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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】時計及び時計制御方法
(51)【国際特許分類】
   G04C 9/00 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
G04C9/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019021990
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128939
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋
(72)【発明者】
【氏名】及川 亮太
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132519(JP,A)
【文献】特開2006-064437(JP,A)
【文献】特開平6-94859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 9/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一軸に取り付けられている第一指針と、
前記第一軸と文字盤上における位置が異なる第二軸に取り付けられており、前記第一軸と前記第二軸との間の距離よりも長い第二指針と、
主補正信号を受信した場合、前記第二指針を前記第一軸に接触するまで第一回転方向に回転させる第一駆動処理を実行し、前記第一駆動処理の後に、前記第二指針を前記第一回転方向と反対の第二回転方向に規定ステップ数だけ回転させる第二駆動処理を実行する主補正処理を実行する主補正部と、
前記主補正処理の後に副補正信号を受信した場合、前記第二指針を前記第一回転方向又は前記第二回転方向に回転させる副補正処理を実行する副補正部と、
前記主補正処理の後に前記第二指針が指し示している位置と前記副補正処理の後に前記第二指針が指し示している位置との差を補正ステップ数として記憶する記憶部と、
前記副補正処理の後に再び前記主補正処理が実行される場合、前記第二駆動処理において前記第二指針を前記規定ステップ数に前記補正ステップ数を加算した更新後規定ステップ数だけ前記第二回転方向に回転させるように前記主補正部を制御する主補正制御部と、
を備える時計。
【請求項2】
主補正信号を受信した場合、第一指針が取り付けられている第一軸と文字盤上における位置が異なる第二軸に取り付けられており、前記第一軸と前記第二軸との間の距離よりも長い第二指針を前記第一軸に接触するまで第一回転方向に回転させる第一駆動処理を実行し、前記第一駆動処理の後に、前記第二指針を前記第一回転方向と反対の第二回転方向に規定ステップ数だけ回転させる第二駆動処理を実行する主補正処理を実行する主補正工程と、
前記主補正処理の後に副補正信号を受信した場合、前記第二指針を前記第一回転方向又は前記第二回転方向に回転させる副補正処理を実行する副補正工程と、
前記主補正処理の後に前記第二指針が指し示している位置と前記副補正処理の後に前記第二指針が指し示している位置との差を補正ステップ数として記憶する記憶工程と、
前記副補正処理の後に再び前記主補正処理が実行される場合、前記第二駆動処理において前記第二指針を前記規定ステップ数に前記補正ステップ数を加算した更新後規定ステップ数だけ前記第二回転方向に回転させるように前記主補正処理を制御する主補正制御工程と、
を含む時計制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計及び時計制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、時針、分針及び秒針を含む第一指針により時刻を表示する機能に加え、第一指針と異なる第二指針により時刻を表示する機能以外の機能を有する時計が広く流通している。時刻を表示する機能以外の機能としては、例えば、現在表示されている時刻がどの都市の時刻であるかを表示する機能が挙げられる。
【0003】
このような時計では、第一指針を駆動するステッピングモータとは別に第二指針を駆動するステッピングモータが設けられていることがある。ところが、このような時計では、例えば、時計に強い外部磁界が加わったり、時計に落下等の衝撃が加わったりすることで第二指針が動き、第二指針の動きが輪列を介してステッピングモータのロータを回転させ、第二指針が指し示している位置にずれが生じてしまうことがある。このようにして生じるずれを補正することができる電子時計として、例えば、特許文献1に開示されている電子時計がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4550203号公報
【0005】
