(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】細胞生存率を維持するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/00 20060101AFI20221012BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20221012BHJP
【FI】
C12N5/00
C12N5/071
(21)【出願番号】P 2019517763
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(86)【国際出願番号】 CN2017105252
(87)【国際公開番号】W WO2018064975
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-07-20
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519108268
【氏名又は名称】トランスウェル バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤ-シュアン
(72)【発明者】
【氏名】リン,チェン-ユイ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,チー-ユアン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08420307(US,B1)
【文献】特表2000-506024(JP,A)
【文献】特開平06-234659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0130756(US,A1)
【文献】特開2002-034552(JP,A)
【文献】特開2012-235728(JP,A)
【文献】特開2007-289041(JP,A)
【文献】WANG, Xiaohong et al. ,Cryobiology,2010年,Vol. 61,pp. 345-351
【文献】WANG, Xiaohong et al. ,Journal of bioactive and compatible polymers,2010年11月,Vol. 25,pp. 634-653
【文献】SANTOS, Kamilla M. et al. ,CryoLetters,2015年,Vol. 36, No. 2,pp. 68-73
【文献】WU, Shuai Shuai et al. ,CryoLetters,2013年,Vol. 34, No. 5,pp. 497-507
【文献】KATSEN-GLOBA, Alisa et al. ,Journal of Materials Science: Materials in Medicine,2014年,Vol. 25,pp. 857-871
【文献】LAI, Jui-Yang,International Journal of Molecular Sciences,2009年,Vol. 10,pp. 3442-3456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞生存率を維持するための方法であって、
1つまたは複数の細胞を含む解凍された凍結保存組成物を含む細胞懸濁液を、細胞安定化培地と混合して混合物を形成するステップを含み、
ここで前記細胞安定化培地は、
前記細胞懸濁液と混合するときに液体状態の熱可逆性ヒドロゲルであり、前記混合物の総重量に基づいて、0.8重量%~15.7重量%のゼラチンを含み、
前記細胞安定化培地対前記細胞懸濁液の体積比が3.0~12.5であ
り、
少なくとも8時間までの間、前記細胞が少なくとも70%の解凍後生存率を有する、方法。
【請求項2】
前記混合物が、2.4重量%~7重量%のゼラチンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が、9.3重量%~14.6重量%のゼラチンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞安定化培地対前記細胞懸濁液の体積比が、6.25~12.5の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞安定化培地対前記細胞懸濁液の体積比が、5~10の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、7.5×10
5細胞/ml~7.5×10
7細胞/mlの範囲の濃度で前記細胞懸濁液中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記凍結保存状態が、-70°C~-200°Cの範囲の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、少なくとも80%の解凍後生存率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記凍結保存組成物が、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および/またはポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記
混合ステップの前に、25°C~37°Cの範囲の温度で、細胞安定化培地を配置することをさらに含む、請求項1に記載の方法
【請求項11】
前記ゼラチンが、100キロダルトン(kD)~200kDの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ゼラチンが変性コラーゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞安定化培地が、190~325の範囲のブルーム値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、ヒト、ブタ、イヌ、ウマまたはウシの細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、腫瘍細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が、線維芽細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、10
5細胞/ml~10
7細胞/mlの範囲の濃度で混合物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞安定化培地は、アミノ酸、サイトカイン、脂質、成長因子、抗生物質、抗真菌剤、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国仮特許出願第62/404,170号(2016年10月4日出願)および第62/405,447号(2016年10月7日出願)の優先権を主張する。この出願はまた、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2017年10月4日出願の「Compositions and Methods for Cell Cryopreservation」と題された国際出願PCT/CN2017にも関連する。
【0002】
本開示は、概ねインビトロで生体材の生存率を維持する分野に関する。特に、本開示は、それらが凍結保存後に解凍されたときの、細胞および組織などの生体材の生存率を維持するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
0℃以下の温度での凍結保存手法は、動物(ヒトの細胞および組織を含める)や植物の細胞や組織などの生体材の長期保存に日常的に用いられている。Thompson et al.、Cryopreservation and Thawing of Mammalian Cells、December 2014、eLS、John Wiley&Sons、Ltd:Chichester.DOI:10.1002/9780470015902.a0002561.pub2。哺乳動物細胞を有効に長期貯蔵することは、そのような細胞を臨床ツールおよび研究ツールとして首尾よく適用するために決定的に重要である。例えば、幹細胞は、細胞移植、組織工学、および再生医療に用いられることがある。凍結保存された卵母細胞、精子、および胚は、生殖補助技術に用いられることがある。移植医療では、生体組織、例えば皮膚、角膜、膵島や、心臓弁などが凍結保存される必要がある。
【0004】
細胞は、数ヶ月または数年間、氷点下の温度(例えば、-70℃未満)で保存することができる。しかしながら、細胞はそれらが解凍されるときおよびその後に安定ではない。細胞の生存率によって主に示される安定性は、解凍プロセス中およびその後に細胞が接触する環境によって変化する。解凍速度、浸透圧ストレス、および凍結保護剤の毒性は解凍後に細胞を損傷することが示されている。Thompson et al.、Cryopreservation and Thawing of Mammalian Cells、December 2014、eLS、John Wiley&Sons、Ltd:Chichester.DOI:10.1002/9780470015902.a0002561.pub2。細胞が(例えば、細胞療法、輸血、または骨髄移植などを通じて)対象に注入される場合、死んだまたは損傷した細胞を再注入するのは無駄になる可能性があるため、解凍後に高い細胞生存率を得ることが非常に重要である。同様に、細胞を再培養しなければならない場合、細胞生存率が高いことも同様に重要である。
【0005】
それらが極低温状態から代謝的に活性な状態に移行するときに細胞生存率をどのように維持するかは困難な課題である。したがって、解凍後に細胞生存率を維持するための改良された培地および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、約5重量%~約15.7重量%、約5重量%~約7.5重量%、約10重量%~約15.7重量%、約0.8重量%~約15.7重量%、約2.4重量%~約7重量%、または約9.3重量%~約14.6重量%のゼラチン(細胞安定化培地の総重量に基づいて)を含む細胞安定化培地を提供する。
【0007】
生体材(例えば、1つまたは複数の細胞、組織、器官、および/またはウイルス粒子)および約0.8重量%~約15.7重量%、約2.4重量%~約7重量%、または約9.3重量%~約14.6重量%のゼラチンを含む組成物もまた本開示に包含される。
【0008】
ある実施形態では、生体材(例えば、1つまたは複数の細胞、組織、器官、および/またはウイルス粒子)は、凍結保存状態から解凍された。ある実施形態では、細胞は少なくとも70%、または少なくとも80%の解凍後生存率を有する。
【0009】
本開示は、生体材の生存率(例えば、細胞生存率)を維持するための方法を提供し、この方法は、生体材(例えば、1つまたは複数の細胞、組織、器官、および/またはウイルス粒子)を混合するステップを含み、細胞安定化培地は混合物(または細胞安定化培地と生体材(例えば、1つまたは複数の細胞、組織、器官、および/またはウイルス粒子)との組み合わせを形成する)を形成する。
【0010】
本開示は、細胞生存率を維持するための方法を提供し、この方法は、1つまたは複数の細胞を細胞安定化培地と混合して混合物(または細胞安定化培地と生体材(例えば、1つまたは複数の細胞、組織、器官、および/またはウイルス粒子)の組み合わせ)を形成するステップを含み、ここで混合物(または組み合わせ)は、約0.8重量%~約15.7重量%、約2.4重量%~約7重量%、または約9.3重量%~約14.6重量%のゼラチンを含む。
【0011】
ある実施形態では、1つまたは複数の細胞は混合ステップの前に細胞懸濁液中にある。
【0012】
ある実施形態では、混合ステップについて、細胞懸濁液に対する細胞安定化培地の体積比は約6.25~約12.5、または約5~約10の範囲である。
【0013】
ある実施形態では、細胞は、約7.5×105細胞/ml~約7.5×107細胞/mlの範囲の濃度で細胞懸濁液中に存在する。
【0014】
ある実施形態では、方法は、混合ステップの前に約25°C~約37°Cの範囲の温度で細胞安定化培地を配置することをさらに含む。
【0015】
ある実施形態では、混合ステップの前に、1つまたは複数の細胞は、凍結保存状態から解凍された凍結保存組成物中にある。ある実施形態では、凍結保存状態は、約-70°C~-200°Cの範囲の温度にある。
【0016】
ある実施形態では、細胞は少なくとも70%、または少なくとも80%の解凍後生存率を有する。
【0017】
ある実施形態では、凍結保存組成物は、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および/またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0018】
ある実施形態では、混合ステップの後に、細胞は、約105細胞/ml~約107細胞/mlの範囲の濃度で混合物中に存在する。
【0019】
ある実施形態では、ゼラチンは、約100キロダルトン(kD)~約200kDの範囲の重量平均分子量(または分子量、または平均分子量)を有する。ある実施形態では、ゼラチンは変性コラーゲンを含む。
【0020】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、約190~約325の範囲のブルーム値を有する熱可逆性ヒドロゲルである。
【0021】
ある実施形態では、細胞が哺乳動物細胞である。ある実施形態では、細胞は、ヒト、ブタ、イヌ、ウマまたはウシ細胞である。ある実施形態では、細胞は腫瘍細胞を含む。ある実施形態では、細胞は線維芽細胞を含む。ある実施形態では、細胞は幹細胞を含む。
【0022】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、アミノ酸、サイトカイン、脂質、成長因子、抗生物質、抗真菌剤、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0023】
