(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】安定な液体金属酸化物/水酸化物配合物を作成するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C08L 71/02 20060101AFI20221012BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20221012BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20221012BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20221012BHJP
C11D 3/12 20060101ALI20221012BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20221012BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20221012BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20221012BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20221012BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20221012BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221012BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20221012BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20221012BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20221012BHJP
D06M 11/44 20060101ALI20221012BHJP
D06M 11/46 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K3/20
B01J20/06 A
C11D3/20
C11D3/12
C11D1/04
C11D17/08
B01J20/04 A
B01J20/04 B
B01J20/06 B
B01J20/06 C
B01J20/08 A
B01J20/08 C
B01J20/10 A
B01J20/10 C
B01J20/28 Z
A61L9/01 B
A61L9/014
D06M15/53
D06M11/44
D06M11/46
(21)【出願番号】P 2018568774
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 US2017040231
(87)【国際公開番号】W WO2018009434
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-17
(32)【優先日】2016-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518459042
【氏名又は名称】ティミロン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】サンフォード,ビル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】マルチェスキー,ポール エス.
(72)【発明者】
【氏名】ナッペンバーガー,カイル
(72)【発明者】
【氏名】キシック,カルヴァン ジェフェリー
(72)【発明者】
【氏名】スチュワード,エリック
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-533633(JP,A)
【文献】特開平07-247119(JP,A)
【文献】特表2009-513284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0135937(US,A1)
【文献】特表2002-503268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B01J 20/00-20/28、20/30-20/34
C11D 1/00-19/00
A61L 9/00-9/22
D06M 11/44、11/46、15/53
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
A62D 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の乾燥粉末のナノ結晶性金属酸化物および/または金属水酸化物粒子と、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー、ポリソルベート、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアミド系樹脂分散剤、スルホサクシネートおよびオクチルフェノールエトキシレートからなる群から選択される1種類以上の乾燥粉末の界面活性剤とを含む、固体乾燥粉末混合物であって、
前記ナノ結晶性金属酸化物および/または金属水酸化物粒子が凝集したナノ結晶性材料であり、
前記粉末混合物が、液体担体に分散可能であり、25℃での静止条件で少なくとも4日間、物理的に安定なままであ
り、
前記ナノ結晶性粒子が、前記混合物中に、前記混合物の合計重量を基準として70重量%~99重量%のレベルで存在し、
前記1種類以上の界面活性剤が、前記混合物中に、前記混合物の合計重量を基準として1重量%~30重量%のレベルで存在し、
前記液体担体が、水、油、グリセリン、ハロゲン化溶媒、増粘剤、脂肪族および脂環式のC
7
-C
12
炭化水素、キシレン、アルコール、並びに、トルエンからなる群から選択される、固体乾燥粉末混合物。
【請求項2】
前記ナノ結晶性粒子が、MgO、CeO
2、CaO、TiO
2、ZrO
2、FeO、V
2O
3、V
2O
5、Mn
2O
3、Fe
2O
3、NiO、CuO、Al
2O
3、ZnO、SiO
2、Ag
2O、SrO、BaO、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2、Al(OH)
3、Sr(OH)
2、Ba(OH)
2、Fe(OH)
3、Cu(OH)
2、Ni(OH)
2、Co(OH)
2、Zn(OH)
2、AgOH、被覆された金属酸化物および水酸化物、ドープされた金属酸化物および水酸化物、殺生物性金属酸化物および水酸化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記1種類以上の界面活性剤が、中央のポリオキシプロピレン疎水性鎖と、これに隣接する2つのポリオキシエチレン親水性鎖とを有するトリブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
前記ナノ結晶性粒子と前記1種類以上の界面活性剤の重量比が、50:1~2:1である、請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
pH調整剤、キレート化剤、増粘剤、摩擦低減剤、酵素、堆積防止剤、漂白剤、蛍光増白剤、布地柔軟剤、ヒドロトロープ、防腐剤および香料からなる群から選択される1種類以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項6】
前記ナノ結晶性粒子は、結晶粒径が25nm未満である、請求項1に記載の混合物。
【請求項7】
前記ナノ結晶性粒子が、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)の多点表面積が少なくとも15m
2/gである、請求項1に記載の混合物。
【請求項8】
前記混合物が、ジエチルアミンで汚染された表面と接触すると、前記表面上のジエチルアミンを少なくとも75%吸着することができる、請求項1に記載の混合物。
【請求項9】
物品から標的物質を除去する方法であって、請求項1に記載の混合物と前記物品とを接触させることと、前記標的物質の少なくとも一部が、前記ナノ結晶性粒子によって吸着されるようにすることとを含む、方法。
【請求項10】
前記標的物質が、
動物の臭気、
動物排泄物の臭気、
アスファルトの煙、
炭化した物質、
洗浄化学薬品、
腐敗した身体または腐敗した植物によって生じる臭気、
洗剤、
オムツの臭気、
排気ガス、
燃料、
揮発性有機化合物の煙、
有機溶媒、
湿気または洪水によって生じる臭気、
ヒトの身体の臭気、
ヒト排泄物の臭気、
狩猟時の臭気、
駆除剤、
調理場の臭気、
医薬の臭気、
下水ガス、
タバコ、
ゴミ、
細菌、カビ、真菌によって生じる他の臭気、
およびこれらの組み合わせからなる群から選択される悪臭標的物質であり、前記接触させる工程によって、前記物品上の前記標的物質の濃度が少なくとも75%減少する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
液体担体1重量部~1,000重量部あたり、1重量部の請求項1に記載の固体粉末混合物を含む、液体懸濁物
であって、
前記液体媒体が、水、油、グリセリン、ハロゲン化溶媒、増粘剤、脂肪族および脂環式のC
7
-C
12
炭化水素、キシレン、アルコール、並びに、トルエンからなる群から選択される、液体懸濁物。
【請求項12】
前記液体担体が水である、請求項
11に記載の液体懸濁物。
【請求項13】
前記ナノ結晶性粒子が、前記懸濁物中に、前記懸濁物の合計重量を基準として0.1重量%~50重量%のレベルで存在する、請求項
11に記載の液体懸濁物。
【請求項14】
