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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】13族元素窒化物層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20221012BHJP
   C30B 19/02 20060101ALI20221012BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20221012BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B29/38 C
C30B29/38 Z
C30B19/02
H01L33/32
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019537943
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2018022796
(87)【国際公開番号】W WO2019039055
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/030373
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/034035
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018067056
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正宏
(72)【発明者】
【氏名】平尾 崇行
(72)【発明者】
【氏名】中西 宏和
(72)【発明者】
【氏名】市村 幹也
(72)【発明者】
【氏名】下平 孝直
(72)【発明者】
【氏名】吉野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】今井 克宏
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 義孝
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/098261(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/068458(WO,A1)
【文献】特開2015-024940(JP,A)
【文献】特開2005-005723(JP,A)
【文献】特開2016-139751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
C30B 1/00-35/00
H01L 21/205
21/31
21/365
21/469
21/86
33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板の表面を研削加工して表面処理することによってアルミニウム酸化物層を形成し、前記アルミニウム酸化物層が、アモルファス相、多結晶相または欠陥導入部を含む工程、
前記アルミニウム酸化物層上に、13族元素窒化物からなる種結晶膜を形成する工程、および
前記種結晶膜上に、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶から選ばれた13族元素窒化物からなる13族元素窒化物層を設ける工程
を有することを特徴とする、13族元素窒化物層の製造方法。
【請求項2】
前記アルミニウム酸化物層が加工変質層であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記13族元素窒化物層をナトリウムフラックス法によって成膜することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記13族元素窒化物層が、上面をカソードルミネッセンスによって観測したときに、線状の高輝度発光部と、前記高輝度発光部に隣接する低輝度発光領域とを有しており、
前記高輝度発光部が前記13族元素窒化物のm面に沿って延びている部分を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項5】
サファイア基板の表面に対してイオンビームまたは高速原子ビームを照射して表面処理することによってアルミニウム酸化物層を形成し、前記アルミニウム酸化物層が、アモルファス相、多結晶相または欠陥導入部を含む工程、
前記アルミニウム酸化物層上に、13族元素窒化物からなる種結晶膜を形成する工程、および
前記種結晶膜上に、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶から選ばれた13族元素窒化物からなる13族元素窒化物層をナトリウムフラックス法によって成膜する工程
を有しており、
前記イオンビームのイオン種が、アルゴンイオン、ヘリウムイオン、ネオンイオン、クリプトンイオン、キセノンイオン、ガリウムイオンまたは水素イオンであり、前記高速原子ビームの原子種が、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンまたは窒素であり、
前記13族元素窒化物層が、上面をカソードルミネッセンスによって観測したときに、線状の高輝度発光部と、前記高輝度発光部に隣接する低輝度発光領域とを有しており、
前記高輝度発光部が前記13族元素窒化物のm面に沿って延びている部分を含むことを特徴とする、13族元素窒化物層の製造方法。
【請求項6】
サファイア基板の表面を反応性イオンエッチング処理して表面処理することによってアルミニウム酸化物層を形成し、前記アルミニウム酸化物層が、アモルファス相、多結晶相または欠陥導入部を含む工程、
前記アルミニウム酸化物層上に、13族元素窒化物からなる種結晶膜を形成する工程、および
前記種結晶膜上に、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶から選ばれた13族元素窒化物からなる13族元素窒化物層をナトリウムフラックス法によって成膜する工程
を有しており、
前記13族元素窒化物層が、上面をカソードルミネッセンスによって観測したときに、線状の高輝度発光部と、前記高輝度発光部に隣接する低輝度発光領域とを有しており、
前記高輝度発光部が前記13族元素窒化物のm面に沿って延びている部分を含むことを特徴とする、13族元素窒化物層の製造方法。
【請求項7】
前記高輝度発光部が概ね前記13族元素窒化物の前記m面に沿って延びていることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記上面におけるX線ロッキングカーブの(0002)面反射の半値幅が3000秒以下、20秒以上であることを特徴とする、請求項4~7のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記13族元素窒化物層の前記上面に略垂直な断面においてボイドが観測されないことを特徴とする、請求項4~8のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記13族元素窒化物層の前記上面における転位密度が1×10/cm以下であることを特徴とする、請求項4~9のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記高輝度発光部が連続相を形成しており、前記低輝度発光領域が前記高輝度発光部によって区画された不連続相を形成していることを特徴とする、請求項4~10のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記上面におけるX線ロッキングカーブの(1000)面反射の半値幅が10000秒以下、20秒以上であることを特徴とする、請求項4~11のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記13族元素窒化物が窒化ガリウム系窒化物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、13族元素窒化物層の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単結晶基板を用いた発光ダイオード(LED)等の発光素子として、サファイア(α-アルミニウム酸化物単結晶)上に各種窒化ガリウム(GaN)層を形成したものが知られている。例えば、サファイア基板上に、n型GaN層、InGaN層からなる量子井戸層とGaN層からなる障壁層とが交互積層された多重量子井戸層(MQW)、及びp型GaN層が順に積層形成された構造を有するものが量産化されている。
