(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】車高調整装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/018 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
B60G17/018
(21)【出願番号】P 2019084493
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 政夫
(72)【発明者】
【氏名】堀内 富士仁
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将源
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-146704(JP,U)
【文献】実開昭60-89007(JP,U)
【文献】実開平5-67506(JP,U)
【文献】特開平9-58242(JP,A)
【文献】実開平1-60908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車高を調整する車高調整装置であって、
複数の電磁弁を有してエアスプリングに対する圧縮エアの給排を行う空圧回路と、
前記複数の電磁弁の各々に対する電力の供給を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、ドライバーが操作可能なメインスイッチが配設されて前記メインスイッチがオン状態にあるときに通電可能に構成されたメイン回路と、ドライバーが操作可能な昇降スイッチが配設されて前記メイン回路が通電状態にあるときに通電可能に構成された昇降回路と、前記メイン回路および前記昇降回路への電力供給を各別に制御する電力制御部と、を備え、
前記メインスイッチがオン状態にあるとき、前記電力制御部は、前記車両の車速を取得し、前記車速が許可速度未満のときは前記メイン回路を通電状態に制御し、前記車速が前記許可速度よりも大きい禁止速度以上のときは前記メイン回路を非通電状態に制御し、前記許可速度以上前記禁止速度未満の速度範囲に前記車速があるときは当該速度範囲に前記車速が移行する直前の状態に前記メイン回路を維持する
車高調整装置。
【請求項2】
前記空圧回路は、エア供給源に接続されたエア供給路と、前記エア供給路に配設されたエア給排弁と、前記エア給排弁と前記エアスプリングとを接続する給排路と、前記給排路に配設された給排制御弁と、を備え、
前記エア給排弁は、作動状態において前記給排路を前記エア供給路に連通させるとともに非作動状態において前記給排路を外部に連通させる電磁弁であり、
前記給排制御弁は、作動状態において前記給排路における圧縮エアの流通を許可するとともに非作動状態において前記給排路における圧縮エアの流通を禁止する電磁弁であり、
前記制御回路は、前記昇降スイッチの上昇操作により前記エア給排弁と前記給排制御弁とを作動状態に制御可能に構成され、前記昇降スイッチの降下操作により前記エア給排弁を非作動状態に制御するとともに前記給排制御弁を作動状態に制御可能に構成されている
請求項1に記載の車高調整装置。
【請求項3】
前記空圧回路は、前記車高が予め定めた設定車高に維持されるように前記エアスプリングに対する圧縮エアの給排を制御するレベリングバルブと、前記エアスプリングと前記レベリングバルブとを接続する自動給排路と、前記自動給排路に配設されたエア作動弁である自動給排制御弁と、前記レベリングバルブと前記エア供給路とを接続する自動供給路と、前記自動供給路から分岐して前記自動給排制御弁に作動圧を供給可能な作動圧供給路と、前記作動圧供給路に配設された状態伝達弁と、を備え、
前記状態伝達弁は、作動状態において前記作動圧供給路における圧縮エアの流通を許可して前記自動給排制御弁に作動圧を供給する電磁弁であり、
前記自動給排制御弁は、作動状態において前記自動給排路における圧縮エアの流通を禁止するとともに非作動状態において前記自動給排路における圧縮エアの流通を許可し、
前記制御回路は、前記メイン回路が通電状態にあるときに前記状態伝達弁を作動状態に制御する
請求項2に記載の車高調整装置。
【請求項4】
前記エアスプリングが第1エアスプリングであり、