前記1種類以上の界面活性剤が、前記懸濁物中に、前記懸濁物の合計重量を基準として0.01重量%~10重量%のレベルで存在する、請求項
11に記載の液体懸濁物。
【請求項15】
pH調整剤、キレート化剤、増粘剤、摩擦低減剤、酵素、堆積防止剤、漂白剤、蛍光増白剤、布地柔軟剤、ヒドロトロープ、防腐剤および香料からなる群から選択される1種類以上の添加剤をさらに含む、請求項
11に記載の液体懸濁物。
【請求項16】
前記液体懸濁物が、油を実質的に含まない、請求項
11に記載の液体懸濁物。
【請求項17】
前記1種類以上の界面活性剤が、スルホサクシネートおよび/またはオクチルフェノールエトキシレートを含む、請求項
16に記載の液体懸濁物。
【請求項18】
前記懸濁物が、10mLの水に分散した1グラムの前記ナノ結晶性粒子を含み、前記懸濁物が、撹拌してから少なくとも3分後に、粒状物の沈降が50%未満を示す、請求項
11に記載の液体懸濁物。
【請求項19】
前記懸濁物が、25℃での静止条件で少なくとも4日間、物理的に安定なままである、請求項
11に記載の液体懸濁物。
【請求項20】
表面を処理する方法であって、請求項
11に記載の液体懸濁物を前記表面に塗布することを含む、方法。
【請求項21】
前記液体懸濁物を前記表面に噴霧することによって前記液体懸濁物が塗布される、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、さらに、前記ナノ結晶性粒子を含む表面に残渣を残すために、前記表面に塗布した後に前記水性懸濁物を乾燥させることを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、さらに、前記塗布の後に、水を用いて前記表面から前記水性懸濁物を洗い流すことを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項24】
前記表面が、カーペット、内装、布地、紙製品、皮革、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、織られた繊維製品または不織布繊維製品の表面である、請求項
20に記載の方法。
【請求項25】
前記表面が、プラスチック、金属、木材、壁用乾燥塗料、フォーム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される非繊維材料である、請求項
20に記載の方法。
【請求項26】
前記液体懸濁物を塗布すると、接着剤、静電接続または物理的な捕捉を行うことなく、前記ナノ結晶性粒子が、前記表面に結合する、請求項
20に記載の方法。
【請求項27】
前記表面が、標的物質で汚染されており、前記液体懸濁物を前記表面に塗布すると、前記標的物質の少なくとも一部が、前記ナノ結晶性粒子によって吸着されるようになる、請求項
20に記載の方法。
【請求項28】
ナノ結晶性粒子と、亜麻仁油と、
亜麻仁油以外の有機溶
媒との混合物を含み、前記ナノ結晶性粒子が、金属酸化物および/または金属水酸化物を含む、液体組成物
であって、
前記有機溶媒が、ハロゲン化溶媒、脂肪族のC
7
-C
12
炭化水素、脂環式のC
7
-C
12
炭化水素、キシレン、アルコール、トルエン、および、これらの混合物からなる群から選択される、液体組成物。
【請求項29】
前記ナノ結晶性粒子が、MgO、CeO
2、CaO、TiO
2、ZrO
2、FeO、V
2O
3、V
2O
5、Mn
2O
3、Fe
2O
3、NiO、CuO、Al
2O
3、ZnO、SiO
2、Ag
2O、SrO、BaO、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2、Al(OH)
3、Sr(OH)
2、Ba(OH)
2、Fe(OH)
3、Cu(OH)
2、Ni(OH)
2、Co(OH)
2、Zn(OH)
2、AgOH、被覆された金属酸化物および水酸化物、ドープされた金属酸化物および水酸化物、殺生物性金属酸化物および水酸化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項
28に記載の液体組成物。
【請求項30】
前記ナノ結晶性粒子が、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として30重量%~60重量%のレベルで存在する、請求項
28に記載の液体組成物。
【請求項31】
前記亜麻仁油が、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として5重量%~30重量%のレベルで存在する、請求項
28に記載の液体組成物。
【請求項32】
前記溶媒が、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として20重量%~50重量%のレベルで存在する、請求項
28に記載の液体組成物。
【請求項33】
標的物質を吸収する方法であって、請求項
28に記載の液体組成物と前記標的物質とを接触させることを含む、方法。
【請求項34】
表面を保護する方法であって、
請求項
28に記載の液体組成物を前記表面に塗布することと、
前記液体組成物を乾燥させ、それによって、前記表面の上に、前記ナノ結晶性粒子を含む乾燥被膜を作成することとを含む、方法。
【請求項35】
ナノ結晶性粒子と、グリセリンと、水と、界面活性剤との混合物を含み、前記ナノ結晶性粒子が、金属酸化物および/または金属水酸化物を含む、液体組成物であって、
前記水が、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として1重量%~30重量%のレベルで存在する、液体組成物。
【請求項36】
前記ナノ結晶性粒子が、MgO、CeO
2、CaO、TiO
2、ZrO
2、FeO、V
2O
3、V
2O
5、Mn
2O
3、Fe
2O
3、NiO、CuO、Al
2O
3、ZnO、SiO
2、Ag
2O、SrO、BaO、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2、Al(OH)
3、Sr(OH)
2、Ba(OH)
2、Fe(OH)
3、Cu(OH)
2、Ni(OH)
2、Co(OH)
2、Zn(OH)
2、AgOH、被覆された金属酸化物および水酸化物、ドープされた金属酸化物および水酸化物、殺生物性金属酸化物および水酸化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項
35に記載の液体組成物。
【請求項37】
前記ナノ結晶性粒子が、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として1重量%~10重量%のレベルで存在する、請求項
35に記載の液体組成物。
【請求項38】
前記グリセリンが、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として1重量%~30重量%のレベルで存在する、請求項
35に記載の液体組成物。
【請求項39】
前記界面活性剤が、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として50重量%~90重量%のレベルで存在する、請求項
35に記載の液体組成物。
【請求項40】
前記界面活性剤が石けんである、請求項
35に記載の液体組成物。
【請求項41】
pH調整剤、キレート化剤、増粘剤、摩擦低減剤、酵素、堆積防止剤、漂白剤、蛍光増白剤、布地柔軟剤、ヒドロトロープ、防腐剤および香料からなる群から選択される1種類以上の添加剤をさらに含む、請求項
35に記載の液体組成物。
【請求項42】
標的物質を吸収する方法であって、請求項
35に記載の液体組成物と前記標的物質とを接触させることを含む、方法。
【請求項43】
表面を洗浄する方法であって、
請求項
35に記載の液体組成物を前記表面に塗布することと、
前記表面から前記液体組成物を洗い流すこととを含む、方法。
【請求項44】
前記表面が皮膚である、請求項
43に記載の方法。
【請求項45】
前記表面が、無生物物体の表面である、請求項
43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年7月5日に出願された米国仮特許出願番号第62/358,365号の優先権の利益を主張し、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
技術分野
本発明は、一般的に、金属酸化物および/または金属水酸化物ナノ結晶性粒子を含む液体配合物、または流体に容易に可溶化する乾燥配合物に関する。配合物は、流体の流れに組み込まれてもよく、または被覆として表面に塗布されてもよく、または気相および液相を処理するために塗布されてもよい。配合物は、皮膚、衣料用布地および他の無生物物体などの表面からの除去剤として使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
ナノ結晶性金属酸化物および水酸化物は、その高い表面反応性に起因して、酸性気体、空気汚染物質、および化学兵器および生物兵器剤を含め、種々の悪臭および毒性物質のための破壊的な吸着剤として有用であることが示されている(例えば、米国特許第8,183,426号、第8,038,935号、第7,956,232号、第7,566,393号、第7,341,977号、第7,335,808号、第7,279,129号、第RE39,098号、第6,887,302号、第6,860,924号、第6,827,766号、第6,740,141号、第6,653,519号、第6,093,236号、第6,057,488号、第5,990,373を参照。それぞれ、その全体が本明細書に参考として組み込まれる)。金属酸化物および水酸化物の液体配合物は、ポリマー、界面活性剤、樹脂および/または分散剤を用い、水性および非水性の溶媒で調製されてきた。しかし、金属酸化物および水酸化物の粒子は、溶液中で凝集する傾向がある。さらに、エンドユーザによって液体溶液に加えられるときに、安定で使用可能な液体配合物を生成することが可能な乾燥混合物を達成することは困難であることがわかっている。上述の従来技術にもかかわらず、ナノ構造化(ナノ結晶性)金属酸化物および/または水酸化物の安定な液体配合物、および使用時に液体に添加することが可能な乾燥配合物が必要とされている。さらに、安定な液体配合物を用いてナノ結晶性金属酸化物/水酸化物粒子を組み込む布地型製品および表面被覆が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8,183,426号明細書
