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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】圧力センサ駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20221012BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G01L19/14
G01L9/00 303P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019029637
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020134364
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】大海 学
(72)【発明者】
【氏名】須田 正之
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】篠原 陽子
(72)【発明者】
【氏名】野邉 彩子
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6144540(JP,B2)
【文献】特公平7-1215(JP,B2)
【文献】特許第5867820(JP,B2)
【文献】特許第5867821(JP,B2)
【文献】特許第5778619(JP,B2)
【文献】特許第6184006(JP,B2)
【文献】特許第6267422(JP,B2)
【文献】特許第6041308(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティの内部と外気との気圧差を受けて変位する受圧部と、
前記受圧部の変位を検出して出力する変位検出部と、
を備える圧力センサの駆動方法であって、
前記キャビティは、封止可能なキャビティ開口部を備え、
前記圧力センサを駆動しない時は、前記キャビティ開口部を開口し、
前記圧力センサを駆動する時は、前記キャビティ開口部を封止する
ことを特徴とする圧力センサ駆動方法。
【請求項2】
前記キャビティ開口部は、開閉可能なフタから構成され、
前記圧力センサを駆動しない時は、前記フタを開いて前記キャビティ開口部を開口し、
前記圧力センサを駆動する時は、前記フタを閉じて前記キャビティ開口部を封止する
ことを特徴とする請求項に記載の圧力センサ駆動方法。
【請求項3】
前記キャビティ開口部は、開閉可能なスライド板から構成され、
前記圧力センサを駆動しない時は、前記スライド板を移動して前記キャビティ開口部を開口し、
前記圧力センサを駆動する時は、前記スライド板を移動して前記キャビティ開口部を封止する
ことを特徴とする請求項に記載の圧力センサ駆動方法。
【請求項4】
前記キャビティ開口部の近傍には、密封されている接着剤が配置されており、
前記圧力センサを駆動する前に、前記密封されている接着剤を開放して前記キャビティ開口部を封止する
ことを特徴とする請求項に記載の圧力センサ駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサ駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外気の気圧変動を検出する装置として、密封されたキャビティ(密封キャビティ)を有し、キャビティと外気との間に発生する気圧差を受圧部で検出する、あるいは、キャビティに気体が流入出できる透過穴を設け、透過穴の上に受圧部を配置して外気の気圧変動を検出する圧力センサが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-208827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
密封キャビティを有する圧力センサの場合、落下したりぶつけたりした際に受圧部が急激な気圧変動を受け、破損しやすい。特に高感度タイプの圧力センサは、受圧部の変位が大きいため、受圧部がより破損しやすい。
また、受圧部が透過穴の上に配置されている圧力センサの場合は、透過穴が小さいときには密封キャビティと同様の課題が有り、透過穴が大きいときには、外気の気圧変動が受圧部の両側に同時に到達するため、受圧部が変位しづらくなり、高感度な圧力変動検出ができない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、急激な外気圧変動が起きても破損せず、また高感度な測定が可能な圧力センサ駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の1態様に係る圧力センサは、キャビティの内部と外気との気圧差を受けて変位する受圧部と、前記受圧部の変位を検出して出力する変位検出部と、を備え、前記キャビティは、封止可能なキャビティ開口部を備えることを特徴とする。
