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特許7157078レドックスフロー電池システム用の電解液をリバランスする方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池システム用の電解液をリバランスする方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20221012BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221012BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019558678
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018030025
(87)【国際公開番号】W WO2018201094
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/491,966
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519297300
【氏名又は名称】イーエスエス テック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ESS Tech,Inc.
【住所又は居所原語表記】26440 SW Parkway Avenue,Wilsonville,Oregon 97070 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ クレイグ イー.
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0084482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0255824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスが流れる第1側と、
レドックスフロー電池システムからの電解液が流れる第2側と、
前記第1側と前記第2側とを分離して流体接続する多孔質層と、を備え、
前記多孔質層は導電性であり、
前記水素ガスと前記電解液とが、前記多孔質層の表面において流体接触しており、
前記第2側を横切る圧力降下が、前記多孔質層を横切る圧力降下よりも小さい、
レドックスフロー電池システム用のリバランス反応器。
【請求項2】
前記第2側を横切る前記圧力降下が、前記第2側の入口及び出口を横切る圧力降下に対応する、請求項1に記載のリバランス反応器。
【請求項3】
前記第1側を横切る圧力降下が、前記第2側を横切る前記圧力降下よりも大きい、請求項1に記載のリバランス反応器。
【請求項4】
さらにエジェクターを備え、前記第2側から出る前記電解液が、前記エジェクターを通って流れ、それによって、前記エジェクターを通って前記第1側から出る水素ガスを引く、請求項1に記載のリバランス反応器。
【請求項5】
さらにエジェクターを備え、前記第2側に入る前記電解液が、前記エジェクターを通って流れ、それによって、前記エジェクターを通って前記第1側から出る水素ガスを引く、請求項1に記載のリバランス反応器。
【請求項6】
前記第1側が、前記水素ガスが流れる対向櫛形流路を含み、それによって、前記水素ガスを前記第1側から出る前に前記多孔質層を通って前記第1側に強制的に入れる、請求項1に記載のリバランス反応器。
【請求項7】
前記第2側が、前記電解液が流れる対向櫛形流路を含み、それによって、前記電解液を前記第2側から出る前に前記多孔質層を通って前記第2側に強制的に入れる、請求項1に記載のリバランス反応器。
【請求項8】
さらに、前記多孔質層に導電接続された負極及び正極を備え、前記負極及び前記正極を横切って印加される電流が、前記水素ガスと前記電解液との間におけるリバランス反応速度を大きくする、請求項1に記載のリバランス反応器。
【請求項9】
リバランス反応器の第1側を通って水素ガスを流し、
前記リバランス反応器の前記第1側に電解液を流すことなく、レドックスフロー電池から前記リバランス反応器の第2側に前記電解液を流し、
前記第1側と前記第2側との間に挿入された導電性の多孔質層の表面において前記水素ガスと前記電解液とを流体接触させる、
レドックスフロー電池システムのためのリバランス反応器操作方法。
【請求項10】