【文献】米国特許第8,038,935号明細書
【文献】米国特許第7,956,232号明細書
【文献】米国特許第7,566,393号明細書
【文献】米国特許第7,341,977号明細書
【文献】米国特許第7,335,808号明細書
【文献】米国特許第7,279,129号明細書
【文献】米国再登録特許第RE39,098号明細書
【文献】米国特許第6,887,302号明細書
【文献】米国特許第6,860,924号明細書
【文献】米国特許第6,827,766号明細書明細書
【文献】米国特許第6,740,141号明細書
【文献】米国特許第6,653,519号明細書
【文献】米国特許第6,093,236号明細書
【文献】米国特許第6,057,488号明細書
【文献】米国特許第5,990,373号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態では、ある量のナノ結晶性粒子と、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー、ポリソルベート、メタクリル酸ナトリウム、ポリアミド系樹脂分散剤、スルホサクシネートおよびオクチルフェノールエトキシレートからなる群から選択される1種類以上の界面活性剤とを含む、固体粉末混合物が提供される。固体粉末混合物と物品とを接触させ、標的物質の少なくとも一部を、ナノ結晶性粒子によって吸着させることによって、標的物質、例えば、悪臭標的物質を物品から除去するために、固体粉末混合物を使用してもよい。液体懸濁物は、粉末混合物から調製されてもよい。液体懸濁物は、液体担体約1重量部~約1,000重量部あたり、約1重量部の固体粉末混合物を含む。液体懸濁物を表面に塗布することによって表面を処理するために、懸濁物を使用してもよい。
【0005】
別の実施形態では、ナノ結晶性粒子と、亜麻仁油と、溶媒との混合物を含む液体組成物が提供される。液体組成物と標的物質とを接触させることによって標的物質を吸収させるために、液体組成物を使用してもよい。液体組成物を表面に塗布し、液体組成物を乾燥させ、それにより、表面にナノ結晶性粒子を含む乾燥被膜を生成することによって、表面を保護するために、液体組成物を使用してもよい。
【0006】
別の実施形態では、ナノ結晶性粒子と、グリセリンと、水と、界面活性剤との混合物を含む液体組成物が提供される。液体組成物と標的物質とを接触させることによって標的物質を吸収させるために、液体組成物を使用してもよい。また、液体組成物を表面に塗布し、表面から液体組成物を洗い流すことによって、表面を洗浄するために液体組成物を使用してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、金属酸化物および/または金属水酸化物を組み込んだ乾燥配合物および液体配合物に関し、さらに特定的には、高い表面積と化学反応性を有するナノ結晶性金属酸化物および/または水酸化物に関する。配合物は、臭気の制御および吸収に有用であり、また、多種多様な毒性化学物質、有害な臭気、および、生物学的危険物質に対して破壊し、中和し、除去し、および/または保護するための気体状および液体の物質との化学反応性に有用である。
【0008】
本発明と組み合わせて使用するのに好ましいナノ結晶性材料としては、Mg、Sr、Ba、Ca、Ti、Zr、Fe、V、Mn、Ni、Cu、Al、Si、Zn、Ag、Mo、Sbの金属酸化物および金属水酸化物、およびこれらの混合物が挙げられる。さらなる好ましいナノ結晶性材料としては、被覆されたナノ結晶性材料、例えば、米国特許第6,093,236号および第5,759,939号に開示される、金属酸化物で被覆された金属酸化物(別の金属酸化物で被覆された金属酸化物)、米国特許第6,653,519号、第6,087,294号および第6,057,488号に開示されるハロゲン化粒子、例えば、ハロゲンドープされた金属酸化物(その表面に安定化された反応性原子を有するナノ結晶性材料、この反応性原子は、酸素イオン部分、オゾン、ハロゲン、I属金属を含む)、空気に安定なナノ結晶性材料、例えば、米国特許第6,887,302号および第6,860,924号に記載される被覆された金属酸化物(界面活性剤、ワックス、油、シリル、合成または天然のポリマー、または樹脂で被覆されたナノ結晶性材料)、殺生物性のドープされた金属酸化物、例えば、銀ドープされたアルミナ、米国特許第6,827,766号に記載される殺生物剤を含浸した金属酸化物または金属水酸化物粒子、ペレット化されたナノ結晶性材料、例えば、米国特許第6,093,236号および米国再登録特許第RE39,098号に記載されるもの、凝集したナノ結晶性粒子と第2の材料によって被覆された第1の材料との複合物、例えば、米国特許第7,341,977号および第7,566,393号に記載されるものが挙げられ、これらは全て、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。したがって、特定の好ましい実施形態では、ナノ結晶性材料は、MgO、CeO2、CaO、TiO2、ZrO2、FeO、V2O3、V2O5、Mn2O3、Fe2O3、NiO、CuO、Al2O3、ZnO、SiO2、Ag2O、SrO、BaO、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Al(OH)3、Sr(OH)2、Ba(OH)2、Fe(OH)3、Cu(OH)2、Ni(OH)2、Co(OH)2、Zn(OH)2、AgOH、被覆された金属酸化物および水酸化物、ドープされた金属酸化物および水酸化物、殺生物性金属酸化物および水酸化物、およびこれらの混合物からなる群から選択されるナノ結晶性(ナノ構造化)粒子である。ナノ結晶性材料は、好ましくは、結晶粒径が約25nm未満、さらに好ましくは20nm未満、最も好ましくは10nm未満である。ナノ結晶性粒子は、好ましくは、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)の多点表面積が少なくとも約15m2/g、さらに好ましくは少なくとも約70m2/g、最も好ましくは約100~850m2/gを示す。さらに微細な粒径を得るために、粉末状の金属酸化物/水酸化物を粉砕してもよい。粉砕は、界面活性剤または洗剤存在下で行うと、粉末を分離し、被膜にする能力を高めることができる。ナノ結晶性粒子は、粉末状の金属酸化物/水酸化物を、例えば、ペレットミルまたはペレットプレスで圧縮または成型することによってペレット化されてもよい。例示的なナノ結晶性材料は、Timilon Technology Acquisitions,Inc.、フォートマイヤーズ、フロリダからNanoActive(登録商標)の名称で入手可能である。
【0009】
本発明で使用するのに好ましい界面活性剤としては、ポリプロピレンとポリエチレンのトリブロックコポリマー、例えば、ポロキサマーが挙げられる。ポロキサマーは、中央のポリオキシプロピレン疎水性鎖と、これに隣接する2つのポリオキシエチレン親水性鎖とを有する非イオン性トリブロックコポリマーである。特定の好ましい実施形態では、ポロキサマーは、ポリオキシエチレン:ポリオキシプロピレン:ポリオキシエチレンの重量比が約4:2:4である。驚くべきことに、金属酸化物/水酸化物ナノ結晶性粒子を含む液体分散物において、ポロキサマー型界面活性剤は、他の種類の界面活性剤よりも高い安定性を与えることを発見した。特に好ましいポロキサマーとしては、Pluronic(登録商標)およびSynperonic(登録商標)の商標名で販売されているもの、例えば、Pluronic(登録商標)F-68の商標名で販売されているポロキサマー188が挙げられる。特定の実施形態では、1種類以上の界面活性剤は、少なくとも1種類のポロキサマー界面活性剤と少なくとも1種類の他の界面活性剤のブレンドを含む。例えば、好ましい実施形態では、1種類以上の界面活性剤は、ポロキサマー(例えば、p188ポロキサマー)とドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のブレンドを含む。ブレンドがポロキサマーを含む場合、ポロキサマーと他の界面活性剤との重量比は、約1:20~約20:1、好ましくは約1:10~約10:1、さらに好ましくは約1:3~約3:1であってもよい。
【0010】
他の好ましい界面活性剤としては、ポリソルベート、メタクリル酸ナトリウムポリアミド系樹脂分散剤、スルホサクシネートおよびオクチルフェノールエトキシレートが挙げられる。ポリソルベートは、非イオン性界面活性剤であり、一般的に、ソルビタンモノラウレートのポリオキシエチレン誘導体で構成される。特に好ましいポリソルベートとしては、Tween(登録商標)の商標名で販売されるもの、例えば、Tween(登録商標)20およびTween(登録商標)81が挙げられる。メタクリル酸ナトリウム(ポリメタクリル酸ナトリウム)溶液は、水溶性分散剤であり、一般的に、他の固体系分散剤と比較して、比較的低い粘度を有する。特に好ましいメタクリル酸ナトリウム分散剤溶液としては、Daxad(登録商標)の商標名で販売されるもの、例えば、Daxad(登録商標)30が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、一般的に、水への溶解度が低く、溶液、懸濁物またはエマルションを被膜として使用する用途には特に有用である。特に好ましいポリアミド樹脂分散剤としては、Solsperse(登録商標)の商標名で販売されるもの、例えば、Solsperse(登録商標)54000が挙げられる。スルホサクシネートは、一般的に、アニオン性界面活性剤として与えられ、エマルションまたは油を含まない溶液において有用である。特に好ましいスルホサクシネートとしては、Aerosol(登録商標)の商標名で販売されるもの、例えば、Aerosol(登録商標)OT(ジオクチルナトリウムスルホサクシネート)が挙げられる。オクチルフェノールエトキシレートは、エマルションまたは油を含まない溶液において有用な非イオン性界面活性剤である。特に好ましいオクチルフェノールエトキシレートとしては、TritonTMの商標名で販売されるもの、例えば、TritonTMXが挙げられる。