【0007】
前記キャビティは、厚み方向に貫通する貫通孔を有する基板の片面に実装されており、前記受圧部は、前記貫通孔を覆うように配置されたカンチレバーから構成され、前記カンチレバーの外周縁と前記貫通孔の縁部との間に形成されるギャップと前記貫通孔を通じて、前記キャビティの内部と外気とが連通してもよい。
【0008】
前記キャビティ開口部は、開閉可能なフタから構成されてもよい。
【0009】
前記キャビティ開口部は、開閉可能なスライド板から構成されてもよい。
【0010】
前記キャビティ開口部の封止は不可逆であってもよい。
【0011】
前記キャビティ開口部の封止は、密封されている接着剤を開放することであってもよい。
【0012】
本発明の1態様に係る圧力センサ駆動方法は、キャビティの内部と外気との気圧差を受けて変位する受圧部と、前記受圧部の変位を検出して出力する変位検出部と、を備える圧力センサの駆動方法であって、前記キャビティは、封止可能なキャビティ開口部を備え、前記圧力センサを駆動しない時は、前記キャビティ開口部を開口し、前記圧力センサを駆動する時は、前記キャビティ開口部を封止することを特徴とする。
【0013】
前記キャビティ開口部は、開閉可能なフタから構成され、前記圧力センサを駆動しない時は、前記フタを開いて前記キャビティ開口部を開口し、前記圧力センサを駆動する時は、前記フタを閉じて前記キャビティ開口部を封止してもよい。
【0014】
前記キャビティ開口部は、開閉可能なスライド板から構成され、前記圧力センサを駆動しない時は、前記スライド板を移動して前記キャビティ開口部を開口し、前記圧力センサを駆動する時は、前記スライド板を移動して前記キャビティ開口部を封止してもよい。
【0015】
前記キャビティ開口部の近傍には、密封されている接着剤が配置されており、前記圧力センサを駆動する前に、前記密封されている接着剤を開放して前記キャビティ開口部を封止してもよい。
【0016】
本発明の1態様に係る圧力センサ運搬方法は、キャビティの内部と外気との気圧差を受けて変位する受圧部と、前記受圧部の変位を検出して出力する変位検出部と、を備える圧力センサの運搬方法であって、前記キャビティは、封止可能なキャビティ開口部を備え、前記キャビティ開口部を開口した状態で前記圧力センサを運搬することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の各態様に係る圧力センサ、圧力センサ駆動方法および圧力センサ運搬方法によれば、運搬時など、外気圧の変動を検出する必要が無く、かつ落下などによって外気圧が急激に変動する恐れがある時には、キャビティ開口部を開いておくことで、急激な外気圧変動が起きても圧力センサが破損しない。
また、駆動時、すなわち外気圧の変動を検出する際には、キャビティ開口部を閉じておくことで、外気圧変動が微小であってもキャビティ内気圧との差圧を発生させ、高感度な検出が可能となる。
すなわち、急激な外気圧変動が起きても破損せず、また高感度な測定が可能な圧力センサ、圧力センサ駆動方法および圧力センサ運搬方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る圧力センサの断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る圧力センサの断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る圧力センサのセンサモジュールのブロック図である。
図4】キャビティ開口部が閉じているときの圧力センサの気圧変動および変位を示すグラフである。
図5】キャビティ開口部が閉じているときの圧力センサの気圧変動および変位を示すグラフである。
図6】キャビティ開口部が開いているときの気圧変動および変位を示すグラフである。
