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特許7157051血圧測定装置に対する較正パラメータを決定するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】血圧測定装置に対する較正パラメータを決定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/021 20060101AFI20221012BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20221012BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20221012BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61B5/021
A61B5/02 310V
A61B5/022 500Z
A61B5/02 B
A61B5/02 310A
A61M16/00 320
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019518448
(86)(22)【出願日】2017-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2017075717
(87)【国際公開番号】W WO2018069261
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】16193097.9
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ハイブレフツ,ラウレンティア ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】カーレルト,ヨーアヒム
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】ヒルビヒ,ライナー
【審査官】湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000105(JP,A)
【文献】特表2005-525572(JP,A)
【文献】特表2004-520870(JP,A)
【文献】特開2015-167685(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0029361(US,A1)
【文献】米国特許第09408542(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/0295
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1血圧測定装置に対する較正パラメータを決定するための装置であって、
対象の生理学的特徴の生理学的特徴測定値を得るため、及び、前記生理学的特徴測定値から前記対象の血圧測定値を決定するためのものである第1血圧測定装置、前記対象の血圧の測定値を得るためのものである第2血圧測定装置、及び、制御されたガス流を前記対象に提供するためのものである換気装置に結合されることになる制御ユニットを含み、
前記制御ユニットは、
前記第1血圧測定装置を使用して前記対象の第1生理学的特徴測定値を得る、
前記第2血圧測定装置を制御して前記対象の第1血圧測定値を得る、
前記対象への前記ガス流の1つ又は複数の特性を変えるように前記換気装置を制御し、その結果、前記対象の血圧の変化を自動的に誘発する、
前記第1血圧測定装置を使用して前記対象の第2生理学的特徴測定値を得る、
前記第2血圧測定装置を制御して前記対象の第2血圧測定値を得る、さらに、
前記第1生理学的特徴測定値、前記第2生理学的特徴測定値、前記第1血圧測定値及び前記第2血圧測定値の分析から、前記第1血圧測定装置によって得られる生理学的特徴測定値から血圧測定値を決定するための較正パラメータを決定する、
ように構成され、前記対象は、血圧の変化を誘発するよう行動を意識的に行うことができない無意識の対象である、装置。
【請求項2】
前記第2血圧測定装置は、前記対象の異なる肢に使用するための第1可膨張性カフ及び第2可膨張性カフを含み、前記制御ユニットは、前記第1可膨張性カフを使用して前記対象の第1血圧測定値を得るように、前記第2血圧測定装置を制御するように、及び、前記第2可膨張性カフを使用して前記対象の第2血圧測定値を得るように、前記第2血圧測定装置を制御するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記第1血圧測定装置による第3生理学的特徴測定値及び決定された前記較正パラメータから前記対象の第3血圧測定値を得るようにさらに構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記換気装置により前記ガス流の1つ又は複数の特性を変えた後、特定の時間間隔の間に、前記第2生理学的特徴測定値を得るように、及び、前記第2血圧測定装置を制御して前記第2血圧測定値を得るように構成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記第1血圧測定装置からの信号を分析して、前記生理学的特徴が安定しているかどうかを決定するように構成され、前記特定の時間間隔は、前記生理学的特徴が安定していると決定された時間間隔に一致する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記換気装置を制御して、前記対象へのガス流の1つ又は複数の特性を変えて、
(i)前記対象へのガス流の組成を変える、又は、
(ii)前記対象においてため息を誘発する、又は、
(iii)前記対象においてバルサルバ法を誘発する、又は、
(iv)前記対象においてミュラー法を誘発する、
ように構成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置と、
前記第1血圧測定装置と、
前記第2血圧測定装置と、
前記換気装置と、
を含むシステム。
【請求項8】
第1血圧測定装置に対する較正パラメータを決定する方法であって、
前記第1血圧測定装置を使用して、対象の第1生理学的特徴測定値を得るステップであり、前記第1血圧測定装置は、前記対象の生理学的特徴の生理学的特徴測定値を得るため、及び、前記生理学的特徴測定値から前記対象の血圧測定値を決定するためのものである、ステップと、
第2血圧測定装置を制御して前記対象の第1血圧測定値を得るステップと、
前記対象へのガス流の1つ又は複数の特性を変えるように換気装置を制御し、その結果、前記対象の血圧の変化を自動的に誘発するステップと、
前記第1血圧測定装置を使用して前記対象の第2生理学的特徴測定値を得るステップと、
前記第2血圧測定装置を制御して前記対象の第2血圧測定値を得るステップと、
前記第1生理学的特徴測定値、前記第2生理学的特徴測定値、前記第1血圧測定値及び前記第2血圧測定値の分析から、前記第1血圧測定装置によって得られる生理学的特徴測定値から血圧測定値を決定するための較正パラメータを決定するステップと、
を含み、前記対象は、血圧の変化を誘発するよう行動を意識的に行うことができない無意識の対象である、方法。
【請求項9】
前記第1生理学的特徴測定値を得るステップ、及び、前記第2血圧測定装置を制御して第1血圧測定値を得るステップは、ほぼ同時に行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2生理学的特徴測定値を得るステップ、及び、前記第2血圧測定装置を制御して第2血圧測定値を得るステップは、ほぼ同時に行われる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2血圧測定装置は、前記対象の異なる肢に使用するための第1可膨張性カフ及び第2可膨張性カフを含み、
前記第2血圧測定装置を制御して第1血圧測定値を得るステップは、前記第1可膨張性カフを使用して前記対象の第1血圧測定値を得るように、前記第2血圧測定装置を制御することを含み、さらに、
前記第2血圧測定装置を制御して第2血圧測定値を得るステップは、前記第2可膨張性カフを使用して前記対象の第2血圧測定値を得るように、前記第2血圧測定装置を制御することを含む、請求項8、9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1血圧測定装置による第3生理学的特徴測定値及び決定された前記較正パラメータから前記対象の第3血圧測定値を得るステップをさらに含む、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2生理学的特徴測定値を得るステップ、及び、前記第2血圧測定装置を制御して第2血圧測定値を得るステップは、前記換気装置により前記ガス流の1つ又は複数の特性を変えた後、特定の時間間隔の間に行われる、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象へのガス流の1つ又は複数の特性を変えるように換気装置を制御するステップは、
(i)前記対象へのガス流の組成を変えること、
