(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ディスクフライス加工カッターおよびそのようなディスクフライス加工カッターを備えるキット
(51)【国際特許分類】
B23C 5/28 20060101AFI20221012BHJP
B23C 5/08 20060101ALI20221012BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B23C5/28
B23C5/08 A
B23Q11/10 D
(21)【出願番号】P 2019523720
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2017075167
(87)【国際公開番号】W WO2018086801
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-08-04
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レフト, ラルフ
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-166211(JP,A)
【文献】実開平02-023919(JP,U)
【文献】特開昭57-149112(JP,A)
【文献】特開2015-202563(JP,A)
【文献】特開2000-043027(JP,A)
【文献】特開2015-168014(JP,A)
【文献】特開平02-284817(JP,A)
【文献】特開2012-232406(JP,A)
【文献】特開2017-047517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/28
B23C 5/08
B23Q 11/10
B23D 45/16
B23D 47/00
B23D 61/02
B27B 5/00- 9/04
B28D 1/02- 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)金属切削機械加工のための
少なくとも1つのディスクフライス加工カッターであり、
複数の切れ刃、または切削インサートのための複数の受け座を具備する外周辺部分と、
回転可能工具ホルダのシャフトに前記ディスクフライス加工カッターを取り付けるための中央貫通孔と、
前記中央貫通孔を貫通する前記シャフトに対して特定の角度位置に前記ディスクフライス加工カッターの回転防止装着を提供するように構成された手段と、
前記ディスクフライス加工カッターの内側中央部分に位置する径方向内側開口から前記外周辺部分の少なくとも1つの流出口開口へと前記ディスクフライス加工カッター内で径方向に延在する少なくとも1つの内部冷却剤チャンネルと、
冷却剤を受けるとともに、前記径方向に延在する内部冷却剤チャンネルの前記径方向内側開口と連通するための、前記ディスクフライス加工カッターの前記内側中央部分の第1の軸方向に向けられた側の当接面における少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口と、
を備えるディスクフライス加工カッターであって、
前記少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口は、前記第1の軸方向に向けられた側の当接面から、前記ディスクフライス加工カッターの前記内側中央部分の反対側の第2の軸方向に向けられた側の当接面へと前記ディスクフライス加工カッターを貫通して延在する軸方向貫通孔によって形成されることを特徴とする、ディスクフライス加工カッター
と、
b)少なくとも1つのスペーサリングであって、前記ディスクフライス加工カッターと同一の前記回転可能工具ホルダのシャフトに前記スペーサリングを取り付けるための中央貫通孔を有し、前記スペーサリングは、前記回転可能工具ホルダの前記シャフトに対して所定の角度位置に前記スペーサリングの回転防止装着を提供するように構成された手段を有し、前記スペーサリングは、前記スペーサリングが前記所定の角度位置にある前記ディスクフライス加工カッターの前記第1のまたは第2の軸方向に向けられた側の当接面に当接しているときに、前記ディスクフライス加工カッターにおける前記少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口と連通するように位置する少なくとも1つの軸方向貫通孔を備える、少なくとも1つのスペーサリングとを備える、キットであって、
前記少なくとも1つのディスクフライス加工カッターおよび前記少なくとも1つのスペーサリングを前記回転可能工具ホルダの前記シャフトに固定するための係止手段を更に備え、
