(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】移動空間情報処理システム、移動空間情報処理方法および通信装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20221012BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20221012BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20221012BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20221012BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20221012BHJP
G08G 3/00 20060101ALI20221012BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G08G1/13
G09B29/10 A
G09B29/00 Z
G08G1/09 F
G08G1/09 H
G08G3/00 A
G08G5/00 A
(21)【出願番号】P 2019138607
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018146358
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】項 警宇
(72)【発明者】
【氏名】平井 雅尊
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 智仁
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173979(JP,A)
【文献】特開2012-089088(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131153(WO,A1)
【文献】特開2012-155660(JP,A)
【文献】特開2012-133726(JP,A)
【文献】特開2008-027011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 5/00
G09B 29/00 - 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動空間情報処理システム(200)であって、
空間を移動する移動体(111,112,113)と、前記移動体との間で情報をやり取りして前記空間に関する情報である空間情報を整備する情報処理装置(150)と、を備え、
前記移動体は、
少なくとも前記空間における当該移動体の位置の情報を含む移動体側情報を、通信により、前記情報処理装置とやり取りする第1通信部(121)と、
当該移動体が移動している空間の画像を取得する画像取得部(130)と、
前記情報処理装置により代表移動体(112)として設定された場合、前記取得した画像から前記空間に関するプローブ情報を抽出し、前記プローブ情報を含む前記移動体側情報を、前記情報処理装置に送信する制御部(140)と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記移動体と通信を行なう第2通信部(151)と、
前記通信を用いて、前記移動体側情報を取得し、前記移動体側情報に含まれる前記位置の情報に従って、前記空間内の予め定めた移動範囲を移動している移動体を把握する移動体把握部(162)と、
前記移動範囲を移動している移動体の中から、少なくとも1台の移動体を代表移動体として特定し、前記特定された移動体に対して代表移動体としての設定を行なう特定部(161)と、
前記代表移動体から、前記プローブ情報を受け取り、前記プローブ情報を用いて、前記空間情報を整備する整備部(163)と
を備え、
前記情報処理装置の前記特定部は、前記移動範囲を移動している前記移動体のうち、前記代表移動体として設定する移動体の割合を、前記移動範囲に対応した前記空間情報の前記整備の度合いに応じて決定する、移動空間情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動空間情報処理システムであって、
前記特定部は、
前記移動範囲の前記空間情報の少なくと
も一部が存在しない場合には、前記移動範囲の前記移動体のうち、前記通信が可能な移動体を前記代表移動体として設定し、
前記移動範囲の前記空間情報の少なくとも一部の確度が予め定めた第1閾値未満の場合には、前記移動範囲の前記移動体のうち前記代表移動体として設定される移動体の割合が予め定めた割合となるように、前記代表移動体を設定し、
前記移動範囲の前記空間情報の確度が前記第1閾値より大きな第2閾値以上の場合には、前記移動範囲の前記移動体のうち前記代表移動体として設定される移動体の数を1とするように設定する
移動空間情報処理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移動空間情報処理システムであって、
前記情報処理装置の前記特定部は、前記移動範囲を移動している移動体のうち、
(条件1)前記移動体が前記取得した画像から前記プローブ情報を抽出する能力に相対的な差がある複数の移動体では、相対的に前記能力の高い移動体を、前記能力が低い移動体よりも、
(条件2)前記移動体が前記移動体側情報に含ませる前記移動体の位置の情報の精度に相対的な差がある複数の移動体では、相対的に前記精度の高い移動体を、前記精度が低い移動体よりも、
前記代表移動体として選択しやすくする、移動空間情報処理システム。
【請求項4】
前記特定部は、前記代表移動体の選択において、前記条件1と前記条件2のうち、前記条件1を優先する、請求項3に記載の移動空間情報処理システム。
【請求項5】
前記情報処理装置の前記特定部は、前記移動範囲を移動する複数の前記移動体に対する代表移動体の前記設定が行なわれたのち、前記移動範囲を移動する複数の前記移動体の構成が変動した場合には、前記代表移動体の前記設
定を再度行なう請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の移動空間情報処理システム。
【請求項6】
前記プローブ情報には、前記空間において固定的な情報である静止情報として、
(A)前記移動体が移動する前記空間に存在する地物の情報、
(B)前記移動体が移動する前記空間の移動範囲に係わる情報を示す移動範囲制限情報、
のうちの少なくとも一方を含み、更に、
(C)前記移動体の位置情報
を含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の移動空間情報処理システム。
【請求項7】
前記移動体は、路面を走行する車両であり、
前記プローブ情報に含まれる静止情報のうち、前記地物には、地上に存在する看板、信号機、標識、ポール、停止線、横断歩道のうち少なくとも1つが含まれ、
前記移動範囲制限情報には、地上に引かれた実線、破線、ボッツドッツ、道路縁のうち少なくとも1つが含まれる、請求項6に記載の移動空間情報処理システム。
【請求項8】
前記移動体は、空中に移動するドローンであり、
前記プローブ情報に含まれる静止情報のうち、前記地物には、地上から前記空中に突出する建物、鉄塔、電柱、電線、看板、標識のうち少なくとも1つが含まれ、
前記移動範囲制限情報には、少なくとも飛行経路を示す誘導灯が含まれる、請求項6に記載の移動空間情報処理システム。
【請求項9】
前記移動体は、水面を移動する船舶であり、
前記プローブ情報に含まれる静止情報のうち、前記地物には、看板、橋梁、灯台、標識、岩礁のうち少なくとも1つが含まれ、
前記移動範囲制限情報には、海岸線、護岸、桟橋のうち少なくとも1つが含まれる、請求項6に記載の移動空間情報処理システム。
【請求項10】
空間を移動する移動体との間で情報をやり取りして前記空間に関する情報である空間情報を整備する移動空間情報処理方法であって、
前記移動体は、少なくとも前記空間における当該移動体の位置の情報を含む移動体側情報を、通信により出力し、
予め記憶したプログラムをコンピュータが実行することで情報を処理する情報処理装置が、前記移動体から通信により前記移動体側情報を取得し、前記移動体側情報に含まれる前記位置の情報に従って、前記空間内の予め定めた移動範囲を移動している移動体の中から、少なくとも1台の移動体を代表移動体として特定し、前記特定された移動体に対して代表移動体としての設定を行ない、
前記情報処理装置が、前記移動範囲を移動している前記移動体のうち、前記代表移動体として設定する移動体の割合を、前記移動範囲に対応した前記空間情報の前記整備の度合いに応じて決定し、
