(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】アルデヒド又はケトンを放出させる方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/24 20060101AFI20221012BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221012BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221012BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221012BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20221012BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20221012BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221012BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20221012BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20221012BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20221012BHJP
C07C 69/78 20060101ALI20221012BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20221012BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20221012BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C12P7/24
A61K8/37
A61Q19/00
A61Q5/00
A61Q13/00 100
A61Q15/00
A61Q1/00
A61Q19/10
A61Q5/02
A61Q5/12
C07C69/78 CSP
C11B9/00 J
C11B9/00 L
C11B9/00 K
C11B9/00 M
C11B9/00 T
C11D3/50
D06M13/224
(21)【出願番号】P 2018562468
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2018001676
(87)【国際公開番号】W WO2018135647
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2017007930
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017058118
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 伸也
(72)【発明者】
【氏名】畠山 忠英
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】村井 正人
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-160792(JP,A)
【文献】特開平11-147852(JP,A)
【文献】特開平02-223524(JP,A)
【文献】特表2013-529642(JP,A)
【文献】中国特許第101407490(CN,B)
【文献】特表2007-522154(JP,A)
【文献】Angew Chem Int Ed Engl, 2007 JUL 2, vol. 46, no. 31, pp. 5836-5863
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物を香料前駆体として使用する方法であって、一般式(1)で表される化合物に加水分解酵素を作用させて一般式(2)で表されるアルデヒド又はケトンを放出させる方法。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R
1とR
2又はR
1とR
3とで環を形成してもよい。Arはフェニル基を表す。)
【化2】
(式(2)中、R
1、R
2及びR
3は、上記の一般式(1)と同じ定義である。また、R
1とR
2又はR
1とR
3とで環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記加水分解酵素がリパーゼである、請求項1に記載のアルデヒド又はケトンを放出させる方法。
【請求項3】
R
1
が、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルケニル基である、請求項1又は請求項2に記載のアルデヒド又はケトンを放出させる方法。
【請求項4】
R
1、R
2及びR
3が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基である、請求項1又は請求項2に記載のアルデヒド又はケトンを放出させる方法。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物に微生物を作用させて、消臭成分として一般式(2)で表されるアルデヒド又はケトンを放出させ、微生物に起因する臭気を緩和する消臭方法。
【化3】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R
1とR
2又はR
1とR
3とで環を形成してもよい。Arはフェニル基を表す。)
【化4】
(式(2)中、R
1、R
2及びR
3は、上記の一般式(1)と同じ定義である。また、R
1とR
2又はR
1とR
3とで環を形成してもよい。)
【請求項6】
前記微生物がスタフィロコッカス属細菌(Staphylococcus)、コリネバクテリウム属細菌(Corynebacterium)、プロピオニバクテリウム属細菌(Propionibacterium)、シュードモナス属細菌(Pseudomonas)、バチルス属細菌(Bacillus)、モラクセラ属細菌(Moraxella)及びマラセチア属真菌(Malassezia)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項
5に記載の消臭方法。
【請求項7】
R
1
が、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルケニル基である、請求項5又は請求項6に記載の消臭方法。
【請求項8】
R
1、R
2及びR
3が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基である、請求項
5は請求項
6に記載の消臭方法。
【請求項9】
式(3)で表される化合物。
【化5】
(式(3)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
【請求項10】
式(4)で表される化合物。
【化6】
(式(4)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
【請求項11】
一般式(1)で表される化合物を含む香料組成物。
【化7】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R
1とR
2又はR
1とR
3とで環を形成してもよい。Arはフェニル基を表す。)
【請求項12】
R
1
が、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルケニル基である、請求項11に記載の香料組成物。
【請求項13】
R
1、R
2及びR
3が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基である、請求項
11に記載の香料組成物。
【請求項14】
式(3)で表される化合物を含む香料組成物。
【化8】
(式(3)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
【請求項15】
式(4)で表される化合物を含む香料組成物。
【化9】
(式(4)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
【請求項16】
一般式(1)で表される化合物を含む芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【化10】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R
1とR
2又はR
1とR
3とで環を形成してもよい。Arはフェニル基を表す。)
【請求項17】
R
1
が、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルケニル基である、請求項16に記載の芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【請求項18】
R
1、R
2及びR
3が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基である、請求項
16に記載の芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【請求項19】
式(3)で表される化合物を含む芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【化11】
(式(3)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
【請求項20】
式(4)で表される化合物を含む芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【化12】
(式(4)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
【請求項21】
請求項
11~15のいずれか1項に記載の香料組成物を含む芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解酵素の作用によりアルデヒド又はケトンを放出する香料前駆体及び残香持続技術並びに微生物の作用により消臭成分としてアルデヒド又はケトンを放出し、微生物に起因する臭気を緩和する消臭技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の香りに対する関心の高まりとともに、製品使用時の香りに対する要望も多岐にわたっている。香りの持続性向上ニーズに対しては、一般的に揮発性の低いラストノート成分を多く配合した調合香料や香料カプセル等が使用されている。
【0003】
また、香りの持続性強化剤として、例えば、p-メンタン-3,8-ジオール(特許文献1)や3-(メントキシ)-1,2-プロパンジオール(特許文献2)等の保留剤が提案されている。
【0004】
一方で、近年、清潔志向の高まりから、「生活空間におけるニオイ」に敏感になっている人が多くなっており、それに伴い、これまで生活の中で意識されなかったようなニオイについても、悪臭の対象になる場合が多くなっている。その中でも、人体や洗濯物に関連した悪臭は主に微生物に起因していることが知られている。これらの悪臭に対する消臭方法としては、抗菌剤を用いて微生物の繁殖を抑える方法(特許文献3)や香料を用いて感覚的に不快感を緩和する方法(特許文献4~5)などが使用されている。
【0005】
