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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20221012BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221012BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221012BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J35/04 301L
F01N3/28 301P
F01N3/28 301Q
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019235915
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104474
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島野 紀道
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】鎮西 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】仲東 聖次
(72)【発明者】
【氏名】二橋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】相川 智将
(72)【発明者】
【氏名】内藤 功
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-167381(JP,A)
【文献】特表2018-502982(JP,A)
【文献】特開2012-096201(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に形成された二層構造の触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層が、排ガス流れ方向の上流側の上流部と下流側の下流部からなり、前記下流部の一部の上に前記上流部の一部又は全部が形成されており、
前記下流部が、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるRh微粒子を含む、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記下流部における前記Rh微粒子の含有量が、基材容量に対して0.01g/L以上0.7g/L以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記下流部が酸素吸蔵能を有するOSC材をさらに含み、前記下流部における前記OSC材の重量割合が5重量%以上55重量%以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記上流部が触媒金属としてPtを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれており、これらの有害成分は排ガス浄化用触媒によって浄化されてから大気中に放出されている。従来、この排ガス浄化用触媒には、CO、HCの酸化とNOxの還元とを同時に行う三元触媒が用いられており、三元触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を触媒金属として用いたものが広く用いられている。
【0003】
近年、排ガス規制が厳しくなる一方で、資源リスクの観点から排ガス浄化用触媒に用いられる貴金属量は低減させることが求められている。貴金属の中でもRhはNOx還元活性を担っており、Rhを高活性化することにより、排ガス規制に対応しつつ、貴金属量を低減することが期待できる。
【0004】
排ガス浄化用触媒において、貴金属の使用量を低減させる一つの方法として、貴金属を担体上に微細な粒子として担持して利用する方法が知られている。例えば、特許文献1には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程とを含む触媒の製造方法が開示されている。特許文献1の実施例には、酸化物担体上の貴金属粒子の粒径を2.8nm以上3.8nm以下の範囲に制御することができたことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、酸化物担体に貴金属微粒子を担持させた触媒に対して、還元剤を作用させて小粒径の貴金属微粒子を肥大化させ、該貴金属微粒子の最小粒径を1nm以上にする工程を有する、触媒の製造方法が開示されている。特許文献2の実施例には、酸化物担体上の貴金属微粒子の粒径を3.0nm以上4.1nm以下に制御できたことが記載されている。
【0006】
また、触媒の効果を最大限に発揮するための触媒金属の添加位置の検討も行われている。例えば、特許文献3には、担体基材の表面に形成されロジウムを担持した下層と、該下層の表面に形成され少なくとも白金を担持した上層との二層構造をなす触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、上層の白金は排ガス上流側ほど高濃度に担持され、下層のロジウムは排ガス下流側ほど高濃度に担持されている排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0007】
