘍である、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記腫瘍はグリア芽細胞腫である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記腫瘍は星細胞腫または乏突起膠腫である、本発明1013の方法。
[本発明1016]
前記腫瘍は乏突起星細胞腫である、本発明1013の方法。
[本発明1017]
前記腫瘍は髄芽腫である、本発明1013の方法。
[本発明1018]
前記腫瘍は、腎細胞癌、前立腺腫瘍、膀胱腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、結腸直腸腫瘍、肝臓または胆嚢腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、黒色腫、及び肉腫からなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1019]
前記腫瘍はNECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する、本発明1001の方法。
[本発明1020]
前記キメラポリオウイルス構築物は、対流増加送達を用いた大脳内注入によって投与される、本発明1001の方法。
[本発明1021]
前記ポリオウイルス構築物を投与するステップの前に、前記腫瘍を試験して、それがNECL5を発現することを確認するステップを含む、本発明1001の方法。
[本発明1022]
前記キメラポリオウイルス構築物は、前記腫瘍に直接投与される、本発明1001の方法。
[本発明1023]
前記キメラポリオウイルス構築物は、前記腫瘍の増殖が進行した場合に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1024]
化学療法剤による治療の前に腫瘍を治療するための組成物であって、
ポリオウイルスのSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、前記ポリオウイルスのクローバーリーフと前記ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の前記ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、キメラポリオウイルス構築物
を含む、組成物。
[本発明1025]
ポリオウイルスのSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、前記ポリオウイルスのクローバーリーフと前記ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の前記ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、キメラポリオウイルス構築物
による治療の後に腫瘍を治療するための組成物であって、化学療法剤を含む、組成物。
[本発明1026]
第1の薬剤に続いて少なくとも3ヶ月後に第2の薬剤を用いて腫瘍を治療するためのキットであって、
ポリオウイルスのSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、前記ポリオウイルスのクローバーリーフと前記ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の前記ポリオウイルスの5’非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、キメラポリオウイルス構築物である、第1の薬剤と、
化学療法剤である第2の薬剤と
を含む、キット。
[本発明1027]
NECL5に特異的な抗体とともにキット内に入っている、本発明1023の組成物。
[本発明1028]
NECL5に特異的な抗体とともにキット内に入っている、本発明1024の組成物。
[本発明1029]
NECL5に特異的な抗体をさらに含む、本発明1025のキット。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】患者番号8。各時点での脳スキャン:PVSRIPOの注入前、出血の排出後、PVSRIPO注入の7ヶ月後、最初に進行が観察された時、9ヶ月目、1サイクルのロムスチン(CCNU)後、24ヶ月目、及び28ヶ月目。
図2】患者番号17。毎日のテモダールをアバスチンに追加した後の反応を示す。ベースライン、3ヶ月、5ヶ月、10ヶ月、12ヶ月、及び14ヶ月目の脳スキャン。10ヶ月目に、毎日のテモダール(テモゾロミド)をアバスチンレジメンに追加した。
図3】患者番号27。毎日のテモダールをアバスチンに追加した後の反応を示す。ベースライン、2ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、及び7ヶ月目の脳スキャン。アバスチンを2ヶ月目に追加し、テモダールを5ヶ月目に追加した。
図4】患者21。CCNU(ロムスチン)をアバスチンに追加した後の反応。ベースライン、1ヶ月、3ヶ月及び5ヶ月目に示された脳スキャン。1ヶ月目にアバスチンを開始した。3ヵ月目にCCNUを追加した。
図5】患者番号23。CCNUをアバスチンに追加した後の反応。ベースライン、3ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、及び8ヶ月目に示された脳スキャン。3ヶ月目にアバスチンを開始した。7カ月目にCCNUを追加した。
図6】患者番号28。毎日のテモダールをアバスチンに追加した後の反応。ベースライン、1ヶ月、3ヶ月、及び5ヶ月目に示された脳スキャン。1ヶ月目にアバスチンを開始した。3ヶ月目に毎日のテモダールを追加した。
