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特許7157060汚れ除去性塗膜形成用塗料、及びこれを用いた化粧シート
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  • 特許-汚れ除去性塗膜形成用塗料、及びこれを用いた化粧シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】汚れ除去性塗膜形成用塗料、及びこれを用いた化粧シート
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20221012BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20221012BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20221012BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221012BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221012BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20221012BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D133/06
C09D5/16
B32B27/00 E
B32B27/30 A
C09D7/65
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019535031
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2018025321
(87)【国際公開番号】W WO2019031116
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2017154899
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茂一
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-053025(JP,A)
【文献】国際公開第2006/019175(WO,A1)
【文献】特開2007-002034(JP,A)
【文献】特開2012-218276(JP,A)
【文献】特開平07-266511(JP,A)
【文献】国際公開第2007/064003(WO,A1)
【文献】特開2014-198754(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0030808(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部;及び、
(B)スルホン酸基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性親水基を有する化合物10~100質量部
を含み;
無機粒子を含まず、
ここで上記(A)多官能(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物に由来する構成単位の総和を100質量%として、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選択される1種以上のポリオール化合物に由来する構成単位を50質量%以上の量で含む(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレートを、上記(A)多官能(メタ)アクリレートの総和を100質量%として、10~90質量%の量で含み、かつ上記(A1)以外の(A2)多官能(メタ)アクリレートを、上記(A)多官能(メタ)アクリレートの総和を100質量%として、上記(A1)の残量(90~10質量%)で含み、
上記(B)スルホン酸基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性親水基を有する化合物が、下記一般式(1):
[X]s[M ]L[M ]m ・・・ (1)
(式中、sは1又は2を表し、Lは1又は2を表し、mは0又は1を表し、M 、M は水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、又はアルカリ土類金属イオンを表し、M とM とは同一であってもよく異なっていてもよく、Xは下記一般式(1-1)~(1-4)で示される親水基含有部分から選ばれる1種を表す:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(式中、J、J’はH、又はCH を表し、JとJ’とは同一であってもよく異なっていてもよく、nは0又は1を表し、R、R’は炭素数2~100の脂肪族炭化水素基であり、RとR’とは同一であってもよく異なっていてもよい。))
で表される化合物であり、
上記(A1)以外の(A2)多官能(メタ)アクリレートは、上記式(1-4)で示される親水基含有部分を備える上記式(1)の化合物を包含しない
塗料。
【請求項2】
上記成分(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、更に(C)平均粒子径1~100μmの樹脂粒子5~200質量部を含む、請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
上記成分(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~50,000である、請求項1又は2に記載の塗料。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の塗料から形成された塗膜を含む化粧シート。
【請求項5】
実使用状態において通常視認される側の面から順に、請求項1~3の何れか1項に記載の塗料から形成された塗膜、及び熱可塑性樹脂フィルムの層を含み;
上記塗膜の表面の水接触角が15度以下であり;
マンドレル試験の値が10mm以下である、化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料に関する。更に詳しくは、本発明は、汚れ除去性に優れた塗膜(以下、「汚れ除去性塗膜」ということがある)を形成することのできる塗料、及びこれを用いた化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、モバイルフォン、及びパソコンなどの家電製品;飾り棚、収納箪笥、食器戸棚、及び机などの家具;あるいは床、壁、及び浴室などの建築部材として、木材、合板、集成材、パーチクルボード、及びハードボードなどの木質系材料から形成された基材;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート、及びポリエステルなどの樹脂系材料から形成された基材;あるいは鉄、アルミニウムなどの金属系材料から形成された基材の表面に化粧シートを貼合して加飾化粧されたものが使用されている。
【0003】
近年、塗膜について、商品の差別化ポイントとして、汚れ除去性が着目されている。汚れ除去性に優れた塗膜としては、スルホン酸基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性親水基を有する化合物を含む塗料を用いて形成される塗膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらの技術で形成された汚れ除去性塗膜を有する化粧シートは耐折曲性が不十分であり、ラッピング成形などの所謂2D成形に適用することが難しいという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2007/064003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、汚れ除去性に優れた塗膜を形成することのできる塗料、及びこれを用いた化粧シートを提供することにある。
本発明の更なる課題は、汚れ除去性及び耐折曲性に優れた塗膜を形成することができ、艶消し意匠を付与することができる塗料、及びこれを用いた艶消し化粧シートを提供することにある。
本発明の別の更なる課題は、汚れ除去性及び耐傷付き性に優れた塗膜を形成することができ、艶消し意匠を付与することのできる塗料、及びこれを用いた艶消し化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の塗料により、上記課題を達成できることを見出した。
[1].