前記第1側を通って水素を流すことが、前記第2側を通って水素を流すことなく、前記第1側を通って水素を流すことを包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レドックスフロー電池から電解液を流すことが、前記レドックスフロー電池の正極チャンバから電解液を流すことを包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記レドックスフロー電池から電解液を流すことが、前記レドックスフロー電池の負極チャンバから電解液を流すことを包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記水素ガスと前記電解液とを前記多孔質層の前記表面において流体接触させることが、前記多孔質層の炭素質表面において前記水素ガスによって前記電解液中の金属鉄を還元することを包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記第2側を横切る圧力降下を、前記多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第2側を横切る圧力降下を、前記多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することが、前記第1側を横切る圧力降下を、前記多孔質層の気泡圧力よりも小さく維持することを包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2側を横切る圧力降下を、前記多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することが、前記第2側を横切る圧力降下を、前記多孔質層の気泡圧力よりも小さく維持することを包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第2側を横切る圧力降下を、前記多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することが、前記第2側を横切る圧力降下を、閾値圧力差以上で前記多孔質層を横切る前記圧力降下よりも小さく維持することを包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
複数のレドックスフロー電池セルと、
第2のリバランス反応器に流体接続された第1のリバランス反応器と、を包含し、前記第1及び第2のリバランス反応器のそれぞれが、
水素ガスが流れる第1側と、
前記複数のレドックスフロー電池セルから電解液が流れる第2側と、
前記第1側と前記第2側とを分離して流体接続する多孔質層と、を包含し、
前記多孔質層は導電性であり、
前記水素ガスと前記電解液とが、前記多孔質層の表面において流体接触し、
前記第2側を横切る圧力降下が、閾値圧力差よりも小さい前記多孔質層を横切る圧力降下より小さい、
レドックスフロー電池システム。
【請求項19】
さらに、実行可能な命令がメモリーに格納されたコントローラを備え、前記閾値圧力差よりも小さい前記多孔質層を横切る前記圧力降下より小さい前記第1のリバランス反応器の前記第2側を横切る圧力降下に応じて、前記第1のリバランス反応器から前記第2のリバランス反応器への前記電解液の流れの一部をリダイレクトする、請求項18に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項20】
前記実行可能な命令が、前記閾値圧力差よりも小さい前記多孔質層を横切る前記圧力降下より小さい、前記第1のリバランス反応器の第2側を横切る圧力降下に応じて、第1のリバランス反応器の第2側への前記電解液の流れを減少させる、請求項19に記載のレドックスフロー電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「レドックスフロー電池システム用の電解液をリバランスする方法及びシステム」と題され、2017年4月28日に出願された米国仮出願第62/491,966号に対する優先権を主張する。ここで、上記の出願の全ての内容は、あらゆる目的のために参照によって組み込まれる。
【0002】
政府支援の承認
本発明は、DOE、ARPA-Eオフィスによって与えられた嘱託番号DEAR0000261の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に所定の権利を有する。
【0003】
本明細書は、一般的に、レドックスフロー電池システム用のリバランス反応器に関する。
【背景技術】
【0004】
典型的な充填床式リバランス反応器は、主に、リバランス反応器システムが2層流れであるため、あまり好ましくない反応速度を示すことがある。その結果、充填床式リバランス反応器における物質輸送損失が大きくなる可能性があり、かなり多くの触媒を利用する必要がある。従来、物質輸送の制限を補填する一般的なアプローチは、リバランス反応器を大型化することであった;しかしながら、リバランス反応器を大型化すると、コストがかかる可能性があり、さらに触媒の利用が低下することがある。
【発明の概要】
【0005】
上記の問題に少なくとも部分的に対処する1つのシステムは、レドックスフロー電池システム用のリバランス反応器を含み、水素ガスが流れる第1側と、レドックスフロー電池システムからの電解液が流れる第2側と、第1側と第2側とを分離して流体接続する多孔質層と、を含む。水素ガスと前記電解液とは、多孔質層の表面において流体接触している。さらに、一例では、第2側を横切る圧力降下が、前記多孔質層を横切る圧力降下よりも小さくてもよい。このように、レドックスフロー電池システムにおける電解液電化のリバランスは、充填床及び他の従来の設計に比較して、高い効率及びコスト効果で実行され得る。
【0006】