しかし、粒径を制御したRh微粒子を用いた従来の触媒には、Rh微粒子が触媒反応中に凝集して劣化してしまい、触媒の耐久性が十分でない場合があった。触媒の耐久性を向上させることができれば、Rhを有効活用することができるため、貴金属量を低減することができる。また、粒径を制御したRh微粒子を用いた従来の触媒では、その効果を最大限発揮するための添加位置について十分に検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-147256号公報
【文献】特開2007-38085号公報
【文献】特開2009-273986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の通り、粒径を制御したRh微粒子を用いた従来の排ガス浄化用触媒には、触媒の耐久性及びその効果を最大限発揮するための添加位置に改善の余地があった。それ故、本発明は、耐久性の向上した排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、平均粒径及び粒径の標準偏差σを特定の範囲に制御したRh微粒子を触媒コート層の下流部に用いることにより、排ガス浄化用触媒の耐久性を向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と、該基材上に形成された二層構造の触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層が、排ガス流れ方向の上流側の上流部と下流側の下流部からなり、前記下流部の一部の上に前記上流部の一部又は全部が形成されており、
前記下流部が、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるRh微粒子を含む、排ガス浄化用触媒。
(2)前記下流部における前記Rh微粒子の含有量が、基材容量に対して0.01g/L以上0.7g/L以下である、前記(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)前記下流部が酸素吸蔵能を有するOSC材をさらに含み、前記下流部における前記OSC材の重量割合が5重量%以上55重量%以下である、前記(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
(4)前記上流部が触媒金属としてPtを含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、耐久性が向上した排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の実施形態を示す断面模式図である。
図2図2は、本発明の排ガス浄化用触媒の第2の実施形態を示す断面模式図である。
図3図3は、実施例1及び比較例1~4の触媒のリッチ雰囲気のNOx浄化率を示すグラフである。
図4図4は、下流部のRh微粒子の添加量とリッチ雰囲気のNOx浄化率の関係を示すグラフである。
図5図5は、実施例4及び比較例7、8の触媒のリッチ雰囲気のNOx浄化率を示すグラフである。
図6図6は、下流部のOSC材の重量割合とリッチ雰囲気のNOx浄化率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有する。触媒コート層は、排ガス流れ方向の上流側の上流部と下流側の下流部からなる二層構造を有し、下流部の一部の上に上流部の一部又は全部が形成されている。すなわち、下流部は、上流部に被覆されていない単層部分を有する。
【0016】
図1に、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の実施形態を示す。図1に示されるように、排ガス浄化用触媒10は、基材11と、基材11上に形成された二層構造の触媒コート層14を有する。触媒コート層14は、上流部12と下流部13からなり、下流部13の一部の上に上流部12の一部が形成されている。図1において、矢印は排ガス流れ方向を示す。この構造の排ガス浄化用触媒において、排ガスはまず上流部12を通過し、排ガス中の有害成分の一部が上流部12で浄化される。その後、排ガスは、Rh微粒子を含む下流部13を通過するため、RhをNOxの浄化のために有効活用することができ、触媒のNOx浄化能が向上し、Rhの使用量を低減することができる。
【0017】
ここで、触媒コート層について、上流部は、排ガス流れ方向の上流側端面から所定の範囲に形成されている。本発明の排ガス浄化用触媒においては、上流部は下流部の一部の上に形成されているため、上流部が下流側端面まで形成されることはない。すなわち、上流部のコート幅は上流側端面から基材全長の100%未満の長さの範囲である。一方、下流部は、少なくとも下流側端面から形成されていればよく、基材全長にわたって形成されていてもよい。すなわち、下流部のコート幅は下流側端面から基材全長の100%以下の長さの範囲である。下流部が基材全長にわたって形成されている場合、下流部の一部の上に上流部の全部が形成されている。
【0018】