前記代表移動体に設定された前記移動体は、当該移動体が移動している空間の画像を取得し、当該画像から前記空間に関するプローブ情報を抽出し、前記プローブ情報を含む前記移動体側情報を送信し、
前記情報処理装置は、前記代表移動体から受け取った前記プローブ情報を用いて、前記空間情報を整備する、
移動空間情報処理方法。
【請求項11】
移動体に搭載する通信装置(100)であって、
搭載された自己の移動体の目的地を含む自己情報を取得する自己情報取得部(11)と、
周辺に位置する他の移動体の目的地を含む他者情報を取得する他者情報取得部(12)と、
前記自己情報と前記他者情報とを用いて、前記自己の移動体の目的地と同じ方向の目的地である他の移動体と、前記自己の移動体が同じ移動体群となるように設定する移動体群設定部(14)と、
前記移動体群の中から代表の移動体を設定する代表設定部(16)と、
前記自己の移動体が前記代表の移動体に設定された場合に、前記移動体群を構成する移動体の情報を基地局へ送信する送信部(17)と、を備える、通信装置。
【請求項12】
請求項11に記載の通信装置であって、
前記代表設定部は、前記移動体群を構成する移動体の中で、前記自己情報と前記他者情報とを処理する能力の大小に従って前記代表の移動体を設定する、通信装置。
【請求項13】
請求項12に記載の通信装置であって、
前記代表設定部は、最も余剰処理能力が高い移動体を前記代表の移動体に設定する、通信装置。
【請求項14】
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の通信装置であって、
前記移動体群設定部は、前記自己情報と前記他者情報を用いて、予め定められた時間後に到達予定の地点が予め定められた範囲以内である場合に前記目的地が同じ方向であると判断する、通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動空間情報処理システム、移動空間情報処理方法および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渋滞情報等のプローブ情報を収集する複数の車両から、プローブ情報を情報センタに集約する際に、複数の車両の情報を1台の車両に集め、集めた情報をこの車両から情報センタに送信する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
そして、特許文献2には、情報収集の対象となる車両が頻繁に変わることによって、情報センタに送信するための処理負荷が大きくなることを抑制する技術が開示されている。具体的には、特許文献2では、自車両と進行方向が同じであって、走行速度が自車両と同等である車両を一つの車両群とした後、この車両群を構成する車両の情報を1台の車両に集め、集めた情報が情報センタに送信される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-182940号公報
【文献】特開2012-133726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした技術では、通信を一台の車両に限定するので、通信量の低減を図ることはできるものの、他の車両からも通信によって情報を得たいといった要請に柔軟に応えることができない。また、自車両と進行方向が同じであって、走行速度が自車両と同等である車両を一つの車両群とした場合、車両群への車両の出入りが頻繁に生じる場合があり、処理負荷を十分に抑制することができない場合も考えられた。これらの課題は、車両に限らず、他の移動体においても生じ得る課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様の移動空間情報処理システムを含む。第1の態様として、移動空間情報処理システムが提供される。この移動空間情報処理システムは、空間を移動する移動体と、前記移動体との間で情報をやり取りして前記空間に関する情報である空間情報を整備する情報処理装置と、を備える。ここで、前記移動体は、少なくとも前記空間における当該移動体の位置の情報を含む移動体側情報を、通信により、前記情報処理装置とやり取りする第1通信部と、当該移動体が移動している空間の画像を取得する画像取得部と、前記情報処理装置により代表移動体として指示された場合、前記取得した画像から前記空間に関するプローブ情報を抽出し、前記プローブ情報を含む前記移動体側情報を、前記情報処理装置に送信する制御部と、を備える。また、前記情報処理装置は、前記移動体と通信を行なう第2通信部と、前記通信を用いて、前記移動体側情報を取得し、前記移動体側情報に含まれる前記位置の情報に従って、前記空間内の予め定めた移動範囲を移動している移動体を把握する移動体把握部と、前記移動範囲を移動している移動体の中から、少なくとも1台の移動体を代表移動体として特定し、前記特定された移動体に対して代表移動体としての指示を行なう特定部と、前記代表移動体から、前記プローブ情報を受け取り、前記プローブ情報を用いて、前記空間情報を整備する整備部とを備える。
【0007】
この移動空間情報処理システムにおいて、空間情報とは、移動体が移動する空間に関する情報であり、移動体の移動を規制したり、移動のガイドとなったりする情報である。仮に移動体が、自動車二輪車などの車両であれば、車両が走行する路面状態を含む地図情報が相当する。また移動体がドローンなどの飛翔体であれば、3次元空間における移動体の移動を規制したりガイドしたりする情報である。更に、移動体としては、船舶なども想定することができる。移動体側情報とは、移動体が情報処理装置に送る情報の総称である。移動体側情報には、少なくとも空間における当該移動体の位置の情報を含み、代表移動体にあっては、プローブ情報を含む。プローブ情報は、画像から取得される情報であり、空間に関する情報である。移動体が車両であれば、道路の区画線や地物に関する静止情報を含む。また移動体が船舶なら、岩礁・水路端などの静止情報を含み、移動体がドローンなら鉄塔、電線、陸部の凹凸などの静止情報を含む。
【0008】
この移動空間情報処理システムは、空間内の予め定めた移動範囲を移動している移動体の中から、少なくとも一台の移動体を代表移動体して設定し、代表移動体から受け取ったプローブ情報を用いて、地図などの空間情報を整備する。代表移動体を設定することにより、情報処理装置と通信を行なう移動体からの通信量やプローブ情報を用いた空間情報の整備の進捗などを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】移動空間情報処理システムの概略構成図である。
【
図2】移動空間情報処理システムの基本的な動作を例示するフローチャートである。
【
図5】保存される車両情報の一例を示す説明図である。
【
図6】地図の整備の確度を区画線整備率と地物整備率として示す説明図である。
【
図7】車両側で実行される車両側情報送信処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】画像取得部が取得した画像の一例を示す説明図である。
【
図9】取得した画像から抽出されたプローブ情報の一例を示す説明図である。
【
図10】静的情報の一つである区画線の情報の一例を示す説明図である。
【
図11】同じく静的情報の一つである地物の情報の一例を示す説明図である。
【
図12】車両側情報を受け取るセンタ側の情報受信処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図14】離脱情報を受け取ったセンタ側の割込み処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】本実施形態の通信システムの構成を示す模式図である。
【
図16】通信装置が搭載された移動体の構成を示す模式図である。
【
図17】本実施形態における加入処理のフローチャートを示す図である。
【
図19】本実施形態における通信処理のフローチャートを示す図である。
【
図20】上述の実施形態とは異なる移動体群の設定方法を説明する図である。
【
図21】上述の実施形態とは異なる代表設定処理のフローチャートを示す図である。
【
図22】上述の実施形態とは異なる移動体を用いた例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
A-1.システム構成:
図1のシステム構成図に示すよう、第1実施形態の移動空間情報処理システム200は、移動体の一種である走行中の車両111,112,113等からのプローブ情報を得て、車両が走行する空間情報、ここでは道路の地図を整備するシステムである。この移動空間情報処理システム200は、各車両に搭載された移動体制御装置120と、各車両からの情報を受け取って地図を整備する情報処理装置150とを備える。
【0011】