(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部;及び、
(B)スルホン酸基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性親水基を有する化合物5~100質量部
を含み;
無機粒子を含まず、
ここで上記(A)多官能(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物に由来する構成単位の総和を100質量%として、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選択される1種以上のポリオール化合物に由来する構成単位を50質量%以上の量で含む(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレートを、上記(A)多官能(メタ)アクリレートの総和を100質量%として、10~90質量%の量で含む、
塗料。
[2].
上記成分(A)多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、更に(C)平均粒子径1~100μmの樹脂粒子5~200質量部を含む、上記[1]項に記載の塗料。
[3].
上記成分(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~50,000である、上記[1]又は[2]項に記載の塗料。
[4].
上記[1]~[3]項の何れか1項に記載の塗料から形成された塗膜を含む化粧シート。
[5].
実使用状態において通常視認される側の面から順に、上記[1]~[3]項の何れか1項に記載の塗料から形成された塗膜、及び熱可塑性樹脂フィルムの層を含み;
上記塗膜の表面の水接触角が15度以下であり;
マンドレル試験の値が10mm以下である、化粧シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗料から形成された塗膜は、汚れ除去性に優れる。
一態様に係る本発明の塗料から形成された塗膜は、汚れ除去性、及び耐折曲性に優れ、艶消し意匠を有する。そのため、当該態様に係る本発明の塗料を用いて汚れ除去性を付与された化粧シートは、艶消し意匠を有し、かつラッピング成形などの所謂2D成形にも適用することができる。
別の態様に係る本発明の塗料から形成された塗膜は、汚れ除去性、及び耐傷付き性に優れ、艶消し意匠を有する。そのため、当該態様に係る本発明の塗料を用いて汚れ除去性を付与された化粧シートは、艶消し意匠を有し、耐傷付き性に優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の化粧シートの一例を示す断面の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。更に数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される全ての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0010】
1.塗料
本発明の塗料は、(A)多官能(メタ)アクリレート;及び、(B)スルホン酸基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性親水基を有する化合物を含む。本発明のある態様の塗料は、(A)多官能(メタ)アクリレート;及び、(B)スルホン酸基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性親水基を有する化合物;及び、(C)平均粒子径1~100μmの樹脂粒子を含む。本発明の塗料は、無機粒子を含まない。
上記成分(A)の多官能(メタ)アクリレートは、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選択される1種以上のポリオール化合物に由来する構成単位を含む多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む。通常、上記成分(A)の多官能(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物に由来する構成単位の総和を100質量%として、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選択される1種以上のポリオール化合物に由来する構成単位を50質量%以上の量で含む(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0011】
(A)多官能(メタ)アクリレート
上記成分(A)の多官能(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートである。上記成分(A)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するため、紫外線や電子線等の活性エネルギー線や熱により重合・硬化して、塗膜を形成する働きをする。
【0012】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;トリペンタエリスリトールアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有8官能反応性モノマー;及び、これらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)を挙げることができる。
【0013】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマーであって1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものを挙げることができる。
【0014】
上記成分(A1)以外の多官能(メタ)アクリレートとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0015】
(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレート
上記(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン構造(-NH-CO-O-)を有する化合物、又はその誘導体であって2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、下記特性(a1)を満たすウレタン(メタ)アクリレートである。
【0016】
(a1)ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選択される1種以上のポリオール化合物に由来する構成単位を主として(ポリオール化合物に由来する構成単位の総和100質量%に対して、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上)含む。
【0017】
上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、典型的には、ポリオール化合物、1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレートを用いて製造される。これは、上記ポリオール化合物に由来する構成単位、上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物に由来する構成単位、及び上記水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む。