図2に、本発明の排ガス浄化用触媒の第2の実施形態を示す。図2に示されるように、排ガス浄化用触媒20において、触媒コート層24は、上流部22と下流部23からなり、下流部23の一部の上に上流部22の全部が形成されている。この排ガス浄化用触媒20においては、基材21上に、下層の下流部23が形成され、下流部23の一部の上に上層の上流部22が形成されている。図2において、矢印は排ガス流れ方向を示す。この構造の排ガス浄化用触媒においても、前記の第1の実施形態と同様に、排ガスはまず上層の上流部22を通過し、排ガス中の有害成分の一部が上流部22で浄化され、その後、Rh微粒子を含む下流部23を通過するため、RhをNOxの浄化のために有効活用することができ、触媒のNOx浄化能が向上し、Rhの使用量を低減することができる。
【0019】
触媒コート層の上流部のコート幅は、上流側端面から基材全長の好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、特に好ましくは50%以下の長さの範囲であるが、例えば40%以下、30%以下の長さの範囲であってもよい。
【0020】
触媒コート層の下流部のコート幅は、前記の通り、下流側端面から基材全長の100%以下の長さの範囲であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下の長さの範囲であるが、例えば60%以下、40%以下の長さの範囲であってもよい。触媒コート層の下流部のコート幅は、好ましくは、下流側端面から基材全長の60%以上100%以下の長さの範囲である。
【0021】
本発明の排ガス浄化用触媒の触媒コート層において、上流部の一部又は全部が下流部の一部の上に重なっている。下流部の上に上流部が重なっている部分の幅は、基材全長の好ましくは10%以上60%以下、より好ましくは10%以上40%以下の長さの範囲である。
【0022】
本発明の排ガス浄化用触媒に用いる基材としては、特に限定されずに、一般的に用いられている多数のセルを有するハニカム形状の材料を使用することができる。基材の材質としては、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料が挙げられるが、コストの観点からコージェライトが好ましい。
【0023】
触媒コート層の下流部は、平均粒径及び粒径の標準偏差σが特定の範囲内に制御されたロジウム(Rh)微粒子(以下、粒径制御Rh微粒子、またRh微粒子とも記載する)を含む。この粒径制御Rh微粒子は、平均粒径が比較的小さいため、有意に大きな比表面積を示し、高い触媒活性を有する。また、この粒径制御Rh微粒子は、粒径分布が狭く、粗大粒子及び微細粒子の割合が少ないため、高い耐久性及び高い触媒活性を有する。この粒径制御Rh微粒子を触媒コート層の下流部に用いることにより、RhをNOxの浄化のために有効活用することができ、触媒のNOx浄化能が向上し、Rhの使用量を低減することができる。
【0024】
Rh微粒子は、平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下である。本発明において、Rh微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において撮影した画像を元に、直接に投影面積円相当径を計測し、集合数100以上の粒子群を解析することによって得られた個数平均粒子径である。
【0025】
Rh微粒子の平均粒径を1.0nm以上とすることにより、触媒反応中に凝集して粗大化する要因となると考えられる粒径1.0nm未満の微細粒子の割合を低減することができるため、Rh微粒子の劣化を抑制し、触媒の耐久性を向上させることができる。一方、Rh微粒子の平均粒径を2.0nm以下とすることにより、Rh微粒子の表面積を大きくすることができ、触媒活性を高くすることができる。Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.1nm以上、より好ましくは1.2nm以上である。また、Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.9nm以下であり、より好ましくは1.8nm以下であり、特に好ましくは1.6nm以下である。Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.1nm以上1.9nm以下であり、より好ましくは1.2nm以上1.8nm以下である。
【0026】
Rh微粒子は、透過型電子顕微鏡観察により測定された粒径の標準偏差σが、0.8nm以下である。Rh微粒子は、粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるため、粒径分布がシャープであり、微細粒子及び粗大粒子の含有割合が低い。微細粒子が少ないことにより、触媒反応中のRh微粒子の凝集が抑制されるため、Rhの劣化が抑制され、触媒の耐久性が向上する。また、粗大粒子が少ないことにより、Rh微粒子の表面積が大きくなり、触媒活性が向上する。
【0027】
Rh微粒子の粒径の標準偏差σは、好ましくは0.7nm以下であり、より好ましくは0.6nm以下であり、特に好ましくは0.5nm以下である。Rh微粒子の粒径は単分散であってもよいが、標準偏差σが0.2nm以上、0.3nm以上又は0.4nm以上であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0028】