また、香料は不快な臭いを軽減するだけではなく、悪臭を快適なにおいに変えることができる点で有用性が高い。アルデヒド類やケトン類などの香料成分は芳香性を有しており、感覚的消臭効果が期待できる。香料成分の中でも特にアルデヒド類は官能的な消臭効果だけではなく、さらに、化学的消臭効果も合わせ持つため(特許文献6)、より高い消臭効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開平4-337395号公報
【文献】日本国特開2002-88391号公報
【文献】日本国特開2009-46442号公報
【文献】日本国特開2004-315502号公報
【文献】日本国特開平11-286428号公報
【文献】日本国特開2001-303090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、製品中に調合香料を使用した場合、例えば、洗浄剤を用い衣類や毛髪を洗浄した後は、ほとんどの香料成分が界面活性剤等の洗浄成分とともに水中へ洗い流されてしまうため、衣類や毛髪へ残留する香料成分は極微量にすぎない。
【0008】
また、乾燥工程において多くの香料成分が揮発してしまうため、残香強度が小さくなってしまう。さらに、残香成分も揮発性の極端に低い香料成分に偏ってしまうため、嗜好性が悪くなりがちで、不快に感じられる場合もある。
【0009】
香料カプセルを使用した場合は、残香を高められる場合もあるが、製品中での安定化が難しく応用分野に制限があり、物理的にカプセルを破壊しなければ香りがしないため、残香を必要としないときに香りを発する場合や残香を求めている時に香りがしない場合もあり、香りに対するニーズとカプセルからの発香するタイミングがずれるという問題がある。
【0010】
また、香りの持続強化剤として保留剤を調合香料とともに使用することにより、やや残香性が向上する場合もあるが、十分満足できる残香持続性は得られていない。
さらに、依然として残香成分が低揮発性成分に偏りがあるため、残香の香質改善にはつながっておらず、よりフレッシュ感のある香気が持続する残香持続技術が求められている。
【0011】
一方、デオドラント剤などのパーソナルケア製品に抗菌剤を使用した場合、悪臭の原因になっている細菌だけでなく、皮膚に対して有用な細菌も同時に殺菌してしまい、皮膚フローラの均衡を壊してしまう可能性がある。皮膚常在菌はpHを弱酸性に保ち皮膚感染症を防ぐ役割も果たしており、皮膚の正常性を維持するためには、抗菌剤の多用は必ずしも望ましくない。
【0012】
また、抗菌剤を含有する洗浄剤を用い衣類や毛髪を洗浄した後は、ほとんどの抗菌成分が界面活性剤等の洗浄成分とともに水中へ洗い流されてしまうため、衣類や毛髪へ残留する抗菌成分は極微量にすぎない。不快臭を感じない程度まで悪臭原因菌を殺菌するためには、多量な抗菌剤や殺菌効果の高い抗菌剤の使用が必要になるため、人体や環境への悪影響も懸念されると同時にコストが高くなる場合もある。
【0013】
さらに、香料を感覚的消臭剤として使用した場合、短期的には有効だが、時間の経過に伴い、香料成分が揮発することにより、香り強度が弱くなってしまうため消臭効果が持続しない。さらに、微生物に起因する悪臭は、微生物の繁殖が進むにつれて臭気強度及び不快感が高まるため、消費者が本当に消臭効果を必要としている時に、香料の残香強度が弱いため十分な消臭効果をえることができない場合がある。消臭持続性を高める目的で残香性を高めることもできるが、香料組成が揮発性の極端に低い香料成分に偏ってしまうため、嗜好性が悪くなりがちで、不快に感じられる場合もある。
【0014】
また、香り強度の強い香料を使用することや、賦香率を極端に高めることも考えられるが、例えば、デオドラント製品使用開始時、身体用洗浄剤使用時、衣類乾燥時などに香料のにおいが強すぎてしまい、気分を害する場合もある。
【0015】
したがって、微生物に起因する悪臭に対しては、微生物が十分繁殖し、悪臭が発生する時期と同じタイミングで消臭効果が発揮できる消臭技術が求められている。
【0016】
本発明は、上記従来の実情を鑑みてなされたものであって、フレッシュ感のある残香を持続させることができる技術の開発を課題とする。
また、本発明は、微生物に起因する悪臭に対しては、微生物が十分繁殖し、悪臭が発生する時期と同じタイミングで消臭効果が発揮できる消臭方法及び消臭剤の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造の化合物が、加水分解酵素の作用で芳香性のアルデヒド又はケトンを放出することにより、フレッシュ感のある残香持続性を高めることを見出した。
【0018】
また、本発明者らは、特定構造の化合物が、微生物の作用でアルデヒド又はケトンを放出することにより、微生物に起因する臭気を緩和することを見出した。
【0019】
すなわち、本発明は以下の[1]~[17]に関するものである。
[1]一般式(1)で表される化合物を香料前駆体として使用する方法であって、一般式(1)で表される化合物に加水分解酵素を作用させて一般式(2)で表されるアルデヒド又はケトンを放出させる方法。
【0020】
【0021】
(式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R1とR2又はR1とR3とで環を形成してもよい。Arは置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【0022】
【0023】
(式(2)中、R1、R2及びR3は、上記の一般式(1)と同じ定義である。また、R1とR2又はR1とR3とで環を形成してもよい。)
[2]前記加水分解酵素がリパーゼである、[1]に記載のアルデヒド又はケトンを放出させる方法。
[3]R1、R2及びR3が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基である、[1]又は[2]に記載のアルデヒド又はケトンを放出させる方法。
[4]一般式(1)で表される化合物に微生物を作用させて、消臭成分として一般式(2)で表されるアルデヒド又はケトンを放出させ、微生物に起因する臭気を緩和する消臭方法。
【0024】
【0025】
(式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R1とR2又はR1とR3とで環を形成してもよい。Arは置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【0026】
【0027】
(式(2)中、R1、R2及びR3は、上記の一般式(1)と同じ定義である。また、R1とR2又はR1とR3とで環を形成してもよい。)
[5]前記微生物がスタフィロコッカス属細菌(Staphylococcus)、コリネバクテリウム属細菌(Corynebacterium)、プロピオニバクテリウム属細菌(Propionibacterium)、シュードモナス属細菌(Pseudomonas)、バチルス属細菌(Bacillus)、モラクセラ属細菌(Moraxella)及びマラセチア属真菌(Malassezia)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[4]に記載の消臭方法。
[6]R1、R2及びR3が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基である、[4]又は[5]に記載の消臭方法。
[7]式(3)で表される化合物。
【0028】
【0029】
(式(3)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
[8]式(4)で表される化合物。
【0030】
【0031】
(式(4)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
[9]一般式(1)で表される化合物を含む香料組成物。
【0032】
【0033】
(式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R1とR2又はR1とR3とで環を形成してもよい。Arは置換基を有してもよいアリール基を表す。)
[10]R1、R2及びR3が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基である、[9]に記載の香料組成物。
[11]式(3)で表される化合物を含む香料組成物。
【0034】
【0035】
(式(3)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
[12]式(4)で表される化合物を含む香料組成物。
【0036】
【0037】
(式(4)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
[13]一般式(1)で表される化合物を含む芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【0038】
【0039】
(式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R1とR2又はR1とR3とで環を形成してもよい。Arは置換基を有してもよいアリール基を表す。)
[14]R1、R2及びR3が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基である、[13]に記載の芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
[15]式(3)で表される化合物を含む芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【0040】
【0041】
(式(3)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
[16]式(4)で表される化合物を含む芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【0042】
【0043】
(式(4)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。)
[17][9]~[12]のいずれか1つに記載の香料組成物を含む芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、洗浄剤又は消臭剤。
【発明の効果】
【0044】
本発明では、一般式(1)で表される化合物は、加水分解酵素の作用で芳香性を有するアルデヒド又はケトンを放出し、フレッシュ感のある残香持続性を高めることができる。
【0045】
また、一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、加水分解酵素を作用させたときに芳香を発し、衣類、毛髪あるいは皮膚上でフレッシュ感のある残香が持続する香料組成物、芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、又は洗浄剤を提供することができる。
【0046】
さらに、本発明では、一般式(1)で表される化合物は、微生物の作用により、消臭効果を有する一般式(2)で表されるアルデヒド又はケトンを放出させ、微生物に起因する臭気を緩和することができる。
【0047】
また、一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、微生物を作用させたときに消臭成分を発し、微生物に起因する不快臭を緩和できる消臭剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、一般式(1)で表される化合物を香料前駆体として用い、加水分解酵素を作用させることにより、香気成分である一般式(2)で表される化合物であるアルデヒド又はケトンを発生させることができる。
【0049】
また、本発明では、一般式(1)で表される化合物に、微生物を作用させることにより、一般式(2)で表される消臭成分であるアルデヒド又はケトンを発生させ、微生物に起因する臭気を緩和し、消臭することができる。
【0050】
[一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物について説明する。