前記給排路が第1給排路であり、
前記給排制御弁が第1給排制御弁であり、
前記空圧回路は、前記第1給排路と第2エアスプリングとを接続する第2給排路と、前記第2給排路に配設される第2給排制御弁と、を備え、
前記自動給排路は、前記第1給排路および前記第2給排路の双方に対して接続され、
前記自動給排制御弁は、前記自動給排路に対する前記第1給排路および前記第2給排路の接続部分よりも前記レベリングバルブ側に位置し、
前記第2給排制御弁は、作動状態において前記第2給排路における圧縮エアの流通を許可するとともに非作動状態において前記第2給排路における圧縮エアの流通を禁止する
請求項3に記載の車高調整装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記メイン回路が通電状態にあるときに点灯するインジケーターを有している
請求項1~4のいずれか一項に記載の車高調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、トレーラーなどが連結されるトラクターなどの車両においては、車高を調整可能な車高調整装置を備えている。車高調整装置の一例は、左右一対のエアスプリングに対する圧縮エアの給排を制御することによって車高を調整する。こうした車高調整装置は、トレーラーとの連結時はスイッチ操作による手動での車高調整が可能に構成されているとともに走行時は自動での車高調整が可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した車高調整装置においては、利便性や安全性の向上を目的の1つとして、例えばトレーラーとの連結時の車両の移動時にはスイッチ操作による手動での車高調整を許可し、走行時にはスイッチ操作による手動での車高調整を禁止することが求められる。
【0005】
本発明は、スイッチ操作による手動での車高調整の許否を自動的に切り替えることが可能な車高調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車高調整装置は、車両の車高を調整する車高調整装置であって、複数の電磁弁を有してエアスプリングに対する圧縮エアの給排を行う空圧回路と、前記複数の電磁弁の各々に対する電力の供給を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、ドライバーが操作可能なメインスイッチが配設されて前記メインスイッチがオン状態にあるときに通電可能に構成されたメイン回路と、ドライバーが操作可能な昇降スイッチが配設されて前記メイン回路が通電状態にあるときに通電可能に構成された昇降回路と、前記メイン回路および前記昇降回路への電力供給を各別に制御する電力制御部と、を備え、前記メインスイッチがオン状態にあるとき、前記電力制御部は、前記車両の車速を取得し、前記車速が許可速度未満のときは前記メイン回路を通電状態に制御し、前記車速が前記許可速度よりも大きい禁止速度以上のときは前記メイン回路を非通電状態に制御し、前記許可速度以上前記禁止速度未満の速度範囲に前記車速があるときは当該速度範囲に前記車速が移行する直前の状態に前記メイン回路を維持する。
【0007】
上記構成によれば、メインスイッチがオン状態にあるときに車速に応じてメイン回路の状態が切り替えられる。そのため、スイッチ操作による手動での車高調整の許否、すなわち昇降スイッチの有効・無効を自動的に切り替えることができる。
【0008】
上記車高調整装置において、前記空圧回路は、エア供給源に接続されたエア供給路と、前記エア供給路に配設されたエア給排弁と、前記エア給排弁と前記エアスプリングとを接続する給排路と、前記給排路に配設された給排制御弁と、を備え、前記エア給排弁は、作動状態において前記給排路を前記エア供給路に連通させるとともに非作動状態において前記給排路を外部に連通させる電磁弁であり、前記給排制御弁は、作動状態において前記給排路における圧縮エアの流通を許可するとともに非作動状態において前記給排路における圧縮エアの流通を禁止する電磁弁であり、前記制御回路は、前記昇降スイッチの上昇操作により前記エア給排弁と前記給排制御弁とを作動状態に制御可能に構成され、前記昇降スイッチの降下操作により前記エア給排弁を非作動状態に制御するとともに前記給排制御弁を作動状態に制御可能に構成されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、メイン回路が通電状態にあるとき、昇降スイッチの上昇操作によって車高を高くすることができる。また、昇降スイッチの降下操作によって車高を低くすることができる。