【0011】
さらに好ましい界面活性剤は、石けんを含む。石けんは、一般的に、脂肪酸の塩であり、典型的には、植物油または動物油と脂肪を強塩基性溶液で処理することによって得ることができる。本発明の配合物に、種々の石けんを使用してもよい。好ましい実施形態では、石けんは、カスチール石けん(植物油(例えば、オリーブ油)と水酸化ナトリウムから作られる石けん)、ココナツ油カリウム石けん、またはこれらの混合物である。
【0012】
1種類以上のさらなる界面活性剤を本発明の乾燥配合物または液体配合物で使用してもよい。これらのさらなる界面活性剤は、石油化学品、植物油および/または動物脂肪から誘導されてもよい。さらなる界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性であってもよい。例示的なアニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート、直鎖アルキルサルフェート、直鎖アルキルエトキシサルフェート、直鎖アルキルスルホネート、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルアリールスルホネート、直鎖アルケンベンゼンスルホネート、アルコールエーテルサルフェート、ラウレスサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、有機リン酸エステル、アルキルアリールサルフェート、アリールスルアルファオレフィンスルホネート、アルキルアリールスルホネート、メチルエステルスルホネート、アルキルスルホン酸塩、アルコールサルフェート、ナトリウムスルホネートおよびアンモニウムスルホネート、アルキルホスフェート、スルホサクシネート、およびアルキルフェノールエーテルサルフェートが挙げられる。例示的なカチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは臭化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムまたは臭化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウムまたは塩化セトリモニウム、塩化アンモニウム、塩化ラウリルジモニウム、水酸化アンモニウム、塩化アルキルピリジニウムおよび臭化アルキルピリジニウム、および長鎖第四級アンモニウム化合物が挙げられる。例示的な両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、エーテルアミンオキシド、ココアミドプロピルジメチルアミンオキシド、ジエステルホスファチドおよびトリエステルフォスファチドで構成されるリン脂質、およびレシチンなどの天然由来の界面活性剤が挙げられる。例示的な非イオン性界面活性剤としては、直鎖または非フェノールアルコールまたは脂肪酸、脂肪族アルコールのエーテル、エトキシ化アミンまたはエーテルアミン、エトキシ化アミン、エステル、ポリソルベート、直鎖エチレンオキシド/プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドブロックコポリマー、プロピルアミン、グリコール、アミンオキシド、およびアルコールエトキシレートおよびアルコールエトキシサルフェート、およびアルキルポリグリコシドが挙げられる。好ましい実施形態では、1種類以上のさらなる界面活性剤は、天然源から誘導されるか、または一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe:GRAS)として認識されている。特定の実施形態では、1種類以上のさらなる界面活性剤が消泡剤として作用してもよい。特に好ましい消泡剤としては、アルキルアルコールエトキシレート、シロキサンおよびパラフィンが挙げられる。
【0013】
ナノ粒子、界面活性剤および/または他の構成成分のための液体担体は、一般的に、溶媒(水性および非水性、有機物および無機物を含む)、分散剤、樹脂、エマルション系、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、特定の実施形態では、液体担体は、水、油、グリセリン、有機溶媒、ハロゲン化溶媒、増粘剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態では、水が好ましい溶媒である。特定の他の実施形態では、非水性溶媒が好ましく、有機液体およびハロゲン化液体を含んでいてもよい。特定の好ましい実施形態では、溶媒は、有機溶媒、例えば、ミネラルスピリット(すなわち、脂肪族および脂環式のC7-C12炭化水素の混合物を含む石油由来の有機溶媒)、キシレン、アルコール、トルエンなどである。例えば、特定の好ましい実施形態では、溶媒は、メタノールである。例示的なハロゲン化液体溶媒としては、ヒドロフルオロエーテル溶媒、例えば、メチルノナフルオロブチルエーテル(例えば、3M(登録商標)製のHFE-7100)が挙げられる。他の好ましい実施形態では、溶媒は、石油由来の有機溶媒、例えば、ミネラルスピリット(塗料希釈剤)である。他の好ましい石油由来の溶媒としては、高粘度剤(すなわち、増粘剤およびゲル化剤)が挙げられる。真の溶液ではなく、分散物または懸濁物を生成するために分散剤を使用してもよい。エマルション系は、水中油系または油中水系であってもよく、一般的に、それぞれの量の油、水、界面活性剤で構成される。しかし、いくつかの好ましい実施形態では、乳化系は、水以外の溶媒(例えばミネラルスピリット)を利用する。油は、天然であってもよく、または合成であってもよい。特定の好ましい実施形態では、油は、亜麻仁油である。種々の樹脂を担体として使用してもよい。樹脂担体は、組成物から固い被膜が作られる用途において、特に有用である。例示的な樹脂担体としては、シロキサン樹脂、溶媒系または水系の耐化学薬品被膜(CARC)樹脂が挙げられる。
【0014】
任意要素の添加剤も、配合物に含まれていてもよい。例えば、配合物を好ましいpH範囲にするためにpH調整剤を使用してもよい。特定の実施形態では、液体配合物のpHは、約6~約10、さらに好ましくは約7.5~約8.5である。本発明の配合物に有用なpH調整剤としては、鉱物酸および塩基、有機酸およびアミンが挙げられる。好ましい実施形態では、pHを下げるために、配合物に塩酸またはクエン酸が含まれる。
【0015】
水を軟水化する(すなわち、カルシウム(Ca2+)およびマグネシウム(Mg2+)によって生じる水の硬度を下げる)ように、水溶液中で金属イオンをキレート化し、または捕捉するために、化学薬品を使用してもよい。例示的なキレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、メチルグリシン二酢酸、ナトリウムトリポリホスフェート、四ナトリウムピロホスフェート、ヘキサメタホスフェート、四カリウムピロホスフェート、ビスホスホネート、シトレート、タートレート、スクシネート、グルコネート、ポリカルボキシレート、トリエタノールアミン、ゼオライト、およびシリケート(二ケイ酸ナトリウムを含む)、の有機酸および塩が挙げられる。
【0016】
所望の粘度の液体配合物を達成するために、増粘剤または摩擦低減剤が使用されてもよい。増粘剤は、当該技術分野で十分に報告されており、他の特性を実質的に変えることなく、液体の粘度を上げるために液体配合物に含まれる。例示的な摩擦低減剤としては、アニオン性、カチオン性または両性のポリアクリルアミドが挙げられる。
【0017】
汚れを分解し、界面活性剤(洗剤)による汚れの除去を容易にするために、配合物に酵素が含まれていてもよい。酵素は、配合物中の標的とされる汚れの具体的な種類に応じて選択することができる。例えば、アミラーゼは、炭水化物を分解するために含まれてもよく、プロテアーゼは、タンパク質を分解するために含まれてもよく、リパーゼは、脂質および脂肪を分解するために含まれてもよく、および/またはセルラーゼは、セルロースを分解するために含まれてもよい。汚れが再沈降するのを防ぐか、または阻止するために、堆積防止剤も含まれていてもよい。例示的な堆積防止剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0018】
漂白剤は、布地を白色化し、および/または漂白し、汚れ除去を促進するために含まれてもよい。漂白剤は、塩素系(例えば、次亜塩素酸塩)または非塩素系であってもよい。例示的な非塩素系漂白剤としては、過ホウ酸塩および炭酸塩過酸化水素化物、および過酸化水素または過酢酸を生成するための活性化剤が挙げられる。蛍光増白剤も含まれていてもよく、蛍光増白剤は、布地から反射する光を強くするための青色の染料または顔料を含み、布地をより白くすることができる。例示的な蛍光増白剤としては、アミノトリアジン、クマリンおよびスチルベンが挙げられる。
【0019】
布地をさらに充填させ、柔軟にし、静電気によるまとわりつき、しわ、乾燥時間を減らすために、布地柔軟剤が含まれていてもよく、特に、洗濯洗剤用途のために調製される配合物に含まれていてもよい。例示的な布地柔軟剤としては、カチオン性界面活性剤、例えば、長鎖第四級アンモニウム化合物および長鎖アミンが挙げられる。
【0020】
