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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】試料分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
G01N35/10 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019529825
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2018026788
(87)【国際公開番号】W WO2019013359
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2017138552
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】中山 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】中川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】飯田 裕
(72)【発明者】
【氏名】中井 陽子
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-024055(JP,A)
【文献】特開平10-311837(JP,A)
【文献】特開平09-127129(JP,A)
【文献】特開2004-340969(JP,A)
【文献】特開昭61-047565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容した試料に試薬を入れることにより発せられる光を測定して、前記試料を分析する試料分析装置であって、
容器を保持するホルダと、
前記ホルダを出し入れするための扉を有する筐体と、
前記試薬を前記容器に注入するためのピペットチップが着脱可能なノズルと、
前記ホルダに支持された容器内の試料から出る光を測定する光検出器と、
前記ホルダに設けられ、注入後の前記ピペットチップが廃棄される廃棄箱とを備え、
前記廃棄箱は、前記筐体内に配置されて前記扉を介して出し入れされるように構成されており、
前記ホルダは、前記容器を複数保持するとともにそれらを環状に保持するものであり、
前記廃棄箱は、前記ホルダにおいて前記複数の容器の内側に設けられている試料分析装置。
【請求項2】
前記ホルダは、前記複数の容器を円環状に保持するものであり、
前記廃棄箱は、平面視において前記複数の容器の配置方向に沿った円弧状の開口を有するものである、請求項記載の試料分析装置。
【請求項3】
前記廃棄箱は、廃棄される前記ピペットチップ毎に廃棄空間が区切られている、請求項1記載の試料分析装置。
【請求項4】
前記廃棄空間は、前記廃棄箱の上面に開口する開口部と、前記開口部よりも下方に形成され、前記開口部よりも開口面積の小さい絞り部とを有する、請求項記載の試料分析装置。
【請求項5】
前記ノズルを保持するとともに水平方向に移動する保持ユニットと、
前記保持ユニットに設けられて前記ノズルとともに移動し、前記ノズルに装着されたピペットチップを取り外す取り外し位置と、それから退避した退避位置との間で移動するチップ外し部材と、
前記保持ユニットが所定位置にある状態で、前記チップ外し部材を操作して前記チップ外し部材を前記退避位置から前記外し位置に移動させるアクチュエータとを備える、請求項記載の試料分析装置。
【請求項6】
前記筐体内において前記廃棄箱の有無を検出する検出機構を備える、請求項1記載の試料分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収容した試料に試薬を入れることにより発せられる光を測定して、試料を分析する試料分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品製造プラントや食品プラント等の環境管理のために微生物モニタリングが行われている。この微生物モニタリングの一例として、微生物に含まれるATP(アデノシン三リン酸)に、発光試薬であるルシフェラーゼを添加し、その生物発光を測定して、得られた発光強度を菌数に換算する方法がある。
【0003】
このATP量を測定する装置として、特許文献1に示すものが考えられている。この試料分析装置は、反応液等の試薬を計量して容器に入れるためのノズルを備えており、当該ノズルの先端部には、使い捨てのピペットチップが交換可能に取り付けられており、使用後に廃棄箱に捨てられる。そして、この廃棄箱は、本体の前面から引き出せる引き出し構造となっている。
【0004】