前記係止手段は、蓋部であって、前記係止手段の固定状態において前記スペーサリングまたは前記ディスクフライス加工カッターの前記第1のまたは第2の軸方向に向けられた側の当接面に前記蓋部をクランプする装着部材によって前記シャフトの端部に取り付け可能な蓋部を備え、
前記蓋部は、
前記シャフトの前記端部に開いている中央冷却剤チャンネルと、
前記蓋部と接触する前記スペーサリングまたは前記ディスクフライス加工カッターにおける前記軸方向貫通孔との間で冷却剤を連通するための冷却剤接続部を備える、キット。
【請求項2】
前記ディスクフライス加工カッターが、前記中央貫通孔の周りに少なくとも部分的に延在し、前記少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口を少なくとも2つの径方向に延在する内部冷却剤チャンネルに接続する少なくとも1つの内部冷却剤分配チャンネルを有することを特徴とする、請求項1に記載の
キット。
【請求項3】
前記ディスクフライス加工カッターが、前記軸方向に向けられた流入口開口を形成する複数の軸方向貫通孔を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の
キット。
【請求項4】
前記軸方向に向けられた流入口開口を形成する前記軸方向貫通孔は、前記中央貫通孔の周りに均等に分散されることを特徴とする、請求項3に記載の
キット。
【請求項5】
軸方向に向けられた流入口開口を形成する全ての軸方向貫通孔は、前記少なくとも1つの内部冷却剤分配チャンネル内に開口することを特徴とする、請求項2に記載の
キット。
【請求項6】
前記内部冷却剤分配チャンネルは、前記中央貫通孔を包囲し、全ての軸方向に向けられた流入口開口を、前記ディスクフライス加工カッターの前記径方向に延在する内部冷却剤チャンネルに接続する環状チャンネルであることを特徴とする、請求項2に記載の
キット。
【請求項7】
前記少なくとも1つの内部冷却剤チャンネルの前記少なくとも1つの流出口開口は、前記ディスクフライス加工カッターの前記
外周辺部分に形成された切りくずポケット内に位置することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の
キット。
【請求項8】
複数のディスクフライス加工カッターを備え、少なくとも1つのディスクフライス加工カッターは、これ
が、前記シャフトに装着されたときに少なくとも1つのディスクフライス加工カッターの前記切れ刃またはその前記切削インサートの前記切れ刃が別のディスクフライス加工カッターの前記切れ刃またはその前記切削インサートの前記切れ刃に対して周方向に変位しているという意味において前記シャフトに対して別のディスクフライス加工カッターの角度位置とは異なる角度位置に得る前記ディスクフライス加工カッターの回転防止装着を提供するように構成された前記手段を有することを特徴とする、
請求項1から7のいずれか一項に記載のキット。
【請求項9】
前記所定の角度位置において前記ディスクフライス加工カッターの前記軸方向貫通孔のうちの最大限でも半数がスペーサリングの軸方向貫通孔と連通するように位置するように、少なくとも1つのディスクフライス加工カッターにおける軸方向貫通孔の数は、前記スペーサリングの前記軸方向貫通孔の数の倍数であることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
少なくとも1つの請求項4に記載のディスクフライス加工カッターを有し、前記スペーサリングにおける前記軸方向貫通孔は、前記中央貫通孔の周りに均等に分散されることを特徴とする、請求項
9に記載のキット。
【請求項11】
複数のスペーサリングおよび/または複数のディスクフライス加工カッターを備えることを特徴とする、請求項
1から10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
前記装着部材は、前記シャフトの前記端部における前記中央冷却剤チャンネルの内部ねじ山にねじ込まれる外部ねじ山付きシャンクを有するクランプスクリューであり、前記クランプスクリューの前記シャンクは、前記シャフトの前記中央冷却剤チャンネルと前記蓋部の前記冷却剤接続部との間での冷却剤連通のために前記係止手段の少なくとも1つの供給チャンネルを備えることを特徴とする、
請求項1から11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
前記回転可能工具ホルダであって、前記回転可能工具ホルダの後端部において冷却剤源に接続されるように構成された前記中央冷却剤チャンネルを有する前記回転可能工具ホルダを更に備えることを特徴とする、
請求項1から12のいずれか一項に記載のキット。