ゲル生成および配合物の分離を防ぐことによって、液体配合物の好ましい注ぎ特性を達成するために、ヒドロトロープが含まれてもよい。例示的なヒドロトロープとしては、短鎖芳香族スルホネート、例えば、キシレンスルホネート、クメンスルホネート、グリコールエーテルサルフェートおよび尿素が挙げられる。
【0021】
防腐剤は、配合物における微生物の成長を防ぐために含まれてもよく、有機構成成分の分解を防ぐのに役立つ場合がある。例示的な防腐剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、塩化第四級アンモニウム、アルコールおよびグルタルアルデヒドが挙げられる。配合物に特定の香りを加えるか、または特定の臭気をマスキングするために、香料も含まれていてもよい。特に好ましい香料としては、天然の精油が挙げられ、これも配合物に抗菌特性を加える。
【0022】
本発明に従って調製される配合物は、固体乾燥粉末混合物として調製することができる。例えば、特定の好ましい実施形態では、ナノ結晶性金属酸化物および/または金属水酸化物粒子と、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー、ポリソルベート、メタクリル酸ナトリウム、ポリアミド系樹脂分散剤、スルホサクシネートおよびオクチルフェノールエトキシレートからなる群から選択される1種類以上の界面活性剤とを含む(本質的にこれらからなる、これらからなる)、固体粉末混合物を調製することができる。好ましい乾燥混合物では、ナノ結晶性粒子は、混合物の合計重量を基準として約70重量%~約99重量%、好ましくは約80重量%~約95重量%、さらに好ましくは約85重量%~約93重量%のレベルで存在する。このような好ましい乾燥混合物では、1種類以上の界面活性剤は、混合物の合計重量を基準として約1重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約20重量%、さらに好ましくは約7重量%~約15重量%のレベルで存在する。さらに、好ましい実施形態では、ナノ結晶性粒子:界面活性剤の重量比は、約50:1~約2:1、好ましくは約40:1~約5:1、さらに好ましくは約35:1~約7:1である。配合物は、特定の用途にとって望ましいと思われる場合、または特定の用途にとって必要であると思われる場合、さらに、他の構成成分または添加剤(例えば上述のもの)を含んでいてもよい。混合物と物品とを接触させることによって、物品から標的物質(例えば、悪臭標的物質)を除去するために、乾燥した粉末状の混合物を固体形態で使用してもよい。接触したら、標的物質の少なくとも一部が、ナノ結晶性粒子によって吸着される。
【0023】
上述の固体粉末混合物を液体担体に添加し、液体懸濁物を作成してもよい。例えば、特定の実施形態では、固体粉末混合物を、約1重量部~約1,000重量部の液体担体、好ましくは、約2重量部~約100重量部の液体担体、さらに好ましくは、約5重量部~約50重量部の液体担体、なおさらに好ましくは約7重量部~約20重量部の液体担体、最も好ましくは約8重量部~約12重量部の液体担体あたり、1重量部のレベルの固体粉末混合物で、液体担体(例えば、水、メタノール)に添加する。
【0024】
液体懸濁物は、各構成成分を個々に液体担体に加えることによって、または乾燥構成成分を乾燥した粉末状の混合物として加えることによって調製されてもよい。それにもかかわらず、本発明の好ましい実施形態で使用される構成成分は、乾燥構成成分の混合物を調製し、包装し、輸送し、保存し、次いで、使用前に水に加えることができるという点で有利である。本発明の前には、ナノ結晶性粒子および界面活性剤の液体懸濁物は、一般的に不安定であり(使用不可能であり)、高レベルの粒子沈降が起こるため、金属酸化物/水酸化物ナノ結晶性粒子および界面活性剤の乾燥配合物を液体に加えるのが困難であることがわかっていた。しかし、本発明の実施形態に従って調製される配合物は、せいぜい粒子を懸濁させるために穏和な撹拌を必要として液体懸濁物を生成するために液体担体に容易に分散可能である乾燥固体粉末として調製されてもよい。液体懸濁物は、ジェル、クリームまたは他の増粘した生成物として調製されてもよい。特定の実施形態では、液体懸濁物中の元々の乾燥粉末混合物の濃度は、懸濁物の合計重量を基準として、約1重量%~約50重量%、好ましくは約3重量%~約25重量%、さらに好ましくは約5重量%~約15重量%、最も好ましくは約7重量%~約10重量%である。好ましい懸濁物では、ナノ結晶性粒子は、懸濁物の合計重量を基準として約0.1重量%~約50重量%、好ましくは約0.5重量%~約25重量%、さらに好ましくは約1重量%~約12重量%、最も好ましくは約7重量%~約10重量%のレベルで存在する。このような好ましい懸濁物では、1種類以上の界面活性剤は、懸濁物の合計重量を基準として約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.05重量%~約5重量%、さらに好ましくは約0.1重量%~約2重量%、最も好ましくは約0.5重量%~約1重量%のレベルで存在する。
【0025】
本発明の実施形態に従って調製される安定な懸濁物は、硬質表面および繊維製品(以下にさらに詳細に記載する)を含め、種々の表面に塗布することができる。例えば、懸濁物は、液体、噴霧、霧、エアロゾル、ペースト、ゲル、拭き取り剤、蒸気または泡状物として表面に塗布されてもよい。特に、懸濁物に塗布すると、接着剤、静電接続または物理的な捕捉を行うことなく、ナノ結晶性粒子を表面に結合したままにすることができるが、特定の実施形態では、このような方法を使用してもよい。特定の実施形態では、懸濁物を表面に塗布した後に乾燥させる。懸濁物を乾燥させた後、ある量の金属酸化物/水酸化物ナノ結晶性粒子が、懸濁物を乾燥させた後、表面に留まる(例えば、表面に結合する)。特定の他の実施形態では、塗布した後に表面で懸濁物を乾燥させることなく、水を用いて表面から懸濁物を洗い流す。
【0026】
特定の好ましい実施形態では、液体懸濁物は、油を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「~を実質的に含まない」は、その構成成分の重量%が、組成物の合計重量を100重量%として0.01重量%未満であることを意味する。驚くべきことに、特定の油を含まない懸濁物/溶液が、同じ活性成分を含む油/溶媒エマルションと比較して、高い殺生物効能(特にBacillus subtilusの芽胞に対して)を示すことを発見した。特定の好ましい殺生物性懸濁物は、界面活性剤としてスルホサクシネートおよび/またはオクチルフェノールエトキシレートを含む。したがって、特定の実施形態では、殺生物性懸濁物は、水中に、ナノ結晶性粒子と、スルホサクシネート、オクチルフェノールエトキシレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤との混合物を含み(これらから本質的になる、これらからなる)、油を実質的に含まない。このような実施形態では、ナノ結晶性粒子は、懸濁物中に、懸濁物の合計重量を基準として約1重量%~約50重量%、好ましくは約5重量%~約40重量%、さらに好ましくは約10重量%~約30重量%のレベルで存在する。界面活性剤は、液体懸濁物中に、懸濁物の合計重量を100重量%として約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.1重量%~約5重量%、さらに好ましくは約1重量%~約3重量%のレベルで存在する。
【0027】
または、ナノ結晶性粒子は、上述の界面活性剤を利用しない安定な液体配合物の状態で与えられてもよい。例えば、好ましい実施形態では、ナノ結晶性粒子と、亜麻仁油と、溶媒との混合物を含む(これらから本質的になる、これらからなる)安定な液体組成物が提供される。特定の好ましい実施形態では、溶媒は、有機溶媒(例えば、ミネラルスピリット)またはハロゲン化溶媒である。このような実施形態では、ナノ結晶性粒子は、液体組成物中に、液体組成物の合計重量を基準として約30重量%~約60重量%、好ましくは約50重量%~約60重量%、さらに好ましくは約52重量%~約58重量%のレベルで存在する。亜麻仁油は、液体組成物中に、液体組成物の合計重量を基準として約5重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約15重量%、さらに好ましくは約9重量%~約11重量%のレベルで存在する。溶媒は、液体組成物中に、液体組成物の合計重量を基準として約20重量%~約50重量%、好ましくは約25重量%~約45重量%、さらに好ましくは約30重量%~約40重量%のレベルで存在する。特に好ましい実施形態では、溶媒は、ミネラルスピリット(すなわち、塗料希釈剤)である。ナノ結晶性粒子、亜麻仁油および溶媒の特定の組み合わせによって、有利なことに噴霧が容易であり、多種多様な材料に付着し、乾燥させると容易に除去することができる液体組成物が得られる。
【0028】
ナノ結晶性粒子と、亜麻仁油と、溶媒との混合物を含む(これらから本質的になる、これらからなる)液体組成物を、標的物質を含む空間および/または表面に塗布することによって、標的物質(例えば、有害な化学薬品および/または悪臭物質)を吸収するために、この液体組成物を使用してもよい。標的物質は、液体組成物と標的物質とを、標的物質の少なくとも一部を吸収する条件下で接触させることによって、吸収される。または、標的物質の混入を予防するか、または阻止するために、液体組成物が使用されてもよい。例えば、液体組成物は、硬質表面または繊維製品の表面に塗布され、乾燥され、それによって、表面にナノ結晶性粒子を含む乾燥被膜を生成してもよい。
【0029】