上記の概要が詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を簡略化した形式で導入するために提供されることを、理解されたい。それは、クレームされた構成要件の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、その範囲は、詳細な説明に続く請求項によって一意に定義される。さらに、クレームされた構成要件は、上記又は本開示の任意の部分で言及された欠点を解決する実施に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、レドックスフロー電池システムの実施形態を示す。
図2図2は、燃料電池リバランス反応器の一例の概略図を示す。
図3図3は、燃料電池リバランス反応器の一例の概略図を示す。
図4図4は、図2及び3のリバランス反応器の第1の実施形態を示す。
図5図5は、図2及び3のリバランス反応器の第2の実施形態を示す。
図6図6は、図2及び3のリバランス反応器の第3の実施形態を示す。
図7図7は、図2及び3の燃料電池リバランス反応器によって図1のレドックスフロー電池システム内において電解液をリバランスする方法の例示的なフローチャートを示す。
図8図8は、図2及び3の燃料電池リバランス反応器の正極又は負極の対向櫛形流路 (IDFF)の構成の例示的な平面図及び断面図の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ハイブリッドレドックスフロー電池は、電極上の固体層として1つ又は複数の電気活性材料の蒸着を特徴とするレドックスフロー電池である。ハイブリッドレドックスフロー電池は、例えば、電池充電プロセスの間中電気化学反応を介して基板上に固体としてめっきする化学物質を含んでいてもよい。電池が放電している間、めっき種は、電気化学反応を介して酸化し、電解液に可溶となることがある。ハイブリッド電池システムでは、レドックス電池の充電容量(例えば蓄電量)は、電池充電中にめっきされた金属の量によって制限されることがあり、したがって、めっきシステムの効率と、めっき可能な体積及び表面積と、に依存することがある。
【0009】
レドックスフロー電池システムでは、負極26は、めっき電極と呼ばれ、正極28は、レドックス電極と呼ばれることがある。電池のめっき側(例えば、負極室20)内の負極電解液は、めっき電解液と呼ばれ、電池のレドックス側(例えば、正極室22)内の正極電解液は、レドックス電解液と呼ばれることがある。
【0010】
陽極は、電気活性材料が電子を失う電極を指し、陰極は、電気活性材料が電子を得る電極を指す。電池充電中、正極電解液は、負極26において電子を得る;それゆえ、負極26は、電気化学反応の陰極である。放電中、正極電解液は、電子を失う;それゆえ、負極26は、反応の陽極である。したがって、充電中、負極電解液及び負極は、それぞれ電気化学反応の陰極液及び陰極と呼ばれ、正極電解液及び正極は、それぞれ電気化学反応の陽極液及び陽極と呼ばれることがある。あるいは、放電中、負極電解液及び負極は、それぞれ電気化学反応の陽極液及び陽極と呼ばれ、正極電解液及び正極は、それぞれ電気化学反応の陰極液及び陰極と呼ばれることがある。簡便のため、正及び負という用語は、本明細書では、レドックスフロー電池システムの電極、電解液、及び電極室を指すために使用される。
【0011】
ハイブリッドレドックスフロー電池の一例は、すべて鉄(all iron)のレドックスフロー電池(IFB)であり、電解液は、塩化鉄(例えばFeCl、FeCl等)の形で鉄イオンを含み、負極は、金属鉄を含む。例えば、負極では、電池充電中に、第一鉄イオンFe2+が、2つの電子を受け取って金属鉄として負極26をめっきし、電池放電中に、金属鉄Feが、2つの電子を失ってFe2+として再溶解する。正極では、充電中に、Fe2+が電子を失って第二鉄イオンFe3+を生じ、放電中に、Fe3+が電子を得てFe2+を生じる:電気化学反応は、化学式(1)及び(2)にまとめられ、正反応(左から右)は、電池充電中の電気化学反応を示し、逆反応(右から左)は、電池放電中の電気化学反応を示す:
【化1】
【化2】
【0012】
上記のように、すべて鉄のレドックスフロー電池(IFB)で使用される負極電解液は、充電中に、Fe2+が負極から2つの電子を受け入れてFeを生じ、基板上をめっきできるように、十分量のFe2+を供給する。放電中、めっきされたFeは、2つの電子を失い、Fe2+に酸化し、電解液中に溶解する。上記の反応の平衡電位は、-0.44Vであり、この反応は、所望のシステムに負端子を供給する。IFBの正側では、電解液は、充電時に、電子を失ってFe3+に酸化するFe2+を供給してもよい。放電中、電解液によって供給されるFe3+は、電極によって供給される電子を吸収することによってFe2+になる。この反応の平衡電位は、+0.77Vであり、所望のシステムの正端子を作る。
【0013】
IFBは、非再生電解液を利用する他のタイプの電池と対照的に、その電解液を充電及び再充電する機能を提供する。充電は、端子40及び42を介して電極に電流を印加することによって達成される。負極は、端子40を介して電圧源の負側に結合されてもよく、そのため、電子は、正極を介して(例えば、正極室22において正極電解液中のFe2+がFe3+に酸化される)負極電解液に引き渡されてもよい。負極26(例えばめっき電極)に供給される電子は、負極電解液中のFe2+を還元してめっき基板にFeを生じ、負極上をめっきすることができる。