しかしながら、このような構成であると、引き出し構造の隙間から外光が本体内に入り、ノイズの原因となったり、光検出器に悪影響を及ぼしたりする。その他、測定中に不用意に引出しを開けた場合にも同様の問題が生じる。その結果、分析精度が悪くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3267117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、分析精度の向上を実現することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る試料分析装置は、容器に収容した試料に試薬を入れることにより発せられる光を測定して、前記試料を分析する試料分析装置であって、容器を保持するホルダと、前記ホルダを出し入れするための扉を有する筐体と、前記試薬を前記容器に注入するためのピペットチップが着脱可能なノズルと、前記ホルダに支持された容器内の試料から出る光を測定する光検出器と、注入後の前記ピペットチップが廃棄される廃棄箱とを備え、前記廃棄箱は、前記筐体内に配置されて前記扉を介して出し入れされるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
このような試料分析装置であれば、廃棄箱が筐体内に配置されて扉を介して出し入れされるように構成されているので、装置の本体に廃棄箱を引き出すための引き出し構造を設ける必要が無くなり、外光を確実に遮断することができる。その結果、試料分析装置の分析精度の向上を実現することができる。
【0009】
特に、前記廃棄箱が前記ホルダに設けられていることが望ましい。この構成であれば、廃棄箱はホルダとともに扉を介して出し入れされることになる。ホルダにおける容器保持部分以外のデッドスペースを有効に利用することができるので、装置をコンパクト化することができる。また、ホルダにおける容器保持部分以外のデッドスペースを有効に利用することができるので、装置をコンパクト化することができる。
【0010】
ホルダの具体的な構成としては、前記容器を複数保持するとともにそれらを環状に保持するものであることが考えられる。ここで、ホルダが環状に保持することには、複数の容器の配置が円形状となるように保持することの他、それらの配置が矩形状、多角形状又は楕円形状となるように保持すること等も含む。その他、ホルダは、複数の容器の配置領域の内側に容器が配置されない領域を有する態様で複数の容器を保持するものであれば良い。
この構成では、ホルダにおいて複数の容器の内側はデッドスペースとなる。このデッドスペースを有効に利用するためには、前記廃棄箱は、前記ホルダにおいて前記複数の容器の内側に設けられていることが望ましい。また、ホルダが複数の容器を保持するので、容器を交換するための扉の開閉頻度を減らすことができ、測定前の光検出器を安定させる時間などを短縮して複数の容器の測定時間を短縮することができる。
【0011】
ホルダを所定の回転中心周りに回転させて前記ホルダをターンテーブルとすることにより、光検出器等の光測定系を移動させることなく、測定する容器を簡単に切り替えることができる。このとき、前記ホルダは、前記複数の容器を円環状に保持する構成となる。
この構成において、前記廃棄箱は、平面視において前記複数の容器の配置方向に沿った円弧状の開口を有するものであることが望ましい。この構成であれば、ホルダが回転する構成を利用して、廃棄箱に廃棄されるピペットチップを全体的にばらけさせることができ、一箇所に偏在して廃棄箱からはみ出してしまうことを防ぐことができる。
【0012】
廃棄箱の内部空間に対して複数のピペットチップを廃棄する場合には、既に廃棄済みのピペットチップが邪魔になり、ノズルに装着されたピペットノズルを取り外す事ができない、又はノズルを移動させる移動機構のアクチュエータに不具合(例えばモータの脱調)が生じる恐れがある。
この問題を解決するためには、前記廃棄箱は、廃棄される前記ピペットチップ毎に廃棄空間が区切られていることが望ましい。
この構成であれば、ピペットチップ毎に廃棄空間が区切られているので、既に廃棄されたピペットチップが邪魔になることがなく、スムーズにピペットチップを廃棄することができる。また、廃棄箱に廃棄されたピペットチップは互いに分離された状態であるので、廃棄箱から廃棄されたピペットチップを取り外す作業も容易となり、さらに、例えばピペットチップに残留した廃液をピペットチップから除去する作業も行いやすくなる。
【0013】
各廃棄空間においてピペットチップが傾斜して隣接する廃棄空間に廃棄されるピペットチップの邪魔とならないようにするためには、前記廃棄空間は、前記廃棄箱の上面に開口する開口部と、前記開口部よりも下方に形成され、前記開口部よりも開口面積の小さい絞り部とを有することが望ましい。
また、各廃棄空間においてピペットチップが傾斜しないようにすることで、廃棄箱から廃棄されたピペットチップを取り外す作業を容易にすることができる。
【0014】