(ii)前記対象においてため息を誘発すること、
(iii)前記対象においてバルサルバ法を誘発すること、又は、
(iv)前記対象においてミュラー法を誘発すること、
のうち1つを行うように前記換気装置を制御することを含む、請求項8乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、コンピュータ又はプロセッサに、請求項8乃至14のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の血圧の測定値を得るために使用される血圧測定装置に関し、特に、血圧測定装置に対する較正パラメータを決定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院、特に集中治療室(ICU)又は手術室(OR)における救急処置設定では、患者の状態は急速に変化する可能性があり、直ちに行動を起こす必要があり得る。患者の状態を示すことができる1つのバイタルサインは、血圧(BP)である。BPは通常、(例えば、脈拍による圧力変化の振幅の分析を含むオシロメトリー技術を使用することによって自動的に、又は、コロトコフ音の検出を含む聴診技術を使用することによって手動で)侵襲的なラインを用いて又は上腕カフを用いて測定される。しかし、どちらの技術も:侵襲的なラインは感染の危険度が高く、また、上腕カフは連続的にBPを測定するために使用することができず、これは、患者が急速に悪化したことを同定するのに遅れが生じることを意味し得るという重大な欠点を有する。従って、少なくともこれらのシナリオでは、非侵襲的且つ連続的な(すなわち、血圧測定値が連続的に得られることを可能にする)血圧測定技術を使用することが望ましい。
【0003】
非侵襲的な様式で連続的な血圧測定値を得るための技術がいくつか存在する。例えば、血圧測定値は、脈波伝播速度(PWV)の測定値から、又は、フォトプレチスモグラフィ(PPG)信号内の特徴から得ることができる。血圧の直接的な測定を提供する上記の侵襲的ライン又はオシロメトリー/聴診に基づく方法とは対照的に、これらの血圧測定は、血圧の間接的な測定を提供し、従って、本明細書においては「代替の」血圧測定値と呼ばれる。しかし、血圧の正確な測定値を得るためには、血圧を非侵襲的な連続的な代替の血圧測定値に関連させる数学的関係を定期的に較正することが必要であり、これは、これらの代替の測定値が血圧の変化以外の生理学的変化によって影響され得るためである。
さらなる背景情報は、US9,408,542 B1、US2002/0095087 A1、US2015/0250394 A1、及びUS5,755,669 Aにおいて見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US8,602,997
【非特許文献】
【0005】
【文献】“Changes in 24h ambulatory blood pressure and effects of angiotensin II receptor blockade during acute and prolonged high-altitude exposure:a randomized clinical trial”by Parati et al.in European Heart Journal(2014)35,3113-3121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
信頼できる較正を得るためには、(最低でも)2つの異なる血圧レベルでの血圧及び代替物の測定が要求される。場合によっては、かなりの期間(例えば、数時間又は数日)にわたって較正を行うことが許容可能であり得るが、それ以外の場合においては(例えば、ICU又はORで使用される血圧測定装置の場合においては)、はるかに迅速に較正を行うことが望ましい。この場合、測定が行われる必要があるときには、対象の血圧に変化を生じさせて、血圧の測定が2つ以上の異なるレベルで行われることを可能にする必要がある。特許文献1は、血圧低下が対象において自動的に誘発されて、考慮されている代替物のパラメータ、この場合には脈波伝達時間を較正するための方法を記載している。この方法では、上腕のカフが膨張させられて、カフの下及び腕のより遠位の部分(例えば手及び指を含む)に血圧の変化を誘発している。
【0007】
しかし、この技術はいくつかの欠点を有する。例えば、この技術は、上腕カフが使用される場合には例えば腕/手/指等、又は、脚カフが使用される場合には脚/足/つま先等、カフの位置よりも遠位の血圧を測定する代替の血圧測定を用いてのみ使用することができる。従って、この技術は、(例えば、大腿動脈の脈拍と頸動脈の脈拍との時間差から血圧が決定される)中心部位の血圧測定技術を使用して得られる血圧測定値を較正するために使用することはできない。さらなる欠点は、上腕カフが血圧変化を誘発するために使用されるため、同時に較正に使用するための血圧測定値を得るために使用することができないことである。従って、第2のカフが対象のもう一方の腕に使用されていない限り、この方法は、代替の血圧測定値(この場合はPAT)とカフを使用して得られる血圧測定値とのモデル化された関係に頼らなければならない。
【0008】
従って、血圧測定装置によって得られた血圧の測定値を較正するための、特に、血圧測定装置に対する較正パラメータを決定するための改善された方法及び装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によると、第1血圧(BP)測定装置に対する較正パラメータを決定するための装置が提供され、当該装置は:対象の生理学的特徴の生理学的特徴測定値を得るため、及び、生理学的特徴測定値から対象の血圧測定値を決定するためのものである第1BP測定装置、対象の血圧の測定値を得るためのものである第2BP測定装置、及び、制御されたガス流を対象に提供するためのものである換気装置に結合されることになる制御ユニットを含み、制御ユニットは、第1BP測定装置を使用して対象の第1生理学的特徴測定値を得る;第2BP測定装置を制御して対象の第1BP測定値を得る;対象へのガス流の1つ又は複数の特性を変えるように換気装置を制御し、その結果、対象のBPを変える;第1BP測定装置を使用して対象の第2生理学的特徴測定値を得る;第2BP測定装置を制御して対象の第2BP測定値を得る;さらに、第1生理学的特徴測定値、第2生理学的特徴測定値、第1BP測定値及び第2BP測定値の分析から、第1血圧測定装置によって得られる生理学的特徴測定値からBP測定値を決定するための較正パラメータを決定する;ように構成される。このように、この態様は、無意識であるか、又さもなければ、血圧の変化を誘発するよう行動を意識的に行うことができない対象においてさえも、対象の血圧の変化を自動的に誘発することによって血圧測定装置に対する較正パラメータを得ることができるということを提供する。
【0010】
一部の実施形態では、第1生理学的特徴測定値及び第1BP測定値は、ほぼ同時に得られる。一部の実施形態では、第2生理学的特徴測定値及び第2BP測定値は、ほぼ同時に得られる。これらの実施形態は、行われている測定間に対象の血圧においていかなる実質的な変化もあるべきではなく、較正パラメータを決定するときに測定値が互いに比較されるのを可能にするということを提供する。
【0011】
一部の実施形態では、1つ又は複数の特性は、ガス流の組成、ガス流の流速及び/又はガス流の圧力を含む。一部の実施形態では、制御ユニットは、換気装置を制御して対象にため息を誘発するように構成される。この実施形態は、血圧変化を誘発することにおける対象へのいかなる不快感も最小限に抑えられるという利点を有する。
【0012】
好ましくは、第1BP測定装置は、BPの連続的又は半連続的測定を得るために使用することができるBP測定装置である。好ましくは、第1BP測定装置によって測定された生理学的特徴は、BPの代替の測定値を提供する。生理学的特徴は、フォトプレチスモグラム(PPG)信号、脈波伝播速度、脈波到達時間又は脈波伝達時間のうち1つ又は複数の特徴である。
【0013】
第2BP測定装置は、聴診技術、オシロメトリー技術、トノメータ技術、又はボリュームクランプ技術を使用してBPを測定することができる。
【0014】
一部の実施形態では、第2BP測定装置は、対象の異なる肢に使用するための第1可膨張性カフ及び第2可膨張性カフを含み、制御ユニットは、第1可膨張性カフを使用して対象の第1BP測定値を得るように、第2BP測定装置を制御する、及び、第2可膨張性カフを使用して対象の第2BP測定値を得るように、第2BP測定装置を制御するように構成される。この実施形態は、信頼性のある2つのカフに基づく血圧測定を、(異なる肢にカフを使用することは、可膨張性カフのどちらか1つの下にある血管及び血流を、もう一方のカフを用いてBP測定を行う前に、定常状態又は正常状態に戻す必要がないということを意味するため)短い時間間隔で行うことができるという利点、及び、対象に対して重大な不快感を引き起こさないという利点を有する。
【0015】
一部の実施形態では、制御ユニットは、第1BP測定装置による第3生理学的特徴測定値及び決定された較正パラメータから対象の第3BP測定値を得るようにさらに構成される。