特許文献1に開示されている電子時計は、所定の動作範囲内で往復動をする指針を備えており、補正パルスにより強制的に初期位置に戻され、当該初期位置において機構上強制的に停止されることにより当該指針に生じるずれを末端位置から離れる方向に移動させるためのパルスを入力して解消する。
【0006】
しかし、この電子時計は、ユーザが当該指針に生じるずれを解消する操作を行う負担を軽減することができないことがある。また、上述した第二指針が指し示す位置のずれを補正する操作は、上述した第一指針が表示する時刻を補正する操作よりも実施される頻度が低いため、ユーザに大きな負担を強いることがあり、ボタン等の数が少ない時計においては複雑な操作になってしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、第二指針が指し示す位置のずれを補正する操作を実行するユーザの負担を軽減することができる時計及び時計制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る時計は、第一軸に取り付けられている第一指針と、前記第一軸と文字盤上における位置が異なる第二軸に取り付けられており、前記第一軸と前記第二軸との間の距離よりも長い第二指針と、主補正信号を受信した場合、前記第二指針を前記第一軸に接触するまで第一回転方向に回転させる第一駆動処理を実行し、前記第一駆動処理の後に、前記第二指針を前記第一回転方向と反対の第二回転方向に規定ステップ数だけ回転させる第二駆動処理を実行する主補正処理を実行する主補正部と、前記主補正処理の後に副補正信号を受信した場合、前記第二指針を前記第一回転方向又は前記第二回転方向に回転させる副補正処理を実行する副補正部と、前記主補正処理の後に前記第二指針が指し示している位置と前記副補正処理の後に前記第二指針が指し示している位置との差を補正ステップ数として記憶する記憶部と、前記副補正処理の後に再び前記主補正処理が実行される場合、前記第二駆動処理において前記第二指針を前記規定ステップ数に前記補正ステップ数を加算した更新後規定ステップ数だけ前記第二回転方向に回転させるように前記主補正部を制御する主補正制御部と、を備える。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る時計制御方法は、主補正信号を受信した場合、第一指針が取り付けられている第一軸と文字盤上における位置が異なる第二軸に取り付けられており、前記第一軸と前記第二軸との間の距離よりも長い第二指針を前記第一軸に接触するまで第一回転方向に回転させる第一駆動処理を実行し、前記第一駆動処理の後に、前記第二指針を前記第一回転方向と反対の第二回転方向に規定ステップ数だけ回転させる第二駆動処理を実行する主補正処理を実行する主補正工程と、前記主補正処理の後に副補正信号を受信した場合、前記第二指針を前記第一回転方向又は前記第二回転方向に回転させる副補正処理を実行する副補正工程と、前記主補正処理の後に前記第二指針が指し示している位置と前記副補正処理の後に前記第二指針が指し示している位置との差を補正ステップ数として記憶する記憶工程と、前記副補正処理の後に再び前記主補正処理が実行される場合、前記第二駆動処理において前記第二指針を前記規定ステップ数に前記補正ステップ数を加算した更新後規定ステップ数だけ前記第二回転方向に回転させるように前記主補正処理を制御する主補正制御工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第二指針が指し示す位置のずれを補正する操作を実行するユーザの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る時計の構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る時計が備えるボタン及び指針の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る第二モータ駆動回路及び第二ステッピングモータの一例を示す図である。
図4】実施形態に係る時計が第二指針を第一回転方向に回転させるために出力される駆動信号の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る時計が第二指針を第二回転方向に回転させるために出力される駆動信号の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る時計が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図5を参照しながら、実施形態に係る時計の一例について説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る時計の構成の一例を示す図である。図1に示すように、時計1は、発振回路11と、分周回路12と、入力回路13と、制御回路14と、記憶回路15と、駆動信号発生回路16と、第一モータ駆動回路171と、第二モータ駆動回路172と、第一ステッピングモータ181と、第二ステッピングモータ182と、第一指針191と、第二指針192とを備える。
