(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】黒色遮光部材
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20221012BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20221012BHJP
G03B 9/00 20210101ALI20221012BHJP
【FI】
G02B5/00 B
G02B7/02 D
G03B9/00 A
(21)【出願番号】P 2019239871
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】坂村 ひのき
(72)【発明者】
【氏名】坂爪 直樹
【審査官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052044(WO,A1)
【文献】特開2012-247518(JP,A)
【文献】特開2006-227268(JP,A)
【文献】特開2014-152249(JP,A)
【文献】特開2019-101402(JP,A)
【文献】特開2010-084203(JP,A)
【文献】特開2012-203310(JP,A)
【文献】特開2001-350003(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159370(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/145473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00
G02B 7/02
G03B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム、および前記基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された、凹凸形状を有する樹脂製遮光層と、前記樹脂製遮光層上に形成された黒色化層を備える黒色遮光部材であって、
前記
樹脂製遮光層と黒色化層が形成された面の表面の算術平均粗さRaは0.25μm以上で、かつL値は12以下であり、前記黒色化層の最大厚さは、前記Raより小さ
く、
前記黒色化層は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ケイ素から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする黒色遮光部材。
【請求項2】
前記樹脂製遮光層は、マット剤および樹脂成分を含有する樹脂層を有することを特徴とする請求項1に記載の黒色遮光部材。
【請求項3】
前記樹脂製遮光層は、基材フィルム表面に形成された粗面化部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の黒色遮光部材。
【請求項4】
前記黒色化層は、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着(CVD)法から選択されるいずれかの方法で形成されることを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載の黒色遮光部材。
【請求項5】
前記黒色化層の最大厚さは、前記表面の算術平均粗さRaの1/2の値より小さいことを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の黒色遮光部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は黒色遮光部材に関し、さらに詳しくは、スマートフォンを含む携帯電話等のカメラユニット等光学機器に好適に用いることができる黒色遮光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、カメラのレンズ絞り、シャッターおよびレンズスペーサーには、遮光部材が用いられている。
このような遮光部材としては、カーボンブラック等を含有する黒色ポリエステル基材等の表面に所定の凹凸形状を形成した黒色フィルムが知られている。上記凹凸を形成する方法としては、基材表面にマット剤を含む遮光層を被覆する方法や基材表面をサンドブラスト等の手法により粗面化処理する方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、上記方法等を用いて、表面のJIS B0601:2001における算術平均粗さRaが0.5μm以上で、かつ最大山高さRpと最大谷深さRvとの差(RpーRv)が3未満である遮光部材を作製できることが記載されている。特許文献1の遮光部材は、薄型化しても優れた反射防止性能を有し、高硬度で、遮光層とフィルム基材との密着性も優れるため、長期にわたり優れた反射防止性能を維持できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、デザイン性の向上を目的に、光学機器用遮光部材の黒さを際立たせたものが求められている。