【0010】
上記車高調整装置において、前記空圧回路は、前記車高が予め定めた設定車高に維持されるように前記エアスプリングに対する圧縮エアの給排を制御するレベリングバルブと、前記エアスプリングと前記レベリングバルブとを接続する自動給排路と、前記自動給排路に配設されたエア作動弁である自動給排制御弁と、前記レベリングバルブと前記エア供給路とを接続する自動供給路と、前記自動供給路から分岐して前記自動給排制御弁に作動圧を供給可能な作動圧供給路と、前記作動圧供給路に配設された状態伝達弁と、を備え、前記状態伝達弁は、作動状態において前記作動圧供給路における圧縮エアの流通を許可して前記自動給排制御弁に作動圧を供給する電磁弁であり、前記自動給排制御弁は、作動状態において前記自動給排路における圧縮エアの流通を禁止するとともに非作動状態において前記自動給排路における圧縮エアの流通を許可し、前記制御回路は、前記メイン回路が通電状態にあるときに前記状態伝達弁を作動状態に制御することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、メイン回路が通電状態にあるときには車高が昇降スイッチの操作によって調整可能であり、メイン回路が非通電状態にあるときには車高が設定車高に自動的に調整される。
【0012】
上記車高調整装置において、前記エアスプリングが第1エアスプリングであり、前記給排路が第1給排路であり、前記給排制御弁が第1給排制御弁であり、前記空圧回路は、前記第1給排路と第2エアスプリングとを接続する第2給排路と、前記第2給排路に配設される第2給排制御弁と、を備え、前記自動給排路は、前記第1給排路および前記第2給排路の双方に対して接続され、前記自動給排制御弁は、前記自動給排路に対する前記第1給排路および前記第2給排路の接続部分よりも前記レベリングバルブ側に位置し、前記第2給排制御弁は、作動状態において前記第2給排路における圧縮エアの流通を許可するとともに非作動状態において前記第2給排路における圧縮エアの流通を禁止するとよい。
【0013】
上記構成によれば、第1エアスプリングと第2エアスプリングとが自動給排路を通じて連通するため、第1エアスプリングと第2エアスプリングとの間で圧縮エアの往来が可能である。その結果、その時々の荷重に応じて第1エアスプリングの圧縮エア量と第2エアスプリングの圧縮エア量とをバランスよく調整することができる。
【0014】
上記車高調整装置において、前記制御回路は、前記メイン回路が通電状態にあるときに点灯するインジケーターを有していることが好ましい。
上記構成によれば、メインスイッチがオン状態であったとしても、昇降スイッチの有効・無効をインジケーターでドライバーに通知することができる。その結果、ドライバーは、昇降スイッチの有効・無効をインジケーターによって確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】車高調整装置の一実施形態を搭載した車両の概略構成を示す図であって、(a)トレーラーとトラクターとが連結された状態を示す図、(b)トレーラーとトラクターとが連結される前の状態を示す図。
【
図2】車高調整装置の一実施形態の概略構成を示す図。
【
図4】(a)加速時における第1リレーの状態の一例を示す図、(b)減速時における第1リレーの状態の一例を示す図。
【
図5】設定車高へ自動的に車高が高くなる際の車高調整装置の状態を示す図。
【
図6】設定車高へ自動的に車高が低くなる際の車高調整装置の状態を示す図。
【
図7】上昇操作によって車高が高くなる際の車高調整装置の状態を示す図。
【
図8】降下操作によって車高が低くなる際の車高調整装置の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図8を参照して、車高調整装置の一実施形態について説明する。まず、
図1を参照して、車高調整装置の一実施形態を搭載する車両の概略構成について説明する。
図1(a)および