廃棄箱を複数の廃棄空間に区切ったことにより、ピペットチップを廃棄する所定位置に対して、ノズルの位置調整と、ノズルに装着されたピペットチップを外すためのチップ外し部材の位置調整とがそれぞれ必要となってしまう。
これらの位置調整を簡単にするためには、前記ノズルを保持するとともに水平方向に移動する保持ユニットと、前記保持ユニットに設けられて前記ノズルとともに移動し、前記ノズルに装着されたチップを取り外す取り外し位置と、それから退避した退避位置との間で移動するチップ外し部材と、前記保持ユニットが所定位置にある状態で、前記チップ外し部材を操作して前記チップ外し部材を前記退避位置から前記外し位置に移動させるアクチュエータとを備えることが望ましい。
【0015】
廃棄箱を装置本体に対して扉を介して出し入れされるように構成することにより、廃棄箱を装置本体にセットし忘れる可能性がある。この問題を解決するためには、前記筐体内において前記廃棄箱の有無を検出する検出機構を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、装置の本体に廃棄箱を引き出すための引き出し構造を設ける必要が無くなり、外光を確実に遮断できるので、分析精度の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る生体試料分析装置の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態の生体試料分析装置の外観を示す斜視図である。
図3】同実施形態の装置本体の各部の配置を示す平面図である。
図4】同実施形態の複数の容器を保持したホルダを示す斜視図である。
図5】同実施形態の複数の容器を保持したホルダを示す平面図である。
図6】変形実施形態の複数の容器を保持したホルダを示す平面図である。
図7】変形実施形態の廃棄空間を模式的に示す断面図である。
図8】変形実施形態のチップ取り外し機構(退避位置R)を示す模式図である。
図9】変形実施形態のチップ取り外し機構(取り外し位置Q)を示す模式図である。
【符号の説明】
【0018】
100・・・試料分析装置
C ・・・筐体
C2 ・・・扉
2 ・・・容器
3 ・・・ホルダ
4 ・・・光検出器
61 ・・・ノズル
PT ・・・ピペットチップ
10 ・・・廃棄箱
10x・・・開口
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る試料分析装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
<装置構成>
本実施形態の試料分析装置100は、試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析することによって、その生体由来の物質の量を測定するものである。なお、以下では、生体由来の物質としてATP(アデノシン三リン酸)の量(amol(=10-18mol))を測定するATP量測定装置について説明する。
【0021】
具体的にこの試料分析装置100は、図1に示すように、試料を収容する複数の容器2を保持するホルダ3と、所定位置に固定された光検出器4と、ホルダ3を移動させるホルダ駆動機構5と、ホルダ3に保持された容器2内にATPと反応して光を生じさせる発光試薬を分注などする分注機構6とを備えている。
【0022】
なお、本実施形態の試料分析装置100は、図2及び図3に示すように、ホルダ3を出し入れするための扉C2を有する筐体Cを備えている。筐体Cは、ホルダ3、ホルダ駆動機構5及び分注機構6等のATP測定に必要な測定系機器類を収容する筐体本体C1と、当該筐体本体C1に設けられた扉C2とを備えている。また、筐体本体C1は、前面に開口部C1hを有している。そして、扉C2は、筐体本体C1の開口部C1hに対して開閉可能に設けられている。具体的には、開口部C1hの上側部分において水平方向の連結軸(不図示)により開閉可能とされており、扉C2を上方向に持ち上げることによって、筐体本体C1の内部に利用者がアクセス可能となる。なお、扉C2を閉じた状態では、扉C2と開口部C1hとの間がシール部材(不図示)によりシールされることによって筐体C内部が暗室状態となる。
【0023】
その他、筐体本体C1には、検体が収容された複数の検体チューブFCを保持して温調する温調機構7と、各試薬を収容した試薬容器RC1、RC2がセットされる試薬セット部8と、分注機構6に用いられるピペットチップPTが設けられるピペットチップセット部9とが設けられている。
【0024】
温調機構7は、複数の検体チューブFCを例えばマトリックス状に収容して保持するものである。この温調機構7は、検体チューブFCを保持する金属製(例えばアルミ製)のホルダブロック71と、ホルダブロック71に設けられたヒータ等の熱源部72と、ホルダブロック71の温度を検出する熱電対等の温度センサ73とを備えている。この温度センサ73の検出温度に基づいて、熱源部であるヒータ72は、制御装置COMによってホルダブロック71の温度が所定温度となるように制御される。