【0003】
特許文献1に記載の窒化ガリウム層は、多数の窒化ガリウム単結晶粒子からなる多結晶窒化ガリウムであり、横方向に向かって多数の柱状窒化ガリウム単結晶粒子が配列されている。
【0004】
特許文献2に記載の窒化ガリウム層は、多数の窒化ガリウム単結晶粒子からなる多結晶窒化ガリウムであり、横方向に向かって多数の柱状窒化ガリウム単結晶粒子が配列されている。また、表面における平均チルト角(表面に対する法線方向の結晶方位(結晶軸)の傾きの平均値))が1~10°である。
【0005】
特許文献3では、底面から途中位置まではインクルージョンを高濃度で含み、途中位置から上面までは低濃度しか含まない粒界が下面から斜め方向に複数形成されている。また、粒界がc軸に対して50~70°の角度をもつ方向に斜めに伸びている。
【0006】
特許文献5には、融液中のGa比率を高くすることによって低転位密度を有する窒化ガリウム結晶を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5770905号
【文献】特許第6154066号
【文献】特許第5897790号
【文献】WO 2011/046203
【文献】WO 2010/084682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2の窒化ガリウム結晶の上に発光素子を作製した場合、素子サイズと粒径のバランスに因るが、電流パスが遮断されて発光効率の低下の原因となる場合もあることが判明してきた。この理由は明らかではないが、単結晶粒子間の方位の異方性が関与している可能性がある。
【0009】
特許文献3および4の窒化ガリウム結晶では、大口径になるほど、基板全面での融液の流れの制御が困難となり、結晶の外周にボイドが残存する場合がある。
【0010】
特許文献5では、高Ga比とフラックスの流れ制御でグレインサイズを大きくして転位密度を低減する事ができるが、グレインとグレインの間にボイドが含有されやすくなる。
【0011】
本発明の課題は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶から選択された13族元素窒化物結晶からなり、上面及び底面を有する13族元素窒化物結晶層において、転位欠陥を抑制でき、機能素子の歩留りを改善し、特性を向上させることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、サファイア基板の表面を研削加工して表面処理することによってアルミニウム酸化物層を形成し、前記アルミニウム酸化物層が、アモルファス相、多結晶相または欠陥導入部を含む工程、
前記アルミニウム酸化物層上に、13族元素窒化物からなる種結晶膜を形成する工程、および
前記種結晶膜上に、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶から選ばれた13族元素窒化物からなる13族元素窒化物層を設ける工程
を有することを特徴とする。
また、本発明は、サファイア基板の表面に対してイオンビームまたは高速原子ビームを照射して表面処理することによってアルミニウム酸化物層を形成し、前記アルミニウム酸化物層が、アモルファス相、多結晶相または欠陥導入部を含む工程、
前記アルミニウム酸化物層上に、13族元素窒化物からなる種結晶膜を形成する工程、および
前記種結晶膜上に、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶から選ばれた13族元素窒化物からなる13族元素窒化物層をナトリウムフラックス法によって成膜する工程
を有しており、
前記イオンビームのイオン種が、アルゴンイオン、ヘリウムイオン、ネオンイオン、クリプトンイオン、キセノンイオン、ガリウムイオンまたは水素イオンであり、前記高速原子ビームの原子種が、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンまたは窒素であり、
前記13族元素窒化物層が、上面をカソードルミネッセンスによって観測したときに、線状の高輝度発光部と、前記高輝度発光部に隣接する低輝度発光領域とを有しており、
前記高輝度発光部が前記13族元素窒化物のm面に沿って延びている部分を含むことを特徴とする、13族元素窒化物層の製造方法に係るものである。
また、本発明は、サファイア基板の表面を反応性イオンエッチング処理して表面処理することによってアルミニウム酸化物層を形成し、前記アルミニウム酸化物層が、アモルファス相、多結晶相または欠陥導入部を含む工程、
前記アルミニウム酸化物層上に、13族元素窒化物からなる種結晶膜を形成する工程、および
前記種結晶膜上に、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶から選ばれた13族元素窒化物からなる13族元素窒化物層をナトリウムフラックス法によって成膜する工程
を有しており、
前記13族元素窒化物層が、上面をカソードルミネッセンスによって観測したときに、線状の高輝度発光部と、前記高輝度発光部に隣接する低輝度発光領域とを有しており、
前記高輝度発光部が前記13族元素窒化物のm面に沿って延びている部分を含むことを特徴とする、13族元素窒化物層の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、13族元素窒化物結晶層の転位欠陥を抑制でき、機能素子の歩留りを改善し、特性を向上させることができるような13族元素窒化物結晶層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、サファイア基板25の表面25aに表面処理Kを施す状態を示す模式図であり、(b)は、サファイア基板1の表面1aにアルニウム酸化物層2を設けた状態を示す。
図2】(a)は、支持基板1上にアルミニウム酸化物層2、種結晶層3および13族元素窒化物結晶層13を設けた状態を示し、(b)は、支持基板から分離された13族元素窒化物結晶層13を示す。
図3】13族元素窒化物結晶層13の上面13aのカソードルミネセンス像を説明するための模式図である。
図4】13族元素窒化物結晶層13の上面13aのカソードルミネセンス像を示す写真である。
図5図4の部分拡大写真である。
図6図5のカソードルミネセンス像に対応する模式図である。
図7】13族元素窒化物結晶層13の断面のカソードルミネセンス像を示す写真である。
図8】13族元素窒化物結晶層13の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。
図9】本発明に係る機能素子21を示す模式図である。
図10】13族元素窒化物結晶層の上面の走査型電子顕微鏡による撮像写真である。
図11】CL画像から生成したグレースケールのヒストグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
(サファイア基板の表面処理工程)
本発明では、図1(a)に示すように、サファイア基板25の表面25aを矢印Kのように表面処理することによって、図1(b)に示すようなアルミニウム酸化物層2を形成する。
【0016】
ここで、サファイア基板の表面処理方法は、アルミニウム酸化物層を形成できる限り特に限定されないが、後述するような方法(1)~(4)を好ましく例示できる。
(1) サファイア基板に対してイオンビームまたは高速原子ビームを照射することにより表面処理を行う。
(2) サファイア基板を研削加工することによって表面処理を行う。
(3) サファイア基板を反応性イオンエッチング処理することによって表面処理を行う。
(4) サファイア基板を、少なくとも水素を含む雰囲気下にアニール処理することによって表面処理を行う。
【0017】
(1)の方法では、サファイア基板に対してイオンビームまたは高速原子ビームを照射する。この場合、イオンビームのイオン種としては、アルゴンイオン、ヘリウムイオン、ネオンイオン、クリプトンイオン、キセノンイオン、ガリウムイオン、水素イオンを例示でき、高速原子ビームの原子種としては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素を例示できる。
イオンビーム照射の場合は、電力、ガス流量は特に限定されないが、電力は5W以上、500W以下、ガス流量は1sccm以上、80sccm以下とすることが好ましい。
高速原子ビーム照射の場合は、電力、ガス流量、照射開始前真空度は特に限定されないが、電力は4W以上、500W以下、ガス流量は20sccm以上、80sccm以下とすることが好ましい。また、照射開始前の真空度は可能な限り低い方が望ましく、1×10-5Pa以下が好ましい。
【0018】
