(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】危険物に対する二重バレル
(51)【国際特許分類】
B65D 8/06 20060101AFI20221012BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B65D8/06 A
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2019543055
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2018052993
(87)【国際公開番号】W WO2018146115
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】202017100694.8
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517385520
【氏名又は名称】ボド リヒター
【氏名又は名称原語表記】RICHTER, Bodo
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100226263
【氏名又は名称】中田 未来生
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター リヒター
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02896575(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0144644(US,A1)
【文献】実開昭62-143630(JP,U)
【文献】実開昭57-120431(JP,U)
【文献】特開平07-132935(JP,A)
【文献】特開昭60-164096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 8/06
B65D 8/22
B29C 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックでできている外側バレル(14)と、
プラスチックでできていて前記外側バレル(14)に収容される内側バレル(12)と、
を備える、危険物に対する二重バレルであって、
前記外側バレル(14)の本体は第1バレル部(20)及び第2バレル部(22)で形成され、
前記第1バレル部(20)は第1接続領域(33)を有し、前記第2バレル部(22)は前記第1接続領域(33)に対して相補的な第2接続領域(35)を有し、
前記第1バレル部(20)及び前記第2バレル部(22)は前記第1接続領域(33)及び第2接続領域(35)を経て、周方向プラスチック溶接継ぎ目(34)によって組み立て状態で互いに堅固に接続され、
前記第1接続領域(33)及び第2接続領域(35)が、前記周方向プラスチック溶接継ぎ目(34)の領域で、前記外側バレル(14)の高さ中心における前記外側バレル(14)の壁の厚さよりも1.5から2.0倍だけ厚く形成され、
融接によって生み出される溶接継ぎ目(34)が、前記第2バレル部(22)の上側基部(36)よりも下側に、前記上側基部(36)の壁の厚さの2から3倍の距離に配置され、
前記内側バレル(12)が空状態であるときにおいて、前記内側バレル(12)が前記外側バレル(14)の前記上側基部(36)と堅固に接続されるとき、エアクッションのタイプの空気のうを作り出すために、前記内側バレル(12)の下側基部(46)が、前記外側バレル(14)の下側基部(48)に対して、前記内側バレル(12)の前記下側基部(46)の壁の厚さの2~3倍の距離で保たれ、
直立位置における、前記内側バレル(12)の壁の厚さは、最上部から底部まで、前記内側バレル(12)の周面(21)の領域で、2.5~1.8から1の比率で一様にテーパーが付けられている、二重バレル。
【請求項2】
前記第2バレル部(22)の上側基部(36)の少なくとも1つの容器開口部(26)の周りの、前記上側基部(36)の下面と前記内側バレル(20)の上面(41)との間に、弾性環状ディスク(40)が配置されることを特徴とする、請求項
1に記載の二重バレル。
【請求項3】
前記内側バレル(12)の少なくとも1つの容器開口部(26)のノズル(42)が、固定リング(44)によって、前記外側バレル(14)の上側基部(36)と堅固に接続されることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の二重バレル。
【請求項4】