しかしながら、未だ満足のいくものが得られていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、優れた低光沢性による反射防止効果と高い黒色性を有する遮光部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、基材フィルム、および基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された、凹凸形状を有する樹脂製遮光層を有する黒色遮光部材において、上記凹凸形状の上に黒色化層を形成して、遮光部材表面の凹凸形状をさらに制御することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明の黒色遮光部材は、基材フィルム、および上記基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された、凹凸形状を有する樹脂製遮光層と、上記樹脂製遮光層上に形成された黒色化層を備える黒色遮光部材であって、上記遮光層と黒色化層が形成された面の表面の算術平均粗さRaは0.25μm以上で、かつL値は12以下であり、上記黒色化層の最大厚さは、上記Raより小さいことを特徴とする。
ここで、樹脂製遮光層とは、少なくとも黒色化層を形成する表面の凹凸部が樹脂製であることをいう。例えば、後で述べるように凹凸形状を形成した金属製基材フィルム表面にマット剤を含む遮光層および/またはマット剤を含まない遮光層を形成した構成も本発明の樹脂製遮光層に含まれる。
なお、本発明でいう算術平均粗さRaは、JIS B0601:2001に基づいて算定したものであり、L値は、JIS Z8781-4に基づいて算定したL*a*b*色空間のうち明度を表すL*値のことである。
【0007】
上記樹脂製遮光層は、マット剤および樹脂成分を含有する樹脂層を有することが好ましい。
また、上記樹脂製遮光層は、基材フィルム表面に形成された粗面化部を含んでもよい。
一方、上記黒色化層は、無機系材料を含有することが好ましい。
上記黒色化層は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ケイ素から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記黒色化層は、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着(CVD)法から選択されるいずれかの方法で形成されることが好ましい。
さらに、上記黒色化層の最大厚さは、上記表面の算術平均粗さRaの1/2の値より小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の黒色遮光部材は、優れた低光沢性による反射防止効果を有するのみならず、黒色性が高く黒さが際立っているため、デザイン性にも優れる。このため、スマートフォン等の携帯電話のカメラユニットとしても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態における遮光部材の構成を示す断面模式図である(黒色化層形成前(a)、黒色化層形成後(b))。
【
図2】本発明の他の実施形態における遮光部材の構成を示す断面模式図である(黒色化層形成前(a)、黒色化層形成後(b))。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中、数値範囲を表す「~」は、その上限値および下限値としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も上限値と同じ単位であることを意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。
また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値または下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率または含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率または含有量を意味する。
【0011】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の黒色遮光部材は、基材フィルム、および上記基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された、凹凸形状を有する樹脂製遮光層と、上記樹脂製遮光層上に形成された黒色化層を備える黒色遮光部材であって、
上記遮光層と黒色化が形成された面の表面の算術平均粗さRaは0.25μm以上で、かつ黒色度(L値)は12以下であり、上記黒色化層の最大厚さは、上記Raより小さいことを特徴とする。
【0012】
初めに、本発明の樹脂製遮光層の凹凸形状について、図を参照して、説明する。
樹脂製遮光層の凹凸形状の形成方法としては、以下の(A)、(B)および(C)の方法が挙げられる。
(A)の方法では、
図1(a)に示すように、平坦な基材フィルム2の表面にマット剤31とマトリックス部32を含有する遮光層3を被覆する。遮光層3の表面には、マット剤31により凹凸が形成される。ここで、遮光部材1表面のRaは、マット剤31の粒径、粒度分布、含有量および遮光層3の膜厚等を調整することにより制御することができる。また、塗布液作製の際の溶剤の種類や固形分濃度、基材フィルムへの塗布量を調整することにより、制御することもできる。さらに、塗布液の塗布方法や乾燥温度、時間および乾燥時の風量等の塗膜製造条件によっても、制御することができる。
