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特許7156975運営評価装置、運営評価方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】運営評価装置、運営評価方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20221012BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20221012BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q50/10
G05B19/418 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019033275
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020140252
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】錦 尚志
(72)【発明者】
【氏名】榎本 智之
(72)【発明者】
【氏名】沢田 洸
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-15207(JP,A)
【文献】特開2018-173837(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079778(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の時点における工場の運営に係る複数種類のデータを入力することで、前記一の時点から一定時間後の時点における前記工場の運営に関する評価値を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを用いて、所定の評価時刻における前記工場の運営に係る入力データに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における前記評価値を予測する評価値予測部と、
前記評価値に係る情報を出力する評価値出力部と
を備え
前記予測モデルは、前記評価値として、前記工場の消費エネルギーに係るエネルギー評価値と、前記工場の稼働率に係る稼働率評価値とを出力する
運営評価装置。
【請求項2】
前記エネルギー評価値と前記稼働率評価値とに基づいて、前記消費エネルギーが低いほど高く、かつ前記稼働率が高いほど高い総合評価値、または、前記消費エネルギーが低いほど低く、かつ前記稼働率が高いほど低い総合評価値を算出する総合評価部を備え、
前記評価値出力部は、前記エネルギー評価値、前記稼働率評価値、および前記総合評価値を出力する
請求項1に記載の運営評価装置。
【請求項3】
一の時点における工場の運営に係る複数種類のデータを入力することで、前記一の時点から一定時間後の時点における前記工場の運営に関する評価値を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを用いて、所定の評価時刻における前記工場の運営に係る入力データに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における前記評価値を予測する評価値予測部と、
前記予測モデルにおける、前記入力データの種類別に重要度を特定する重要度特定部と、
前記入力データの種類別の重要度を出力する評価値出力部と
を備える運営評価装置。
【請求項4】
前記重要度特定部は、前記予測モデルを更新したときに、前記重要度を特定し、
前記評価値出力部は、前記入力データの種類別の重要度の時系列を出力する
請求項3に記載の運営評価装置。
【請求項5】
一の時点における工場の運営に係る複数種類のデータを入力することで、前記一の時点から一定時間後の時点における前記工場の運営に関する評価値を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを用いて、所定の評価時刻における前記工場の運営に係る入力データに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における前記評価値を予測する評価値予測部と、
前記入力データの値の変更を受け付ける変更部と、
前記予測モデルを用いて、前記変更部によって変更された前記入力データの値に基づいて、前記評価時刻の一定時間後における評価値である修正評価値を予測するシミュレート部と、
前記評価値に係る情報および前記修正評価値に係る情報を出力する評価値出力部と
を備える運営評価装置。
【請求項6】
前記入力データは、工場の設備の稼働率に係るデータと、前記設備の消費エネルギーに係るデータとを含む
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の運営評価装置。
【請求項7】
一の時点における工場の運営に係る複数種類のデータを入力することで、前記一の時点から一定時間後の時点における前記工場の運営に関する評価値を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを用いて、所定の評価時刻における前記工場の運営に係る入力データに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における前記評価値を予測するステップと、