【0014】
負極電解液に酸化に利用可能なFeが残っており、正極電解液に還元に利用可能なFe3+が残っている間、放電を維持することができる。例として、Fe3+の有効性は、外部正極電解液タンク又は正極電解液チャンバ52のような外部源を介して追加のFe3+を供給するために、セル18の正極室22側に正極電解液の濃度又は体積を増加することによって維持可能である。より一般的には、放電中のFeの有効性は、IFBシステム内で問題となり得、放電に利用可能なFeは、めっき効率と同様に、負極基板の表面積及び体積に比例する。充電容量は、負極室20におけるFe2+の有効性に依存していてもよい。例として、Fe2+の有効性は、セル18の負極室20側に負極電解液の濃度又は体積を増加するために、負極電解液チャンバ50又は外部負極電解液タンク50のような外部源を介して追加のFe2+を供給することによって維持可能である。
【0015】
IFBでは、IFBシステムの充電状態に応じて、正極電解液は、第一鉄イオン、第二鉄イオン、第二鉄錯体、又はこれらの任意の組合せを含み、負極電解液は、第一鉄イオン又は第一鉄錯体を含む。前述のように、負極電解液及び正極電解液の両方で鉄イオンを利用すると、電池セルの両側で同じ電解液種を利用することができ、電解液の相互汚染を減らし、IFBシステムの効率を高めることができるため、他のレドックスフロー電池システムに比較して電解液の交換を少なくすることができる。
【0016】
IFBにおける効率の損失は、セパレータ24(例えば、イオン交換膜バリア、微多孔膜など)を通る電解液のクロスオーバーから生じることがある。例えば、正極電解液中の第二鉄イオンは、第二鉄イオンの濃度勾配及びセパレータを横切る電気泳動力によって、負極電解液に向かって動かされることがある。続いて、膜バリアを透過して負極室20にクロスオーバーする第二鉄イオンは、クーロン効率の損失をもたらすことがある。低pHレドックス側(例えば、酸性が強い正極室22)から高pHめっき側(例えば、酸性が弱い負極室20)にクロスオーバーする第二鉄イオンは、Fe(OH)の沈殿をもたらし得る。Fe(OH)の沈殿は、セパレータ24を損傷し、永久的な電池の性能及び効率の損失を引き起こす可能性がある。例えば、Fe(OH)沈殿物は、イオン交換膜の有機官能基を化学的に塞ぎ、又はイオン交換膜の小さな微多孔を物理的に詰まらせることがある。いずれの場合も、Fe(OH)により、膜のオーム抵抗が時間と共に上昇し、電池の性能が低下することがある。沈殿物は、電池を酸で洗浄することによって除去され得るが、絶えず続くメンテナンス及びダウンタイムは、商用電池の使用に不利であることがある。さらに、洗浄は、電解液の定期的な準備に依存することがあり、プロセスのコスト及び複雑さが増す。電解液のpH変化に応じて特定の有機酸を正極及び負極に添加すると、電池の充電及び放電サイクル中の沈殿物の生成を軽減し得る。
【0017】
追加のクーロン効率の損失は、H(例えばプロトン)の還元とそれに続くH(例えば水素ガス)の生成によって引き起こされ得、負極室20におけるプロトンの電子との反応は、めっき金属鉄電極において、水素ガスを生成する。
【0018】
IFB電解液(例えば、FeCl、FeCl、FeSO、Fe(SOなど)は容易に入手可能であり、低コストで製造することができる。IFB電解液は、同じ電解液を負極電解液と正極電解液とに使用できるため再利用の価値が高くなり、その結果、他のシステムと比較してクロスコンタミネーションの問題が低減する。さらに、その電子配置により、鉄は、負極基板上にめっきする際に、通常均一な固体構造に凝固することができる。ハイブリッドレドックス電池で一般的に使用される亜鉛および他の金属では、めっき中に固体樹状構造が形成される場合がある。IFBシステムの安定した電極形態は、他のレドックスフロー電池と比較して電池の効率を向上させることができる。さらに、鉄のレドックスフロー電池は、毒性のある原材料の使用を減らし、他のレドックスフロー電池の電解液と比べて比較的中性のpHで動作可能である。したがって、IFBシステムは、製造中の他のすべての現在の高度なレドックスフロー電池システムと比較して、環境への有害性が低減する。
【0019】
図1は、レドックスフロー電池システム10の概略図を提供する。レドックスフロー電池システム10は、マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110に流体接続されたレドックスフロー電池セル18を備えることができる。レドックスフロー電池セル18は、通常、負極室20、セパレータ24及び正極室22を含むことができる。セパレータ24は電気絶縁性のイオン伝導性バリアを備えることができ、それは正極電解液と負極電解液とのバルク混合を防ぎつつ、特定のイオンの伝導を可能にする。例えば、セパレータ24は、イオン交換膜及び/又は微多孔膜を備えることができる。負極室20は、負極26と、電気活性材料を含む負極電解液とを備えることができる。正極室22は、正極28と、電気活性材料を含む正極電解液とを備えることができる。いくつかの例では、複数のレドックスフロー電池セル18を直列または並列に組み合わせて、レドックスフロー電池システムでより高い電圧または電流を生成することができる。さらに図1に示されているのは、フローバッテリーシステム10に電解液を送り込むために用いられる負極電解液ポンプ30及び正極電解液ポンプ32である。電解液は、セルの外部にある1つ又は複数のタンクに貯蔵され、それぞれ電池の負極室20側と正極室22側を通り、負極電解液ポンプ30及び正極電解液ポンプ32によって送られる。