【0013】
(B)の方法では、
図2(a)に示すように、基材フィルム2表面に凹凸を形成する。基材フィルムが樹脂製フィルムの場合、凹凸を形成するためには、例えば、サンドブラスト法を適用することができる。ここで、用いる研磨剤の粒径や噴射圧等を制御することにより、Raを制御することができる。また、例えば、基材フィルムの原料にマット剤を含有させ、マット剤を含む基材フィルムを作製することもできる。マット剤としては後述する遮光層と同じ種類のものを好ましく使用することができる。マット剤の粒径、粒度分布、含有量と基材フィルムの厚さを制御することにより、基材フィルム表面のRaを制御することができる。
さらに、凹凸を形成した基材フィルム2上に塗布液等を被覆して、遮光部材1表面に、基材フィルム2表面の凹凸形状にならった樹脂製薄膜4を形成することもできる。ここでは、遮光部材表面の樹脂製薄膜4は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素系樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、イミド樹脂等の樹脂成分からなる。樹脂製薄膜4はマット剤を含有せず、遮光部材1表面のRa等は、樹脂製基材フィルム2の凹凸形状および樹脂製薄膜4の膜厚等により調製することができる。
なお、上記樹脂製薄膜4と後述する黒色化層とでは、材料および膜厚が異なる。すなわち、樹脂製薄膜4は樹脂成分から形成され、膜厚は、1~50μm程度、好ましくは2~10μm程度である。一方、後述する黒色化層は、無機材料またはサブミクロンオーダーの樹脂粒子およびバインダー樹脂成分等から形成され、膜厚は、10nm~200nm程度である。
上記相違により、黒色化層を形成した本発明の黒色遮光部材では、L値が12以下の黒色度が実現される。
【0014】
(C)の方法では、(B)のように基材フィルム表面に凹凸を形成し、かつ(A)のように遮光部材表面にマット剤を含有する遮光層を被覆する。この構成において、遮光部材表面のRaは、基材フィルム2表面の凹凸形状、遮光層の膜厚、遮光層中のマット剤の粒径、粒度分布、含有量、遮光層の製造条件等により、制御することができる。
【0015】
本発明の黒色遮光部材は、基材フィルムの少なくとも一方の面に遮光層が形成された構成であることが好ましい。なお、以下の説明では、(B)の方法で形成される、基材フィルム表面に形成される凹凸形状(粗面化部)およびその表面に被覆するマット剤を含有しない樹脂製薄膜も遮光層に含めることとする。
以下に本発明の黒色遮光部材の具体的な材料構成について述べる。
【0016】
(1)基材フィルム
本発明に用いられる基材フィルムは、特に限定されず、透明なものでも不透明なものでもよい。また、本発明の基材フィルムは、樹脂製であっても金属製であってもよい。
樹脂製基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα‐オレフィンとの共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、エチレン―酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のその他の汎用プラスチックフィルムや、ポリカーボネート、ポリイミド等のエンジニアリングプラスチックフィルムが挙げられる。
また、金属製基材フィルムとしては、金、銀、銅、アルミニウム、チタン、亜鉛、ベリリウム、ニッケル、スズ等の金属を用いた金属シートや、リン青銅、銅ニッケル、銅ベリリウム、ステンレス、真鍮、ジュラルミン等の合金を用いた合金シートが挙げられる。
これらの素材の中でも比較的強度が高く、経済性や汎用性が高いという観点からは、二軸延伸したポリエチレンテレフタレート、耐熱性を有するという観点からは、ポリイミドフィルム、さらに高い耐熱性を有するという観点からは、銅からなる金属シートを用いることが好ましい。樹脂製基材フィルムの場合には、あらかじめカーボンブラックやアニリンブラックのような黒色着色剤を練り込んで光学濃度2以上、好ましくは4以上の高遮光性とすることにより、より優れた遮光効果を得ることができる。
基材フィルムの厚さは、特に限定されないが、樹脂製基材フィルムを用いる場合は、4~250μmであることが好ましく、12~100μmであることがより好ましい。厚さを上記範囲とすることにより、小型や薄型の光学部品にも好適に用いることができる。また、携帯電話等のカメラユニット等の光学機器に用いられる場合は、4~20μmとすることが好ましい。
金属製基材フィルムを用いる場合は、厚さは、6~40μmが好ましく、特に、携帯電話等のカメラユニット等の光学機器に用いられる場合は、10~20μmとすることが好ましい。
【0017】
上記(B)および(C)の方法を用いる場合には、基材フィルム表面に、マット加工を施し、凹凸(粗面化部)を形成する。マット加工法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、基材フィルムが樹脂製基材フィルムの場合は、化学的エッチング法、ブラスト法、エンボス法、カレンダー法、コロナ放電法、プラズマ放電法、樹脂と粗面化形成剤によるケミカルマット法などを用いることができる。また、基材フィルムに直接マット剤を含有させ、樹脂製基材フィルムの表面に凹凸を形成することもできる。上記加工法の中でも、形状コントロールのしやすさや経済性、取扱い性などの観点から、ブラスト法、特にサンドブラスト法を用いるのが好ましい。