前記評価値に係る情報を出力するステップと
を備え、
前記予測モデルは、前記評価値として、前記工場の消費エネルギーに係るエネルギー評価値と、前記工場の稼働率に係る稼働率評価値とを出力する
運営評価方法。
【請求項8】
コンピュータに、
一の時点における工場の運営に係る複数種類のデータを入力することで、前記一の時点から一定時間後の時点における前記工場の運営に関する評価値を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを用いて、所定の評価時刻における前記工場の運営に係る入力データに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における前記評価値を予測するステップと、
前記評価値に係る情報を出力するステップと
を実行させ、
前記予測モデルは、前記評価値として、前記工場の消費エネルギーに係るエネルギー評価値と、前記工場の稼働率に係る稼働率評価値とを出力する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運営評価装置、運営評価方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、監視対象のモニタリングデータに基づいて、監視対象の状態監視を行い、異常によって発生するコストを見積もることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-16509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場の運営を評価するにあたって、KPI(Key Performance Indicator)を用いることがある。KPIを参照して運営を評価する場合、KPIの計画値と実績に基づいて算出したKPIの値とを比較することで、運営の評価がなされる。しかしながら、計画値と実績値との比較を行う場合、KPIの計画値と実績値との間に大きな乖離が生じた後に対応策が取られるため、運営計画の立て直しが遅れる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、工場の運営にあたり、将来の運営に係る評価値を予測することができる運営評価装置、運営評価方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、運営評価装置は、一の時点における工場の運営に係る複数種類のデータを入力することで、前記一の時点から一定時間後の時点における前記工場の運営に関する評価値を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを用いて、所定の評価時刻における前記工場の運営に係る入力データに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における前記評価値を予測する評価値予測部と、前記評価値に係る情報を出力する評価値出力部とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る運営評価装置において、前記入力データは、工場の設備の稼働率に係るデータと、前記設備の消費エネルギーに係るデータとを含むものであってよい。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る運営評価装置において、前記予測モデルは、前記評価値として、前記工場の消費エネルギーに係るエネルギー評価値と、前記工場の稼働率に係る稼働率評価値とを出力するものであってよい。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、第3の態様に係る運営評価装置が、前記エネルギー評価値と前記稼働率評価値とに基づいて、前記消費エネルギーが低いほど高く、かつ前記稼働率が高いほど高い総合評価値、または、前記消費エネルギーが低いほど低く、かつ前記稼働率が高いほど低い総合評価値を算出する総合評価部を備え、前記評価値出力部は、前記エネルギー評価値、前記稼働率評価値、および前記前記総合評価値を出力するものであってよい。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、第1から第4の何れかの態様に係る運営評価装置が、前記予測モデルにおける、前記入力データの種類別に重要度を特定する重要度特定部を備え、前記評価値出力部は、前記入力データの種類別の重要度を出力するものであってよい。
【0011】
本発明の第6の態様によれば、第5の態様に係る運営評価装置において、前記重要度特定部は、前記予測モデルを更新したときに、前記重要度を特定し、前記評価値出力部は、前記入力データの種類別の重要度の時系列を出力するものであってよい。
【0012】
本発明の第7の態様によれば、第1から第6の何れかの態様に係る運営評価装置が、前記入力データの値の変更を受け付ける変更部と、前記予測モデルを用いて、前記変更されたデータに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における評価値である修正評価値を予測するシミュレート部と、を備え、前記評価値出力部は、前記修正評価値に係る情報を出力するものであってよい。