図1(b)に示すように、車両10の一例は、トレーラー11などが連結されるトラクターである。車両10は、トレーラー11を連結する図示されないカプラーを有する車両本体13と、車両本体13に支持されるキャブ14とを有している。車両10は、左右一対の前側駆動輪15を回転可能に支持する前側車軸16と、左右一対の後側駆動輪17を回転可能に支持する後側車軸18と、を有している。車両10は、車両本体13と後側車軸18との間に配設される左右一対の第1エアスプリング56と第2エアスプリング66と(
図2参照)に対する圧縮エアの給排を制御することで車高調整を行う車高調整装置20を有している。車高調整装置20は、走行中に車高を予め定めた設定車高に自動的に調整するとともに、トレーラー11との連結時にドライバーによるスイッチ操作によって車高を調整可能に構成されている。ドライバーが操作可能なスイッチとして、車高調整装置20は、メインスイッチ21および昇降スイッチ22を有している。これらの各種スイッチ21,22は、キャブ14内に設置されている。メインスイッチ21は、ドライバーによる手動での車高調整のオンオフを切り替えるスイッチである。昇降スイッチ22は、メインスイッチ21がオン状態にあるときに、ドライバーによる上昇操作によって車高を高くすることが可能なスイッチであり、ドライバーによる降下操作によって車高を低くすることが可能なスイッチである。
【0017】
また、車高調整装置20は、メインスイッチ21の状態や車両10の車速vに応じて昇降スイッチ22の操作による車高の調整を許可・禁止するECU(Electronic Control Unit)25を有している。ECU25は、電力制御部として機能する。ECU25は、プロセッサ、メモリ、入力インターフェース、および、出力インターフェース等がバスを介して互いに接続されたMCU(Micro Control Unit)26(
図3参照)を中心に構成される。ECU25には、車速vを検出する車速センサー27が電気的に接続されている。ECU25は、車速センサー27が出力した車速vを入力インターフェースを介して取得し、その取得した車速vが許可条件を満たしていないときにメインスイッチ21を無効化する。ここでいう「メインスイッチ21の無効化」は、メインスイッチ21がオン状態であったとしてもオフ状態にあるものとして、昇降スイッチ22の操作による車高の調整を禁止することをいう。以下では、メインスイッチ21が無効化された状態を無効状態という。
【0018】
図2~
図8を参照して車高調整装置20についてさらに詳しく説明する。
図2に示すように、車高調整装置20は、上述した各種スイッチ21,22およびECU25のほか、制御回路30と空圧回路50とを有している。制御回路30は、上述した各種スイッチ21,22およびECU25が組み込まれた電気回路である。制御回路30は、車速v、メインスイッチ21の状態、および、昇降スイッチ22の状態に応じて、空圧回路50を構成する各種電磁弁に対する電力の供給を制御する。空圧回路50は、第1エアスプリング56に対する圧縮エアの給排と第2エアスプリング66に対する圧縮エアの給排とを行う。なお、
図2、
図3、および、
図5~
図8において、太実線は制御回路30を構成する配線部分を示し、細実線は空圧回路50を構成する配管部分を示している。
【0019】
(制御回路30)
図2および
図3に示すように、制御回路30は、ECU25と車両10に搭載されたバッテリー31とを接続する電源回路32を有している。制御回路30は、ECU25に内蔵された第1リレー回路28を介して電源回路32に接続されるメイン回路33を有している。メイン回路33には、メインスイッチ21が配設されている。メイン回路33は、メインスイッチ21および第1リレー回路28がオン状態にあるときにバッテリー31をフレーム接続する。すなわち、メイン回路33は、メインスイッチ21および第1リレー回路28の双方がオン状態にあるときに通電状態となり、メインスイッチ21および第1リレー回路28の一方がオフ状態にあるときに非通電状態となる。
【0020】
メイン回路33は、メインスイッチ21に対して並列接続される通知回路34を有している。通知回路34には、メイン回路33が通電状態にあるときに点灯するインジケーター35が配設されている。このインジケーター35は、キャブ14内に設置されている。ドライバーは、インジケーター35の点灯・消灯により昇降スイッチ22の操作によって車高の調整が可能か否かを把握することが可能である。