本開示は、本組成物または本細胞安定化培地を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は解凍後の細胞生存率に対するゼラチン濃度およびインキュベーション温度と時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にグリセロールベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。混合物を2時間、25℃でインキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【
図2】
図2は解凍後の細胞生存率に対するゼラチン濃度およびインキュベーション温度と時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にグリセロールベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。混合物を25℃で4時間インキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【
図3】
図3は解凍後の細胞生存率に対するゼラチン濃度およびインキュベーション温度と時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にグリセロールベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。対照試料では、解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とDMEMを混合した。混合物を30℃で2時間インキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【
図4】
図4は解凍後の細胞生存率に対するゼラチン濃度およびインキュベーション温度と時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にグリセロールベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。対照試料では、解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とDMEMを混合した。混合物を30℃で4時間インキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【
図5】
図5は解凍後の細胞生存率に対するゼラチン濃度およびインキュベーション温度と時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にグリセロールベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。混合物を27℃で2時間インキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【
図6】
図6は解凍後の細胞生存率に対するゼラチン濃度およびインキュベーション温度と時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にグリセロールベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。対照試料では、解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とDMEMを混合した。混合物を2時間、37℃でインキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【
図7】
図7は解凍後の細胞生存率に対するゼラチン濃度およびインキュベーション温度と時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にグリセロールベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。対照試料では、解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とDMEMを混合した。混合物を37℃で4時間インキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【
図8】
図8は解凍後の細胞生存率に対するゼラチン濃度およびインキュベーション時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にグリセロールベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。対照試料では、解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とDMEMを混合した。混合物を37℃でインキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【
図9】
図9は解凍後の細胞生存率に対するゼラチンおよびインキュベーション時間の影響を示すグラフである。実験では、細胞を最初にDMSOベースの凍結溶液中で凍結した。解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)とゼラチンを含む細胞安定化培地を混合した。対照試料では、解凍した細胞懸濁液(凍結溶液中)と、DMEMまたは10%FBS/DMEMのいずれかとを混合した。混合物を25℃でインキュベートした後、解凍後の細胞生存率をアッセイした。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、例えばゼラチンを含む細胞安定化培地を提供する。細胞安定化培地は、例えば、凍結保存後の生体材の解凍後に、細胞生存率を維持するのに役立つ。本細胞安定化培地と混合することによって、細胞の生存率を望ましい期間維持することができる。
【0026】
次いで、生体材(例えば、細胞)は、例えば、細胞ベースの治療法、生殖補助技術、または化学療法もしくは放射線療法を受けている患者のために、様々な研究および臨床設定で使用することができる。一実施形態では、生体材を対象に投与することができる。
【0027】
ある実施形態では、生体材(例えば、細胞、組織、器官、またはウイルス粒子)は、凍結保存から(凍結保存状態から)解凍される(または解凍されている)。ある実施形態では、生体材は凍結保存されている。ある実施形態では、細胞安定化培地と混合されている間、生体材は、凍結保存から解凍されるか、または凍結保存から解凍される過程にある。ある実施形態では、本細胞安定化培地と組み合わせた/混合した後、細胞は少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の解凍後生存率を有する。
【0028】
ある実施形態では、生体材(例えば、細胞、組織、器官、またはウイルス粒子)が凍結保存から解凍される(または解凍された)場合、生体材は1つまたは複数の浸透性凍結保護剤および/または1つまたは複数の非浸透性凍結保護剤を含む凍結保存組成物中にある。浸透性凍結保護剤の非限定的な例としては、グリセロール、DMSO、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、およびプロピレングリコール(1,2-プロパンジオール、プロパン-1,2-ジオール)が挙げられる。非浸透性の凍結保護剤の非限定的な例としては、糖類(例えば、スクロース、トレハロース、マルトース)、糖、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプン)、タンパク質(例えば、血清アルブミンのようなアルブミン)、パーコール、フィコール、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、血清、血漿および他の高分子のような、高分子量分子を含む。ある実施形態では、凍結保存組成物は、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および/またはポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の凍結保護剤を含む。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「凍結保存状態」は、凍結保存温度にある状態を意味する。
【0030】
特定の実施形態では、凍結保存温度は、約0oC以下、約-20oC以下、約-50°C以下、約-60°C以下、約-70°C以下、約-80°C以下、約-90°C以下、約-100°C以下、約-110°C以下、約-120°C以下、約-135°C以下、約-196°C以下、約-70~約-200°Cの温度を含むか、または液体窒素中である。
【0031】
ある実施形態では、生体材(例えば、細胞、組織、器官、またはウイルス粒子)は、細胞安定化培地と組み合わせる/混合される前は低体温保存状態にある。ある実施形態では、生体材(細胞、組織、器官)は、細胞安定化培地と組み合わせる/混合する前に凍結乾燥状態にあった。
【0032】
ある実施形態では、細胞は細胞安定化培地と組み合わせる/混合される前に細胞培養下にある。細胞は、サブコンフルエント、指数増殖期、コンフルエント、またはコンフルエント後に採取することができる。
【0033】
ある実施形態では、細胞安定化培地と組み合わせる/混合する前に、細胞を被験体(例えば、患者)から採取する。
【0034】
ある実施形態では、本細胞安定化培地と組み合わせた/混合した後、細胞は少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の生存率を有する。
【0035】
ある実施形態では、細胞は腫瘍細胞を含む。ある実施形態では、細胞は線維芽細胞を含む。ある実施形態では、細胞は幹細胞を含む。
【0036】
ある実施形態では、細胞は、ヒト、ブタ、イヌ、ウマまたはウシ細胞を含むが、これらに限定されない、哺乳動物細胞を含む。
【0037】
ある実施形態では、本方法は、本細胞安定化培地で処理された生体材を被験体(例えば、患者)に投与するステップをさらに含み得る。
【0038】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、(細胞安定化培地の総重量に基づいて)約5重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む。ある実施形態では、細胞安定化培地は、細胞安定化培地の総重量に基づいて、約2重量%~約20重量%、約3重量%~約18重量%、約4重量%~約17重量%、約5重量%~約16重量%、約5重量%~約15.7重量%、約5重量%~約7.5重量%、約10重量%~約15.7重量%、約5重量%~約6重量%、約6重量%~約7.5重量%、約7.5重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%、約6重量%~約7.5重量%、約6重量%~約10重量%、約6重量%~約15.7重量%、約7.5重量%~約10重量%、約7.5重量%~約15.7重量%、約5重量%、約6重量%、約7.5重量%、約10重量%、または約15.7重量%のゼラチンを含む。
【0039】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、約5重量%~約15.7重量%のゼラチン、および溶媒(例えば、DMEM、水、緩衝液、食塩水などの培養液)を含む。ある実施形態では、細胞安定化培地は、ゼラチンの濃度が約5重量%~約15.7重量%の範囲である、ゼラチン水溶液を含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)。
【0040】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、約5重量%~約15.7重量%のゼラチン、および緩衝系(例えば、生理的緩衝剤)を含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)。ある実施形態では、細胞安定化培地は、約5重量%~約15.7重量%のゼラチン、および塩溶液、および/または任意の生理的溶液を含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)。
【0041】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、約5重量%~約15.7重量%のゼラチン、および培養液(例えば、細胞培養液)を含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)。
【0042】
ある実施形態では、本細胞安定化培地では、ゼラチンは液体組成物と混合される。ある実施形態では、細胞安定化培地は、約5重量%~約15.7重量%のゼラチン、および液体組成物を含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)。液体組成物の非限定的な例には、水、培養液、培養液の混合物、緩衝系(例えば、生理学的緩衝液)、塩溶液、および/または任意の生理学的溶液が挙げられる。ある実施形態では、液体組成物は、補助剤、添加剤、追加量のいくつかの培地成分などをさらに含む。
【0043】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、2つの構成要素を含み(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)、第1の構成要素は、約5重量%~約15.7重量%の範囲の濃度で細胞安定化培地に存在するゼラチンであり、第2の構成要素は、食塩水(例えば、等張食塩水)、緩衝液系(例えば、生理的緩衝液)、水、および/または培養液(例えば、細胞培養液)である。
【0044】
本開示は、生体材の生存率(例えば、細胞生存率)を維持するための方法を提供する。この方法は、生体材(例えば、細胞、組織、器官、またはウイルス粒子)を細胞安定化培地と混合して混合物を形成するステップを含み得る。ある実施形態では、細胞安定化培地は、細胞安定化培地の総重量に基づいて約5重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む。
【0045】