各車両111,112,113等は、それぞれ移動体制御装置120を備える。以下の説明では、車両112に搭載された移動体制御装置120を例に挙げて説明する。この移動体制御装置120は、情報処理装置150とアンテナ124を介して通信する第1通信部121、複数の航法衛星からの信号を処理するGNSS処理部122、このGNSS処理部122からの信号を受けて自車位置を特定する自車位置特定部123、車両112の少なくとも前方SZを撮影するビデオカメラ等の画像取得部130、画像取得部130が取得した画像を解析して後述するプローブ情報を抽出する画像解析部132、移動体制御装置120の全体を統括する制御部140等を備える。各車両111,112,113等は、こうした移動体制御装置120を搭載しているが、その機能、例えば第1通信部121の通信機能やGNSS処理部122の位置特定精度、あるいは画像解析部132の解析能力等は必ずしも同一である必要はない。
【0012】
制御部140は、自車位置特定部123が特定した自車位置を所定のインターバルで取得し、これを第1通信部121を用いて、定期的に情報処理装置150に送信している。また、制御部140は、情報処理装置150から代表車両の指定を受けると、画像解析部132が車両112の前方SZの画像を解析して抽出したプローブ情報を、所定のインターバルで、情報処理装置150に送信する。プローブ情報を送信する場合にも、自車位置特定部123が特定した自車位置は共に送信され、また送信には自車位置だけの場合でもプローブ情報を含む場合でも、共に第1通信部121が用いられる。もとより、二つの通信に対して異なる通信部を用いるようにしてもよい。例えば、自車位置だけであれば、3Gや4Gの通信網を利用し、プローブ情報が含まれる場合は、5Gの通信網を使うといった使い分けをしてもよい。移動体である車両側の情報であって、第1通信部121を介して送信される情報が、移動体側情報に相当する。全ての車両111,112,113は、所定のインターバルで、常時、情報処理装置150に移動体側情報を送信しており、通常は自車位置の情報がこれに含まれ、特定の場合には、更に車両が走行している道路に関する情報であるプローブ情報が含まれる。プローブ情報については、後で詳述する。
【0013】
情報処理装置150は、多数の車両111,112,113等から所定のインターバルで移動体側情報に相当する車両側情報を受け取る。このため、以下の説明では、情報処理装置150を、車両との関係に関連して呼ぶ際には、移動空間情報処理システム200のセンタ150と略して呼ぶことがある。また、移動体空間情報処理システム200は、本実施形態では、多数の車両からのプローブ情報を利用して地図の整備を行なうことから、単に地図整備システム200と呼ぶことがある。
【0014】
情報処理装置150は、
図1に示したように、アンテナ154を介して各車両と通信を行なう第2通信部151、第2通信部151を介して車両を特定するなど種々の制御を行なうCPU160、CPU160が動作するためのデータやプログラムを記憶するメモリ170、情報のやり取りを行なう車両の情報を集約する車両データベース(以下、車両DBと記載する)を記憶する外部記憶装置171、同じく整備対象である地図データベース(地
図DB)を記憶する外部記憶装置172等を備える。メモり170は、一般に半導体メモリが用いられる。外部記憶装置171,172は、半導体メモリであっても良いし、ハードディスクなどの磁気記憶媒体や両者を組み合わせたフュージョンドライブなどであってもよい。更に、車両DBや地
図DBは、いわゆるクラウド側に保存されてもよい。また、これらのデータベースは、まとめて保存される必要はなく、容量や安全性などの観点から、必要に応じて分割して保存されてもよい。
【0015】
CPU160は、メモり170に記憶したプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。本実施形態のCPU160が実現する機能としては、第2通信部151を介して、各車両111,112,113等からの移動体側情報を集約することで走行している車両を把握し、これを車両DBに登録する移動体把握部162、車両DBに登録されている車両から、特定の条件を満たす車両を特定する特定部161、地
図DBに保存されている地図を整備する整備部163等がある。本実施形態では、道路を走行している車両が画像取得部130で撮像した画像を画像解析部132が解析し、これをプローブ情報として情報処理装置(センタ)150に送信することにより地図を整備する。つまりここでいう地図は、単に道路マップとしての地図ではなく、車線の位置や種類、あるいは信号や標識、といったランドマークの位置や種類、更にはその内容などの情報を含んだ地図である。即ち、こうした地図は、移動体が移動する空間に関する情報を集約した空間情報に相当する。
【0016】
A-2.地図整備システム200の動作:
図2は、地図整備システム200の動作を分かりやすく示すために、複数の処理ルーチンを一覧的に示す。
図2の左側には、移動体制御装置120が所定のインターバルで実行する第1通信処理ルーチンと、センタ150が実行する第2通信処理ルーチンとを、並列に記載した。第2通信処理ルーチンにより車両情報が書き込まれる車両DBを参照することを明確にするために、車両DBを挟んで右側に、センタ150が実行する代表車両特定処理ルーチンを示した。これらの処理ルーチンは、所定のインターバルで発生する割込信号を利用して、それぞれ独立のタイミングで繰り返し実行される。
【0017】
各車両111,112,113等の移動体制御装置120は、所定のインターバルで
図2に示した第1通信処理ルーチンを繰り返し実行する。この処理を開始すると、まず移動体制御装置120の制御部140は、自車位置特定部123から現在の自車位置に関する情報を取得し、自車位置を特定する(ステップT100)。続いて、制御部140は、自車情報を準備する(ステップT110)。自車情報とは、
図3に一例を示したように、自車を他の車両から区別する自車ID、車両が搭載している画像処理能力のランク、車両が搭載しているGNSS処理部122および自車位置特定部123が実現する総合的な位置精度、車両が現在走行している道路区間、などの情報である。この他、通信能力などの情報や、車両の状況(車速、操舵角、ヨーレート、走行距離等)を含んでもよい。
【0018】
車両IDは、車両を区別するために車両に付与されるユニークな符号である。各車両には、第1通信部121が備えられ、各通信機器には、ユニークなMACアドレス(Media Access Control address)が付与されているので、自車IDとして、このMACアドレスを用いてもよい。もとより、ナンバープレートと同様、公的機関等が発行する車両毎のユニークなIDを用いるものとしてもよい。
【0019】
画像処理能力は、
図3では、A:高い、B:普通、C:低い、の3段階で示した。処理能力は、1秒間に、何ピクセルや何ボクセルを処理できか、といった数値によりランク付けしてもよい。この場合、絶対的処理能力として示してもよいし、同じ車格の車両グループの中での相対的なランク付けであってもよい。GNSS能力は、
図3では、車両位置を特定する際の精度が、L1:10センチ、L2:50センチ、L3:1メートル、として例示した。画像処理能力同様、予め定めたA、B、Cなどのランク付けを用いてもよい。
【0020】
自車情報に含まれる現在の道路区間は、予め地図に用意された道路区間のいずれを、現在走行しているか、という情報である。車両が走行しうる道路は、予め所定の範囲毎に、道路区間を示すユニークな符号が付与されている。
図3では、これをR11として示している。道路区間の一例を
図4に示した。
図4では、3車線の道路が、道路区間1、2、3に分かれている様子を示す。道路区間は、交差点をノードとし、ノード間をリンクとするような道路探索用の地図におけるリンクを一つの道路区間としてもよいが、標識や看板などの情報も地図に含ませることからは、更に細かい範囲を分けて、それぞれを道路区間としてもよい。
図4に示した例では、一つの道路区間は、3車線(第1走行車線、第2走行車線、追越車線)を含み、更に中央分離帯と、その反対側の路肩を含む。各車線間は、破線のセンタラインによって区切られ、車線の中央分離帯側と路肩側とは、実線によって区切られている。
【0021】
本実施形態では、車両側とセンタ側とは、同じ地図を有し、現在の自車位置を各車両が自ら判断し、移動体側情報の一つとして、準備するものとした。多数の車両からの移動体側情報は所定インターバルで常時送られてくるので、これを扱うセンタ150側の負荷は小さくない。車両側で道路区間を特定すれば、センタ150の負荷を低減することができる。もとより、車両側は、GNSSによって特定した車両の絶対座標(緯度、経度、高度)をセンタ150に送り、センタ150側で、道路区間を特定するようにしてもよい。こうすれば、車両側の負荷を低減することができる。また、道路区間の構成をセンタ150側で自由に変更できる。従って、新しい道路が開通したり、道路が閉鎖されたり、といった道路構成の変更が生じた場合などの対応が容易である。