【0014】
図2は、実施形態に係る時計が備えるボタン及び指針の一例を示す図である。図2に示すように、時計1は、文字盤Dと、ボタン13Aと、ボタン13Bと、ボタン13Cと、時針191Hと、分針191Mと、第一軸191Xと、第二指針192と、第二軸192Xとを備える。
【0015】
発振回路11は、所定の周波数を有する信号を発生させて分周回路12に送信する。分周回路12は、発振回路11から受信した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生させて制御回路14に送信する。
【0016】
入力回路13は、ユーザが時計1を操作することにより生成された信号を受信して制御回路14に送信する。このような信号は、例えば、ユーザが図1及び図2に示したボタン13A、ボタン13B又はボタン13Cを押下したり、一定時間以上押下し続けたりすることにより生成される。また、ユーザは、例えば、エンドユーザ、時計1を製造する者である。
【0017】
第一指針191は、時針191H及び分針191Mを含んでおり、第一軸191Xに取り付けられている。また、第一指針191は、第一軸191Xに取り付けられている秒針を更に含んでいてもよい。
【0018】
第二指針192は、時刻を表示する機能以外の機能を実現するための指針である。このような機能としては、例えば、図2に示すように、第一指針191が現在表示している時刻がパリ(Paris)、香港(Hong Kong)、東京(Tokyo)、ニューヨーク(New York)及びロンドン(London)のいずれの都市の時刻であるかを表示する機能が挙げられる。また、第二指針192は、第一軸191Xと文字盤D上における位置が異なる第二軸192Xに取り付けられており、第一軸191Xと第二軸192Xとの間の距離Lよりも長い。さらに、第二指針192は、文字盤Dのうち最も広い面を基準とした高さが第一指針191よりも低い位置又は高い位置で第一回転方向及び第二回転方向に回転する。なお、第一回転方向及び第二回転方向については後述する。
【0019】
図1に示すように、制御回路14は、主補正回路141と、副補正回路142と、主補正制御回路143とを備える。
【0020】
主補正回路141は、主補正信号を受信する。主補正信号は、例えば、ユーザがボタン13Bを一定時間以上押下し続けることにより生成され、入力回路13を経由して主補正回路141に送信される。
【0021】
そして、主補正回路141は、主補正信号を受信した場合、主補正処理を実行する。すなわち、主補正回路141は、第二指針192を第一軸191Xに接触するまで第一回転方向に回転させる第一駆動処理を実行し、第一駆動処理の後に、第二指針192を第一回転方向と反対の第二回転方向に規定ステップ数だけ回転させる第二駆動処理を実行する。ここで、第一回転方向が反時計周りであり、第二回転方向が時計周りである。ただし、第一回転方向が時計周りであり、第二回転方向が反時計周りであってもよい。
【0022】
主補正回路141は、第一駆動処理において、例えば、第二指針192を第一回転方向に360度回転させるために必要なステップ数だけ回転させる。このようなステップ数は、例えば、200ステップである。なお、200ステップだけ回転する前に、第二指針192は、第一軸191Xに接触して停止するため、実際に第二指針192が360度回転することはない。すなわち、200ステップだけ回転させる理由は、これだけ回転させれば、確実に第二指針192を第一軸191Xに接触させることができるためである。したがって、第一駆動処理において、第二指針192を確実に第一軸191Xに接触させることができればよく、第一駆動処理における第二指針192の回転ステップ数は、200ステップに限定されない。
【0023】
規定ステップ数は、第二指針192が第一軸191Xに接触している位置から第二指針192が上述した五つの都市のいずれかを指し示す位置まで第二指針192を第二回転方向に回転させるために必要なステップ数である。また、規定ステップ数は、第二指針192が指し示す位置によって大まかに定められている。例えば、東京(Tokyo)を指し示す位置までの規定ステップは、90ステップである。
【0024】
副補正回路142は、主補正処理の後に副補正信号を受信する。副補正信号は、例えば、ユーザが図2に示したボタン13A又はボタン13Cを押下することにより生成され、入力回路13を経由して主補正回路141に送信される。
【0025】
そして、副補正回路142は、主補正処理の後に副補正信号を受信した場合、第二指針192を第一回転方向又は第二回転方向に回転させる副補正処理を実行する。例えば、副補正回路142は、ユーザがボタン13Aを一回押下する度に第二指針192を第二回転方向に1ステップ回転させ、ユーザがボタン13Cを一回押下する度に第二指針192を第一回転方向に1ステップ回転させる。第二指針192は、後述するロータ22を正転方向に180度回転させることにより、第二回転方向に1ステップ回転し、後述するロータ22を逆転方向に180度回転させることにより、第一回転方向に1ステップ回転する。また、副補正処理は、文字盤Dに刻まれている第一指針191用の目盛りを基準として実行されてもよい。
