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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20221012BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221012BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J3/46
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019029433
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020137292
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 佳澤
(72)【発明者】
【氏名】景山 寛
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佑亮
【審査官】羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-204466(JP,A)
【文献】特開2016-149839(JP,A)
【文献】特開2015-198526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電装置からの電力を電力変換する第1電力変換装置と、
蓄電装置からの電力を電力変換する第2電力変換装置と、
前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置を制御する中央制御部と、
前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置と、前記中央制御部との間で、情報伝送を行う第1通信手段と、
を備え、
前記中央制御部は、前記第1通信手段を介して得られる情報に基づいて、前記第1電力変換装置を制御し、かつ前記再生可能エネルギー発電装置の発電電力の変動を補償するように前記第2電力変換装置を制御し、
前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置の出力電力を外部系統へ出力する電力変換システムにおいて、
前記第2電力変換装置を個別に制御する自律制御部と、
前記第1通信手段よりも通信遅延が小さく、前記電力変換システムと前記自律制御部との間で情報伝送を行う第2通信手段と、
を備え、
前記自律制御部は、前記第2通信手段を介して得られる情報に基づいて、前記再生可能エネルギー発電装置の前記発電電力の変動を補償するように前記第2電力変換装置を制御し、
前記第2通信手段を介して得られる情報が、前記第1電力変換装置の出力電力の検出値であり、
前記自律制御部は、電力平滑化制御部を用いて、前記出力電力の前記検出値に基づいて、前記第2電力変換装置に対する、前記再生可能エネルギー発電装置の前記発電電力の変動を補償するための出力電力指令を作成し、
前記自律制御部は、前記出力電力の前記検出値と、前記第1通信手段を介して得られる前記第1電力変換装置の出力電力値との差分に応じた前記電力平滑化制御部の出力と、前記差分との差分値に基づいて、前記第2電力変換装置に対する、前記再生可能エネルギー発電装置の前記発電電力の変動を補償するための出力電力指令を作成することを特徴とする電力変換システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換システムにおいて、
前記第1電力変換装置は、出力が並列接続される複数の第1電力変換部を備え、
前記第2電力変換装置は、出力が並列接続される複数の第2電力変換部を備え、
前記自律制御部は、前記複数の第2電力変換部の一部を制御することを特徴とする電力変換システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換システムにおいて、前記第2通信手段は、一対一通信によって情報伝送を行うことを特徴とする電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギー発電装置と電力系統とを連携する電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、風力や太陽光をエネルギー源とする再生可能エネルギー発電設備が普及しつつある。再生可能エネルギー発電設備は、電力変換システムを介して、電力系統に連系するが、電力系統へ供給可能な電力量に応じて、単数または複数の発電装置を備える。