(2)の方法では、サファイア基板を研削加工することによって表面処理を行う。この方法では,研削加工によって加工変質層を生成させる。
研削(グライディング)とは、砥粒をボンドで固定した固定砥粒を高速回転させながら対象物に接触させて、対象物の面を削り取ることをいう。かかる研削によって、粗い面が形成され、最表面に加工変質層が形成される。サファイア基板を研削する場合、硬度の高いSiC、Al2O3、ダイヤモンドおよびCBN(キュービックボロンナイトライド、以下同じ)などで形成され、粒径が10μm以上、100μm以下程度の砥粒を含む固定砥粒が好ましく用いられる。
【0019】
(3)の方法では、サファイア基板を反応性イオンエッチング処理することによって表面処理を行う。使用するガス種は、塩素、三塩化ホウ素、四塩化ケイ素、またはそれらの混合ガスが好ましい。
反応性ガスの他に、アルゴン、クリプトン、キセノンを混合してもよい。
プラズマ発生源としてはICP型、ECR型、平行平板型を例示できる。電力、バイアス電力、チャンバー内圧力、使用ガス流量は特に限定されないが、電力は100W以上、1000W以下、バイアス電力は50W以上、300W以下、チャンバー内圧力は0.1Pa以上、10Pa以下、使用ガス流量は1sccm以上、100sccm以下とすることが好ましい。
【0020】
(4)の方法では、サファイア基板を、少なくとも水素を含む雰囲気下にアニール処理することによって前記表面処理を行う。この雰囲気は、水素単独であってよく、あるいは水素以外に、アンモニア、窒素、アルゴンを含有していてもよい。
アニール処理温度は1000℃以上が好ましく、1200°以上が更に好ましい。実際上の観点からは、アニール処理温度は、1500℃以下が好ましく、1400℃以下が更に好ましい。アニール処理時の圧力は減圧、大気圧、加圧いずれでもよく、特に限定されないが、ガスの使用効率の観点からは減圧が好ましい。
【0021】
(アルミニウム酸化物層)
本発明では、サファイア基板の表面処理によってアルミニウム酸化物層を生成させる。ここで、アルミニウム酸化物の組成は、Alであってよいが、薄い層であるためにこの組成から外れていても良い。具体的には、アルミニウム酸化物の組成比率は、Al(x=0.15~0.65:y=0.35~0.85、X+Y=1)であってよい。また、表面処理に使用したアルミニウムおよび酸素以外の元素が、アルミニウム酸化物層中に含まれていても良く、アルミニウム酸化物層の表面に付着していても良い。
【0022】
アルミニウム酸化物層の厚さは特に限定されないが、転位密度を低くでき、全体にわたって特性のばらつきを少なくできるような13族元素窒化物結晶層を得るという観点からは、30オングストローム以上が好ましく、40オングストローム以上が更に好ましい。また、アルミニウム酸化物層の厚さは、実際上の観点からは、50,000オングストローム以下が好ましく、20,000オングストローム以下が更に好ましい。
【0023】
アルミニウム酸化物層の存在は透過型電子顕微鏡観察によって確認する。この透過型電子顕微鏡装置には、日立ハイテクノロジーズ製 H-9000NARを用い、観察時の倍率は2.000,000倍が好ましい。
【0024】
また、アルミニウム酸化物層がアモルファス相を含む場合には、アモルファス相中では結晶格子による回折コントラストがなくなるため、明るいコントラストになり、また均一な画像となるので、結晶と区別でき、アモルファス相であることを確認できるし、アルミニウム酸化物層の厚さを測定できる。また、アルミニウム酸化物層が欠陥導入部を含む場合には、欠陥は線状の暗いコントラストとして表示されるので、新たに欠陥が導入されたことが確認できる。
アルミニウム酸化物層が多結晶相を含む場合には、層内に色の異なるコントラストが見られるため、アモルファス相と区別できる。アルミニウム酸化物層が欠陥導入部を含む時は更に暗い線状のコントラストとして表示されるので、新たに欠陥が導入されたことが確認できる。
また、極微電子線回折法という手法を用いることにより、単結晶では規則正しく並んだ回折斑点(スポット)、多結晶では同心円状の円環、アモルファス相ではブロードな円環状の電子線回折図形が観察されるため、単結晶相、多結晶相、アモルファス相の区別をすることが出来る。
【0025】
(種結晶層)
例えば図2(a)に示すように、アルミニウム酸化物層2上に種結晶層3を設ける。種結晶層3を構成する材質は、IUPACで規定する13族元素の一種または二種以上の窒化物とする。この13族元素は、好ましくはガリウム、アルミニウム、インジウムである。また、13族元素窒化物結晶は、具体的には、GaN、AlN、InN、GaAl1-xN(1>x>0)、GaIn1-xN(1>x>0)、GaAlInN1―x-y(1>x>0、1>y>0)が好ましい。
【0026】
種結晶層3の作製方法は特に限定されないが、MOCVD(有機金属気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、スパッタリング等の気相法、Naフラックス法、アモノサーマル法、水熱法、ゾルゲル法等の液相法、粉末の固相成長を利用した粉末法、及びこれらの組み合わせが好ましく例示される。
例えば、MOCVD法による種結晶層の形成は、450~550℃にて低温成長緩衝GaN層を20~50nm堆積させた後に、1000~1200℃にて厚さ2~4μmのGaN膜を積層させることにより行うのが好ましい。
【0027】
(13族元素窒化物結晶層)
13族元素窒化物結晶層13は、種結晶層3の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成する。13族元素窒化物結晶層の形成方法は、種結晶膜の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有する限り特に限定がなく、MOCVD、HVPE等の気相法、Naフラックス法、アモノサーマル法、水熱法、ゾルゲル法等の液相法、粉末の固相成長を利用した粉末法、及びこれらの組み合わせが好ましく例示されるが、Naフラックス法により行われるのが特に好ましい。
【0028】
Naフラックス法による13族元素窒化物結晶層を形成する際には、融液を強く攪拌し、融液を充分に均一に混ぜることが好ましい。こうした攪拌方法として、揺動や回転、振動方式が挙げられるが、方法は限定されない。
【0029】
Naフラックス法による13族元素窒化物結晶層の形成は、種結晶基板を設置した坩堝に13族金属、金属Na及び所望によりドーパント(例えばゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、酸素(O)等のn型ドーパント、又はベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)等のp型ドーパント)を含む融液組成物を充填し、窒素雰囲気中で830~910℃、3.5~4.5MPaまで昇温加圧した後、温度及び圧力を保持しつつ回転することにより行うのが好ましい。保持時間は目的の膜厚によって異なるが、10~100時間程度としてもよい。
【0030】
また、こうしてNaフラックス法により得られた窒化ガリウム結晶を砥石で研削して板面を平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化するのが好ましい。
【0031】
(13族元素窒化物結晶層)
本発明では、前記したアルミニウム酸化物層上に13族元素窒化物結晶層を成膜できる。
この13族元素窒化物結晶層は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶から選択された13族元素窒化物結晶からなり、上面及び底面を有する。例えば、図2(b)に示すように、13族元素窒化物結晶層13では上面13aと底面13bとが対向している。
【0032】
13族元素窒化物結晶層を構成する窒化物は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶である。具体的には、GaN、AlN、InN、GaAl1-xN(1>x>0)、GaIn1-xN(1>x>0)、GaAlInzN(1>x>0、1>y>0、x+y+z=1)である。
【0033】
特に好ましくは、13族元素窒化物結晶層を構成する窒化物が窒化ガリウム系窒化物である。具体的には、GaN、GaAl1-xN(1>x>0.5)、GaIn1-xN(1>x>0.4)、GaAlInzN(1>x>0.5、1>y>0.3、x+y+z=1)である。
【0034】