【0026】
主補正制御回路143は、副補正処理の後に再び主補正処理が実行される場合、第二駆動処理における規定ステップ数に補正ステップ数を加算した更新後規定ステップ数だけ第二指針192を第二回転方向に回転させるように主補正回路141を制御する。補正ステップ数は、主補正処理の後に第二指針192が指し示している位置と副補正処理の後に第二指針192が指し示している位置との差であり、記憶媒体である記憶回路15に記憶される。
【0027】
また、制御回路14は、分周回路12から受信した時計信号等に基づいて、時計1の各部に制御信号を送信し、時計1の各部の動作を制御する。
【0028】
駆動信号発生回路16は、制御回路103から受信した制御信号に基づいて、第一モータ駆動回路171及び第二モータ駆動回路172にハイレベルのゲート信号又はローレベルのゲート信号を送信する。これにより、駆動信号発生回路16は、第一モータ駆動回路171に第一ステッピングモータ181を駆動させるための駆動信号を発生させ、第二モータ駆動回路172に第二ステッピングモータ182を駆動させるための駆動信号を発生させる。これら二つの駆動信号は、例えば、櫛歯状の電圧パルス、または矩形の電圧パルスである。また、駆動信号発生回路16は、ハイレベルのゲート信号とローレベルのゲート信号の比率を調整することにより、駆動信号のデューティ比を調整することができる。
【0029】
第一モータ駆動回路171の構成は、第二モータ駆動回路172の構成と同様である。また、第一ステッピングモータ181の構成は、第二ステッピングモータ182の構成と同様である。そこで、以下の説明では、第二モータ駆動回路172及び第二ステッピングモータ182を中心に説明する。
【0030】
図3は、実施形態に係る第二モータ駆動回路及び第二ステッピングモータの一例を示す図である。図3に示すように、第二モータ駆動回路172は、トランジスタTP1と、トランジスタTP2と、トランジスタTP3と、トランジスタTP4と、トランジスタTN1と、トランジスタTN2と、検出抵抗Rs1と、検出抵抗Rs2と、端子ОUT1と、端子ОUT2とを備える。
【0031】
トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3及びトランジスタTP4は、PチャネルのMОSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、ハイレベルのゲート信号を受信するとオンになり、ローレベルのゲート信号を受信するとオフになる。また、トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、NチャネルのMОSFETであり、ハイレベルのゲート信号を受信するとオフになり、ローレベルのゲート信号を受信するとオンになる。なお、ハイレベルの電位は、第二モータ駆動回路172の電源電圧であるVDDと等しい電位である。また、ローレベルの電位は、0V又は基準電圧であるVSSと等しい電位である。
【0032】
トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3及びトランジスタTP4のドレインは、互いに電気的に接続されており、第二モータ駆動回路172の電源電圧であるVDDが供給される。トランジスタTP3のソースは、検出抵抗Rs1の一端に電気的に接続されている。また、トランジスタTP1のソース、トランジスタTN1のソース及び検出抵抗Rs1の他端は、端子ОUT1に電気的に接続されている。トランジスタTP4のソースは、検出抵抗Rs2の一端に電気的に接続されている。また、トランジスタTP4のソース、トランジスタTN2のソース及び検出抵抗Rs2の他端は、端子ОUT2に電気的に接続されている。トランジスタTN1及びトランジスタTN2のソースは、互いに電気的に接続されており、0V又は基準電圧であるVSSが供給される。なお、検出抵抗Rs1及び検出抵抗Rs2は、後述するロータ22の回転状態の検出に使用される。
【0033】
図3に示すように、第二ステッピングモータ182は、ステータ21と、ロータ22と、ロータ収納用貫通孔23と、内ノッチ24と、内ノッチ25と、外ノッチ26と、外ノッチ27と、磁心28と、コイル29とを備える。
【0034】
ステータ21は、U字状に湾曲しており、磁性材料で作製されている部材である。ロータ22は、円柱状に形成されており、ステータ21に形成されたロータ収納用貫通孔23に対して回転可能な状態で挿入されている。また、ロータ22は、着磁されているため、N極及びS極を有する。ロータ22は、正転方向に回転することにより輪列を介して第二指針192を第二回転方向に回転させ、逆転方向に回転することにより輪列を介して第二指針192を第一回転方向に回転させる。また、ここで言う正転方向は、第二指針192を第二回転方向に回転させるためにロータ22が回転する方向である。一方、逆転方向は、正転方向と反対の方向であり第二指針192を第一回転方向に回転させるためにロータ22が回転する方向である。