【0022】
以上
図3を例として説明した自車情報の準備(
図2、ステップT110)が整うと、車両112の移動体制御装置120の制御部140は、自車情報をセンタ150に向けて送信する(ステップT120)。以上の処理の後、NEXTに抜けて本ルーチンを一旦終了する。上記第1通信処理ルーチンは、各車両において、所定インターバルで繰り返し実行される。
【0023】
車両側の上記第1通信処理に合わせて、センタ150側では、第2通信処理ルーチンが実行される。第2通信処理ルーチンは、第2通信部151からの信号を割込み信号として利用し、各車両から自車情報が送られてくる度に起動される。第2通信処理ルーチンでは、CPU160は、車両からの自車情報を受信する処理を行ない(ステップT220)、受信した各車両の自車情報を外部記憶装置171内の車両DBに保存する(ステップT230)。以上の処理の後、CPU160は、NEXTに抜けて一旦処理をし終了するが、他の車両から自車情報が送信されてくれば、その都度、この第2通信処理を実行する。
【0024】
センタ150のCPU160が第2通信処理ルーチンを繰り返し実行することで、車両DBには、各車両の自車情報が蓄積される。この例を
図5に示した。
図5では、各車両から送られた自車情報は、時系列的に蓄積されているに過ぎないが、この場合には、車両IDや現在の道路区間等にはインデックスが付与されている。従って、車両IDで車両を検索したり、指定した道路区間に存在する車両を検索したりすることは容易である。もとより、車両DBを、最初から道路区間ごとに配列した形で蓄積するようにしてもよい。一つの車両IDの情報が受信された際には、その車両IDが、車両DBに既に存在するかをチェックし、なければ新たな登録すると共に、インデックスを作成する。他方、その車両IDが、既に車両DBに存在すれば、その車両の現在の道路区間を更新する。画像処理能力やGNSS精度は、通常は車両毎に定まっているので、一旦登録すれば、再度自車情報を受け取っても更新しなくてもよい。もとよりGNSS精度などが、通信衛星からの電波の受信状態などによっても変化することがあれば、毎回更新するものとしてもよい。こうした道路区間などの更新がなされた場合には、更新の時間を車両DBに記録しておき、一定時間以上更新されていない場合には、車両は走行を停止した(イグニッションスイッチがオフにされた)と判断し、車両DBから削除してもよい。
【0025】
上述した車両側で実行される第1通信処理ルーチンおよびセンタ側で実行される第2通信処理ルーチンが繰り返し行なわれることで、現在、各道路区間を走行している全ての車両のデータがセンタ150に集められ、外部記憶装置171に車両DBとして記憶される。この状態で、センタ150は、
図2の右端に示した代表車両特定処理ルーチンを実行する。この処理は、センタ150に電源が投入されている間、図示するように、全ての道路区間について、所定のインターバルで繰り返される(ステップT300sからT300e)。
【0026】
図2に示した代表車両特定処理ルーチンが開始されると、CPU160は、まず道路区間を選択する(ステップT310)。道路区間の選択は、予め登録した順序でもよいし、ランダムな順序、あるいは地図整備の割合が低い道路から順次選択するようにしてもよい。道路区間が選択されると、その道路区間を走行中の車両を検索する(ステップT320)。車両の検索は、既述した車両DB(
図5参照)を道路区間をインデックスとして扱うことにより、短時間のうちに完了する。車両の検索が完了したら、見つかった車両の配列を作成する(ステップT330)。検索した道路区間を走行中の車両の配列を作成した上で、次に代表車両設定処理を行なう(ステップT340)。この処理が完了すると、代表車両として設定された車両には、代表車両であることを示すフラグFpが送信される。フラグFpは、代表車両であることを示す値1にセットされた上で、送信される。
【0027】
この処理について詳しく説明する。代表車両設定処理では、まずその道路区間の地図の整備状況について確認する。整備状況とは、空間情報の確度、つまり空間情報の確からしさを示す指標である。本実施形態ではこれを整備状況と呼び、地図に必要とされている情報が全て揃った状態を100%、全く揃っていない状態を0%としている。
図6にその一例を示した。この例では、区画線整備率と地物整備率の二つにより、道路区間毎の地図整備率(確度)を表わすものとしている。
図6では、各整備率は、25%刻みで示したが、もっと細かく設定してもよい。
【0028】
区画線整備率とは、各道路区間に存在する区画線の情報がどの程度調えられたかを示す。区画線とは、
図4に例示した道路区間であれば、車線を区切る破線、車線の中央分離帯や路肩との区切りを示す実線、路肩や中央分離帯のように道路縁などの線データである。これらの区画線のデータは、自動運転などに利用し得るデータである。他方、地物とは、地上に存在するものであり、特にその中から地図に掲載するとして予め登録したものを意味する。ランドマークと呼ぶことがある。この実施形態では、信号や標識、看板、停止線、などが地物として登録されている。これらの地物に関するデータも自動運転などで利用することができる。
【0029】
そこで、代表車両設定処理を行なう道路区間に関して、これらの区画線整備率および地物整備率を参照し、本実施形態では、次のように代表車両の数を決定する。
区間整備率および地物整備率が、
(a)共に100%の場合、代表車両は走行車両のうちの1台とする;
(b)共に25%以下の場合、代表車両は走行車両の全台とする;
区間整備率および地物整備率の少なくとも一つが、
(c)50%以上100%未満の場合、代表車両は走行台数の1/4台または3台のいずれか多い台数とする;
(d)25%以上50%未満の場合、代表車両は走行台数の1/2台または6台のいずれか多い台数する;
従って、例えばある道路区間を走行している車両が10台であれば、
(a)の条件では、1台
(c)の条件では、3台(2,5<3)
(d)の条件では、6台(5<6)
(b)の条件では、10台(全車両)
となる。
【0030】
もとより、整備率が低くなるほど、代表車両として設定される車両の台数が漸増するように設定されていれば、どのように設定しても差し支えない。また、その道路区間を走行している複数の車両の中から、代表車両を設定する場合には、画像処理能力が高いものから選び、画像処理能力に差違がない場合には、GNSS精度の高いものから順に設定する。
図5に示した車両DBから道路区間R11を走行している車両から代表車両を1台設定する場合には、車両IDが「C1」と「C3」の車両が道路区間R11を走行中であり、画像処理能力は共に「A」であることから、GNSS精度に基づいて、車両IDが「C1」の車両を代表車両として設定する。具体的には、設定された車両に、値1に設定されたフラグFpを送信する。なお、優先順位は、GNSS精度を優先するものとしてもよい。あるいは他の能力、例えば通信能力などにより優先順位を付けて設定するものとしてもよい。
【0031】
以上の処理を、全ての道路区間について繰り返す。全ての道路区間について繰り返された場合には、再度、最初の道路区間から処理を繰り返せばよい。
【0032】
A-3.車両側情報送信処理:
以上説明した処理を、移動体制御装置120およぴセンタ150が実行することで、各道路区間を走行している車両に対して、少なくともそのうちの一台に対して、代表車両の設定(Fp=1)がなされる。このとき、代表車両の設定(Fp=1)と共に、その車両が代表車両に設定された道路区間も一緒に車両に通知される。以下、こうした設定を受ける車両側の制御について、
図7のフローチャートに基づいて説明する。
図7に示した車両側情報送信処理ルーチンは、各車両111,112,113等において、所定のインターバルで繰り返し実行される。
【0033】
この処理が開始されると、まず車両側の移動体制御装置120の制御部140は、自らに記憶されたフラグFpが値1であるか否かの判断を行なう(ステップT400)。フラグFpは、デフォルトでは、値0であり、センタ150から代表車両に設定された場合に、センタ150から送信されるデータにより、車両側のフラグFpは値1に設定される。フラグFpが値1でなければ、自車両は代表車両ではないとして、何も行なわずに、処理を終了する。なお、この場合でも、
図2に示したように、車両側は、所定のインターバルで、自車位置と自車情報をセンタ150に送信している。従って、走行している道路区間の変更や、走行している他の車両の状況などにより、代表車両に設定されていなかった車両が、走行をしていると、所与のタイミングで、代表車両に設定されるといった事態は生じ得る。