13族元素窒化物は、亜鉛、カルシウムや、その他のn型ドーパント又はp型ドーパントでドープされていてもよく、この場合、多結晶13族元素窒化物を、p型電極、n型電極、p型層、n型層等の基材以外の部材又は層として使用することができる。p型ドーパントの好ましい例としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、及びカドミウム(Cd)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。n型ドーパントの好ましい例としては、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び酸素(O)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0035】
好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層の上面をカソードルミネッセンスによって観測したときに、線状の高輝度発光部と、高輝度発光部に隣接する低輝度発光領域とを有しており、かつ高輝度発光部が、13族元素窒化物結晶のm面に沿って延びている部分を含む。これは、上面に線状の高輝度発光部が現れていることから、13族元素窒化物結晶に含有されるドーパント成分や微量成分等が濃い線状の高輝度発光部を生成していることを意味している。これと同時に、線状の高輝度発光部がm面に沿って延びているということは、結晶成長時にそのm面に沿ってドーパントが集まり、この結果、濃い線状の高輝度発光部がm面に沿って現れることを意味する。
【0036】
これらのような新規な微構造を有する13族元素窒化物結晶層によって、寸法を大きくしても(例えば径6インチ以上としても)、転位密度を低くでき、全体にわたって特性のばらつきを少なくできるような13族元素窒化物結晶層を提供することができる。
ここで、13族元素窒化物結晶層13の上面13aをカソードルミネッセンス(CL)によって観測したときに、図3に模式的に示すように、線状の高輝度発光部5と、高輝度発光部5に隣接する低輝度発光領域6とを有している。
【0037】
ただし、CLによる観測は以下のようにして行うものとする。
CL観察には、CL検出器付きの走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる。例えばGatan製MiniCLシステム付きの日立ハイテクノロジーズ製S-3400N走査電子顕微鏡を用いた場合、測定条件は、CL検出器を試料と対物レンズの間に挿入した状態で、加速電圧10kV、プローブ電流「90」、ワーキングディスタンス(W.D.)22.5mm、倍率50倍で観察するのが好ましい。
【0038】
また、高輝度発光部と低輝度発光領域とは、カソードルミネッセンスによる観測から以下のようにして区別する。
加速電圧10kV、プローブ電流「90」、ワーキングディスタンス(W.D.)22.5mm、倍率50倍でCL観察した画像の輝度に対して、画像解析ソフト(例えば、三谷商事(株)製WinROOF Ver6.1.3)を用いて、縦軸を度数、横軸を輝度(GRAY)として、256段階のグレースケールのヒストグラムを作成する。ヒストグラムには、図11のように、2つのピークが確認され、2つのピーク間で度数が最小値となる輝度を境界として、高い側を高輝度発光部、低い側を低輝度発光領域と定義する。
【0039】
また、13族元素窒化物結晶層の上面では、線状の高輝度発光部に低輝度発光領域が隣接する。これによって、隣り合う低輝度発光領域は、それらの間にある線状の高輝度発光部によって区分される。ここで、高輝度発光部が線状であるとは、隣り合う低輝度発光領域の間で高輝度発光部が細長く伸びていて境界線をなしている状態を示す。
【0040】
ここで、高輝度発光部がなしている線は、直線であってよく、また曲線であってよく、更には直線と曲線との組み合わせであってもよい。曲線は円弧、楕円、放物線、双曲線などの種々の形態を含んでいても良い。また、互いに方向の異なる高輝度発光部が連続していて良いが、高輝度発光部の末端が切れていても良い。
【0041】
13族元素窒化物結晶層の上面においては、低輝度発光領域は、その下に成長してきた13族元素窒化物結晶の露出面であってよく、面状に、二次元的に広がっている。一方、高輝度発光部は線状をなしているが、隣り合う低輝度発光領域を区分する境界線のように一次元的に伸びている。これは、例えば、下から成長してきた13族元素窒化物結晶からドーパント成分や微量成分等が排出され、成長過程で隣り合う13族元素窒化物結晶の間に集まり、上面において隣り合う低輝度発光領域の間に、線状に強く発光する部分を生成したものと考えられる。
【0042】
例えば図4に、実施例で得られた13族元素窒化物結晶層の上面のCL観察による写真を示す。図5は、図4の部分拡大図であり、図6図5に対応する模式図である。低輝度発光領域が面状に、二次元的に広がっており、高輝度発光部は線状をなしており、隣り合う低輝度発光領域を区分する境界線のように一次元的に伸びていることがわかる。
【0043】
このことから、低輝度発光領域の形状には特に制限はなく、通常は面状に、二次元的に伸びているものである。一方、高輝度発光部が形成する線は、細長いものである必要がある。こうした観点からは、高輝度発光部の幅は、100μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。また、高輝度発光部の幅は通常0.01μm以上である。
【0044】
また、本発明の観点からは、高輝度発光部の長さと幅との比率(長さ/幅)は、1以上が好ましく、10以上が更に好ましい。
【0045】
また、本発明の観点からは、上面において、高輝度発光部の面積の低輝度発光領域の面積に対する比率(高輝度発光部の面積/低輝度発光領域の面積)は、0.001以上であることが好ましく、0.01以上であることが更に好ましい。
また、本発明の観点からは、上面において、高輝度発光部の面積の低輝度発光領域の面積に対する比率(高輝度発光部の面積/低輝度発光領域の面積)は、0.3以下であることが好ましく、0.1以下であることが更に好ましい。
【0046】
好適な実施形態においては、高輝度発光部が、13族元素窒化物結晶のm面に沿って延びる部分を含む。例えば、図3図6の例においては、高輝度発光部5は細長い線状に延びており、m面に沿って伸びる部分5a、5b、5cを多く含んでいる。六方晶である13族元素窒化物結晶のm面に沿った方向とは、具体的には、[-2110]、[-12-10]、[11-20]、[2-1-10]、[1-210]、[-1-120]方向であり、高輝度発光部5は、六方晶を反映した略六角形の辺の一部を含む。また、線状の高輝度発光部がm面に沿って伸びているとは、高輝度発光部の長手方向が[-2110]、[-12-10]、[11-20]、[2-1-10]、[1-210]、[-1-120]方向のいずれかに沿って延びていることを意味している。具体的には、線状高輝度発光部の長手方向がm面に対して、好ましくは±1°以内、さらに好ましくは±0.3°以内である場合を含む。
【0047】
好適な実施形態においては、上面において、線状の高輝度発光部が、概ね13族元素窒化物結晶のm面に沿って延びている。これは高輝度発光部の主要部分がm面に沿って延びていることを意味しており、好ましくは高輝度発光部の連続相がほぼm面に沿って延びている。この際、m面に沿った方向に伸びる部分は、高輝度発光部の全長のうち60%以上を占めていることが好ましく、80%以上を占めていることが更に好ましく、実質的に高輝度発光部の全体を占めていてもよい。
【0048】
好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層の上面において、高輝度発光部が連続相を形成しており、低輝度発光領域が高輝度発光部によって区画された不連続相を形成している。例えば、図3図6の模式図では、線状の高輝度発光部5は連続相を形成しており、低輝度発光領域6が高輝度発光部5によって区画された不連続相を形成している。
【0049】
ただし、連続相とは、上面において、高輝度発光部5が連続していることを意味するが、高輝度発光部5すべてが完全に連続していることを必須としているわけではなく、全体のパターンに影響しない範囲で少量の高輝度発光部5が他の高輝度発光部5に対して分離されていることは許容するものとする。
【0050】
また、分散相とは、低輝度発光領域6が概ね高輝度発光部5によって区画されていて、互いにつながらない多数の領域に分かれていることを意味する。また、上面において、低輝度発光領域6が高輝度発光部5によって分離されていても、13族元素窒化物結晶層の内部において低輝度発光領域6が連続していることは許容される。
【0051】