【0035】
内ノッチ24及び内ノッチ25は、ロータ収納用貫通孔23の壁面に形成された切り欠きであり、磁気的ポテンシャルの最大点を形成している。これにより、内ノッチ24及び内ノッチ25は、ステータ21に対するロータ22の停止位置を決定している。すなわち、例えば、図3に示すように、ロータ22は、コイル29が励磁されていない場合、磁極軸が内ノッチ24と内ノッチ25とを結ぶ線分と直交する位置で静止する。
【0036】
外ノッチ26及び外ノッチ27は、それぞれ湾曲しているステータ21の内側及び外側に形成されている切り欠きであり、ロータ収納用貫通孔23との間に過飽和部を形成している。ここで、過飽和部は、ロータ22の磁束により磁気飽和せず、コイル29が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなる部分である。
【0037】
磁心28は、磁性材料で作製されている棒状の部材であり、ステータ210の両端と接合されている。コイル29は、磁心28に巻き付けられており、端子ОUT1に一端が接続されており、端子ОUT2に他端が接続されている。
【0038】
次に実施形態に係る時計1が第二指針192を第一回転方向に回転させる場合及び第二指針192を第二回転方向に回転させる場合の一例について説明する。
【0039】
第二モータ駆動回路172は、ロータ22の磁極軸が内ノッチ24と内ノッチ25とを結ぶ線分と直交した状態で静止している場合において、駆動信号発生回路16からハイレベルのゲート信号又はローレベルのゲート信号を受信する。トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3、トランジスタTP4は、ハイレベルのゲート信号が印加された場合、オフになり、ローレベルのゲート信号が印加された場合、オンになる。トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、ハイレベルのゲート信号が印加された場合、オンになり、ローレベルのゲート信号が印加された場合、オフになる。
【0040】
図4は、実施形態に係る時計が第二指針を第一回転方向に回転させるために出力される駆動信号の一例を示す図である。駆動信号発生回路16は、ロータ22がθ方向にN極を向けた状態において第二指針192を第一回転方向に回転させる場合、図4に示すように、端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP11を発生させ、端子OUT1に櫛歯状の電圧パルスP12を発生させ、端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP13を発生させる。電圧パルスP12の長さは、例えば、電圧パルスP11の長さの二倍である。電圧パルスP13の長さは、例えば、電圧パルスP11の長さの四倍である。また、電圧パルスP11、電圧パルスP12及び電圧パルスP13の長さの合計は、1秒よりも短い。
【0041】
端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP11が発生した場合、VDD、トランジスタTP1、端子ОUT1、コイル29、端子ОUT2、トランジスタTN2、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル29に図3に示した磁束Φが発生する。ロータ22のN極及びS極が磁束Φによりステータ21に発生したN極及びS極それぞれと反発することにより、ロータ22は、θ方向にN極を向けた状態から内ノッチ25と外ノッチ26との間にN極を向けた状態まで正転方向に回転して停止する。
【0042】
端子OUT1に櫛歯状の電圧パルスP12が発生した場合、VDD、トランジスタTP2、端子ОUT2、コイル29、端子ОUT1、トランジスタTN1、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル29に図3に示した磁束Φと反対方向の磁束が発生する。当該磁束によりステータ21に発生したN極及びS極は、それぞれロータ22のN極及びS極と反発する。また、ロータ22が内ノッチ25と外ノッチ26との間にN極を向けた状態は、内ノッチ25が形成している磁気的ポテンシャルの最大点付近に位置している状態に等しい。したがって、ロータ22は、内ノッチ25と外ノッチ26との間にN極を向けた状態から内ノッチ24付近にN極を向けた状態まで逆転方向に回転する。
【0043】