別の好ましい実施形態では、ナノ結晶性粒子と、グリセリン(例えば、植物グリセリン)と、水と、界面活性剤との混合物を含む(これらから本質的になる、これらからなる)安定な液体組成物が提供される。特定の実施形態では、ナノ結晶性粒子は、前記組成物中に、組成物の合計重量を基準として約1重量%~約10重量%、好ましくは約3重量%~約8重量%、さらに好ましくは約4重量%~約6重量%のレベルで存在する。グリセリンは、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として約1重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約20重量%、さらに好ましくは約8重量%~約12重量%のレベルで存在する。水は、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として約1重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約20重量%、さらに好ましくは約8重量%~約12重量%のレベルで存在する。界面活性剤は、前記組成物中に、前記組成物の合計重量を基準として約50重量%~約90重量%、好ましくは約60重量%~約80重量%、さらに好ましくは約70重量%~約75重量%のレベルで存在する。特に好ましい実施形態では、界面活性剤は、石けんである。
【0030】
ナノ結晶性粒子と、グリセリンと、水と、界面活性剤との混合物を含む(これらから本質的になる、これらからなる)液体組成物を、標的物質を含む表面に塗布し、この表面から組成物を洗い流すことによって、表面を洗浄するか、または標的物質を吸収するために、この液体組成物を使用してもよい。特に好ましい実施形態では、表面は、皮膚(例えば、ヒトの皮膚)である。このような実施形態では、液体組成物は、ハンドソープなどの抗菌性消毒剤として有用である。他の好ましい実施形態では、表面は、無生物物体の表面であり、例えば、食事の準備、病院などで使用される「硬質」表面である。このような実施形態では、物体表面を除去し、ヒトへの使用および取り扱いのために物体を安全にするために、液体組成物を使用してもよい。
【0031】
本発明の実施形態に従って調製される配合物は、種々の用途に有用である。有利には、特定の実施形態では、本明細書に記載する乾燥構成成分の混合物は、包装され、エンドユーザに販売されてもよく、乾燥構成成分を、塗布前の使用時に液体に加えてもよい。1つの例示的な用途は、洗濯洗剤製品であり、液体として、または乾燥混合物として調製することができる。洗剤用途は、pHを調整し、キレート化し、金属に結合して硬度を下げるために、種々の洗濯用添加剤(いわゆるビルダー)も含んでいてもよい。
【0032】
また、配合物を、軟質表面または硬質表面に対する殺生物剤または除去剤として使用してもよい。本発明の配合物を、植物細菌有機体(例えば、Escherichia coliおよびStaphylococcus aureus)に対する有効な殺生物剤として使用してもよい。例示的な軟質表面としては、カーペット、内装、布地(衣料用布地を含む)、紙製品、皮革、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される繊維材料が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、配合物を、繊維製品表面(例えば、織られた繊維製品表面または不織布繊維製品表面)に塗布する。このような実施形態では、有用な物品が準備されてもよい。例えば、本発明の液体配合物を拭き取り剤に適用し、配合物を乾燥させ、それによって、拭き取り剤に結合した固体ナノ結晶性粒子を残すことによって、化学除去拭き取り剤を調製してもよい。拭き取り剤を、消毒または化学除去の拭き取り剤として使用することができ、固体または液体の残渣はほとんど残らないか、または全く残らず、化学兵器剤(CWA)を、毒性がほとんどないか、または無毒性の化合物へと変換することができる。亜鉛および銅の酸化物は、拭き取り剤を、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniaeおよびEscherichia coliに対する抗菌性拭き取り剤として使用する用途に特に好ましいナノ結晶性材料である。拭き取り剤として使用するのに特に適した布地としては、Polartec(登録商標)Power Dry、Malden Mills、ローレンス、MA製のポリエステル;Dryline(登録商標)、Milliken & Co.製の71%ナイロン、12%ポリエステル、17%ライクラ材料;Spartanburg,SC,Coolmax(登録商標)、Invista Co.、ウィチタ、KS製の52%タクテルナイロン、39%ポリエステル、9%ライクラ布地;Coolmax(登録商標)Doubleplay、これもInvista製の100%ポリエステル材料;Wickaway(登録商標)terry Lycra、Seattle Fabrics、シアトル、WA製のポリエステル;Under Armour(登録商標)、Under Armour Inc.、ボルチモア、MD製のナイロン/ポリエステル/エラスチン布地;Dryskin(登録商標)、Schoeller Textil AG、ゼーヴェレン、スイス製の80%ナイロン、15%ポリエステル、5%ライクラ;およびHuggies(登録商標)使い捨てオムツに使用される内側層から作られる布地(Kimberly-Clark Global Sales,Inc.、ニーナ、WI)が挙げられる。最も好ましい実施形態では、布地は、Dryline(登録商標)である。
【0033】
他の好ましい実施形態では、配合物は、化学薬品保護衣(CPC)のための反応性ライナーインサートとして使用するための繊維製品に塗布されてもよい。ライナーは、例えば、2-CEES、HCN、NH3およびDMMPのためのClass II Protective Garmentとして使用されてもよい。
【0034】
例示的な硬質表面としては、非繊維材料、例えば、プラスチック、金属、木材、壁用乾燥塗料、フォームおよびこれらの組み合わせが挙げられる。配合物は、上述のいずれかの軟質表面または硬質表面に液体または蒸気として、例えば、噴霧、霧、エアロゾル、ペースト、ゲル、拭き取り剤または泡状物として泡状物塗布されてもよい。特定の実施形態では、軟質または硬質の表面は、閉じた空間であってもよい(例えば、空気がほとんど循環しないか、または全く循環しない部屋)。配合物は、樹脂状物質に組み込まれ、硬質表面に塗布されてもよく、それにより、表面に殺生物性被膜が生成する。このような被膜は、特に、植物細菌有機体(例えば、Escherichia coliおよびStaphylococcus aureus)に対して有効である。
【0035】
好ましい実施形態では、ナノ結晶性粒子は、接着剤、静電接続または物理的な捕捉を行うことなく、表面(例えば、硬質表面または繊維製品表面)に結合する。しかし、他の実施形態では、従来の接着剤および方法を使用し、表面に粒子を結合させてもよい。従来の積層加工は、従来の装置および市販の接着剤系を利用して材料を結合することであるとゆるく定義することができ、これは、容易に使用され、十分に既知の化学を有する。ほとんどの場合に、これらの接着剤および装置の性能は、十分に理解されており、繊維産業の中で広範囲にわたる歴史を有している。従来の接着剤の例としては、UV硬化性接着剤、感圧性接着剤、ホットメルト接着剤、瞬間接着剤および水系接着剤が挙げられる。
【0036】
好ましい実施形態では、配合物は、臭気制御に特に適している。例えば、表面が悪臭物質で汚染されている場合、本発明の液体懸濁物を表面に塗布すると、悪臭物質の少なくとも一部が、懸濁物中のナノ結晶性粒子によって吸着されるようにすることができる。吸収され得る例示的な臭気および悪臭物質としては、動物の臭気、動物排泄物の臭気、アスファルトの煙、炭化した物質、洗浄化学薬品、腐敗した身体、腐敗した植物、洗剤、消毒剤、オムツ、排気ガス、燃料(すなわち、ガソリン/ディーゼル)、揮発性有機化合物の煙(例えば、塗料、ワニスおよび溶媒の臭気)、有機溶媒、湿気または洪水によって生じる臭気(すなわち、カビおよび白カビ)、ヒトの身体の臭気(すなわち、汗、細菌感染、尿および糞便の臭気)、狩猟時の臭気(すなわち、シカの尿)、駆除剤、調理場の臭気(すなわち、冷蔵庫の臭気、焦げたフード、調理時の臭気、魚、鶏肉、ニンニク、タマネギ、腐った油)、医薬の臭気、下水ガス、タバコ(例えば、タバコの煙の臭気)、ゴミ、細菌、カビ、真菌によって生じる他の臭気、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ナノ結晶性粒子によって吸着され得る揮発性有機化合物としては、アクロレイン、アセトン、エタノールアミン、ディーゼル燃料、ホルムアルデヒド、フッ化水素酸、メタノール、塩化メチレン、硝酸、ニトロベンゼン、リン酸、ポリビニルアルコール、硫酸、チオウレア、トルエン、トリエタノールアミン、アクリル酸メチル、酢酸、メチルピラジン、アクリロニトリル、不揮発性ニトロソアミン、クロトンアルデヒド、N-ニトロソアミン、カルボン酸、フェノール、DDT/デリリン、ピロリジン、ジメチルニトロソアミン、ステアリン酸、エチルアミン、トリメチルアミン、塩化ビニル、フルフラール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
本発明の注目に値する利点は、金属酸化物/水酸化物配合物の移動が容易であり、貯蔵安定性が高いことである。液体懸濁物は、従来の粒子/界面活性剤/担体溶液よりも高い安定性を示す。例えば、10mLの水に分散した1gのナノ結晶性粒子を含む本発明の特定の実施形態に係る液体懸濁物は、撹拌してから少なくとも3分間、好ましくは少なくとも5分間、さらに好ましくは少なくとも10分間、最も好ましくは少なくとも18分間、50%未満の粒状物の沈降を示す。さらに、本発明の特定の実施形態に従って調製される液体懸濁物は、25℃での静止条件で少なくとも約4日間、物理的に安定なままであり、沈降した懸濁物は、単純な撹拌(例えば、振り混ぜる)ことによって容易に再び懸濁させることができる。本発明の配合物は、界面活性剤を含有する配合物中であっても、望ましい臭気制御も達成する。例えば、本発明の実施形態に従って調製される固体の粉末状混合物または乾燥した懸濁物の残渣が、閉じた空間でジエチルアミンと接触すると、その接触によって、閉じた空間内のジエチルアミンの濃度の少なくとも約75%の減少、好ましくは少なくとも約80%の減少、最も好ましくは少なくとも約87%の減少が起こる。さらに、本発明の配合物は、金属酸化物/水酸化物を布地、繊維製品および他の多孔性および非多孔性の材料により良く浸透する。さらに、配合物は、種々の表面に塗布されると改良された、さらに均一な被膜を与え、粉末状の煙または粉末状の廃棄物を防ぐ。他の利点は、以下で与えられ、特許請求の範囲で与えられる例から明らかであろう。