【0016】
一部の実施形態では、制御ユニットは、換気装置によりガス流の1つ又は複数の特性を変えた後、特定の時間間隔の間に、第2生理学的特徴測定値を得るように、及び、第2BP測定装置を制御して第2BP測定値を得るように構成される。この実施形態は、血圧変化が生じ且つ安定したということを提供するか又は確実にすることができ、従って、生理学的特徴及びBPの有用な第2の測定値が得られるのを可能にするという利点を有する。
【0017】
一部の実施形態では、制御ユニットは、第1BP測定装置からの信号を分析して、生理学的特徴が安定しているかどうかを決定するように構成され、特定の時間間隔は、生理学的特徴が安定していると決定された時間間隔に一致する。
【0018】
第2の態様にとると、上記の装置と、第1血圧測定装置と、第2血圧測定装置と、換気装置とを含むシステムが提供される。
【0019】
第3の態様によると、第1血圧(BP)測定装置に対する較正パラメータを決定する方法が提供され、当該方法は、第1BP測定装置を使用して、対象の第1生理学的特徴測定値を得るステップであり、第1BP測定装置は、対象の生理学的特徴の生理学的特徴測定値を得るため、及び、生理学的特徴測定値から対象の血圧測定値を決定するためのものである、ステップと、第2BP測定装置を制御して対象の第1BP測定値を得るステップと、対象へのガス流の1つ又は複数の特性を変えるように換気装置を制御し、その結果、対象のBPを変えるステップと、第1BP測定装置を使用して対象の第2生理学的特徴測定値を得るステップと、第2BP測定装置を制御して対象の第2BP測定値を得るステップと、第1生理学的特徴測定値、第2生理学的特徴測定値、第1BP測定値及び第2BP測定値の分析から、第1血圧測定装置によって得られる生理学的特徴測定値からBP測定値を決定するための較正パラメータを決定するステップとを含む。
【0020】
一部の実施形態では、第1生理学的特徴測定値を得るステップ、及び、第2BP測定装置を制御して第1BP測定値を得るステップは、ほぼ同時に行われる。一部の実施形態では、第2生理学的特徴測定値を得るステップ、及び、第2BP測定装置を制御して第2BP測定値を得るステップは、ほぼ同時に行われる。これらの実施形態は、行われている測定間に対象の血圧においていかなる実質的な変化もあるべきではなく、較正パラメータを決定するときに測定値が互いに比較されるのを可能にするということを提供する。
【0021】
一部の実施形態では、1つ又は複数の特性は、ガス流の組成、ガス流の流速及び/又はガス流の圧力を含む。一部の実施形態では、換気装置を制御するステップは、換気装置を制御して対象にため息を誘発することを含む。この実施形態は、血圧変化を誘発することにおける対象へのいかなる不快感も最小限に抑えられるという利点を有する。
【0022】
好ましくは、第1BP測定装置は、BPの連続的又は半連続的測定を得るために使用することができるBP測定装置である。好ましくは、第1BP測定装置によって測定された生理学的特徴は、BPの代替の測定値を提供する。生理学的特徴は、フォトプレチスモグラム(PPG)信号、脈波伝播速度、脈波到達時間又は脈波伝達時間のうちの1つ又は複数の特徴である。
【0023】
第2BP測定装置は、聴診技術、オシロメトリー技術、トノメータ技術、又はボリュームクランプ技術を使用してBPを測定することができる。
【0024】
一部の実施形態では、第2BP測定装置は、対象の異なる肢に使用するための第1可膨張性カフ及び第2可膨張性カフを含み、第2BP測定装置を制御して第1BP測定値を得るステップは、第1可膨張性カフを使用して対象の第1BP測定値を得るように、第2BP測定装置を制御することを含み、さらに、第2BP測定装置を制御して第2BP測定値を得るステップは、第2可膨張性カフを使用して対象の第2BP測定値を得るように、第2BP測定装置を制御することを含む。この実施形態は、信頼性のある2つのカフに基づく血圧測定を、(異なる肢にカフを使用することは、可膨張性カフのどちらか1つの下にある血管及び血流を、もう一方のカフを用いてBP測定を行う前に、定常状態又は正常状態に戻す必要がないということを意味するため)短い時間間隔で行うことができるという利点、及び、対象に対して重大な不快感を引き起こさないという利点を有する。
【0025】
一部の実施形態では、当該方法は、第1BP測定装置による第3生理学的特徴測定値及び決定された較正パラメータから対象の第3BP測定値を得るステップをさらに含む。
【0026】
一部の実施形態では、第2生理学的特徴測定値を得るステップ、及び、第2BP測定装置を制御して第2BP測定値を得るステップは、換気装置によりガス流の1つ又は複数の特性を変えた後、特定の時間間隔の間に行われる。この実施形態は、血圧変化が生じ且つ安定したということを提供するか又は確実にすることができ、従って、生理学的特徴及びBPの有用な第2の測定値が得られるのを可能にするという利点を有する。
【0027】
一部の実施形態では、当該方法は、第1BP測定装置からの信号を分析して、生理学的特徴が安定しているかどうかを決定するステップであって、特定の時間間隔は、生理学的特徴が安定していると決定された時間間隔に一致する、ステップをさらに含む。
【0028】
第4の態様によると、コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトが提供され、コンピュータ可読媒体は、具体化されたコンピュータ可読コードをその中に有し、コンピュータ可読コードは、適したコンピュータ又はプロセッサによる実行時に、コンピュータ又はプロセッサに上記の方法のいずれかを実行させるように構成されている。
【0029】
次に、本発明の例証的な実施形態が、単なる例として、以下の図面を参照しながら記載される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】バルサルバ法の間の心拍及び血圧における変化を例示したグラフを示した図である。
図2】一実施形態による装置と、第1血圧測定装置と、第2血圧測定装置と、換気装置とを含む一実施形態によるシステムのブロック図である。
図3】例証的なフォトプレチスモグラフ(PPG)信号を例示したグラフを示した図である。
図4】対象において使用されている装置、第1血圧測定装置、第2血圧測定装置、及び換気装置の例証的な実施形態を例示した図である。
図5】一実施形態による方法を例示した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上記のように、「代替の」血圧測定技術(すなわち、血圧を直接測定するのではなく他の生理学的特徴の測定値から血圧を推測する測定技術)を使用する血圧測定装置は、(例えば、オシロメトリー技術を使用又は動脈ラインを使用して)より直接的に血圧を測定する血圧測定装置からの測定値を使用して較正する必要がある。較正を行うために、少なくとも2つの血圧測定値/代替の生理学的特徴測定値が各血圧測定装置から要求され、それらの測定値は異なる血圧に対して得られる。この較正を短時間で(例えば、数分以内で、又は、少数の呼吸周期内でさえも)完了させるために、異なる血圧で測定値を得ることができるように、対象において血圧の変化を誘発する必要がある。
【0032】
特許文献1は、上腕の可膨張性カフを膨張させてカフの下の血管内の流れ抵抗を調節し、その結果、腕のより遠位の部分(例えば、手及び指等)において血圧の変化を誘発するということを記載しているが、これは、上記のように欠点を有する。
【0033】
健康で覚醒している対象においては、対象による試みを通じて血圧変化を誘発することが可能である。例えば、対象は、精神的又は身体的な運動をするように求められてもよく、これは、血圧の変化を誘発するであろう。或いは、対象は、口及び鼻を閉じながら呼息を試みることによって肺内の空気圧が上昇する、いわゆる「バルサルバ法」を行うことができる。この操作は、心肺の相互作用(すなわち、肺/換気と心臓/循環との相互作用)のために、対象における心拍数を一時的に増加させ、さらに、血圧を低下させる傾向がある。図1は、どのように収縮期血圧がバルサルバ法の間に変化するかを示している。特に、バルサルバ法の開始直後(t=0)に血圧はわずかに上昇するが、その後約5秒間にわたって著しく(例えば約50mmHg)低下するということが分かる。次に、血圧はt=11付近からt=22付近まで定常に達し、t=22付近にて上昇し始め、バルサルバ法前のレベルまで戻る。生理学的レベルでは、バルサルバ法の間の胸部内の強い陽圧が静脈還流を妨害し、心房充満を低下させ、結果的に一回拍出量の減少を引き起こす。減少した一回拍出量は、全身の血圧の低下と直接相関している。
【0034】
別の選択肢として、対象はため息をつくことができる。ため息(通常よりも多い量の空気を吸入する)には、いくつかの有益な効果があり、それは肺胞を開き、肺胞の弾性に重要な層を肺胞内に形成する界面活性物質を放出し、さらに、呼吸により誘発された肺の伸張が機械受容器を活性化し、これが血管拡張をもたらし、その結果血圧の低下をもたらす。別の可能性は、対象が閉じた気道に対して吸入しようと試みる、いわゆるミュラー法である。
【0035】