【0021】
制御回路30は、ECU25と昇降スイッチ22とを接続するとともに、ECU25に内蔵された第2リレー回路29を介して電源回路32に接続される昇降回路36を有している。昇降回路36は、ECU25に設けられた第1出力ポート37に接続された電気回路である。
【0022】
制御回路30は、第2リレー回路29を介して電源回路32をフレーム接続する状態伝達回路38を有している。状態伝達回路38は、ECU25に設けられた第2出力ポート39に接続された電気回路である。状態伝達回路38は、第2リレー回路29がオン状態にあるときに通電状態に制御される。また、状態伝達回路38は、第2リレー回路29がオフ状態にあるときに非通電状態に制御される。
【0023】
図2に示すように、制御回路30は、昇降スイッチ22が上昇操作されている間、昇降回路36をフレーム接続する第1回路41を有している。制御回路30は、昇降スイッチ22が降下操作されている間、昇降回路36を第1回路41とは異なる経路でフレーム接続する第2回路42を有している。第2回路42は、第1回路41における合流点43で第1回路41に電気的に接続される。
【0024】
制御回路30は、接続回路44を有している。接続回路44は、第1回路41において合流点43よりも昇降スイッチ22側に位置する第1電気接続点46と、第2回路42における第2電気接続点47と、を電気的に接続する。接続回路44には、ダイオード48が配設されている。ダイオード48は、第1電気接続点46から第2電気接続点47への通電を許可する一方、第2電気接続点47から第1電気接続点46への通電を禁止する。
【0025】
第1リレー回路28のオンオフは、MCU26によって制御される。
図4(a)および
図4(b)に示すように、MCU26は、車速vが許可速度v1(例えば5km/h)未満の許可範囲Aにある場合、第1リレー回路28をオン状態に制御する。MCU26は、車速vが禁止速度v2(例えば20km/h)以上の禁止範囲Cにある場合、第1リレー回路28をオフ状態に制御することによりメインスイッチ21を無効化する。MCU26は、許可速度v1以上、禁止速度v2未満の維持範囲Bに車速vが到達した場合、第1リレー回路28の状態をその直前の状態に維持する。具体的には、車速vが加速によって維持範囲Bに到達した場合、換言すれば、許可範囲Aから移行した維持範囲Bに車速vがある場合、MCU26は、第1リレー回路28をオン状態に維持する。反対に、車速vが減速によって維持範囲Bに到達した場合、換言すれば、禁止範囲Cから移行した維持範囲Bに車速vがある場合、MCU26は、第1リレー回路28をオフ状態に維持する。すなわち、MCU26は、車速vが許可範囲Aにある場合、および、車速vが許可範囲Aから移行した維持範囲Bにある場合に許可条件が成立していると判断する。換言すれば、MCU26は、車速vが禁止範囲Cにある場合、および、車速vが禁止範囲Cから移行した維持範囲Bにある場合に許可条件が不成立であると判断する。
【0026】
第2リレー回路29のオンオフは、MCU26に制御される。MCU26には、メイン回路33が通電状態にあるか否かを示す信号が入力される。MCU26は、許可条件が成立し、かつ、メインスイッチ21がオン状態(メイン回路33が通電状態)にある場合に第2リレー回路29をオン状態に制御する。MCU26は、許可条件が不成立である場合に加えて、許可条件が成立していてもメインスイッチ21がオフ状態(メイン回路33が非通電状態)にある場合に第2リレー回路29をオフ状態に制御する。第2リレー回路29がオン状態にあるとき、車高調整装置20は、昇降スイッチ22の操作によって車高が調整される手動モードにある。第2リレー回路29がオフ状態にあるとき、車高調整装置20は、車高が設定車高に自動的に調整される自動モードにある。
【0027】
(空圧回路50)
図2に示すように、空圧回路50は、図示されないコンプレッサーなどによって圧縮された圧縮エアを貯留するエア供給源51を有している。空圧回路50は、エア供給源51とエア給排弁52とを接続するエア供給路53を有している。空圧回路50は、エア供給路53からエア供給源51への圧縮エアの流入を禁止するチェックバルブ54を有している。空圧回路50は、エア給排弁52と第1エアスプリング56とを接続する第1給排路57を有している。第1給排路57には、第1給排制御弁58が配設されている。