生体材(例えば、細胞、組織、器官、またはウイルス粒子)は、任意の適切な方法によって本細胞安定化培地と組み合わせることができる。ある実施形態では、細胞安定化培地は生体材に添加される。ある実施形態では、生体材は細胞安定化培地に添加される。一実施形態では、この方法は、細胞懸濁液中に細胞を用意すること、および細胞安定化培地を細胞懸濁液に、任意に混合しながら添加することを含む。別の実施形態では、この方法は、細胞懸濁液中に細胞を用意すること、および細胞懸濁液を細胞安定化培地に、任意に混合しながら添加することを含む。
【0046】
ある実施形態では、本細胞安定化培地と組み合わせる/混合する前に、細胞からそれらの培養液または保存培地を除去する(例えば、遠心分離し、収穫し、そして必要に応じて緩衝液中で洗浄する)。
【0047】
ある実施形態では、細胞と本細胞安定化培地とを混合する前に、細胞は細胞懸濁液中にある。ある実施形態では、細胞は培養液(例えば、細胞培養液)、緩衝液系(例えば、生理学的緩衝液)、塩溶液、および/または生理学的溶液に懸濁される。
【0048】
ある実施形態では、細胞は、約104細胞/ml~約109細胞/ml、約104細胞/ml~約108細胞/ml、約7.5×105細胞/ml~約7.5×107細胞/ml、約5×105細胞/ml~約5×107細胞/ml、約8×105細胞/ml~約7.5×107細胞/ml、約9×105細胞/ml~約7.5×107細胞/ml、約106細胞/ml~約7.5×107細胞/ml、約5×106細胞/ml~約7.5×107細胞/ml、約7.5×106細胞/ml~約7.5×107細胞/ml、約7.5×105細胞/ml~約7.5×106細胞/ml、約105細胞/ml~約107細胞/ml、約105細胞/ml~約108細胞/ml、約104細胞/ml~約107細胞/ml、約7.5×105細胞/ml、約7.5×106細胞/ml、または約7.5×107細胞/ml、約105細胞/ml、約106細胞/ml、または約107細胞/mlの範囲の濃度で細胞懸濁液中に存在する。ある実施形態では、細胞は、約7.5×105細胞/ml~約7.5×107細胞/mlの範囲の濃度で細胞懸濁液中に存在する。ある実施形態では、細胞は約7.5×106細胞/mlの濃度で細胞懸濁液中に存在する。細胞懸濁液中の細胞濃度は、109細胞/mlより高くても、または104細胞/mlより低くてもよい。
【0049】
ある実施形態では、細胞と本細胞安定化培地とを混合して混合物を形成する。
【0050】
本開示は、細胞生存率を維持するための方法を提供する。方法は、1つまたは複数の細胞を細胞安定化培地と混合して混合物を形成するステップを含み得る。ある実施形態では、混合物は、約0.8重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む。
【0051】
ある実施形態では、細胞の混合物(細胞懸濁液中にあってもなくてもよい)と本細胞安定化培地(または生体材と細胞安定化培地の組み合わせ)は、(混合物の総重量に基づいて)約0.8重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む。ある実施形態では、混合物(または組み合わせ)は、混合物(または組み合わせ)の総重量に基づいて、約0.5重量%~約20重量%、約0.6重量%~約18重量%、約0.7重量%~約17重量%、約0.8重量%~約16重量%、約0.8重量%~約15.7重量%、約0.5重量%~約15.7重量%、約1重量%~約17重量%、約2重量%~約14重量%、約3重量%~約9.5重量%、約4重量%~約14重量%、約2.4重量%~約7重量%、約9.3重量%~約14.6重量%、約5重量%~約7.5重量%、約10重量%~約15.7重量%、約5重量%~約6重量%、約6重量%~約7.5重量%、約7.5重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%、約6重量%~約7.5重量%、約6重量%~約10重量%、約6重量%~約15.7重量%、約7.5重量%~約10重量%、約7.5重量%~約15.7重量%、約5重量%、約6重量%、約7.5重量%、約10重量%、または約15.7重量%のゼラチンを含む。
【0052】
ある実施形態では、細胞と本細胞安定化培地を混合して混合物を形成し、ここで細胞は、約104細胞/ml~約109細胞/ml、約104細胞/ml~約108細胞/ml、約105細胞/ml~約107細胞/ml、約106細胞/m~約107細胞/ml、約105細胞/ml~約106細胞/ml、約105細胞~約108細胞/ml、約104細胞/ml~約107細胞/ml、約105細胞/ml、約106細胞/ml、または約107細胞/mlの範囲の濃度で混合物中に存在する。ある実施形態では、細胞は、約105細胞/ml~約107細胞/mlの範囲の濃度で混合物中に存在する。ある実施形態では、細胞は、約106細胞/mlの濃度で混合物中に存在する。混合物中の細胞の濃度は、109細胞/mlより高くても、または104細胞/mlより低くてもよい。
【0053】
ある実施形態では、混合ステップについて、細胞安定化培地対細胞懸濁液(または生体材を含有する組成物)の体積比は、約3~約25、約5~約20、約6~約18、約6~約15、約6.25~約12.5、約7~約12.5、約6.25~約15、約6.25~約20、約8~約12.5、約9~約12.5、約5~約12.5、約5~約10、約5~約8、約5、約6、約6.25、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約12.5、約13、約14、または約15の範囲である。
【0054】
ある実施形態では、生体材(細胞懸濁液中に存在してもしなくてもよい細胞など)と本細胞安定化培地との混合物中の細胞の生存率は、混合物が、約25°C、約27°C、約30°C、または約37°Cの温度で、約1時間~約8時間、約2時間~約8時間、約3時間~約8時間、約2時間~約4時間、約1時間~約6時間、約4時間~約8時間、約1時間~約5時間、約1時間~約4時間、約1時間~約3時間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約2時間~約3時間、約3時間~約5時間、約5分~約20分、約5分~約30分、約10分~約1時間、約20分~約1時間、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、または約8時間の範囲の時間にわたってインキュベートされた後、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、または約1%未満に低下する。
【0055】
ある実施形態では、生体材(細胞懸濁液中に存在してもしなくてもよい細胞など)と本細胞安定化培地との混合物中の細胞の生存率は、混合物が、約25°C、約27°C、約30°C、または約37°Cの温度で、約1時間~約8時間、約2時間~約8時間、約3時間~約8時間、約2時間~約4時間、約1時間~約6時間、約4時間~約8時間、約1時間~約5時間、約1時間~約4時間、約1時間~約3時間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約2時間~約3時間、約3時間~約5時間、約5分~約20分、約5分~約30分、約10分~約1時間、約20分~約1時間、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、または約8時間の範囲の時間にわたってインキュベートされた後、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%である。
【0056】
本開示は、生体材(例えば、1つまたは複数の細胞、組織、器官)および約0.8重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む組成物を提供する。ある実施形態では、組成物は、(組成物の総重量に基づいて)約0.8重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む。ある実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約20重量%、約0.6重量%~約18重量%、約0.7重量%~約17重量%、約0.8重量%~約16重量%、約0.8重量%~約15.7重量%、約0.5重量%~約15.7重量%、約1重量%~約17重量%、約2重量%~約14重量%、約3重量%~約9.5重量%、約4重量%~約14重量%、約2.4重量%~約7重量%、約9.3重量%~約14.6重量%、約5重量%~約7.5重量%、約10重量%~約15.7重量%、約5重量%~約6重量%、約6重量%~約7.5重量%、約7.5重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%、約6重量%~約7.5重量%、約6重量%~約10重量%、約6重量%~約15.7重量%、約7.5重量%~約10重量%、約7.5重量%~約15.7重量%、約5重量%、約6重量%、約7.5重量%、約10重量%、または約15.7重量%のゼラチンを含む。
【0057】
ある実施形態では、生体材(例えば、細胞、組織、器官、またはウイルス粒子)は、凍結保存(凍結保存状態)から解凍される(または解凍されている)。ある実施形態では、生体材は凍結保存されている。ある実施形態では、生体材は、凍結保存から解凍されるか、または凍結保存から解凍される過程にある。
【0058】
本細胞安定化培地は液体または固体であり得る。ある実施形態では、本細胞安定化培地は、乾燥形態(例えば粉末、錠剤、顆粒状、または他の適した物理的形態)または液体形態、例えば2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、15×、20×などのストック溶液などの濃縮組成物である。このストック溶液は、例えば培養液、生理的溶液、緩衝液、水などによって、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、15×、20×などに希釈することができ、細胞安定化培地の乾燥形態は、例えば培養液、生理的溶液、緩衝液、水などを添加することによって、液体形態に変換(例えば培養液、生理的溶液、緩衝液、水などに溶解)してもよい。
【0059】
ある実施形態では、本明細書で論じられる成分の濃度は、本細胞安定化培地のストック溶液中の成分の濃度である。ある実施形態では、本明細書で論じられる成分の濃度は、本細胞安定化培地の使用液中の成分の濃度である。
【0060】
本細胞安定化培地は溶液であり得る。ある実施形態では、細胞安定化培地は、本明細書で論じられている成分の水溶液である。
【0061】
ある実施形態では、本細胞安定化培地を調製するとき、本明細書で論じる成分(例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体、および/またはアルブミン)を平衡電解質溶液(例えば、食塩水、細胞培養液などの培養液)に溶解する。ある実施形態では、細胞安定化培地は、通常の浸透圧を維持するために適切な濃度の電解質(ナトリウム、カリウム、および/または塩化物イオンなど)を有する。一実施形態では、食塩水はリン酸緩衝食塩水(PBS)である。一実施形態では、食塩水は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸カリウム、塩化カルシウム、および重炭酸ナトリウムのうちの1つまたは複数を含む。一実施形態では、食塩水は等張食塩水(例えば、血漿または体液と等張)である。
【0062】
本細胞安定化培地は、緩衝系(例えば、生理学的緩衝液)を含み得る。本細胞安定化培地は、平衡塩類溶液または任意の生理学的溶液を含み得る。
【0063】
緩衝系の非限定的な例としては、リン酸緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS))、BES、TES、アセトアミドグリシン、グリシンアミド、グリシルグリシン、TRICINE、TALP、トリスエタノールアミン、ベロナール、およびHEPESが挙げられる。
【0064】
ある実施形態では、本細胞安定化培地中の緩衝液の濃度は、約1mM~約1000mM、約1mM~約200mM、約5mM~約200mM、または約5mM~50mMの範囲である。
【0065】
培養培地の非限定的な例としては、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、ノックアウトDMEM(KO-DMEM)、グラスゴー最小必須培地(G-MEM)、イーグル基礎培地(BME)、DMEM/ハムF12、アドバンストDMEM/ハムF12、イスコフ改変ダルベッコ培地、および最小必須培地(MEM)、ハムF-10、ハムF-12、培地199、RPMI1640培地、ならびにそれらの組み合わせおよび/またはそれらの改変物が挙げられる。一実施形態では、細胞培養物はDMEMである。
【0066】
ある実施形態では、本細胞安定化培地は、約6.0~約8.5、約6.5~約8、約6.9~約7.5、または約7.2~約7.4の範囲のpHを、室温または大気温(例えば25℃)で有する。
【0067】
ある実施形態では、細胞安定化培地は単位形態で包装される。一実施形態では、細胞安定化培地は10ml、50ml、100ml、500mlまたは1Lの体積で包装される。ある実施形態では、細胞安定化培地は1X、5X、10Xまたは20X溶液として包装される。
【0068】
本細胞安定化培地は、本明細書で論じられる成分を混合することによって固体形態で、または成分を水、緩衝液、溶液、培養液などに溶解することによって水溶液として得ることができる。
【0069】
本明細書で使用される場合、割合「%(w/v)」は重量対体積の割合(グラムにwおよびミリメートルにv)であり、割合「%(v/v)」は体積対体積の割合であり、割合「%(w/w)」または「重量%」は重量対重量の割合である。
【0070】
数値に対する「約」という用語は、記載されている数値の+10%を指す。言い換えれば、数値は、表示値の90%から表示値の110%の範囲内であり得る。
【0071】
ゼラチン
本細胞安定化培地は、ゼラチンおよび/またはゼラチン誘導体を含む場合がある。本明細書で使用されるとき、用語「ゼラチン」はゼラチンまたはゼラチン誘導体を指す場合がある。本細胞安定化培地には、任意のゼラチンまたはゼラチン誘導体を使用することができる。