Rh微粒子は、特に粒径1.0nm未満の微細粒子の割合が低減されている。粒径1.0nm末満の微細粒子の割合が少ないことにより、触媒反応中のRh微粒子の凝集が抑制されるため、Rhの劣化が抑制され、触媒の耐久性が向上する。Rh微粒子は、粒径1.0nm未満のRh微粒子の存在割合が、Rh微粒子の全重量に対して、好ましくは5重量%以下である。この値は、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下又は0.1重量%以下であってよく、これを全く含まなくてもよい。
【0029】
好ましい実施形態において、Rh微粒子は、透過型電子顕微鏡によって測定したときに、平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、且つ粒径1.0nm未満のRh微粒子の存在割合が、Rh微粒子の全重量に対して5.0重量%以下である。
【0030】
Rh微粒子は、好ましくは、担体粒子上に担持されている。担体粒子としては、特に限定されずに、例えば、酸化物担体粒子を用いることができる。担持方法は、含浸担持法、吸着担持法及び吸水担持法等の一般的な担持法を利用することができる。
【0031】
酸化物担体粒子としては、例えば、金属の酸化物の粒子を用いることができる。この金属酸化物に含まれる金属としては、例えば、周期律表の3族、4族及び13族から選択される1種以上の金属やランタノイド系の金属が挙げられる。酸化物担体粒子が2種以上の金属の酸化物から構成されるとき、2種以上の金属酸化物の混合物、2種以上の金属を含む複合酸化物、又は1種以上の金属酸化物と、1種以上の複合酸化物との混合物のいずれであってもよい。
【0032】
金属酸化物は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlから選択される1種以上の金属の酸化物である。金属酸化物としては、イットリア(Y)、ランタナ(La)及びジルコニア(ZrO)の複合酸化物を用いることが好ましい。
【0033】
担体粒子の粒径は、目的に応じて、当業者によって適宜に設定されてよい。
【0034】
Rh微粒子を担体粒子上に担持して用いる場合、Rh微粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.2重量%以下である。また、Rh微粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.07重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上である。
【0035】
Rh微粒子を担体粒子上に担持して用いる場合、このRh担持触媒粒子は、担体粒子を、予め所定の粒径分布に制御されたRh微粒子前駆体を含有するRh微粒子前駆体分散液と接触させ、次いで焼成することによって製造することができる。
【0036】
Rh微粒子前駆体分散液は、例えば、以下のいずれかの方法によって製造することができる。
(1)反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器中で、Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させる方法(方法1)、及び
(2)Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させた後、高速ミキサー中で撹拌処理する方法(方法2)。
【0037】
方法1では、Rh化合物(例えば、Rhの無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば、含窒素有機化合物の水溶液)とを反応させる際に、反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器を用いることにより、得られる分散液中に含まれるRh微粒子前駆体(例えばRhの水酸化物)の粒径及び粒径分布を制御することができる。
【0038】
反応器が有するクリアランス調節部材は、例えば、2枚の平板、平板と波状板との組み合わせ、細管等であってよい。反応場のクリアランスは、所望の粒径及び粒径分布に応じて適宜設定することができる。反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器としては、例えば、適当なクリアランス調節部材を有するマイクロリアクター等を用いることができる。
【0039】
方法2では、Rh化合物(例えば、Rhの無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば、含窒素有機化合物の水溶液)との反応によって、大粒径の粒子として生成したRh微粒子前駆体を高速ミキサー中で撹拌処理して、強い剪断力を与えて分散することにより、分散後のRh微粒子前駆体の平均粒径及び粒径分布を制御することができる。
【0040】
以上のようにして調製したRh微粒子前駆体分散液を担体粒子と接触させ、次いで焼成することによって、Rh担持触媒粒子を得ることができる。
【0041】
触媒コート層の下流部におけるRh微粒子の含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上0.7g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上0.5g/L以下である。下流部におけるRh微粒子の含有量が0.01g/L以上0.7g/L以下であると、触媒の耐久性の向上及びRhの使用量の低減を両立することができる。