【0028】
エア給排弁52は、エア供給路53からパイロット分岐点59で分岐したパイロット流路60に供給される圧縮エアを利用したパイロット式の電磁弁である。エア給排弁52は、第1回路41が通電状態にあるときに作動状態に制御される。作動状態にあるエア給排弁52は、エア供給路53と第1給排路57とを連通させる。非作動状態にあるエア給排弁52は、エア供給路53を閉塞するとともに第1給排路57をエア排出路61に連通させる。エア排出路61に流入した圧縮エアは、サイレンサー62から外部に排出される。
【0029】
第1給排制御弁58は、パイロット流路60に供給される圧縮エアを利用したパイロット式の電磁弁である。第1給排制御弁58は、第2回路42における第2電気接続点47と合流点43との間の区間が通電状態にあるときに作動状態に制御される。第1給排制御弁58は、作動状態において第1エアスプリング56とエア給排弁52との間における圧縮エアの流通を許可し、非作動状態において第1エアスプリング56とエア給排弁52との間における圧縮エアの流通を禁止する。
【0030】
空圧回路50は、第1給排路57におけるエア給排弁52と第1給排制御弁58との間に位置する分岐合流点65と第2エアスプリング66とを接続する第2給排路67を有している。第2給排路67には、第2給排制御弁68が配設されている。
【0031】
第2給排制御弁68は、第1給排制御弁58に同期して作動状態と非作動状態とが切り替えられるエア作動弁である。第2給排制御弁68は、第1給排制御弁58が作動状態にあるときにパイロット流路60を通じて作動圧が供給され、第1給排制御弁58が非作動状態にあるときに作動圧の供給が遮断される。第2給排制御弁68は、作動状態において第2エアスプリング66とエア給排弁52との間における圧縮エアの流通を許可し、非作動状態において第2エアスプリング66とエア給排弁52との間における圧縮エアの流通を禁止する。
【0032】
空圧回路50は、上述した各弁52,58,68が非作動状態にあるときに車高が自動的に設定車高に調整されるように第1エアスプリング56および第2エアスプリング66に対する圧縮エアの給排を制御するレベリングバルブ70を有している。レベリングバルブ70は、例えば、図示されないレバーがリンクロッドを介して後側車軸18に連結されており、後側車軸18に対する車両本体13の相対位置の変化によりそのレバーが機械的に操作されることで圧縮エアの給排を制御する。
【0033】
空圧回路50は、エア供給路53に設けられた分流点69に接続されレベリングバルブ70に対してエア供給路53を接続する自動供給路71と、レベリングバルブ70に対して第1給排路57および第2給排路67を接続する自動給排路72と、を有している。
【0034】
空圧回路50は、自動給排路72に自動給排制御弁73を有する。自動給排制御弁73は、第1給排路57に対する接続点である第1自動給排点74、および、第2給排路67に対する接続点である第2自動給排点75よりもレベリングバルブ70側の位置に配設されている。自動給排制御弁73は、作動状態において自動給排路72における圧縮エアの流通を禁止し、非作動状態において自動給排路72における圧縮エアの流通を許可するエア作動弁である。
【0035】
空圧回路50は、自動供給路71の分岐点76から分岐する分岐路77を有している。分岐路77は、エア供給路53の圧縮エアを作動流体として自動給排制御弁73に供給可能に構成されている。空圧回路50は、分岐路77に状態伝達弁78を有している。状態伝達弁78は、状態伝達回路38の状態を自動給排制御弁73に伝達する。状態伝達弁78は、状態伝達回路38が通電状態にあるときに作動状態に制御され、状態伝達回路38が非通電状態にあるときに非作動状態に制御される。作動状態にある状態伝達弁78は、分岐路77における圧縮エアの流通を許可することで自動給排制御弁73に対して作動圧を供給する。非作動状態にある状態伝達弁78は、自動給排制御弁73への作動圧の供給を遮断するとともに分岐路77を上述したエア排出路61に接続する。
【0036】
図5~