図7A図7A~7Cは、CD155トランスジェニックマウスにおける同系マウス前立腺癌モデル(ヒトポリオウイルスレセプターCD155で形質導入された)であるTRAMP-C2を、図7Aに示すように、0日目にPVSRIPO、7~13日目にテモゾロミド(TMZ)により治療した。このモデルは、癌免疫療法の陰性対照として一般的に用いられている。TRAMPは、免疫系によって認識され得る単一の抗原エピトープを有しないことが確認されている。したがって、このモデルでは、実際には免疫療法による何の効果も見られない。本発明者らは、これが、PVSRIPOがTRAMPに最小限の影響しか及ぼさない理由であると考える。本発明者らは、TMZとPVSRIPOとの相乗効果を調べるために、この抵抗性の高いモデルを意図的に選択した。
図7B図7Bは、カプランマイヤープロットにおいて生存率を示す。
図7C図7Cは、経時的な平均腫瘍サイズの結果を示す。
図8図7Cの実験結果を、図8のコホートにおける個々のマウスについて示す。25日目に1500mm未満の腫瘍を有する個々のマウスの数についての結果を下の表に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明者らは、PVSRIPOキメラポリオウイルス構築物の有効性が、その後の化学療法剤の投与によって高められる及び/または延長される方法を開発した。その効果は相乗的である。出願人は、いずれか特定の作用機序に拘束されることを望まないが、高められた/延長された有効性は、リンパ球を枯渇させる化学療法剤の能力によるものであり得る。リンパ球枯渇は、抗原提示細胞の表面における競合を解消し、T細胞の活性を増強するサイトカインの利用可能性を高め、調節性T細胞を枯渇させ、免疫プライミング及び提示を増強し、抗原発現を増強し、かつ/または免疫排除の標的を増強することができる。
【0011】
化学療法は、好ましくは、PVSRIPOキメラポリオウイルス構築物の初期効果が観察されてからかなり後に施される。投与は、PVSRIPO送達の少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、10ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、または24ヶ月後であってもよい。化学療法は、例えば、連続的に、またはリンパ球回復を可能にするように治療の間隔を空けて周期的に施されてもよい。
【0012】
適切な化学療法薬は、リンパ球枯渇性の薬物である。これらは、シクロホスファミド、メクロレタミンまたはムスチン(HN2)(商品名Mustargen)、ウラムスチンまたはウラシルマスタード、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、及びベンダムスチンを含む、ナイトロジェンマスタード等の古典的なアルキル化剤を含む。これらはまた、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン等のニトロソウレアも含む。これらはまた、ブスルファン等のアルキルスルホネートも含む。白金系化学療法薬(白金類似体と称される)も同様に作用し、同様に使用され得る。これらの薬剤はアルキル基を有しないが、それにもかかわらずDNAに損傷を与える。それらは永久的にDNAに配位してDNA修復を妨げるため、時々「アルキル化様」であると言われる。これらは、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及び四硝酸トリプラチンを含む。さらに、プロカルバジン、アルトレタミン、トリアゼン(ダカルバジン、ミトゾロミド、及びテモゾロミド等)を含むがこれらに限定されない非古典的アルキル化剤が使用されてもよい。
【0013】
ウイルス調製物を腫瘍に直接投与するための任意の技術が使用され得る。直接投与は、腫瘍に到達するために血液血管系に依存しない。調製物は、腫瘍の表面に塗布されてもよく、腫瘍内に注射されてもよく、手術中に腫瘍部位内にまたは腫瘍部位に滴下注入されてもよく、カテーテル等を介して腫瘍内に注入されてもよい。使用され得る1つの具体的な技術は、対流増加送達である。
【0014】
長期休薬期間を設けずに、最大耐容量を大幅に下回る用量で化学療法剤を頻繁に投与することを指す、メトロノーム化学療法が用いられてもよい。例えば、テモゾロミドを用いた標準的な非メトロノームレジメンは、4週間ごとに反復される5日間連続の1日150~200mg/mからなる。メトロノームレジメンは、例えば、2または3ヶ月間の50mg/m/日の1日用量であってもよい。他の化学療法剤と同様の低用量レジメンが使用されてもよい。低用量レジメンはまた、標準的なタイミングで使用されてもよい。標準的な用量及びタイミング療法も使用され得る。
【0015】
小児腫瘍及び成人腫瘍の両方を含む、任意のヒト腫瘍を治療することができる。腫瘍は、任意の器官、例えば、脳、前立腺、乳房、肺、結腸、及び直腸に存在し得る。例えば、グリア芽細胞腫、髄芽腫、細胞腫、腺癌等を含む、種々の種類の腫瘍が治療され得る。