【0020】
図1に示すように、レドックスフロー電池セル18は、負極電池端子40及び正極電池端子42をさらに含んでもよい。電池端子40及び42に充電電流が印加されると、正極28で正極電解液が酸化され(1つ又は複数の電子を失う)、負極26で負極電解液が還元される(1つ又は複数の電子を獲得する)。電池放電中、電極上で逆酸化還元反応が起こる。換言すると、正極28で正極電解液が還元され(1つ又は複数の電子を獲得する)、負極26で負極電解液が酸化される(1つ又は複数の電子を失う)。電池の両端の電位差は、正極室22と負極室20における電気化学的酸化還元反応により維持され、反応が持続している間、導体を流れる電流を誘導することが可能である。レドックス電池によって蓄積されるエネルギーの量は、放電用の電解液で利用可能な電気活性材料の量により制限され、電解液の総量と電気活性材料の溶解度に依拠する。
【0021】
フロー電池システム10は、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110をさらに備えてもよい。マルチチャンバ貯蔵タンク110は、隔壁98によって分割されてもよい。正極電解液および負極電解液を単一のタンク内に含むことができるように、隔壁98は貯蔵タンク内に複数のチャンバを形成してもよい。負極電解液チャンバ50は、電気活性材料を含む負極電解液を保持し、正極電解液チャンバ52は、電気活性材料を含む正極電解液を保持する。負極電解液チャンバ50と正極電解液チャンバ52との間の所望の体積比をもたらすために、隔壁98は、マルチチャンバ貯蔵タンク110内に配置してもよい。1つの実施例では、隔壁98は、負極および正極の酸化還元反応の間の化学量論比に従って、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバの容積比を設定するように配置されてもよい。図は、貯蔵タンク110の充填高さ112をさらに示し、各タンク区画内の液位を示すことができる。図はまた、負極電解液チャンバ50の充填高さ112の上方に位置するガスヘッドスペース90と、正極電解液チャンバ52の充填高さ112の上方に位置するガスヘッドスペース92とを示している。ガスヘッドスペース92は、レドックスフロー電池の動作を通して生成され(例えば、プロトン還元および腐食副反応により)、レドックスフロー電池セル18から電解液を戻すとともにマルチチャンバ貯蔵タンク110に運ばれる水素ガスを貯蔵するために利用できる。水素ガスは、マルチチャンバ貯蔵タンク110内の気液界面(例えば、充填高さ112)で自発的に分離することができ、それにより、レドックスフロー電池システムの一部としての追加の気液分離装置を排除することができる。電解液から分離されると、水素ガスがガスヘッドスペース90および92を満たす。そのため、貯蔵された水素ガスは、マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から他のガスをパージすることに役立ち、それにより、電解液種の酸化を低減するための不活性ガスブランケットとして機能し、レドックスフロー電池容量損失の低減に役立つことができる。このように、統合マルチチャンバ貯蔵タンク110を利用することによって、従来のレドックスフロー電池システムに共通の負極および正極電解液貯蔵タンク、水素貯蔵タンク並びに気液セパレータを別々に有さなくともよくなり、これにより、システム設計の簡略化、物理的システムの設置面積の削減、並びにシステムコストの削減ができる。
【0022】
図1はまた、ガスヘッドスペース90と92との間の隔壁98に開口部を形成し、2つのチャンバ間のガス圧力を均一化する手段を提供する、溢流孔(spill-over hole)96を含む。溢流孔96は、充填高さ112より上の閾値高さに配置することができる。溢流孔はさらに、電解液がクロスオーバーする場合に、正極電解液チャンバおよび負極電解液チャンバのそれぞれの電解液が自己平衡する機能を有効にする。すべて鉄(all iron)のレドックスフロー電池システムの場合、同じ電解液(Fe2+)が負極室20及び正極室22の両方において使用されるため、負極電解液チャンバ50及び正極電解液チャンバ52の間の電解液の溢れはシステム全体の効率を下げ得るが、その一方で、全体的な電解液の構成、電池モジュールの性能および電池モジュール容量は維持される。漏れのない連続的な加圧状態を維持するために、マルチチャンバ貯蔵タンク110への入口および出口からのすべての配管接続部にフランジ継手(flange fittings)を利用することができる。マルチチャンバ貯蔵タンクは、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバのそれぞれからの少なくとも1つの出口と、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバのそれぞれへの少なくとも1つの入口と、を含むことができる。さらに、水素ガスをリバランス反応器80及び82へと導くために、ガスヘッドスペース90及び92から1つ又は複数の出口接続部を備えることができる。