【0025】
試薬セット部8は、検体に前処理を施すための前処理用試薬を収容した試薬容器RC1と、発光試薬を収容した試薬容器RC2とがセットされるものである。前処理用試薬としては、検体に含まれる生細胞(生菌)以外のATP(遊離ATP)を消去するATP消去液、及び、生細胞からATPを抽出するATP抽出液等である。
【0026】
ホルダ3は、図4及び図5に示すように、複数の容器2を円環状に保持するものであり、具体的には、所定の回転中心に対して同一円上に保持するものである。本実施形態のホルダ3は、サンプル測定用の複数の容器2の他に、ブランク測定用の容器2b及び標準液測定用の容器2sも保持している。また、ホルダ3は、装置本体に対して着脱可能に構成されており、この着脱操作を容易にするために、保持用の複数(ここでは2つ)の保持孔3hが形成されている。なお、容器2は有底筒形状をなすのであり、本実施形態では有底円管状をなすものである。
【0027】
光検出器4は、図1に示すように、ホルダ3に保持された容器2内の試料から出る光を検出するものであり、例えば光電子増倍管(PMT)である。光検出器4は、ホルダ3に保持された容器2よりも下側に設けられている。そして、光検出器4の上方には、容器2内の試料から出る光を光検出器4に導くためのリフレクタ11を有する光学系12が設けられている。このリフレクタ11は、それらの上方に位置する容器2に対して進退移動可能に構成されている。リフレクタ11を容器2に近接させることで容器2内に試料から出る光を効率良く光検出器4に導くことができるとともに、リフレクタ11を容器2から退避させることで容器2の移動を邪魔しないようにできる。なお、リフレクタ11を含むその他の光学系12又は光検出器4も容器2に対して進退移動可能に構成しても良い。
【0028】
ホルダ駆動機構5は、ホルダ3を移動させ、ホルダ3に保持されている各容器2を、光検出器4による検出位置Xdetに順次位置づけるものである。具体的にホルダ駆動機構5は、ホルダ3を前記所定の回転中心周りに回転させるものであり、図1に示すように、ホルダ3が設置される設置台51と、当該設置台51に設置されたホルダ3を回転させるための回転軸52と、当該回転軸52を回転させるアクチュエータ53とを備えている。その他、ホルダ駆動機構5には、ホルダ3の回転位置を検出するための回転位置センサ(不図示)が設けられている。この回転位置センサの検出信号に基づいて、アクチュエータ53は、制御装置COMによって測定すべき容器2を検出位置Xdetに位置付けるように回転制御される。
【0029】
分注機構6は、図1図3に示すように、試料や各試薬を吸引又は吐出するためのノズル61と、ノズル61に接続された流路を介してノズル61の吸引又は吐出を駆動する例えばシリンジ等のポンプ機構62と、ノズル61を所定方向に移動させるノズル移動機構63とを備えている。
【0030】
ノズル61は、試料や各試薬に接触してそれらを保持するためのピペットチップPTを着脱可能に保持するチップホルダ611を備えている。このチップホルダ611は内部流路が形成されたものであり、その基端部に流路が接続されており、先端開口部にピペットチップPTが接続される。
【0031】
また、ノズル移動機構63は、ノズル61を水平方向(X軸方向及びY軸方向)に直線移動させるとともに、ノズル61を鉛直方向(Z軸方向)に直線移動させるものである。具体的にノズル移動機構63は、ノズル61を保持する可動部材631と、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にそれぞれ設けられたスライド機構632と、当該スライド機構632に沿って前記可動部材631を各方向に移動させるためのアクチュエータ633とを備えている。このアクチュエータ633及び前記ポンプ機構62が制御装置COMによって制御されることによってATP測定における各動作が実行される。なお、ATP測定における各動作には、当然、チップホルダ611へのピペットチップPTの装着及び取り外しが含まれる。
【0032】
さらに試料分析装置100は、図1に示すように、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光を光検出器4に導く一方で、それ以外の容器2(具体的には測定が終了した容器2)内の試料から出る光が光検出器4に導かれることを防止する遮光機構13を備えている。
【0033】
この遮光機構13は、各容器2に設けられ容器側遮光部131と、検出位置Xdetにある容器2に対して進退移動する可動側遮光部132とを備えている。
【0034】