サンドブラスト法では、用いる研磨剤の粒径や噴射圧等により、表面のRa等を制御することができる。また、エンボス法では、エンボスロール形状や圧を調整することにより、表面のRa等を制御することができる。
一方、基材フィルムが金属製基材フィルムの場合は、黒化処理、ブラスト処理、エッチング処理等により、表面に凹凸を形成することができる。なお、基材フィルムが金属製基材フィルムの場合には、表面の凹凸(粗面化部)に、後述するマット剤を含有する遮光層またはマット剤を含有しない遮光層の少なくとも一方を形成する必要がある。
【0018】
(2)アンカー層
上記基材フィルムの少なくとも一方の面に遮光層を設ける前に、基材フィルムと遮光層との接着性を向上させるために、アンカー層を設けることもできる。アンカー層としては、尿素系樹脂層、メラミン系樹脂層、ウレタン系樹脂層、ポリエステル系樹脂等を適用することができる。例えばウレタン系樹脂層は、ポリイソシアネートとジアミン、ジオール等の活性水素含有化合物を含有する溶液を基材フィルム表面に塗布して、硬化させることにより得られる。また、尿素系樹脂、メラミン系樹脂の場合は、水溶性尿素系樹脂または水溶性メラミン系樹脂を含有する溶液を基材表面に塗布し、硬化させることにより得られる。ポリエステル系樹脂は、有機溶剤(メチルエチルケトン、トルエン等)にて溶解または希釈した溶液を基材表面に塗布し、乾燥させることにより得られる。
【0019】
(3)遮光層
上述したように(B)の方法で、樹脂製基材フィルム表面に形成した凹凸部のみを遮光層とする遮光部材以外では、基材フィルムの少なくとも一方の面に、遮光層を被覆する。上記遮光層には、上記(A)および(C)の方法で用いるマット剤を含有する遮光層と(B)の方法で用いるマット剤を有しない遮光層(高硬度層、薄膜)がある。
【0020】
以下に、それぞれの遮光層の構成について説明する。
i)マット剤を含有する遮光層
遮光層の構成成分としては、樹脂成分、マット剤および着色・導電剤が含まれる。
樹脂成分は、マット剤および着色・導電剤のバインダーとなる。樹脂成分の材料は特に限定されず、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれを用いることもできる。具体的な熱硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド系樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアクリルエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン―ブタジエン共重合体樹脂等が挙げられる。耐熱性、耐湿性、耐溶剤性および表面硬度の観点からは、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、柔軟性および被膜の強靭さを考慮すると、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0021】
遮光層の構成成分として硬化剤を添加することにより、樹脂成分の架橋を促進させることができる。硬化剤としては、官能基をもつ尿素化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物等を用いることができる。これらの中でも、特にイソシアネート化合物が好ましい。硬化剤の配合割合は、樹脂成分100質量%に対して、10~50質量%とすることが好ましい。上記範囲で硬化剤を添加することにより、より好適な硬度の遮光層が得られ、他部材と摺動する場合であっても、長期にわたり遮光層のRaが維持され、優れた反射防止効果が持続される。
【0022】
硬化剤を用いる場合は、その反応を促進するために、反応触媒を併用することもできる。反応触媒としては、アンモニアや塩化アンモニウム等が挙げられる。反応触媒の配合割合は、硬化剤100質量%に対し0.1~10質量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
マット剤としては、樹脂系粒子を用いることも無機系粒子を用いることもできる。樹脂系粒子としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルマリン縮合物、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。一方、無機系粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
マット剤の平均粒径、粒度分布および含有量は、設定する遮光層の膜厚や樹脂製基材フィルムの表面の凹凸形状の度合いによって異なってくるものであり、遮光部材の表面が所望のRa等を得られるように調整する。(A)の方法の場合、例えば、表面が平滑な基材フィルム上に膜厚2~35μmの遮光層を形成する場合は、通常、マット剤の平均粒径は、1~40μmが好ましい。また、遮光層の膜厚を4~25μmとした場合は、マット剤の平均粒径は、5~20μmであることが好ましい。