【0072】
ある実施形態では、本細胞安定化培地中のゼラチンは、約15キロダルトン(kD)~約40kD、約25kD~約40kD、約25kD~約50kD、約25kD~約45kD、約40kD~約50kD、約10kD~約100kD、約40kD~約100kD、約50kDダルトン~約100kD、約100kD~約200kD、約100kD~約250kD、約80kD~約200kD、約150kD~約200kD、約100kD~約150kD、または約50kD~約200kDの範囲の分子量(または重量平均分子量または平均分子量)を有する。
【0073】
ある実施形態では、本細胞安定化培地中のゼラチンは、約4.5~約9、約5~約9、約5~約7、約6~約7、約5~約6、約7~約9、または約4.7~約5.2の範囲の等電点(pI)を有する。
【0074】
ある実施形態では、ゼラチンは哺乳動物組織に由来する。ある実施形態では、ゼラチンは動物コラーゲンから得られる。ある実施形態では、ゼラチンは、ウシ、チキン、ブタ、および魚などの動物の皮、骨、結合組織、腱、靭帯などを含むがこれらに限定されない原材料に由来する。一実施形態では、ゼラチンは、ウシ源、ブタ源、またはそれらの組み合わせのものである。ある実施形態では、ゼラチンは、ウシの骨およびブタの皮、ウシの皮、豚肉、ウシの皮、および/または魚の皮から供給される。一実施形態では、ゼラチンは皮由来ゼラチンまたは骨由来ゼラチンである。
【0075】
ある実施形態では、ゼラチンはコラーゲンの部分加水分解によって生成されるペプチドとタンパク質の混合物である。ある実施形態では、ゼラチンは加水分解形態のコラーゲンである。ある実施形態では、ゼラチンは変性コラーゲンの形態である。ある実施形態では、ゼラチンは変性コラーゲンを含む。
【0076】
ある実施形態では、ゼラチンはA型ゼラチンまたはB型ゼラチンであり得る。本明細書で使用するとき、A型ゼラチンは酸処理原料から得られたゼラチンであり、B型ゼラチンはアルカリ処理原料から得られたゼラチンである。
【0077】
ある実施形態では、ゼラチンを生産するために、コラーゲン加水分解を、化学的加水分解および/または熱加水分解によって実施する。一実施形態では、コラーゲンは(例えば、水中で)煮沸するかまたは(広範囲にわたって)加熱して、ゼラチンを生産する。
【0078】
ある実施形態では、ゼラチンを生産するために、コラーゲン加水分解を、酸加水分解、アルカリ加水分解、および/または酵素加水分解によって実施する。
【0079】
ある実施形態では、ゼラチンの生産過程は、3つの主な段階、すなわち前処理、主な抽出ステップ、ならびに精製処理および回収処理を含む。前処理は、原料を主要な抽出ステップのために準備し、最終的なゼラチン産物の生理化学的性質に負の作用を及ぼし得る不純物を除去する。主要な抽出ステップは、熱水または酸希釈溶液を用いて多段階抽出として行って、コラーゲンをゼラチンに加水分解してもよい。精製処理および回収処理は、水をゼラチン溶液から除去し、抽出されたゼラチンを配合し、ならびに/または乾燥、配合および摩砕された最終産物を得るために、濾過、清澄化、蒸発、滅菌、乾燥、ラッチング、摩砕、および/または篩い分けを含む。
【0080】
ある実施形態では、本細胞安定化培地は、限外濾過などの特別な調製技術によって従来のゼラチンから得られる分画ゼラチンを含む。ある実施形態では、分画ゼラチンは、ペプチド/ポリペプチドの選択された部分を除去することによって、またはペプチド/ポリペプチドの個々の画分の混合物によって得られる。
【0081】
ゼラチン誘導体は、これらに限定されないが、スクシニル化ゼラチン、チオール化ゼラチン、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、スクシニルゼラチン、オキシポリゼラチン、または尿素架橋ゼラチンを含む、化学修飾ゼラチンである。一実施形態では、スクシニル化ゼラチンは、コハク酸もしくはその塩、または無水コハク酸によって架橋されたゼラチンである。ある実施形態では、ゼラチン誘導体は、ゼラチンをコハク酸、シトラコン酸、イタコン酸、アコニット酸またはマレイン酸無水物などの無水物と反応させることによって得られる。米国特許第8,865,397号および第6,103,269号。
【0082】
ポリペプチド
本細胞安定化培地は、任意の適切なポリペプチドを含み得る。ある実施形態では、細胞安定化培地は、ポリペプチド成分と液体成分とを含む。
【0083】
本明細書で使用されるポリペプチドは、コラーゲン由来の成分(ゼラチンなど)などの任意の組織由来または合成的に生産されたポリペプチドを包含することを意図している。特定の実施形態では、ポリペプチドは、約50アミノ酸残基~約30,000アミノ酸残基、好ましくは約100アミノ酸残基~約20,000アミノ酸残基、より好ましくは約200アミノ酸残基~約10,000アミノ酸残基、さらにより好ましくは約300アミノ酸残基~約5,000アミノ酸残基、もっとも好ましくは約500アミノ酸残基~約2,000アミノ酸残基を含み得る(またはからなる)。
【0084】
ある実施形態では、ポリペプチドは、ゼラチン、アルブミン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0085】
ある実施形態では、ポリペプチドはゼラチンまたはゼラチン誘導体(例えば、スクシニル化ゼラチン)である。ある実施形態では、ポリペプチドは、ケラチン、デコリン、アグリカン、エラスチン、ラミニン、ナイドジェン、フィビュリン、フィブリリン、コラーゲン、分画ゼラチン、コラーゲン加水分解物、植物タンパク質、植物タンパク質加水分解物、エラスチン加水分解物、糖タンパク質(プロテオグリカンを含む)、およびそれらの混合物などの他のゼラチン様成分である。
【0086】
他の種類の組織由来のポリペプチドもまた使用され得る。例としては、動脈、声帯、胸膜、気管、気管支、肺胞中隔、靭帯、耳介軟骨または腹部筋膜からの組織抽出物、肝臓の網状ネットワーク、腎臓の基底膜、または神経系の神経鞘、クモ膜、硬膜または軟膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
ポリペプチドは、天然成分および/または合成成分を含み得る。天然成分の例としては、天然に存在するタンパク質およびポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、細胞安定化培地の総重量に基づいて、(本明細書で論じたように)約2重量%~約20重量%、約3重量%~約18重量%、約4重量%~約17重量%、約5重量%~約16重量%、約5重量%~約15.7重量%、約5重量%~約7.5重量%、約10重量%~約15.7重量%、約5重量%~約6重量%、約6重量%~約7.5重量%、約7.5重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%、約6重量%~約7.5重量%、約6重量%~約10重量%、約6重量%~約15.7重量%、約7.5重量%~約10重量%、約7.5重量%~約15.7重量%、約5重量%、約6重量%、約7.5重量%、約10重量%、または約15.7重量%の1つまたは複数のポリペプチドを含む。
【0089】
アルブミン
本細胞安定化培地には、任意のアルブミンまたはアルブミン誘導体を使用することができる。
【0090】
アルブミンの非限定的な例としては、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミンまたはHSA)、血漿アルブミン(例えば、ヒト血漿アルブミン)、ウシ血清アルブミン、および/または合成血清アルブミン、オボアルブミン、植物アルブミン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。アルブミンの非限定的な例としては、また、ウシ胎児血清が含まれる。
【0091】
アルブミンは、天然起源(例えば、天然供給源から精製された)または組換え起源(組換えアルブミン)のいずれであってもよい。一実施形態では、アルブミンは、ヒト由来の生体材から精製によって生成される。それは、血液から得られた血漿の分画のための従来の技術(コーンら、J.Am.Chem.Soc.68(1946)459pp)により、またはヒト胎盤からの抽出により、以下に記載の技術に従って得ることができる。J.Liautaud et al.(13th International IABS Conference、Budapest;A:"Purification of proteins.Development of biological standard",Karger(ed.),Bale,27(1973)107 pp)。一実施形態では、組換えアルブミンは真核生物宿主で産生される。
【0092】
一実施形態では、「アルブミン」という用語は、このタンパク質の多型から生じる、ヒトアルブミンの任意の天然バリアントを含む。
【0093】
ヒドロゲル
ある実施形態では、本細胞安定化培地はヒドロゲルである。ある実施形態では、本細胞安定化培地は、温度変化に応答して流動状態(液体状態)からゲル状態への遷移を受ける熱可逆性ヒドロゲルである。ある実施形態では、本細胞安定化培地は、相転移温度以上で自由流動性または液相にあり、相転移温度未満でゲル相(固相、非流動相)にある。米国特許第6,231,881号および第6,730,315号。
【0094】
ある実施形態では、本細胞安定化培地は、相転移温度を超える流体相(例えばゼラチン溶液)を有し、相転移温度以下のゲル相(例えばゼラチンヒドロゲル)を有する。ある実施形態では、液相とゲル相との間の変換は連続プロセスである。ある実施形態では、ゲル相では、細胞安定化培地のゲル化の程度が操作可能なヒドロゲルを提供する。ある実施形態では、相転移温度はまた、細胞安定化培地の粘度が細胞安定化培地が動作可能なヒドロゲルであることを保証する臨界温度であり得る。ある実施形態では、相転移温度は融点である。
【0095】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、約20°C~約45°C、約20°C~約40°C、約21°C~約39°C、約22°C~約38°C、約23°C~約37°C、約25°C~約37°C、約28°C~約37°C、約30°C~約37oC、約32°C~約37°C、約37°C超、または約37°Cの範囲の相転移温度を有する。
【0096】
ある実施形態では、その液相内の細胞安定化培地は、生体材(例えば、細胞、組織、器官、ウイルス粒子など)と組み合わせて/混合されて混合物を形成する。
【0097】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、約20°C~約45°C、約20°C~約40°C、約21°C~約39°C、約22°C~約38°C、約23°C~約37°C、約25°C~約37°C、約28°C~約37°C、約30°C~約37oC、約32°C~約37°C、約37°C超、または約37°Cの範囲の温度に配置されて、生体材(例えば、細胞、組織、器官、ウイルス粒子など)と混合して混合物を形成する前に、細胞安定化培地を液化する(または液体状態の細胞安定化培地を維持する)。
【0098】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、約5分~約1時間、約5分~約50分、約5分~約40分、約5分~約30分、約8分~約30分、約10分~約30分、約15分~約25分、約20分~約30分、または約10分~約20分の範囲のゲル化時間を有する。本明細書中で使用される場合、用語「ゲル化時間」とは、本細胞安定化培地がその流体相からそのゲル相に変換するのに必要な時間をいう。
【0099】
ある実施形態では、細胞安定化培地(細胞安定化培地のゲル相)は、約125~約225、約175~約225、約190~約225、約175~約325、約190~約325、約225~約325、少なくとも約175、少なくとも約190、少なくとも約225、約190、または約200の範囲のブルーム値を有する。
【0100】
その他の成分
ある実施形態では、細胞安定化培地は、糖類、アミノ酸、サイトカイン、脂質、成長因子、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど)、抗真菌剤、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、血清、アミノ酸類似体、アミノ酸誘導体、および二価陽イオンキレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩、タンパク質、塩、ホルムアミド、メトキシル化化合物、および/またはポリマー(例えばポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール)、またはそれらの組み合わせをさらに含む。ある実施形態では、細胞安定化培地は、グリシン、グリセロール、スクロース、グルコース、またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0101】
ある実施形態では、細胞安定化培地は、約300mg/L~約8,000mg/L、約500mg/L~約7,000mg/L、約1000mg/L~約6000mg/L、1000mg/L~約4500mg/L、約500mg/L~約2300mg/L、約1000mg/L、約4,500mg/L、約500mg/L、または約2,300mg/Lのグルコースを含む。
【0102】
糖類
糖類には、単糖類および二糖類などのオリゴ糖、多糖類などが含まれる。糖類には糖が含まれる。
【0103】
糖類の非限定的な例には、スクロース、ソルビトール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、トレハロース、マンノース、ラフィノース、スタキオース、デキストラン、キシロース、アラビノース、マンニトール、キシリトール、ミオイノシトール、ラクトース、マルトース、セロビオース、ラクチトール、マルチトール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリコーゲン、アミロース、アミロペクチン、イヌリン、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、グルコサミン、ガラクトサミン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。米国特許第6,673,607号および第7,094,601号。