容器側遮光部131は、光透過性を有さない部材からなり、各容器2の上側部分の全周を覆うものである。本実施形態では、ホルダ3の容器保持部に円筒状の容器側遮光部131を設けておき、当該容器側遮光部131に容器2を収容することによって、ホルダ3に保持された容器2の上側部分の全周を容器側遮光部131が覆う構成としている。
【0035】
可動側遮光部132は、光透過性を有さない部材からなり、検出位置Xdetにある容器2において容器側遮光部131により覆われた上側部分を除いた下側部分の全周を覆うものである。この可動側遮光部132は、検出位置Xdetにある容器2の下側部分を覆う遮光位置と、当該容器2の下側部分から下方に離間して、ホルダ3の移動時にその移動を邪魔しない退避位置との間で昇降移動する。なお、可動側遮光部132の昇降移動は例えばアクチュエータを用いた昇降装置14により行われる。この昇降装置14は、制御装置COMによってホルダ駆動機構5及び分注機構6の動作と連動して制御される。
【0036】
然して、本実施形態の試料分析装置100は、分注機構6のピペットチップPTを廃棄するための廃棄チップ収容部である廃棄箱10がホルダ3に一体に設けられている。具体的に廃棄箱10は、ホルダ3においてデッドスペースとなる複数の容器2の内側に設けられている。この廃棄箱10は、平面視において複数の容器2の配置方向に沿った円弧状の開口10xを有している。廃棄箱10の平面視の形状は、図5に示す概略八角形の環状をなすものであるが、例えば円環状をなすものなどその他の形状であっても良い。
【0037】
このホルダ3において、円弧状の開口10xよりも内側に指を挿入して保持するための保持孔3hが形成されている。この構成により、保持孔3hによりホルダ3を保持した状態で、保持した手よりも外側に廃棄箱10及び容器2が位置する状態となり、廃棄されたピペットチップPT及び測定済みの容器2への不用意な接触を防ぎやすくできる。
【0038】
そして、分注に使用したピペットチップPTの取り外しは、ホルダ3の廃棄箱10の上方において行われる。具体的には、廃棄箱10の上方に配置されたチップ外し部材(不図示)にノズル61を移動させることによって行っても良いし、可動部材631にチップ外し部材を設けておき、可動部材631を廃棄箱10の上方に移動させた後にチップ外し部材を用いて行っても良い。
【0039】
また、各ピペットチップPTの取り外す場合に、制御装置COMは、ピペットチップPTが廃棄箱10の一箇所に偏在しないように、ホルダ駆動機構5及び分注機構6を制御する。この制御態様としては、(1)各ピペットチップPTを取り外す毎にホルダ3を所定角度回転させて、廃棄箱10に対する廃棄位置を変更すること、(2)所定数のピペットチップPTの廃棄位置を同じとしつつ、所定数のピペットチップPTを取り外す毎に所定角度回転させて、廃棄箱10に対する廃棄位置を変更すること、等が考えられる。このように制御することによって、廃棄箱10に廃棄されるピペットチップPTを全体的にばらけさせることができ、一箇所に偏在して廃棄箱10からはみ出てしまうことを防ぐことができる。
【0040】
<分析方法>
次にこのように構成した試料分析装置100の動作とともに分析方法について説明する。
【0041】
例えば大容量(例えば50mlから200ml)の検体を所定量(例えば1μlから1000μl)に濃縮させて試料を生成する。この試料を収容した検体チューブFCを温調機構7にセットする。所定数の検体チューブFCをセットした状態で扉C2を閉じ、測定を開始する。なお、この状態でホルダ3に保持された各容器2は空であるが、標準液測定用の容器2にはATP量が既知の標準液が収容されている。
【0042】
測定が開始されると制御装置COMは、分注機構6を制御して温調機構7に保持された検体チューブFCそれぞれに各前処理試薬を所定のシーケンスに従って分注する。これにより検体チューブFC内の試料に所定の前処理(ATP抽出)が行われる。その後、分注機構6は、各検体チューブFC内の前処理済み試料を、ホルダ3に保持された各容器2内にそれぞれ導入する。ここで、試薬毎にピペットチップPTは交換され、使用済みのピペットチップPTは廃棄箱10に廃棄される。
【0043】
そして、制御装置COMは、ホルダ駆動機構5を制御して測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させる。測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させた後、制御装置COMは、昇降装置14を制御して遮光機構13の可動側遮光部132を遮光位置に移動させる。この状態とした後に、制御装置COMは、分注機構6を制御して発光試薬を検出位置Xdetにある容器2内に導入する。これにより、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光が光検出器4により検出される。光検出器4により得られた光強度信号は、制御装置COMにより演算処理が施されてATP量(amol)が算出される。なお、光検出器4により得られた光強度信号のうち、演算処理に用いられるのは、発光試薬を導入した時点から所定時間(例えば数秒間)までの積算信号である。