他の腫瘍の例は、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、グレードI(未分化)星細胞腫、グレードII星細胞腫、グレードIII星細胞腫、グレードIV星細胞腫、中枢神経系の非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、膀胱癌、乳房肉腫、気管支癌、気管支肺胞癌、子宮頸癌、頭蓋咽頭腫、子宮内膜癌、子宮内膜の子宮癌、上衣芽細胞腫、上衣細胞腫、食道癌、感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、肝門部胆管癌、下咽頭癌、眼球内黒色腫、膵島腫瘍、カポジ肉腫、ランゲルハンス細胞組織球症、大細胞性未分化肺癌、喉頭癌、口唇癌、肺腺癌、悪性線維性組織球腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、内分泌新生物、鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣明細胞癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓癌、乳頭腫、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、松果体実質腫瘍、松果体芽腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、腎細胞癌、第15染色体の変化を伴う気道癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部肉腫、扁平上皮癌、扁平上皮非小細胞肺癌、扁平上皮頸部癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂癌、尿道癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、及びウィルムス腫瘍を含む。
【0016】
場合により、患者は、NECL5発現に基づいて階層化されてもよい。これは、例えば、プローブ、プライマー、または抗体を用いて、RNAまたはタンパク質レベルでアッセイすることができる。NECL5発現は、本発明のキメラポリオウイルスを用いて治療するかまたは治療しないかの決定を導くことができる。NECL5発現はまた、用量、頻度及び治療の期間を含む、治療の積極性を導くためにも用いられ得る。
【0017】
治療レジメンは、キメラポリオウイルス構築物の送達に加えて、腫瘍の外科的切除、腫瘍の外科的縮小、化学療法、生物学的療法、及び放射線療法を含んでもよい。これらのモダリティは、多くの病態における標準治療であり、患者は標準治療を否定される必要はない。キメラポリオウイルスは、標準治療の前、最中、または後に投与されてもよい。キメラポリオウイルスは、標準治療の失敗後に投与されてもよい。
【0018】
キットは、単一の分割されたまたは分割されていない容器に、キメラポリオウイルス構築物PVSRIPO及び化学療法剤のいずれかまたは両方を含み得る。両者がキット内に提供される場合、両者は別々の容器に入っていてもよいか、または単一の容器に混合して入っていてもよい。投与のための指示書が含まれてもよい。場合により、患者におけるNECL5発現を試験するための抗体がキットの構成要素である。
【0019】
出願人は、いずれか特定の作用機序に拘束されることを望まないが、複数の機序がPVSRIPOの有効性に寄与し得ると考えられる。これらは、癌細胞の溶解、免疫細胞の動員、及び癌細胞に対する特異性を含む。さらに、ウイルスが神経弱毒化される。化学療法剤による増強/延長の機序もまた多因子性であり得る。
【0020】
上記の開示は、本発明を一般的に説明している。本明細書中に開示される全ての参考文献は、参照により明示的に組み込まれる。以下の具体的な実施例を参照することにより、より完全な理解を得ることができるが、これらの実施例は、例示のみを目的として本明細書に提供されるのであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0021】
2016年2月23日現在、5×10 TCID50のPVSRIPOにより治療された20人の患者のうち、5人の患者が、脳の炎症を抑制するのに役立つベバシズマブの投薬中であるにもかかわらず、PVSRIPO注入後に疾患の進行及び臨床的衰弱が懸念される画像を呈した。腫瘍を治療し、脳の炎症を抑制することを目的として、3人の患者が、ベバシズマブの投与を継続し、メトロノーム的な毎日のテモゾロミドを50mg/m/日で開始した。2人の患者は、最初のMRIによる経過観察において画像上で有意な改善を示し、機能状態に臨床的に有意な改善を示した。3人目の患者は、画像上では若干の改善を示したが、臨床的には改善されなかったため、この患者は緩和ケアを継続することを選択し、現在は死亡している。5人の患者のうち2人は、ロムスチンをベバシズマブに追加した。どちらの患者も、最初の6週間の治療(1サイクルのロムスチン)後に有意な画像上での改善及び臨床的改善を示したが、これはロムスチンでは珍しいことである。しかし、1人の患者は、数ヶ月後にロムスチンを中止することを決定し、現在は死亡している。5人の患者のうち3人が生存しており、2人はメトロノーム的な毎日のテモゾロミド及びベバシズマブ、1人はロムスチン及びベバシズマブを投薬中であり、治療を継続しており、経過良好である。
【0022】
1.0×1010 TCID50のPVSRIPOにより治療された1人の患者は、カテーテル除去時の脳内出血のために用量制限毒性を経験した。出血は排出されたが、かなりの量のPVSRIPOも排出された可能性がある。PVSRIPO注入後7ヶ月目に、この患者は、画像上で疾患の進行を示し、生検により再発性グリア芽細胞腫(WHOグレードIV)であることが確認された。その後、患者はロムスチンを開始し、1サイクルのロムスチン後に有意な臨床的奏効及び画像上の奏効を示した。この患者は、10ヶ月前に9サイクルのロムスチンを完了し、PVSRIPO注入後32ヶ月を過ぎても無病状態(完全な腫瘍消失)を維持している。出血を排出する必要性を考慮して、該患者が計画用量未満のPVSRIPO(1.0×1010 TCID50)を投与されたこと、また、反復性脳出血の懸念を考慮して、該患者がロムスチンと併用してベバシズマブを投与されなかったと考えられることに留意されたい。
【0023】
参考文献
引用された各参考文献の開示は、明示的に本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8