【0104】
アミノ酸
本細胞安定化培地は、1つまたは複数のアミノ酸を含んでも含まなくてもよい。
【0105】
アミノ酸には、光学異性体、すなわちD-異性体とL-異性体の両方が含まれる。アミノ酸には、アルファ-アミノ酸、ならびにベータ-アミノ酸、ガンマ-アミノ酸、デルタ-アミノ酸、および非天然アミノ酸が含まれる。アミノ酸の非限定的な例としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。Cryobiology、41(4):257~279(2000)。
【0106】
アミノ酸誘導体は、本組成物および方法でも使用することができる。アミノ酸誘導体の非限定的な例には、アミノ酸塩およびアミノ酸溶媒和物が含まれる。アミノ酸塩の非限定的な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などのハロゲン酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩などの有機酸塩が挙げられる。アミノ酸溶媒和物の非限定的な例としては、水和物、アルコラート(例えば、メタノレート、エタノレート)、およびエテレート(例えば、ジエチルエーテラート)が挙げられる。
【0107】
ある実施形態では、本細胞安定化培地中のアミノ酸濃度は、0.01~10.0重量%、または0.1~1.0重量%である。
【0108】
ビタミン
他の実施形態では、細胞安定化培地は、1つまたは複数のビタミンをさらに含む。ビタミンの非限定的な例には、D-パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、ナイアシンアミド、ピリドキシンHCl、チアミンHCl、およびリボフラビンが含まれる。
【0109】
塩
ある実施形態では、本細胞安定化培地は、無機塩および/または有機塩を含む1つまたは複数の塩をさらに含む。無機塩の非限定的な例には、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびリン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、重炭酸カリウム、一リン酸カリウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0110】
ある実施形態では、細胞安定化培地または組成物は血清を含まない。ある実施形態では、細胞安定化培地または組成物は、直接的なヒトまたは動物由来の原材料、またはヒトまたは動物由来の物質を使用して生成された材料を含まない。
【0111】
細胞安定化培地または組成物は、ペプチド、他のタンパク質、糖アルコール、アミノサッカリド、糖タンパク質、およびアルコール、pH調整剤、保湿剤、防腐剤、粘度調整剤またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない他の任意成分を含み得る。米国特許第9,055,739号。
【0112】
解凍
ある実施形態では、生体材(細胞、組織、器官)は、本細胞安定化培地との混合の前または最中に、凍結保存(凍結保存状態)から解凍される(または解凍された)。
【0113】
生体材を保存するための適切な保存条件は、生体材を生存可能に維持する任意のそのような条件を含み得る。そのような条件は、約0oC以下、約-20oC以下、約-50°C以下、約-60°C以下、約-70°C以下、約-80°C以下、約-90°C以下、約-100°C以下、約-110°C以下、約-120°C以下、約-135°C以下、約-196°C以下の凍結保存温度を含み得るか、または液体窒素中である。低体温保存のため、温度は8°C~0°Cの間であり得る。凍結乾燥試料の場合には、材料が湿気から遠ざけてさえあれば、温度は0℃を超える任意の温度(例えば、室温、周囲温度、等)でも、または0°C未満の温度でもよい。
【0114】
生体材は、生体材が必要とされるまで、数日、数週間、数ヶ月または数年の期間、保存状態(例えば、凍結保存状態)にとどまることができる。必要に応じて、凍結保存された生体材は回収されそして解凍される。
【0115】
ある実施形態では、凍結保存組成物中の生体材は、約42°C以下、約10°C~約40°C、約20°C~約37°C、室温、または約37°Cの温度で、水浴中(例えば、水浴中にクライオチューブまたはクライオバイアルを配置することによって)で解凍される。
【0116】
一実施形態では、凍結保存組成物中の生体材は、約37°Cの水浴中で解凍される。必要に応じて、それは4°C、または氷上などのより低い温度に移されることになる。
【0117】
ある実施形態では、ステップアップ加熱速度(または温度ランプアップ加熱速度)を有する「ステップアップ」解凍プロセスが使用される。例えば、クライオバイアルは、例えば約37°Cの温度、または任意の他の適切な温度を有する水浴などの身体温度程度の温度に転送される前に、温度の上昇を伴う連続的保存環境に配置してもよい。
【0118】
ある実施形態では、凍結保存組成物中の凍結保存の生体材は、約5°C/分~約80°C/分、約10°C/分~約70°C/分、約10°C/分~約60°C/分、約10°C/分~約50°C/分、約10°C/分~約40°C/分、約10°C/分~約30°C/分、約10°C/分~約20°C/分、約20°C/分~約40°C/分、約20°C/分を超える、約25°C/分を超える、約30°C/分を超える、約35°C/分を超える、約40°C/分を超える、または約30°C/分の範囲の加温速度で解凍される。
【0119】
ある実施形態では、解凍後、本細胞安定化培地で処理する前または処理した後に、生体材を洗浄し、適切な培地に懸濁し、必要に応じて研究または臨床用途に処理する。
【0120】
ある実施形態では、解凍後および本細胞安定化培地で処理した後、細胞を再培養のために培養皿に移す。細胞は、研究または臨床応用に先立ち、適切な条件下で、約30分、約1時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約86時間、約110時間、約1週間、約2週間、または3週間以上培養することができる。米国特許公開第20170196221号。
【0121】
ある実施形態では、接着細胞または半接着細胞の蘇生は、解凍後および本細胞安定化培地での処理後直ちに再培養される。
【0122】
ある実施形態では、解凍後および本細胞安定化培地での処理後に、生体材は介在する培養ステップなしにインビボで使用される。
【0123】
ある実施形態では、解凍後および本細胞安定化培地での処理後に、細胞を流体または意図する用途に適した他の培地に再懸濁することができる。例えば、細胞は任意の浸透圧支持溶液に再懸濁することができる。ある実施形態では、細胞は、本明細書に記載の緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液に再懸濁することができる。好ましくは、インビボでの好都合な送達のための組成物を提供する任意の生理学的に適合性のある材料を用いて、細胞を再懸濁することができる。
【0124】
細胞の生存率
本組成物および方法は細胞生存率を維持する。
【0125】
本明細書中で使用される場合、用語「生存率」とは、生存可能な生体材(例えば、DNAの存在に基づく細胞および/または無傷の細胞膜系、または生存可能なウイルスなど)の百分率を指す。ある実施形態では、生存可能な生体材は、代謝的に活性であるかまたはそれらが保存状態から解放された後に代謝的に活性になると考えられる、いくつかの生存細胞または細胞画分を含む生体材を指す。
【0126】
ある実施形態では、生体材(例えば、細胞またはウイルス)の生存率は、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%である。
【0127】
ある実施形態では、本組成物および方法は、細胞が限られた量の、または最小限の壊死およびアポトーシスを示すことを確実にする。ある実施形態では、壊死および/またはアポトーシスは、細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満で観察される。
【0128】
生存率は、当技術分野では公知の任意の方法によって測定することができる。ある実施形態では、生存率は、トリパンブルー内部移行試験を使用するか、またはヨウ化プロピジウムの取り込みを測定することによって測定される。ある実施形態では、生存率は、細胞が効率的に付着する能力をアッセイすることによって測定される(例えば付着アッセイ)。ある実施形態では、増殖アッセイを使用して、凍結保存後に付着細胞が予想通りに増殖できるかどうかを判定することができる。付着および増殖効率は、凍結保存を受けていない対照細胞と比較することができる。
【0129】
細胞の生存率および機能を決定するための当該分野で公知の種々の試験がある。ある実施形態では、これらの試験は細胞の型および細胞の所望の用途による。
【0130】
幹細胞または前駆細胞の場合、本明細書に記載の方法は、細胞がそれらの多能性を維持することをさらに確実にし得る。これは、系統特異的マーカーの発現の決定によって確立することができる。例えば、間葉系幹細胞の機能的特徴付けは、脂肪生成、骨形成および軟骨形成分化の可能性を示す、mRNAの系統特異的発現を検出するための市販の分化キットおよびRT-PCRを用いた、インビトロでの脂肪生成、骨形成および軟骨形成分化の誘導を含み得る。同様に、未分化幹細胞の質は、mRNAの単離および細胞特異的マーカーについての試験によって試験することができる。ある実施形態では、特定の系統の細胞に分化する能力が維持されている、すなわち、未処理細胞と有意に異ならない。胚性幹(ES)細胞の多能性は、例えば、Oct4-GFP発現、アルカリホスファターゼ発現の上昇、およびSSEA-1表面糖タンパク質発現を含む、当技術分野で公知の方法を用いて試験することができる。実験的治療後の幹細胞の回復を評価するために、いくつかのインビトロ法を適用することができる。これらの評価は、膜完全性、代謝的および他の機能的アッセイおよび/または培養中のコロニー増殖、ならびにSYTO/EBのような蛍光アッセイを含み得るが、これらに限定されない。ある実施形態では、分化試験、免疫表現型の特徴付け、および/または形態の検査は、幹細胞および/または前駆細胞をアッセイするために使用され得る。
【0131】
接合体については、細胞傷害があるかどうかを決定するために切断率を決定し、対照群と比較することができる。卵母細胞の生存率は、凍結保存後の細胞の形態学的特徴を調べることによって決定することができる。形態学的に生存可能な卵母細胞は無傷の透明帯および原形質膜ならびに屈折性細胞質を示し、一方、生存不能な卵母細胞は光学顕微鏡下で可視化すると変性して見える。卵母細胞の生存率および機能についての最終的な基準は、インビトロおよびインビボで健康な精子によって受精される能力であり、続いて卵割、胚盤胞、および/または孵化または胎児の発達である。米国特許第9,538,745号。
【0132】
ある実施形態では、本発明の保存組成物および方法、ならびに生体材は、研究および/または臨床用途(例えば、調査監視、毒性試験および体外受精のための細胞ベースの治療、移植、再生医療、診断および遺伝子検査、細胞/組織バンク)に使用され得る。
【0133】
生体材
用語「生体材」は、細胞、細胞凝集体、組織、器官、体液、ウイルス粒子、およびリポソーム(天然または合成)などの任意の他の膜状実体を意味する。
【0134】
任意の種類の細胞または組織が本組成物(例えば細胞安定化培地)および方法で処理され得る。
【0135】
ある実施形態では、細胞は、これらに限定されないが、ヒト細胞、マウス細胞、ブタ細胞、イヌ細胞、ウマ細胞、およびウシ細胞を含む、哺乳動物細胞である。細胞は、絶滅危惧種または絶滅の恐れのある種の哺乳動物由来のものであり得る。細胞は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、オナガザル上科、ヒト上科、イヌ、ネコ、キヌゲネズミ属、ウマ属(例えば、ウマ(Equus caballus)、ウマ(Equus assinus))、ウマ科、ウシ(Bos taurus)、ウシ(Bos indicus)、ウシ科、ラクダ科、スイギュウ、野生ヤギ(Capra aegagrus hircus)、シカ(Cervidae)科、シカ亜(Cervinae)科、ヒツジ、オオツノヒツジ、ヒマラヤヤギ、イノシシ(Sus scrofa domestica)、ゴールデンハムスター属、ミンク、モルモット、スナネズミ、チンチラ、ラット、クマネズミ属、マウス、ウサギ科、ウサギ、ウォーターバック属、ニワトリ属、シチメンチョウ(Meleagria gallopavo)、カモ属、ヨーロッパケナガイタチ、ハト(Columba domestica)、ドバト、ホロホロチョウ(Numida meleagris)、カモノハシ、インドクジャク、バイソン属、ダチョウ属、ラマ、レア属、エミュー属、アルパカ、トナカイ、ヤク、フタコブラクダ、ヒトコブラクダ)、および絶滅危惧種または絶滅の恐れのある種の由来であり得る。
【0136】
本組成物および方法は、微生物、細菌、非哺乳動物の動物細胞(例えば、昆虫細胞、鳥類細胞、魚細胞など)、または植物細胞を処理するために使用され得る。
【0137】
細胞の非限定的な例には、幹細胞、前駆細胞、胚、精子、卵母細胞、配偶子母細胞、および接合子が含まれる。
【0138】
細胞は腫瘍細胞または非腫瘍細胞であり得る。一実施形態では、細胞は線維芽細胞である。
【0139】
生体材は、限定するものではないが、以下のいずれかを含み得る:線維芽細胞、幹細胞、前駆細胞、全血またはそれらの画分、赤血球、白血球、臍帯血またはそれらの画分、臍帯血細胞、骨髄、卵母細胞、精子、卵子、胚、軟骨、卵巣、心臓、皮膚、腎臓、肝臓、肺。さらに、このような生体材は、細菌および酵母などを含む真核生物または原核生物であり得る細胞生物を含み得る。さらに、生体材はまた、線虫などの凍結保存を生き残ることができる全多細胞生物を含み得る。血液画分は、血球(白および/または赤)、血漿および/または溶質および/または細胞内成分(例えば、血小板などの細胞画分、分解細胞の成分など)、タンパク質、脂質、抗体などを含む、血液の任意の画分を含み得る。
【0140】