【0013】
本発明の第8の態様によれば、運営評価方法は、一の時点における工場の運営に係る複数種類のデータを入力することで、前記一の時点から一定時間後の時点における前記工場の運営に関する評価値を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを用いて、所定の評価時刻における前記工場の運営に係る入力データに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における前記評価値を予測するステップと、前記評価値に係る情報を出力するステップとを備える。
【0014】
本発明の第9の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、一の時点における工場の運営に係る複数種類のデータを入力することで、前記一の時点から一定時間後の時点における前記工場の運営に関する評価値を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを用いて、所定の評価時刻における前記工場の運営に係る入力データに基づいて、前記評価時刻の一定時間後における前記評価値を予測するステップと、前記評価値に係る情報を出力するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0015】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、工場評価装置は、工場の将来の運営に係る評価値を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る工場評価システムの構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る工場評価装置の構成を示す概略ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る工場評価装置の動作を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る工場全体の総合評価値の表示画面の例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る工場計測データの重要度の表示画面の例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る修正総合評価値の表示画面の例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る工場評価装置を用いた運営計画の見直しの例を示す図である。
図8】エネルギー原単位と総合設備効率から総合評価値を求める例を示す図である。
図9】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〈第1の実施形態〉
《工場評価システム》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る工場評価システムの構成を示す概略図である。
工場評価システム1は、複数の生産設備10、計測システム20、および工場評価装置30を備える。
【0018】
生産設備10は、工場Fに設置され、電力で駆動し、操作者の操作に従って様々なプロセスを実行する。生産設備10は、様々な製品(被加工物)を加工することができる。
【0019】
計測システム20は、生産設備10の稼働に関する複数種類のデータ(例えば、電流値、電圧、電力量、振動など)を計測する。生産設備10の稼働に関するデータは、工場の運営に係るデータの一例である。計測システム20の構成の例として、以下のものがあげられる。計測システム20は、第1センサ21と、第2センサ22と、第3センサ23と、不良品検査装置24と、送信器25と、受信器26とを備える。第1センサ21は、生産設備10が負荷時間に該当する状態にあるか否かを計測する。例えば、第1センサ21は、生産設備10に供給される電力を計測し、生産設備10に電源が入っている時間を負荷時間と特定する。第2センサ22は、生産設備10が稼働時間に該当する状態にあるか否か、及び正味稼働時間に該当する状態にあるか否かを計測する。例えば、第2センサ22は、生産設備10の加工部の振動を計測し、加工部が作動している時間を稼働時間と特定し、加工部がワークを加工している時間を正味稼働時間と特定する。第3センサ23は、工場Fの非生産設備11(例えば、空調設備等)の電流を計測する。
【0020】
不良品検査装置24は、生産設備10が生産した製品が不良品であるか否かを判定する装置である。例えば、不良品検査装置24は、撮像装置とコンピュータとを備え、撮像装置が生産設備10が生産する製品を撮像し、コンピュータが撮像された画像に対してパターンマッチング処理を行うことで、製品の検出および当該製品の良否の判定を行う。不良品検査装置24は、単位時間当たりの良品数および不良品数を出力する。
【0021】