一般式(1)で表される化合物:
【0051】
【0052】
式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。また、R1とR2又はR1とR3とで環を形成してもよい。Arは置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0053】
一般式(2)で表される化合物:
【0054】
【0055】
式(2)中、R1、R2及びR3は、上記の一般式(1)と同じ定義である。また、R1とR2又はR1とR3とで環を形成してもよい。
【0056】
(R1、R2及びR3で表される基)
R1、R2及びR3で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びアラルキル基について説明する。これらの基はいずれも置換基を有していてもよい。
【0057】
アルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば、炭素数1~30、好ましくは炭素数1~13のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、ヘプチル基、オクチル基、1,5-ジメチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、1,5,9-トリメチルデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基及びドコシル基等が挙げられる。
【0058】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0059】
アルケニル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば、炭素数2~20、好ましくは炭素数2~13のアルケニル基、ならびに環状の、例えば、炭素数3~20、好ましくは炭素数5~10のアルケニル基が挙げられる。
【0060】
具体的なアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4,8-ジメチル-3,7-ノナジエニル基、1-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基、1,5-ジメチル-4-ヘキセニル基、1,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエニル基、1,5,9-トリメチル-4,8-デカジエニル基等が挙げられる。
【0061】
アリール基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0062】
アラルキル基としては、例えば、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基等が挙げられる。
【0063】
水素原子以外のR1~R3各基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、及びハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
【0064】
R1~R3の置換基としてのアルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、炭素数2~20、好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~6のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、プロペニル基、1-ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。
【0065】
R1~R3の置換基としてのアルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、炭素数2~15、好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~6のアルキニル基が挙げられ、具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基及びヘキシニル基等が挙げられる。
【0066】
R1~R3の置換基としてのアリール基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基及びフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0067】
R1~R3の置換基としての脂肪族複素環基としては、例えば、炭素数2~14であり、かつ、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個、好ましくは1~3個含んでいる基が挙げられる。好ましくは、5又は6員の単環の脂肪族複素環基、及び多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。
【0068】
脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2-オキソ-1-ピロリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基及びテトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
【0069】
R1~R3の置換基としての芳香族複素環基としては、例えば、炭素数2~15、好ましくは炭素数3~11であり、かつ、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個、好ましくは1~3個含んでいる基が挙げられる。好ましくは、5又は6員の単環の芳香族複素環基、及び多環又は縮合環の芳香族複素環基が挙げられる。
【0070】
芳香族複素環基の具体例としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリニル基、イミダゾリル基、オキサゾリニル基、チアゾリニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基及びベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0071】
R1~R3の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、2-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシロキシ基、2-メチルペンチロキシ基、3-メチルペンチロキシ基、4-メチルペンチロキシ基及び5-メチルペンチロキシ基等が挙げられる。
【0072】
R1~R3の置換基としてのアルキレンジオキシ基としては、例えば、炭素数1~3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的には、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基及びイソプロピリデンジオキシ基等が挙げられる。
【0073】
R1~R3の置換基としてのアリールオキシ基としては、例えば、炭素数6~14のアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、フェノキシ基、ナフチロキシ基及びアンスリロキシ基等が挙げられる。
【0074】
R1~R3の置換基としてのアラルキルオキシ基としては、例えば、炭素数7~12のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的には、ベンジルオキシ基、2-フェニルエトキシ基、1-フェニルプロポキシ基、2-フェニルプロポキシ基、3-フェニルプロポキシ基、1-フェニルブトキシ基、2-フェニルブトキシ基、3-フェニルブトキシ基、4-フェニルブトキシ基、1-フェニルペンチロキシ基、2-フェニルペンチロキシ基、3-フェニルペンチロキシ基、4-フェニルペンチロキシ基、5-フェニルペンチロキシ基、1-フェニルヘキシロキシ基、2-フェニルヘキシロキシ基、3-フェニルヘキシロキシ基、4-フェニルヘキシロキシ基、5-フェニルヘキシロキシ基及び6-フェニルヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0075】
R1~R3の置換基としてのヘテロアリールオキシ基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個、好ましくは1~3個含んでいる、炭素数2~14のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、2-ピリジルオキシ基、2-ピラジルオキシ基、2-ピリミジルオキシ基及び2-キノリルオキシ基等が挙げられる。
【0076】
R1~R3の置換基としての置換アミノ基としては、例えば、N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、N-シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基;N-フェニルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基、N-ナフチルアミノ基、N-ナフチル-N-フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基;N-ベンジルアミノ基、N,N-ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基等が挙げられる。
【0077】
R1~R3の置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、例えば、炭素数1~30のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、2-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチロキシカルボニル基、2-メチルブトキシカルボニル基、3-メチルブトキシカルボニル基、2,2-ジメチルプロポキシカルボニル基、n-ヘキシロキシカルボニル基、2-メチルペンチロキシカルボニル基、3-メチルペンチロキシカルボニル基、4-メチルペンチロキシカルボニル基、5-メチルペンチロキシカルボニル基、シクロペンチロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ジシクロペンチルメトキシカルボニル基、ジシクロヘキシルメトキシカルボニル基、トリシクロペンチルメトキシカルボニル基、トリシクロヘキシルメトキシカルボニル基、フェニルメトキシカルボニル基、ジフェニルメトキシカルボニル基及びトリフェニルメトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0078】
R1~R3の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0079】
R1~R3の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、例えば、炭素数1~10のパーハロゲノアルキル基が好ましく、具体的には、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ウンデカフロロペンチル基、ヘプタデカフロロオクチル基、ウンデカフロロシクロヘキシル基、ジクロロメチル基等が挙げられる。
【0080】