本組成物および方法は、これらに限定されないが、膵島細胞、軟骨細胞、神経起源の細胞、肝臓起源の細胞、眼科起源の細胞、整形外科起源の細胞、結合組織由来の細胞、および生殖起源の細胞、ならびに心臓および心血管起源の細胞を含む、組織および器官に由来する細胞材料を含むがこれらに限定されない、あらゆる種類の細胞を治療するために用いられ得る。
【0141】
幹細胞には、成体幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、末梢血幹細胞、臍帯血幹細胞、間葉系幹細胞、胎児および/または胚性起源を含む組織および器官または他の供給源由来の幹細胞、ならびに幹細胞と他の細胞、および異なる供給源のものとの混合物が含まれる。成体幹細胞には、骨髄幹細胞、造血幹細胞、皮膚幹細胞、眼球幹細胞、神経幹細胞、心臓幹細胞などが含まれる。
【0142】
ある実施形態では、内胚葉起源の幹細胞は、肺上皮幹細胞、胃腸管幹細胞、膵臓幹細胞または肝卵形細胞および/またはその前駆細胞である。ある実施形態では、泌尿生殖器起源の細胞は、乳腺幹細胞および前立腺幹細胞、あるいは卵巣および精巣幹細胞および/またはその前駆細胞として分類される。ある実施形態では、中胚葉起源の細胞は、骨髄細胞、造血幹細胞、間質幹細胞または心臓幹細胞および/またはそれらの前駆細胞である。ある実施形態では、外胚葉起源の細胞は、神経幹細胞、皮膚幹細胞または眼幹細胞および/またはその前駆細胞である。
【0143】
本開示の組成物組成物(例えば、細胞安定化培地)および方法を用いて治療することができる細胞型には、例えば、線維芽細胞、上皮細胞、心筋細胞、肝細胞、神経細胞、表皮細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラニン形成細胞、軟骨細胞、B細胞、T細胞、赤血球、マクロファージ、単球、または筋細胞などの未分化細胞、および例えば、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、または成体幹細胞などの分化細胞が含まれる。細胞は、一倍体、二倍体、または四倍体であり得る。他の細胞は、膀胱、脳、食道、卵管、心臓、腸、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿管、尿道、または子宮由来の細胞を含む。
【0144】
さらなる特定の実施形態では、細胞は、成人の脳、骨髄、血管、骨格筋、皮膚、歯、心臓、腸、肝臓、または他の成人の組織から得られる。特定の実施形態では、細胞は、内胚葉、泌尿生殖器、中胚葉または外胚葉起源からなる群から選択される。
【0145】
組織には、角膜、軟骨、骨、皮膚、心臓弁、ランゲルハンス島、ヒト、動物、魚、貝および植物からの胚、ならびにヒトおよび動物からの卵巣組織が含まれる。本組成物および方法はまた、人工組織および組織構築物を治療し得る。
【0146】
ある実施形態では、本組成物および方法は、生殖補助技術で卵母細胞または精子を治療するために、あるいは化学療法または放射線療法を受けている患者のために使用することができる。この方法は幹細胞の治療にも使用することができ、それは次いで幹細胞に基づく治療、細胞移植、組織工学、および再生医療の基礎として使用することができる。この方法はまた、種の保存のための生殖補助技術における将来の使用のためにまれであるかまたは絶滅する危険性がある動物からの卵母細胞または精子を治療するためにも使用され得る。この方法はさらに、例えばウシ、ブタ、およびヒツジなどの動物由来の胚性幹細胞、配偶子母細胞、卵母細胞、または精子を治療するための動物の飼育目的(例えば、動物の繁殖および飼育)に使用することができる。
【0147】
生体材は様々な疾患の治療に有用であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、眼球細胞は、加齢黄斑変性症(湿性または乾性)、糖尿病性黄斑浮腫、特発性脈絡膜血管新生、または高近視性黄斑変性症を含むがこれらに限定されない、眼疾患を治療するために使用される。いくつかの眼の実施形態では、RPE細胞が使用される。いくつかの実施形態では、心臓幹細胞は、心筋梗塞、虚血性心組織損傷、鬱血性心不全、動脈瘤、アテローム性動脈硬化症誘発事象、脳血管障害(卒中)、および冠状動脈疾患などの心血管障害を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、肝幹細胞は、肝炎、肝硬変、癌などの肝疾患を治療するために使用される。とりわけ、腎臓、肺、膵臓、腸、骨および/または軟骨、ならびに神経組織などの他の組織における疾患は、本明細書に開示される方法およびデバイスを用いて治療され得る。いくつかの実施形態では、採取された骨髄幹細胞を使用して、白血病、癌、または血球数を減少させる治療のために減少する造血細胞を再増殖させることができる。
【0148】
本組成物および方法はまた、様々な治療方法でも有用である。細胞(cellular)療法、または細胞(cell)療法は、一般に、損傷組織および/または細胞を置換または修復するためのヒトまたは動物細胞の移植を包含し得る。細胞療法は、関節の損傷した軟骨の再建、脊髄損傷の修復、弱体化した免疫システムの強化、自己免疫疾患の治療の治療、およびアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんなどの神経障害患者を助けるために使用されてきた。さらなる用途は、動脈硬化症、先天性欠損症、および性機能障害などの広範囲の慢性状態の治療を含んでいた。
【0149】
細胞療法は、通常、異種細胞、同種異系(他のヒトドナーから)、または自己由来(細胞が同じ患者から抽出され移植される)の全細胞または細胞抽出物のいずれかの注射を含む。
【0150】
ウイルスまたはウイルス粒子は任意のウイルスであり得る。ある実施形態では、ウイルスまたはウイルス粒子は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスなどを含む。ある実施形態では、ウイルスまたはウイルス粒子は遺伝子治療に使用できるものである。
【0151】
キット
本開示はまた、本細胞安定化培地(本明細書に記載のように固体または液体形態で)または本組成物を含むキットを提供する。そのようなキットは、細胞安定化培地または本組成物を含む1つまたは複数の容器を含み得る。一実施形態では、キットは細胞安定化培地または本組成物(生体材を含んでも含まなくてもよい)を含む。一実施形態では、キットは本細胞安定化培地で処理するための生体材を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかに使用するための説明書を含むことができる。一実施形態では、キットは、細胞安定化培地および方法を用いて生体材を処理するための説明書を含む。キットは、対象が治療を必要としているかどうかの識別に基づいて治療に適した対象を選択することの説明をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、説明書は、本細胞安定化培地で処理された生体材を治療を必要とする対象に投与することの説明を含む。ある実施形態では、キットに添付の説明書は、ラベルまたは添付文書に書かれた説明書である。ラベルまたは添付文書はまた、生体材の臨床用途および/または研究用途を示し得る。
【0153】
キットの部品は同時にまたは時系列的にずらして、すなわちキットの任意の構成要素について異なる時点でおよび等しいまたは異なる時間間隔で使用することができる。所望の影響を得るために時間間隔を選択することができる。
【0154】
本明細書に提供されるキットは適切な包装中にある。適切な包装は、バイアル(例えば、クライオバイアル)、ボトル、アンプル、チューブ(例えば、クライオチューブ)、バッグ、フラスコ、ジャー、可撓性包装などを含むが、これらに限定されない。凍結容器、クライオバイアルおよび/またはクライオチューブなどの特定の装置と組み合わせて使用するためのパッケージも企図されている。
【0155】
キットは任意選択で、緩衝液および解釈情報などの追加の構成要素を提供してもよい。通常、キットは、容器、および容器上のまたは容器に付随するラベルまたは添付文書を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、上記のキットの内容物を含む製品を提供する。
【実施例】
【0156】
以下は本発明の実施例であり、限定的に解釈されるべきではない。
【0157】
実施例1
実験番号1
ゼラチンはGelita(ゼラチンはウシの皮から調製した;バッチ番号L600217)から入手した。15.7重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地は、DMEM中でゼラチンを溶解することによって調製した。
【0158】
グリセロールを含む低温保存組成物中の胎児皮膚線維芽細胞であるFE002-SK2細胞を、凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。
【0159】
対照試料としては、グリセロールを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した後、細胞懸濁液をDMEMと混合して混合物を形成した。
【0160】
細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM)対細胞懸濁液の体積比は12.5である。細胞(細胞懸濁液中)および細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM)を、1000μLのピペットマン(登録商標)およびチップを用いた吸引によって混合した。
【0161】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、2時間、または4時間、30℃または37℃でインキュベートした。各条件についての試料を複製した。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率は次の式により計算された:[(生細胞数)/(総細胞数)]×100%。
表1に示すように、ゼラチンを含む細胞安定化培地中の細胞は、2時間または4時間、30℃または37℃でインキュベートされた後、それらの生存率を維持した。言い換えれば、30℃または37℃で2時間または4時間インキュベートした後、細胞の生存率は時間0でのそれらの生存率と同様であった。対照的に、DMEMと混合した細胞の生存率は、30℃または37℃で2時間または4時間インキュベートした後、約48%(2時間)または56%(4時間)減少した。この実験は、ゼラチンを含有する細胞安定化培地の保護影響を確認している。
【0162】
【0163】
実験番号2
ゼラチンはGELITA(Lot.L600217)から入手した。ゼラチンを水に溶解することにより、15.7重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0164】
グリセロールを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。細胞安定化培地対細胞懸濁液の体積比は12.5である。細胞(細胞懸濁液中)および細胞安定化培地を、1000μLのピペットマン(登録商標)およびチップを用いた吸引によって混合した。
【0165】
混合物を37℃で0時間(時間0、インキュベーションなし)、1時間、2時間、4時間、8時間、または24時間インキュベートした。各条件についての試料を複製した。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率は、本明細書に記載の通りに計算した。
【0166】
表2に示すように、ゼラチンを含む細胞安定化培地中の細胞は、4時間まで(1時間、2時間、または4時間)、37℃でインキュベートされた後、それらの生存率を維持した。言い換えれば、37℃で4時間までインキュベートした後、細胞の生存率は時間0でのそれらの生存率と同様であった。37℃で8時間インキュベートした後も、細胞生存率は70%以上に維持され得る。この実験は、ゼラチンを含有する細胞安定化培地の保護影響を確認している。
【0167】
【0168】
実験番号3
ゼラチンはGELITA(Lot.L600217)から入手した。ゼラチンを水に溶解することにより、15.7重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0169】
DMSOを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。対照試料として、DMSOを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した後、細胞懸濁液をDMEMまたは10%FBS/DMEMと混合して混合物を形成した。
【0170】
細胞安定化培地(対照試料についてはDMEM)対細胞懸濁液の体積比は10である。細胞(細胞懸濁液中)および細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM、または10%FBS/DMEM)を、1000μLのピペットマン(登録商標)およびチップを用いた吸引によって混合した。
【0171】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、2時間、4時間、または8時間、25℃でインキュベートした。各条件についての試料を複製した。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率を計算した。
【0172】
表3に示すように、ゼラチンを含む細胞安定化培地中の細胞は、2時間または4時間、25℃でインキュベートされた後、それらの生存率を維持した。言い換えれば、25℃で2時間または4時間インキュベートした後、細胞の生存率は時間0でのそれらの生存率と同様であった。25℃で8時間インキュベートした後も、細胞生存率は80%以上に維持され得る。対照的に、DMEMと混合した細胞の生存率は、25℃で8時間までインキュベートした後、約13%(2時間)、21%(4時間)または32%(8時間)減少した。同様に、10%FBS/DMEMと混合した細胞の生存率は、25℃で8時間までインキュベートした後、約19%(2時間)または34%(4時間または8時間)減少した。この実験は、ゼラチンを含有する細胞安定化培地の保護影響を確認している。