【0042】
Rh微粒子を担体粒子上に担持してRh担持触媒粒子として用いる場合、触媒コート層の下流部におけるRh担持触媒粒子の含有量は、基材容量に対して、好ましくは10g/L以上80g/L以下であり、より好ましくは20g/L以上60g/L以下である。
【0043】
触媒コート層の下流部は、好ましくは酸素吸蔵能を有するOSC材を含む。OSC材は酸素吸蔵能を有する無機材料であり、リーン排ガスが供給された際に酸素を吸蔵し、リッチ排ガスが供給された際に吸蔵した酸素を放出する。OSC材としては、特に限定されずに、例えば、酸化セリウム(セリア:CeO)や該セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア-ジルコニア(ZrO)複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物))等が挙げられる。前記のOSC材の中でも、高い酸素吸蔵能を有しており、且つ比較的安価であるため、セリア-ジルコニア複合酸化物を用いることが好ましい。セリア-ジルコニア複合酸化物は、ランタナ(La)及びイットリア(Y)等との複合酸化物の形態で用いてもよい。セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、CeO/ZrO=0.2以上9.0以下であると好ましい。
【0044】
触媒コート層の下流部がOSC材を含む場合、その含有量は、下流部の重量に対して好ましくは5重量%以上55重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上50重量%以下である。下流部におけるOSC材の含有量が5重量%以上55重量%以下であると、触媒の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0045】
触媒コート層の下流部がOSC材を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは5g/L以上75g/L以下であり、より好ましくは10g/L以上60g/L以下である。下流部におけるOSC材の含有量が基材容量に対して5g/L以上75g/L以下であると、効果的に触媒の耐久性を向上させることができる。
【0046】
触媒コート層の下流部は、前記の粒径制御Rh微粒子及びOSC材の他に、任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば、金属酸化物等が挙げられる。触媒コート層の下流部が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは80g/L以下であり、より好ましくは60g/L以下である。
【0047】
金属酸化物は、特に限定されずに、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の金属の酸化物であってよい。金属酸化物としては、アルミナ(Al)又はAl及びランタナ(La)の複合酸化物を用いることが好ましい。
【0048】
触媒コート層の上流部は、好ましくは、白金族貴金属を触媒金属として含む。白金族貴金属としては、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)が挙げられ、Ptを用いることが好ましい。触媒コート層の上流部が触媒金属としてPtを含むと、排ガスが最初に通過する上流部でHCが浄化され、粒径制御Rh微粒子を含む下流部において、HCの被毒の影響を抑えた状態でNOxを浄化することができるため、RhをNOxの浄化のために有効活用することができ、触媒のNOx浄化能が向上し、Rhの使用量を低減することができる。
【0049】
触媒金属は、担体粒子上に担持して用いてもよい。担体粒子としては、特に限定されずに、例えば、酸化物担体粒子を用いることができる。担持方法は、含浸担持法、吸着担持法及び吸水担持法等の一般的な担持法を利用することができる。
【0050】
酸化物担体粒子としては、例えば、金属の酸化物の粒子を用いることができる。この金属酸化物に含まれる金属としては、例えば、周期律表の3族、4族及び13族から選択される1種以上の金属やランタノイド系の金属が挙げられる。酸化物担体粒子が2種以上の金属の酸化物から構成されるとき、2種以上の金属酸化物の混合物、2種以上の金属を含む複合酸化物、又は1種以上の金属酸化物と、1種以上の複合酸化物との混合物のいずれであってもよい。
【0051】
金属酸化物は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlから選択される1種以上の金属の酸化物である。金属酸化物としては、アルミナ(Al)又はAl及びランタナ(La)の複合酸化物を用いることが好ましい。
【0052】
触媒コート層の上流部における触媒金属の含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上1g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上0.6g/L以下である。上流部における触媒金属の含有量が0.01g/L以上1g/L以下であると、上流部でHCが十分に浄化されるため、下流部において、HCの被毒の影響を抑えた状態でNOxを浄化することができる。