【0018】
上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物に由来する構成単位として、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選択される1種以上のポリオール化合物に由来する構成単位を主として含むことにより、他の成分との混和性が良好になる。
【0019】
上記ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、及びポリカプロラクトンなどを挙げることができる。
【0020】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ(ブタンジオールカーボネート)、ポリ(ヘキサンジオールカーボネート)、及びポリ(ノナンジオールカーボネート)などを挙げることができる。
【0021】
上記ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選択される1種以上のポリオール化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0022】
上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の目的に反しない限度において、ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオール以外のポリオール、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むものであってよい。
【0023】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリエチレンオキサイド、及びポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体;エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体;2価フェノール化合物とポリオキシアルキレングリコールとの共重合体;及び2価フェノール化合物と炭素数2~4のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、及び1,4-ブチレンオキサイドなど)の1種以上との共重合体などを挙げることができる。
【0024】
上記ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオール以外のポリオール化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0025】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びメチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)などの1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。
【0026】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体などのポリイソシアネートを挙げることができる。
【0027】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0028】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコール系(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのグリセリン系(メタ)アクリレート;脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル系(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐原子含有(メタ)アクリレート;2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレートなどのエステル又はエステル誘導体の(メタ)アクリル酸付加物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びエチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート;及び、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのカプロラクトン変性(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0029】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基の数は、得られる塗膜の耐傷付き性の観点から、2個以上である。一方、上記成分(A1)の有する(メタ)アクリロイル基の数は、得られる塗膜の耐折曲性の観点から通常12個以下、好ましくは6個以下、より好ましくは4個以下、更に好ましくは3個以下、最も好ましくは2個であってよい。
【0031】
上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、得られる塗膜の汚れ除去性の観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは6,000以上、最も好ましくは7,000以上であってよい。一方、上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、塗料の硬化性の観点から、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下であってよい。
一実施形態において、上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、好ましくは3,000以上50,000以下、より好ましくは3,000以上30,000以下、5,000以上50,000以下、5,000以上30,000以下、6,000以上50,000以下、6,000以上30,000以下、7,000以上50,000以下、または7,000以上30,000以下であってよい。
【0032】
本明細書において、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略すことがある)により測定した微分分子量分布曲線(以下、GPC曲線と略すことがある)から求めたポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0033】