一般式(1)で表される化合物において、R1とR2又はR1とR3とで形成する環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、インダン環、テトラリン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、インデン環、ジヒドロナフタレン環、オクタヒドロナフタレン環、デカヒドロナフタレン環等が挙げられる。これらの環は、前述したようなアルキル基等で置換されていてもよい。
【0081】
一般式(2)で表される化合物において、R1とR2又はR1とR3とで形成する環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、インダン環、テトラリン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、インデン環、ジヒドロナフタレン環、オクタヒドロナフタレン環、デカヒドロナフタレン環等が挙げられる。これらの環は、前述したようなアルキル基等で置換されていてもよい。
【0082】
R1、R2及びR3は、上記した中でも、香気及び消臭効果の観点から、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基が好ましい。
【0083】
置換基を有してもよい炭素数1~13のアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1~13のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、ヘプチル基、オクチル基、1,5-ジメチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、1,5,9-トリメチルデシル基、4-メチルペンチル基及び1,5-ジメチルヘキシル基等が挙げられる。
【0084】
置換基を有してもよい炭素数2~13のアルケニル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数2~13のアルケニル基及び環状の炭素数3~13のアルケニル基が好ましく、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、4,8-ジメチル-3,7-ノナジエニル基、1-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエニル基、1,5-ジメチル-4-ヘキセニル基及び1,5,9-トリメチル-4,8-デカジエニル基等が挙げられる。
【0085】
R1、R2及びR3のより好ましい例としては、香気及び消臭効果の観点から、R1及びR2が炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、又は水素原子、R3が水素原子である。
【0086】
炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1~8のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、ヘプチル基、オクチル基、1,5-ジメチルヘキシル基、4-メチルペンチル基及び1,5-ジメチルヘキシル基等が挙げられる。
【0087】
炭素数2~8のアルケニル基としては、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、1-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエニル基、及び1,5-ジメチル-4-ヘキセニル基等が挙げられる。
【0088】
R1とR2又はR1とR3とで環を形成する場合、香気及び消臭効果の観点から、シクロへキセン環及びシクロヘキサン環が好ましい。
シクロヘキセン環及びシクロヘキサン環に置換する置換基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。置換は、1置換でもよいし、複数置換でもよい。
【0089】
炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びイソプロピル基等が挙げられる。
【0090】
(Arで表される基)
Arで表される置換基を有してもよいアリール基について説明する。
アリール基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
これらの中でも、発香性能及び消臭効果の観点から、フェニル基が好ましい。
【0091】
アリール基に置換してもよい置換基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、ヘプチル基、オクチル基、1,5-ジメチルヘキシル基、4-メチルペンチル基及び1,5-ジメチルヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0092】
(一般式(1)で表される化合物の具体例)
本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。なお、下図の化合物において、波線はE体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物であることを示す。
【0093】
【0094】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、特に、香気、発香性能及び消臭効果の観点から、以下の式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物が好ましい。
【0095】
【0096】
式(3)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。
【0097】
【0098】
式(4)中、波線は、E体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物を示す。
【0099】
(一般式(1)で表される化合物の合成方法)
本発明で使用する一般式(1)で表される化合物は、既知の方法により容易に合成することできる。
一般式(1)で表される化合物の内、以下の式(3)で表される3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエニルベンゾエートの製造方法について説明する。
【0100】
式(3)で表される化合物は、例えば、Helv.Chim.Acta.1988,71,1000-1004に記載されている方法に従って合成することができる。当該方法は、以下のScheme1で表すことができる。
【0101】
【0102】
式(3)で表される化合物の合成は、シトロネラール(式(5)の化合物)、安息香酸無水物、トリエチルアミン及び安息香酸塩の混合溶液を、100~150℃の範囲で反応させ調製することができる。使用する安息香酸塩としては、安息香酸カリウム又は安息香酸ナトリウムが好ましい。
【0103】
上記のようにして得られた式(3)の化合物は、例えば、抽出、蒸留、再結晶、各種クロマトグラフィー等の通常用いられる操作により、単離精製を行うことができる。
なお、式(3)の化合物において、波線はE体及びZ体の幾何異性体のいずれか一方又はそれらの混合物であることを示す。
【0104】
(香気成分)
本発明の一般式(1)で表される化合物は、香料前駆体として使用することができる。一般式(1)で表される化合物は加水分解酵素を作用させることにより、香気成分である一般式(2)で表されるアルデヒド又はケトンを放出させることができる。
【0105】
加水分解酵素としては、リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、グリコシダーゼ等が挙げられるが、これらの中でも、加水分解速度の観点から、リパーゼが特に好ましい。
リパーゼは脂肪を分解する酵素であれば天然に存在するものでも製剤された市販品でも特に限定されない。
【0106】
香気成分又は後述の消臭成分である一般式(2)で表されるアルデヒドとしては、炭素数6~13の直鎖及び分岐脂肪族アルデヒド、トランス-2-ヘキセナール、シス-3-ヘキセナール、2,6-ノナジエナール、シス-4-デセナール、トランス-4-デセナール、ウンデシレンアルデヒド、トランス-2-ドデセナール、トリメチルウンデセナール、2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、ペリラアルデヒド、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、2,4,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、5-メトキシ-オクタヒドロ-4,7-メンタノ-1H-インデン-2-カルボキシアルデヒド、4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、4-(4-ヒドロキシ-4-メチル-ペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、1-メチル-4-(4-メチル-ペンチル)-3-シクロヘキセン-カルボキシアルデヒド、4-(トリシクロ[5.2.1.02,6]デシリデン-8)-ブテナール、2-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-ブタナール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、2-フェニルプロパナール、アニスアルデヒド、p-メチルフェニルアセトアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、3-(p-tert-ブチルフェニル)-プロピルアルデヒド、p-エチル-2,2-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、2-メチル-3-(p-メトキシフェニル)-プロピルアルデヒド、4-tert-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、ヘリオトロピン、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシ-フェニル)-プロパナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン、ファルネサール、ジヒドロファルネサール、3,5,5-トリメチルヘキサナール、オクタナール等が挙げられる。
【0107】
香気成分又は後述の消臭成分である一般式(2)で表されるケトンとしては、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メチルヘプテノン、コアボン、カンファー、カルボン、メントン、イソメントン、プレゴン、ピペリトン、フェンチョン、ゲラニルアセトン、セドリルメチルケトン、ヌートカトン、α-イオノン、β-イオノン、α-メチルイオノン、β-メチルイオノン、α-イソメチルイオノン、β-イソメチルイオノン、アリルイオノン、α-イロン、β-イロン、γ-イロン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、ダマセノン、α-ダイナスコン、β-ダイナスコン、マルトール、エチルマルトール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフラノン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-5H-フラン-2-オン、p-tert-ブチルシクロヘキサノン、アミルシクロペンタノン、ヘプチルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、シス-ジャスモン、7-メチル-オクタヒドロ-1,4-メタノナフタレン-6(2H)-オン、4-シクロヘキシル-4-メチル-2-ペンタノン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5―テトラメチルシクロヘキサノン、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、アセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、7-メチル-3,4-ジヒドロ-(2H)-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン、ラズベリーケトン、アニシルアセトン、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-ブタノン、メチルナフチルケトン、4-フェニル-4-メチル-2-ペンタノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0108】