【0044】
1つの容器2の発光測定が終了した後に、制御装置COMは、昇降装置14を制御して遮光機構13の可動側遮光部132を退避位置に移動させ、その後、ホルダ駆動機構5を制御して次の測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させる。このようにして順次各容器2内の試料の発光測定が行われる。なお、各容器2の発光測定前に、ブランク測定及び標準液測定が実施されて、ゼロ点校正及びスパン校正が行われる。ここで、各容器2内の試料の発光測定毎にピペットチップPTは交換され、使用済みのピペットチップPTは廃棄箱10に廃棄される。
【0045】
このようにして全ての試料について測定が終了した後に、扉C2を開けて温調機構7に保持された検体チューブFCを交換するとともに、ホルダ3に保持された容器2を交換する。ここで、ホルダ3の保持された容器2を交換する場合には、ホルダ3の保持孔3hを持ってホルダ3を装置本体から取り外す。このホルダ3には、使用済みの廃棄されたピペットチップPTがホルダ3の廃棄箱10に入っているので、ホルダ3を装置本体から取り外すことによって廃棄されたピペットチップPTも同時に装置本体から取り出すことができる。
【0046】
<本実施形態の効果>
このように構成された本実施形態に試料分析装置100によれば、廃棄箱10がホルダ3に設けられているので、廃棄箱10はホルダ3とともに扉C2を介して出し入れされることになる。その結果、装置本体に廃棄箱10を引き出すための引き出し構造を設ける必要が無くなり、外光を確実に遮断することができる。また、引き出し構造が不要になることに加えて、ホルダ3における容器保持部分以外のデッドスペースを有効に利用することができるので、装置100をコンパクト化することができる。
【0047】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0048】
例えば、ホルダ3は複数の容器2を円環状に保持するものであったが、複数の容器2の配置が例えば矩形状、多角形状又は楕円形状となるように環状に保持するものであってもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、廃棄箱10は2つの開口10xを有するものであったが、1つ又は3つ以上の開口10xを有するものであってもよい。
【0050】
廃棄箱10は、図6に示すように、廃棄されるピペットチップPT毎に廃棄空間10sが区切られている。この廃棄空間10sは、図7に示すように、廃棄箱10の上面に開口する開口部10s1と、当該開口部10s1よりも鉛直下方に形成され、開口部10s1よりも開口面積の小さい絞り部10s2とを有している。この例では、各廃棄空間10sの開口部10s1は廃棄箱10の上面板101に貫通孔101hを形成することにより構成され、各廃棄空間10sの絞り部10s2は、廃棄箱10の内部に設けられた中間板102に貫通孔102hを形成することにより構成されている。
【0051】
このようにピペットチップPT毎に廃棄空間10sが区切られているので、既に廃棄されたピペットチップPTが邪魔になることがなく、スムーズにピペットチップPTを廃棄することができる。また、廃棄箱10に廃棄されたピペットチップPTは互いに分離された状態であるので、廃棄箱10から廃棄されたピペットチップPTを取り外す作業も容易となり、さらに、例えばピペットチップPTに残留した廃液をピペットチップPTから除去する作業も行いやすくなる。その上、各廃棄空間10sが絞り部10s2を有するので、各廃棄空間10sにおいてピペットチップPTが傾斜しないようにすることができ、廃棄箱10から廃棄されたピペットチップPTを取り外す作業を容易にすることができる。
【0052】
なお、貫通孔101h及び貫通孔102hは、長孔状をなすものであり、その長手方向は後述するチップ取り外し部材のスライド方向に沿った方向とされている。これにより、ノズル61から取り外されたピペットチップPTを廃棄空間10sに入りやすいようにしている。
【0053】
なお、図6には、ホルダ3に保持された容器2をカウントするためのカウント機構20を図示している。このカウント機構20は、光反射型のものであり、容器2の通過領域に対して光を照射する光源21と、前記通過領域を通過する容器2で反射した光を検出する光検出器22とを有している。ここで、光源21の光の照射方向は、光源21からの光が廃棄箱に当たらないように、且つ、1つの容器2のみに当たるように設定されている。なお、カウント機構20は、光透過型のものであっても良い。
【0054】