好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層の上面におけるX線ロッキングカーブの(0002)面反射の半値幅が3000秒以下、20秒以上である。これは、上面において、表面チルト角が小さく、結晶方位が全体として単結晶のように高度に配向していることを示している。前述したようなカソードルミネッセンス分布を有している上で、このような全体として表面での結晶方位が高度に配向している微構造であると、13族元素窒化物結晶層の上面における特性分布が小さくでき、その上に設けられる各種機能素子の特性を均一に揃えることが可能であり、また機能素子の歩留りも改善する。
【0052】
こうした観点からは、13族元素窒化物結晶層の上面におけるX線ロッキングカーブの(0002)面反射の半値幅が1000秒以下、20秒以上であることが好ましく、500秒以下、20秒以上であることがより一層好ましい。なお、13族元素窒化物結晶層の上面におけるX線ロッキングカーブの(0002)面反射の半値幅を20秒未満まで小さくすることは現実的には困難である。
【0053】
ただし、X線ロッキングカーブ(0002)面反射は以下のように測定する。XRD装置(例えばBruker-AXS製D8-DISCOVER)を用いて、測定条件は管電圧40kV、管電流40mA、コリメータ径0.1mm、アンチスキャッタリングスリット3mmで、ω=ピーク位置角度±0.3°の範囲、ωステップ幅0.003°、及び計数時間1秒に設定して行えばよい。この測定ではGe(022)非対称反射モノクロメーターでCuKα線を平行単色光化(半値幅28秒)し、あおり角CHI=0°付近で軸立てた上で測定するのが好ましい。そして、X線ロッキングカーブ(0002)面反射の半値幅は、XRD解析ソフトウェア(Bruker-AXS製、LEPTOS4.03)を用いてピークサーチを行い算出する事ができる。ピークサーチ条件は、Noise Filter「10」、Threshold「0.30」、Points「10」とすることが好ましい。
【0054】
13族元素窒化物結晶層の上面に略垂直な断面は、CLによって観察すると、図7に示すように、白く発光する線状の高輝度発光部が観察されることがある。なお、図7において、低輝度発光領域が面状に、二次元的に広がっており、高輝度発光部は線状をなしており、隣り合う低輝度発光領域を区分する境界線のように伸びていることがわかる。こうした高輝度発光部および低輝度発光領域の観測方法は、上面における高輝度発光部および低輝度発光領域の観測方法と同じである。
【0055】
13族元素窒化物結晶層の断面における低輝度発光領域の形状には特に制限はなく、通常は面状に、二次元的に伸びているものである。一方、高輝度発光部が形成する線は、細長いものである必要がある。こうした観点からは、高輝度発光部の幅は、100μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。また、高輝度発光部の幅は通常0.01μm以上である。
【0056】
また、本発明の観点からは、13族元素窒化物結晶層の断面における発光部の長さと幅との比率(長さ/幅)は、1以上が好ましく、 10以上が更に好ましい。
【0057】
好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層の上面と略垂直な前記断面において、線状の高輝度発光部が連続相を形成しており、低輝度発光領域が高輝度発光部によって区画された不連続相を形成している。例えば、図7のCL写真では、線状の高輝度発光部は連続相を形成しており、低輝度発光領域が高輝度発光部によって区画された不連続相を形成している。
【0058】
ただし、連続相とは、前記断面において、高輝度発光部が連続していることを意味するが、高輝度発光部すべてが完全に連続していることを必須としているわけではなく、全体のパターンに影響しない範囲で少量の高輝度発光部が他の高輝度発光部に対して分離されていることは許容するものとする。
【0059】
また、分散相とは、低輝度発光領域が概ね高輝度発光部によって区画されていて、互いにつながらない多数の領域に分かれていることを意味する。
【0060】
好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層の上面に略垂直な断面においてボイドが観測されない。すなわち、図7のCL写真と同一視野である、図8に示すSEM写真において、ボイド(空隙)や13族元素窒化物結晶以外の異なる結晶相は観測されない。ただし、ボイドの観測は以下のようにして行う。
【0061】
ボイドは、13族元素窒化物結晶層の上面に略垂直な断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際に観察され、最大幅が1μm~500μmの大きさの空隙を「ボイド」とする。このSEM観察には、例えば日立ハイテクノロジーズ製S-3400N走査電子顕微鏡を用いる。測定条件は、加速電圧15kV、プローブ電流「60」、ワーキングディスタンス(W.D.)6.5mm、倍率100倍で観察するのが好ましい。
【0062】
また、走査型電子顕微鏡(上記した観察条件)では、13族元素窒化物結晶層の上面に略垂直な断面を観察した際に、ボイドなどの構造的マクロ欠陥を伴うような明らかな粒界は観察されない。こうした微構造であると、発光素子などの機能素子を13族元素窒化物結晶層上に作製した場合、明らかな粒界に起因するような抵抗上昇や特性のばらつきを抑制する事ができると考えられる。
【0063】
また、好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層の上面における転位密度が1×10/cm以上、1×10/cm以下である。この転位密度を1×10/cm以下とすることが機能素子の特性向上の観点から特に好ましい。この観点からは、この転位密度を1×10/cm以下とすることが更に好ましい。この転位密度は以下のようにして測定するものとする。
【0064】
転位密度の測定には、CL検出器付きの走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることができる。例えばGatan製MiniCLシステム付きの日立ハイテクノロジーズ製S-3400N走査電子顕微鏡を用いてCL観察した場合、転位箇所が発光せずに黒点(ダークスポット)として観察される。そのダークスポット密度を計測する事により、転位密度が算出される。測定条件は、CL検出器を試料と対物レンズの間に挿入した状態で、加速電圧10kV、プローブ電流「90」、ワーキングディスタンス(W.D.)22.5mm、倍率1200倍で観察するのが好ましい。
【0065】
また、好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層の上面におけるX線ロッキングカーブの(0002)面反射の半値幅が3000秒以下、20秒以上、かつ、 (1000)面反射の半値幅が10000秒以下、20秒以上である。これは上面における表面チルト角および表面ツイスト角が共に小さく、結晶方位が全体として単結晶のようにより高度に配向していることを示している。このような全体として表面での結晶方位がより高度に配向している微構造であると、13族元素窒化物結晶層の上面における特性分布が小さくでき、その上に設けられる各種機能素子の特性を均一に揃えることが可能であり、また機能素子の歩留りも改善する。
【0066】
また、好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層の上面におけるX線ロッキングカーブの(1000)面反射の半値幅が10000秒以下、20秒以上である。これは、上面における表面ツイスト角度が非常に低いことを意味している。結晶方位が全体として単結晶のように高度に配向していることを示している。前述したようなカソードルミネッセンス分布を有している上で、このような全体として表面での結晶方位が高度に配向している微構造であると、13族元素窒化物結晶層の上面における特性分布が小さくでき、その上に設けられる各種機能素子の特性を均一に揃えることが可能であり、また機能素子の歩留りも改善する。
【0067】
こうした観点からは、13族元素窒化物結晶層の上面におけるX線ロッキングカーブの(1000)面反射の半値幅は、5000秒以下であることが好ましく、更には1000秒以下、更には20秒以上であることが一層好ましい。また、この半値幅を20秒未満まで低下させることは現実的には困難である。
【0068】
ただし、X線ロッキングカーブ(1000)面反射は以下のように測定する。XRD装置(例えばBruker-AXS製D8-DISCOVER)を用いて、測定条件は管電圧40kV、管電流40mA、コリメータなし、アンチスキャッタリングスリット3mmで、ω=ピーク位置角度±0.3°の範囲、ωステップ幅0.003°、及び計数時間4秒に設定して行えばよい。この測定ではGe(022)非対称反射モノクロメーターでCuKα線を平行単色光化(半値幅28秒)し、あおり角CHI=88°付近で軸立てた上で測定するのが好ましい。そして、X線ロッキングカーブ(1000)面反射の半値幅は、XRD解析ソフトウェア(Bruker-AXS製、LEPTOS4.03)を用いてピークサーチを行い算出する事ができる。ピークサーチ条件は、Noise Filter「10」、Threshold「0.30」、Points「10」とすることが好ましい。