送信器25と受信器26とは互いに無線通信により接続されている。当該無線通信は工場Fにおいて用いられる無線通信とは独立した通信である。そのため、計測システム20による無線通信は、工場Fの無線通信環境に干渉しない。送信器25は、第1センサ21の近傍に設置され、第1センサ21、第2センサ22、第3センサ23および不良品検査装置24と有線で接続される。送信器25は、第1センサ21、第2センサ22が計測した生産設備10に関するデータ、第3センサ23が計測した非生産設備11の電流値、ならびに不良品検査装置24が検出した良品数および不良品数を無線通信にて受信器26に送信する。受信器26は、送信器25から受信した生産設備10に関するデータ、非生産設備11の電流値、良品数および不良品数を時系列として記録する。工場評価装置30は、受信器26に記録されたこれらの時系列を取得することができる。なお、計測システム20の構成はこれに限られない。
【0022】
工場評価装置30は、計測システム20から入力された複数の生産設備10に関する複数の種類のデータの時系列に基づいて、生産設備10の生産効率とエネルギー効率とに鑑みた評価値である総合評価値を出力する。第1の実施形態においては、利用者の指示に応じて、工場Fの過去の総合評価値の推移および将来の総合評価値の予測結果をグラフとして表示する。
【0023】
《工場評価装置の構成》
図2は、第1の実施形態に係る工場評価装置の構成を示す概略ブロック図である。
工場評価装置30は、取得部301、基礎データ算出部302、評価値特定部303、総合評価部304、予測モデル記憶部305、学習部306、重要度特定部307、評価値予測部308、評価値出力部309、変更部310、シミュレート部311を備える。
【0024】
取得部301は、計測システム20から生産設備10に関するデータ、非生産設備11の電流値、良品数および不良品数の時系列を取得する。取得部301が取得するデータは、工場の運営に係る複数種類のデータの一例である。以下、取得部301が取得するデータを、工場計測データともいう。なお、工場計測データは、さらに温度や湿度などの工場の運営に係る他のデータを含むものであってよい。
【0025】
基礎データ算出部302は、取得部301が取得した工場計測データの時系列に基づいて、生産設備10の負荷時間、稼働時間、正味稼働時間、および消費電力量を算出する。また基礎データ算出部302は、良品数および不良品数の時系列に基づいて、負荷時間の生産設備10の生産数量および良品数を算出する。
基礎データ算出部302は、例えば、計算対象となる時間帯のうち各生産設備10の電流値から、各生産設備10の消費電力量を算出する。基礎データ算出部302は、例えば、計算対象となる時間帯のうち非生産設備11の電流値から、各非生産設備11の消費電力量を算出する。
【0026】
生産設備10の稼働率は、稼働時間を負荷時間で除算して得られる値であるため、生産設備10の稼働時間は、生産設備10の稼働率に係る量の一例である。
生産設備10の効率は、正味稼働時間を稼働時間で除算して得られる値であるため、生産設備10の正味稼働時間は、生産設備10の効率に係る量の一例である。
【0027】
評価値特定部303は、基礎データ算出部302が算出する負荷時間、稼働時間、正味稼働時間、生産数量、良品数、および消費電力に基づいて、総合設備効率およびエネルギー原単位を算出する。総合設備効率は、工場Fの稼働率に係る稼働率評価値の一例である。またエネルギー原単位は、工場Fの消費エネルギーに係るエネルギー評価値の一例である。
具体的には、評価値特定部303は、以下の手順で総合設備効率およびエネルギー原単位を算出する。評価値特定部303は、稼働時間を負荷時間で除算することで各生産設備10の稼働率を算出する。評価値特定部303は、正味稼働時間を稼働時間で除算することで各生産設備10の効率を算出する。評価値特定部303は、良品数を生産数量で除算することで各生産設備10の品質を算出する。評価値特定部303は、稼働率と効率と品質とを乗算することで、各生産設備10の総合設備効率を算出する。評価値特定部303は、消費電力量を生産数量で除算することで、各生産設備10のエネルギー原単位を算出する。
【0028】
また、評価値特定部303は、すべての生産設備10の消費電力量および非生産設備11の消費電力量の和を、すべての生産設備10の生産数量の和で除算することで、工場F全体のエネルギー原単位を算出する。つまり、評価値特定部303は、工場Fで消費される電流値を、工場Fの生産数量で除算することで、工場F全体のエネルギー原単位を算出する。
【0029】
総合評価部304は、総合設備効率とエネルギー原単位とに基づいて、工場Fの運営に係る総合評価値を算出する。総合評価部304は、各生産設備10の総合設備効率の平均値を、工場F全体のエネルギー原単位で除算することで、工場全体の総合評価値を算出する。総合評価値は、消費エネルギーが低いほど高く、かつ稼働率が高いほど高い値である。なお、他の実施形態に係る総合評価値は、消費エネルギーが低いほど低く、かつ稼働率が高いほど低いものであってもよい。例えば、他の実施形態に係る総合評価値は、工場F全体のエネルギー原単位を各生産設備10の総合設備効率の平均値で除算したものであってよい。
【0030】