GPCの測定は、システムとして東ソー株式会社の高速液体クロマトグラフィーシステム「HLC-8320」(商品名)(デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム)を使用し;GPCカラムとしShodex社のGPCカラム「KF-806L」(商品名)を2本、「KF-802」(商品名)及び「KF-801」(商品名)を各1本の合計4本を、上流側からKF-806L、KF-806L、KF-802、及びKF-801の順に連結して使用し;和光純薬工業株式会社の高速液体クロマトグラフ用テトラヒドロフラン(安定剤不含)を移動相として;流速1.0ミリリットル/分、カラム温度40℃、試料濃度1ミリグラム/ミリリットル、及び試料注入量100マイクロリットルの条件で行うことができる。各保持容量における溶出量は、測定試料の屈折率の分子量依存性が無いと見なしてRI検出器の検出量から求めることができる。また、保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、アジレントテクノロジー(Agilent Technology)株式会社の標準ポリスチレン「EasiCal PS-1」(商品名)(Plain Aの分子量6375000、573000、117000、31500、3480;Plain Bの分子量2517000、270600、71800、10750、705)を使用して作成することができる。解析プログラムは、東ソー株式会社の「TOSOH HLC-8320GPC EcoSEC」(商品名)を使用することができる。なお、GPCの理論及び測定の実際については、共立出版株式会社の「サイズ排除クロマトグラフィー 高分子の高速液体クロマトグラフィー、著者:森定雄、初版第1刷1991年12月10日」などの参考書を参照することができる。
【0034】
上記成分(A)の多官能(メタ)アクリレートは、上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む。上記成分(A)の多官能(メタ)アクリレートは、好ましくは、上記成分(A)の総和を100質量%として、上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートを10~90質量%、更に好ましくは、15~85質量%、更により好ましくは15~75重量%の量で含む。
上記成分(A)中の上記成分(A1)の量は、ラッピング成形などの所謂2D成形用の化粧シートに本発明の塗料を用いる場合には、得られる塗膜の汚れ除去性、耐傷付き性、及び耐折曲性の観点から、好ましくは50~85質量%、より好ましくは60~75質量%であってよい。一実施形態において、この量は、50~75質量%、または60~85質量%であってよい。
また、上記成分(A)中の上記成分(A1)の量は、平貼り成形などの所謂1D成形用の化粧シートに本発明の塗料を用いる場合には、得られる塗膜の汚れ除去性、耐折曲性、及び耐傷付き性の観点から、好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~25質量%であってよい。一実施形態において、この量は、10~25質量%、または15~40質量%であってよい。
【0035】
(B)アニオン性親水基を有する化合物
上記成分(B)アニオン性親水基を有する化合物は、スルホン酸基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性親水基を有する化合物である。上記成分(B)は、典型的には、国際公開WO2007/064003号に化合物(I)として記載されている化合物である。上記化合物(I)については国際公開WO2007/064003号に詳細に説明されており、そのまま引用により本明細書に取り込まれる。上記化合物(I)は下記一般式(1)で表される化合物である。
【0036】
[X]s[M]L[M]m ・・・ (1)
式(1)中、sは1又は2を表す。Lは1又は2を表す。mは0又は1を表す。M、Mは水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、又はアルカリ土類金属イオンを表す。MとMとは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは下記一般式(1-1)~(1-4)で示される親水基含有部分から選ばれる1種を表す。
【0037】
【化1-1】
【0038】
【化1-2】
【0039】
【化1-3】
【0040】
【化1-4】
【0041】
式(1-1)~(1-4)中、J、J’はH、又はCHを表す。JとJ’とは同一であってもよく、異なっていてもよい。nは0又は1を表す。R、R’は炭素数1~600、好ましくは2~100、更に好ましくは2~20の脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基は、直鎖または分枝鎖であってよく、さらに、芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、又はエステル基を含んでいてもよい。RとR’とは同一であってもよく、異なっていてもよい。該脂肪族炭化水素基は、任意の置換基を有していてよい。その場合、置換基を含めた炭素数の合計が上記範囲内であればよい。
【0042】
上記成分(B)のアニオン性親水基を有する化合物としては、これらの中で、得られる塗膜の汚れ除去性の観点から、上記一般式(1-1)で示される親水基含有部分を有する上記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0043】
上記成分(B)のアニオン性親水基を有する化合物の配合量は、上記成分(A)の多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、得られる塗膜の汚れ除去性の観点から、通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。一方、上記成分(B)のアニオン性親水基を有する化合物の配合量は、塗料の硬化性、得られる塗膜の耐傷付き性の観点から、通常100質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
上記成分(B)のアニオン性親水基を有する化合物の配合量は、通常5質量部以上100質量部以下であり、好ましくは、5質量部以上70質量部以下、5質量部以上60質量部以下、5質量部以上50質量部以下、10質量部以上100質量部以下、10質量部以上70質量部以下、10質量部以上60質量部以下、10質量部以上50質量部以下、20質量部以上100質量部以下、20質量部以上70質量部以下、20質量部以上60質量部以下、20質量部以上50質量部以下、30質量部以上100質量部以下、30質量部以上70質量部以下、30質量部以上60質量部以下、または30質量部以上50質量部以下であってよい。
【0044】
(C)平均粒子径1~100μmの樹脂粒子
本発明の塗料のある態様のものは、上記成分(C)平均粒子径1~100μmの樹脂粒子を含む。上記成分(C)は塗膜を艶消し意匠にする働きをする。
【0045】
上記成分(C)の樹脂粒子としては、特に限定されないが、例えば、シリコン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、弗素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びアミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂粒子を挙げることができる。これらの中で、低比重、潤滑性、分散性、及び耐溶剤性の観点から、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、及び弗素系樹脂の粒子が好ましい。また光拡散性を良好にし、艶消し意匠を付与し易くする観点から、真球状のものが好ましい。またこれらの樹脂粒子は、その表面に炭素・炭素二重結合、(メタ)アクリロイル基、及びイソシアナート基などの反応性官能基を有するものであってよい。それにより、得られる塗膜の耐傷付き性を向上させることができる。上記成分(C)の樹脂粒子としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