【0069】
(13族元素窒化物結晶層の分離方法)
13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から分離することによって、13族元素窒化物結晶層を含む自立基板を得ることができる。
【0070】
ここで、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から分離する方法は限定されない。好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層を育成した後の降温工程において13族元素窒化物結晶層を単結晶基板から自然剥離させる。
【0071】
あるいは、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板からケミカルエッチングによって分離することができる。
ケミカルエッチングを行う際のエッチャントとしては、硫酸、塩酸等の強酸や硫酸とリン酸の混合液、もしくは水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の強アルカリが好ましい。また、ケミカルエッチングを行う際の温度は、70℃以上が好ましい。
【0072】
あるいは、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板からレーザーリフトオフ法によって剥離することができる。
あるいは、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から研削によって剥離することができる。
あるいは、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板からワイヤーソーで剥離することができる。
【0073】
(自立基板)
13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から分離することで、自立基板を得ることができる。本発明において「自立基板」とは、取り扱う際に自重で変形又は破損せず、固形物として取り扱うことのできる基板を意味する。本発明の自立基板は発光素子等の各種半導体デバイスの基板として使用可能であるが、それ以外にも、電極(p型電極又はn型電極でありうる)、p型層、n型層等の基材以外の部材又は層として使用可能なものである。この自立基板には、一層以上の他の層が更に設けられていても良い。
【0074】
13族元素窒化物結晶層が自立基板を構成する場合には、自立基板の厚さは基板に自立性を付与できる必要があり、20μm以上が好ましく、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは300μm以上である。自立基板の厚さに上限は規定されるべきではないが、製造コストの観点では3000μm以下が現実的である。
【0075】
(複合基板)
サファイア基板上に13族元素窒化物結晶層を設けた状態で、13族元素窒化物結晶層を分離することなく、他の機能層を形成するためのテンプレート基板として用いることができる。
【0076】
(機能素子)
本発明の13族元素窒化物結晶層上に設けられた機能素子構造は特に限定されないが、発光機能、整流機能または電力制御機能を例示できる。
【0077】
本発明の13族元素窒化物結晶層を用いた発光素子の構造やその作製方法は特に限定されるものではない。典型的には、発光素子は、13族元素窒化物結晶層に発光機能層を設けることにより作製される。もっとも、13族元素窒化物結晶層を電極(p型電極又はn型電極でありうる)、p型層、n型層等の基材以外の部材又は層として利用して発光素子を作製してもよい。
【0078】
図9に、本発明の一態様による発光素子の層構成を模式的に示す。図9に示される発光素子21は、自立基板13と、この基板上に形成される発光機能層18とを備えてなる。この発光機能層18は、電極等を適宜設けて電圧を印加することによりLED等の発光素子の原理に基づき発光をもたらすものである。
【0079】
発光機能層18が基板13上に形成される。発光機能層18は、基板13上の全面又は一部に設けられてもよいし、後述するバッファ層が基板13上に形成される場合にはバッファ層上の全面又は一部に設けられてもよい。発光機能層18は、電極及び/又は蛍光体を適宜設けて電圧を印加することによりLEDに代表される発光素子の原理に基づき発光をもたらす公知の様々な層構成を採りうる。したがって、発光機能層18は青色、赤色等の可視光を放出するものであってもよいし、可視光を伴わずに又は可視光と共に紫外光を発光するものであってもよい。発光機能層18は、p-n接合を利用した発光素子の少なくとも一部を構成するのが好ましく、このp-n接合は、図9に示されるように、p型層18aとn型層18cの間に活性層18bを含んでいてもよい。このとき、活性層としてp型層及び/又はn型層よりもバンドギャップが小さい層を用いたダブルへテロ接合又はシングルへテロ接合(以下、ヘテロ接合と総称する)としてもよい。また、p型層-活性層-n型層の一形態として、活性層の厚みを薄くした量子井戸構造を採りうる。量子井戸を得るためには活性層のバンドギャップがp型層及びn型層よりも小さくしたダブルへテロ接合が採用されるべきことは言うまでもない。また、これらの量子井戸構造を多数積層した多重量子井戸構造(MQW)としてもよい。これらの構造をとることで、p-n接合と比べて発光効率を高めることができる。このように、発光機能層18は、発光機能を有するp-n接合及び/又はへテロ接合及び/又は量子井戸接合を備えたものであるのが好ましい。なお、20、22は電極の例である。
【0080】
したがって、発光機能層18を構成する一以上の層は、n型ドーパントがドープされているn型層、p型ドーパントがドープされているp型層、及び活性層からなる群から選択される少なくとも一以上を含むものであることができる。n型層、p型層及び(存在する場合には)活性層は、主成分が同じ材料で構成されてもよいし、互いに主成分が異なる材料で構成されてもよい。
【0081】
発光機能層18を構成する各層の材質は、13族元素窒化物結晶層の結晶方位に概ね倣って成長し且つ発光機能を有するものであれば特に限定されないが、窒化ガリウム(GaN)系材料、酸化亜鉛(ZnO)系材料及び窒化アルミニウム(AlN)系材料から選択される少なくとも1種以上を主成分とする材料で構成されるのが好ましく、p型ないしn型に制御するためのドーパントを適宜含むものであってよい。特に好ましい材料は、窒化ガリウム(GaN)系材料である。また、発光機能層18を構成する材料は、そのバンドギャップを制御するため、例えばGaNにAlN、InN等を固溶させた混晶としてもよい。また、直前の段落で述べたとおり、発光機能層18は複数種の材料系からなるヘテロ接合としてもよい。例えば、p型層に窒化ガリウム(GaN)系材料、n型層に酸化亜鉛(ZnO)系材料を用いてもよい。また、p型層に酸化亜鉛(ZnO)系材料、活性層とn型層に窒化ガリウム(GaN)系材料を用いてもよく、材料の組み合わせに特に限定はない。
【0082】
発光機能層18及びバッファ層の成膜方法は、13族元素窒化物結晶層の結晶方位に概ね倣って成長する方法であれば特に限定されないが、MOCVD、MBE、HVPE、スパッタリング等の気相法、Naフラックス法、アモノサーマル法、水熱法、ゾルゲル法等の液相法、粉末の固相成長を利用した粉末法、及びこれらの組み合わせが好ましく例示される。
【実施例
【0083】
(実施例1-1)
図1図2を参照しつつ説明した方法に従い、サファイア基板上に窒化ガリウム結晶層を育成した。
具体的には、サファイア基板25の表面25aにArイオンビームをスキャンした。この際には、AMSystems社製イオントリミング装置を用い、ガス種はArとし、イオンビーム照射パワーは120Wとし、ガス流量を6sccmとした。
得られたアルミニウム酸化物層を透過型電子顕微鏡で観察したところ、アモルファス構造であり、厚さは40オングストロームであった。
【0084】
次いで、アルミニウム酸化物層上にMOCVD法で500℃で窒化ガリウムからなるバッファ層を形成した後、厚さ3μmの窒化ガリウムからなる種結晶膜3を成膜し、種結晶基板を得た。
【0085】