【0023】
図1には示されていないが、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110は、負極電解液チャンバ50および正極電解液チャンバ52のそれぞれに熱的に接続された1つ又は複数のヒータをさらに含んでもよい。別の例では、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバのうちの1つのみが、1つ又は複数のヒータを含んでもよい。正極電解液チャンバのみが1つ又は複数のヒータを含む場合、負極電解液は、パワーモジュールの電池セルで発生した熱を負極電解液に伝達することにより加熱することができる。このようにして、パワーモジュールの電池セルが加熱され、負極電解液の温度調節が促進される。1つ又は複数のヒータは、負極電解液チャンバ50及び正極電解液チャンバの温度を、単独で又は共に調整するために、コントローラ88によって作動させることができる。例えば、電解液温度が閾値温度未満に下がることに応じて、コントローラは、電解液への熱流束が増加するように、1つ又は複数のヒータに供給される電力を増加させてもよい。電解液温度は、センサ60及び62を含むマルチチャンバ電解液貯蔵タンク110に取り付けられた1つ又は複数の温度センサによって示されてもよい。例として、1つ又は複数のヒータには、電解液に浸された、コイル型ヒータ若しくは他の浸漬ヒータ、又は、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバの壁を通して熱を伝達しその中の液体を加熱する表面マントル型ヒータが含まれ得る。本開示の範囲から逸脱することなく、他の既知のタイプのタンクヒータを使用することができる。さらに、コントローラ88は、液体レベルが固体充填閾値レベル未満に低下したことに応じて、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバ内の1つ又は複数のヒータの動作を停止させてもよい。換言すると、コントローラ88は、液体レベルが固体充填閾値レベル(solids fill threshold level)を超えて増加することに応じてのみ、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバ内の1つ又は複数のヒータを作動させることができる。このようにして、正極電解液チャンバ及び/又は負極電解液チャンバ内に十分な液体がない状態での1つ又は複数のヒータの作動を防ぐことができ、したがってヒータの過熱又は焼損のリスクが低減される。他の既知のタイプのタンクヒータを、本開示の範囲から逸脱することなく使用してもよい。
【0024】
図1に示すように、電解液は、マルチチャンバ貯蔵タンク110に一般に貯蔵され、フロー電池システム10全体にわたって負極電解液ポンプ30及び正極電解液ポンプ32によって送り込まれる。負極電解液チャンバ50に貯蔵された電解液は、負極電解液ポンプ30によって電池の負極室20側に送り込まれ、正極電解液チャンバ52に貯蔵された電解液は、正極電解液ポンプ32によって電池の正極室22側に送り込まれる。
【0025】
2つの電解液リバランス反応器80,82は、それぞれ、レドックスフロー電池システム10において、電池の負極側及び正極側で電解液の再循環流路と直列又は並列に接続されてもよい。冗長性のため(例えば、電池及びリバランス操作に支障を与えることなくリバランス反応器を提供するため)、及び、リバランス能力を向上させるため、1つ以上のリバランス反応器は、電池の負極側と正極側において電解液の再循環流路と直列に接続されてもよく、他のリバランス反応器は、電池の負極側と正極側において電解液の再循環流路と並列に接続されてもよい。1つの実施例では、電解液リバランス反応器80,82は、それぞれ、負極室20及び正極室22から負極電解液源チャンバ50及び正極電解液源チャンバ52への戻り流路に配置されてもよい。電解液リバランス反応器80,82は、本明細書に記載されるように、副反応、イオンクロスオーバー等のために生じるレドックスフロー電池システムにおける電解液の電荷の不均衡を再調整することができる。1つの実施例では、電解液リバランス反応器80,82は、電解液リバランス反応を実施するため、パッキングされた床の触媒表面で水素ガスと電解液とが接触するトリクルベッド反応器(trickle bed reactor)を備えてもよい。他の実施例では、リバランス反応器80,82は、水素ガスと電解液液体と接触し、パッキングされた触媒床(catalyst bed)がなくてもリバランス反応を実行することができるフロースルー型反応器(flow-through type reactor)を備えてもよい。
【0026】
負極で起こる副反応は、レドックスフロー電池システムにおける電解液電化の不均衡の生成を促進することがある。負極での化学式(1)によって与えられる酸化還元反応と並行して、第一鉄イオンの還元反応は、プロトンHの還元と競合し、2つのプロトンは、それぞれ単一の電子を受け取って水素ガスHを形成し、金属鉄の腐食により第一鉄イオンFe2+を生成する。水素プロトンの還元及び金属鉄の腐食による水素ガスの生成は、それぞれ、化学式(3)及び(4)に示される。