なお、上記成分(C)の樹脂粒子として用いられるアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂は、有機溶剤への溶解性の有無によって、あるいはその特定範囲内の平均粒子径の粒子形状の有無によって、上記成分(A)の多官能(メタ)アクリレートまたは上記成分(A1)の多官能ウレタン(メタ)アクリレートと区別される。
【0046】
上記成分(C)の樹脂粒子の平均粒子径は、艶消し意匠を付与する観点から、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であってよい。一方、上記成分(C)の樹脂粒子の平均粒子径は、塗膜が白濁感のあるものとなり意匠性を低下させることを防止する観点から、通常100nm以下、好ましくは60nm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下であってよい。
上記成分(C)の樹脂粒子の平均粒子径は、通常1μm以上100nm以下、好ましくは、1μm以上60nm以下、1μm以上30μm以下、1μm以上20μm以下、2μm以上100nm以下、2μm以上60nm以下、2μm以上30μm以下、2μm以上20μm以下、3μm以上100nm以下、3μm以上60nm以下、3μm以上30μm以下、3μm以上20μm以下、4μm以上100nm以下、4μm以上60nm以下、4μm以上30μm以下、または4μm以上20μm以下であってよい。
【0047】
なお、本明細書において、樹脂粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II」(商品名)を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0048】
上記成分(C)の樹脂粒子の配合量は、上記成分(A)の多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、付与しようとする艶消し意匠のレベルにもよるが、通常5質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上であってよい。一方、上記成分(C)の樹脂粒子の配合量は、得られる塗膜の耐傷付き性や耐折曲性の観点から、通常200質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、最も好ましくは70質量部以下であってよい。
上記成分(C)の樹脂粒子の配合量は、通常5質量部以上200質量部以下、好ましくは、5質量部以上150質量部以下、5質量部以上100質量部以下、5質量部以上80質量部以下、5質量部以上70質量部以下、20質量部以上200質量部以下、20質量部以上150質量部以下、20質量部以上100質量部以下、20質量部以上80質量部以下、20質量部以上70質量部以下、30質量部以上200質量部以下、30質量部以上150質量部以下、30質量部以上100質量部以下、30質量部以上80質量部以下、30質量部以上70質量部以下、40質量部以上200質量部以下、40質量部以上150質量部以下、40質量部以上100質量部以下、40質量部以上80質量部以下、または40質量部以上70質量部以下であってよい。
【0049】
上記成分(C)の樹脂粒子として、平均粒子径の異なる2種以上の樹脂粒子を用いることは好ましい。上記成分(C)の配合量が少なくても、良好な艶消し意匠を得る(60度光沢値を低くする)ことができる。
【0050】
上記成分(C)として、平均粒子径の異なる2種の樹脂粒子を用いる場合、平均粒子径の大きいものの平均粒子径C1と平均粒子径の小さいものの平均粒子径C2との比(C1/C2)は、好ましくは1.2~10、より好ましくは1.5~4であってよい。一実施形態において、この比は、1.2~4、1.5~10であってよい。
平均粒子径の大きいものの配合量Caと平均粒子径の小さいものの配合量Cbとの比(Ca/Cb)(質量比)は、好ましくは0.1~6、より好ましくは0.3~2、更に好ましくは0.4~1.5であってよい。一実施形態において、この比は、0.1~2、0.1~1.5、0.3~6、0.3~1.5、0.4~6、または0.4~2であってよい。
【0051】
本発明の塗料は、無機粒子を含まない。
一般に、無機粒子(例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物粒子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウム等の金属弗化物粒子;金属硫化物粒子;金属窒化物粒子;及び金属粒子など)は、特に適切な粒子径の無機粒子は、艶消し意匠を付与する観点からは有用である。一方、無機粒子と上記成分(A)などの樹脂成分との相互作用は弱く、得られる塗膜の耐傷付き性や耐折曲性を不十分なものにする原因となっていた。
そこで本発明においては、艶消し意匠を付与するための粒子として、無機粒子ではなく樹脂粒子を用いることにより、塗膜の耐傷付き性や耐折曲性を良好に保持することが可能になる。
【0052】
ここで無機粒子を「含まない」とは、有意な量の無機粒子を含んではいないという意味である。塗膜形成用塗料の分野において、無機粒子の有意な量は、艶消し意匠を付与する観点から、上記成分(A)100質量部に対して、通常1質量部程度以上である。従って、無機粒子を「含まない」とは、上記成分(A)100質量部に対して、無機粒子の量が通常0質量部以上1質量部未満、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下、最も好ましくは0.01質量部以下と言い換えることもできる。
【0053】
本発明の塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
【0054】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス-4-シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などを挙げることができる。上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0055】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、塗膜と基材との密着性、及び塗膜の表面硬度の観点から、通常30質量部以下、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下であってよい。一方、上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物の配合量は、その使用効果を確実に得る観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であってよい。
一実施形態において、上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物の配合量は、通常0.1質量部以上30質量部以下、好ましくは、0.1質量部以上20質量部以下、0.1質量部以上10質量部以下、0.5質量部以上30質量部以下、0.5質量部以上20質量部以下、0.5質量部以上10質量部以下、1質量部以上30質量部以下、1質量部以上20質量部以下、1質量部以上10質量部以下、2質量部以上30質量部以下、2質量部以上20質量部以下、または2質量部以上10質量部以下であってよい。