図7】本発明の第2実施形態に係る圧力センサの断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る圧力センサの断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る圧力センサの断面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る圧力センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る圧力センサ、圧力センサ駆動方法および圧力センサ運搬方法について詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る圧力センサの構成について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る圧力センサ1(差圧センサ、センサモジュール)の断面図である。圧力センサ1は、センサ基板2と、センサ基板2の上面に実装されているキャビティ筐体3(キャビティ)と、を備える。キャビティ筐体3は、例えば、四角形状(立方形状)の有底箱状に形成されている。
【0021】
センサ基板2は、例えば、回路基板である。箱状のキャビティ筐体3の内部(キャビティ内部5)において、センサ基板2の上面には、SOI基板10、及び受圧部6が実装されている。また、センサ基板2には、当該センサ基板2を厚み方向に貫通する貫通孔30が形成され、貫通孔30を通じてキャビティ内部5と外気4とは互いに連通している。
【0022】
なお、センサ基板2の平面視で、互いに直交する2方向のうちの一方の方向を前後方向L1といい、他方向を左右方向L2という。センサ基板2は、前後方向L1に沿った長さが左右方向L2に沿った長さよりも長い平面視長方形状に形成されている。ただし、センサ基板2の形状はこの場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0023】
受圧部6は、外気4とキャビティ筐体3の内部(キャビティ内部)5との気圧差を受けて変位する。図1に示す例では、受圧部6は、外気4の圧力変動に応じて撓み変形するカンチレバーから構成されている。なお、本明細書において、外気とは、キャビティ筐体3の外側、すなわち圧力センサ1から見た外側の気体のことをいう。
【0024】
カンチレバー6は、センサ基板2の上面に対して重なった状態で接合された半導体基板によって形成されている。図1の例では、半導体基板として、シリコン支持層12、シリコン酸化膜等の絶縁層13及びシリコン活性層14を、下方からこの順番で配置されたSOI基板10を示している。従って、カンチレバー6は、SOI基板10によって形成されている。
【0025】
ただし、カンチレバー6は、SOI基板10によって形成される場合に限定されるものではない。なお、シリコン支持層12を一定電位に維持する(例えば、シリコン支持層12をセンサ基板2のグラウンド等に接続)等して、SOI基板10に厚さ方向の電位差の変動が生じることを抑制することが好ましい。
【0026】
また、SOI基板10は、センサ基板2と同様に、前後方向L1に沿った長さが左右方向L2に沿った長さよりも長い平面視長方形状に形成されている。シリコン支持層12及び絶縁層13には、センサ基板2と同様に、これらシリコン支持層12及び絶縁層13を厚み方向に貫通する貫通孔30が形成されている。
【0027】
カンチレバー6は、基端部(図では左側)から先端部(図では右側)に向けて一方向に延びる板状であり、キャビティ内部5と外気4との圧力差に応じて撓み変形する。カンチレバー6は、基端部が片持ち支持されており、基端部が半導体基板に接続され、且つ先端部が自由端とされた片持ち梁構造とされ、貫通孔30を覆い、概ね塞ぐように配置されている。
【0028】
カンチレバー6の外周縁と貫通孔30の縁部との間には、カンチレバー6の外周縁に沿って、ギャップ20が形成されている。センサ基板2、シリコン支持層12及び絶縁層13の貫通孔30は、ギャップ20を通じてカンチレバー6の上方に位置するキャビティ内部5に連通している。これにより、ギャップ20及び貫通孔30を通じて、キャビティ内部5と外気4とは互いに連通している。
【0029】
カンチレバー6は、基端部側の一部がピエゾ抵抗部(抵抗素子)となっており、カンチレバー6の撓み量(変位)に応じて電気抵抗が変化する変位検出抵抗6a(変位検出部)として機能する。ピエゾ抵抗部は、ドープ層(不純物半導体層)により形成されている。このドープ層は、例えばリン等のドープ材(不純物)がイオン注入法や拡散法等の各種の方法によりドーピングされることで形成されている。
【0030】
カンチレバー6の基端部の上には、ドープ層よりも電気抵抗が小さい導電性材料(例えば、Au(金)等)からなる外部電極15が形成されている。この外部電極15は、変位検出抵抗6aの端部として機能する。
【0031】
図3は、本実施形態に係るセンサモジュールのブロック図である。センサモジュールは、アナログ部50とマイコン60から構成される。アナログ部50は、ブリッジ回路55と、アンプ56と、フィルタ57から構成される。ブリッジ回路55は、変位検出抵抗6aと、参照抵抗52と、可変抵抗53と、固定抵抗54とから構成される。