図8を参照して、上述した車高調整装置20の動作について説明する。なお、
図5~
図8において、太点線は非通電状態にある配線部分を示し、細点線は圧縮エアが流通しない配管部分を示している。
【0037】
(自動モード)
図5および
図6に示すように、自動モードにおいて、車高調整装置20は、車高を設定車高に自動的に調整する。なお、
図5および
図6においては、メインスイッチ21をオフ状態で示している。
【0038】
自動モードにおいては、第1リレー回路28および第2リレー回路29がオフ状態に制御される。これにより、状態伝達回路38が非通電状態となるため、状態伝達弁78および自動給排制御弁73が非作動状態に制御される。また、第1回路41および第2回路42が非通電状態となるため、エア給排弁52、第1給排制御弁58、および、第2給排制御弁68が非作動状態に制御される。すなわち、自動モードにおいては、第1エアスプリング56および第2エアスプリング66に対する圧縮エアの給排が自動給排路72を通じて行われる。
【0039】
図5に示すように、設定車高へ車高が高くなるとき、エア供給源51の圧縮エアは、エア供給路53、分流点69、自動供給路71、レベリングバルブ70、および、自動給排路72を通じて第1エアスプリング56および第2エアスプリング66に供給される。
【0040】
図6に示すように、設定車高へ車高が低くなるとき、第1エアスプリング56および第2エアスプリング66の圧縮エアは、自動給排路72を通じてレベリングバルブ70から外部へ排出される。
【0041】
(手動モード)
図7および
図8に示すように、手動モードにおいて、車高調整装置20は、ドライバーによる昇降スイッチ22の操作に応じて車高を調整する。手動モードにおいては、メインスイッチ21および第1リレー回路28がオン状態にあることから、インジケーター35が点灯した状態にある。また、第2リレー回路29がオン状態に制御されることから、状態伝達回路38が通電状態となる。これにより、状態伝達弁78および自動給排制御弁73が作動状態に制御される。すなわち、第1エアスプリング56および第2エアスプリング66に対する自動給排路72を通じた圧縮エアの給排が禁止される。
【0042】
図7に示すように、ドライバーによって昇降スイッチ22の上昇操作がなされると、第1回路41、接続回路44、および、第2回路42が通電状態となる。これにより、エア給排弁52、第1給排制御弁58、および、第2給排制御弁68が作動状態に制御される。このとき、第1エアスプリング56には、エア供給路53および第1給排路57を通じてエア供給源51の圧縮エアが供給される。また、第2エアスプリング66には、エア供給路53、第1給排路57、および、第2給排路67を通じてエア供給源51の圧縮エアが供給される。このように、車高調整装置20は、第1エアスプリング56および第2エアスプリング66に対して圧縮エアが供給されることで車高を高くする。
【0043】
図8に示すように、ドライバーによって昇降スイッチ22の降下操作がなされると、第1回路41、接続回路44、および、第2回路42のうちで第2回路42のみが通電状態となる。これにより、エア給排弁52が非作動状態、第1給排制御弁58および第2給排制御弁68が作動状態に制御される。このとき、第1エアスプリング56の圧縮エアは、第1給排路57、エア給排弁52、および、エア排出路61を通じて外部へ排出される。また、第2エアスプリング66の圧縮エアは、第2給排路67、第1給排路57、エア給排弁52、および、エア排出路61を通じて外部へ排出される。このように、車高調整装置20は、第1エアスプリング56および第2エアスプリング66から圧縮エアが排出されることで車高を低くする。
【0044】
本実施形態の効果について説明する。
(1)車高調整装置20においては、メインスイッチ21がオン状態であったとしても車速vに応じてメイン回路33の状態が切り替えられる。そのため、メインスイッチ21がオン状態に維持されたままであっても、車速vに応じて手動による車高調整の許否を自動的に切り替えることができる。
【0045】
(2)車高調整装置20においては、許可範囲Aに車速vがある場合、および、許可範囲Aから移行した維持範囲Bに車速vがある場合、昇降スイッチ22の操作を通じた車高調整が許可される。そのため、例えばトレーラー11との連結の際に車両10の車速が一時的に許可速度v1を超えたとしても昇降スイッチ22による車高の調整が継続される。その結果、車両10とトレーラー11との連結を円滑に行うことができる。