【0003】
複数の発電装置を備える再生可能エネルギー発電設備に関する従来技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、複数台の風力発電装置の総出力電力を検出し、中央制御装置が、総出力電力に基づいて、複数台の風力発電装置の各々を制御する。
【0005】
さらに、再生可能エネルギー発電装置は、自然エネルギーを利用するため、発電量が変動する。これにより、系統連系用の電力変換システムの出力電力の変動速度が大きくなると、電力系統が不安定になる恐れがある。これに対し、特許文献2に記載の従来技術が知られている。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、自然エネルギー電源の出力電力の変動速度を、電力貯蔵装置からの補償電力によって抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8823193号明細書
【文献】特開2010-22122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術により、再生可能エネルギー発電設備および蓄電装置を中央制御装置によって制御すると、実際の電力変動に対して制御動作が遅れるため、電力変動が十分抑制されない恐れがある。
【0009】
そこで、本発明は、再生可能エネルギー発電装置の電力変動を確実に補償できる電力変換システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による電力変換システムは、再生可能エネルギー発電装置からの電力を電力変換する第1電力変換装置と、蓄電装置からの電力を電力変換する第2電力変換装置と、第1電力変換装置および第2電力変換装置を制御する中央制御部と、第1電力変換装置および第2電力変換装置と、中央制御部との間で、情報伝送を行う第1通信手段と、を備え、中央制御部は、第1通信手段を介して得られる情報に基づいて、第1電力変換装置を制御し、かつ再生可能エネルギー発電装置の発電電力の変動を補償するように第2電力変換装置を制御し、第1電力変換装置および第2電力変換装置の出力電力を外部系統へ出力するものであって、第2電力変換装置を個別に制御する自律制御部と、第1通信手段よりも通信遅延が小さく、電力変換システムと自律制御部との間で情報伝送を行う第2通信手段と、を備え、自律制御部は、第2通信手段を介して得られる情報に基づいて、再生可能エネルギー発電装置の発電電力の変動を補償するように第2電力変換装置を制御し、第2通信手段を介して得られる情報が、第1電力変換装置の出力電力の検出値であり、自律制御部は、電力平滑化制御部を用いて、出力電力の検出値に基づいて、第2電力変換装置に対する、再生可能エネルギー発電装置の発電電力の変動を補償するための出力電力指令を作成し、自律制御部は、出力電力の検出値と、第1通信手段を介して得られる第1電力変換装置の出力電力値との差分に応じた電力平滑化制御部の出力と、差分との差分値に基づいて、第2電力変換装置に対する、再生可能エネルギー発電装置の発電電力の変動を補償するための出力電力指令を作成する
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、再生可能エネルギー発電装置の電力変動を確実に補償できる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電力系統に連系する電力変換システムの構成を示す。
図2】第1通信手段におけるデータ伝送を示す。
図3図1の電力変換システムにおける制御系を示す。
図4図1の電力変換システムの動作を示す。
図5】実施例1である電力変換システムの構成を示す。
図6】実施例1における制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図7】実施例1の電力変換システムの動作を示す。
図8】実施例2である電力変換システムの構成を示す。
図9】実施例2における制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図10】実施例2の電力変換システムの動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について説明する前に、まず、従来技術による電力変換システムについて説明する。なお、以下に説明する電力変換システムおよびその制御系の構成(図1~3)は、後述する本発明の実施例においても適用される。
【0015】
図1は、電力系統に連系する電力変換システムの構成を示す。
【0016】