【0034】
そこで、いずれかのタイミングで、自車両のフラグFpが値1であると判断されると(ステップT400:「YES」)、車両の制御部140は、自車位置を自車位置特定部123から取得する(ステップT410)。取得した自車位置が、センタ150から指定された道路区間内であるか否かを判断し(ステップT420)、指定された道路区間内であれば、画像取得部130を用いて、画像を撮像可能であるか否かの判断を行なう(ステップT430)。通常、代表車両は、画像取得部130を用いて撮像した画像を解析し、解析した情報をプローブ情報としてセンタ150に送信するが、例えば大雨降雨時、降雪時、霧・ガスが立ち込めているとき、画像取得部130が故障している時などは、各車両111,112,113等が撮像しても、有意のデータを画像から得られない可能性が高い。そこで、こうした状況でないかを判断するのである。なお、降雨・降雪、霧・ガスなどの気象条件は、センタ150を介して車両は取得することができる。また画像取得部130の故障などは、直接画像取得部130から取得してもよいし、図示しないダイアグ用ECUなどから取得するようにしてもよい。
【0035】
画像取得部130を用いた撮像ができないと判断した場合には、何も行なわず、「NEXT」に抜けて本処理ルーチンを一旦終了する。他方、撮像が可能と判断した場合には、次に、画像取得部130を用いて外部SZを撮像する処理を行なう(ステップT440)。撮像は、画像取得部130を駆動して、1枚の静止画像を取得するようにしてもよいし、複数枚の静止画像を取得するようにしてもよい。あるいは数秒間の動画を取得するようにしてもよい。
【0036】
こうして得られた画像を画像解析部132により解析し、プローブ情報を取得する処理を行なう(ステップT450)。この処理は、得られた画像から、区画線や地物の情報を抽出する処理である。本実施形態では、プローブ情報には、後述する静的情報が含まれる。静的情報に加えて、渋滞情報などの動的情報を含ませてもよい。ここで言う「静的情報」とは、路面や道路周りの地物など、時刻や季節などによって変動しない静的な情報を意味する。動的情報とは、渋滞情報や日照、降雨量・降雪量など、時刻や季節などによって動的に変化する情報を言う。本実施形態では、プローブ情報として静的情報のみを扱うが、その処理の詳細は、後述する。画像を解析することにより、静的情報を取得すると、続いてこの静的情報を自車位置と共に、センタ150に送信する処理を行なう(ステップT460)。自車位置と静的情報は、移動体側情報(ここでは車両側情報)に相当する。その後、「NEXT」に抜けて、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0037】
静的情報を含むプローブ情報を取得するための画像解析処理について、例を挙げて説明する。
図8は。画像取得部130を用いて車両が撮像した画像GP1を例示する説明図である。この画像GP1は、走行中の車両から撮像したもので、先行する2台の車両以外に、路面に引かれた区画線や標識などが写っている。画像解析部132はこの画像を解析する。解析に先立って、画像の2値化やダイナミックパターンマッチングなどを用いて、画像から様々な情報が取り出される。本実施形態では、以下に説明するように、静的情報として、区画線と地物との情報を扱う。ここで区画線は、車両が移動する路面の移動範囲に係わる情報を示す移動範囲制限情報に相当する。区画線のうち、路肩などの道路縁を示す線などは、それ以上の車両の移動ができないことを示すが、車線間の実線や破線は、走行規則として車線変更の可否を示す。
【0038】
画像GP1には、路肩を示す画像D1、路肩よりも内側に引かれた道路縁を示す実線の画像D2、走行車線間に引かれた破線の画像D3、中央分離帯側の道路縁を示す実線の画像D4、路肩付近に設けられた標識の画像D5、信号の画像D6、更には、看板の画像D7等が存在する。画像解析部132はこれらの画像を解析し、
図9に示すような、データを抽出する。理解の便を図って、
図8と
図9では、同じ符号D1~D7を用いるが、
図8に示した画像は、カメラなどの画像取得部130が撮像したアナログデータ(但し2値化済みデータ)であるのに対して、
図9に示した画像は解析され、抽出されたデジタルデータである。
【0039】
路面に存在する区画線については、これを点列に変換している。点列は、画像を解析することで、奥行き方向の距離を演算し、自車位置特定部123により特定された自車位置の情報と合わせて、3次元のデータ(x,y,z)の集合として、デジタルデータとされている。奥行き方向の情報は、画像取得部130の地上高さや俯角などが既知であれば、路面を平面とみなすことで容易に演算することができる。もとより、地図が元々持っている勾配のデータを利用して、路面を3次元的に表わし、画像から線分を構成する各点の3次元データを求めるようにしてもよい。
【0040】
画像解析部132は同時に線分が実線か破線かを解析する。このデータの一例を
図10に示した。
図9に示した4本の線分D1からD4を、データ1からデータ4として示した。各線分は、DLi(a,x,y,z)1-m として表わされる。ここで、iは、データの番号に対応し、aは線分の種類に対応している。線分の種類は、本実施形態では、
図10の下段に示したように、
実線 :a=1
破線 :a=2
ボッツドッツ :a=3
道路縁(路肩等):a=4
ゼブラゾーン :a=5
の5種類である。なお、ボッツドッツは、米国などで用いれることのある道路に間隔を置いて埋め込まれた小さな円盤をいう。線分の種類は、更に多数種類であってもよいし、上記の一部であってもよい。
【0041】
データの添え字1-m は、線分を構成する各点が、1からmまで、m個存在することを示す。従って、例えば路肩を示すデータ1は、DL1(4,x,y,z)1-m として表わされる。この例では、データは固定長とし、データがなくなれば、NULLを入れるものとしたが、各データは、可変長のデータとして構成してもよい。あるいは、線分は、ドットの集合ではなく、開始点と終点とを結ぶベクトルデータとして定義してもよい。その場合には、実線であれば複数の折れ線の集合として、破線であれば複数の短い直線の集合として、それぞれ表わされる。従って、ベクトルデータであっても、線分をある程度正確に表現しようとすれば、複数のデータの集合として扱うことになるが、線分を少ない数(最小一本)の直線として近似してもよい。破線の場合は何らかのタグを付けて実線と区別するようにしてもよい。また、ベジュエ曲線やスプライン曲線などの曲線を用いて近似してもよい。
【0042】
画像取得部130が撮像した画像には、地物も含まれる。画像解析部132は、画像から、予め登録した対象物を解析して抽出する。実施形態で抽出する地物としては、
図11に示したように、看板、信号、標識、ポール、停止線、横断歩道などがある。もとより、更に多数の地物を登録して抽出してもよいし、少なくてもよい。
図11に示した例では、車両の通行に関与する、あるいは通行路に近接して設けられた地物をあげたが、橋梁やトンネル、料金所、サービスエリアなどの構造物や、湖沼、河川、丘陵、大木など、地表の形状や特徴物などを含んでよい。
【0043】
図9に示した3つの地物(標識、信号、看板)D5、D6、D7を、
図11に、データ5、6、7として示した。各地物は、DCj(p,x,y,z)1-n として表わされる。ここで、jは、データの番号に対応し、bは地物の種類に対応している。地物の種類は、本実施形態では、
図11の下段に示したように、
看板 b=1
信号 b=2
標識 b=3
ポール b=4
停止線 b=5
横断歩道 b=6
の6種類である。
【0044】
データの添え字1-n は、地物を表わす複数のデータが、1からnまで、n個存在することを示す。例えば標識を示すデータ5は、DCJ(3,x,y,z)1-n として表わされる。線分と異なり、本実施形態では、地物のデータ形式は、地物の種類毎に予め定めている。例えば標識であれば、中心点の絶対座標、中心からの半径、などである。また、信号であれば、外径を表現する多角形の各点の絶対座標、信号の数と矢印の向きなどである。なお、データには、テキストデータを付加してもよい。テキストデータとしては、標識に数字や文字が表示されている場合には、これを文字認識したもの、看板であれば、看板の記載文字を文字認識したものなどが、含まれる。なお、画像データを直接含ませてもよい。その場合には、JPEGなどの圧縮技術を利用して、画像データを圧縮しておくことが、データ転送の負担を減らす上では望ましい。
【0045】
上述した
図7のステップT460では、
図10,
図11に示したデータ1から7を含む静的情報をプローブ情報として、自車位置の情報と共に、センタ150に送信する。車両からの自車位置と静的情報とを含む車両側情報の送信を受けるセンタ150の処理を
図12に示した。
【0046】