【0032】
変位検出抵抗6aは、第1端が電圧Vccの供給線に、第2端がノードN1に接続されており、キャビティ内部5と外気4の差圧に応じて抵抗値が変化する。参照抵抗52は、第1端がノードN1に、第2端が電源GNDに接続されている。可変抵抗53は、第1端が電圧Vccの供給線に、第2端がノードN2に接続されている。固定抵抗54は、第1端がノードN2に、第2端が電源GNDに接続されている。
【0033】
変位検出抵抗6aは、圧力センサ1の内部に構成されており、可変抵抗53及び固定抵抗54は、圧力センサ1の外部に備えられた外付け抵抗である。また、参照抵抗52は、例えば、変位検出抵抗6aと温度特性が同一になるように形成された抵抗であり、圧力センサ1内に構成されてもよいし、圧力センサ1の近傍の外部に備えられてもよい。
【0034】
アンプ56は、反転入力端子(-端子)がノードN1に接続され、非反転入力端子(+端子)がノードN2に接続されている。アンプ56は、ノードN1とノードN2との電位差を増幅して出力信号として出力する。なお、この電位差は、変位検出抵抗6a(ピエゾ抵抗部)の抵抗値変化に応じた値、すなわちカンチレバーの変位に基づいた値となる。出力信号は、フィルタ57においてフィルタ処理され、マイコン60に伝搬される。
【0035】
マイコン60はA/D変換部61と圧力計算部62から構成される。アナログ部50から伝搬された出力信号は、A/D変換部61においてディジタル変換され、圧力計算部62に伝搬される。圧力計算部62では、出力信号に対して温度補正などのソフトウェア処理を行い、処理結果を圧力値として出力する。
【0036】
本実施形態において、キャビティ筐体3の一部はキャビティ開口部7となっている。図1及び図2の例では、キャビティ開口部7は開閉可能なフタから構成されており、蝶番7aを介してフタが片開きできる様子を模式的に示している。図1は、キャビティ開口部7が閉じた状態を示し、図2は、キャビティ開口部7が開いた状態を示す。図1に示すようにキャビティ開口部7が閉じているときは、外気4の気圧24とキャビティ内部5の気圧25は異なる値になり得る。一方、図2に示すようにキャビティ開口部7が開いているとき、開口40を介して外気4の気圧とキャビティ内部5の気圧は常に同一の値となる。
【0037】
図4(a)は、図1に示すようにキャビティ開口部7が閉じている場合に、外気4に気圧変動24が起こったときの、キャビティ内部5の気圧変動25を示すグラフであり、図4(b)は、このときの受圧部6の変位26を示すグラフである。グラフの横軸は時間(sec)であり、グラフの縦軸は図4(a)では圧力値(Pa)、図4(b)では長さ(μm)である。
【0038】
あるタイミングで外気4に気圧変動が起こると、図4(a)に示すように、外気4の気圧24は一気に変化し、遅れてキャビティ内部5の気圧25が変化する。そしてしばらくすると、外気4の気圧24とキャビティ内部5の気圧25は同じ圧力値となる。受圧部6の変位26は、外気4の気圧24とキャビティ内部5の気圧25との差に応じて変化する。そのため、図4(b)に示すように、受圧部6の変位26は、一時的に増加するが、しばらくすると収束して0となる。
【0039】
本実施形態において、受圧部6は極めて薄いSi製カンチレバーであり、僅かな差圧であっても大きな変位を起こすことから、高感度な圧力センサとなっている。なお、本明細書で、高感度な圧力センサとは、例えば1Paの圧力の変化を検出できる感度の圧力センサのことをいう。
【0040】
図5(a)は、図1に示すようにキャビティ開口部7が閉じている場合に、圧力センサを落下させたり何らかの物体に強く接触させるなどしたときの、外気4の気圧変動34と、それに伴うキャビティ内部5の気圧変動35を示すグラフであり、図5(b)は、受圧部6の変位36を示すグラフである。グラフの横軸は時間(sec)であり、グラフの縦軸は図5(a)では圧力値(KPa)、図5(b)では長さ(μm)である。
【0041】
このとき、外気4の気圧34は一瞬で大きくなるが、図4の時に比べ桁違いに大きな値となる。例えば、図5(a)のグラフに示すように外気4の気圧変動34は数KPaであり、図4(a)のグラフに示した外気4の気圧変動24の数千倍である。一方、キャビティ内部5の気圧変動35は空気の流入速度が遅いため、外気4の気圧変動34に追いつかない。図5(a)のグラフに示すように、キャビティ内部5の気圧変動35はほぼ平らである。その結果、図5(b)に示すように、受圧部6の変位36は極めて大きくなり、圧力センサが破損してしまう。
【0042】