【0056】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-メチルベンゾフェノン、4、4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどのチオフェニル系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などを挙げることができる。これらの中でアセトフェノン系化合物、及びチオフェニル系化合物が好ましい。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0057】
上記光重合開始剤の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、形成される塗膜が黄変着色したものにならないようにする観点から、通常10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下であってよい。一方、上記光重合開始剤の配合量は、その使用効果を確実に得る観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であってよい。
一実施形態において、上記光重合開始剤の配合量は、通常0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは、0.1質量部以上7質量部以下、0.1質量部以上5質量部以下、0.5質量部以上10質量部以下、0.5質量部以上7質量部以下、0.5質量部以上5質量部以下、1質量部以上10質量部以下、1質量部以上7質量部以下、1質量部以上5質量部以下、2質量部以上10質量部以下、2質量部以上7質量部以下、または2質量部以上5質量部以下であってよい。
【0058】
本発明の塗料には、本発明の目的に反しない限度において、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、及び有機着色剤などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
【0059】
本発明の塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(A)、(B)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどを挙げることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0060】
本発明の塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0061】
本発明の塗料を用いて塗膜を形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。
【0062】
本発明の塗料を用いて形成される塗膜の厚みは、特に制限されないが、耐傷付き性の観点から、通常1μm以上、好ましくは、2μm以上、より好ましくは3μm以上であってよい。一方、塗膜の厚みは、耐折曲性の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下で、最も好ましくは15μm以下あってよい。
一実施形態において、塗膜の厚みは、1μm以上100μm以下、1μm以上50μm以下、1μm以上30μm以下、1μm以上15μm以下、2μm以上100μm以下、2μm以上50μm以下、2μm以上30μm以下、2μm以上15μm以下、3μm以上100μm以下、3μm以上50μm以下、3μm以上30μm以下、または3μm以上15μm以下であってよい。
【0063】
2.化粧シート
本発明の化粧シートは、本発明の塗料を用いて形成された塗膜を有する化粧シートである。本発明の塗料を用いて形成される塗膜は、通常は、本発明の化粧シートの正面(実使用状態において通常視認される側の面)の表面保護層として形成される。ここで実使用状態とは、化粧シートが各種物品の表面の化粧・加飾に用いられた状態をいう。
【0064】
本発明の化粧シートとしては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂フィルムの正面側となる面の上に本発明の塗料を用いて形成された塗膜を有する化粧シート;熱可塑性樹脂フィルムの正面側となる面の上に印刷層を設け、更に該印刷層の面の上に本発明の塗料を用いて形成された塗膜を有する化粧シートなどを挙げることができる。
【0065】
上記熱可塑性樹脂フィルムは化粧シートの基材となる層である。上記熱可塑性樹脂フィルムは、通常は、意匠性の観点から着色されて被着体を隠蔽する働きをする。
【0066】
上記熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂;芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどの樹脂フィルムを挙げることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0067】
上記熱可塑性樹脂フィルムを着色する場合の着色剤は、特に制限されず、任意の着色剤を用いることができる。上記着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラックなどを挙げることができる。上記着色剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記着色剤の配合量は、上記熱可塑性樹脂フィルムに用いられる基材樹脂を100質量部として、着色剤の種類や所望の隠蔽性にもよるが、通常0.1~40質量部程度である。
【0068】
上記熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、特に制限されないが、化粧シート生産時の取扱性の観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上であってよい。一方、化粧シートを物品に被着させる際の作業性の観点から、通常300μm以下、好ましくは250μm以下であってよい。
一実施形態において、上記熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、50μm以上300μm以下、50μm以上250μm以下、75μm以上300μm以下、または75μm以上250μm以下であってよい。
【0069】
上記印刷層は、高い意匠性を付与するために設けるものであり、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。
【0070】
上記印刷層は、直接又はアンカーコートを介して、上記熱可塑性樹脂フィルムの正面側の面の上に、全面的に又は部分的に、施すことができる。模様としては、ヘアライン等の金属調模様、木目模様、大理石等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、寄木模様、及びパッチワークなどを挙げることができる。印刷インキとしては、バインダーに顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、及び硬化剤等を適宜混合したものを使用することができる。上記バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、及び酢酸セルロース系樹脂などの樹脂、及びこれらの樹脂組成物を使用することができる。また金属調の意匠を施すため、アルミニウム、錫、チタン、インジウム及びこれらの酸化物などを、直接又はアンカーコートを介して、上記熱可塑性樹脂フィルムの正面側の面の上に、全面的に又は部分的に、公知の方法により蒸着してもよい。