図1に示すように、電力変換システム100は、複数(図1では2台)の第1電力変換装置101と複数(図1では2台)の第2電力変換装置102を備える。複数の第1電力変換装置101は、出力側において並列に接続される。このように並列多重接続された複数の第1電力変換装置101の出力が外部の電力系統103に接続される。また、複数の第2電力変換装置102は、出力側において並列に接続される。このように並列多重接続された複数の第2電力変換装置102の出力が電力系統103に接続される。
【0017】
なお、電力系統103は、回転電機からなる通常の発電機を備える発電設備、電力を消費する設備、および、これらの設備が接続される送配電網から構成される。
【0018】
第1電力変換装置101は、再生可能エネルギー発電装置104(RE)から入力する直流電力を交流電力(PRE1,PRE2)に変換する主回路を備える。この主回路は、半導体スイッチング素子のオン・オフにより直流電力を交流電力に変換するDC/ACコンバータ回路(インバータ回路)である。第1電力変換装置101の主回路は、制御部108によって制御される。すなわち、制御部108は、出力電力指令値に応じて、主回路の半導体スイッチング素子のオン・オフを制御する。これにより、第1電力変換装置101が出力する交流電力が、出力電力指令値になるように制御される。
【0019】
なお、再生可能エネルギー発電装置104(RE)は、例えば、太陽光発電装置や風力発電装置である。また、再生可能エネルギー発電装置が交流電力を出力する場合、出力電力をAC/DCコンバータにより直流電力に変換してから第1電力変換装置101へ入力する。
【0020】
第2電力変換装置102は、蓄電装置105から入力する直流電力を交流電力(PBAT1,PBAT2)に変換する主回路を備える。この主回路は、第1電力変換装置101と同様に、DC/ACコンバータ回路(インバータ回路)である。第2電力変換装置102の主回路は、制御部108によって制御される。すなわち、制御部108は、出力電力指令値に応じて、主回路の半導体スイッチング素子のオン・オフ(スイッチング)を制御する。これにより、第2電力変換装置102が出力する交流電力が、出力電力指令値になるように制御される。
【0021】
なお、蓄電装置105は、例えば、二次電池やキャパシタである。
【0022】
複数の第1電力変換装置101は、各第1電力変換装置101が出力する交流電力PRE1,PRE2を合わせた交流電力109(PRE)を電力系統103へ出力する。また、複数の第2電力変換装置102は、各第2電力変換装置102が出力する交流電力PBAT1,PBAT2を合わせた交流電力110(PBAT)を電力系統103へ出力する。
【0023】
複数の第1電力変換装置101と複数の第2電力変換装置102を制御するために、中央制御部106が設けられる。中央制御部106は、第1通信手段107を介して、複数の第1電力変換装置101と複数の第2電力変換装置102から、動作状態に関する情報(例えば、出力電力)を収集する。なお、この情報は、各電力変換装置が備える制御部108から取得されてもよい。
【0024】
センサ700は、複数の第1電力変換装置101の出力電力109(PRE)を検出する。中央制御部106は、センサ700から、第1通信手段107を介して、出力電力PRE関する情報を収集する。
【0025】
中央制御部106は、複数の第1電力変換装置101および複数の第2電力変換装置102ならびにセンサ700から収集した情報に基づいて、各電力変換装置の出力電力指令値を作成して、作成した出力電力指令値を、第1通信手段107を介して各電力変換装置の制御部108へ送る。なお、第1通信手段107は、有線でもよいし、無線でもよい。
【0026】
複数の第1電力変換装置101の出力電力PREは、再生可能エネルギー発電装置104(RE)の間欠的な発電特性により、天候などの自然条件に応じた大きな電力変動分を有する。このような大きな電力変動は、電力系統103における発電機の動作を不安定にし得る。このため、電力変換システム100に対しては、電力変換システム100の総出力電力111(PSYS)の電力変動率すなわち電力変動速度が規定値内に収まることが要求される。
【0027】
図2は、第1通信手段107におけるデータ伝送を示す。
【0028】
第1通信手段107に接続される各制御部(M個の制御部#1~#M(図1中の「108」)および中央制御部(図1中の「106」))には、所定時間の間、自制御部の情報を、他のすべての制御部に対して更新する権限が与えられる。情報更新の権限は、所定時間隔で、かつ所定の順番で、他の制御部へ引き渡される。図2においては、第1通信手段の1更新周期中で、制御部#1、制御部#2、…、制御部#M、中央制御部の順で、情報更新の権限が引き渡される。