図6(a)は、図2に示すようにキャビティ開口部7が開いている場合に、圧力センサを落下させたり何らかの物体に強く接触させるなどしたときの、外気4の気圧変動44と、それに伴うキャビティ内部5の気圧変動45を示すグラフであり、図6(b)は、受圧部6の変位46を示すグラフである。グラフの横軸は時間(sec)であり、グラフの縦軸は図6(a)では圧力値(KPa)、図6(b)では長さ(μm)である。
【0043】
このとき、気圧変動した外気4の圧力値44は大きな値となるが、キャビティ開口部7が開いているため、キャビティ内部5の気圧45は常に外気4の気圧44と同一となる。そのため、図6(a)に示すように、キャビティ内部5の気圧変動45は外気4の気圧変動44に重なる。その結果、図6(b)に示すように、受圧部6の変位46は全く変動せず、圧力センサが破損することはない。
【0044】
上述のように、本実施形態では、キャビティ筐体3は、開閉可能なフタから構成され封止可能なキャビティ開口部7を備える。圧力センサ1を駆動しない時は、キャビティ開口部7を開口する、すなわちフタを開くことにより、開口40を介してキャビティ内部5の気圧と外気4の気圧を同一とすることができる。そのため、受圧部6の変位46は全く変動せず、圧力センサ1が破損することを防ぐことができる。
【0045】
圧力センサ1を駆動する時は、キャビティ開口部7を封止する、すなわちフタを閉じることにより、外気4の気圧24とキャビティ内部5の気圧25は異なる値になり得る。そのため、変位検出抵抗6a(ピエゾ抵抗部)の抵抗値変化(受圧部6の変位)に基づいて、圧力値を求めることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る圧力センサの構成について説明する。図7及び図8は、本実施形態に係る圧力センサ51(差圧センサ、センサモジュール)の断面図である。第1実施形態の圧力センサ1との違いは、本実施形態の圧力センサ51では、キャビティ筐体53の一部は、スライド板から構成されたキャビティ開口部57となっていることである。スライド板は、キャビティ筐体53に対して水平にスライドすることにより開閉可能な構造を有する。それ以外の点は、本実施形態は第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0047】
図7は、キャビティ開口部57が閉じた状態を示し、図8は、スライド板が横方向にスライド(移動)することによりキャビティ開口部57が開いた状態を示す。図7に示すようにキャビティ開口部57が閉じているときは、外気4の気圧とキャビティ内部5の気圧は異なる値になり得る。一方、図8に示すようにキャビティ開口部57が開いているとき、開口40を介して外気4の気圧とキャビティ内部5の気圧は常に同一の値となる。
【0048】
このように、本実施形態では、キャビティ筐体53は、開閉可能なスライド板から構成され封止可能なキャビティ開口部57を備える。圧力センサ51を駆動しない時は、スライド板を移動してキャビティ開口部57を開口することにより、キャビティ内部5の気圧と外気4の気圧を同一とすることができる。そのため、受圧部6の変位は全く変動せず、圧力センサ51が破損することを防ぐことができる。
【0049】
圧力センサ51を駆動する時は、スライド板を移動してキャビティ開口部57を封止することにより、外気4の気圧とキャビティ内部5の気圧は異なる値になり得る。そのため、変位検出抵抗6a(ピエゾ抵抗部)の抵抗値変化(受圧部6の変位)に基づいて、圧力値を求めることができる。このように、本実施形態は第1実施形態と同じ効果を奏しつつ、キャビティ筐体53の一部がスライドするだけなので圧力センサ全体を小型化できる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る圧力センサの構成について説明する。図9及び図10は、本実施形態に係る圧力センサ61(差圧センサ、センサモジュール)の断面図である。第1実施形態の圧力センサ1との違いは、本実施形態の圧力センサ61では、キャビティ筐体63の一部はキャビティ開口部67となっており、キャビティ開口部67の開口40の近傍に、接着剤69が密封された袋68が配置されていることである。それ以外の点は、本実施形態は第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0051】
図9は、キャビティ開口部67がキャビティ筐体63に対して接着剤69で固定された状態を示し、図10は、固定される前に接着剤69が密封された袋68がキャビティ開口部67の開口40の近傍に固定された状態を示す。図9に示すようにキャビティ開口部67が閉じているときは、外気4の気圧24とキャビティ内部5の気圧25は異なる値になり得る。一方、図10に示すようにキャビティ開口部67が開いているとき、開口40を介して外気4の気圧とキャビティ内部5の気圧は常に同一の値となる。