センタ150は、代表車両として設定した車両から、自車位置と静的情報とを含む車両側情報の送信を受けると、これを第2通信部151を介して受信する(ステップT500)。続いて、代表車両の自車位置から代表車両が走行している道路区間を特定する(ステップT510)。道路区間が特定できれば、その区間の地図を整備する処理を行なう(ステップT520)。地図の整備は、外部記憶装置172に保存された地
図DBの対応する道路区間に、不足していたデータを補うことにより行なわれる。こうした地図の整備は、代表車両から車両側情報を受け取る度にリアルタイムで行なってもよいし、バッチ処理により、あとで、例えば車両の走行量が減って通信の負荷が少なくなる夜間などにまとめて行なうものとしてもよい。もとより、代表車両との通信や車両側情報の蓄積と、地
図DBの整備を行なう装置とを分離し、地図の整備を別の装置で行なうものとしてもよい。地図の整備が行なわれると、
図6に示したように、地図を構成する各道路区間について計算された区画線整備率と地物整備率とは、更新される。
【0047】
代表車両は、以上説明した車両前方SZの画像の取得と解析、解析によって得られた静的情報を含むプローブ情報と自車位置とを含む車両側情報の送信を行ない、センタ150は、車両側情報を受信して、地図整備処理を行なう。こうした情報の収集と通信を繰り返しているうちに、代表車両が、指定された道路区間から離脱する場合がある。この場合の処理を、
図7のステップT420以下に示した。車両は自車位置を自車位置特定部123から取得し、走行している道路区間が、指定された道路区間内でないと判断すると(ステップT420:「NO」)、センタ150に対して、車両が指定された道路区間から離脱したことを送信する(ステップT480)。送信する離脱情報の一例を、
図13に示した。離脱情報には、指定された道路区間から離脱した車両を示す車両IDと、値1に設定された離脱フラグFrが含まれる。その上で、車両内に保存されているフラグFpを値0にリセットし(ステップT490)、「NEXT」に抜けて、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0048】
代表車両からの離脱の送信を受けるセンタ150側は、割込処理として、
図14に示した離脱割込処理ルーチンを実行する。この処理で、センタ150のCPU160は、まず離脱情報を受信し(ステップT600)、離脱情報に含まれていた車両IDから、離脱した車両を特定し、その車両が含まれていた道路区間を走行している1台以上の車両に関して、代表車両を更新する処理を行なう(ステップT610)。代表車両の更新は、
図5に示した車両の配列から、離脱した車両(この例では車両IDがC1の車両)を除く車両の中から、新たな代表車両を設定することにより行なう。既に説明した様に、全ての車両は所定のインターバルで、自車位置をセンタ150に送信しており(
図2:ステップT100からT120)、センタ150はこの情報を車両DBに保存し(
図2:ステップT230)、道路区間毎に該当車両の配列を作成している(
図2:ステップT330)から、この配列を参照することで、離脱した車両以外の車両を、新たな代表車両として設定することは容易である。
【0049】
センタ150は、更新した代表車両に値1に設定したフラグFpを送信する(ステップT620)。こうすることで、代表車両が指定された道路区間から離脱すると、新たな代表車両が設定され、上述した車両側情報の送信(
図7)と地図整備(
図12)とが継続されることになる。この場合でも、
図2のステップT340同様、代表車両は、その道路区間を走行している車両の中から、画像処理能力が高い車両、GNSS精度が高い車両の順に選択される。なお、代表車両は、1つの道路区間毎に離脱と更新とを繰り返すようにしてもよいが、走行が想定される連続する道路区間について、予め代表車両を設定しておき、この連続する道路区間から逸脱した場合にのみ、代表車両だった車両から「離脱」を送信するようにしてもよい。前者の場合は、道路区間毎に代表車両の台数を細かく設定して、地図整備を効率よく進めることができる。後者の場合には、代表車両の更新処理を頻繁に行なう必要がない。連続した道路区間について代表車両を設定する場合には、センタ150は車両から走行の際の目的地や目的地までの経路を予め取得し、それらの情報に基づいて、複数の道路区間に亘って代表車両となるように、設定すればよい。こうした目的地などに基づく代表車両の設定は、第2実施形態で詳しく説明する。車両にカーナビゲーションシステムが搭載されている場合や、自動運転が設定されている場合には、車両の目的地や目的地までの走行経路をやり取りすることは容易である。
【0050】
以上、代表車両が離脱した場合の処理について説明したが、こうした代表車両の更新は、代表車両の離脱時のみならず、ある道路区間を走行している車両の構成に変動が生じた場合にも行なう。例えば、ある道路区間に新たな車両が進入した場合にも、代表車両の更新を行なってもよい。特に新たに加わった車両の画像処理能力やGNSS精度が高い場合などに、代表車両の更新を行なうことは有効である。もとより、各道路区間における車両の構成が変更されても、一定の期間は代表車両の設定を変更しないようにしてもよい。
【0051】
以上説明した第1実施形態の移動空間情報処理システム(地図整備システム)200は、道路を走行している車両の少なくとも1つを代表車両として設定し、車両から得られた区画線や地物のデータを含む静的情報をプローブ情報として利用し、地
図DBを整備することができる。しかも、その場合に、地図における道路区間毎の地図整備の状況に基づいて、代表車両としてプローブ情報を送信する車両の数を設定し、区画線整備率や地物整備率の低い道路区間では多数の、最大全ての走行車両を代表車両に設定して、迅速に静的情報を収集して地図を整備できる。他方、地図の整備が進んでいる道路区間では、代表車両の台数を減らし、最小1台を代表車両に設定し、車両とセンタ150との通信量や、センタ150での処理量を低減できる。このため、通信量の肥大化を招くことなく、地図整備を短期間のうちに進めることができる。なお、整備率が100%の道路区間でも少なくとも1台の代表車両を設定して静的情報の送信を受けるのは、整備された道路の確認のためである。地図が一旦整備された道路区間でも、工事や災害などで、道路の状況が変化する場合があり、こうした状況の変化があれば、整備率を下げて、代表車両の数を増やし、地図の再整備を行なえばよい。なお、整備率以外に、道路利用者からの通報やドローンなどを用いた道路監視の技術などを利用して、道路の状況に変動や異常がある可能性が所定の閾値より高いと判断した場合には、代表車両の数を増やして、地図の再整備を行なうようにしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、代表車両以外の車両も、常に自車の位置と自車の能力を含む自車情報をセンタ150に送信しているので、代表車両の設定および更新を容易に行なうことができる。また、各車両111,112,113等は、センタ150以外とは通信しないので、通信量が増大せず、各車の行き先などを他車に知らせることがない。
【0053】
上記実施形態では、代表移動体である代表車両は、指定された道路区間を走行している時に、リアルタイムでプローブ情報をセンタ150に送信したが、車両側にハードディスクなどの外部記憶装置を設け、プローブ情報を道路区間と対応付けて記憶しておき、車両が無線LAN環境など、高速通信が可能な場所に来たときに、プローブ情報をまとめて送信するようにしてもよい。
【0054】
この他、プローブ情報には、動的情報を加えることも差し支えない。また、上記の移動空間情報処理システム200は、船舶やドローンを移動体として扱うものとしてもよい。船舶では路面上の区間線は存在しないが、水路の縁や、その他の地物は存在する。運河などでは、信号も存在するため、上記の移動空間情報処理システム200と同様のシステムを利用することができる。この場合、プローブ情報に含まれる静止情報のうち、地物としては、看板、橋梁、灯台、標識、岩礁のうち少なくとも1つが含まれる。また、移動範囲制限情報には、海岸線、護岸、桟橋のうち少なくとも1つが含まれる。同様に、ドローンや小型飛行機などにも適用することができる。この場合には、プローブ情報に含まれる静止情報のうち、地物としては、地上から空中に突出する建物、鉄塔、電柱、電線、看板、標識のうち少なくとも1つが含まれる。また、移動範囲制限情報には、少なくとも飛行経路を示す誘導灯が含まれる。
【0055】
B.第2実施形態:
図15に示すように、第2実施形態の通信システム500は、通信装置100と、基地局BSと、を備える。通信装置100は、移動体MCに搭載されている。本実施形態では、移動体MCとして車両を用いるが、これに限られず、通信装置100は、例えば、船舶やドローンなどの車両以外の移動体に搭載されていてもよい。