端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP13が発生した場合、VDD、トランジスタTP1、端子ОUT1、コイル29、端子ОUT2、トランジスタTN2、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル29に図3に示した磁束Φが発生する。磁束Φによりステータ21に発生したN極及びS極は、それぞれロータ22のN極及びS極と反発する。また、ロータ22が内ノッチ24付近にN極を向けた状態は、内ノッチ24が形成している磁気的ポテンシャルの最大点付近に位置している状態に等しい。したがって、ロータ22は、内ノッチ24付近にN極を向けた状態から内ノッチ25の手前にN極を向けた状態まで逆転方向に回転して停止する。
【0044】
そして、ロータ22は、内ノッチ25の手前にN極を向けた状態から外ノッチ27の手前にN極を向けた状態まで正転方向に回転して停止し、逆転方向及び正転方向への回転を繰り返し、最終的にθ方向にN極を向けた状態で停止する。このロータ22の挙動は、内ノッチ24及び内ノッチ25が形成している磁気的ポテンシャルにより引き起こされている。
【0045】
また、ロータ22がθ方向にN極を向けた状態から第一回転方向に180度回転させる場合、駆動信号発生回路16は、電圧パルスP11と同様の電圧パルスを端子OUT1に発生させ、電圧パルスP12と同様の電圧パルスを端子OUT2に発生させ、電圧パルスP13と同様の電圧パルスを端子OUT1に発生させる。
【0046】
図5は、実施形態に係る時計が第二指針を第二回転方向に回転させるために出力される駆動信号の一例を示す図である。駆動信号発生回路16は、ロータ22がθ方向にN極を向けた状態において第二指針192を第二回転方向に回転させる場合、図5に示すように、端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP2を発生させる。電圧パルスP2の長さは、1秒よりも短い。
【0047】
端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP2が発生した場合、VDD、トランジスタTP1、端子ОUT1、コイル29、端子ОUT2、トランジスタTN2、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル29に図3に示した磁束Φが発生する。ロータ22のN極及びS極が磁束Φによりステータ21に発生したN極及びS極それぞれと反発することにより、ロータ22は、θ方向にN極を向けた状態から外ノッチ27の手前にN極を向けた状態まで正転方向に回転して停止する。
【0048】
そして、ロータ22は、外ノッチ27の手前にN極を向けた状態から逆転方向に回転し、正転方向及び逆転方向への回転を繰り返し、最終的にθ方向にN極を向けた状態で停止する。このロータ22の挙動は、内ノッチ24及び内ノッチ25が形成している磁気的ポテンシャルにより引き起こされている。
【0049】
また、ロータ22がθ方向にN極を向けた状態から第二回転方向に180度回転させる場合、駆動信号発生回路16は、電圧パルスP2と同様の電圧パルスを端子OUT1に発生させる。
【0050】
次に、図6を参照しながら実施形態に係る時計の動作の一例を説明する。図6は、実施形態に係る時計が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0051】
ステップS10において、主補正回路141は、主補正信号を受信したか否かを判定する。主補正信号は、例えば、エンドユーザによりボタン13Bが一定時間以上押下されることにより制御回路14に送信される。これにより、時計1は、通常状態から指針位置修正状態に移行する。主補正回路141は、主補正信号を受信したと判定した場合(ステップS10:YES)、処理をステップS20に進め、主補正信号を受信していないと判定した場合(ステップS10:NO)、主補正信号を受信するまで待機する。
【0052】
ステップS20において、主補正回路141は、主補正処理を実行する。この主補正処理は、時計1が針位置修正状態となっている場合に実行される。主補正処理の前のステップと、主補正処理の後のステップとの差分は、初期自動補正ステップ数である。
【0053】
ステップS30において、副補正回路142は、副補正信号を受信したか否かを判定する。副補正信号は、例えば、エンドユーザ又は時計を製造する者によりボタン13A又はボタン13Cを押下することにより制御回路14に送信される。これにより、時計1は、第二指針192を第一回転方向又は第二回転方向に微調整する。副補正回路142は、副補正信号を受信したと判定した場合(ステップS30:YES)、処理をステップS40に進め、副補正信号を受信していないと判定した場合(ステップS30:NO)、副補正信号を受信するまで待機する。
【0054】
ステップS40において、副補正回路142は、副補正処理を実行する。
【0055】