予測モデル記憶部305は、一の時点における工場計測データを入力することで、一の時点から一定時間後(例えば1週間後)の時点における総合設備効率およびエネルギー原単位を出力するように学習された学習済みモデルである予測モデルを記憶する。本実施形態において「学習済みモデル」とは、機械学習モデルと学習済みパラメータの組み合わせである。機械学習モデルとしては、例えばニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、線形回帰、回帰木などが挙げられる。
【0031】
学習部306は、取得部301が取得した工場計測データに基づいて、予測モデルを学習する。具体的には、学習部306は、過去の工場計測データを入力サンプルとし、入力サンプルに係る一定時間後の総合設備効率およびエネルギー原単位を出力サンプルとする学習用データセットを用いて予測モデルを学習する。学習された予測モデルは、予測モデル記憶部305に記録される。なお、学習部306は、工場評価装置30と別個の装置に設けられてもよい。この場合、別個の装置において学習された学習済みモデルが、予測モデル記憶部305に記録されることとなる。
【0032】
重要度特定部307は、予測モデル記憶部305が記憶する予測モデルにおける入力データの種類別に重要度を特定する。重要度とは、予測モデルに入力される複数種類のデータそれぞれが、予測モデルの性能に寄与する度合いを示す値である。重要度特定部307は、例えば、Permutation Importanceなどの手法によって重要度を特定することができる。Permutation Importanceは、データセットのうち、重要度の評価対象となるデータの値をシャッフルした値を予測モデルに入力したときの出力と、正しいデータセットを入力したときの出力との変化を観測することで、評価対象となるデータの需要度を特定する手法である。なお、データの値のシャッフルは、評価対象のデータの相関をなくすことを目的として行われる。
なお、予測モデルが回帰木である場合、重要度特定部307は、決定木の変数重要度を重要度として特定してもよい。
【0033】
評価値予測部308は、取得部301が取得した評価時刻に係る工場計測データを、予測モデル記憶部305が記憶する予測モデルに入力することで、評価時刻の一定時間後に係る総合設備効率およびエネルギー原単位を予測する。
【0034】
評価値出力部309は、評価値特定部303が特定した総合設備効率およびエネルギー原単位に基づいて算出された工場F全体の総合評価値、および評価値予測部308が予測した総合設備効率およびエネルギー原単位に基づいて算出された工場F全体の総合評価値を出力する。以下、評価値特定部303が特定した総合設備効率およびエネルギー原単位に基づいて算出された工場F全体の総合評価値を実績総合評価値ともいう。また、評価値予測部308が予測した総合設備効率およびエネルギー原単位に基づいて算出された工場F全体の総合評価値を、予測総合評価値ともいう。
【0035】
変更部310は、取得部301が取得した評価時刻に係る工場計測データの一部の変更を受け付ける。
シミュレート部311は、変更部310によって変更された工場計測データを予測モデル記憶部305が記憶する予測モデルに入力することで、運転計画の変更後の総合設備効率およびエネルギー原単位を予測する。運転計画の変更後の総合設備効率およびエネルギー原単位は、修正評価値の一例である。
【0036】
《工場評価装置の動作》
図3は、第1の実施形態に係る工場評価装置の動作を示すフローチャートである。
利用者が工場評価装置30に総合評価値の出力指示を入力すると、取得部301は、計測システム20から工場計測データを取得する(ステップS1)。
【0037】
工場評価装置30は、総合評価値の算出対象となる単位時間(例えば、1時間)ごとの時間帯を1つずつ選択し、選択された時間帯について、以下のステップS3からステップS15の処理を実行する(ステップS2)。
【0038】
まず、基礎データ算出部302は、取得部301が取得した情報に基づいて、選択した時間帯における負荷時間、稼働時間、正味稼働時間、消費電力量、良品数、および生産数量を算出する(ステップS3)。次に、評価値特定部303は、基礎データ算出部302が算出したデータに稼働時間を負荷時間で除算することで、選択した時間帯における各生産設備10の稼働率を算出する(ステップS4)。評価値特定部303は、正味稼働時間を稼働時間で除算することで選択した時間帯における各生産設備10の効率を算出する(ステップS5)。評価値特定部303は、良品数を生産数量で除算することで選択した時間帯における各生産設備10の品質を算出する(ステップS6)。
【0039】
評価値特定部303は、稼働率と効率と品質とを乗算することで、選択した時間帯における各生産設備10の総合設備効率を算出する(ステップS7)。評価値特定部303は、すべての生産設備10の消費電力量および非生産設備11の消費電力量の和を、すべての生産設備10の生産数量の和で除算することで、工場F全体のエネルギー原単位を算出する(ステップS8)。総合評価部304は、各生産設備10の総合設備効率の平均値を、工場F全体のエネルギー原単位で除算することで、工場全体の総合評価値を算出する(ステップS9)。
【0040】