【0053】
触媒金属を担体粒子上に担持して担持触媒粒子として用いる場合、上流部における担持触媒粒子の含有量は、基材容量に対して、好ましくは1g/L以上50g/L以下であり、より好ましくは10g/L以上30g/L以下である。
【0054】
触媒コート層の上流部は、前記の触媒金属の他に、任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えばOSC材等が挙げられる。触媒コート層の上流部が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは80g/L以下、より好ましくは60g/L以下、特に好ましくは40g/L以下である。
【0055】
OSC材としては、特に限定されずに、例えば、酸化セリウム(セリア:CeO)や該セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア-ジルコニア(ZrO)複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物))等が挙げられる。前記のOSC材の中でも、高い酸素吸蔵能を有しており、且つ比較的安価であるため、セリア-ジルコニア複合酸化物を用いることが好ましい。セリア-ジルコニア複合酸化物は、ランタナ(La)及びイットリア(Y)等との複合酸化物の形態で用いてもよい。セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、CeO/ZrO=0.2以上9.0以下であると好ましい。
【0056】
本発明の排ガス浄化用触媒は、当業者に公知の方法によって基材上に触媒コート層の成分を含むスラリーをコートすることにより、製造することができる。一実施形態において、例えば、粒径制御Rh微粒子、OSC材及び金属酸化物を含むスラリーを公知の方法を用いて下流側端面から所定の範囲にわたりコートして、所定の温度及び時間にて乾燥及び焼成することにより、基材上に触媒コート層の下流部を形成する。次いで、Pt等の触媒金属とOSC材を含むスラリーを公知の方法を用いて基材の上流側端面から所定の範囲にわたりコートし、所定の温度及び時間にて乾燥及び焼成することにより、上流部を形成する。
【実施例
【0057】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0058】
<粒径制御Rh微粒子の効果の確認及び添加位置の検討>
1.触媒の調製
使用原料
材料1:Al:4重量%-La複合化Al
材料2:ZY:84重量%-ZrO、6重量%-La、10重量%-Y複合酸化物
材料3:Pt/Al:Ptが材料1に担持された材料
材料4:粒径制御Rh分散液
材料5:Rh/ZY:Rhが材料2に担持された材料
材料6:粒径制御Rh/ZY:材料4のRhが材料2に担持された材料
材料7:ビーカー法Rh分散液
材料8:ビーカー法Rh/ZY:材料7のRhが材料2に担持された材料
材料9:ZC(OSC材):21重量%-CeO、72重量%-ZrO、1.7重量%-La3、5.3重量%-Y複合酸化物
基材:875cc(400セル四角 壁厚4mil)のコージェライトハニカム基材
【0059】
材料3~材料8は以下のようにして調製した。
【0060】
材料3:Pt/Al
硝酸Pt溶液と材料1とを接触させた後、焼成することにより、担持量1.0重量%のPtが材料1に担持された材料3を得た。
【0061】
材料4:粒径制御Rh分散液
イオン交換水50mL中に硝酸Rh(III)0.2gを加えて溶解し、Rh化合物の酸性溶液(pH1.0)を調製した。
【0062】
有機塩基溶液として、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(濃度175g/L、pH14)を準備した。
【0063】
クリアランス調節部材としての2枚の平板を有する反応器(マイクロリアクター)を用い、クリアランスが10μmに設定された反応場に、前記のRh化合物の酸性溶液及び有機塩基溶液を導入する手法により、両液を水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)と硝酸Rh(RN)とのモル比(TEAH/RN)が18となる条件で反応させて、Rh微粒子前駆体分散液を調製した。得られたRh微粒子前駆体分散液のpHは14であった。また、得られたRh微粒子前駆体分散液に含まれるRh微粒子前駆体のメジアン径(D50)を動的光散乱法(DLS)によって測定したところ、2.0nmであった。
【0064】
材料5:Rh/ZY
硝酸Rh溶液と材料2とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.45重量%のRhが材料2に担持された材料を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は0.70nmであった。
【0065】
材料6:粒径制御Rh/ZY
材料4と材料2とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.45重量%のRhが材料2に担持された材料6を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は1.40nmであり、粒径の標準偏差σは0.48nmであった。この粒径制御Rhの粒径分布において、1.0nm未満の微細粒子の割合は、材料8のビーカー法Rhと比較して少なかった。