これらの自発呼吸法、及び、あくび、咳、ため息等の不随意呼吸法でさえも、胸部の血管にかかる壁内外圧差を変化させ、さらに、静脈還流を変化させる。これらの圧力変化は、中心静脈、右心房及び肺血管の機械的受容器によって感知される。受容器は、神経反応を引き起こす圧受容器及び伸張受容器である。神経反応は動的血圧変化を引き起こす。
【0036】
これらの呼吸法を使用して血圧の変化を誘発することができるけれども、ICU又はOR内の患者は無意識であることが多くあるため、これらの呼吸法を行うことができない。意識のある対象でさえも、正確に呼吸法を行わないかもしれない(又はそれらを正確に行うことができるかもしれない)。
【0037】
これらの難しさを考慮して、本発明の実施形態は、対象に提供されるガス流を変化させ、その結果、血圧の変化を誘発する/引き起こすように換気装置が制御されるということを提供する。一部の実施形態では、換気装置は、対象に提供されるガスの圧力及び/又は流速を変えるように制御することができる。一部の実施形態では、この圧力及び/又は流速の変化を使用して、対象においてバルサルバ法を模倣することができる。一部の実施形態では、対象の血圧は吸入空気中の酸素の量による影響を受ける恐れがあるということが知られているため(これは、例えば非特許文献1から既知である)、換気装置を、さらに又は代わりに、対象に提供されるガスの組成を変えるように制御することができる。生理学的特徴測定は、代替の測定技術を使用する血圧測定装置によって行うことができ、さらに、血圧測定は、この誘発される変化の前後により直接的に血圧を測定する血圧測定装置によって行うことができ、これらの測定値は、代替の血圧測定値と血圧との関係を較正し、従って、正確な血圧測定値が、代替の生理学的特徴のその後の測定から得られることを可能にするために使用される。このように、換気装置の使用は、(例えば、ICU又はORのシナリオにおいて)臨床ワークフローを妨害することなく、血圧変化が無意識の対象において誘発されることを可能にする。当然ながら、換気装置は、意識のある対象において血圧変化を誘発するために使用することもできるということが正しく理解されることになる。
【0038】
第1血圧測定装置に対する較正パラメータを決定するための装置2の一実施形態が、図2において示されている。装置2は、制御ユニット4とメモリユニット6とを含む。装置2は、第1血圧測定装置8及び第2血圧測定装置10に装置2が(例えば接続される等)結合されるシステムの一部として示されている。第1血圧測定装置8は、対象の1つ又は複数の生理学的特徴を測定することができ、対象の1つ又は複数の生理学的特徴は、対象の血圧を決定するように(1つ又は複数の較正パラメータを使用して)処理することができ、さらに、生理学的特徴測定値を装置2に、具体的には制御ユニット4に提供することができる。第1血圧測定装置8は直接的な血圧の測定を行わず、代わりに、第1血圧測定装置8は、血圧を代替の生理学的特徴から得ることができるという意味で、血圧の代替物である生理学的特徴を測定するということが理解されることになる。較正後、第1血圧測定装置8は、生理学的特徴測定値を処理して血圧測定値を決定してもよく、又は、第1血圧測定装置8は、その後の生理学的特徴測定値を制御ユニット4に提供してもよく、さらに、制御ユニット4は、生理学的特徴測定値及び較正パラメータから血圧測定値を決定することができる。第2血圧測定装置10は対象の血圧を測定し、血圧の測定値は制御ユニット4に提供することができる。制御ユニット4は、第1血圧測定装置8による生理学的特徴測定値、及び、第2血圧測定装置10による血圧測定値の取得又はトリガを制御することができる。
【0039】
装置2は、例えば、ワイヤを使用して又は無線接続(例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、3G又は4Gの携帯電話通信等の短距離又は長距離に達する通信プロトコル等)を使用して等、任意の適した手段又は任意の適したタイプの接続を使用して、第1血圧測定装置8及び第2血圧測定装置10に結合させることができる。
【0040】
以下により詳細に記載されるように、装置2は、第2血圧測定装置10による血圧の測定値を使用して、第1血圧測定装置8による生理学的特徴の測定値を血圧に関連付ける1つ又は複数の較正パラメータを決定する。
【0041】
第1血圧測定装置8及び第2血圧測定装置10は、異なる技術を使用して血圧を測定する異なるタイプの装置である。
【0042】
第1血圧測定装置8は、(血圧ではない)生理学的特徴の測定値から正確な又は十分に正確な血圧の測定値を提供するために、(例えば、およそ数分、毎時、又は生理学的特徴が著しく(例えば、閾値量を超えて)変化するとき等)定期的な較正を要求するタイプの測定装置である。数学関数が、代替の生理学的特徴測定値を血圧に関連付けるために使用され、この関数は1つ又は複数の因子及び/又は定数を含む。これらの因子及び/又は定数の値は、較正手順において決定される。これらの因子及び/又は定数は、本明細書において「較正パラメータ」と呼ばれる。このように、第1血圧測定装置8の較正は、装置8によって得られた生理学的特徴測定値を対象の血圧に変換するための数学関数の一部として使用される1つ又は複数の較正パラメータ(に対する値)を決定することによって提供される。較正後、第1血圧測定装置8は、好ましくは(例えば、毎秒、毎分又は心拍毎等)連続的又はほぼ連続的な血圧の測定値を提供することができ、また、好ましくは非侵襲的に測定値を得る。
【0043】
例えば、血圧を決定するために使用される代替の生理学的特徴測定値は、心電図(ECG)信号におけるRピークと指における脈拍の到達時間との時間差を利用する脈拍到着時間(PAT)の測定値であってもよく、指における脈拍の到達時間は、フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサ又は加速度計を使用して測定することができる。
【0044】
別の例として、第1血圧測定装置8は、血圧を決定するために使用される代替の生理学的特徴測定値として脈波伝播速度(PWV)を使用することができる。PWVは、例えば、脈波伝達時間(PTT)として知られている、大腿動脈内及び頸動脈内等、体内の2つの異なる位置での脈拍の到達間の時間差として測定することができる。PWVは、各位置でセンサを使用して測定することができ、センサは、例えばフォトプレチスモグラフィ(PPG)センサ又は加速度計であり得る。
【0045】
或いは、生理学的特徴は、PPG波形(信号)から決定することができる様々な信号特徴を含むことができ、血圧は、PPG信号内の特徴の組み合わせから得ることができる。例証的なPPG信号が図3において示されており、血圧を決定するために使用することができる特徴は、PPG信号内の最高ピーク20の振幅、PPG信号のDC値、パルスの最下部22とパルスのピーク20とを結ぶ線の勾配若しくはグラジエント、又は、ディクロティックノッチ24の(時間における)位置のうちの任意の1つ又は複数を含む。
【0046】
或いは、生理学的特徴は、末梢(例えば指)にて触診される圧力信号の特徴を含むことができ、血圧を決定するために使用することができる。例えば、末梢動脈位置にて加圧されている指カフ又は空気袋内の空気圧を測定し、特徴を抽出することができる。
【0047】
上記のタイプの血圧測定装置並びにその構成及び作動方法は、当業者にはよく知られており、従って、詳細な説明は本明細書においては提供されない。
【0048】
第1血圧測定装置8とは対照的に、第2血圧測定装置10は、正確又は十分正確な血圧の測定値を提供するために別の血圧測定装置からの測定値を使用した定期的な較正を要求しないタイプの測定装置である。第2血圧測定装置10は、典型的には、間欠的な血圧の測定値を得るために使用することができる装置であるが、比較的高い精度でそうするものである。第2血圧測定装置10は、好ましくは、侵襲的に測定値を得る装置ではないけれども、第2血圧測定装置10は、好ましくは、いわゆる「直接的な」測定値を使用して血圧を決定する。例えば、第2血圧測定装置10は、可膨張性カフと、カフが膨張及び/又は収縮したときにコロトコフ音を検出するために使用される音センサとを含むことができる(このタイプの装置は聴診技術を使用する)。
【0049】
或いは、第2血圧測定装置10は、装置10が可膨張性カフ及び圧力センサを含み、可膨張性カフ内の圧力が測定され、圧力における周期的変動が分析されて血圧を決定するオシロメトリー技術を使用することができる。
【0050】
別の選択肢として、第2血圧測定装置10は、例えば動脈内等、体内に埋め込まれ、血圧を直接測定する侵襲的な装置であり得る。これらのタイプの装置は連続的又は半連続的な血圧の測定値を提供することができるけれども、電池の制約を受ける可能性があり、従って、埋め込まれた装置は、電池の寿命を最大にするために省電力モードで使用されてもよく、従って、第1血圧測定装置8を較正するために要求される血圧測定値を得るためにのみ使用されてもよいということが正しく理解されることになる。
【0051】