この種結晶基板を、窒素雰囲気のグローブボックス内でアルミニウム酸化物坩堝の中に配置した。次に、Ga/Ga+Na(mol%)=15mol%となるように金属ガリウムと金属ナトリウムを坩堝内に充填し、アルミニウム酸化物板で蓋をした。その坩堝をステンレス製内容器に入れ、さらにそれを収納できるステンレス製外容器に入れて、窒素導入パイプの付いた容器蓋で閉じた。この外容器を、予め真空ベークしてある結晶製造装置内の加熱部に設置されている回転台の上に配置し、耐圧容器に蓋をして密閉した。
【0086】
次いで、耐圧容器内を真空ポンプにて0.1Pa以下まで真空引きした。続いて、上段ヒータ、中段ヒータ及び下段ヒータを調節して加熱空間の温度を870℃になるように加熱しながら、4.0MPaまで窒素ガスボンベから窒素ガスを導入し、外容器を中心軸周りに20rpmの速度で一定周期の時計回りと反時計回りで回転させた。加速時間=12秒、保持時間=600秒、減速時間=12秒、停止時間=0.5秒とした。そして、この状態で40時間保持した。その後、室温まで自然冷却して大気圧にまで減圧した後、耐圧容器の蓋を開けて中から坩堝を取り出した。坩堝の中の固化した金属ナトリウムを除去した。
次いで、レーザーリフトオフ法によって、窒化ガリウム結晶層からサファイア基板を除去し、厚さ600μmの窒化ガリウム結晶層からちなる自立基板を得た。
【0087】
(評価)
窒化ガリウム自立基板の上面を研磨加工して、CL検出器付きの操作型電子顕微鏡(SEM)でCL観察した。その結果、図4に示すように、CL写真では窒化ガリウム結晶意内部に、白く発光する高輝度発光部が確認された。しかし、同時に、図10に示すように、同一視野をSEM観察したところ、ボイド等が確認されず、均質な窒化ガリウム結晶が成長していることが確認された。
【0088】
また、窒化ガリウム自立基板を、その上面に対して垂直な断面に切断し、切断面を研磨加工してCL検出器付きの走査電子顕微鏡(SEM)でCL観察した。その結果、図7に示すように、CL像では窒化ガリウム結晶内部に、白く発光する高輝度発光部が確認された。しかし、同時に、図8に示すように、同一視野をSEM観察したところ、ボイド等が確認されず、均質な窒化ガリウム結晶が成長していることが確認された。すなわち、13族元素窒化物結晶層の断面においても、上面と同様に、CL観察では高輝度発光部が存在しているが、SEMでは同じ視野にCL写真で見られる高輝度発光部と同一形状、もしくはそれに類する微構造が存在していなかった。
【0089】
(ダークスポットの測定)
ついで、13族元素窒化物結晶層の上面について転位密度を測定した。CL観察を行い、転位箇所であるダークスポットの密度を計測する事により、転位密度が算出した。80μm×105μm視野をCL観察した結果、5×10/cmであった。
【0090】
(表面チルト角の測定)
窒化ガリウム結晶層の上面におけるX線ロッキングカーブの(0002)面反射の半値幅を測定した結果、86秒であった。
【0091】
(表面ツイスト角の測定)
窒化ガリウム結晶層の上面におけるX線ロッキングカーブの(1000)面反射の半値幅を測定したところ、89秒であった。
【0092】
(MOCVD法による発光機能層の成膜)
MOCVD法を用いて、窒化ガリウム自立基板の上面にn型層として1050℃でSi原子濃度が5×1018/cmになるようにドーピングしたn-GaN層を1μm堆積した。次に発光層として750℃で多重量子井戸層を堆積した。具体的にはInGaNによる2.5nmの井戸層を5層、GaNによる10nmの障壁層を6層にて交互に積層した。次にp型層として950℃でMg原子濃度が1×1019/cmになるようにドーピングしたp-GaNを200nm堆積した。その後、MOCVD装置から取り出し、p型層のMgイオンの活性化処理として、窒素雰囲気中で800℃の熱処理を10分間行った。
【0093】
(発光素子の作製)
フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、窒化ガリウム自立基板のn-GaN層及びp-GaN層とは反対側の面にカソード電極としてのTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、p型層に透光性アノード電極としてNi/Au膜をそれぞれ6nm、12nmの厚みにパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、透光性アノード電極としてのNi/Au膜の上面の一部領域に、アノード電極パッドとなるNi/Au膜をそれぞれ5nm、60nmの厚みにパターニングした。こうして得られた基板を切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、縦型構造の発光素子を得た。
【0094】
(発光素子の評価)
作製した100個の素子について、カソード電極とアノード電極間に通電し、I-V測定を行ったところ、91個の素子について整流性が確認された。すなわち、歩留りは91%であった。また、順方向の電流を流したところ、波長460nmの発光が確認された。発光強度は0.96であった(実施例2-2の発光強度を1.0としたときの相対値)。
【0095】
(実施例1-2)
実施例1-1と同様にしてサファイア基板上にアルミニウム酸化物層および13族元素窒化物結晶層を形成し、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から剥離させて自立基板を得た。
ただし、本例では、実施例1-1とは異なり、AMSystems社製イオントリミング装置を用い、ガス種をHeとし、イオンビーム照射パワーを120Wとし、ガス流量を12sccmとした。この結果、厚さ200オングストロームのアモルファス構造のアルミニウム酸化物層が得られた。この上に実施例1-1と同様にして窒化ガリウム結晶層を作製した。
【0096】
得られた13族元素窒化物結晶層の上面について、80μm×105μm視野についてダークスポット数をCLで観察し、転位密度を算出した結果、2×10/cmであった。また、得られた自立基板を用い、実施例1-1と同様にして発光ダイオードを作製し、発光強度および歩留りを測定した。測定結果を表1に示す。また、得られた自立基板の上面、断面におけるCL観察結果、上面の表面ツイスト角、表面チルト角の観察結果も実施例1-1と同等であった。
【0097】
(実施例1-3)
実施例1-1と同様にしてサファイア基板上にアルミニウム酸化物層および13族元素窒化物結晶層を形成し、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から剥離させて自立基板を得た。
ただし、本例では、実施例1-1とは異なり、サファイア基板に高速Ar原子ビームをスキャンした。
スキャン開始前のチャンバー内到達真空度は10-6Pa台とした。ビーム源として、サドルフィールド型の高速原子ビーム源を使用した。チャンバーにArガスを導入し、電極へ直流電源から高電圧を印加した。電流値は200mA、電圧1.8kV、アルゴン流量80sccm、照射時間は900秒とした。
この結果、厚さ60オングストロームのアモルファス構造のアルミニウム酸化物層が得られた。この上に実施例1-1と同様にして窒化ガリウム結晶層を作製した。
【0098】
得られた13族元素窒化物結晶層の上面についてダークスポット数をCLで観察し、転位密度を算出した結果、7×10/cmであった。また、得られた自立基板を用い、実施例1-1と同様にして発光ダイオードを作製し、発光強度および歩留りを測定した。測定結果を表1に示す。また、得られた自立基板の上面、断面におけるCL観察結果、上面の表面ツイスト角、表面チルト角の観察結果も実施例1-1と同等であった。
【0099】
(実施例2-1)
実施例1-1と同様にしてサファイア基板上にアルミニウム酸化物層および13族元素窒化物結晶層を形成し、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から剥離させて自立基板を得た。
ただし、本例では、実施例1-1とは異なり、サファイア基板表面を、番手♯2000の砥石で研削加工した。この結果、厚さ0.2μmの加工変質層を得た。
加工変質層においては、TEM写真において、アルミニウム酸化物層中にアモルファス相、多結晶相、結晶欠陥が観察された。これらはサファイア単結晶に対するコントラスト変化によって前述のようにして観察可能であった。
【0100】
この上に実施例1-1と同様にして窒化ガリウム結晶層を作製した。得られた13族元素窒化物結晶層の上面についてダークスポット数をCLで観察し、転位密度を算出した結果、5×10/cmであった。また、得られた自立基板を用い、実施例1-1と同様にして発光ダイオードを作製し、発光強度および歩留りを測定した。測定結果を表1に示す。また、得られた自立基板の上面、断面におけるCL観察結果、上面の表面ツイスト角、表面チルト角の観察結果も実施例1-1と同等であった。