【0046】
(3)車高調整装置20において、ECU25は、車速vを取得するものの、他のECUとの協調制御を必要としないように構成されている。そのため、設計段階においてECU25と他のECU25との協調性を確認する必要がなくなることから、ECU同士の協調性確認に要する時間を省略することができる。すなわち、1つのECU25を単独で使用することにより、車高調整装置20の構成の簡素化と車高調整装置20の設計段階に要する時間の短縮とを図ることができる。
【0047】
(4)車高調整装置20においては、第1エアスプリング56および第2エアスプリング66に対する圧縮エアの給排が共通のエア給排弁52を通じて行われている。そのため、例えば圧縮エアを供給する供給弁と圧縮エアを排出する排出弁とがエアスプリングごとに配設される構成よりも少ない数の弁で空圧回路50を構成することができる。
【0048】
(5)第1給排路57と第2給排路67とが自動給排路72で接続されている。そのため、自動給排路72を通じて第1エアスプリング56と第2エアスプリング66との間で圧縮エアの往来が可能である。その結果、その時々の荷重に応じて第1エアスプリング56における圧縮エア量と第2エアスプリング66における圧縮エア量とをバランスよく調整することができる。
【0049】
(6)車高調整装置20においては、メイン回路33がオフ状態にあるときに車高を設定車高に自動的に調整することができる。
(7)車高調整装置20は、メイン回路33が通電状態にあるときに点灯するインジケーター35を有している。そのため、ドライバーは、そのインジケーターの点灯・非点灯により昇降スイッチ22による車高調整の有効・無効を判断することができる。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・車高調整装置20は、インジケーター35に加えて、または、インジケーター35に代えて、昇降スイッチ22による車高調整の有効・無効を例えば音声などによってドライバーに通知する通知装置を有していてもよい。
【0051】
・車高調整装置20は、複数のエアスプリングを有している場合、複数のエアスプリングの各々に対する圧縮エアの給排を各別に行う空圧回路を有していてよい。
・車高調整装置20は、昇降スイッチ22による車高調整によって設定車高が設定される構成であってもよいし、予め定めた所定の車高を設定車高としてもよい。
【0052】
・ECU25は、第1出力ポート37と第2出力ポート39のほかにも出力ポートを有していてもよい。この出力ポートは、例えば、車両の車速やエンジンの運転状態などに基づいて電力の供給が制御される構成であることが好ましい。こうした構成によれば、ECU25の汎用性を拡大することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…車両、11…トレーラー、13…車両本体、14…キャブ、15…前側駆動輪、16…前側車軸、17…後側駆動輪、18…後側車軸、20…車高調整装置、21…メインスイッチ、22…昇降スイッチ、25…ECU、26…MCU、27…車速センサー、28…第1リレー回路、29…第2リレー回路、30…制御回路、31…バッテリー、32…電源回路、33…メイン回路、34…通知回路、35…インジケーター、36…昇降回路、37…第1出力ポート、38…状態伝達回路、39…第2出力ポート、41…第1回路、42…第2回路、43…合流点、44…接続回路、46…第1電気接続点、47…第2電気接続点、48…ダイオード、50…空圧回路、51…エア供給源、52…エア給排弁、53…エア供給路、54…チェックバルブ、56…第1エアスプリング、57…第1給排路、58…第1給排制御弁、59…パイロット分岐点、60…パイロット流路、61…エア排出路、62…サイレンサー、65…分岐合流点、66…第2エアスプリング、67…第2給排路、68…第2給排制御弁、69…分流点、70…レベリングバルブ、71…自動供給路、72…自動給排路、73…自動給排制御弁、74…第1自動給排点、75…第2自動給排点、76…分岐点、77…分岐路、78…状態伝達弁。