【0066】
材料7:ビーカー法Rh分散液
クリアランス調節部材を有する反応器を用いずに、Rh化合物の酸性溶液と有機塩基溶液との反応をビーカー中で行った以外は材料4の調製と同様にして、材料7を調製した。
【0067】
材料8:ビーカー法Rh/ZY
材料6の調製と同様にして、材料7のRhが材料2に担持された材料8を調製した。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は1.42nmであり、粒径の標準偏差σは0.94nmであった。
【0068】
実施例1
蒸留水に材料6、材料1、材料9及びAl系バインダーを攪拌しながら投入し、これらの材料が懸濁したスラリー1を調製した。次に、調製したスラリー1を下流側端面から基材へ流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート幅は下流側端面から基材全長の80%に調整した。また、コート量は、基材容量に対して材料6が40g/L、材料1が40g/L、材料9が35g/Lになるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、触媒コート層の下流部を調製した。
【0069】
同様に、蒸留水に材料3、材料9及びAl系バインダーを攪拌しながら投入し、これらの材料が懸濁したスラリー2を調製した。下流部が形成された基材にスラリー2を上流側端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート幅は上流側端面から基材全長の40%に調整した。また、コート量は、基材容量に対して材料3が20g/L、材料9が30g/Lとなるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、触媒コート層の上流部を調製した。
【0070】
比較例1
実施例1で用いたスラリー2を下流側端面から基材へ流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート幅は80%に調整した。また、コート量は、基材容量に対して材料3が40g/L、材料9が60g/Lになるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、触媒コート層の下流部を調製した。
【0071】
同様に、下流部が形成された基材に上流側端面から実施例1で用いたスラリー1を流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート幅は40%に調整した。また、コート量は、基材容量に対して材料6が20g/L、材料1が20g/L、材料9が15g/Lとなるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、触媒コート層の上流部を調製した。
【0072】
比較例2
材料6を材料5に置き換えた以外は比較例1と同様にして、比較例2の触媒を調製した。
【0073】
比較例3
材料6を材料5に置き換えた以外は実施例1と同様にして、比較例3の触媒を調製した。
【0074】
比較例4
材料6を材料8に置き換えた以外は実施例1と同様にして、比較例4の触媒を調製した。
【0075】
表1に、実施例1及び比較例1~4の触媒の上流部及び下流部の組成及び貴金属量を示す。なお、貴金属量は、基材容量に対する貴金属量(g/基材1L)である。
【0076】
【表1】
【0077】
2.耐久試験
調製した各触媒について、実際のエンジンを用いて耐久試験を実施した。具体的には、耐久試験は、各触媒をV型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温900℃で46時間にわたり、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0078】
3.性能評価
触媒床温500℃で空燃比(A/F)14.1、15.1の排ガスを交互に3分間切替で供給し、Ga=30g/sでのNOx浄化率を評価した。切替3回目のリッチ(A/F=14.1)で2分45秒経過時から15秒間のNOx浄化率を平均し、リッチ雰囲気でのNOx浄化率を算出した。表2に実施例1及び比較例1~4の触媒の詳細を示す。また、図3に、実施例1及び比較例1~4の触媒のリッチ雰囲気のNOx浄化率を示す。
【0079】
【表2】
【0080】
図3より、実施例1と比較例1の比較により、平均粒径及び粒径の標準偏差σが本発明の特定の範囲内に制御されている粒径制御Rh微粒子を下流部に含む実施例1の触媒は、これを上流部に含む比較例1の触媒と比較してNOx浄化率が有意に高くなった。これは、排ガスが最初に通過する上流部で排ガス中のHCが浄化され、排ガスがその後通過する下流部では、HCによる被毒の影響を抑えた状態でRhにより排ガス中のNOxを浄化できるためであると考えられる。また、実施例1の比較例1に対するNOx浄化率の上昇幅は、Rh微粒子の平均粒径が本発明の所定の範囲外である比較例3の比較例2に対するNOx浄化率の上昇幅よりも大きかった。よって、このNOx浄化能の向上効果は、粒径制御Rh微粒子を下流部に添加することにより特異的に得られる効果であるといえる。また、実施例1と比較例3、4との比較により、Rh微粒子の平均粒径及び粒径の標準偏差σを本発明の特定の範囲内に制御することにより、NOx浄化率が有意に高くなることが示された。ここで、実施例1と比較例4の比較により、Rh微粒子の平均粒径が同等の場合、Rh微粒子の粒径の標準偏差σがより小さい実施例1の触媒は、比較例4の触媒と比較して有意にNOx浄化率が高くなった。これは、実施例1の触媒に用いたRh微粒子は標準偏差σが小さく、粒径がより均一化されているためであると考えられる。