【請求項14】
前記回転可能工具ホルダは、前記シャフトに取り付けられた前記スペーサリングまたは前記ディスクフライス加工カッターの前記軸方向に向けられた側の当接面に当接する軸方向に向けられた取り付け面を有する鍔部を有し、前記回転可能工具ホルダは、前記中央冷却剤チャンネルに接続されるとともに前記鍔部の前記取り付け面における供給開口において終わる少なくとも1つの更なる冷却剤チャンネルを具備し、前記供給開口は、前記ディスクフライス加工カッターの前記第1のまたは第2の軸方向に向けられた側の当接面における前記少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口または前記スペーサリングの前記軸方向貫通孔に冷却剤を提供するように位置付けられることを特徴とする、請求項
13に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添付の請求項1のプリアンブルによるディスクフライス加工カッター、およびそのようなディスクフライス加工カッターを備えるキットに関する。
【0002】
本発明は、単にスロットフライス加工のために設計されたディスクフライス加工カッター、側面および表面フライス加工のためにも設計されたディスクフライス加工カッターなど、異なる設計のディスクフライス加工カッターに関する。しかしながら、本発明は、同一のシャフトに取り付けられた複数のディスクフライス加工カッターを有する、いわゆるギャングフライス加工において特に有用である。
【0003】
回転するディスクフライス加工カッターによって金属ワークピースをフライス加工するとき、気体もしくは液体または気体と液体との混合物の形態の冷却剤/洗浄流体によってワークピースおよび/またはディスクフライス加工カッターを洗浄することがしばしば有利であり、または、必要でさえある。それ故、そのような冷却/洗浄は、異なる理由のために、例えば、機械加工中の冷却および/または潤滑目的のためにまたはワークピースからの切りくずの洗い流し/排出のために実施され得る。故に、本発明は、ディスクフライス加工カッターによる機械加工中の、ディスクフライス加工カッターの冷却という問題、および、ワークピースからの切りくずの洗い流しという問題に向けられている。
【背景技術】
【0004】
ディスクフライス加工カッターの冷却/洗浄を達成するための知られたやり方は、実際の機械加工が行われる場所からある距離において、液体および/または気体の流れを外側からディスクフライス加工カッターおよびワークピースに単純に向けることである。しかしながら、そのような外部冷却/洗浄は非効率的である。特には、外側からディスクフライス加工カッターおよびワークピースに向けられた1つまたは複数の外部冷却剤/洗浄流体の噴流によって切りくずを洗い流す目的での冷却剤/洗浄流体による洗浄は、極めて非効果的であり、というのは、冷却剤/洗浄流体の大部分は、冷却剤/洗浄流体が切りくずを洗い流し/排出するために使用され得る機械加工エリア(機械加工されるスロット/溝の内側)に到達しないからである。液体冷却剤の場合は、この非効率的な冷却/洗浄は、大量の廃棄液体の形成ももたらし、この廃棄液体は収集され、フィルタリングまたは処分されなければならない。
【0005】
EP2929967A1は、比較的深くて狭いスロットをフライス加工するために使用されるディスクフライス加工カッターを開示している。この知られたディスクフライス加工カッターは、ディスクフライス加工カッターの内側中央部分に位置する径方向内側(流入口)開口からディスクフライス加工カッターの外周辺部分の流出口開口へとディスクフライス加工カッター内で径方向に延在する内部冷却剤/洗浄流体チャンネルを具備する。内部冷却剤/洗浄流体チャンネルには、ディスクフライス加工カッターが支えられる端面の工具ホルダシャフト開口を通じて冷却剤/洗浄流体が配給される。この知られたディスクフライス加工カッターは、上記の外部冷却/洗浄の短所を回避しつつ、効率的な冷却/洗浄を提供するが、いくつかの制約がある。そのような制約の1つは、このディスクフライス加工カッターの使用は、このディスクフライス加工カッターのために特別に設計された工具ホルダを要することである。故に、中央冷却剤/洗浄流体流出口開口を有する標準的な工具ホルダシャフトは、そのようなディスクフライス加工カッターには使用され得ない。更に、そのような知られたディスクフライス加工カッターは、1つの所定の方向に回転しつつ行う金属切削機械加工だけに使用され得る。別の制約は、いわゆるギャングフライス加工を可能にするために2つ以上のそのようなディスクフライス加工カッターが、同一の工具ホルダに接続され得ないことである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、添付の請求項1のプリアンブルに記載のディスクフライス加工カッター、および上に述べられた制約に鑑みて改良されたそのようなディスクフライス加工カッターを備えるキットを提供することである。