前記二重バレル(10)の周面(21)の領域における前記内側バレル(12)の外寸は、前記領域における前記外側バレル(14)の内寸よりも、前記外側バレル(14)の壁の厚さの0.8から1.2倍に対応する量だけ小さいことを特徴とする請求項1
~3の一項に記載の二重バレル。
【請求項5】
前記内側バレル(12)の周面(21)の中心領域において、前記内側バレル(12)の壁の厚さは、少なくとも2ミリメートルに達することを特徴とする請求項1~
4の一項に記載の二重バレル。
【請求項6】
前記内側バレル(12)の周面(21)の中心領域において、前記外側バレル(14)の壁の厚さがその他の点では一定であるときに、前記二重バレル(10)の中心の高さにおける、前記外側バレル(14)の壁の厚さの、前記内側バレル(12)の壁の厚さに対する比率が、2.7~2.3から1の範囲に存在することを特徴とする請求項1~
5の一項に記載の二重バレル。
【請求項7】
前記内側バレル(12)が180から220リットルの容積を有することを特徴とする請求項1~
6の一項に記載の二重バレル。
【請求項8】
前記二重バレルがプラスチックブロー成形法によって製造されることを特徴とする請求項1~
7の一項に記載の二重バレル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックでできている外側バレルと、プラスチックでできており外側バレルに収容される内側バレルと、を備える、危険物に対する二重バレルに関する。
【0002】
このような二重バレルは、本出願人による欧州特許出願公開第2,896,575号明細書から、組合せバレルとして知られる。この組合せバレルは、軽量であり、組み立てが単純であり、ブロー成形法によって容易に製造可能であるという利点を有する。酸類等の危険物に対して、このようなバレルは、輸送に対する高い安定性を示す必要があり、動作安定性を向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願公開第2,896,575号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、単純な構造を維持しながら高い安定性及び動作安全性を有する、危険物に対する二重バレルを特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような危険物に対する二重バレルは、請求項1の構成の組み合わせによって定められる。従属項で有利な発展形に言及する。
【0006】
ある発展形によれば、この二重バレルでは、直立姿勢において、周方向プラスチック溶接継ぎ目の領域における外側バレルの壁は、外側バレルの高さ中心領域における外側バレルの壁の厚さよりも、1.5から2.0倍だけ厚い。この構造的手段を用いて、環状溶接面が相当増加し、第1バレル部及び第2バレル部から組み立てられる外側バレルの本体の安定性が向上する。このようにして、上側第2バレル部に斜めに当たる力が確実に吸収され、力が大きい場合でさえも外側バレルの破壊を妨げ得る。好ましくは溶接継ぎ目の接続領域をもっぱら内側に突出させて厚くし、二重バレルの外形は厚肉化を示さない。このことは、二重バレルの扱いに有利である。
【0007】
ある発展形は、融接によって生み出される溶接継ぎ目が、第2バレル部の上側基部のできるだけ近くに配置され、好ましくは上側基部の壁の厚さの2から3倍の距離に配置されることをもたらす。この領域において、上側基部の付近で、外側バレルの本体が特に安定し、小さい曲げ力及び剪断力のみが溶接継ぎ目に作用して、その結果溶接継ぎ目の破壊のリスクが減少する。
【0008】
他の発展形は、第2バレル部の上側基部の少なくとも1つの容器開口部の周りの、上側基部の下面と内側バレルの上面との間に、弾性環状ディスクが配置されることを特徴とする。この弾性環状ディスクは、上側基部と内側バレルの上面との間の傷付きやすい接続領域に作用し得る力を弾力的に吸収する。好ましくは、この環状ディスクが弾性発泡材料でできており、注入中にことによると漏れる液体残留物を吸収する。
【0009】
ある有利な発展形は、内側バレルの少なくとも1つの容器開口部のノズルが、固定リングを用いて外側バレルの上側基部に堅固に接続されることをもたらす。このようにして、内側バレルを外側バレルに固定し、その結果二重バレル全体が安定性を得る。好ましくは、2つの容器開口部を内側バレルに形成し、相応して関連ノズルを固定リングと1つずつ固定し、対称構造の結果として、対称構造に作用する力が対称的に分散される。
【0010】