【0081】
<下流部のRh微粒子の添加量のNOx浄化率への影響>
実施例2及び3
粒径制御Rhの担持量を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2及び3の触媒を調製した。
【0082】
比較例5及び6
Rhの担持量を表1に示す通りに変更した以外は比較例3と同様にして、比較例5及び6の触媒を調製した。
【0083】
実施例1~3及び比較例3、5~6の触媒について、前記と同様にしてNOx浄化率を測定した。実施例1~3及び比較例3、5~6の触媒の上流部及び下流部の組成及び貴金属量を表1に示す。また、図4に、下流部のRh微粒子の添加量とリッチ雰囲気のNOx浄化率の関係を示す。
【0084】
図4に示されるように、粒径制御Rh微粒子を用いた実施例1~3の触媒は、Rh微粒子の平均粒径が本発明の所定の範囲外である比較例3、5~6の触媒と比較してNOx浄化率が有意に高かった。また、下流部のRh微粒子の添加量が多くなると、触媒金属としてのRh微粒子の量が増加し、触媒の活性が向上するため、粒径制御Rh微粒子のNOx浄化能の向上への寄与が小さくなっていた。よって、粒径制御Rh微粒子を用いた触媒において、NOx浄化能の向上の観点からその添加量には好ましい範囲が存在し、粒径制御Rh微粒子の添加量は0.01g/L以上0.7g/L以下の範囲が好ましい。
【0085】
<下流部のOSC材の含有量のNOx浄化率への影響>
1.触媒の調製
実施例4~6
下流部の材料1、材料6及び材料9のコート量を表3に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4~6の触媒を調製した。
【0086】
比較例7、9及び10
下流部の材料1、材料5及び材料9のコート量を表3に示す通りに変更した以外は比較例3と同様にして、比較例7、9及び10の触媒を調製した。
【0087】
比較例8
材料5を材料8に置き換えた以外は比較例7と同様にして、比較例8の触媒を調製した。
【0088】
2.耐久試験
調製した各触媒について、実際のエンジンを用いて耐久試験を実施した。具体的には、耐久試験は、各触媒をV型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温900℃で50時間にわたり、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0089】
3.性能評価
触媒床温500℃で空燃比(A/F)14.1、15.1の排ガスを交互に3分間切替で供給し、Ga=30g/sでのNOx浄化率を評価した。切替4回目のリッチ(A/F=14.1)で2分45秒経過時から10秒間のNOx浄化率を平均し、リッチ雰囲気でのNOx浄化率を算出した。
【0090】
表3に実施例4~6及び比較例7~10の触媒の詳細を示し、表4に実施例4及び比較例7、8の触媒のRh微粒子の詳細を示す。また、図5に、実施例4及び比較例7、8の触媒のリッチ雰囲気のNOx浄化率を示す。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
図5に示されるように、下流部におけるOSC材の重量割合が一定の場合についても、Rh微粒子の平均粒径及び粒径の標準偏差σを本発明の所定の範囲内に制御することにより、NOx浄化率が有意に高くなることが示された。
【0094】
図6に、下流部におけるOSC材の重量割合とリッチ雰囲気のNOx浄化率の関係を示す。図6に示されるように、粒径制御Rh微粒子を用いた実施例の触媒は、Rh微粒子の平均粒径が本発明の所定の範囲外である比較例の触媒と比較して、下流部におけるOSC材の重量割合が5重量%以上55重量%以下の範囲において、NOx浄化率が有意に高かった。この下流部におけるOSC材の重量割合のNOx浄化率に対する影響は以下のように考えられる。具体的には、粒径制御Rh微粒子は、耐久試験後、Rh微粒子の凝集が抑制されるため、粒径が比較例のものよりも小さくなる。これにより、Rhの活性点の数は増加するが、それと背反してOSC材との相互作用が大きくなるため、Rhが失活しやすくなる。このため、OSC材の重量割合が例えば55重量%超と高い場合、粒径制御Rh微粒子のNOx浄化能の向上への寄与が小さくなったと考えられる。一方、OSC材の重量割合が例えば5重量%未満と低い場合、Rhとの相互作用が強いOSC材の割合が少なくなり、Rhが失活し難くなるため、NOx浄化率は向上する。しかし、この場合、比較例のものでも同様にRhが失活し難いため、比較例の触媒に対する効果が減少したと考えられる。
【符号の説明】
【0095】
10 排ガス浄化用触媒
11 基材
12 上流部
13 下流部
14 触媒コート層
20 排ガス浄化用触媒
21 基材
22 上流部
23 下流部
24 触媒コート層
図1
図2
図3
図4
図5
図6