一部の実施形態では、第2血圧測定装置10は、自己較正するタイプの装置(すなわち、正確な測定値を得るために較正を要求するが、そうするために別の血圧測定装置の使用を要求しない装置)であり得る。例として、対象の指又は身体の他の末梢部分のカフ及びPPGセンサを使用する、ボリュームクランプに基づく血圧測定装置が挙げられる。これらのタイプの装置は連続的又は半連続的な血圧の測定値を提供することができるけれども、指への連続的な圧力によって対象に不快感を引き起こす可能性があり、従ってボリュームクランプ装置は、患者の不快感を最小限に抑えるために「快適」モードで使用されてもよく、従って、第1血圧測定装置8を較正するのに要求される血圧測定値を得るためにのみ使用され、カフは残りの時間収縮されていてもよいということが正しく理解されることになる。
【0052】
他の実施形態では、第2血圧測定装置10は、圧平眼圧測定に基づき得る。
【0053】
これらのタイプの血圧測定装置並びにその構成及び作動方法は、当業者にはよく知られており、従って、詳細な説明は本明細書においては提供されない。
【0054】
以下により詳細に記載されるように、第2血圧測定装置10は、第1血圧測定装置8に対する較正パラメータを決定するために、2つの血圧の測定値を得るために使用される。これらの測定値は、(例えば、数秒又は最大1分又は2分あけて等)比較的短い時間で得られてもよい。第2血圧測定装置10が血圧測定値を得るためにカフを使用する場合、カフが収縮された後で血流が正常状態に戻るのに数分かかり得るため、この期間中に2つの信頼できる血圧測定値を得ることは困難であり得る。従って、一部の実施形態では、この問題を回避するために、第2血圧測定装置10は、(例えば両腕から等)対象の身体の2つの異なる部位から測定値が得られることを可能にする手段を含み得る。従って、一部の実施形態では、第2血圧測定装置10は、2つの可膨張性カフ、及び、異なる肢(例えば異なる腕等)に使用されるそれぞれのセンサ(例えば、聴診測定の場合は音センサ及びオシロメトリー測定の場合は圧力センサ等)を含み、1つのカフは血圧測定値のうちの1つを得るために使用され、もう一方のカフはもう一方の血圧測定値を得るために使用される。第2血圧測定装置10が、対象の身体の2つの異なる部位から測定値が得られることを可能にする手段を含む実施形態において、第2血圧測定装置10は、2つの別々の血圧測定装置を含んでもよいということが正しく理解されることになる。これは、(短い時間に同じカフを2回使用することは痛みを伴うことがあり得るため)較正プロセスが対象にとってそれほど不快ではなく、1回目の測定からの2回目の測定に対する影響はないため、較正プロセスはより信頼できるものであり、さらに、1つのカフの収縮を、もう一方のカフの膨張を開始する前に完了させる必要はないため、測定をより迅速に行うことができるという点でいくつか利点を有する。
【0055】
システムは、対象(特に対象の気道)に制御されたガス流(例えば空気等)を提供するために使用される換気装置12も含み得る。装置2(特に制御ユニット4)は、換気装置12に結合させることができる。装置2と換気装置12との結合は、任意の適した手段又はタイプの接続を使用して行うことができる。換気装置12は、ポンプ、コンプレッサ又は弁を使用して制御されたガス流を対象に提供又は搬送するために使用されるフェイスマスク、鼻マスク、マウスピース又は気管チューブ等の患者インタフェース装置を含み得る。
【0056】
換気装置12は、制御ユニット4の制御下にて、1つ又は複数の流速で、1つ又は複数の圧力で、及び/又は、(例えば、異なるレベルの、酸素等の特定のガスを有して等)1つ又は複数の組成でガス流を選択的に提供するように構成することができる。従って、制御ユニット4は、ガス流の流速、圧力及び/又は組成等、換気装置12によって提供されるガス流の1つ又は複数の特性を設定、変更又は調整するために、換気装置12に制御信号を出力することができる。上述したように、ガス流の流速、圧力及び/又は組成におけるこの変化は、例えば鎮静状態又は睡眠状態にある対象において、対象の血圧の変化を誘発するために使用されるが、この技術は覚醒している対象にも使用することができるということが正しく理解されることになる。
【0057】
一部の実施形態では、換気装置12は、例えば対象への及び/又は対象からの気流を提供して対象自身の呼吸運動(吸息及び/又は呼息)を刺激する又は補うことによって対象の呼吸を補助するために使用される装置である。他の実施形態では、換気装置12は、周囲圧力よりも高い圧力にて気流を提供するために使用される装置、例えば、持続的気道陽圧法(CPAP)又は二相式気道陽圧法(BPAP)を提供するために使用される装置である。知られているように、CPAP及びBPAPは、睡眠時無呼吸を有する対象に対するよく知られた療法であり、陽圧(又はBPAPの場合には圧力)は、寝ている間に対象の気道を開いたままにするのに寄与する。
【0058】
一部の実施形態では、換気装置12は、規則的な間隔で又は指定された時間にため息を誘発するように(すなわち、対象に通常よりも多い量の空気を吸入させるように)構成することができる。これは、数時間以上対象に肺換気を行うために使用される換気装置12によって使用されることが多くある。肺と循環器系との相互作用のために、これらのため息は、血圧の変化を(特に、肺の血圧の変化だけでなく、比較的程度は低いが全身の血圧の変化も)もたらすことにもなる。ため息をついている間の血圧変化は、安静時又は睡眠時において換気呼吸(tidal breathing)をしている間よりも強くなる。当業者は、様々な従来の換気装置が「ため息」の設定又は機能を含むということを認識することになる。
【0059】
一部の実施形態では、換気装置12は、例えば、対象による呼息の間に弁を閉じる(すなわち、ガス流を一時的に止める)ことによって、バルサルバ法を行うよう対象を誘導するように構成されてもよい。他の実施形態では、換気装置12は、吸気の間に弁を閉じる(すなわち、ガス流を一時的に止める)ことによってミュラー法を行うよう対象を誘導するように構成されてもよい。例えば、眠っており且つ自発的に呼吸している対象においては、CPAP換気装置12における吸気流を、弁によって閉じることができる。眠っている対象における呼吸努力のために、陰圧が誘発される。陰圧パルスによって、壁内外圧差のパルス状の変化が生じる。この陰圧パルスは2つの効果を引き起こす。第1の効果は、神経反射を引き起こすことであり、第2の効果は、静脈還流を増加させることである。生理学的には、どちらも血圧の変化に寄与する。これは、換気呼吸におけるミュラー法であると見なすことができる。
【0060】
換気装置12が、対象に提供されるガスの組成を変えるように制御される実施形態では、換気装置12を制御して酸素含有量を増加させる(すなわち、空気中の酸素の割合を増加させる)ことができ、これは、対象の血圧の低下を誘発することになる。或いは、換気装置12を制御して酸素含有量を減少させる(すなわち、酸素の割合を減少させる)ことができ、これは、対象の血圧の上昇を誘発することになる。当業者は、対象の血圧を変えるために(例えば空気等の)ガスの他の成分の量を増減できるということを正しく理解することになる。
【0061】
制御ユニット4は、例えば、第1血圧測定装置8による生理学的特徴測定値の収集及び第2血圧測定装置10による血圧測定値の収集のトリガを制御する、並びに、換気装置12の作動又は設定を制御する等、装置2の作動を制御する。制御ユニット4は、装置2の他の機能及び作動も制御することができる。制御ユニット4は、要求される様々な機能を行うために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて多数の方法で実行することができる。制御ユニット4は、要求される機能を行うためにソフトウェアを使用してプログラムされ得る1つ又は複数のマイクロプロセッサを含んでもよい。制御ユニット4は、いくつかの機能を行うための専用のハードウェアと、他の機能を行うためのプロセッサ(例えば、1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路等)との組み合わせとして実行されてもよい。本開示の様々な実施形態において利用され得る処理構成要素の例として、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
様々な実行において、制御ユニット4は、図2においてメモリユニット6として示されている1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられてもよい。メモリユニット6は、制御ユニット4の一部であってもよく、又は、制御ユニット4に接続される装置2内の別の構成要素であってもよい。メモリユニット6は、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM等、任意の適した又は所望のタイプの揮発性又は不揮発性のコンピュータメモリを含み得る。メモリユニット6は、本明細書において記載される方法を行うために制御ユニット4によって実行され得るコンピュータプログラムコードを格納するために使用することができる。メモリユニット6は、第1血圧測定装置8及び第2血圧測定装置10からの信号又は測定値、及び/又は、第1血圧測定装置8の較正に関する情報を格納するために使用することもできる。
【0063】