【0007】
この目的は、ディスクフライス加工カッターに請求項1の特徴付け部分の特徴を提供することによって得られる本発明によるディスクフライス加工カッターに関連する。
【0008】
第1の軸方向に向けられた側の当接面からディスクフライス加工カッターの内側中央部分の反対側の第2の軸方向に向けられた側の当接面へとディスクフライス加工カッターを貫通して延在する軸方向貫通孔によって形成された、ディスクフライス加工カッターにおける少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口によって、ディスクフライス加工カッターは、冷却剤/洗浄流体を受け取ることと、シャフトの端部に中央流出口を有する中央冷却剤/洗浄流体チャンネルを有する標準的な工具ホルダシャフト(これは、キットに関連して以下に更に説明される、標準的なシャフトの端部に取り付けられた係止手段を介して冷却剤/洗浄流体を連通させている)の外側で、軸方向に、冷却剤/洗浄流体を更に連通させることとの両方が可能である。ディスクフライス加工カッターは、1つだけではなくていくつかのディスクフライス加工カッター(ギャングフライス加工)を、標準的な工具ホルダシャフトに沿った任意の所望の軸方向位置/構成で取り付けることを(キットに関連して以下に更に説明されるスペーサリングを取り付けることによって)可能にする。ディスクフライス加工カッターは、工具ホルダのシャフトを1方向に回転させることによるワークピースの金属切削フライス加工を実行するためにも使用され得、そのようなフライス加工のための回転方向は、単純にシャフトからディスクフライス加工カッターを取り外し、逆転させてシャフトに取り付けることで変更され得る。従って、導入部で説明された種類の知られたディスクフライス加工カッターに対して、そのようなディスクフライス加工カッターの使用の柔軟性が増加される。本明細書において、本発明による「冷却剤チャンネル」は、フライス加工中に、ディスクフライス加工カッターの切れ刃/インサートを冷却する目的、および/またはワークピースからの切りくずの洗い流し/排出という目的に役立つものと解釈されるべきである。
【0009】
本発明の一実施形態によると、ディスクフライス加工カッターは、中央貫通孔の周りに少なくとも部分的に延在し、少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口を少なくとも2つの径方向に延在する冷却剤チャンネルに接続する少なくとも1つの内部冷却剤分配チャンネルを有する。これによって、同一の冷却剤分配チャンネルに接続された流入口開口を有するいくつかの径方向に延在する冷却剤チャンネルの間で有利な流れ場が達成され得る。
【0010】
本発明の別の実施形態によると、ディスクフライス加工カッターは、軸方向に向けられた流入口開口を形成する複数の軸方向貫通孔を有し、このことは、ディスクフライス加工カッターの周縁の周りの異なる周辺部分において効率的な冷却/洗浄を得るために好ましく、冷却/洗浄効率は、特には、本発明の別の実施形態におけるように、軸方向に向けられた流入口開口を形成する軸方向貫通孔が中央貫通孔の周りに均等に分散されたときに更に増加され得る。
【0011】
本発明の別の実施形態によると、軸方向に向けられた流入口開口を形成する全ての軸方向貫通孔は、前記少なくとも1つの内部冷却剤分配チャンネル内に開口する。このようにして、冷却剤は、1つの流入口からいくつかの径方向に延在する冷却剤チャンネルへと分配され得る。
【0012】
本発明の別の実施形態によると、内部冷却剤分配チャンネルは、中央貫通孔を包囲し、全ての軸方向に向けられた流入口開口を、ディスクフライス加工カッターの径方向に延在する冷却剤チャンネルに接続する環状チャンネルである。このことは、ディスクフライス加工カッターの均一な冷却/洗浄を得るための単純で効率的な設計を構成しつつ、冷却剤/洗浄流体がディスクフライス加工カッターの軸方向貫通孔のうちのいずれかに到達することに失敗することの結果として任意の径方向に延在する冷却剤チャンネルに冷却剤/洗浄流体を提供することに失敗するリスクを回避する。
【0013】
本発明の別の実施形態によると、少なくとも1つの内部冷却剤チャンネルの少なくとも1つの流出口開口は、ディスクフライス加工カッターの周辺部分に形成された切りくずポケット内に位置する。ディスクフライス加工カッターの金属切削機械加工によって形成される切りくずは、このようにして、(特には、ワークピースにスロット/溝をフライス加工するときに)切りくずポケットおよびワークピースから効率的に除去/排出される。