(消臭成分)
本発明の一般式(1)で表される化合物は微生物を作用させることにより、消臭成分として一般式(2)で表されるアルデヒド又はケトンを放出させることができる。
【0109】
本発明の一般式(1)で表される化合物から、消臭成分として一般式(2)で表されるアルデヒド又はケトンを放出させることができる微生物としては、スタフィロコッカス属細菌(Staphylococcus)、コリネバクテリウム属細菌(Corynebacterium)、プロピオニバクテリウム属細菌(Propionibacterium)、シュードモナス属細菌(Pseudomonas)、バチルス属細菌(Bacillus)、モラクセラ属細菌(Moraxella)、マラセチア属真菌(Malassezia)等が挙げられる。
【0110】
具体的には、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、コリネバクテリウム・キセロシス(Corynebacterium xerosis)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、モラクセラ・オスロエンシス(Moraxella osloensis)、マラセチア・ファーファー(Malassezia furfur)等が挙げられる。
【0111】
[香料組成物]
本発明の一般式(1)で表される化合物は香料組成物に配合することができる。一般式(1)で表される化合物は単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができるが、公知の香料成分と適宜組み合わせて使用することもできる。
【0112】
公知の香料成分としては、例えば、レモンオイル、オレンジオイル、ライムオイル、ベルガモットオイル、ラバンジンオイル、ラベンダーオイル、ゼラニウムオイル、ローズオイル及びサンダルウッドオイル等の天然精油、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、p-サイメン及びツヨン等の炭化水素類、オクタノール及びp-tert-ブチルシクロヘキサノール等の脂肪族アルコール類、メントール、シトロネロール及びゲラニオール等のテルペン系アルコール類、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール等の芳香族アルコール類、脂肪族アルデヒド類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルデヒド類、アセタール類、鎖式ケトン類、ダマスコン、β-ヨノン(イオノン)及びメチルヨノン等の環式ケトン類、カルボン、メントン、イソメントン及びカンファー等のテルペン系ケトン類、アセトフェノン及びラズベリーケトン等の芳香族ケトン類、ジベンジルエーテル等のエーテル類、リナロールオキサイド及びローズオキサイド等のオキサイド類、シクロペンタデカノリド及びシクロヘキサデカノリド等のムスク類、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン及びクマリン等のラクトン類、酢酸エステル及びプロピオン酸エステル等の脂肪族エステル類、安息香酸エステル及びフェニル酢酸エステル等の芳香族エステル類等が挙げられる。
【0113】
本発明の香料組成物には、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、トリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート、グリセリン、トリアセチン、ベンジルアルコール、パラフィン、イソパラフィン、ハーコリン等のロジンエステル誘導体、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチルカルビトール(ジエチレングリコ-ルモノエチルエーテル)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレンングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ピネン重合体等のテルペン樹脂、環状シリコーン等のシリコーン類及び水等の溶媒や保留剤を用いてもよい。
【0114】
また、必要に応じて、高級アルコール、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、可溶化剤、安定化剤、冷感剤、防腐剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、殺虫成分、色素等の公知成分をさらに混合させてもよい。
【0115】
本発明の一般式(1)で表される化合物の香料組成物への配合量は、厳密に制限されるものではなく、その香料組成物の用途により種々変えることができる。本発明の一般式(1)で表される化合物の香料組成物への配合量は、0.1~95.0質量%であることが好ましく、0.5~80.0質量%であることがより好ましい。
【0116】
[芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、又は洗浄剤]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、単独あるいは2種類以上組み合わせて芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、又は洗浄剤等の製品に使用することができる。
【0117】
さらに、これらの芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品又は洗浄剤等の製品に、製品自体から発生する香り、製品使用時の香り、及び衣類、毛髪あるいは皮膚からの残香をさらに好適なものとするために、本発明の一般式(1)で表される化合物以外に、調合香料;公知のコアシェル型、スターチや加工デンプンを使用したマトリックス型等の粉末香料あるいは香りカプセル;香料をシリカゲルやケイ酸カルシウム等の無機多孔物質やセルロース類等の有機多孔物質に含浸させた香り含浸体;α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン又は高度分岐環状デキストリン等に香料を包接させた香り包接体;香料成分を放出することができるケイ酸エステル化合物、脂肪酸エステル化合物、アセタール化合物、ヘミアセタール化合物、シッフベース化合物、ヘミアミナール化合物もしくはヒドラゾン化合物等の公知の香料前駆体・プロフレグランス・香りプレカーサー・プロパフューム等を組み合わせて適宜配合させてもよい。
【0118】
芳香製品としては、例えば、香水、コロン、液体芳香剤、ゲル状芳香剤、粉末状芳香剤、含浸芳香剤、ミスト状芳香剤、エアゾール状芳香剤、熱蒸散式芳香剤、線香、ローソク等が挙げられる。
【0119】
衣類用製品としては、例えば、衣類用ミスト、衣類用スプレー、衣類用洗剤、衣類用柔軟剤等が挙げられる。
【0120】
頭髪用製品としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアトニック、ヘアスタイリング剤、染毛剤、パーマ剤、育毛剤、ヘアコロン等が挙げられる。
【0121】
化粧品としては、例えば、化粧水、乳液、クリーム、石鹸、液体石鹸、洗顔料、日焼け止め、制汗剤、入浴剤、口紅、ファンデーション等が挙げられる。
【0122】
洗浄剤としては、例えば、トイレ用洗浄剤、トイレ便器用洗浄剤、ガラス用洗浄剤、台所用洗剤、洗濯機用洗浄剤、排水口洗浄剤、風呂用洗浄剤等が挙げられる。
【0123】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、加水分解酵素の作用により香気成分を放出するため、本発明の一般式(1)で表される化合物を配合した製品と加水分解酵素を配合した製品とを組み合わせて使用した場合に特に有用である。
組み合わせて使用する方法は特に限定されないが、衣類用製品同士、頭髪用製品同士、化粧品同士を組み合わせて使用する方法が挙げられる。
【0124】
衣類用製品同士の組み合わせとしては、例えば、(A)リパーゼを配合した衣類用洗剤と本発明の一般式(1)で表される化合物を配合した衣類用ミスト、衣類用スプレーあるいは衣類用柔軟剤等とを組み合わせて使用する方法や、(B)本発明の一般式(1)で表される化合物を配合した衣類用洗剤とリパーゼを配合した衣類用ミスト、衣類用スプレーあるいは衣類用柔軟剤等とを組み合わせて使用する方法が挙げられる。
【0125】
頭髪用製品同士の組み合わせとしては、例えば、(A)リパーゼを配合したシャンプーと本発明の一般式(1)で表される化合物を配合したリンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアスタイリング剤、育毛剤あるいはヘアコロン等とを組み合わせて使用する方法や、(B)本発明の一般式(1)で表される化合物を配合したシャンプーとリパーゼを配合したリンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアスタイリング剤、育毛剤あるいはヘアコロン等とを組み合わせて使用する方法が挙げられる。
【0126】
本発明の一般式(1)で表される化合物の各製品中への配合量は、厳密に制限されるものではなく、その用途により種々変えることができる。本発明の一般式(1)で表される化合物の各製品中への配合量は、0.0001~10質量%であることが好ましく、0.001~5質量%であることがより好ましい。
【0127】
[消臭剤]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、単独もしくは2種類以上組み合わせて消臭剤に使用することができる。
本発明の消臭剤には、任意に、洗浄剤、抗菌剤、防黴剤、消臭剤、天然精油、香料、芳香素材、冷感剤、温感剤、防錆剤、消泡剤、pH調整剤、水、溶剤、噴射剤、界面活性剤、殺虫剤、忌避剤、防虫剤、撥水剤、分解酵素、帯電防止剤、色素、紫外線吸収剤、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、増粘剤、ゲル化剤、吸水性樹脂、活性炭、シリカ、多孔性物質、樹脂、紙、フェルト、高級アルコール、無機塩等から選ばれるそれぞれの1種又は2種以上の公知の成分を配合し製剤化して用いることができる。
【0128】