一部の実施形態では、第1血圧測定装置8及び第2血圧測定装置10は、装置2から離されている(すなわち、それらは別々の装置である)。上述のように、装置2は、無線で又はワイヤを使用して第1血圧測定装置8及び第2血圧測定装置10に結合させることができる。これらの実施形態では、装置2は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ又はデスクトップコンピュータ等のパーソナル電子デバイス、又は、ベッドサイドモニタ、患者監視システム、センサアレイ等の臨床環境に存在する電子デバイスによって実行することができる。一部の実施形態では、装置2は、第1血圧測定装置8及び第2血圧測定装置10から遠隔のコンピュータ又はサーバにおいて実行することができる(例えば、装置2はクラウド内に位置し得る、すなわちインターネットを介してアクセス可能であり得る)。
【0064】
他の実施形態では、第1血圧測定装置8は、装置2の一部(すなわちそれと一体)であり、装置2は、第2血圧測定装置10に(例えばワイヤを使用して又は無線で)結合させることができる。
【0065】
図2は、装置2の様々な実施形態を例示するのに要求される構成要素を示しているだけであり、実際の実行においては、装置2は、示されているものに対してさらなる構成要素を含むことになるということが正しく理解されることになる。例えば、装置2は、装置2に動力を供給するための電池又は他の電源、第1血圧測定装置8による血圧測定値又は血圧測定値に対する決定された較正パラメータが、別の装置、例えば遠隔コンピュータ(例えば、対象に対する健康パラメータ測定記録を格納するもの)、及び/又は、対象又は別のユーザが装置2と相互作用して制御することを可能にする1つ又は複数のユーザインターフェース構成要素に伝えられるのを可能にするための通信モジュールを含んでもよい。一例として、1つ又は複数のユーザインターフェース構成要素は、装置2及び/又は較正パラメータ決定プロセスを起動及び停止するためのスイッチ、ボタン又は他の制御手段を含み得る。ユーザインターフェース構成要素は、さらに又或いは、決定された血圧に関する情報を表示することを含む、装置2の作動についての情報を対象及び/又は他のユーザに提供するためのディスプレイ又は他の視覚的インジケータも含み得る。
【0066】
図4は、対象30に使用されている装置2、第1血圧測定装置8、第2血圧測定装置10、及び換気装置12の例証的な実施形態を例示した図である。この例証的な実施形態では、第1血圧測定装置8は、代替の生理学的特徴測定値として脈波到達時間(PAT)を測定し、従って、対象30の指からPPG信号を得るPPGセンサ32と、対象30からECG信号を得るために対象30の胸部又は胸郭に置かれる複数の電極34とを含む。PATは、PPG信号内のパルスのタイミングとECG信号内の対応するRピークとから決定される。対象の血圧は、PAT及び1つ又は複数の較正パラメータから決定することができる。
【0067】
この例では、第2血圧測定装置10は、聴診法を使用して血圧を決定し、従って、可膨張性カフ36と、腕内の動脈を通る拍動性の血流によって生成される音、特にコロトコフ音を測定するマイクロフォン又は他の音センサ(図示せず)とを含む。聴診法を使用して得られた第2血圧測定装置10による血圧測定値は、第1血圧測定装置8によるPAT測定値から得られた血圧の測定値を較正する(又は正しくは、血圧の測定値に対する較正パラメータを決定する)ために使用される。結果として、第2血圧測定装置10による測定値は、「較正測定値」と本明細書において呼ばれる。
【0068】
換気装置12は、対象30の口及び鼻の上に配置され、チューブ又はホース40を介して換気装置12に接続されるフェイスマスクの形態の患者インタフェース装置38を含む。換気装置12は、対象において血圧変化を誘発するために使用される。
【0069】
図5における流れ図は、一実施形態による第1血圧測定装置8に対する較正パラメータを決定する方法を例示している。この方法は、制御ユニット4によって実行する又は行うことができる。第1血圧測定装置8は、対象30における生理学的特徴を測定するために連続的又は半連続的に使用されることになり、十分に正確な血圧測定値をそれらの生理学的特徴測定値から得ることができる前に較正を要求するため、図5の方法は、第1血圧測定装置8が最初に起動されたときに行うことができる。図5の方法は、第1血圧測定装置8を再較正するために定期的に(例えば、数分毎又は毎時等)、又は、要求に応じて(例えば、第1血圧測定装置8によって測定されている生理学的特徴が閾値量を超える分だけ変わったとき等)行うこともできる。
【0070】
ステップ101において、対象の代替の生理学的特徴の測定値が、第1血圧測定装置8を使用して得られる。このステップは、制御ユニット4が第1血圧測定装置8に適した制御信号又はトリガ信号を出力して、第1血圧測定装置8に生理学的特徴の測定を行わせることを含んでもよく、又は、第1血圧測定装置8は生理学的特徴を連続的に測定しているかもしれないため、このステップは、制御ユニット4が第1血圧測定装置8から最新の生理学的特徴測定値を受信又は得ることを含んでもよい。この生理学的特徴測定値は、「第1」生理学的特徴測定値と呼ばれる。
【0071】
ステップ103において、第2血圧測定装置10は、対象30の血圧測定値を得るように、(例えば、制御ユニット4が適した制御信号又はトリガ信号を第2血圧測定装置10に出力することによって等)制御ユニット4によって制御される。この血圧測定値は、「第1」血圧測定値又は「第1較正測定値」と呼ばれる。ステップ101及び103は、同時に行うことができるか、又は、第1生理学的特徴測定値及び第1血液測定値の取得の間に対象30の血圧の変化が起こらないように十分に近い時間に(どちらの順でも)行うことができる。例えば、第1生理学的特徴測定値及び第1血圧測定値は、同じ呼吸周期中に(すなわち、同じ呼吸内に)得ることができる。或いは、安定した血圧を有する(すなわち、血圧が時間の経過に伴い比較的一定である)対象については、第1生理学的特徴測定及び第1血圧測定の間の時間は、数秒、又は数分でさえあり得る。第1血圧測定装置8がカフに基づく第2血圧測定装置10よりも遠位の部位で生理学的特徴を測定する場合、第1血圧測定装置8は、上腕カフが膨張又は収縮されている時に第1生理学的特徴測定値を得るべきではないということが正しく理解されることになる。その場合、第1生理学的特徴測定値は、第2血圧測定装置10が第1血圧測定値の取得を開始する前に、又は、カフの収縮が終了し血流が安定したレベルまで戻る機会を得た後のある時点にて得ることができる。
【0072】
次に、ステップ105において、制御ユニット4は、換気装置12を制御して、対象30へのガス流の特性を変化させ、その結果、対象30の血圧の変化を誘発する。変えられる特性は、ガスの流速、ガス流の圧力、及び/又はガスの組成(例えば、酸素含有量等)であり得る。血圧変化が増加であるか減少であるかは問題にならないということが正しく理解されることになる。特定の実施形態では、制御ユニット4は、換気装置12を制御して、空気の流速(すなわち気流の速度)及び/又は気流の圧力を変えることができる。流速の変化は増減であり得る。例えば、流速は、通常の換気装置の作動と比較して、およそ3から4倍増加させることができる。ステップ105がガス流の圧力を変化させることを含む場合、圧力変化は、およそ5~10ミリバール(500~1000パスカル)であり得る。空気の流速及び/又は圧力の変化は、対象にバルサルバ法を行わせる(すなわち模倣させる)ために使用することができる。例えば換気装置12がCPAPベンチレータである代替的な実施形態では、ステップ105は、陽圧の量を(例えば、およそ5~10ミリバール)変えることを含み得る。代替的な実施形態では、制御ユニット4は、対象30においてため息を誘発するように換気装置12を制御することができる(すなわち、換気装置12は、対象30に対して特定の吸入において通常よりも多い量の空気を提供する)。換気装置12が、対象においてため息を誘発するために使用される場合、ステップ105は、通常の換気呼吸のために使用される流速よりも3倍又は4倍高く流速を増加させることを含み得る。換気装置12における従来のため息機能をこのステップで使用することができるということが正しく理解されることになる。
【0073】
対象がその他の点では換気装置12からの支持を要求しない一部の実施形態では、換気装置12は、ステップ105が行われることになるまで停止させることができ、この場合、ステップ105は、換気装置12を起動させて、特定の圧力、流速及び/又は組成にてガス流を提供し、患者のBPに変化を誘発することを含む。この実施形態では、ステップ105によって、ガス流がない状態からゼロではない流速及び圧力を有するガスにガス流が変えられるということが正しく理解されることになる。
【0074】
対象30の血圧の変化を誘発するように換気装置12を制御した後、制御ユニット4は、第1血圧測定装置8を使用して生理学的特徴の別の測定値を得る(ステップ107)。この生理学的特徴測定値は、「第二」生理学的特徴測定値と呼ばれる。ステップ101と同様に、第1生理学的特徴測定装置8は連続的又は半連続的に生理学的特徴を監視しているため、ステップ107は、制御ユニット4が、第1血圧測定装置8から現在の生理学的特徴測定値を得ることを含んでもよく、制御ユニット4がその時間に生理学的特徴測定値を明示的に要求するのではない。しかし、或いは、このステップは、制御ユニット4が、生理学的特徴の測定をするように第1血圧測定装置8を制御することを含み得る。