【実施例】
【0038】
以下の例は、本発明の実施形態に基づく配合物および効能試験を示す。しかし、これらの実施例は、実例として与えられており、本発明の範囲全体に対する限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0039】
[実施例I]
界面活性剤が粉末を安定化させる能力の判定。2種類のナノ結晶性粒子粉末ブレンド(配合物1および2)と数種類の界面活性剤または界面活性剤ブレンドを用いて試験を実施した。配合物1は、ナノ結晶性粒子のMgO/ZnO/TiO2の50/25/25ブレンドであり、配合物2は、MgO/ZnOナノ結晶性粒子の80/20ブレンドであった。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、非イオン性界面活性剤であるポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F-68)、ポロキサマー188とSDSのブレンド、およびアニオン性界面活性剤である脂肪族アルコールサルフェート(Ufarol(登録商標))、であった。
【0040】
4ドラムバイアル中、1グラムの粉末と、測定した量の界面活性剤とを乾燥状態で混合し、次いで、10mLの水を添加した。このバイアルを十分に混合し、次いで、静置した。タイマーを使用し、粉末が初期体積の半分まで沈降するレベルになる時間量を測定し、サンプル間の比較を行った。結果を以下の表1に示す。
【0041】
【0042】
試験した組み合わせの中で、ポロキサマー188は、最終濃度0.9%で、溶液中で最良の粉末安定性を得た(粉末濃度9%)。配合物2は、配合物1よりもわずかに良い安定性を示した(特に、P188界面活性剤を用いた場合)。
【0043】
噴霧する能力。配合物1および配合物2の粉末を個々に、ポロキサマー188界面活性剤(35g粉末、3.5g界面活性剤)の入った瓶の中で混合し、次いで、Professionalグレードの噴霧ボトルの中で0.35Lの水を加えた。これにより、粉末9%と界面活性剤0.9%の最終組成を得た。この混合物を十分に振り混ぜ、次いで、表面に噴霧した。上述の瓶を約4時間静置し、次いで、十分に振り混ぜた。次いで、可能ならば、混合物を再び噴霧した。一晩静置した後にも、これを繰り返した。
【0044】
配合物1の懸濁物を均一に噴霧したが、この噴霧ボトルは、材料の噴霧が困難な場合があった。4時間の待ち時間の後、懸濁物は、著しく沈降したが、振り混ぜると、この材料は容易に混合した。しかし、噴霧ボトルは、噴霧しようとしても材料を放出しなかった。噴霧ヘッドを水で洗浄した後、噴霧ボトルは再び機能したが、噴霧ヘッドが再び詰まったかのように、トリガーを搾るのが困難な場合が何度もあった。これは、一晩放置した後も同じであった。全ての場合に、放出された懸濁物が乾燥すると、表面に沿って均一な粉末の被膜が得られたようであった。
【0045】
配合物2の懸濁物も均一に噴霧され、材料の噴霧に困難さはなかった。4時間の待ち時間の後、材料は沈降したが、振り混ぜると容易に混合して溶液に戻った。ノズルを洗浄するために数回ポンピングした後、噴霧ボトルは、洗浄する必要なく、懸濁物を放出することができた。これは、一晩経過後にも同じであった。配合物1の懸濁物を用いたとき、全ての噴霧期間で、乾燥させると粉末の均一な被膜が得られた。
【0046】
次いで、配合物2の懸濁物を、基本的な噴霧ボトルに移し、懸濁物は、何の困難さもなく噴霧された。このボトルを4日間静置し、その後、詰まることなく再び噴霧された。
【0047】
[実施例II]
界面活性剤が粉末を安定化させる能力の判定。配合物1、配合物2の粉末、数種類の界面活性剤を用いて試験を実施した。全ての界面活性剤は、Tween(登録商標)20(ポリソルベート20、ソルビタンモノラウレートのポリオキシエチレン誘導体)およびDaxad(登録商標)30(25重量%の固形分を含むポリメタクリル酸ナトリウム溶液)を除き、乾燥したものであった。Pluronic(登録商標)界面活性剤は、異なる分子量を有する種々のポロキサマーを含む。
【0048】
1グラムの粉末と、0.1gの界面活性剤とを4ドラムバイアルに添加し、次いで、10mLの水を添加した。このバイアルを十分に混合し、次いで、静置した。タイマーを使用し、粉末が初期体積の半分まで沈降するレベルになる時間量を測定し、サンプル間の比較を行った。結果を以下の表2に示す。
【0049】
【0050】
試験した組み合わせの中で、ポロキサマー188は、最終濃度0.9%で、溶液中で最良の粉末安定性を得た(粉末濃度9%)。先の実施例と同様に、配合物2の懸濁物は、配合物1よりもわずかに良い安定性を示した。この試験は、ナノ構造化金属酸化物を安定化する際の界面活性剤の構造および化学の重要性を示すものである。試験したPluronic(登録商標)の非イオン性のポリプロピレンおよびポリエチレンブロックコポリマー界面活性剤(F-38、F-68、F-87およびF-108)の差は、金属酸化物粒子の安定化にあった。これらの界面活性剤について、分子量は、F-38について4700から、F-68について8400、F-87について7700、F-108について14,600まで大きくなる。これらの界面活性剤について、親水性/親油性バランス(HLB)は、それぞれ、31から、29、24、27までである。驚くべきことに、Pluronic(登録商標)F-68(ポロキサマー188)は、安定性について好ましいPluronic(登録商標)であることが示された。
【0051】
[実施例III]
乾燥界面活性剤の上述の試験は、ポロキサマー188(P188)が、懸濁物の状態で配合物1の粉末を最も良く安定化させることができることを示した。先の試験の焦点は、懸濁物中の粉末の安定性であった。さらなる試験を3回ずつ繰り返し行い、界面活性剤(P188)を用い、また、用いずに、懸濁物の効能を判定した。各懸濁物の一部(P188を含むものと含まないもの)を、粉末になるまで乾燥させた。
【0052】
700mLの水に懸濁させた70gの配合物1の粉末を用い、配合物1の懸濁物を調製した。次いで、界面活性剤を含む懸濁物の場合、0.7gのポロキサマー188を追加した。次いで、懸濁物を十分に混合した。また、各懸濁物の一部(約300g)を、105℃の乾燥機で粉末になるまで乾燥させ、効能について試験した。
【0053】
液体懸濁物の場合、効能は、スカンクチオールに対する「表面試験」を用いることによって決定された。表面試験では、仕切られた場所またはカーペットをスカンク臭気で処理し、その後、配合物1の懸濁物で処理した。次いで、この区域を洗浄し、風乾し、その時点で、この区域の匂いを嗅ぎ、スカンク臭気が顕著に減少したかどうかを判定した。臭気の顕著な減少が達成された場合には、試験結果は、「合格」と記録された。
【0054】
乾燥粉末の場合、効能は、ジエチルアミンに対する「臭気効能」を用いて試験された。臭気効能試験では、測定した量の吸収剤粉末を、測定した量のジエチルアミンと共にバイアル内に密封した(典型的には、吸収剤:薬品の比率は25:1)。次いで、バイアル中の気体ヘッドスペースをサンプリングし、GC-FIDによって分析した。次いで、存在する薬品の量を、吸着剤を含まないバイアルと比較し、除去された薬品%を決定した。
【0055】
さらに、乾燥粉末の表面積を測定し、界面活性剤の存在が配合物1の粉末の表面積を小さくするかどうかを判定した。
結果を以下の表3に示す。
【0056】
【0057】
結果からわかるように、P188界面活性剤が存在しても、乾燥した粉末の臭気効能および表面積に対し、ほんの小さな効果しかなかった。未処理の配合物1粉末の場合(懸濁物を調製するのに使用したのと同じロット)、臭気効能は、99%除去され、表面積は、281m2/gであった(データは表3に示していない)。このデータは、未処理の配合物1の粉末は、非常に大きな表面積を有しているが、ほぼ匹敵する効能を有することから、表面積が、効能において鍵となるパラメータではないことを示唆している。臭気効能データの両側t検定から、P値0.188が得られ、この値は、界面活性剤を含む場合と、含まない場合とで、配合物1の効能の統計的な差はないことを示している。同様の説明は、界面活性剤分子が、ジエチルアミンが穴に浸透し、化学薬品にさらされたときに穴を活性なままにするのを阻害しないことである。配合物1粉末の臭気効能の性能仕様は、80%より多く除去される。界面活性剤を含む処理されたサンプルの効能の減少は、統計的なものではないものの、この物質は、それでも最小の性能仕様を超えている。
【0058】
[実施例IV]
この実施例では、有機溶媒(メタノール)液体担体中、種々の異なる界面活性剤を用い、粉砕したナノ結晶性粒状物の安定性を試験した。
【0059】
製粉(粉砕)中に界面活性剤が存在するか、または製粉後に界面活性剤を添加しつつ、粉末状の金属酸化物/水酸化物のMgO/TiO2の65/35ブレンドを粉砕し、粒径をさらに細かくした。試験した界面活性剤は、DAXAD(登録商標)30(25重量%の固形分を含むポリメタクリル酸ナトリウム溶液)、Tween(登録商標)81(ソルビタンモノラウレートのポリオキシエチレン誘導体)およびSolsperse(登録商標)54000(ポリアミド樹脂系分散剤)を含んでいた。メタノール溶媒で懸濁物を調製し、懸濁物の安定性を試験した。結果を以下の表4に示す。
【0060】
表4:メタノール中の粉砕したMgO/TiO
2粒子の65/35ブレンドについての懸濁物安定性データ
【表4】
NA=適用せず
【0061】