例えば、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミン、アルキルポリグリコシド、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、加水分解コラーゲンペプチド塩、アシルメチルタウリン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アルキル硫酸塩、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアミン塩、アルキルアミドプロピルアミノオキシド、アルキルベタイン、酢酸ベタイン、脂肪酸石鹸等の洗浄剤;4-クロロ-3,5-キシレノール、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヒノキチオール、フェノール系化合物、ポリフェノール、カテキン、タンニン、これらを含有する天然物、これらの誘導体等を含有する天然物、2-(4'-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、トリクロサン、銀イオン、安定化二酸化塩素等の抗菌剤、防黴剤;ラウリルメタアクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチン酸アセトフェノン、グリオキザール、アビエチン酸、フラボノイド、ポリフェノール、植物エキス、両性界面活性剤、リシノール酸亜鉛等の消臭剤;レモンオイル、オレンジオイル、ライムオイル、ベルガモットオイル、ラバンジンオイル、ラベンダーオイル、ゼラニウムオイル、ローズオイル及びサンダルウッドオイル等の天然精油;α-ピネン、β-ピネン、リモネン、p-サイメン及びツヨン等の炭化水素類、オクタノール及びp-tert-ブチルシクロヘキサノール等の脂肪族アルコール類、メントール、シトロネロール及びゲラニオール等のテルペン系アルコール類、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール等の芳香族アルコール類、脂肪族アルデヒド類、テルペン系アルデヒド類、芳香族アルデヒド類、アセタール類、鎖式ケトン類、ダマスコン、β-ヨノン(イオノン)及びメチルヨノン等の環式ケトン類、カルボン、メントン、イソメントン及びカンファー等のテルペン系ケトン類、アセトフェノン及びラズベリーケトン等の芳香族ケトン類、ジベンジルエーテル等のエーテル類、リナロールオキサイド及びローズオキサイド等のオキサイド類、シクロペンタデカノリド及びシクロヘキサデカノリド等のムスク類、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン及びクマリン等のラクトン類、酢酸エステル及びプロピオン酸エステル等の脂肪族エステル類、安息香酸エステル及びフェニル酢酸エステル等の芳香族エステル類等の香料;前記天然精油及び香料により調製した調合香料;公知のコアシェル型、スターチや加工デンプンを使用したマトリックス型等の粉末香料あるいは香りカプセル;香料をシリカゲルやケイ酸カルシウム等の無機多孔物質やセルロース類等の有機多孔物質に含浸させた香り含浸体;α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン又は高度分岐環状デキストリン等に香料を包接させた香り包接体;香料成分を放出することができるケイ酸エステル化合物、脂肪酸エステル化合物、アセタール化合物、ヘミアセタール化合物、シッフベース化合物、ヘミアミナール化合物もしくはヒドラゾン化合物等の公知の香料前駆体、プロフレグランス、香りプレカーサー、プロパフューム等の芳香素材;クエン酸三ナトリウム、クエン酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の防錆剤;シリコーン等の消泡剤;クエン酸、燐酸一水素ナトリウム、燐酸ニ水素ナトリウム、燐酸一水素カリウム、燐酸ニ水素カリウム等のpH調整剤;水、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、変性アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、トリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート、グリセリン、トリアセチン、ベンジルアルコール、パラフィン、イソパラフィン、ハーコリン等のロジンエステル誘導体、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチルカルビトール(ジエチレングリコ-ルモノエチルエーテル)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレンングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ピネン重合体等のテルペン樹脂、環状シリコーン等のシリコーン類等の溶剤;プロパン、n-ブタン、イソブタン等の液化石油ガス、ジメチルエーテル、CFC(Chloro Fluoro Carbon)、HCFC(Hydro Chloro Fluoro Carbon)、HFC(Hydro Fluoro Carbon)等のフルオロカーボン等の液化ガス、窒素、炭酸ガス、圧縮空気、亜酸化窒素等の圧縮ガス等の噴射剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤等が挙げられる。
【0129】
本発明の製剤化した消臭剤としては、例えば、消臭ミスト、消臭スプレー、液体消臭剤、ゲル消臭剤、固形消臭剤、クリーム消臭剤、シート状消臭剤、粒状消臭剤、ビーズ状消臭剤、粉状消臭剤、燻煙消臭剤、トイレ臭用消臭剤、尿臭用消臭剤、体臭用消臭剤、汗臭用消臭剤、足臭用消臭剤、頭皮臭用消臭剤、加齢臭用消臭剤、介護用消臭剤、生ごみ臭用消臭剤、繊維用消臭剤、生乾き臭用消臭剤、ラウンドリーケア用消臭剤、下駄箱用消臭剤、靴用消臭剤、玄関用消臭剤、室内用消臭剤、寝室用消臭剤、車用消臭剤、排水口臭用消臭剤、ペット用消臭剤、オムツ用消臭剤、タンス用消臭剤、エアコン用消臭剤等が挙げられる。
【0130】
本発明の消臭剤は、芳香製品、衣類用製品、頭髪用製品、化粧品、口腔製品、衛生用品、殺虫剤、防虫剤、除湿剤又は洗浄剤等の製品に使用することができる。
【0131】
芳香製品としては、例えば、消臭機能を付与した、液体芳香剤、ゲル状芳香剤、粉末状芳香剤、含浸芳香剤、ビーズ状芳香剤、紙芳香剤、透過性フィルム芳香剤、プラグ式芳香剤、ファン式芳香剤、超音波式芳香剤、吸水ポリマー芳香剤、ミスト状芳香剤、エアゾール状芳香剤、熱蒸散式芳香剤、線香、ローソク、リードディフューザー等が挙げられる。
【0132】
衣類用製品としては、例えば、消臭機能を付与した、衣類用ミスト、衣類用スプレー、衣類用洗剤、衣類用柔軟剤、しわ取り剤等が挙げられる。
【0133】
頭髪用製品としては、例えば、消臭機能を付与した、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアトニック、ヘアスタイリング剤、染毛剤、パーマ剤、育毛剤、ヘアローション、ヘアスプレー等が挙げられる。
【0134】
化粧品としては、例えば、消臭機能を付与した、化粧水、乳液、クリーム、石鹸、液体石鹸、洗顔料、日焼け止め、制汗剤、入浴剤、口紅、ファンデーション等が挙げられる。
【0135】
口腔製品としては、例えば、消臭機能を付与した、歯磨き、マウスウォッシュ、マウススプレー、口中清涼剤、入れ歯用品、ブレスケア製品等が挙げられる。
【0136】
衛生用品としては、例えば、消臭機能を付与した、紙おむつ、生理用品、ウェットティッシュ、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、マスク等が挙げられる。
【0137】
洗浄剤としては、例えば、消臭機能を付与した、トイレ用洗浄剤、トイレ便器用洗浄剤、ガラス用洗浄剤、台所用洗剤、洗濯機用洗浄剤、排水口洗浄剤、風呂用洗浄剤、入れ歯洗浄剤等が挙げられる。
【0138】
本発明の一般式(1)で表される化合物の各製品中への配合量は、厳密に制限されるものではなく、その用途により種々変えることができる。本発明の一般式(1)で表される化合物の各製品中への配合量は、0.0001~10質量%であることが好ましく、0.001~5質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0139】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0140】
[試験例1]
(実施例1-1)2-イソプロピル-5-メチル-1-シクロヘキセニルベンゾエートの合成
【0141】
【0142】
(-)-メントン4.63g(30mmol)及び安息香酸無水物2.26g(10mmol)の混合溶液に、室温にてp-トルエンスルホン酸一水和物95mg(0.5mmol)を加えて、100~110℃(内温)にて4.5時間撹拌した。
【0143】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して1.90gの目的物を得た。
【0144】
(実施例1-2)1,3-ヘキサジエニルベンゾエートの合成
【0145】
【0146】
2-ヘキセナール7.85g(80mmol)、トリエチルアミン14.5ml(104mmol)及び安息香酸ナトリウム692mg(4.8mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物29.0g(128mmol)を加えて、115~120℃(内温)にて8時間撹拌した。
【0147】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して13.26gの目的物を得た。
【0148】
(実施例1-3)3,7-ジメチルオクタ-1,3,6-トリエニルベンゾエートの合成
【0149】
【0150】
シトラール1.52g(10mmol)及びピリジン3.15ml(39mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物4.52g(39mmol)を加えて、132~138℃(内温)にて7.5時間撹拌した。
【0151】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して1.60gの目的物を得た。
【0152】
(実施例1-4)3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエニルベンゾエートの合成
【0153】
【0154】
l-シトロネラール9.62g(60mmol)、トリエチルアミン10.9ml(78mmol)及び安息香酸ナトリウム519mg(3.6mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物21.7g(96mmol)を加えて、112~118℃(内温)にて10時間撹拌した。
【0155】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して9.38gの目的物を得た。
【0156】
(実施例1-5)2,6-ジメチルヘプタ-1,5-ジエニルベンゾエートの合成
【0157】
【0158】
2,6-ジメチル-5-ヘプテナール1.40g(10mmol)、トリエチルアミン1.81ml(13mmol)及び安息香酸ナトリウム86mg(0.6mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物3.62g(16mmol)を加えて、110~120℃(内温)にて10.5時間撹拌した。
【0159】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して1.85gの目的物を得た。
【0160】
(実施例1-6~実施例1-9)
リパーゼ発香試験
実施例1-1~1-3の化合物10mg及びリパーゼ製剤1%水溶液1gをバイアル瓶に入れ混合し密閉後、ヘッドスペース成分をGC/MS分析を行うことにより発香化合物のピーク面積を得た。コントロールとしてリパーゼ製剤1%水溶液の代わりに水を用い、同様の方法によってコントロールのピーク面積を得た。
【0161】
発香量は、得られた発香化合物のピーク面積とコントロールのピーク面積の差から求めた。結果を表1に示す。なお、リパーゼ製剤としては、ノボザイムズ社製のLipex 100L又は天野エンザイム株式会社製のAY「アマノ」30SDを用いた。
【0162】
(GC/MS測定条件)
測定機器:7890GC/5975MSD(Agilent Technologies社製)
カラム:BC-WAX 50m×0.25mmI.D.