【0024】
(C)の方法の場合、例えば、凹凸形状を有する基材フィルム上に膜厚1~35μmの遮光層を形成する場合は、マット剤の平均粒径は2~15μmが好ましい。また、遮光層の膜厚を2~7μmとした場合は、マット剤の平均粒径は2~10μmであることが好ましい。
マット剤の粒度分布は、遮光層の膜厚と選択したマット剤の大きさの組み合わせによって異なってくるものであり、一概に言えないが、できる限りシャープであることが好ましい。また、平均粒径および粒度分布の異なる複数のマット剤を用いて、Ra等を調整することもできる。
マット剤の添加量は、マット剤の平均粒径、粒度分布および遮光層の膜厚にもよるが、(A)の方法の場合、遮光層全体を100質量%として、20質量%~80質量%であることが好ましい。また、(C)の方法の場合、1質量%~40質量%であることが好ましい。
樹脂製基材フィルムの表面形状ならびにマット剤の平均粒径、粒度分布および含有量、さらには、遮光層の膜厚等を制御して、遮光層表面のRa等を調整することにより、薄くても優れた遮光特性を発揮する。
【0025】
マット剤の形状については特に限定されないが、塗布液の流動特性や塗布性、得られる遮光層の摺動特性等を考慮すると、真球状のマット剤を用いることが好ましい。さらに、光の反射を抑制するために、有機系又は無機系着色剤によりマット剤を黒色に着色することもできる。具体的な着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。カーボンブラックで着色したマット剤を用いて、さらに、着色・導電剤としてカーボンブラック等を遮光層中に添加することにより、より優れた遮光特性を得ることができる。
【0026】
着色・導電剤としては、通常、カーボンブラック等を用いる。着色・導電剤を添加することにより、遮光層が着色するため、反射防止効果が向上し、かつ良好な帯電防止効果が得られる。
着色・導電剤の平均粒径は、1nm~1000nmであることが好ましく、5nm~500nmであることがより好ましい。着色・導電剤の粒径を上記範囲とすることにより、より優れた遮光特性を得ることができる。
また、着色・導電剤の含有量は、遮光層全体を100質量%として、9質量%~38質量%であることが好ましい。着色・導電剤の含有量を上記範囲とすることにより、より優れた遮光特性を得ることができる。
【0027】
本発明においては、遮光層の構成成分として、必要に応じて、さらに、レベリング剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、分散剤、消泡剤等を添加することができる。
潤滑剤としては、固体潤滑剤であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子の他、ポリエチレン系ワックス、シリコーン粒子等を用いることができる。
【0028】
有機溶剤または水中に、上記構成成分を添加して、混合攪拌することにより、均一な塗布液を調製する。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどを用いることができる。
得られた塗布液を、基材フィルム表面に直接、または予め形成したアンカー層の上に塗布し、乾燥することにより遮光層が形成される。塗布方法は特に限定されないが、ロールコーター法やドクターブレード法等が用いられる。
本発明における遮光層の厚さは、1μm~35μmであることが好ましい。特に、マット剤を含有する場合、(A)の方法の場合は、遮光層の厚さは、2μm~30μmであることが好ましく、4μm~25μmであることがより好ましい。また(C)方法の場合は、遮光層の厚さは、1μm~10μmであることが好ましく、2μm~7μmであることがより好ましい。
遮光層の厚さを上記範囲とすることにより、所望の反射防止効果および摺動性が得られる。なお、マット剤を含有する遮光層の厚さは、フィルム基材表面から遮光層のマット剤により突出していないマトリックス部までの高さのことである。上記遮光層の厚さは、JIS K7130に基づいて測定することができる。
【0029】
ii)マット剤を含有しない遮光層
次に、上記(B)の方法で用いるマット剤を含有しない遮光層について説明する。この構成では、前述のとおり、遮光部材の遮光特性は、基材フィルムの凹凸形状により、制御されるので、基材フィルム表面に被覆される遮光層は基材フィルム表面の凹凸形状を維持できるように薄い層とする必要がある。このような構成では、遮光層は、導電層および摺動層として機能する。
上記遮光層の構成成分としては、樹脂成分および着色・導電剤が含まれる。
樹脂成分は、マット剤を含有する遮光層と同様の材料を用いることができる。
【0030】
着色・導電剤は、マット剤を含有する遮光層で用いられる材料と同様の材料を用いることができる。
【0031】
本構成の遮光層においても、必要に応じて、さらに、レベリング剤、増粘剤、pH調整剤、分散剤、消泡剤等を添加することができる。
水、アルコールまたは有機溶剤中に、上記構成成分を添加して、混合攪拌することにより、均一な塗布液を調製する。
得られた塗布液を、予めマット加工して、凹凸形状を形成した基材フィルム表面に直接、または予め形成したアンカー層を介して塗布して、乾燥することにより遮光層が形成される。塗布方法は特に限定されないが、ロールコーター法やドクターブレード法等が用いられる。