また、ホルダ3には、ホルダ3が装置本体に対して装着されているか否か、つまり、ホルダ3の有無を検出するための被検出部23が設けられている。この被検出部23は例えば光を反射するものであり、金属製、セラミックス製又は樹脂製などとすることができる。被検出部23は、ホルダの下面に設けられ、ホルダ3に保持された容器2を模擬したダミー形状をなすものである。この被検出部23には、装置本体に設けられた光源及び光検出器によりその有無が検出される。この光源及び光検出器は、上記のカウント機構20により構成することができる。これにより、ホルダ3の有無を検出する検出機構が構成される。また、この検出機構により廃棄箱10の有無も検出することができる。また、検出機構によりホルダ3に設定された容器番号(図6では1~24)のうち何番に容器2が入っていないといった、容器2が入っていない番号の特定や、ホルダ2に保持された容器2の合計本数のカウントをすることができる。また、これらの結果をディスプレイ上に表示することもできるし、それらの結果に基づいてエラー報知をすることもできる。
【0055】
そして、試料分析装置100において、図8及び図9に示すように、ノズル61とチップ外し部材15とが水平方向(X軸方向及びY軸方向)において一体に移動するように構成しても良い。
【0056】
具体的に試料分析装置100は、ノズル61を保持するとともに水平方向に移動する保持ユニット18と、保持ユニット18に設けられてノズル61とともに移動するチップ外し部材15と、保持ユニット18とは別に設けられ、チップ外し部材15を操作するアクチュエータ19とを備えている。
【0057】
保持ユニット18は、図示しないスライド機構により水平方向に移動可能とされている。また、保持ユニット18は、ノズル61を保持する可動部材631をZ軸方向にスライドさせるスライド機構632を有している。
【0058】
チップ外し部材15は、保持ユニット18において、ノズル61に装着されたピペットチップPTを取り外す取り外し位置Q(図9参照)と、それから退避した退避位置R(図8参照)との間でスライド移動に設けられている。このチップ外し部材15は、図示しない弾性体により退避位置Rに付勢されており、ピペットチップPTを取り外さない場合は退避位置Rに位置している。水平方向において、チップ外し部材15の位置(取り外し位置Q、退避位置R)とノズル61の位置とは保持ユニット18の水平方向の移動に関わらず常に固定(一定)である。
【0059】
アクチュエータ19は、保持ユニット18が所定位置にある状態で、チップ外し部材を操作するものである。ここで、所定位置とは、ノズル61(ピペットチップPT)が廃棄空間10sの上方となる位置である。このアクチュエータ19は、チップ外し部材15を移動させるアーム191を有する。当該アーム191の先端部191aは、チップ外し部材191との接触面積が小さくなるように例えば半円形状に構成されている。アーム191は、シリンダなどの駆動部で駆動されてもよいし、保持ユニットの移動に伴ってアーム191が、固定された部材に当接することにより駆動されるように構成しても良い。このアクチュエータ19は、保持ユニット18においてノズル61がピペットチップPTを取り外すためのZ軸方向の位置に移動された状態で、アーム191を駆動する。この駆動されたアーム191によりチップ外し部材15が退避位置Rから取り外し位置Qに移動して、ノズル61からピペットチップPTが取り外されて廃棄空間10sに落下する。
【0060】
上記の複数の廃棄空間10sは、それぞれの開口部10s1が独立して形成されているが、各廃棄空間10sの開口部10s1が連続するように構成しても良い。この場合であっても、各ピペットチップPTが立った状態で廃棄空間10sに収容されるようにする。つまり、廃棄箱の上部開口には、各ピペットチップを分離して配置するための凹凸構造が形成される。その他、廃棄箱10が平面視において複数の廃棄空間に区切られており、各廃棄空間に1つ以上のピペットチップPTが廃棄されるよう構成しても良い。
【0061】
さらに、ホルダにおける容器保持部分以外のデッドスペースであれば、前記実施形態のように複数の容器の内側でなくてもよく、ホルダにおいて複数の容器の外側にデッドスペースが形成されるものであれば、廃棄箱は複数の容器の外側に設けてもよい。
【0062】
加えて、前記実施形態では廃棄箱をホルダに設けているが、ホルダとは別に設けて廃棄箱単体で扉C2を介して出し入れされるように構成してもよい。
【0063】
その上、前記実施形態では、試料分析装置の一例としてATP量測定装置を説明したが、その他の試料を分析するものであって、使い捨てのピペットチップを使用する試料分析装置であれば適用可能である。
【0064】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、分析精度の向上を実現することができる。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9