昇温:70℃→220℃、4℃/分
スプリット比:60:1
【0163】
【0164】
表1の結果から、本発明の一般式(1)で表される化合物は、リパーゼの作用により芳香性アルデヒドあるいは芳香性ケトンを放出し、香料前駆体として効果を有することが確認された。
【0165】
(実施例1-10、1-11)
シャンプー使用時の毛髪からの発香確認試験
表2の処方に従い、シャンプーを調製した。調製したシャンプーを用いて長さ10cmの毛束を洗浄し、水道水ですすいだ。室温にて15時間乾燥後の毛束にリパーゼ製剤1%水溶液を約0.3g噴霧し、毛束のにおいを嗅ぎ、毛髪からの発香の有無を調べた。なお、リパーゼ製剤としては、天野エンザイム株式会社製のAY「アマノ」30SDを使用した。
【0166】
【0167】
実施例1-10で調製したシャンプーを使用して得られた乾燥後の毛髪にリパーゼを作用させることにより、シトロネラールのにおいが発香することが確認できた。
実施例1-11で調製したシャンプーを使用して得られた乾燥後の毛髪にリパーゼを作用させることにより、2,6-ジメチル-5-ヘプテナールのにおいが発香することが確認できた。
【0168】
(実施例1-12、1-13)
コンディショナー使用時の毛髪からの発香確認試験
表3の処方に従い、コンディショナーを調製した。長さ10cmの毛束を調製したコンディショナーで処理をし、水道水ですすいだ。室温にて15時間乾燥後の毛束にリパーゼ製剤1%水溶液を約0.3g噴霧し、毛束のにおいを嗅ぎ毛髪からの発香の有無を調べた。なお、リパーゼ製剤としては、天野エンザイム株式会社製のAY「アマノ」30SDを使用した。
【0169】
【0170】
実施例1-12で調製したコンディショナーを使用して得られた乾燥後の毛髪にリパーゼを作用させることにより、シトロネラールのにおいが発香することが確認できた。
実施例1-13で調製したコンディショナーを使用して得られた乾燥後の毛髪にリパーゼを作用させることにより、2,6-ジメチル-5-ヘプテナールのにおいが発香することが確認できた。
【0171】
(実施例1-14、1-15)
液体洗剤使用時のタオルからの発香確認試験
表4の処方に従い、液体洗剤を調製した。木綿製タオルを調製した液体洗剤で洗浄し、水道水ですすいだ。室温にて15時間乾燥後のタオルにリパーゼ製剤1%水溶液を約0.3g噴霧し、タオルのにおいを嗅ぎタオルからの発香の有無を調べた。なお、リパーゼ製剤としては、天野エンザイム株式会社製のAY「アマノ」30SDを使用した。
【0172】
【0173】
実施例1-14で調製した液体洗剤を使用して得られた乾燥後のタオルに、リパーゼを作用させることにより、シトロネラールのにおいが発香することが確認できた。
実施例1-15で調製した液体洗剤を使用して得られた乾燥後のタオルに、リパーゼを作用させることにより、2,6-ジメチル-5-ヘプテナールのにおいが発香することが確認できた。
【0174】
(実施例1-16、1-17)
柔軟剤使用時のタオルからの発香確認試験
表5の処方に従い、柔軟剤を調製した。木綿製タオルを調製した柔軟剤で処理し、水道水ですすいだ。室温にて15時間乾燥後のタオルにリパーゼ製剤1%水溶液を約0.3g噴霧し、タオルのにおいを嗅ぎタオルからの発香の有無を調べた。なお、リパーゼ製剤としては、天野エンザイム株式会社製のAY「アマノ」30SDを使用した。
【0175】
【0176】
実施例1-16で調製した柔軟剤を使用して得られた乾燥後のタオルにリパーゼを作用させることにより、シトロネラールのにおいが発香することが確認できた。
実施例1-17で調製した柔軟剤を使用して得られた乾燥後のタオルにリパーゼを作用させることにより、2,6-ジメチル-5-ヘプテナールのにおいが発香することが確認できた。
【0177】
(実施例1-18、1-19、比較例1-1)
香料組成物
表6の処方に従い、香料組成物を調製した。
【0178】
【0179】
(実施例1-20~1-23、比較例1-2~1-5)
リパーゼ洗剤・柔軟剤併用試験
表7の処方に従い、リパーゼ配合及び無配合の液体洗剤を調製した。また、表8の処方に従い、柔軟剤を調製した。なお、リパーゼ製剤としては、ノボザイムズ社製のLipex 100Lを用いた。
【0180】
【0181】
【0182】
次いで、上記で得られた液体洗剤で木綿製タオルを洗浄し、洗浄後の木綿製タオルを脱水後、上記で得られた柔軟剤で処理を行なった。脱水後一晩乾燥させた。専門パネラー10名により、乾燥中及び乾燥後の木綿タオルの香り強度及びフレッシュ感を下記の評価基準に従い評価した。評価点数は専門パネラーの評価値を平均して求めた。結果を表9に示す。
【0183】
(香り強度の評価基準)
0:無臭
1:やっと感知できるにおい
2:何のにおいであるか分かるが弱いにおい
3:楽に感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
【0184】
(フレッシュ感の評価基準)
0:フレッシュ感が感じられない
1:かすかにフレッシュ感が感じられる
2:ややフレッシュ感が感じられる
3:フレッシュ感が感じられる
4:かなりフレッシュ感が感じられる
【0185】
【0186】
本発明の一般式(1)で表される化合物を配合した調合香料を使用した柔軟剤とリパーゼを配合した洗剤を併用することで発香が起こり、乾燥後の香り強度及びフレッシュ感が高まることが確認できた。
【0187】
[試験例2]
(実施例2-1)2-イソプロピル-5-メチル-1-シクロヘキセニルベンゾエートの合成
【0188】
【0189】
(-)-メントン4.63g(30mmol)及び安息香酸無水物2.26g(10mmol)の混合溶液に、室温にてp-トルエンスルホン酸一水和物95mg(0.5mmol)を加えて、100~110℃(内温)にて4.5時間撹拌した。
【0190】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して1.90gの目的物を得た。
【0191】
(実施例2-2)1,3-ヘキサジエニルベンゾエートの合成
【0192】
【0193】
2-ヘキセナール7.85g(80mmol)、トリエチルアミン14.5ml(104mmol)及び安息香酸ナトリウム692mg(4.8mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物29.0g(128mmol)を加えて、115~120℃(内温)にて8時間撹拌した。
【0194】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して13.26gの目的物を得た。
【0195】
(実施例2-3)3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエニルベンゾエートの合成
【0196】
【0197】
l-シトロネラール9.62g(60mmol)、トリエチルアミン10.9ml(78mmol)及び安息香酸ナトリウム519mg(3.6mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物21.7g(96mmol)を加えて、112~118℃(内温)にて10時間撹拌した。
【0198】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して9.38gの目的物を得た。
【0199】
(実施例2-4)2,6-ジメチルヘプタ-1,5-ジエニルベンゾエートの合成
【0200】
【0201】
2,6-ジメチル-5-ヘプテナール1.40g(10mmol)、トリエチルアミン1.81ml(13mmol)及び安息香酸ナトリウム86mg(0.6mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物3.62g(16mmol)を加えて、110~120℃(内温)にて10.5時間撹拌した。
【0202】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して1.85gの目的物を得た。
【0203】
(実施例2-5)3,5,5-トリメチル-1-ヘキセニルベンゾエートの合成
【0204】
【0205】
3,5,5-トリメチルヘキサナール1.42g(10mmol)、トリエチルアミン1.81ml(13mmol)及び安息香酸ナトリウム86mg(0.6mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物3.62g(16mmol)を加えて、110~120℃(内温)にて7.5時間撹拌した。
【0206】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して0.56gの目的物を得た。
【0207】
(実施例2-6)1-オクテニルベンゾエートの合成
【0208】
【0209】
オクタナール1.28g(10mmol)、トリエチルアミン1.81ml(13mmol)及び安息香酸ナトリウム86mg(0.6mmol)の混合溶液に、室温にて安息香酸無水物3.62g(16mmol)を加えて、106~119℃(内温)にて9.5時間撹拌した。
【0210】
反応液を冷却後、トルエン及び水を加えて、反応を停止した。反応液をトルエンで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して2.01gの目的物を得た。
【0211】
(実施例2-7~2-17)微生物による消臭成分発生試験
(微生物培養方法)
Staphylococcus aureus NBRC12732株、Staphylococcus epidermidis JCM2414T株、Corynebacterium xerosis JCM1324株、Pseudomonas aeruginosa NBRC13275株、Bacillus subtilis NBRC3134株及びMoraxella osloensis ATCC19976株の培養
ミュラー・ヒントン液体培地に各菌体をそれぞれ接種後、30℃で20時間振とう培養を行った。得られた前培養液3mLをバイアル瓶に移し、実施例2-2~2-6の化合物10mgをそれぞれ混合・密閉後、さらに30℃で20時間振とう培養した。
【0212】
Propionibacterium acnes JCM6473株の培養
Hemin0.5ppm及びMenadione0.5ppm含有GAMブイヨン液体培地に菌体を接種後、嫌気条件下、28℃で3日間静置培養した。得られた前培養液3mLをバイアル瓶に移し、実施例2-2~2-6の化合物10mgをそれぞれ混合・密閉後、さらに28℃で3日間静置培養した。
【0213】
Malassezia furfur NBRC0656株の培養
0.1%Tween80含有サブロー液体培地に菌体を接種後、嫌気条件下、28℃で3日間静置培養した。得られた前培養液3mLをバイアル瓶に移し、実施例2-2~2-6の化合物10mgを混合・密閉後、さらに28℃で3日間静置培養した。
【0214】
(試験方法)
実施例2-2~2-6の化合物10mgを混合した微生物培養液3mLのバイアル瓶中に含まれるヘッドスペース成分をGC/MS分析を行うことにより消臭成分のピーク面積を得た。実施例2-2~2-6の化合物を混合していない微生物培養液をコントロールとし、同様の方法によってコントロールのピーク面積を得た。
【0215】
消臭成分のピーク面積とコントロールのピーク面積の差を消臭成分発生量として、結果を表10~12に示す。
【0216】
(GC/MS測定条件)
測定機器:7890GC/5975MSD(Agilent Technologies社製)
カラム:BC-WAX 50m×0.25mmI.D.