【0052】
このように、本実施形態では、キャビティ筐体63は、密封されている接着剤を開放することで封止可能なキャビティ開口部67を備える。圧力センサ61を駆動する前は、キャビティ開口部67の開口40を介して、キャビティ内部5の気圧と外気4の気圧を同一とすることができる。そのため、受圧部6の変位は全く変動せず、圧力センサ61が破損することを防ぐことができる。
【0053】
圧力センサ61を駆動する時は、接着剤69が密封された袋68を破り接着剤69を開放することで開口40が充填され、キャビティ開口部67を封止するので、外気4の気圧とキャビティ内部5の気圧は異なる値になり得る。そのため、変位検出抵抗6a(ピエゾ抵抗部)の抵抗値変化(受圧部6の変位)に基づいて、圧力値を求めることができる。また、キャビティ開口部67がキャビティ筐体63に固定され、強固な固定が可能となる。なお、キャビティ開口部67を閉じる理想的なタイミングは、圧力センサとして駆動する直前であることが望ましい。本実施形態では、第1実施形態および第2実施形態とは異なり、キャビティ開口部67の封止は不可逆であり、一度閉めると再度開くことはできない。
【0054】
上述の実施形態の説明では、受圧部がカンチレバーである場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、受圧部がカンチレバーでない場合にも適用できる。例えば、キャビティ内部の気圧を真空状態にして使用する圧力センサに本発明を適用する場合は、圧力センサの駆動時にキャビティ開口部を封止して、さらにキャビティ内部の気圧を真空にすれば、圧力センサとして機能させることができる。また、図示したキャビティ開口部は模式的な図であり、厳密に構造を示すものではない。キャビティ開口部として上述した機能を実現するものであれば、どのような構造であってもよい。
【0055】
上述のように、圧力センサの運搬時(製造途中なども含む)は、圧力センサとして機能させる必要がなく、すなわち外気圧の変動を検出する必要がない。ただし、圧力センサの落下などによって外気圧が急激に変動し、圧力センサが破損する恐れがある。本発明の各態様に係る圧力センサおよび圧力センサ駆動方法によれば、運搬時など、圧力センサとして使用しない時には、キャビティ開口部を開いておくことで、急激な外気圧変動が起きても、キャビティ内部の気圧と外気の気圧を同一とすることができる。これにより、受圧部の変位は全く変動せず、圧力センサが破損することを防ぐことができる。
【0056】
また、圧力センサとして駆動する時、すなわち外気圧の変動を検出する際には、キャビティ開口部を閉じておくことで、外気圧変動が微小であってもキャビティ内気圧との差圧を発生させ、高感度な検出が可能となる。すなわち、急激な外気圧変動が起きても破損せず、また高感度な測定が可能な圧力センサおよび圧力センサ駆動方法を提供することできる。
【0057】
本明細書において、前後、左右、上下、水平などの方向を示す言葉は、本発明の実施形態を説明するために使用している。従って、本発明の明細書を説明するために使用されたこれらの言葉は、本発明の装置において相対的に解釈されるべきである。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態およびその変形例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0059】
1、51、61 圧力センサ(差圧センサ、センサモジュール)
2 センサ基板
3、53、63 キャビティ筐体(キャビティ)
4 外気
5 キャビティ内部
6 受圧部(カンチレバー)
6a 変位検出抵抗(変位検出部、ピエゾ抵抗部)
7、57、67 キャビティ開口部
7a 蝶番
10 SOI基板
12 シリコン支持層
13 絶縁層
14 シリコン活性層
15 外部電極
20 ギャップ
24 外気4の気圧(気圧変動)
25 キャビティ内部5の気圧(気圧変動)
26 受圧部6の変位
30 貫通孔
34 外気4の気圧(気圧変動)
35 キャビティ内部5の気圧(気圧変動)
36 受圧部6の変位
40 キャビティ開口部の開口
44 外気4の気圧(気圧変動)
45 キャビティ内部5の気圧(気圧変動)
46 受圧部6の変位
50 アナログ部
52 参照抵抗
53 可変抵抗
54 固定抵抗
55 ブリッジ回路
56 アンプ
57 フィルタ
60 マイコン
61 A/D
62 圧力計算部
68 接着剤が密封された袋
69 接着剤
図1
図2
図3
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図10