内側バレルが外側バレルの上側基部と固定接続されているとき、内側バレルが空状態であるときにおいて、内側バレルの下側基部が、外側バレルの下側基部に対して所定の距離で、好ましくは内側バレルの下側基部の壁の厚さの2~3倍の距離で、保持されることが有利である。この構造的設計があるとき、外側バレルの内面と外側バレルの外面との間にエアクッションのタイプの空気のうが存在する。外側バレルに急激な衝撃が作用する場合、空気の変位によって衝撃力が吸収され、その結果内側バレルが保護される。
【0011】
他の有利な手段は、周面の中心領域における内側バレルの外寸は、この領域における外側バレルの内寸よりも、外側バレルの壁の厚さの0.8から1.2倍に対応する量だけ小さい構成をもたらす。またこの構成は、外側バレルの周面に作用する急激な衝撃が空気のうの空気によって吸収される、コートのような空気のうをもたらす。
【0012】
内側バレルの容積が約200リットルであるときに、内側バレルの周面の中心領域において、内側バレルの壁の厚さが少なくとも2ミリメートルに達することが有利である。このようにして、安定であるにもかかわらず軽量の構造が達成される。
【0013】
他の実施形態は、直立位置であるときに、内側バレルの壁の厚さは、最上部から底部まで、内側バレルの周面の領域で、2.5~1.8から1の比率で一様にテーパーが付けられていることを特徴とする。この手段によって、一方では、二重バレルの上側領域において安定性の向上を達成し、他方では、テーパーを付けることでプラスチック材料を節約し、これにより材料消費を減少させ、経済性を向上させる。
【0014】
他の発展形は、内側バレルの周面の中心領域において、外側バレルの壁の厚さがその他の点では一定であるときに、二重バレルの高さ中心における、外側バレルの壁の厚さの、内側バレルの壁の厚さに対する比率が、2.7~2.3から1の範囲に存在することを特徴とする。この構造的手段を用いて、一方では、外側バレルの外周面が内側バレルを高度に保護し、同時にプラスチック材料の低消費を達成する。
【0015】
図面に基づいて、本発明の実施形態を以下説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、二重バレルの実施形態の斜視図を表す。この二重バレルは、本出願人による欧州特許出願公開第2,896,575号明細書で説明される組合せバレルの発展形である。本願は、特にプラスチックブロー成形法に従う製造方法に関して言及する。
【0018】
図1に表す二重バレル10は、内側バレル12(
図2参照)がほぼ同じ高さで収容される、プラスチック外側バレル14を備える。外側バレル14は、ほぼ円筒状であり外側バレル14の長さの最大部にわたる周面21を有する第1バレル部20と、底部23と、第1バレル部20上に配置されて溶接される第2バレル部22とからなる。二重バレル10のカバーを形成する当該第2バレル部22において、換気バルブ24と、第2バレル部22の上側基部36を貫通する補充開口部26,28とが設けられる。好ましくは、外側バレル14及び内側バレル12に対するプラスチック材料としてポリエチレンを使用する。
【0019】
図2は、対称線mに沿って部分的に切断される二重バレル10の部分断面図を表す。さらに上述したように、内側バレル12は外側バレル14に収容される。外側バレル14は、溶接部34において、ミラー溶接とも呼ばれる融接によりそれぞれ接続領域33,35と互いに接続される第1バレル部20及び第2バレル部22からなる。第1バレル部20の下部に、スタンディングリム37が形成される。第2バレル部22は、積み重ねるため更なる二重バレルのスタンディングリム37を受け止め得る、積み重ねリム32を備える。輸送時または操作時に、
図1の矢印A,B,C,Dとして入力される相当な力が、二重バレル10に作用し得る。二重バレル10は、様々な技術的手段をとって高い安定性及び高い動作安全性を特徴とする。力が矢印Aの方向(すなわち二重バレル10に対して斜め方向であり積み重ねリム32に到達する方向)に作用するときに、積み重ねリム32は変形することがあり、周方向溶接部34で相当な力が発生し、この力によって当該溶接部34で破壊が生じることがある。
【0020】
このような破壊を妨げるため、周方向溶接部34の領域において、外側バレル14の接続領域33,35が、外側バレル14のほぼ高さ中心に存在する外側バレル14の普通の壁の厚さよりも約1.5から2.0倍だけ厚い。典型的には、外側バレル14のほぼ高さ中心における外側バレル14の壁の厚さは、4から5ミリメートルに達する。溶接部34の領域において材料が厚くなることで、環状溶接面が相当増加し、矢印Aの方向に大きな力が作用する場合にも破壊のリスクが減少する。さらに、この接合部34を第2バレル部22の上側基部36のできるだけ近くに、好ましくは第2バレル部22の上側基部36の壁の典型的には4から5ミリメートルに達する厚さの2から3倍の距離に、形成するときに有利である。上側基部36及び積み重ねリム32付近の当該領域において、その場所に配置される溶接の継ぎ目が比較的大きな力を吸収できる結果、外側バレル14は特に機械的に安定している。