【0029】
このような動作は、第1通信手段を介して互いに接続される全制御ユニット(中央制御部および複数の制御部)間で継続する。それゆえ、より多くの制御ユニットが接続されるほど、データ更新の1サイクルが終了するのにより長い時間がかかる。このため、通信遅延(communication delay time)がもたらされる。
【0030】
図3は、図1の電力変換システム100における制御部108および中央制御部106を含む制御系を示す。
【0031】
中央制御部106は、再生可能エネルギー発電装置104の発電電力の変動を平滑化する電力平滑化制御部302を有する。中央制御部106は、第1通信手段107を介して、複数の第1電力変換装置101の出力電力情報PRE1,PRE2を収集する。中央制御部106は、第1通信手段107による通信遅延を受けた出力電力情報PRE1D,PRE2Dを足し合わせ、足し合わせた総出力電力情報301(PRED)を電力平滑化制御部302に入力する。
【0032】
総出力電力情報301(PRED)は、再生可能エネルギーの間欠的発電量のため、大きな電力変動を含む。電力平滑化制御部302は、変化率リミッタや他のフィルタ手段によって、総出力電力情報301(PRED)を処理して、平滑化された出力電力指令値303(P SYS)を作成する。この出力電力指令値303(P SYS)は、電力変換システム100の好適な出力電力を表している。それゆえ、複数の蓄電装置105による総補償電力指令値304(P BAT)が、出力電力指令値303(P SYS)から総出力電力情報301(PRED)を減じることによって算出される。
【0033】
中央制御部106は、総補償電力指令値304(P BAT)を蓄電装置105の台数すなわち第2電力変換装置102の台数(図1では2台)で除算することにより、各第2電力変換装置102に対する個別の補償電力指令値(P BAT1,P BAT2)を作成する。すなわち、図1の中央制御部106では、「P BAT1=P BAT2=P BAT/2」である。補償電力指令値P BAT1,P BAT2は、第1通信手段を介して、各第2電力変換装置102の制御部108へ送られる。各制御部108は、第1通信手段によって遅延した補償電力指令値(P BAT1D,P BAT2D)を受信し、第2電力変換装置を、その出力電力(PBAT1,PBAT2)が補償電力指令値(P BAT1D,P BAT2D)になるように制御する。
【0034】
情報の通信遅延がない理想状態では、複数の第2電力変換装置102の総出力電力110(PBAT(=PBAT1+PBAT2))によって大きな電力変動が平滑化されて、電力変換システム100の出力電力111(PSYS)の変動速度は要求値の範囲内に収まる。しかしながら、実際には、電力変換システムは複数の第1電力変換装置および複数の第2電力変換装置を備え、場合によっては数十もしくは数百の第1および第2電力変換装置を備え得るので、これらの電力変換装置から第1通信手段107を介して情報を収集すると、通信遅延が生じる。例えば、32台の電力変換装置間における1データ更新を保証するには最大50msを要する。さらに、第2電力変換装置の個別の制御部108が第1通信手段107を介して補償電力指令値(P BAT1D,P BAT2D)を受信後、第2電力変換装置の出力電力(PBAT1,PBAT2)を補償電力指令値に一致するまでに制御の遅れがある。
【0035】
図4は、図1の電力変換システムの動作を示す。本図により、中央制御部106において電力平滑化制御が実行される場合に、上述の通信遅延時間および制御遅延時間によって起きる電力平滑化制御の制御誤差について説明する。なお、本図において、破線は、電力平滑化制御が理想的な場合における波形を示し、実線は、電力平滑化制御に遅延時間による誤差が生じている場合における波形を示す。
【0036】
まず、波形109は、再生可能エネルギーによる電力を示しているが、波形に急峻な電力変動がある。理想的状況において、波形301は、波形109における大きな電力変動を平滑化するための蓄電池の理想的な出力を示し、波形302は、電力平滑化制御が理想的な場合における制御結果(系統への出力電力PSYS)を示す。しかしながら、通信遅延時間および制御遅延時間が起きる場合、これらの遅延は、波形110が示すように、蓄電池の出力が、理想的な波形301よりも遅れて制御される。
【0037】