上記の処理によって各時間帯に係る総合設備効率およびエネルギー原単位が得られると、学習部306は、ステップS1で取得した工場計測データの時系列と、ステップS2からステップS9で生成された総合設備効率およびエネルギー原単位の時系列とに基づいて、予測モデルの学習に用いる学習用データセットを生成する(ステップS10)。すなわち、学習部306は、入力サンプルである工場計測データと、出力サンプルである総合設備効率およびエネルギー原単位とを、一定時間ずつずらして対応付けることで、学習用データセットを生成する。学習部306は、生成した学習用データセットを用いて予測モデルを学習する(ステップS11)。当該学習は、バッチ学習によってなされてもよいし、オンライン学習によってなされてもよい。重要度特定部307は、ステップS11で学習された予測モデルを用いて、工場計測データの種類別の重要度を特定する(ステップS12)。
【0041】
次に、評価値予測部308は、ステップS1で取得した工場計測データのうち直近の一定時間(例えば、1週間)に係るものを、単位時間ごとに抽出し、それぞれを予測モデルに入力することで、現在時刻から一定時間後までの総合設備効率およびエネルギー原単位の時系列を予測する(ステップS13)。総合評価部304は、ステップS13で予測された単位時刻ごとの総合設備効率およびエネルギー原単位に基づいて、現在時刻から一定時間後までの総合評価値の予測値の時系列を算出する(ステップS14)。
【0042】
図4は、第1の実施形態に係る工場全体の総合評価値の表示画面の例を示す図である。
評価値出力部309は、図4に示すような総合評価値の表示画面を生成し、出力する(ステップS15)。
工場F全体の総合評価値の表示画面には、工場F全体の総合評価値の時系列を表すグラフと、工場F全体のエネルギー原単位の時系列を表すグラフと、工場F全体の総合設備効率の時系列を表すグラフと、が含まれる。総合評価値の時系列を表すグラフは、縦軸に総合評価値をとり、横軸に時刻をとるグラフである。エネルギー原単位の時系列を表すグラフは、縦軸にエネルギー原単位をとり、横軸に時刻をとるグラフである。総合設備効率の時系列を表すグラフは、縦軸に総合設備効率をとり、横軸に時刻をとるグラフである。各グラフのうち、現在時刻より左側の評価値は、ステップS2からステップS9の処理によって求められた値である。現在時刻より右側の評価値は、ステップS14の処理によって求められた値である。
これにより、利用者は、総合評価値の過去の推移と将来の予測値とを一覧することができる。したがって、利用者は、総合評価値の予測値が計画値から乖離することが予測される場合に、先んじて対策を講じることができる。
また利用者は、エネルギー原単位の時系列を表すグラフおよび総合設備効率の時系列を表すグラフを視認することで、総合評価値が高い時や低い時に、その原因が生産効率にあるのか、エネルギー効率にあるのかを容易に認識することができる。
【0043】
図5は、第1の実施形態に係る工場計測データの重要度の表示画面の例を示す図である。
また、評価値出力部309は、図5に示すような工場計測データの重要度の表示画面を生成し、出力する(ステップS16)。重要度の表示画面には、工場計測データの項目が、重要度の降順に並べて表示される。各項目には、重要度の大きさを示すグラフと、過去の学習毎の重要度の順位の時系列とが関連付けて表示される。
これにより、利用者は、工場Fの運転計画の見直しにあたって、工場計測データの重要度の表示画面を参照することで、見直すべき項目の決定に役立てることができる。例えば、重要度が大きい項目ほど総合評価値に与える影響が大きいことから、重要度が大きい項目について改善を図ることを考えることができる。また、利用者は、現在の重要度の順位の変動を観察することで、工場の状態の推移を観測することができる。
【0044】
利用者は、工場計測データの重要度の表示画面の視認後、工場Fの運転計画の変更後のシミュレーションを行うことができる。すなわち、利用者は、現在の工場計測データの値を変更し、変更後の工場計測データ値に基づいて予測モデルを用いた評価値の予測を行うことができる。変更部310は、利用者からステップS1で取得した工場計測データの値の変更を受け付ける(ステップS17)。シミュレート部311は、変更後の工場計測データを予測モデルに入力することで、一定時間後の総合設備効率およびエネルギー原単位の時系列を予測する(ステップS18)。総合評価部304は、ステップS18で予測された単位時刻ごとの総合設備効率およびエネルギー原単位に基づいて、修正総合評価値を算出する(ステップS19)。
【0045】
図6は、第1の実施形態に係る修正総合評価値の表示画面の例を示す図である。
評価値出力部309は、図6に示すような修正総合評価値の表示画面を生成し、出力する(ステップS20)。修正総合評価値の表示画面は、図4に示す総合評価値の表示画面に、修正総合評価値のプロットPを追加したものである。これにより、利用者は、運転計画の変更の妥当性を検証することができる。
【0046】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、工場評価装置30は、予測モデルを用いて、評価時刻における工場計測データに基づいて、評価時刻の一定時間後における評価値を予測し、出力する。これにより、工場評価装置30は、工場Fの運営にあたり、将来の運営に係る評価値(KPI)を予測することができる。