本構成のように、マット剤を含有しない場合、遮光層の厚さは、1μm~15μmであることが好ましく、2μm~10μmであることが好ましい。遮光層の厚さを上記範囲とすることにより、基材フィルムの凹凸形状を阻害することがなく、導電性、摺動性等を付与することができる。なお、マット剤を含有しない遮光層の厚さは、フィルム基材表面のうねりを消去した遮光層自体の厚さである。
【0032】
(4)黒色化層
本発明の黒色遮光部材は、(3)で述べた樹脂製遮光層の凹凸の上に黒色化層が形成されることを特徴とする。
図1(b)および
図2(b)に、黒色化層5を形成した本発明の黒色遮光部材10の断面模式図を示す。本発明の黒色遮光部材10の黒色化層5は薄く、樹脂製遮光層3上に微細層(微細粒)が不均一に存在した構造を有するものと考えられる。そして、このような構成の黒色化層表面において生じる(黒色)光の乱反射により、本発明の黒色遮光部材では、優れた低光沢性による反射防止効果および黒色度を有するものと推察される。
すなわち、本発明は、凹凸形状を有する樹脂製遮光層上に、薄い黒色化層を形成して、表面の算術平均粗さRaを0.25μm以上になるように調整することにより、優れた低光沢性による反射防止効果とL値が12以下の黒色度を実現できることを見出し完成されたものである。黒色化層の最大厚さは、Raより小さければ特に限定されないが、10nm~200nmであることが好ましく、50~150nmであることがより好ましく、さらには70~110nmであることが最も好ましい。
なお、黒色化層の最大厚さは、顕微鏡観察写真等から算定することができる。
【0033】
黒色化層は、上記条件を満たせば、無機系材料であっても有機系材料であってもよく、有機系材料と無機系材料の混合材料または複合材料であってもよい。無機系材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、コバルト、スズ、亜鉛、鉛、パラジウム、ルテニウム、ネオジウム、サマリウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、ガリウム、ビスマスおよびこれらの合金等の金属、酸化アルミニウム、酸化ケイ素(二酸化ケイ素等)、酸化チタン(一酸化チタン、五酸化チタン、二酸化チタン等)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化クロム(Cr2O3等)、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化ニオブ(五酸化ニオブ等)、酸化タンタル(五酸化タンタル等)、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物およびこれらの複合物、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化セリウム、フッ化ランタン、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化ネオジウム、フッ化サマリウム、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム等のフッ化物、窒化チタン、窒化クロム、炭窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化炭素、窒化ホウ素炭素等の窒化物、炭素(アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト等)、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン等の炭化物が挙げられる。
また、有機系材料としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等のサブミクロン粒子が挙げられる。さらに、上記金属酸化物と有機分子が複合化した有機無機ハイブリッド材料(有機無機ナノ複合材料)を用いることもできる。
【0034】
黒色化層の形成方法については、特に限定されないが、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着(CVD)法等のドライ法(乾式法)ならびにゾル-ゲル法を用いた塗布法、および上記黒色化層の材料をゾル溶液や、溶媒およびバインダー成分に分散・混合した分散液を塗布する塗布法等のウエット法(湿式法)が用いられる。
なかでも、より優れた黒色化効果が得られることからドライ法が好ましい。ドライ法により黒色化層を形成する過程では、ナノメータレベルの粒子が遮光層の凹凸形状の凸部、凹部および傾斜面に付着し、さらに複雑で、不均一な凹凸形状が形成されるものと考えられる。このような表面形状を有する遮光部材では、入射光は黒色化層表面で複雑に反射しながら吸収されるため、より優れた低光沢性による反射防止効果および黒色度が実現されると推察される。
また、ドライ法では、ウエット法と異なり、凹部に塗布液が溜まることに起因する表面粗さの低下が生じない点からも好ましい。さらに、溶媒を用いないことから環境への悪影響が少なく、設備も比較的小さくて済む点でも好ましい。
ドライ法のなかでも遮光層との密着性や耐擦傷性、厚さの調整しやすさ等に優れている点で、スパッタリング法が好ましい。