【0021】
容器開口部26の周りで、弾性環状ディスク40を上側基部36と内側バレル12の上側面41との間に配置する。この弾性環状ディスク40は好ましくは発泡材料で製造され、その結果弾性環状ディスク40は弾性を得る。この弾性環状ディスク40は特に矢印Bの方向の力を吸収でき、外力が上側面41を経て内側バレル12に容易かつ直接的には伝達されない。発泡材料を有する実施形態では、この環状ディスク40は漏れた液体残留物をさらに吸収でき、このようにして内側バレル12と外側バレル14との間の内部を乾燥したまま保つ。
【0022】
内側バレル12上の、容器開口部26の領域において、上側基部36を貫通するノズル42が形成され、ノズル42は固定リング44を用いて上側基部36に堅固に接続される。好ましくはねじ接続により、好ましくは弾性環状ディスク40との相互作用による、この内側バレル12の上側基部36に対する固定によって、矢印Bの方向に作用する力に対する安定性の向上が達成される。
図1に見られるように、2つの容器開口部26,28が形成され、その結果対称構造が生み出され、対称構造に作用する力は対称的に分散される。ノズル42はプラグ45によって開閉可能である。
【0023】
内側バレル12が上側基部36と堅固に接続されるとき、内側バレル12が空状態のときに、内側バレル12の下側基部46が外側バレル14の下側基部48に対して所定の距離を保つことが有利である。この距離は、内側バレル12の下側基部46の壁の厚さの2から3倍の範囲に存在するべきである。このようにして、内側バレル12と外側バレル14との間にエアクッションのタイプの空気のうが存在する。例えば衝撃又はショックによって方向B又は方向Dに急激な力の衝撃が作用する場合に、このエアクッションの空気が変位して、したがって衝撃力を吸収し、その結果内側バレル12が保護される。また二重バレル10の周面21の領域において、エアクッションを生み出す手段を採用できる。二重バレル10の周面21の領域における、内側バレル12の外寸は、この領域における外側バレル14の内寸よりも、外側バレル14の壁の厚さの0.8から1.2倍に対応する量だけ小さい。方向Cの力の衝撃が作用する場合、結果として生じるエアクッションによって、空気が変位し、これにより内側バレル12が保護される。構造的手段によって形成される、空気が充填された環状のスペースは、バルブを有するエアクッションのように振る舞い、ショックのような力を弱める。そのように定められる内側容器の外寸は、溶接継ぎ目で厚くなる壁と有利に相互作用し、内側容器を外側容器内に挿入することを容易にする。
【0024】
更なる手段は、直立位置であるときの、内側バレル12の壁の厚さが、二重バレル10の周面21の領域における最上部から底部まで、2.5~1.8から1までの比率で均一にテーパー付けされていることを特徴とする。したがって上側領域では内側バレル12の安定性が向上し、また結果的にテーパーがつけられたプラスチック材料を節約できる。
【0025】
二重バレル10の中心の高さにおける外側バレル14の壁の厚さは典型的には、4から5ミリメートルの範囲であり、周面21の領域においてほとんど一定である。二重バレル10の中心の高さにおける、外側バレル14の壁の厚さの、内側バレル12の壁の厚さに対する比率は、2.7~2.3から1までの範囲に存在する。
【0026】
内側容器が充填される場合の実験において、前記手段が単独でも組み合わせても有効であることが証明されており、二重バレルの高い動作安全性が証明できた。
【0027】
好ましくは、プラスチックブロー成形プロセスによって二重バレル10を製造する。単一の作業ステップにおいて、外側バレル14はプラスチックホースから形成され、上側基部36の制御成形中に、接続領域33,35で厚くなる材料が形成される。その後、閉鎖される外側バレル14は、後の溶接部34に沿って分離され、ブロー成形によって同様に製造される内側バレル12が挿入される。溶接ミラーによって接続領域33,35の溶接面が溶解し、溶接ミラーを除去し、第1バレル部20を第2バレル部22に永続的に接続する。
【符号の説明】
【0028】
10 二重バレル
12 内側バレル
14 外側バレル
20 第1バレル部
21 周面
22 第2バレル部
23 底部
24 換気バルブ
26,28 補充開口部
33,35 接続領域
34 溶接部
32 上側積み重ねリム
37 スタンディングリム
A,B,C,D 力の方向
36 上側基部
40 環状ディスク
42 ノズル
44 固定リング
46 内側バレルの下側基部
48 外側バレルの下側基部
a 距離
45 プラグ