【0071】
本発明の塗料を用いて、上記熱可塑性樹脂フィルムの正面側の面の上に形成された上記印刷層の面の上に、直接又はアンカーコートを介して塗膜を形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。
【0072】
化粧シートにおいて、本発明の塗料を用いて形成される塗膜の厚みは、特に制限されないが、耐傷付き性の観点から、通常1μm以上、好ましくは、2μm以上、より好ましくは3μm以上であってよい。また、化粧シートにおける塗膜の厚みは、本発明の化粧シートの二次加工性やウェブハンドリング性の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下で、最も好ましくは15μm以下あってよい。
一実施形態において、化粧シートにおける塗膜の厚みは、1μm以上100μm以下、1μm以上50μm以下、1μm以上30μm以下、1μm以上15μm以下、2μm以上100μm以下、2μm以上50μm以下、2μm以上30μm以下、2μm以上15μm以下、3μm以上100μm以下、3μm以上50μm以下、3μm以上30μm以下、または3μm以上15μm以下であってよい。
【0073】
上記アンカーコートを形成するためのアンカーコート剤としては、特に制限されず、任意のアンカーコート剤を用いることができる。上記アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系、及びポリエステルウレタン系のアンカーコート剤を挙げることができる。上記アンカーコート剤としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0074】
上記アンカーコート剤には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、赤外線遮蔽剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、及びフィラー等の添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
【0075】
上記アンカーコート剤を用いて上記アンカーコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。
【0076】
上記アンカーコートの厚みは、特に制限されないが、通常0.01~5μm程度、好ましくは0.1~2μmであってよい。
【0077】
本発明の化粧シートは、これを用いて加飾・化粧される被着体との密着性を向上させる観点から、上記熱可塑性樹脂フィルムの正面側となる面とは反対側の面の上に、直接又はアンカーコートを介して粘着剤層又は接着剤層を形成してもよい。
【0078】
図1は、本発明の化粧シートの非限定的な一例を示す断面の概念図である。実使用状態において通常視認される側の面から順に、本発明の塗料から形成された塗膜1、印刷層2、着色熱可塑性樹脂フィルムの層3、及び粘着剤層4を有している。
【0079】
本発明の化粧シートの、本発明の塗料を用いて形成される塗膜の表面の水接触角は、汚れ除去性の観点から、好ましくは15度以下、より好ましくは14度以下、更に好ましくは13度以下、更により好ましくは11度以下、最も好ましくは9度以下であってよい。水接触角は低い方が好ましい。
【0080】
本発明の化粧シートのマンドレル試験の値は、形成される塗膜の耐折曲性の観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは6mm以下、更により好ましくは4mm以下であってよい。マンドレル試験の値は小さい方が好ましい。
【実施例
【0081】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
測定方法
(i)塗膜の平滑性
化粧シートの塗膜面を、蛍光灯の光の入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
◎(非常に良好):うねりや凹凸ムラがなく良好であった。
○(良好):うねりや凹凸ムラのある部分が僅かにあった。
△(やや不良):うねりや凹凸ムラのある部分がやや目立っていた。
×(不良):全体的にうねりや凹凸ムラがあった。
【0083】
(ii)60度光沢値(艶消し性)
JIS Z8741:1997に準拠し、コニカミノルタ株式会社のマルチアングル光沢計「GM-268」(商品名)を使用し、化粧シートの塗膜面について60度光沢値を測定した。
【0084】
(iii)耐スチールウール性(耐傷付き性)
化粧シートの塗膜が表面になるように、摩擦端子の往復方向と化粧シートのマシン方向が平行となるように、JIS L0849:2013の学振形試験機に置き、該学振形試験機の摩擦端子に、#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で試験片の表面を往復10回擦った。当該摩擦個所を目視観察し以下の基準で判定した。
◎(非常に良好):傷は認められなかった。
○(良好):1~3本の傷があった。
△(やや不良):4~10本の傷があった。
×(不良):11本以上の傷があった。
【0085】
(iv)水接触角
化粧シートの塗膜面について、KRUSS社の自動接触角計「DSA20」(商品名)を使用し、水滴の幅と高さとから算出する方法(JIS R3257:1999を参照)で測定した。
【0086】
(v)オレイン酸除去性(汚れ除去性)
和光純薬工業株式会社のオレイン酸(試薬1級)と、オリオン・エンジニアドカーボンズ株式会社のカーボンブラック「FW-200」(商品名)を質量比10/1で配合し、良く混合攪拌して汚染物を作成した。次に、化粧シートの塗膜面に、上記で得た汚染物1mgを直径20mmの円形に塗布した後、水道水で洗い流した。水洗は、1リットル/10秒の流量の流水を、水道蛇口から10cm下の位置において、上記の塗布された汚染物に直接当てるのみの方法で20秒間行った。このとき汚れ除去性が良好であれば、汚染物が塗膜から浮き剥がれ落ちるのを観察することができる。汚染物の塗布箇所を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎(非常に良好):汚染物は完全に除去され、塗布跡が全く残らなかった。
○(良好):汚染物は除去されたが、塗布跡が僅かに残っていた。
△(やや不良):汚染物の一部が除去されず、塗布箇所に残存していた。
×(不良):汚染物の多くが除去されず、塗布箇所に塗布されたときのまま残存していた。
【0087】
(vi)熱やかん耐性(耐熱性)
パール金属株式会社のアルミニウム製やかん(適合容量2リットル)「ニューセレット アルミケトルH-2508」(商品名)に水道水を1.5リットル入れ、沸騰直後に化粧シートの艶消し塗膜面の上に直置きした。5分経過後にやかんを取り去り、化粧シートのやかん直置き箇所を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎(非常に良好):やかんを直置きした跡が全く残らなかった。
○(良好):やかんを直置きした跡が僅かに残っていた。
△(やや不良):やかんを直置きした跡が明確に残っていた。
×(不良):化粧シートが著しく熱変形していた。
【0088】
(vii)マンドレル試験(耐クラック性及び耐折曲性の指標)