【0173】
【0174】
実験番号4
ゼラチンはNippi(ゼラチンはウシ、ブタおよび/または魚などの供給源から調製した;ロット番号S150806)から入手した。ゼラチンを水に溶解することにより、10重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0175】
グリセロールを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。細胞安定化培地対細胞懸濁液の体積比は12.5である。
【0176】
実験番号1~3とは異なり、この実験では、(細胞懸濁液中の)細胞および細胞安定化培地は、針付きの注射器を用いて吸引することにより混合した。臨床設定では、注射器に接続された18G針を用いて、細胞と細胞安定化培地を吸引して混合する。
【0177】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、2時間、4時間、6時間、8時間、または24時間、37℃でインキュベートした。各条件についての試料は、三重または二重のいずれかであった。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率は、本明細書に記載の通りに計算した。
【0178】
表4に示すように、ゼラチンをを含む細胞安定化培地中の細胞は、6時間まで(2時間、4時間、または6時間)、37℃でインキュベートされた後、それらの生存率を維持した。言い換えれば、37℃で4時間までインキュベートした後、細胞の生存率は時間0でのそれらの生存率と同様であった。37℃で8時間インキュベートした後、細胞生存率はわずかに減少した。37℃で24時間インキュベートした後、細胞生存率は約30%に減少した。この実験は、ゼラチンを含有する細胞安定化培地の保護影響を確認している。
【0179】
表4
【表4】
本明細書では、「SD」は標準偏差を表す。
【0180】
実験番号5
ゼラチンはNippi(Lot.S150806)から入手した。ゼラチンを水に溶解することにより、10重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0181】
グリセロールを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。細胞安定化培地対細胞懸濁液の体積比は12.5である。
【0182】
(細胞懸濁液中の)細胞と細胞安定化培地を、針付き注射器を用いた吸引により混合した。臨床設定では、注射器に接続された18G針を用いて、細胞と細胞安定化培地を吸引して混合する。
【0183】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、2時間、4時間、6時間、8時間、または24時間、または72時間、25℃または30℃でインキュベートした。各条件についての試料は、三重または二重のいずれかであった。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率は、本明細書に記載の通りに計算した。
【0184】
表5に示すように、ゼラチンを含む細胞安定化培地中の細胞は、24時間まで(2時間、4時間、6時間、8時間、または24時間)、25℃でインキュベートされた後、それらの生存率を維持した。言い換えれば、25℃で24時間までインキュベートした後、細胞の生存率は時間0でのそれらの生存率と同様であった。ゼラチンを含む細胞安定化培地中の細胞は、30℃で8時間まで(2時間、4時間、6時間、または8時間)、インキュベートされた後、それらの生存率を維持した。言い換えれば、30℃で8時間までインキュベートした後、細胞の生存率は時間0にでのそれらの生存率と同様であった。30℃で24時間インキュベートした後も、細胞生存率は70%以上に維持され得る。
【0185】
【0186】
実験番号6
ゼラチンはNippi(Lot.S150806)から入手した。ゼラチンを水に溶解することによって、5重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0187】
グリセロールを含む低温保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。
【0188】
対照試料としては、グリセロールを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した後、細胞懸濁液をDMEMと混合して混合物を形成した。
【0189】
細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM)対細胞懸濁液の体積比は12.5である。細胞(細胞懸濁液中)および細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM)を、1000μLのピペットマン(登録商標)およびチップを用いた吸引によって混合した。
【0190】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、または2時間、37℃でインキュベートした。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率を計算した。
【0191】
表6に示すように、37℃で2時間インキュベートした後、ゼラチンを含有する細胞安定化培地と混合された細胞の生存率は、DMEMと混合した細胞の生存率よりも高かった。
【0192】
【0193】
実験番号7
ゼラチンはNippi(Lot.S150806)から入手した。ゼラチンを水に溶解することによって、6重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0194】
グリセロールを含む低温保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。
【0195】
対照試料としては、グリセロールを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した後、細胞懸濁液をDMEMと混合して混合物を形成した。
【0196】
細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM)対細胞懸濁液の体積比は12.5である。細胞(細胞懸濁液中)および細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM)を、1000μLのピペットマン(登録商標)およびチップを用いた吸引によって混合した。
【0197】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、または2時間、37℃でインキュベートした。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率を計算した。
【0198】
表7に示すように、37℃で2時間インキュベートした後、ゼラチンを含有する細胞安定化培地と混合された細胞の生存率は、DMEMと混合した細胞の生存率よりも高かった。
【0199】
【0200】
実験番号8
ゼラチンはNippi(Lot.S150806)から入手した。ゼラチンを水に溶解することによって、7.5重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0201】
グリセロールを含む低温保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。
【0202】
対照試料としては、グリセロールを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した後、細胞懸濁液をDMEMと混合して混合物を形成した。
【0203】
細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM)対細胞懸濁液の体積比は12.5である。細胞(細胞懸濁液中)および細胞安定化培地(または対照試料についてはDMEM)を、1000μLのピペットマン(登録商標)およびチップを用いた吸引によって混合した。
【0204】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、または2時間、37℃でインキュベートした。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率を計算した。
【0205】
表8に示すように、37℃で2時間インキュベートした後、ゼラチンを含有する細胞安定化培地と混合された細胞の生存率は、DMEMと混合した細胞の生存率よりも高かった。
【0206】
【0207】
実験番号9
ゼラチンはGELITA(Lot.L600217)から入手した。ゼラチンを水に溶解することによって、15.7重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0208】
グリセロールを含む低温保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。
【0209】
細胞安定化培地対細胞懸濁液の体積比は6.25である。細胞(細胞懸濁液中)および細胞安定化培地を、1000μLのピペットマン(登録商標)およびチップを用いた吸引によって混合した。
【0210】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、2時間または4時間、27℃または37℃でインキュベートした。各条件についての試料を複製した。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率を計算した。
【0211】
表9に示すように、ゼラチンを含む細胞安定化培地中の細胞は、2時間または4時間、27℃または37℃でインキュベートされた後、それらの生存率を維持した。言い換えれば、27℃または37℃で2時間または4時間インキュベートした後、細胞の生存率は時間0でのそれらの生存率と同様であった。
【0212】
【0213】
実験番号10
ゼラチンはGELITA(Lot.L600217)から入手した。ゼラチンを水に溶解することによって、15.7重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。
【0214】
グリセロールを含む凍結保存組成物中の細胞を凍結保存から解凍した。この細胞懸濁液を、次いで、細胞安定化培地と混合して混合物を形成した。細胞安定化培地対細胞懸濁液の体積比は12.5である。
【0215】
(細胞懸濁液中の)細胞と細胞安定化培地を、針付き注射器を用いた吸引により混合した。臨床設定では、注射器に接続された18G針を用いて、細胞と細胞安定化培地を吸引して混合する。
【0216】
混合物を、0時間(時間0、インキュベーションなし)、1時間、または2時間、23℃、27℃、または30℃でインキュベートした。各条件についての試料を複製した。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率は、本明細書中に記載されるように計算された(表10)。
【0217】
【0218】
実施例2 細胞生存率に対するゼラチン濃度および温度の影響
実験条件を表11に示す。
【0219】
【0220】
1重量%、3重量%、または17重量%のゼラチンを含有する細胞安定化培地を調製した。細胞安定化培地を、細胞と混合する前に37℃の水浴中でインキュベートして、液相への変換を確実にした。
【0221】
細胞を増殖させ、採取しそして凍結保存した。実験前に、胎児の皮膚線維芽細胞である、FE002-SK2細胞(継代12;P12)の3~5個のクライオチューブを解凍した。各クライオチューブは0.4mL中に3×106個の細胞を含んでいた。3~5個のクライオチューブの全ての内容物を組み合わせて混合した。
【0222】
DMEMグループの場合:
(1)5倍希釈:20μLの細胞を80μLのDMEMと混合した(細胞は5倍希釈)。解凍後細胞の数を数えた。
(2)12.5倍希釈:20μLの細胞を230μLのDMEMと混合した(細胞は12.5倍希釈)。解凍後細胞の数を数えた。
【0223】
細胞安定化培地(ゼラチンを含む)群の場合:
(1)5倍希釈、37°C:200μLの細胞および800μLの細胞安定化培地(ゼラチン溶液)を1.5mLのエッペンドルフチューブに加え、混合した。細胞生存率を時間0(T0)で分析した。残りの試験試料を37℃の水浴中でインキュベートした。細胞生存率を次の時点で再度分析した:2時間(T2)、4時間(T4)および8時間(T8)。
(2)12.5倍希釈、37℃:200μLの細胞および2300μLのゼラチン溶液を、15mL遠心管に入れて混合した。細胞生存率を時間0(T 0)で分析した。残りの試験試料を37℃の水浴中でインキュベートした。細胞生存率を以下の時点で分析した:時点:2時間(T2)、4時間(T4)および8時間(T8)。
【0224】
同様に、細胞生存率も25℃で、5倍希釈および12.5倍希釈について試験した。
【0225】
表12 異なる倍率(5倍または12.5倍)でゼラチン溶液で希釈し、25°Cでインキュベートした後の細胞生存率
【表12】
【0226】
表13 異なる倍率(5倍または12.5倍)でゼラチン溶液で希釈し、37°Cでインキュベートした後の細胞生存率
【表13】
【0227】
表14 5倍でゼラチン溶液で希釈し、25°Cでインキュベートした後の細胞生存率(生データ)
【表14】
【0228】
表15 12.5倍でゼラチン溶液で希釈し、25°Cでインキュベートした後の細胞生存率(生データ)
【表15】
【0229】
表16 5倍でゼラチン溶液で希釈し、37°Cでインキュベートした後の細胞生存率(生データ)
【表16】
【0230】
表17 12.5倍でゼラチン溶液で希釈し、37°Cでインキュベートした後の細胞生存率(生データ)
【表17】
【0231】
考察
結果は、DMEMと比較して、1重量%、3重量%または17重量%のゼラチンを含む細胞安定化培地とインキュベートしたとき、解凍後細胞生存率がより高いことを示している。25°Cまたは37°Cで、細胞安定化培地で5倍希釈した細胞は、細胞安定化培地で12.5倍に希釈した細胞と比較してより高く長い生存率を示した。
【0232】