【0035】
一方、ウエット法は、経済性、作業性および歩留まり等に優れているため、費用対効果の観点から、好ましく用いられる。ウエット法においては、ゾル溶液や分散液が遮光層の凹凸形状の凸部、凹部および傾斜面に塗布され、乾燥する過程で、溶媒が蒸発する際に下から上への対流が生じるため、凹凸を有する遮光層表面に、さらに複雑で、不均一な凹凸形状が形成されるものと考えられる。このような表面形状を有する遮光部材では、入射光は黒色化層表面で複雑に反射しながら吸収されるため、より優れた低光沢性による反射防止効果および黒色度が実現されると推察される。
黒色化層の材料や形成方法、層の厚さ等は、遮光部材に求められる特性やコスト等を考慮して、適宜設定することができる。
【実施例】
【0036】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、特に記載がない場合には、「%」および「部」は質量%および質量部を示す。
【0037】
〈黒色遮光部材の構成〉
(1)基材フィルム
(1-1)ポリイミドフィルム:カプトン50MBC(厚さ12μm)、東レ・デュポン社製
(1-2)銅箔フィルム:NC-WS(厚さ12μm)、古河電工社製
(1-3)ポリエチレンテレフタレートフィルム:ルミラーX30(厚さ50μm、東レ株式会社製)の両面をサンドブラスト加工して、表面に凹凸を形成したフィルム。
(2)遮光層
(a)樹脂
(a1)アクリル樹脂:アクリディックA814、DIC株式会社製
(b)硬化剤
(b1)TDI系ポリイソシアネート:コロネートL、東ソー株式会社製
(c)着色・導電剤
(c1)カーボンブラック;NX-592ブラック、大日精化工業株式会社製
(d)マット剤
(d1)アクリルフィラー:MX-200(平均粒径:2μm)、綜研化学株式会社製
(d2)アクリルフィラー:MX-300(平均粒径:3μm)、綜研化学株式会社製
(d3)アクリルフィラー:MX-500(平均粒径:5μm)、綜研化学株式会社製
【0038】
(3)黒色化層
(3-1)スパッタリング法による形成
芝浦エレテック株式会社製スパッタリング装置(型式:CFS-4ES)を用いて、フッ化マグネシウム(MgF2)をターゲットとし、アルゴン中でスパッタリング法によりフッ化マグネシウム層を形成した。ここで、到達圧力は、3×10-3Pa、スパッタ圧力は、7.6×10-3Pa、Ar流量は、11sccmとした。なお、予め平坦な基板上に所定の条件(200W)でフッ化マグネシウム層を形成し、そのときのスパッタ時間と層の厚さとの関係を求めた。層の厚さがそれぞれ80nm,100nmおよび120nmとなる条件で形成したフッ化マグネシウムのスパッタ形成膜をそれぞれ薄膜、中膜、厚膜とする。
【0039】
(3-2)分散液の塗布による形成
(3-2-1)バインダー成分:ポリエステル樹脂
フッ化マグネシウム粒子分散液(9076MF、一次粒子径39nm、固形分26%:株式会社トクシキ製)1部と、ポリエステル樹脂(バイロン200:東洋紡社製))の濃度が10質量%となるようにメチルエチルケトンに溶解した樹脂液2部、およびメチルエチルケトン87部を混合して塗布液を調製した。得られた塗布液を、バーコート法により塗布し、加熱乾燥して厚さ約100nmの黒色化層を形成した。
(3-2-2)バインダー成分:二酸化ケイ素
(3-2-1)で用いたフッ化マグネシウム粒子分散液1部と、シリカゾル液(コルコートN-103X (固形分2%)、コルコート社製)をn-ブタノールで20%に希釈した液10部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル90部を混合して塗布液を調製した。得られた塗布液を、バーコート法により塗布し、加熱乾燥して厚さ約100nmの黒色化層を形成した。
(3-3)ゾル-ゲル法による形成
シリカゾル液(コルコートN-103X (固形分2%)、コルコート社製)25部と、水:イソプロピルアルコールの質量比が1:2の溶媒75部を混合して塗布液を調製した。得られた塗布液を、バーコート法により塗布し、加熱乾燥して厚さ約100nmの黒色化層を形成した。
【0040】
(実施例1~12、比較例1~9)
表1~3に示す配合比(質量)で上記(2)遮光層の各成分を溶媒中に入れ、攪拌混合して塗布液を得た。ここで、溶媒としては、メチルエチルケトンとトルエンを用いた。
表1~3に示す基材フィルムを用いて、一方の面に表1~3の組成の塗布液を塗布した後、100℃で2分乾燥して、遮光層を形成した。
得られた遮光層上に、表1~3に示す黒色化層を上記(3)で述べた方法で形成した。遮光層の平均膜厚、黒色化層の平均膜厚、遮光部材のRa、60°の入射角度の入射光に対する光沢度およびL値を測定した結果を表1~3に示す。遮光部材の算術平均粗さRaは、JIS B0601:2001に基づいて算定し、L値は、JIS Z8781-4に基づいて算定した。また、60°の入射角度の入射光に対する光沢度の測定はJIS Z8741に従い、入射角60°に対する鏡面光沢度を測定した。
また、遮光層の平均膜厚は、JIS K7130に基づいて測定した。マット剤を含有する遮光層の厚さは、フィルム基材表面から遮光層のマット剤により突出していないマトリックス部までの高さとした。一方、マット剤を含有しない遮光層の厚さは、フィルム基材表面のうねりを消去した遮光層自体の厚さとした。