【0101】
(実施例2-2)
実施例2-1と同様にしてサファイア基板上にアルミニウム酸化物層および13族元素窒化物結晶層を形成し、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から剥離させて自立基板を得た。
ただし、本例では、実施例2-1とは異なり、サファイア基板表面を、番手♯325の砥石で研削加工した。この結果、厚さ1.5μmの加工変質層を得た。
【0102】
この上に実施例1-1と同様にして窒化ガリウム結晶層を作製した。得られた13族元素窒化物結晶層の上面についてダークスポット数をCLで観察し、転位密度を算出した結果、2×10/cmであった。また、得られた自立基板を用い、実施例1-1と同様にして発光ダイオードを作製し、発光強度および歩留りを測定した。測定結果を表1に示す。また、得られた自立基板の上面、断面におけるCL観察結果、上面の表面ツイスト角、表面チルト角の観察結果も実施例1-1と同等であった。
【0103】
(実施例3)
実施例1-1と同様にしてサファイア基板上にアルミニウム酸化物層および13族元素窒化物結晶層を形成し、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から剥離させて自立基板を得た。
ただし、本例では、実施例1-1とは異なり、反応性イオンエッチング法によってサファイア基板表面をエッチングした。具体的には、パナソニック社製RIE装置「型番E640」を用い、RFパワーを400Wとし、バイアス電圧を200Wとし、使用ガスを塩素(流量40sccm)とし、圧力を1Paとし、RIE時間を20分間とした。この結果、厚さ40オングストロームのアルミニウム酸化物層を得た。
【0104】
この上に実施例1-1と同様にして窒化ガリウム結晶層を作製した。得られた13族元素窒化物結晶層の上面についてダークスポット数をCLで観察し、転位密度を算出した結果、7×105/cmであった。また、得られた自立基板を用い、実施例1-1と同様にして発光ダイオードを作製し、発光強度および歩留りを測定した。測定結果を表1に示す。また、得られた自立基板の上面、断面におけるCL観察結果、上面の表面ツイスト角、表面チルト角の観察結果も実施例1-1と同等であった。
【0105】
(実施例4-1)
実施例1-1と同様にしてサファイア基板上にアルミニウム酸化物層および13族元素窒化物結晶層を形成し、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から剥離させて自立基板を得た。
ただし、本例では、実施例1-1とは異なり、サファイア基板表面を、水素ガス下でアニールした。具体的には、MOCVD装置を使用し、水素雰囲気、昇温速度120℃/分で1200℃まで昇温した。その後、水素雰囲気は変えずに30分間保持してアニールした。その後、ヒーター設定値を降温速度120℃/分で降温し、実温度が500℃を下回った時点で、窒素雰囲気に切り替え、室温まで降温した。
この結果、厚さ 80オングストロームのアルミニウム酸化物層を得た。
【0106】
この上に実施例1-1と同様にして窒化ガリウム結晶層を作製した。得られた13族元素窒化物結晶層の上面についてダークスポット数をCLで観察し、転位密度を算出した結果、5×10/cmであった。また、得られた自立基板を用い、実施例1-1と同様にして発光ダイオードを作製し、発光強度および歩留りを測定した。測定結果を表1に示す。また、得られた自立基板の上面、断面におけるCL観察結果、上面の表面ツイスト角、表面チルト角の観察結果も実施例1-1と同等であった。
【0107】
(実施例4-2)
実施例4-1と同様にしてサファイア基板上にアルミニウム酸化物層および13族元素窒化物結晶層を形成し、13族元素窒化物結晶層をサファイア基板から剥離させて自立基板を得た。
ただし、本例では、実施例4-1とは異なり、サファイア基板表面を、水素、アンモニア、窒素の混合ガス下でアニールした。具体的には、MOCVD装置を使用し、水素雰囲気、昇温速度120℃/分で1200℃まで昇温した。この後、水素雰囲気は変えずに15分間保持してアニールした後、雰囲気を水素、アンモニア、窒素の混合ガスに変え、15分間保持してアニールした。その後、ヒーター設定値を降温速度120℃/分で降温し、実温度が500℃を下回った時点で、窒素雰囲気に切り替え、室温まで降温した。
この結果、厚さ60オングストロームのアルミニウム酸化物層を得た。
【0108】
この上に実施例1-1と同様にして窒化ガリウム結晶層を作製した。得られた13族元素窒化物結晶層の上面についてダークスポット数をCLで観察し、転位密度を算出した結果、3×10/cmであった。また、得られた自立基板を用い、実施例1-1と同様にして発光ダイオードを作製し、発光強度および歩留りを測定した。測定結果を表1に示す。また、得られた自立基板の上面、断面におけるCL観察結果、上面の表面ツイスト角、表面チルト角の観察結果も実施例1-1と同等であった。
【0109】
(比較例)
サファイア基板上に、MOCVD法によって、実施例1-1と同様にして窒化ガリウムからなる種結晶膜を育成した。次いで、Naフラックス法によって、実施例1-1と同様にして窒化ガリウム結晶層を育成した(厚さ600μm)。次いで、実施例1-1と同様にしてレーザーリフトオフ法によってサファイア基板を除去し、得られた13族元素窒化物結晶層からなる自立基板の上面と底面とを研磨した。
【0110】
得られた13族元素窒化物結晶層の上面についてダークスポット数をCLで観察し、転位密度を算出した結果、7×10/cmであった。また、得られた自立基板を用い、実施例1-1と同様にして発光ダイオードを作製し、発光強度および歩留りを測定した。測定結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
(整流機能素子の作成)
整流機能を有する機能素子を作製した。
すなわち、実施例1-1で得られた前記自立基板の上面に、以下のようにして、ショットキーバリアダイオード構造を成膜し、電極を形成することで、ダイオードを得、特性を確認した。
【0113】
(MOCVD法による整流機能層の成膜)
MOCVD(有機金属化学的気相成長)法を用いて、自立基板上にn型層として1050℃でSi原子濃度が1×1016/cmになるようにドーピングしたn-GaN層を5μm成膜した。
フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、自立基板上のn-GaN層とは反対側の面にオーミック電極としてTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、MOCVD法で成膜したn-GaN層にショットキー電極としてNi/Au膜をそれぞれ6nm、80nmの厚みでパターニングした。こうして得られた基板を切断してチップ化し、さらにリードフレーム(lead frame)に実装して、整流素子を得た。
【0114】
(整流素子の評価)
I-V測定を行ったところ、整流特性が確認された。
【0115】
(電力制御素子の作成)
電力制御機能を有する機能素子を作製した。
前記実施例1-1と同様に自立基板を作製した。ただし、実施例1と異なり、Naフラックス法によって窒化ガリウム結晶を成膜する際に、不純物のドーピングは行わなかった。このようにして得られた自立基板の上面に、以下のようにして、MOCVD法でAl0.25Ga0.75/GaN HEMT構造を成膜し、電極を形成し、トランジスタ特性を確認した。
【0116】
MOCVD(有機金属化学的気相成長)法を用いて、自立基板上にi型層として1050℃で不純物ドーピングをしていないGaN層を3μm成膜した。次に機能層として同じ1050℃でAl0.25Ga0.75N層を25nm成膜した。これによりAl0.25Ga0.75N/GaN HEMT構造が得られた。
【0117】
フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、ソース電極及びドレイン電極としてのTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、ゲート電極としてNi/Au膜をそれぞれ6nm、80nmの厚みでショットキー接合にて形成し、パターニングした。こうして得られた基板を切断してチップ化し、さらにリードフレーム(lead frame)に実装して、電力制御素子を得た。
【0118】
(電力制御素子の評価)
I-V特性を測定したところ、良好なピンチオフ特性が確認され、最大ドレイン電流は760mA/mm、最大相互コンダクタンス240mS/mm特性を得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11