実施例3 細胞生存率に対して作用するゼラチン濃度の影響
表18および
図1~9は、実施例1および実施例2の実験番号1~10(「実験1」~「実験10」)のデータに基づいて、細胞生存率に対して作用するゼラチン濃度の影響を示す。
【0233】
表18
【表18-1】
【表18-2】
【表18-3】
【表18-4】
【0234】
実施例4 解凍後の細胞生存率を維持するためのゼラチン系溶液と他の溶液との比較
材料
ADAM AccuchipとADAM SolutionはNanoEnTekから入手した。DMEMおよびウシ胎児血清(FBS)はGibcoから入手した。ウシ血清アルブミンはSigmaから入手した。
【0235】
試験溶液(細胞安定化培地、DMEM、またはFBS)は以下を含む:
・ 溶液A(「溶液A」):DMEM
・ 溶液B(「溶液B」):DMEM中にゼラチン10重量%
・ 溶液C(「溶液C」):DMEM中にアルブミン5重量%
・ 溶液D(「溶液D」):DMEM中にアルブミン10重量%
・ 溶液E(「溶液E」):DMEM中にアルブミン15.7重量%
・ 溶液F(「溶液F」):FBS
【0236】
線維芽細胞(FE002-SK2)を、7.5×106細胞/mLの濃度で、グリセロールを含む凍結保存組成物中で凍結した。
【0237】
1150μLの各試験溶液A~Fを、各溶液につき3本の2mLのエッペンドルフチューブに分配した。
【0238】
凍結保存した線維芽細胞を、37°Cの水浴中で解凍した。全ての細胞懸濁液を1本のチューブにプールした。100μLの解凍した細胞懸濁液を、1150μLの試験溶液を含むエッペンドルフチューブの各々に添加し、混合物を形成した。試験溶液(細胞安定化培地、またはDMEM、またはFBS)対細胞懸濁液の体積比は11.5である。
【0239】
混合物を37℃で2時間インキュベートした。各条件についての試料はトリプリケートした。細胞の総数、生細胞の数および死細胞の数は、ADAM-MC自動細胞計数器(Digital Bio)を用いてアッセイした。細胞の生存率は次の式により計算された:[(生細胞数)/(総細胞数)]×100%。
【0240】
表19に示すように、37℃で2時間インキュベートした後、ゼラチンを含む細胞安定化培地中の細胞の生存率は約77.3パーセントであった。5重量%、10重量%、または15.7重量%のアルブミンを含む細胞安定化培地中の細胞の生存率は、それぞれ約48.7%、49.7%および60.7%であった。ゼラチンベースの溶液は、他の試験溶液よりも解凍された細胞の生存率を維持することができた。
【0241】
表19 さまざまな試験溶液と混合した細胞の生存率
【表19】
【0242】
例示的なシステムおよび方法は以下の項目に記載されている:
項目1 細胞生存率を維持するための方法であって、1つまたは複数の細胞を細胞安定化培地と混合して混合物を形成するステップを含み、前記細胞安定化培地は、細胞安定化培地の総重量に基づいて約5重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む、方法。
項目2 前記細胞安定化培地が、約5重量%~約7.5重量%のゼラチンを含む、項目1に記載の方法。
項目3 前記細胞安定化培地が、約10重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目4 前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、約0.8重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目5 前記混合物が、約2.4重量%~約7重量%のゼラチンを含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目6 前記混合物が、約9.3重量%~約14.6重量%のゼラチンを含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目7 前記1つまたは複数の細胞が、前記混合ステップの前に細胞懸濁液中にある、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目8 前記細胞安定化培地対前記細胞懸濁液の体積比が、約6.25~約12.5の範囲である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目9 前記細胞安定化培地対前記細胞懸濁液の体積比が約~約10の範囲である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目10 前記細胞が、約7.5×105細胞/ml~約7.5×107細胞/mlの範囲の濃度で、前記細胞懸濁液中に存在する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目11 前記混合ステップの前に、前記1つまたは複数の細胞が凍結保存状態から解凍された凍結保存組成物中にある、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目12 前記凍結保存状態が、約-70°C~-200°Cの範囲の温度である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目13 前記細胞が、少なくとも70%の解凍後生存率を有する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目14 前記細胞が、少なくとも80%の解凍後生存率を有する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目15 前記凍結保存組成物が、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および/またはポリエチレングリコール(PEG)を含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目16 前記混合ステップの前に、約25°C~約37°Cの範囲の温度で、前記細胞安定化培地を配置することをさらに含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目17 ゼラチンが、約100キロダルトン(kD)~約200kDの範囲の重量平均分子量を有する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目18 ゼラチンが変性コラーゲンを含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目19 前記細胞安定化培地が、約190~約325の範囲のブルーム値を有する熱可逆性ヒドロゲルである、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目20 前記細胞が哺乳動物細胞である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目21 前記細胞がヒト、ブタ、イヌ、ウマまたはウシの細胞である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目22 前記細胞が腫瘍細胞を含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目23 前記細胞が線維芽細胞を含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目24 前記細胞が幹細胞を含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目25 前記細胞が、約105細胞/ml~約107細胞/mlの範囲の濃度で混合物中に存在する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目26 前記細胞安定化培地は、アミノ酸、サイトカイン、脂質、成長因子、抗生物質、抗真菌剤、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、またはそれらの組み合わせをさらに含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目27 細胞生存率を維持するための方法であって、1つまたは複数の細胞を細胞安定化培地と混合して混合物を形成するステップを含み、前記混合物は約0.8重量%~約15.7重量%のゼラチンを含む、方法。
項目28 前記混合物が、約2.4重量%~約7重量%のゼラチンを含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目29 前記混合物が、約9.3重量%~約14.6重量%のゼラチンを含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目30 前記1つまたは複数の細胞が、前記混合ステップの前に細胞懸濁液中にある、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目31 前記細胞安定化培地対前記細胞懸濁液の体積比が、約6.25~約12.5の範囲である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目32前記細胞安定化培地対前記細胞懸濁液の体積比が約~約10の範囲である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目33 前記細胞が、約7.5×105細胞/ml~約7.5×107細胞/mlの範囲の濃度で、前記細胞懸濁液中に存在する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目34 前記混合ステップの前に、前記1つまたは複数の細胞が凍結保存状態から解凍された凍結保存組成物中にある、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目35 前記細胞が、少なくとも70%の解凍後生存率を有する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目36 前記凍結保存組成物が、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および/またはポリエチレングリコール(PEG)を含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目37 前記混合ステップの前に、約25°C~約37°Cの範囲の温度で、前記細胞安定化培地を配置することをさらに含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目38 ゼラチンが、約100キロダルトン(kD)~約200kDの範囲の重量平均分子量を有する、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目39 ゼラチンが変性コラーゲンを含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目40 前記細胞が哺乳動物細胞である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目41 前記細胞がヒト、ブタ、イヌ、ウマまたはウシの細胞である、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目42 前記細胞が腫瘍細胞を含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目43 前記細胞が線維芽細胞を含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目44 前記細胞が幹細胞を含む、前述の項目のいずれかに記載の方法。
項目45 1つまたは複数の細胞と、約0.8重量%~約15.7重量%のゼラチンとを含む組成物。
項目46 約2.4重量%~約7重量%のゼラチンを含む、項目45に記載の組成物。
項目47 約9.3重量%~約14.6重量%のゼラチンを含む、項目45~46のいずれかに記載の組成物。
項目48 前記1つまたは複数の細胞が凍結保存状態から解凍されている、項目45~47のいずれかに記載の組成物。
項目49 前記細胞が、少なくとも70%の解凍後生存率を有する、項目45~48のいずれかに記載の組成物。
項目50 ゼラチンが、約100キロダルトン(kD)~約200kDの範囲の重量平均分子量を有する、項目45~49のいずれかに記載の組成物。
項目51 ゼラチンが変性コラーゲンを含む、項目45~50のいずれかに記載の組成物。
項目52 前記細胞が哺乳動物細胞である、項目45~51のいずれかに記載の組成物。
項目53 前記細胞がヒト、ブタ、イヌ、ウマまたはウシの細胞である、項目45~52のいずれかに記載の組成物。
項目54 前記細胞が腫瘍細胞を含む、項目45~53のいずれかに記載の組成物。
項目55 前記細胞が線維芽細胞を含む、項目45~54のいずれかに記載の組成物。
項目56 前記細胞が幹細胞を含む、項目45~55のいずれかに記載の組成物。
項目57 項目45~56のいずれかに記載の組成物を含むキット。
【0243】
本発明の範囲は、上記に具体的に示され記載されたものによって限定されない。当業者は、示された材料、構成、構造および寸法の例に対する適切な代替物があることを認識するであろう。特許および様々な刊行物を含む多数の参考文献が、本発明の説明では引用され考察されている。そのような参考文献の引用および考察は、単に本発明の説明を明確にするために提供されており、いかなる参考文献も本明細書に記載された発明に対する先行技術であることを承認するものではない。本明細書では引用され考察された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されたものの変更、修正および他の実施は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者には思い浮かぶであろう。本発明のある実施形態を示し説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更および修正を加え得ることは当業者には明らかであろう。前述の説明で述べた事項は、例示としてのみ提供され、限定としては提供されない。