昇温:70℃→220℃、4℃/分
スプリット比:splitless
【0217】
【0218】
表10の結果から、本発明の一般式(1)で表される化合物は、Staphylococcus aureusの作用により消臭成分として一般式(2)で表されるアルデヒドを放出することが確認された。
【0219】
【0220】
表11の結果から、本発明の一般式(1)で表される化合物は、 Staphylococcus epidermidis、Corynebacterium xerosis、Pseudomonas aeruginosa、Bacillus subtilis、Moraxella osloensis、Propionibacterium acnesの作用により、消臭成分として一般式(2)で表されるアルデヒドを放出することが確認された。
【0221】
【0222】
表12の結果から、本発明の一般式(1)で表される化合物は、Malassezia furfurの作用により消臭成分として、一般式(2)で表されるアルデヒドを放出することが確認された。
【0223】
(実施例2-18、比較例2-1)微生物により発生した臭気の消臭試験
(試験方法)
φ33mmシャーレに基質としてTriolein1g、Tricaproin1g及びAndrosterone0.5gを染み込ませたガーゼをセットした。さらに、基質として0.2%L-leucineを含む0.9%生理食塩水中にあらかじめ調製したStaphylococcus aureus試験菌液(1×109cfu/mL)1mL及び実施例2-3の化合物3.5μLを混合後、セットしたガーゼに均一になるように含浸させた。シャーレに蓋をし、密閉後、37℃で20時間培養した。専門パネラー10名により、培養後のガーゼのにおいの快・不快度を下記の評価基準に従い官能的に評価した。評価点数は専門パネラーの評価値を平均して求めた。
【0224】
実施例2-3の化合物を混合せずに、同様に培養したガーゼの評価を比較例2-1とした。結果を表13に示す。
なお、Triolein、Tricaproin、Androsterone及びL-leucineは、微生物の作用により悪臭を発生することが知られている。
【0225】
(快・不快度評価基準)
+4:極端に快
+3:非常に快
+2:快
+1:やや快
0:快でも不快でもない
-1:やや不快
-2:不快
-3:非常に不快
-4:極端に不快
【0226】
【0227】
表13の結果から、比較例2-1に示す通り、本試験条件によりStaphylococcus aureusの繁殖に伴い悪臭が発生した。一般式(1)で表される化合物は、Staphylococcus aureusに起因する悪臭の不快度を緩和できることが確認された。
【0228】
(実施例2-19、2-20)
表14の処方に従い消臭ミストを調製した。
【0229】
【0230】
(実施例2-21、2-22、比較例2-2、2-3)消臭ミストによる着用靴下臭の消臭試験
(試験方法)
右足用の洗浄済の化繊靴下に実施例2-19及び2-20で得られた消臭ミストを各々0.6g噴霧した。消臭ミストを噴霧しなかった左足用の洗浄済の化繊靴下を比較例とした。専門パネラー10名により着用前及び15時間着用後の靴下のにおいの快・不快度を評価基準に従い官能的に評価した。評価基準は、実施例2-18の評価基準を使用した。評価点数は専門パネラーの評価値を平均して求めた。結果を表15に示す。
【0231】
【0232】
実施例比較例共に、着用前の靴下はほぼ無臭だった。15時間着用後、本発明の消臭ミストを噴霧していない比較例の靴下は臭気を発し、不快に感じられたが、本発明の消臭ミストを噴霧した15時間着用後の実施例の靴下は不快臭が感じられなかった。一般式(1)で表される化合物から消臭成分が放出されることにより不快感が緩和されることが確認できた。
【0233】
(実施例2-23)
表16の処方に従い消臭スプレーを調製した。
【0234】
【0235】
(実施例2-24、比較例2-4)消臭スプレーによる汗シャツの消臭試験
(試験方法)
洗浄済の木綿製シャツを着用し、激しく運動することにより汗を含んだシャツを作製した。前記シャツをビニール袋にいれ室温にて密閉した状態で12時間放置した。前記シャツをビニール袋から取り出し、前記シャツの右脇部分に実施例2-23で得られた消臭スプレーを1g噴霧した。前記シャツの左脇部分には消臭スプレーを噴霧せずに、比較例とした。その後、前記シャツを3時間放置した。専門パネラー10名により、前記シャツの右脇部分と左脇部分のにおいの快・不快度を評価基準に従い官能的に評価した。評価基準は、実施例2-18の評価基準を使用した。評価点数は専門パネラーの評価値を平均して求めた。結果を表17に示す。
【0236】
【0237】
本発明の消臭スプレーを噴霧していない前記シャツの左脇部分は臭気を発し、不快に感じられたが、本発明の消臭スプレーを噴霧した前記シャツの右脇部分は不快臭が感じられなかった。一般式(1)で表される化合物から消臭成分が放出されることにより不快感が緩和されることが確認できた。
【0238】
(実施例2-25~2-27)消臭液体洗剤への応用例
表18の処方に従い消臭液体洗剤を調製した。
【0239】
【0240】
(実施例2-28~2-30)消臭柔軟剤への応用例
表19の処方に従い消臭柔軟剤を調製した。
【0241】
【0242】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年1月19日出願の日本特許出願(特願2017-007930)及び2017年3月23日出願の日本特許出願(特願2017-058118)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0243】
一般式(1)で表される化合物は、加水分解酵素の作用により香気成分であるアルデヒド又はケトンを放出することができるため、香料前駆体として使用でき有用である。
本発明の一般式(1)で表される化合物を香料組成物又は各種製品に配合することにより、衣類、毛髪あるいは皮膚上でフレッシュ感のある残香を持続させることができ、香料産業における利用可能性を有している。