JIS K5600-5-1:1999に準拠し、化粧シートからマシン方向100mm×横方向50mmとなるように採取したサンプルを用い、円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験を行った。割れの起こらなかったマンドレルのうち直径が最小のマンドレルの直径を求めた。
【0089】
使用した原材料
(A)多官能(メタ)アクリレート
(A2)多官能ウレタン(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレート
(A2-1)日本化薬株式会社のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。単位量当たりの水酸基の個数:0.668モル/Kg。
【0090】
(A1)多官能ウレタン(メタ)アクリレート
(A1-1)根上工業株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレート「アートレジンUN-1255」(商品名)。(メタ)アクリロイル基の数2個。ポリオール化合物は全てポリエステルポリオール。質量平均分子量8000。
(A1-2)根上工業株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレート「REAX-2」(商品名)。(メタ)アクリロイル基の数2個。ポリオール化合物は全てポリエステルポリオール。質量平均分子量4500。
(A1-3)日本合成化学株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレート「UV3520EA」(商品名)。(メタ)アクリロイル基の数2個。ポリオール化合物は全てポリエステルポリオール。質量平均分子量14000。
(A1-4)根上工業株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレート「UN9000PEP」(商品名)。(メタ)アクリロイル基の数2個。ポリオール化合物は全てポリカーボネートポリオール。質量平均分子量5000。
(A1-5)根上工業株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレート「KY101」(商品名)。(メタ)アクリロイル基の数2個。ポリオール化合物は全てポリカプロラクトン(ポリエステルポリオール)。質量平均分子量3000。
(A1-6)根上工業株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレート「KY103」(商品名)。(メタ)アクリロイル基の数2個。ポリオール化合物は全てポリカプロラクトン(ポリエステルポリオール)。質量平均分子量5500。
(A1-7)根上工業株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレート「UN5500」(商品名)。(メタ)アクリロイル基の数9個。ポリオール化合物は全てポリカーボネートポリオール。質量平均分子量86000。
【0091】
(A’1)上記成分(A1)以外の多官能ウレタン(メタ)アクリレート
(A’1-1)根上工業株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレート「アートレジンUN-6300」(商品名)。(メタ)アクリロイル基の数2個。ポリオール化合物はポリエーテルポリオール。質量平均分子量12700。
【0092】
(B)アニオン性親水基を有する化合物
(B-1)3-スルホニルプロピル-アクリレート・カリウム塩(下記式2の化合物)。
【0093】
【化2】
【0094】
(B-2)下記式3の化合物。
【0095】
【化3】
【0096】
(B-3)下記式4の化合物。
【0097】
【化4】
【0098】
(C)平均粒子径1~100μmの樹脂粒子
(C-1)ビックケミー・ジャパン株式会社の樹脂粒子「CERAFLOUR 1000」(商品名)。平均粒子径5μm。
(C-2)根上工業株式会社のアクリル系樹脂粒子「アートパールSE-010T」(商品名)。平均粒子径10μm。
【0099】
(D)その他の成分
(D-1)ライトケミカル工業株式会社の1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物「RV2」(商品名)。単位量当たりのイソシアネート基の個数:5.95モル/Kg。
(D-2)BASF社のアセトフェノン系光重合開始剤(2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)「IRGACURE127」(商品名)。
(D-3)メタノール。
(D-4)1-メトキシ-2-プロパノール。
【0100】
アンカーコート剤
(P-1)東洋紡株式会社の非晶性ポリエステル樹脂「バイロン103」(商品名)100質量部、BASF社のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤「TINUVIN479」(商品名)10質量部、上記成分(D-1)3.3質量部、メチルエチルケトン120質量部、及び酢酸エチル240質量部を混合撹拌して得た塗料。
【0101】
例1
1.塗料の調製
上記成分(A2-1)33質量部、上記成分(A1-1)67質量部、上記成分(B-1)37質量部、上記成分(C-1)30質量部、上記成分(C-2)20質量部、上記成分(D-1)6質量部、上記成分(D-2)3.5質量部、上記成分(D-3)50質量部、及び上記成分(D-4)150質量部を混合撹拌し、塗料を得た。
【0102】
2.化粧シートの製造
(2-1)リケンテクノス株式会社の厚み250μm、白色の着色ポリブチレンテレフタレート系樹脂フィルム「HR(WHT)」(商品名)の片面の上に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体をメジウムとするインクを用いて厚み1μmの木目柄の印刷層を形成した。
【0103】
(2-2)次に上記(2-1)で形成した印刷層の面の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置を使用し、上記アンカーコート剤(P-1)を用い、硬化後の厚みが0.8μmとなるようにアンカーコート層を形成した。
【0104】
(2-3)更に上記(2-2)で形成したアンカーコート層の面の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置を使用し、上記1で得た塗料を用い、硬化後の厚みが5μmとなるように塗膜を形成し、化粧シートを得た。
【0105】
得られた化粧シートについて、上記試験(i)~(vii)を行った。結果を表1に示す。
【0106】
例2~16、6-1
塗料の配合を表1又は2に示すものに変更したこと以外は例1と同様に、化粧シートの作成および物性の測定・評価を行った。結果を表1~2に示す。
【0107】
なお、例1~10、13~16、6-1は、所謂2D成形用の化粧シートとして設計した。例11、12は、所謂1D成形用の化粧シートとして設計した。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
本発明の塗料であって、所謂2D成形用として設計された化粧シートは、汚れ除去性、耐熱性、塗工面の平滑性、及び耐折曲性に優れる。
本発明の塗料であって、所謂1D成形用として設計された化粧シートは、汚れ除去性、耐熱性、塗工面の平滑性、及び耐傷付き性に優れる。また、この化粧シートは、所謂1D成形用としては十分な耐折曲性を有している。
【符号の説明】
【0111】
1: 塗膜
2:印刷層
3:着色熱可塑性樹脂フィルムの層
4:粘着剤層
図1