【0014】
本発明の目的は、キットに向けられた請求項によるキットを提供することによっても得ることができる。
【0015】
本発明による少なくとも1つのディスクフライス加工カッターを、少なくとも1つのスペーサリングであって、ディスクフライス加工カッターと同一の回転可能工具ホルダのシャフトにスペーサリングを取り付けるための中央貫通孔を有し、スペーサリングは、工具ホルダのシャフトに対して所定の角度位置にスペーサリングの回転防止装着を提供するように構成された手段を有し、スペーサリングは、所定の角度位置にあるディスクフライス加工カッターの第1のまたは第2の軸方向に向けられた側の当接面にスペーサリングが当接しているときに、ディスクフライス加工カッターにおける少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口と連通するように位置する少なくとも1つの軸方向貫通孔を備える、少なくとも1つのスペーサリングと組み合わせることによって、冷却剤/洗浄流体をスペーサリングを通ってディスクフライス加工カッターへと導くことが可能になるとともに、このことにより、少なくとも1つのスペーサリングを使用して、ディスクフライス加工カッターを、工具ホルダシャフトの延長線に沿った異なる軸方向の場所に取り付けつつ、依然として効率的で柔軟な上述の内部冷却/洗浄を得ることが可能になる。所望のギャングフライス加工構成において、いくつかのディスクフライス加工カッターを1つまたはいくつかのスペーサリングとともにシャフトに取り付けることも可能になる。
【0016】
キットの一実施形態によると、このキットは、複数のディスクフライス加工カッターを備え、少なくとも1つのディスクフライス加工カッターは、これを、シャフトに装着されたときに少なくとも1つのディスクフライス加工カッターの切れ刃またはその切削インサートの切れ刃が別のディスクフライス加工カッターの切れ刃またはその切削インサートの切れ刃に対して周方向に変位しているという意味において、シャフトに対して別のディスクフライス加工カッターの角度位置とは異なる角度位置に得るディスクフライス加工カッターの回転防止装着を提供するように構成された前記手段を有する。この特徴は、キットのディスクフライス加工カッターを別のディスクフライス加工カッターに対して切れ刃を周方向に変位させた状態で配置しつつ、ディスクフライス加工カッターの軸方向貫通孔をスペーサリングの軸方向貫通孔と整列させることを通じて、依然としてディスクフライス加工カッターの効率的な冷却/洗浄を提供するオプションを提示する。このことは、いくつかのディスクフライス加工カッターに関する切れ刃が他のディスクフライス加工カッターに関する切れ刃と同時にワークピースにぶつかることがなく、振動が起こる傾向を減少/解消するとともにノイズを減らしつつ、全てのディスクフライス加工カッターにおいて効率的な冷却/洗浄が得られるような、ギャングフライス加工のための複数のディスクフライス加工カッターの同一の工具ホルダシャフトへの配置を可能にする。
【0017】
所定の角度位置においてディスクフライス加工カッターの軸方向貫通孔のうちの最大限でも半数がスペーサリングの軸方向貫通孔と連通するように位置するように、少なくとも1つのディスクフライス加工カッターにおける軸方向貫通孔の数が、スペーサリングの軸方向貫通孔の数の倍数になっているキットを提供することによっても、これと同じ結果が得られる。このことは、スペーサリングの軸方向貫通孔とディスクフライス加工カッターの他の軸方向貫通孔との整列を以前よりも多く得るために、ディスクフライス加工カッターが、隣接するスペーサリングに対して旋回され得ることを意味する。もちろん、このような旋回を可能にするための条件は、ディスクフライス加工カッターの回転防止装着のための手段が、ディスクフライス加工カッター上で、その周方向位置についてこれに応じて適合されていることである。
【0018】
キットの別の実施形態によると、スペーサリングにおける軸方向貫通孔は、中央貫通孔の周りに均等に分散される。
【0019】