【0056】
基地局BSは、通信装置100と通信可能な無線局である。基地局BSは、サーバ135を備え、サーバ135は、通信装置100と通信した情報を収集するとともに、管理する。サーバ135により管理された情報は、車両向けテレマティクスサービスや路車協調サービスや車車協調サービスに用いられる。
【0057】
図16に示すように、移動体MCは、通信装置100のほか、移動体制御部110と、ナビゲーション装置22と、GNSSセンサ24と、を備える。移動体制御部110は、移動体MCの制御を行う機能部であり、CPUと、ROMやRAMなどのメモリと、を備える周知のコンピュータとして構成されている。移動体制御部110には、ナビゲーション装置22、GNSSセンサ24が電気的に接続されているため、これらの装置による出力結果が通知される。
【0058】
GNSSセンサ24は、ナビゲーション装置22の現在位置を取得する。具体的には、GNSSセンサ24は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する人工衛星から受信した航法信号に基づいて、移動体MCの現在位置(経度・緯度)を測位する。
【0059】
ナビゲーション装置22は、経路探索および経路案内を行うカーナビゲーション装置である。本実施形態のナビゲーション装置22は、移動体MCの利用者から入力を受ける図示しないインターフェースを備える。ナビゲーション装置22は、このインターフェースから目的地についての入力をされた後、ナビゲーション装置22に内蔵された地図を用いて目的地までの経路を決定した後、経路案内を行う。ナビゲーション装置22は、GNSSセンサ24と接続されており、経路案内に際してGNSSセンサ24から得られた現在位置の情報を用いる。
【0060】
本実施形態の通信装置100は、移動体MCの移動体制御部110と電気的に接続されているため、通信装置100は、移動体制御部110から移動体MCの各種情報の受信が可能である。なお、通信装置100と移動体MCとの接続はこれに限られず、例えば、無線通信による接続を用いてもよい。また、通信装置100と移動体MCとは接続されておらず、通信装置100が、ナビゲーション装置22やGNSSセンサ24を別途備えてもよい。
【0061】
通信装置100は、基地局BSや他の通信装置と通信可能な機器である。また、通信装置100は、機能部として、自己情報取得部11と、他者情報取得部12と、判定部13と、移動体群設定部14と、代表設定部16と、送信部17を備える。通信装置100は、CPUと、ROMやRAMなどのメモリと、を備える周知のコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されている所定のプログラムを実行することにより各部の機能を実現する。
【0062】
以下、本実施形態における通信装置100の通信処理について説明する。通信装置100は、まず、通信装置100を搭載する移動体MCが移動体群に加入する加入処理を行う。加入処理は、通信装置100を搭載する移動体MCが移動体群に加入していない場合に定期的(例えば、5分間隔)に行われる。
【0063】
図17に示すように、加入処理として、まず、通信装置100は、搭載された自己の移動体の目的地の情報を含む自己情報を取得する(工程S110)。工程S110における通信装置100の機能部は、自己情報取得部11である。本実施形態では、通信装置100は、目的地の情報と、移動体MCの固有情報とを取得する。ここで、目的地の情報は、移動体制御部110を介してナビゲーション装置22から取得される。移動体MCの固有情報は、予め移動体制御部110に記憶されており、移動体制御部110から取得される。
【0064】
次に、通信装置100は、周辺(例えば、100m以内)に位置する他の移動体の目的地を含む他者情報を取得する(工程S120)。工程S120における通信装置100の機能部は、他者情報取得部12である。本実施形態では、通信装置100は、通信装置100に内蔵された通信機能を用いて、他者情報として、他の移動体の目的地の情報と、他の移動体の固有情報とを取得する。具体的には、通信装置100が周辺に位置する他の通信装置に対して他者情報の送信要求を行ない、この要求に対して、周辺に位置する他の通信装置が通信装置100に対して他者情報を送信することにより、通信装置100は他者情報を取得する。ここで、目的地の情報は、自己情報の場合と同様に、他者の移動体制御部を介してナビゲーション装置から取得される。他者の移動体の固有情報についても、自己情報の場合と同様に、予め他者の移動体制御部に記憶されており、他者の移動体制御部から取得される。
【0065】
次に、通信装置100は、自己情報と他者情報とを用いて、自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地である他の移動体が存在するかどうかを判定する(工程S130)。工程S130における通信装置100の機能部は、判定部13である。本実施形態では、「自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地」とは、自己の移動体MCの目的地が含まれる都道府県と同じ都道府県に含まれる目的地をいう。
【0066】
図18は、工程S130を説明するための図であり、
図18には、複数の移動体と移動体ごとの目的地が記載されている。そして、
図18において、紙面において最も下側の移動体が自己の移動体MCとし、自己の移動体以外の他の移動体を、紙面において下から順に移動体MC1からMC6とする。この場合、通信装置100は、自己の移動体MCの目的地が含まれる都道府県は○○県である。そして、周囲に位置する他の移動体の中で、目的地が含まれる都道府県が○○県である移動体は、移動体MC1~MC3、MC5~MC6である。一方、移動体MC4は、目的地が含まれる都道府県は△△県である。
【0067】
自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地である他の移動体が存在すると判定した場合(工程S130:YES)、通信装置100は、自己の移動体MCと同じ目的地と同じ方向の目的地である他の移動体と、自己の移動体が同じ移動体群に属することとなるように設定し(工程S140)、フローを終了する。工程S140における通信装置100の機能部は、移動体群設定部14である。
図18では、予め、自己の移動体MCと同じ目的地と同じ方向の目的地である他の複数の移動体MC1~MC3、MC5~MC6は、移動体群Hを形成している。このため、
図18の紙面右側に示すように、自己の移動体MCは、移動体群Hに属することとなるように設定する。本実施形態では、移動体群に含まれる移動体は、移動体群への加入の際に、予め、移動体群に含まれる移動体の固有情報を共有しているとし、自己の移動体MCは、移動体群Hを構成する他の移動体群に自己の固有情報を報知することにより、移動体群Hに属することとなる。なお、自己の移動体MCと同じ目的地と同じ方向の目的地である他の移動体は、予め移動体群を形成していなくてもよい。つまり、移動体MCの周囲に移動体群が存在しない場合であっても、移動体MCの周囲において、自己の移動体MCと同じ目的地と同じ方向の目的地である他の移動体が存在する場合は、その移動体と自己の移動体MCとが移動体群を形成する。
【0068】
一方、自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地である他の移動体が存在しないと判定した場合(工程S130:YES)、通信装置100は、移動体群への加入は行わず、フローを終了する。この加入処理は、自己の移動体が特定の移動体群へ加入するまで所定の間隔(例えば、1分)をおいて繰り返し行われる。
【0069】
通信装置100は、自己の移動体MCが加入処理を行った後、移動体群の中から代表の移動体を設定する代表設定処理を行う。代表設定処理における通信装置100の機能部は、代表設定部16である。通信装置100は、通信装置100が搭載されている移動体MCが含まれる移動体群の中から、移動体群を代表する代表移動体を設定する。
【0070】
本実施形態では、代表の設定は、新たに移動体群に加入した通信装置100が行う。しかし、これに限られず、代表の設定は、通信装置100が搭載された移動体MCが移動体群に加入するときに代表移動体に設定された移動体により行なわれてもよい。なお、自己の移動体MCと他の移動体とが新たに移動体群を形成する場合、両方の移動体に搭載された通信装置100が並行して代表の設定を行う。
【0071】