図7は、第1の実施形態に係る工場評価装置を用いた運営計画の見直しの例を示す図である。例えば、図7に示すように、工場評価装置30が評価時刻において一定時間後にKPIが大きく下がること示す表示画面を生成した場合、工場評価装置30の利用者は、KPIの計画値と実績値との間に乖離が生じる前ないし微小な乖離が生じた時点で、将来的な乖離の発生を知ることができる。これにより、利用者は対応策を取ることが可能となり、事前ないし早期の運営計画の立て直しを行うことができる。
【0047】
また、第1の実施形態によれば、工場計測データは、工場Fの設備の稼働率に係るデータと、設備の消費エネルギーに係るデータとを含む。これにより、安価かつ汎用的な手法で評価値を算出するための工場計測データを得ることができる。なお、他の実施形態においてはこれに限られず、人手で生成された工場Fの運営に係る複数種類のデータを用いて評価値を算出してもよい。
【0048】
また、第1の実施形態によれば、予測モデルは、評価値として、工場Fの消費エネルギーに係るエネルギー評価値であるエネルギー原単位と、工場Fの稼働率に係る稼働率評価値である総合設備効率とを出力する。そして、工場評価装置30は、予測されたエネルギー原単位および総合設備効率から、総合評価値を算出する。図8は、エネルギー原単位と総合設備効率から総合評価値を求める例を示す図である。これにより、工場評価装置30は、エネルギー原単位または総合設備効率のみの個別最適といった予測ではなく、図8に示すように、総合評価値の時系列T3を参照することで、全体最適を志向した予測を実現することができる。また、利用者は、エネルギー原単位の時系列T1および総合設備効率の時系列T2を認識することで、総合評価値の予測に対して、その変化の原因が生産効率にあるのか、エネルギー効率にあるのかを容易に認識することができる。なお、他の実施形態においてはこれに限られず、予測モデルは、直接総合評価値や他の評価値を出力するものであってもよい。
【0049】
また、工場評価装置30は、予測モデルにおける工場計測データの種類別に重要度を特定し、当該重要度を出力する。これにより、利用者は、工場Fの運転計画の見直しにあたって、工場計測データの重要度の表示画面を参照することで、見直すべき項目の決定に役立てることができる。また、工場評価装置30は、予測モデルの更新のたびに重要度を特定し、その時系列を出力する。これにより、利用者は、現在の重要度の順位の変動を観察することで、工場Fの状態の推移を観測することができる。なお、他の実施形態においてはこれに限られず、工場評価装置30は、重要度を算出しないものであってもよく、また最新の重要度のみを出力するものであってもよい。
【0050】
また、工場評価装置30は、工場計測データの値の変更を受け付け、変更されたデータに基づいて修正評価値を予測する。これにより、利用者は、運転計画の変更の妥当性を検証することができる。なお、他の実施形態においてはこれに限られず、工場評価装置30は、工場計測データの値の変更を受け付けなくてもよい。
【0051】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0052】
上述の実施形態に係る工場評価装置30は、工場Fの運営に関する評価値として、エネルギー原単位、総合設備効率、および総合評価値を算出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る工場評価装置30は、エネルギー原単位または総合設備効率のみを算出してもよいし、他の評価値を算出してもよい。
【0053】
上述の実施形態では、工場運営に関する評価値を予測する工場評価装置30について説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、会社経営について同様の手法で評価値を予測してもよい。この場合、評価値として受注高や売上高などを用いることができる。
【0054】
〈コンピュータ構成〉
図9は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。
上述の工場評価装置30は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した予測モデル記憶部305に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0055】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ90は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ91によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0056】
ストレージ93の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0057】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 工場評価システム
10 生産設備
20 計測システム
30 工場評価装置
301 取得部
302 基礎データ算出部
303 評価値特定部
305 予測モデル記憶部
306 学習部
307 重要度特定部
308 評価値予測部
304 総合評価部
309 評価値出力部
310 変更部
311 シミュレート部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9