【化3】
【化4】
【0027】
結果として、負極室20内の負極電解液は、3から6までのpH範囲で安定する傾向があり、水酸化第一鉄イオン(FeOH)の形成、水酸化第二鉄Fe(OH)の沈殿、及び水素の発生は、全て減少する。正極室22では、第二鉄イオンFe3+は、第一鉄イオンFe2+よりも、酸解離定数(pKa)がはるかに低い。したがって、より多くの第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにすると、正極電解液は、2未満のpHで、特に1に近いpHで安定する傾向がある。
【0028】
したがって、正極電解液(正極室22)が安定したままの第1の範囲で正極電解液pHを維持し、負極電解液(負極室20)が安定したままの第2の範囲で負極電解液pHを維持すると、低サイクル実行(low cycling performance)が減少し、レドックスフロー電池の効率が上がる。例えば、IFB内の負極電解液のpHを3から4までで維持すると、鉄の腐食反応が減少し、鉄めっき効率を上げるが、正極電解液のpHを2未満、特に1未満で維持すると、第二鉄/第一鉄イオンの酸化還元反応を促進し、水酸化第二鉄の形成を減少させる。
【0029】
化学式(3)及び(4)によって示されるように、水素の発生は、レドックスフロー電池システムにおける電解液の不均衡を起こす可能性がある。例えば、充電中、正極から負極へ流れる電子(例えば第一鉄イオンの酸化の結果)は、化学式(3)を介して水素の発生によって消費されることがあり、化学式(1)によって与えられためっきに利用可能な電子が減少する。めっきの減少によって、電池の充電容量が減少する。さらに、金属鉄の腐食は、電池の放電に利用可能な金属鉄の量が減るため、さらに電池の容量が減少する。そのため、化学式(3)及び(4)を介した水素生成の結果として、正極室22及び負極室20の間における電解液の電荷状態が不均衡になる可能性がある。さらに、金属鉄の腐食及びプロトンの還元による水素ガス生成は、いずれもプロトンを消費し、その結果、負極電解液のpHを上げる可能性がある。図1を参照して上述したように、pHno増加は、レドックスフロー電池システム内の電解液を不安定にし、その結果、電池の容量及び効率がさらに低下する。
【0030】
レドックスフロー電池システム内の水素ガス生成によって起こる可能性がある電解液リバランス問題に対処するアプローチは、副反応から生成される水素で正極電解液における不均衡なイオンを還元することを含む。1つの実施例として、IFBシステムでは、第二鉄イオンを含む正極電解液は、化学式(5)によって還元される。
【化5】
【0031】
IFBシステムの例では、第二鉄イオンを水素ガスと反応させることによって、水素ガスをプロトンに戻すことが可能であり、それによって負極室20及び正極室22内のpHを実質的に一定に維持することができる。さらに、第二鉄イオンを第一鉄イオンに変えることによって、正極室22内の正極電解液の電荷の状態は、負極室20内の負極電解液の電荷の状態とリバランスされてもよい。化学式(5)は、IFBシステム内のリバランス電解液について書かれているが、電解液を水素ガスで還元する方法は、化学式(6)によって一般化される。
【化6】
化学式(6)において、Mx+は、イオン電荷xを有する正の電解質Mを表し、Mz+は、イオン電荷zを有する還元された電解質Mを表す。
【0032】
触媒は、グラファイト又は担持貴金属(例えば、炭素担持Pt、Pd、Rh、Ru、イリジウム、タンタル、又はこれらの合金)を含み、レドックスフロー電池システムにおける実用化のために化学式(5)によって記述される反応速度を上げることがある。1つの実施例として、レドックスフロー電池システム内で生成される水素ガスは、触媒表面に導かれて、水素ガス及び電解液(例えば第二鉄イオンを含む)は、触媒表面で流体接触し、水素ガスは、第二鉄イオンを化学的に第一鉄イオンに還元し、正の水素イオン(例えばプロトン)を生成する。上述のように、触媒表面はグラファイトを含んでいてもよい。いくつかの例では、化学式(5)によって記述される反応は、触媒が炭素担持Pt、Pd、Rh、Ru、イリジウム、タンタル、又はこれらの合金などの貴金属ベースの触媒を含む場合、より速い速度で進行することがある。1つの実施例として、水素ガスの分圧(例えば、水素ガス濃度)が高く、より遅い反応速度を許容可能な場合、より安価なグラファイト触媒を使用してもよい。他方、炭素に担持された少量の貴金属触媒(例えば0.2から>0.5wt%)は、グラファイト触媒を使用する場合に比較して反応速度が大きい可能性がある。炭素担持Pt、Pd、Rh、Ru、イリジウム、タンタル、又はこれらの合金のような異なるタイプの触媒、及びこれらの異なる量(0.2から>0.5wt%)を、特性の電池システムのために反応速度に応じて利用可能である。さらに、触媒の合金を利用することによって、コストを減らし、触媒の腐食安定性を上げることが可能である。例えば、白金にロジウムを10%添加すると、第二鉄イオンによる白金の腐食を98%以上減らすことが可能である(Handbook of Corrosion Data、Bruce D. Craig、David S. Anderson)。