ステップS50において、記憶回路15は、ステップS20で実行された主補正処理の後に第二指針192が指し示している位置とステップS40で実行された副補正処理の後に第二指針192が指し示している位置との差を補正ステップ数として記憶する。
【0056】
ステップS60において、主補正回路141は、主補正制御回路143による制御の下で主補正処理を実行する。ステップS60における主補正処理では、ステップS20で言及した初期自動補正ステップ数と、ステップS40で実行された副補正処理における補正ステップ数とを加算したステップ数が次に実行される主補正処理における初期自動補正ステップ数となる。
【0057】
以上、実施形態に係る時計1について説明した。時計1は、主補正回路141と、副補正回路142と、主補正制御回路143とを備える。主補正回路141は、主補正信号を受信した場合、第二指針192を第一軸191Xに接触するまで第一回転方向に回転させる第一駆動処理を実行した後、第二指針192を第二回転方向に規定ステップ数だけ回転させる第二駆動処理を実行する。副補正回路142は、第二駆動処理の後に副補正信号を受信した場合、第二指針192を第一回転方向又は第二回転方向に回転させる副補正処理を実行する。主補正制御回路143は、副補正処理の後に再び主補正処理が実行される場合、第二駆動処理において第二指針192を規定ステップ数に補正ステップ数を加算した更新後規定ステップ数だけ第二回転方向に回転させるように主補正回路141を制御する。
【0058】
すなわち、時計1は、主補正処理が実行された後に、主補正処理により完全に補正することができなかった第二指針192のずれをユーザが副補正処理により補正した場合、次の主補正処理では当該副補正処理による補正も加味した補正を実行する。このため、時計1は、次に第二指針192が指し示す位置のずれを補正する場合、副補正処理を省略することができる。したがって、時計1は、第二指針192が指し示す位置のずれを補正する操作を実行するユーザの負担を軽減することができる。
【0059】
ここで、時計1は、メーカー又はユーザが所望する幅を有する第二指針192及びメーカー又はユーザが所望する直径を有する第一軸191Xの少なくとも一方が取り付けられることがある。また、第二駆動処理が開始された時点においてロータ22のN極とステータ21に発生したS極とが吸引する場合、ロータ22は、駆動信号が出力されても正転方向に180度回転しない。したがって、この場合、第二指針192が指し示す位置にずれが生じてしまう。そして、これら二つの場合、時計1は、上述した主補正処理を実行しても第二指針192が指し示す位置のずれを完全に補正することができないことがある。時計1が奏する上述した効果は、これら二つの場合、特に重要になる。
【0060】
なお、上述した時計1が備える機能の全部又は一部は、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、このプログラムがコンピュータシステムにより実行されてもよい。コンピュータシステムは、周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置、インターネット等のネットワーク上のサーバ等が備える揮発性メモリ(Random Access Memory:RAM)である。なお、揮発性メモリは、一定時間プログラムを保持する記録媒体の一例である。
【0061】
また、上述したプログラムは、伝送媒体、例えば、インターネット等のネットワーク、電話回線等の通信回線により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0062】
また、上記プログラムは、上述した機能の全部又は一部を実現するプログラムであってもよい。なお、上述した機能の一部を実現するプログラムは、上述した機能をコンピュータシステムに予め記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるプログラム、いわゆる差分プログラムであってもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…時計、11…発振回路、12…分周回路、13…入力回路、13A,13B,13C…ボタン、14…制御回路、141…主補正回路、142…副補正回路、143…主補正制御回路、15…記憶回路、16…駆動信号発生回路、171…第一モータ駆動回路、172…第二モータ駆動回路、181…第一ステッピングモータ、182…第二ステッピングモータ、191…第一指針、191M…分針、191H…時針、191X…第一軸、192…第二指針、192X…第二軸、21…ステータ、22…ロータ、23…ロータ収納用貫通孔、24,25…内ノッチ、26,27…外ノッチ、28…磁心、29…コイル、D…文字盤、L…距離、OUT1,OUT2…端子、Rs1,Rs2…検出抵抗、TN1,TN2,TP1,TP2,TP3,TP4…トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6