本発明の別の実施形態によると、キットは、少なくとも1つのディスクフライス加工カッターおよび少なくとも1つのスペーサリングを回転可能工具ホルダのシャフトに固定するための係止手段を更に備え、係止手段は、蓋部であって、係止手段の固定状態においてスペーサリングまたはディスクフライス加工カッターの第1のまたは第2の軸方向に向けられた側の当接面に蓋部をクランプする装着部材によってシャフトの端部に取り付け可能な蓋部を備え、蓋部は、シャフトの端部に開いている中央冷却剤チャンネルと、蓋部と接触するスペーサリングまたはディスクフライス加工カッターおける軸方向貫通孔との間で冷却剤を連通するための冷却剤接続部を備える。そのような係止手段を有するキットを提供することは、少なくとも1つのディスクフライス加工カッターの効率的な冷却/洗浄を得つつ、金属切削機械加工のためにキットの少なくとも1つのディスクフライス加工カッターを使用するために、標準的な工具ホルダの使用を可能にする。工具ホルダシャフトに沿ったディスクフライス加工カッターの位置は、前記蓋部の隣に配置されたディスクフライス加工カッター、または前記蓋部からディスクフライス加工カッターを離間させる1つまたは複数のスペーサリングを有するように選択することによっても修正され得る。
【0020】
キットの一実施形態によると、装着部材は、シャフトの端部における中央冷却剤チャンネルの内部ねじ山にねじ込まれる外部ねじ山付きシャンクを有するクランプスクリューであり、クランプスクリューのシャンクは、シャフトの中央冷却剤チャンネルと蓋部の冷却剤接続部との間での冷却剤連通のために係止手段の少なくとも1つの供給チャンネルを備える。従って、そのようなフライス工具は、フライス工具の少なくとも1つのディスクフライス加工カッターの効率的な冷却を得るために標準的な工具ホルダを使用し得、そのようなフライス工具をコストの観点から非常に魅力的なものにする。
【0021】
キットの別の実施形態によると、キットは、工具ホルダであって、工具ホルダの後端部において冷却剤源に接続されるように構成された中央冷却剤チャンネルを有する工具ホルダを更に備える。
【0022】
キットの別の実施形態によると、工具ホルダは、シャフトに取り付けられたスペーサリングまたはディスクフライス加工カッターの軸方向に向けられた側の面に当接する軸方向に向けられた取り付け面を有する鍔部を有し、工具ホルダは、中央冷却剤チャンネルに接続されるとともに鍔部の取り付け面における供給開口において終わる少なくとも1つの更なる冷却剤チャンネルを具備し、供給開口は、ディスクフライス加工カッターの軸方向に向けられた側の当接面における少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口またはスペーサリングの軸方向貫通孔に冷却剤を提供するように位置付けられる。本発明による1つまたは複数のディスクフライス加工カッターを工具ホルダシャフトに沿った異なる位置に配置する可能性に加えて、本発明のこの実施形態は、ディスクフライス加工カッターの両側からその軸方向貫通孔に冷却剤を供給することにより、ディスクフライス加工カッターの内部冷却剤チャンネルにおける冷却剤流を増加させる可能性をもたらす。
【0023】
本発明の他の有利な特徴および利点は、以下の説明から分かる。
【0024】
添付の図面を参照して、例として挙げられる本発明の実施形態の具体的な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるキットの分解斜視図である。
【
図2】動作状態にある
図1に図示されたキットの概略的な断面図である。
【
図3】
図1に図示されたディスクフライス加工カッターおよびその隣に配置されたスペーサリングの分解および部分的断面斜視図である。
【
図4】動作状態にある本発明の第2の実施形態によるキットの
図2と類似の図である。
【
図5】本発明の一実施形態のキットのディスクフライス加工カッターの図である。
【
図6】動作状態にある本発明の第3の実施形態によるキットの
図2と類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
スロットフライス加工、面フライス加工、肩フライス加工、およびいわゆるギャングフライス加工(これは、以下において
図4を参照する際に更に解説される)にも適した本発明の第1の実施形態によるフライス工具1が、同時に
図1から
図3を参照して説明される。フライス工具は、フライス加工機械に回転防止されつつ装着される回転可能工具ホルダ2を有し、回転可能工具ホルダ2は、本発明による少なくとも1つのスペーサリング5および少なくとも1つのディスクフライス加工カッター6の、対応する切り欠き7、8による、回転防止装着のための部材4を有するシャフト3を有する。ディスクフライス加工カッターの厚さは任意であってよいが、典型的には2mmから26mmの間で様々であり得、多くは6mmから26mmであり、スロットフライス加工のために使用されたときに対応するスロット幅をもたらす。ディスクフライス加工カッターの直径は、例えば、60mm~320mmである。
【0027】
本発明の第1の実施形態によるディスクフライス加工カッター6の設計は主に