以下、本発明の実施形態について、実施例1および実施例2により説明する。なお、いずれの実施例も、図1-3に示した構成に、再生可能エネルギー発電装置の発電量の変動を確実に補償するための手段が付加される。そこで、以下では、主にその手段について説明し、図1-3に示した構成については、図示はするが、説明を省略する。
【実施例1】
【0038】
図5は、本発明による実施例1である電力変換システム500の構成を示す。
【0039】
本実施例1においては、電力変換システムの総出力電力511を検出する電力検出部501(センサ)が備えられ、検出される情報が、第2通信手段502を介して、複数(図5では2台)の第2電力変換装置102の内の一部(図5では1台)を、個別にかつ中央制御部106による制御とは独立して制御する自律制御部503に伝送される。
【0040】
ここで、第2通信手段は、一対一通信によって情報を伝送する。このため、通信時間遅延が、第1通信手段107の通信時間遅延に比べて小さい。なお、第2通信手段502は、有線でもよいし、無線でもよい。
【0041】
図6は、実施例1における制御系の構成を示す機能ブロック図である。
【0042】
本制御系は、中央制御部106と自律制御部503を備えている。中央制御部106の構成は、図3に示した構成と同様である。自律制御部503は、一部の第2電力変換装置102に対する第2電力指令504(P BAT2C)を、電力検出部501および第2通信手段502からの電力変換システム500の総出力電力511(PSYS)を示す情報に基づいて、設定する。
【0043】
本実施例1においては、自律制御部503における制御演算手段として変化率リミッタ505(rate limiter)が適用される。第2通信手段502は、通信遅延が第1通信手段107よりも小さいため、第2電力指令は、中央制御部106における電力平滑化制御による第1電力指令(P BAT2D)の設定に先立って設定される。
【0044】
図5に示す実施例1および図6に示す制御系によって、時間遅延によって起きる制御誤差が補償される。これにより、電力変換システム500の出力電力の変動率を良好に管理できる。
【0045】
図7は、実施例1の電力変換システムの動作を示す。なお、図7中の破線は、図1における電力変換システム100について述べたように、電力平滑化制御部を備える中央制御部だけが適用される場合における動作波形を示す。また、図7中の実線は、図5に示した実施例1の電力変換システムが適用される場合における動作波形を示す。
【0046】
図7の右図(左図の一部(1725~1735sec)の時間スケールを拡大した図)において、波形PRE(109)は、第1電力変換装置が出力する再生可能エネルギー発電装置による電力を示す。この波形においては、急峻な電力変動がある。波形PBAT(110)および波形PSYS(111)が示すように、中央制御部において発生する時間遅れ(通信遅延および制御の遅れ)が、蓄電装置の出力と電力変換システムの出力に電力補償の遅れ(すなわち電力変動)をもたらす。
【0047】
これに対し、実施例1においては、電力変換システム500の総出力電力PSYSの変動が監視される。それにより、自律制御部503は、波形504が示すように、時間遅れに起因する誤差を補償するために第2電力指令(P BAT2C)を作成する。その結果、電力変換システム500の出力電力は、波形511に示すように、電力変動が抑制されるように制御される。
【実施例2】
【0048】
図8は、本発明による実施例2である電力変換システム800の構成を示す。
【0049】
本実施例2においては、センサ700によって、複数の第1電力変換装置101の総出力電力109(PRE)が検出される。検出された総出力電力109(PRE)の情報は、第2通信手段802を介して、第2電力変換装置102の自律制御部803へ送信される。また、自律制御部803は、第1通信手段107を介して、電力変換装置の動作状態に関する他の情報、例えば、後述するように各第1電力変換装置の出力電力PRE1,PRE2の情報を受信する。
【0050】
ここで、第2通信手段802は一対一通信方式であり、そのため、第2通信手段の通信遅延は、第1通信手段の通信遅延に比べて小さい。
【0051】
図9は、実施例2における制御系の構成を示す機能ブロック図である。
【0052】
本制御系は、中央制御部106と自律制御部803を備えている。中央制御部の構成は、図3および図6に示した構成と同様である。
【0053】
自律制御部803は、第2電力変換装置102に対する第2電力指令805(P BAT2C)を、再生可能エネルギー発電装置104による電力の検出値間誤差804に基づいて、設定する。
【0054】