【0075】
制御ユニット4は、対象30の別の血圧測定値を得るように第2血圧測定装置10も制御する(ステップ109)。この血圧測定値は、「第2」血圧測定値又は「第2」較正測定値と呼ばれる。上述のように、一部の実施形態では、第2血圧測定装置10は、第2血圧測定装置10が対象の身体上の2つの異なる部位から血圧測定値を得ることを可能にする手段を含み得る。例えば、第2血圧測定装置10は、2つの可膨張性カフを含むことができ、この場合、ステップ109は、第2血圧測定値を得るための、ステップ103で使用されたものとは異なるカフを使用して第2血圧測定値を得ることを含み得る。
【0076】
第1生理学的特徴測定値及び第1血圧測定値と同様に、ステップ107及び109は、同時に行うことができるか、又は、第2生理学的特徴測定値及び第2血圧測定値の取得の間に対象30の血圧の変化が起こらないように十分近い時間に(どちらの順でも)行うことができる。第1生理学的特徴測定値と第1血圧測定値との相対的タイミングに関する上記の他の要件は、第2生理学的特徴測定値と第2血圧測定値との相対的タイミングにも当てはまり得る。
【0077】
換気装置12によって誘発される血圧変化は比較的短い時間(例えば数秒間)しか発生しないため、ステップ107及び109は、ステップ105が行われた直後に行われるが、換気装置12が空気の流れを変えたとき、血圧の変化は即座に発生せず、従って、制御ユニット4は、第2生理学的特徴測定値及び第2血圧測定値をそれぞれ得るように第1血圧測定装置8及び第2血圧測定装置10をトリガする前に、気流における変化から十分な時間が経過するのを可能にするということが正しく理解されることになる。第2生理学的特徴測定及び第2血圧測定のタイミングは、以下により詳細に記載される。
【0078】
ステップ109の後で、制御ユニット4は、第1生理学的特徴測定値、第2生理学的特徴測定値、第1血圧測定値、及び第2血圧測定値の分析から、第1血圧測定装置8に対する1つ又は複数の較正パラメータを決定する(ステップ111)。すなわち、制御ユニット4は、対象30の正確な(又は十分に正確な)血圧の測定値を提供するために、第1血圧測定装置8による後の生理学的特徴測定値に適用されることになる1つ又は複数の較正パラメータを決定する。これは、典型的には、回帰によって行われ、すなわち、代替の生理学的特徴測定値を血圧にマッピングするモデル化された機能的関係又は他の数学的関係が、測定された代替の測定値(すなわち、ステップ101及び107で得られた生理学的特徴の測定値)、及び、第2血圧測定装置10からの血圧測定値にフィットさせられる。フィッティング(マッピング)の結果として、1つ又は複数の較正パラメータの値が得られる。
【0079】
1つ又は複数の較正パラメータがステップ111において決定されると、制御ユニット4又は(必要に応じて)第1血圧測定装置8は、1つ又は複数の較正パラメータを使用して対象30の血圧測定値を決定することができる。これは、図5において任意的ステップ113として示されている。特に、ステップ113において、制御ユニット4は、第1血圧測定装置8を制御又はトリガして少なくとも1つのさらなる生理学的特徴測定値(「第3」生理学的特徴測定値」と呼ばれる)を得ることができる。ステップ111において決定された1つ又は複数の較正パラメータは、第3生理学的特徴測定値(例えばPAT)を血圧に関連付ける数学関数において使用される。この血圧測定値は、血圧の「較正された測定値」と呼ばれる。ステップ113を繰り返して、対象30の連続的又は半連続的な血圧の測定値を提供することができる。
【0080】
1つ又は複数の較正パラメータがステップ111において決定された後(又は、おそらくは第2生理学的特徴測定値及び第2血圧測定値がステップ107及び109において得られると)、第2血圧測定装置10は1つ又は複数の較正パラメータを決定するためにのみ要求されるため、第2血圧測定装置10を停止させることができる(すなわち、第2血圧測定装置10がカフを含む場合、カフは収縮される)。第2血圧測定装置10はその後、較正パラメータが更新されることになる場合に再起動又は使用されてもよい。
【0081】
同様に、ステップ111の後、又は、おそらくステップ107/109の後で、換気装置12を制御して、空気の流れが血圧の変化を誘発しない又はもはや誘発しないように、対象30への気流を変化させることができる。従って、例えば、換気装置12は、空気の流速及び/又は圧力がステップ105に先立ち使用されていた空気の流速及び/又は圧力に戻されるように制御することができる。対象30がその他の点では換気装置12の使用を要求しない場合、制御ユニット4は、換気装置12を停止させてもよい(すなわち、従って、空気の流速及び気流の圧力はゼロになる)。この場合、対象30に空気の流れを提供するために使用される患者インタフェース装置38は、対象30の顔面から取り外すことができる。較正パラメータが更新されることになるときには、患者インタフェース装置38を対象30に再び適用し、換気装置12を再起動させることができる。
【0082】
換気装置12が対象30においてため息を定期的に誘発するために使用される実施形態では、図5の方法を行って、これらの定期的なため息を利用し、較正を行うことができる。従って、ため息が従来のため息サイクルの一部として行われることになる場合、ステップ101及び103はため息に先立ち行われるようにタイミングをとられ、ステップ107及び109はため息の後に行われるようにタイミングがとられ得る。この場合、ステップ105は、進行中のため息サイクルに従ってため息を引き起こすように換気装置12が制御されることを含む。この実施形態では、図5の較正手順は、ため息が発生するたびに、又は、特定のため息に対してのみ(例えば、1つおきのため息、5つのため息ごと等)行うことができる。
【0083】
一部の実施形態では、第1血圧測定値及び第2血圧測定値が信頼できるものであるということを確実にするために、制御ユニット4は、第1血圧測定装置8により得られた生理学的特徴測定値を分析して、第2血圧測定装置10による血圧測定の時間にて血圧が安定している(すなわち一定である)かどうかを決定することができる。特に、制御ユニット4は、生理学的特徴、例えばPWV、PAT、PTT等の測定値を分析する、又は、例えばPPG信号、加速度計の信号又はECG信号等、関連する測定値信号の特徴自体(すなわち、血圧を決定することに関連する特徴)を分析して、第2血圧測定装置10が血圧を測定している間に、関連する特徴が一定であるか若しくは実質的に一定である(すなわち、閾値量を超えて変化しない)かどうかを決定することができる。生理学的特徴が一定でない(又は実質的に一定でない)場合、制御ユニット4は、その第2血圧測定装置10による血圧測定値を捨て、生理学的特徴が一定又は実質的に一定であると決定されたときに新たな測定を行うことができる。この場合、測定が両方の装置8、10によって同時に(又はほぼ同時に)要求されるため、第1血圧測定装置8による新たな生理学的特徴測定値も要求され得る。
【0084】
一部の実施形態では、ステップ105の後、制御ユニット4は、第1血圧測定装置8により行われた生理学的特徴測定を分析して、換気装置12の設定の変更後に血圧が安定した(すなわち、再び一定である)かどうかを決定することができる。従って、換気装置12の設定が変更されて血圧の変化を誘発した後、制御ユニット4は、ステップ107及び109を開始する前に、血圧の変化が安定するか又は「プラトー」になるまで待機する。制御ユニット4は、第2血圧測定装置10による血圧測定値が信頼できるものであるかどうかをチェックするために、上記と同じ方法で血圧が安定したか又はプラトーになったかどうか決定することができる。例えば、図1を参照すると、制御ユニット4は、血圧が安定したT=11秒又は12秒付近まで、ステップ107及び109のトリガを遅らせることができる。
【0085】
図5における方法は、第1血圧測定装置8が最初に起動されたときに行うことができる。一部の実施形態では、図5における方法を定期的に繰り返して、新たな又は更新された較正パラメータを決定することができる。或いは、図5における方法は、較正パラメータが決定されてから一定の時間が経過した後で繰り返すことができる。別の選択肢として、図5における方法は、代替の測定値(すなわち、血圧を決定するために使用される生理学的特徴の測定値)における特性又は特徴がかなり変化したときに繰り返すことができる。例えば、図5における方法は、最後の較正測定の時点からの値と比較した場合の特性又は生理学的特徴測定値の差が規定の閾値を超えたときに繰り返すことができる。特定の例では、PPG信号の場合、かなりの変化は、2倍以上のPPG信号の振幅(すなわちAC値)の変化として考慮することができる。別の特定の例では、PPG信号の場合、かなりの変化は、2倍以上のPPG信号のDC値の変化として考慮することができる。別の選択肢として、図5における方法は、較正パラメータが決定された直後に得られた生理学的特徴測定値(例えば第3生理学的特徴測定値等)から決定された血圧測定値と比較した場合の生理学的特徴測定値から決定された血圧測定値との差が、規定の閾値を超えたときに繰り返すことができる。さらに別の選択肢では、対象の生理学的特徴を測定する別のセンサからの測定値を使用して、再較正が行われる必要があるかどうかを決定することができる。生理学的特徴は、心拍数、不整脈の存在、液量の変化等であり得る。