図3から分かり、ディスクフライス加工カッターは、切削インサート11のための複数の受け座10を具備する外周辺部分9を有する。ディスクフライス加工カッターは、工具ホルダ2のシャフト3にディスクフライス加工カッターを取り付けるための中央貫通孔12を有する。ディスクフライス加工カッターは、ディスクフライス加工カッターの内側中央部分15に位置する径方向内側開口14からディスクフライス加工カッターの切りくずポケット17に位置する外周辺部分9における流出口開口16へとディスクフライス加工カッター内で径方向に延在する更なる内部冷却剤チャンネル13を有する。この実施形態においては、そのような内部冷却剤チャンネルの数は、切削インサートのための受け座の数と同一である。
【0028】
ディスクフライス加工カッターの内側中央部分15は、第1の軸方向に向けられた側の当接面19から、ディスクフライス加工カッターの内側中央部分の反対側の第2の軸方向に向けられた側の当接面20(
図1では隠れている)へとディスクフライス加工カッターを貫通して延在する4つの軸方向貫通孔18を具備する。これらの軸方向貫通孔は、環状の内部冷却剤分配チャンネル22を通じて内部冷却剤チャンネル13の流入口開口14に連通する軸方向に向けられた流入口開口21を形成している。
【0029】
スペーサリング5も、ディスクフライス加工カッター6と同一の工具ホルダシャフト3にそれぞれのスペーサリングを取り付けるための中央貫通孔23を有する。各スペーサリング5は、4つの軸方向貫通孔24を更に備え、軸方向貫通孔24は、スペーサリングおよびディスクフライス加工カッターが工具ホルダ2のシャフト3に対して所定の角度位置で回転防止されつつ装着されて、スペーサリングがディスクフライス加工カッターの第1のまたは第2の軸方向に向けられた側の当接面19、20または別のスペーサリングに当接しているとき、ディスクフライス加工カッターの軸方向に向けられた流入口開口21または別のスペーサリングの軸方向貫通孔24と各々連通するように位置する。
【0030】
工具ホルダ2は、冷却剤源に接続されるとともにシャフトの端面27における開口26へとシャフト3内で延在するように構成された中央冷却剤チャンネル25を有する。工具は、1つまたは複数のディスクフライス加工カッターおよびスペーサリングをシャフト3に固定するための係止手段28を更に備える。この係止手段は、装着部材30によってシャフトの端部に取り付け可能な蓋部29を備え、装着部材30は、シャフトの端部における中央冷却剤チャンネル25の内部ねじ山にねじ込まれる外部シャンクを有するクランプスクリューの形態であり、係止手段の固定状態において、蓋部29を、
図2に図示されるようにスペーサリングにまたはディスクフライス加工カッターの第1のまたは第2の軸方向に向けられた側の当接面にクランプするために締め付けられる。
図2から分かるように、クランプスクリュー30のシャンクは、中央冷却剤チャンネル25と、蓋部29によって形成された、蓋部29と接触するスペーサリングまたはディスクフライス加工カッターの軸方向貫通孔24、18への冷却剤接続部31との間での冷却剤連通のために、係止手段の少なくとも1つの供給開口33を備える。
【0031】
図2の矢印Aによって、どのように冷却剤が、工具ホルダ2の中央冷却剤チャンネル25、スクリューシャンクの供給開口33、蓋部の冷却剤接続部31、スペーサリング5の軸方向貫通孔24、ディスクフライス加工カッターの軸方向貫通孔18およびその内部冷却剤分配チャンネル22を通って、ディスクフライス加工カッター6の内部冷却剤チャンネル13に到達するかが図示されている。これは、ディスクフライス加工カッター6がシャフト3に沿った異なる位置に配置され得、
図1および
図2に図示される標準的な工具ホルダの使用によって依然としてディスクフライス加工カッターへの冷却剤の効率的な供給が確保されることを意味する。本発明によるフライス工具において使用されるキットにただ1つの種類のスペーサリングを有することは適切であり得るが、シャフト3に対して拡大された断面を有する工具ホルダの鍔部32のより近くに配置されたスペーサリング5aは、軸方向貫通孔を具備する本発明によるスペーサリングでなくてもよい。
【0032】
図4は、本発明のこの実施形態によるフライス工具の柔軟性、および、ギャングフライス加工を実行するために、どのようにいくつかのディスクフライス加工カッター6が工具ホルダシャフト3に取り付けられ得るかを示し、ディスクフライス加工カッターの数およびその相互位置が、スペーサリングの異なる配置によって変えられ得ることは明白であり、もちろん、ディスクフライス加工カッターの位置および相互距離を変化させるために、異なる厚さの
図1に図示される種類のスペーサリングを有することも可能である。
【0033】