表中に記載のスパッタリング法によるフッ化マグネシウム黒色化層の平均膜厚は、実測値ではなく、遮光層に形成するときと同条件で平坦基板にスパッタリング法でフッ化マグネシウム層を形成したときの平均膜厚である。また、表3に記載の分散液塗布法およびゾルーゲル法による黒色化層の平均膜厚は、スパッタリング法による黒色化層の形成と同様に実測値ではなく、遮光層に形成するときと同条件で平坦基板に分散液塗布法およびゾルーゲル法によってそれぞれの黒色化層を形成したときの平均膜厚である。
【0041】
表1に示すように、フラットなポリイミドフィルムである参考例1では、Raは、0.2μmと低く、入射角60°での光沢度は35.4%で、L値は28.3であり、低光沢性による反射防止効果および黒色度ともに低いことわかった。これに対して、マット剤を含有する遮光層を設けた比較例1では、Raが0.48μmに上昇し、表面が粗面化され、低光沢性による反射防止効果および黒色度とも改善されたが、黒色度は十分とはいえなかった。
一方、遮光層上にさらに、フッ化マグネシウムのスパッタリング形成膜である黒色化層を設けた実施例1~3では、入射角60°での光沢度およびL値とも大幅に低下して、優れた低光沢性による光反射防止効果と黒色度を有することが確認された。特に、中膜および薄膜の黒色化層を形成した実施例1および実施例2の黒色遮光部材は、黒色化層を有さない比較例1の黒色遮光部材と比べると、Raは0.48μmから、それぞれ1.28μmおよび1.32μmと大幅に上昇した。また、厚膜の黒色化層を形成した実施例3の黒色遮光部材のRaは0.49μmであり、実施例1、2と比べるとRaの上昇率が低かった。このことから、黒色化層の膜厚は、厚くなりすぎず、適切な範囲とすることにより、さらに効果的に黒色遮光部材表面の凹凸がより複雑な形状となり、優れた低光沢性による反射防止効果とより高い黒色性を有する遮光部材を得られることがわかった。
なお、フラットなポリイミドフィルムに中膜の黒色化層の形成した参考例2では、入射角60°での光沢度およびL値とも参考例1とほとんど変化しないことがわかった。このことから、凹凸形状を有する遮光層表面に黒色化層を形成した本発明の効果が確認された。
【0042】
【0043】
表2には、粒径の異なるマット剤を用いて、表面粗さを変えた遮光層の表面に、中膜の黒色化層を形成したときの遮光部材表面のRa、入射角60°での光沢度とL値を比較した結果を示す。比較例1、4および5に示されるように、遮光層に添加するマット剤の粒径を変えることにより、表面のRaが変化するが、いずれの比較例においてもL値が20を超え、十分な黒色度が得られないことがわかった。これに対して、スパッタリング法で、中膜のフッ化マグネシウムの黒色化層を形成した実施例1、4および5では、いずれも入射角60°における光沢度およびL値とも大幅に低下し、優れた低光沢性による反射防止効果および高い黒色性を有することが確認された。
【0044】
【0045】
表3の実施例6では、基材フィルムとして、銅箔フィルムを用いた他は、実施例1と同様に遮光層および黒色化層を形成した試料を評価した結果を示す。実施例6では、黒色化層を形成していない比較例6と比べて、Raが増加し、入射角60°での光沢度およびL値とも大幅に低下した。このことから、基材フィルムとして、金属製基材フィルムを用いても本発明の効果が得られることが確認された。
【0046】
【0047】
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材フィルムとして用い、ブラスト処理した表面に直接黒色化層を形成した実施例7、ブラスト処理した表面にマット剤を含有する遮光層を形成後、黒色化層を形成した実施例8およびブラスト処理した表面にマット剤を含有しない遮光層を形成後、黒色化層を形成した実施例9についても同様に評価を行った。いずれの遮光部材も黒色化層を形成していない比較例7、8および9より、Raが増加し、入射角60°での光沢度およびL値とも大幅に低下した。このことから、遮光層の凹凸形成方法にかかわらず本発明の効果が得られることがわかった。
【0048】
実施例10では、黒色化層をスパッタリング層に代えて、分散液塗布法で形成したフッ化マグネシウム/ポリエステル樹脂層とした他は、実施例1と同様に黒色遮光部材を作製して評価した。実施例10でも比較例1に比べ、Raが増加し、入射角60°における光沢度が低下し、L値が大幅に減少した。このことから、ウエット法で形成した黒色化層でも本発明の効果が得られることが確認された。
また、実施例11では、黒色化層をスパッタリング層に代えて、フッ化マグネシウム/酸化ケイ素層とし、実施例12では、酸化ケイ素層とした他は、実施例1と同様に黒色遮光部材を作製して評価した。実施例11および実施例12のいずれでも比較例1に比べ、Raが増加し、入射角60°における光沢度が低下し、L値が大幅に減少した。このことから、黒色化層の形成方法や材料にかかわらず、樹脂製遮光層上に薄くて不均一な黒色化層を形成した構成では、本発明の効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
1 遮光部材(黒色化層形成前)
10 遮光部材(黒色化層形成後)
2 基材フィルム
3 遮光層
31 マット剤
32 マトリックス部
4 遮光層(樹脂製薄膜)
5 黒色化層