【0086】
図4において示されている装置2、装置8、10、及び換気装置12を参照した図5の方法の例証的な実行が以下に記載される。第1血圧測定装置8の一部を形成するPPGセンサ32及びECG電極34は、血圧の測定値を連続的に得るために使用される。
【0087】
較正を行う時が来た場合(例えば、以前の較正後、一定の時間が経過したため、代替の生理学的特徴における特性がかなり変化したため、又は、1つ又は複数の他のセンサがかなりの変化を測定したため等)、上腕カフ36を膨張及び収縮させて、オシロメトリー血圧測定値を得て、「現実の」又は「実際の」血圧を決定する(ステップ103)。この血圧測定値が得られる時間窓はt1と呼ばれる。生理学的特徴測定値も、時間t1において第1血圧測定装置8によって得られる(ステップ101)。その後、制御ユニット4は、換気装置12を制御してその流量及び/又は圧力を変化させて、対象30において血圧変化を誘発させる(ステップ105)。この血圧変化がもたらされ、血圧が安定した又はプラトーになった(又は、例えば、換気装置12による変化に対する対象の血圧の反応の以前の観察、又は、対象の集団に対する観察に基づき安定している又はプラトーになっていると予想される)場合、第2血圧測定装置10は、上腕カフ36を使用してさらなる「現実の」血圧測定値を得る(ステップ109)。この血圧測定値が得られる時間窓はt2と呼ばれる。生理学的特徴のさらなる測定値も、この時間窓において第1血圧測定装置8によって得られる(ステップ107)。
【0088】
制御ユニット4は、上腕カフ36を使用して得られた第1及び第2血圧測定値が、血圧レベルがほぼ一定である時間窓において得られたかどうかを決定するためのチェックを、代替の測定値(例えば、PAT、PTT、又はPPG信号における特性)がこれらの期間においてほぼ一定であるかどうかをチェックすることによって行うことができる。そうである場合、t1中に得られた第1血圧測定装置8による少なくとも1つの生理学的特徴測定値(又は、任意的に、平均されるt1中に第1血圧測定装置8により得られた複数の血圧測定値)は、t1において第2血圧測定装置10により得られた第1血液測定値と対になる。さらに、t2中に得られた第1血圧測定装置8による少なくとも1つの生理学的特徴測定値(又は、任意的に、平均されるt2中に第1血圧測定装置8により得られた複数の生理学的特徴測定値)は、t2において第2血圧測定装置10により得られた第2血圧測定値と対になる。その後、代替の生理学的特徴測定値のそれぞれと対応する実際の血圧との関係が決定される(ステップ111)。この関係は、次の較正が行われるまで、第1血圧測定装置8を使用して血圧を連続的に監視するために使用されることになる1つ又は複数の較正パラメータを提供する。
【0089】
バルサルバ法の効果が換気装置12によって(例えば、1回の呼息の間に弁を閉じることによって)誘発される実施形態では、第2生理学的特徴測定及び第2の血圧測定(ステップ107及び109)のタイミングは極めて重要になる。図1において示されているように、健康な人では、血圧の低下は典型的には10から23秒のプラトーを有する。良好なオシロメトリー血圧測定のためには、多くの心拍にわたる測定が測定時間窓内で要求され、血圧レベルもこの時間窓内で比較的安定している必要がある。好ましくは、測定時間窓内に少なくとも5つの心拍がある。しかし、特に事前に利用可能な血圧レベルの良好な推定値がない場合には、15もの心拍が時間窓内に必要とされることは珍しいことではない。これは、毎分60拍(bpm)の心拍では、時間窓は、少なくとも4秒(しかし多くの場合それ以上)の長さである必要があるということを意味する。これらの心拍は、プラトーの期間に低下する必要がある。従って、これは、カフ36の膨張及び/又は収縮を開始するときの適切なタイミング(すなわち、第2血圧測定値を得るとき(ステップ109)の適切なタイミング)を要求する。(例えば、病気又は薬物により)乱れた自律神経系を有する対象では、バルサルバ法の後、より短いプラトー期間である、若しくは、プラトーは全くない可能性さえあり、又は、それは(例えば後に開始する等)異なるタイミングを有し得る。そのため、時間窓t2の間の代替の測定の安定性のチェックが行われる。安定性がない場合、第2較正点(すなわち、第2血圧測定値)は信頼することができない。
【0090】
一部の実施形態では、制御ユニット4は、換気装置12による気流の各変化後に代替の生理学的特徴測定値の安定性を観察し、変化後にどれくらい血圧レベルが安定しているかを決定することができる。制御ユニット4は、次に、その情報を使用して第2血圧測定(ステップ109)のトリガのタイミングを決定することができる。
【0091】
第2血圧測定のタイミングに関する問題を最小にする1つの方法は、ステップ105における気流に変え、血圧レベルが安定するまで(すなわち、短期間の変化を適用する代わりに)それらの設定に換気装置12を維持することである。この安定性又はプラトーに達するときに、上腕カフ36を用いた現実の血圧測定を行うことができる。現実の血圧測定値が測定された後、制御ユニット4は、換気装置12を制御して前の設定に戻すことができる。一例として、換気装置12が、普通の状態では、4cmH2Oの持続的気道陽圧で使用されると仮定する。第1較正測定値(すなわち、ステップ103における第1血圧測定値)が、圧力がしばらくの間4cmH2Oであったときに得られる。睡眠時無呼吸を治療するための気道陽圧の場合、圧力は数時間4cmH2Oであり得る。血圧変化を誘発するために、圧力は、例えば12cmH2Oまで上げられ、この圧力は、(代替の測定値が安定した直後にだけトリガされる)第2較正測定(ステップ109)が行われるまで維持される。その後、換気装置12を制御して、4cmH2Oに気道陽圧を戻すことができる。代替の測定値(の中の特徴)の安定性によって第2較正測定をトリガする代わりに、制御ユニット4は、或いは、血圧が安定したレベルに達したと予想されるときに、換気装置12が変化してからある設定時間(例えば、いつも30秒)待機することができる。
【0092】
図5における方法は、誘発された血圧変化の前後の各血圧測定装置8、10による単一の測定のみを要求するけれども、生理学的特徴測定値と血圧測定値のさらなるの対を使用して較正を行うことが可能であるということが正しく理解されることになる。この場合、当該方法は、換気装置12からの気流がさらに変更されて異なる血圧変化を誘発し、次に、ステップ107及び109をその異なる血圧で行うことができるステップ105のさらなる例を含み得る。例えば、上記のCPAPの例では、気道陽圧を4cmH2Oの通常設定から12cmH2Oに変更して血圧変化を誘発し、次に、12cmH2Oから8cmH2Oに変更して異なる変化を誘発することができる。血圧測定値の第3セットが得られた後で、換気装置12を制御して、陽圧を4cmH2Oに戻すことができる。
【0093】
換気装置12の設定における1つ又は複数の変更が、極めて近い時間に続く2つの血圧レベルを生じさせる場合、及び、カフの膨張及び収縮のタイミングが適切に選択される場合にも、カフ36の膨張中に第1較正測定値を得る(ステップ103)、及び、カフ36の収縮中に第2較正測定値を得る(ステップ109)ことが可能であるということが正しく理解されることになる。
【0094】
従って、血圧測定装置によって得られた血圧の測定値を較正するための改善された方法及び装置が提供される。
【0095】
本発明は、図面及び上述の説明において詳細に図示及び記載されてきたけれども、そのような図示及び記載は、例示的又は例証的であり、限定的ではないと考慮されることになる。本発明は、開示された実施形態に限定されない。
【0096】
開示された実施形態に対する変化は、請求された発明を実行する際に、図面、明細書、及び付随の特許請求の範囲の調査から当業者により理解する及びもたらすことができる。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞はその複数形を除外しない。1つのプロセッサ又は他の処理ユニットは、特許請求の範囲において列挙されたいくつかの項目の機能を満たすことができる。特定の手段が互いに異なる従属項において記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを役立つよう使用することができないと示しているわけではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に若しくはその一部として供給される、光記憶媒体又は固体記憶媒体等、適したメディア上に記憶/分散させてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の通信システムを介して等、他の形態で分散させてもよい。特許請求の範囲におけるいかなる参照番号も、その範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5