図5は、スペーサリング5の軸方向貫通孔24の数の倍数である複数の軸方向貫通孔18を1つまたはいくつかのディスクフライス加工カッター6に提供する可能性を示し、このことは、この場合には、前記所定の角度位置においてディスクフライス加工カッターの8つの貫通孔のうちの半分がスペーサリングの軸方向貫通孔と連通するように位置していることを意味する。これは、
図5に図示されるディスクフライス加工カッターが、ディスクフライス加工カッターの軸方向貫通孔とスペーサリングの軸方向貫通孔との2つの整列位置の間で
図3によるスペーサリングに対して45°回転され得ることを意味し、複数のディスクフライス加工カッターが工具ホルダシャフトに取り付けられた場合、これらが、ディスクフライス加工カッターが対応して位置付けられた切り欠き8を有する限りにおいて、その切削インサートが時間的に離間された瞬間にワークピースに当たるように配置され得るとともに、依然として全てのディスクフライス加工カッターが効率的に冷却剤を提供されることを意味する。同じ結果が、全てのディスクフライス加工カッター6においてスペーサリングと全く同じ数の軸方向貫通孔18を有し、いくつかのディスクフライス加工カッターにおいて、切れ刃に対して他のディスクフライス加工カッターとは別の相対的周方向位置にある軸方向貫通孔18を有することによっても、得られる。
【0034】
図6は、工具ホルダ102の設計が
図2に図示されたキットは異なる、動作状態にある、本発明の第3の実施形態によるキットを示す。工具ホルダは、中央冷却剤チャンネル125から始まり、鍔部132の取り付け面におけるそれぞれの供給開口142、143で終わる追加的な冷却剤チャンネル140、141を具備する。各供給開口は、鍔部132とディスクフライス加工カッター106との間で工具ホルダシャフト103に取り付けられたスペーサリング105の軸方向貫通孔を通って、ディスクフライス加工カッター106の軸方向に向けられた側の当接面における1つの軸方向に向けられた流入口開口へと、冷却剤チャンネルからの冷却剤の供給を提供するように位置付けられている。工具ホルダ内部のそのような追加的なチャンネル140、141の数は、必ずしもそうである必要はないが、好ましくは、ディスクフライス加工カッターにおける軸方向貫通孔の数と少なくとも同数である。
図6に図示された実施形態において、鍔部132に開いているチャンネルのみを通って、または、矢印Aによって示されるように、
図2に図示されるものと同じ流れ部に沿って追加的に冷却剤を供給するために蓋部129へと中央冷却剤チャンネル125を開口させて、ディスクフライス加工カッターへの冷却剤の供給を提供することができる。後者の場合、ディスクフライス加工カッターの両方の軸方向に向けられた側の当接面から軸方向貫通孔を通って冷却剤を内部冷却剤チャンネル13に配給することにより、ディスクフライス加工カッターの内部冷却剤チャンネル13に到達する冷却剤の圧力が増加されよう。
【0035】
本発明は、もちろん、上述の本発明の実施形態に限定されないが、これらの修正に対する多くの可能性が、添付の特許請求の範囲において定められる本発明の範囲から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。
【0036】
ディスクフライス加工カッター内部の内部冷却剤チャンネルの延長線に対する「径方向」とは、ディスクフライス加工カッターの中央部分からその周辺部分へ向かう延長線として解釈されるべきであり、この延長線は正確に径方向である必要はなく、すなわち、ディスクフライス加工カッターの中心軸と交差する必要はない。同じ論法が、例えば、ディスクフライス加工カッターおよびスペーサリングにおける軸方向貫通孔についての「軸方向」の使用についても適用され、これは、これらが軸方向に主な構成要素を有する延長線を有するものとして解釈されるべきである。
【0037】
ディスクフライス加工カッターの軸方向貫通孔が、如何なる内部分配チャンネルも無しに、その内部冷却剤チャンネル内に直接的に開口し得ること、または、環状の内部分配チャンネルが、ディスクフライス加工カッターの中央貫通孔の周りに部分的に各々が延在するとともに軸方向貫通孔の少なくとも1つの軸方向に向けられた流入口開口を少なくとも2つの径方向に延在する冷却剤チャンネルに接続する複数の内部分配チャンネルによって置き換えられ得ることは明白である。
【0038】
ディスクフライス加工カッターは、まさにそのディスク上に切れ刃を具備してよい。ディスクフライス加工カッターの内部冷却剤チャンネルは、軸方向に向けられた側の当接面のディスクの周辺部分に流出口を有してよい。
【0039】
スペーサリングは、もちろん、円状の外部輪郭線を有する必要はない。
【0040】
これは、本発明の範囲内にある前記可能な修正のうちのほんのいくつかについて言及するものである。