特に、上のデータから、界面活性剤の濃度が高くても、必ずしも液体懸濁物の安定性が高まるわけではない。
【0062】
[実施例V]
この実施例では、除去剤または保護性の皮膜としての効能について、代替的な液体担体を含み、界面活性剤を含まない配合物を試験した。
【0063】
吸着剤の反応性を保持しつつ、壁、天井および他の表面に対する粉末除去剤の吸着について、数種類の噴霧可能な液体バインダー液を評価した。好ましい混合物は、亜麻仁油と、塗料希釈剤と、TiO2ナノ結晶性粒子との混合物を含んでいた。この組み合わせは、容易に噴霧され、多種多様な材料に付着し、乾燥させると容易に除去された。
【0064】
市販の水系アクリルバインダーを含む水系配合物の代わりに、55wt%のTiO2ナノ結晶性粒子と10wt%の沸騰した亜麻仁油と35wt%のミネラルスピリット(塗料希釈剤)との混合物を調製した。TiO2粒子を配合物に添加する前に、塗料希釈剤と亜麻仁油を十分に混合した。ジイソプロピルメチルホスホネート(DIMP、水不溶性神経薬品模擬物質)および2-クロロエチルエチルスルフィド(2-CEES、硫黄マスタード模擬物質)の除去について、この新しい亜麻仁油系配合物を試験した。この模擬物質をガラス試験片に10g/m2の速度で塗布し、模擬物質1gあたり吸収剤10gの速度で除去剤を塗布した(1平方メートルあたり配合物180g)。15分後または30分後(被膜が乾燥する前)、試験片をヘキサンで抽出し、残った薬品について、抽出物をGCによって分析した。亜麻仁油系の配合物は、DIMPに対して優れた除去活性を有しており、15分以内に99.8%の除去を示す。30分後、抽出によって、存在するDIMPのレベルが検出限界未満に落ちていたことが示された。30分後の抽出は、83.6%の2-CEESが除去されていることを示した。
【0065】
ガラス、タイル、アルミニウムおよびポリカーボネート表面を用いた被膜試験は、垂直に塗布したときに配合物が均一な被膜を残し、表面に十分に付着することを示した。得られた皮膜は、60~90分後に触れられるほど乾燥し、一晩放置すると完全に乾燥していた。得られた皮膜は、軽くこするか、または激しく叩くことによって除去することができるため、洗浄は容易であった。皮膜片は、粉塵ではなく、かなり大きな片の状態でフレーク状になる。噴霧した配合物のうちほぼ100%が表面に付着し、過剰噴霧分として廃棄物が出たとしても、わずかであった。種々の市販の噴霧器から噴霧することができ、水平、垂直、逆さまの表面に付着し、約1時間で乾燥し、一晩かけて十分に乾燥する。乾燥した皮膜は、こすることによって、水を噴霧することによって、または空気を吹きかけることによって除去することができ、きれいな表面が残る。
【0066】
[実施例VI]
この実施例では、殺菌活性について、水/油エマルションに対して、水系懸濁物を試験した。
【0067】
Bacillus subtilus芽胞に関する試験。生体活性について、さまざまな種類のエマルションを試験した。最も有効な配合物は、AP-CaO、AP-Ca(OH)2およびAP-MgOナノ粒子を含んでいた。約0.04gの界面活性剤を約5mLの水溶液に加えることによって、サンプルを調製した。この水溶液は、約10重量%の油と5重量%のナノ粒子とを含んでいた。ジオクチルナトリウムスルホサクシネート(Aerosol OT、AOT)およびポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル(Triton-X)の2種類の界面活性剤をエマルションの状態でサンプルに使用した。この配合物を、水-界面活性剤のみの溶液(油なし)でも試験し、溶液の効能をエマルションと比較した。結果を以下の表5に示す。
【0068】
表5:24時間後の、Bacillus subtilus芽胞に対する、種々のナノ粒子を含むエマルションまたは溶液の効果
【表5】
【0069】
表5に示されるように、AP-MgO/AOT溶液、AP-Ca(OH)2/AOTエマルション、AP-Ca(OH)2/AOT溶液およびAP-Ca(OH)2/Triton-X溶液は、接触から24時間後に、99.7~100%の最も高い死亡率が得られた。試験した他の配合物の中には、ZnO/AOTエマルション(98.9%)およびZnO/AOT溶液(55.5%)があった。AP-Mg(OH)2を含む配合物は、死を引き起こさないAP-Mg(OH)2/AOTエマルションおよびAP-Mg(OH)2/Triton-Xエマルションからなっていた。驚くべきことに、AP-Mg(OH)2/AOTおよびAP-Mg(OH)2/Triton-X溶液は、比較できるエマルションより良好に機能し、それぞれ死亡率86.9%および死亡率64.3%であった。
【0070】
[実施例VII]
この実施例では、安定な消毒剤配合物が提供される。この配合物は、皮膚の上で使用するのに安全であり、そのため、皮膚消毒剤(例えば、ハンドソープ)として使用するのに特に適している。
【0071】
表6:ナノ結晶性粒子を含む安定なハンドソープ配合物
【表6】
【0072】
[実施例VIII]
この実施例では、ナノ結晶性粒子を含む種々の樹脂被膜の殺生物効能を試験した。
【0073】
フーリエ変換赤外分光分析(FTIR)
未硬化の樹脂および組み込まれたナノ材料および/または模擬物質中で起こり得る相互作用を理解するために、単純なFTIRを配合物について行った。以下の液体樹脂の選択を受け入れた(表7)。
【0074】
【0075】
樹脂と、TiO2(20重量%)を含む樹脂とのIRスペクトルを比較すると、両スペクトルは、完全に重ね合わせることができるものであった。これに加え、TiO2またはベース樹脂のいずれかにおける変化を明らかにするための引き算操作から、いずれの構成成分についても顕著な構造的変化がないことを示した。したがって、ナノ結晶性TiO2と樹脂を、互いに変化することなく配合物中で合わせることができると結論付けるべきである。
【0076】
殺生物効能
試験片は、プライマーコートと重ね合わされ、さまざまな種類の樹脂でトップコーティングされた鋼鉄基材から構成されていた。一般的に使用されたプライマーコートは、亜鉛を含んでいる。多くの異なる樹脂(シロキサン、溶媒系または水系の耐化学薬品被膜(CARC)など)を使用した。試験片の構成成分および樹脂の殺菌活性を、チャレンジ有機体としてE.coliおよびS.aureusを用い、既に述べたようにASTM2180によって決定した。表8および9は、結果を示す。
【0077】
表8:Escherichia coliについてのASTM E 2180-01試験結果
【表8】
*BDL:検出限界未満。これらの試験片由来の計数プレートにおいて、細菌は回収されなかった。
【0078】
表9:Staphylococcus aureusについてのASTM E 2180-01試験結果
【表9】
*BDL:検出限界未満。これらの試験片由来の計数プレートにおいて、細菌は回収されなかった。
【0079】
表8および9に示されるように、S.aureusは、E.coliと比較して、試験片の構成成分から得られる抗菌活性に対する耐性が高かった。リン酸亜鉛の抗菌活性が予想された。しかし、鋼鉄コントロールの活性は、予想されないものであった。試験片の構成成分の殺菌活性がわかれば、最終的な試験片を試験した。いくつかのコントロール樹脂(ナノ結晶性材料を含まない未改質樹脂)は、弱い殺生物性であり、2種類のチャレンジ有機体に対し、2log未満の死亡率であった。
【0080】
最初に、ASTM試験方法を記載の通りに利用した。しかし、一連の試験中に、試験結果に関する問題が生じた。初期段階の試験片試験の間に、試験片のいくつかが、Escherichia coliではなく、Staphylococcus aureusに対して強い殺菌活性を有するようであることに気づいた。この結果は、グラム(-)有機体は、一般的に消毒されやすく、一方、グラム(+)有機体の方が耐性が高いというこの2種類の有機体の報告されている消毒耐性とは矛盾するものであった。さらなる観察から、これらの試験片を製造するために使用した樹脂は、きわめて疎水性であることも示した。Staphylococcus aureusは、疎水性表面に強く結合することが知られており、洗浄中の除去に抵抗し得る能力を有する。S.aureusが試験片の表面に強く結合したら、ASTMボルテックス工程中に細胞を回収することはできないだろう。その結果、寒天プレート上でコロニーが成長せず、試験片は、非常に殺菌性であるようにみえるだろう。ASTM試験中にみられる殺菌活性が真実のものであることを確実にするために、試験方法をわずかに改変し、確認工程を加えた。なお、この確認工程は、試験片がS.aureusに対して良好な殺菌活性を示す場合にのみ行った。
【0081】
この初期の成功の後、異なる保持量の殺生物性ナノ結晶性材料を含む多くの殺生物試験片を製造した。試験片のいくつかに対し、試験片表面に多くのナノ結晶性材料を露出させるために、プラズマ洗浄を含む製造後処理も行った。このアッセイのインキュベーション時間は、24±2時間であった。
【0082】
表10は、最終的な試験片を列挙し、殺菌活性を示す。
【0083】
表10:殺菌活性を有する最終的な試験片
【表10】
*BDL:検出限界未満。これらの試験片由来の計数プレートにおいて、細菌は回収されなかった。
【0084】
表10の結果を見ると、いくつかの注目すべき傾向がある。第1に、殺生物試験片をプラズマ洗浄すると、殺菌活性が上がった。第2に、項目29を除き、RNPの銀改質が必要であった。
【0085】
結論
植物細菌に対する殺生物試験片の性能は、きわめて良好である。3を超える対数減少は、そのコーティングがE.U.基準で殺胞子性であると分類するのに十分である。この例は、ナノ結晶性材料を種々の被膜に組み込む実現可能性を確立した。ナノ結晶性材料を含むことによって、明らかに生体活性が向上した。時間-死亡率試験は、1時間以内に測定可能なレベルでチャレンジ有機体の数に影響を与えるように生体活性が始まり、3時間以内に5を超える対数減少が起こることを示す。このレベルの生体活性は、医療用または公共の医療の場で非常に有用であろう。