本実施形態では、通信装置100は、自己情報と他者情報とを処理する能力の大小に従って代表の移動体を設定する。具体的には、通信装置100は、移動体群を構成する移動体の中で、最も余剰処理能力が高い移動体を代表に設定する。本実施形態において、余剰処理能力が高い移動体とは、移動体の移動体制御部110を構成するCPUの処理性能が最も高いものであって、移動体制御部110を構成するメモリの空き容量が最も多いものをいう。ここで、CPUの処理性能とは、動作周波数とIPC(Instructions Per Clock cycle)との積とする。しかし、これに限られず、例えば、通信装置100は、移動体群を構成する移動体のうち、現在位置から目的地までの距離が最も遠い移動体を代表に設定してもよい。また、通信装置100は、移動体群を構成する移動体のうち、最後に移動体群に加入した移動体を代表移動体に設定してもよい。このようにすることにより、代表移動体の設定方法を簡略化することができる。最後に移動体群に加入した移動体を代表移動体に設定する場合であって、自己の移動体MCと他の移動体とが新たに移動体群を形成する場合、現在位置から目的地までの距離が最も遠い移動体を代表に設定してもよい。
【0072】
代表の設定後、通信装置100は、移動体群を構成する他の移動体へ代表となった移動体の固有情報を送信し、代表設定処理は終了する。
【0073】
代表が設定された後、通信装置100は、通信処理を行う。通信処理における通信装置100の機能部は、送信部17である。具体的には、
図19に示すように、まず、通信装置100は、自己の移動体MCが代表かどうかを判定する(工程S200)。自己の移動体MCが代表と判定した場合(工程S200:YES)、通信装置100は、自己の移動体MCが所属する移動体群を構成する他の移動体から基地局に送信するための移動体情報を収集した後(工程S210)、基地局へ収集した情報を送信し(工程S220)、フローは終了する。本実施形態では、移動体情報としては、移動体群を構成する移動体ごとの固有情報と目的地の情報が含まれる。
【0074】
一方、自己の移動体MCが代表に設定されていない場合(工程S200:NO)、通信装置100は、自己情報を代表に設定された移動体に送信した後(工程S230)、フローは終了する。
【0075】
本実施形態では、通信処理は、所定間隔(例えば、10秒間)を置いて繰り返し行われる。本実施形態では、通信処理において基地局BSに送信された情報は、車両向けテレマティクスサービスや路車協調サービスや車車協調サービスに用いられる。
【0076】
本実施形態の通信装置100によれば、自己情報と他者情報とを用いて、目的地が同じ方向の目的地である他の移動体と自己の移動体MCとを同じ移動体群Hとすることができる。この結果として、移動体群Hを構成する移動体の目的地が互いに近いほど、移動体群Hから抜ける移動体を低減できることによって、移動体群を編成する際の処理を低減する結果、基地局BSに情報を送信するための処理負荷を低減できる。
【0077】
また、本実施形態では、通信装置100の代表設定部16は、移動体群を構成する移動体の中で、最も余剰処理能力が高い移動体を代表の移動体に設定する。このようにすることにより、最も余剰処理能力が高い移動体が基地局への情報送信を行うため、基地局への情報送信を円滑に行うことができる。
【0078】
C.他の実施形態
C1.他の実施形態1
上述の実施形態では、「自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地」は、自己の移動体MCの目的地が含まれる都道府県と同じ都道府県に含まれる目的地をいう。しかし、これに限られない。例えば、「自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地」は、予め定められた時間(例えば、10分後)後に到達予定の地点が予め定められた範囲(例えば、半径1キロメートル)以内であることとしてもよい。つまり、移動体群設定部14は、自己情報と他者情報を用いて、予め定められた時間後に到達予定の地点が予め定められた範囲以内である場合に、目的地が同じ方向であると判断してもよい。このようにすることにより、予め定められた時間後まで移動体群から抜ける移動体を低減できる。
【0079】
また、「自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地」は、自己の移動体MCの目的地に通過すべき経路と同じ経路としてもよい。
図20に示すように、移動体群を、国道○号を目指す移動体で構成された移動体群H1と、県道△号を目指す移動体で構成された移動体群H2とに設定してもよい。
【0080】
また、「自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地」は、例えば、現在地から他の移動体の目的地までの方向が、現在地から自己の移動体MCの目的地までの方向に対して±10°以内であるとしてもよい。このようにすることにより、自己の移動体の目的地と他の移動体の目的地が遠い場合においても途中までの道のりが同じ移動体同士を同じ移動体群とすることができる。このため、移動体群への移動体から抜ける移動体を低減できる。
【0081】
C2.他の実施形態2
上述の実施形態では、余剰処理能力が高い移動体として、移動体の移動体制御部110を構成するCPUの処理性能が最も高いものであって、移動体制御部110を構成するメモリの空き容量が最も多いものとしたが、これに限られない。例えば、
図21に示す方法により、余剰処理能力が高い移動体を選定してもよい。
【0082】
具体的には、まず、通信装置100は、移動体の移動体制御部110を構成するCPUの処理性能が最も高いものを抽出する(工程S310)。その後、通信装置100は、移動体の移動体制御部110を構成するメモリの空き容量が最大のものを抽出する(工程S320)。そして、通信装置100は、その移動体のメモリの空き容量が予め定められた閾値Ct(例えば、全メモリの10%)以上かどうかを判定する(工程S330)。その移動体のメモリの空き容量が予め定められた閾値Ct以上である場合(工程S330:YES)、通信装置100は、その移動体を代表の移動体に設定して(工程S340)、フローは終了する。
【0083】
一方、その移動体のメモリの空き容量が閾値Ct未満である場合(工程S330:YNO)、通信装置100は、工程S310にて抽出された移動体を除外する(工程S350)。そして、通信装置100は、工程S350により除外されていない移動体が存在する場合(工程S360:YES)、工程S310に戻る。つまり、通信装置100は、処理性能が最高の移動体を除外し、工程S310において、それ以外の移動体の中で処理性能が最高のものを抽出する。一方、工程S350により除外されていない移動体が存在しない場合(工程S360:NO)、通信装置100は、移動体の移動体制御部110を構成するCPUの処理性能が最も高いものを抽出した後(工程S370)、移動体の移動体制御部110を構成するメモリの空き容量が最大のものを抽出する(工程S380)。そして、通信装置100は、その移動体を代表に設定する(S340)。このようにすることにより、メモリの空き容量が閾値Ct以上である移動体が移動体群に存在する場合には最もCPUの処理性能が高い移動体を代表の移動体とすることができる。
【0084】
C3.他の実施形態3
上述の実施形態では、移動体として車両を用いているが、例えば、
図22に示すように移動体としてドローンを用いてもよい。また、
図22に示すように、「自己の移動体MCの目的地と同じ方向の目的地」として、自己の移動体MCの目的地が含まれる市町村と同じ市町村に含まれる目的地としてもよい。
図22では、移動体群を、○○市を目指す移動体で構成された移動体群H3と、××市を目指す移動体で構成された移動体群H4とに設定している。
【0085】
上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。ソフトウェアによって実現されていた構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0086】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
11…自己情報取得部、12…他者情報取得部、13…判定部、14…移動体群設定部、16…代表設定部、17…送信部、22…ナビゲーション装置、24…GNSSセンサ、100…通信装置、110…移動体制御部、111,112,113…車両、120…移動体制御装置、121…第1通信部、122…GNSS処理部、123…自車位置特定部、124…アンテナ、130…画像取得部、132…画像解析部、135…サーバ、140…制御部、150…情報処理装置(センタ)、151…第2通信部、154…アンテナ、160…CPU、161…特定部、162…移動体把握部、170…メモリ、171,172…外部記憶装置、200…移動空間情報処理システム(地図整備システム)、BS…基地局、H、H1~H4…移動体群、MC、MC1~MC6…移動体