この検出値間誤差804は、センサ700から第2通信手段802を介して得られる総出力電力検出値(PRE)と、第1通信手段107を介して取得される各第1電力変換装置101の出力電力検出値PRE1,PRE2を加算して得られる総出力電力検出値(PRE1+PRE2)との差分を算出することによって得られる。
【0055】
RE1,PRE2は、第1電力変換装置101の制御部108からの動作情報に基づき中央制御部106が取得後、中央制御部106から自律制御部803に配信される。なお、PRE1,PRE2は、第1電力変換装置101の制御部108から自律制御部803に配信されてもよい。
【0056】
遅延部806は、中央制御部106が第2電力変換装置102へ蓄電装置105の電力指令値を配信する時に起きる遅延を表している。第2通信手段802の遅れ時間が短いため、センサ700によって検出される電力値は、複数の第1電力変換装置101の実際の電力とほとんど同じである。
【0057】
本実施例2においては、中央制御部106における電力平滑化制御部302と同じ電力変動補償部である電力平滑化制御部807が、通信遅延を含む制御の遅れを補償する自律制御部803において適用される。
【0058】
電力平滑化制御部807は、検出値間誤差804(PRE(センサ700の検出値)-(PRE1+PRE2))を平滑化処理する。自律制御部803は、平滑化処理された検出値間誤差と、平滑化前の検出値間誤差804との差分を算出することにより、第2補償電力指令値805(P BAT2C)を作成して出力する。複数(図8では2台)の第2電力変換装置の内の一部(図8では1台)の制御部108は、中央制御部106から送信される補償電力指令P BAT2と自律制御部803によって作成される第2補償電力指令を加算した電力指令に応じて、一部の第2電力変換装置の出力電力PBAT2を制御する。
【0059】
本実施例2によれば、通信遅延を含む制御の遅れによる誤制御を補償することができるので、電力変換システム800の出力電力の変動速度を確実に低減できる。
【0060】
図10は、実施例2の電力変換システムの動作を示す。なお、図10中の破線は、図1における電力変換システム100について述べたように、電力平滑化制御部を備える中央制御部だけが適用される場合における動作波形を示す。また、図10中の実線は、図8に示した実施例2の電力変換システムが適用される場合における動作波形を示す。
【0061】
図10の右図(左図の一部(1725~1735sec)の時間スケールを拡大した図)において、波形PRE(109)は、第1電力変換装置が出力する再生可能エネルギー発電装置による電力を示す。この波形においては、急峻な電力変動がある。
【0062】
波形PRE(201)が示すように、中央制御部において発生する時間遅れ(通信遅延および制御の遅れ)が、再生可能エネルギー発電装置の電力の検出波形の遅れをもたらす。このため、波形PBAT(110)および波形PSYS(111)が示すように、蓄電装置の出力および電力変換システムの出力に平滑化制御の誤制御が生じる。
【0063】
これに対し、実施例2では、図10における波形109(センサ700によって検出されるPRE)と波形201(遅延したPRE(=PRE1+PRE2))との差分を算出することによって導出される、再生可能エネルギー発電装置の発電電力の検出値間誤差が監視される。さらに、本実施例2によれば、自律制御部803における誤制御補償機能のための第2電力指令805(図9における「P BAT2C」)が設定される。これにより、電力変換システム800の出力電力は、波形811(PSYS)が示すように、電力変動が抑制されるように制御される。
【0064】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0065】
例えば、第1電力変換装置の台数、第2電力変換装置の台数、自律制御部を備える第2電力変換装置の台数は、電力変換システムの電力容量に応じて、いずれも任意でよい。
【0066】
また、蓄電装置は、電力変換システムの余剰電力の蓄電や、電力変換システムの出力の平準化などに用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 電力変換システム、101 第1電力変換装置、102 第2電力変換装置、
103 電力系統、104 再生可能エネルギー発電装置、105 蓄電装置、
106 中央制御部、107 第1通信手段、108 制御部、
700 センサ、
500 電力変換システム、501 電力検出部、502 第2通信手段、
503 自律制御部、
800 電力変換システム、802 第2通信手段、803 自律制御部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10