【0033】
レドックスフロー電池システムの動作中、センサ及びプローブは、電解液のpH、濃度、電荷の状態等の電解液の化学的特性を監視し、制御する。例えば、図1に示すように、センサ62,60は、それぞれ、正極電解液チャンバ52及び負極電解液チャンバ50における正極電解液の状態及び負極電解液の状態を監視するように配置されてもよい。他の実施例として、図1に示すセンサ72,70は、それぞれ、正極室22及び負極室20における正極電解液の状態及び負極電解液の状態を監視してもよい。1つの実施例では、センサ72,70は、レドックスフロー電池セル18のセパレータ24の正及び負側における圧力を示す信号をコントローラ88に送信する圧力センサを含んでいてもよい。セパレータ24の負及び正極室20,22における圧力は、負及び正極それぞれの入口及び出口の流れを制御することによって調整されてもよい。例えば、コントローラは、それに流体接続された真空ポンプのポンプ速度を上げること、負極電解液ポンプ30のポンプ速度を下げること、及び負極室からの出口流れを増加させるために背圧流量調整器を絞ること、のうち1つ又はそれ以上によって、負極室20における圧力を下げてもよい。
【0034】
同様に、コントローラは、正極ポンプ32のポンプ速度を上げること、及び負極室からの出口流れを減少させるために背圧流量調整器を絞ること、のうち1つ又はそれ以上によって、正極室22における圧力を上げてもよい。背圧流量調整器は、オリフィス、バルブ等を含んでいてもよい。例えば、コントローラ88は、バルブをより開いた位置に配置し、負極室20からより高い出口流れを誘導する信号を送信してもよく、それによって、負極室圧力を下げる。正極室圧力を上げて負極室圧力を下げると、セパレータ24のクロスオーバー圧力(正から負)を上げることができる。正極電解液の流れを増加すること、正極電解液ポンプ32のポンプ速度を上げること、及び正極室22の出口における背圧を上げることによってクロスオーバー圧力を上げることは、ポンプの寄生損失が増加することがあるため、クロスオーバー圧力を上げる他の方法よりも望ましくない。
【0035】
センサは、電解液の化学的特性及びその他の特性を監視するために、レドックスフロー電池システム全体のその他の場所に配置されてもよい。例えば、センサは、外部酸タンク(図示せず)の酸の体積又はpHを監視するために、外部酸タンクに配置されてもよく、外部酸タンクからの酸は、電解液の沈殿物の形成を低減するため、外部ポンプ(図示せず)によってレドックスフロー電池システムに供給される。他の添加剤をレドックスフロー電池システム10に供給するため、追加の外部タンクとセンサを取り付けてもよい。センサ情報は、1つの実施例として、セル18を流れる電解液の流れを制御するため、又は、他の制御機能を実行するために、負極及び正極電解液ポンプ30及び32を順に作動させ得るコントローラ88に送信されてもよい。このように、コントローラ88は、センサ及びプローブの1つ又は組み合わせに対して応じてもよい。レドックスフロー電池セル18は、レドックスフロー電池システム用のパワーモジュールの複数のレドックスフロー電池セルスタックの1つの中に配置されてもよい。レドックスフロー電池セルスタック内のそれぞれのレドックスフロー電池セル18は、レドックスフロー電池セルスタック内の他のレドックスフロー電池セルと直列及び/又は並列に電気接続されてもよい。さらに、それぞれのレドックスフロー電池セルスタックは、パワーモジュール内の他の複数のレドックスフロー電池セルスタックと直列及び/又は並列に電気接続されてもよい。このようにして、レドックスフロー電池セルスタックは、電気的に組み合わせられてパワーモジュールから電源を供給してもよい。
【0036】
レドックスフロー電池システム10は、水素ガス源をさらに備えてもよい。1つの実施例では、水素ガス源は、別個の専用の水素ガス貯蔵タンクを備えてもよい。図1に示す例では、水素ガスは、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110に貯蔵され、当該統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から供給されてもよい。統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110は、正極電解液チャンバ52及び負極電解液チャンバ50に追加の水素ガスを供給してもよい。統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110は、追加の水素ガスを電解液リバランス反応器80,82の入口に交互に供給してもよい。1つの実施例として、質量流量計又はコントローラ88によって制御可能な他の流量制御装置が統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からの水素ガスの流れを調整してもよい。
【0037】
統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110は、レドックスフロー電池システム10において生成された水素ガスを補ってもよい。例えば、レドックスフロー電池システム10においてガス漏れが検出された場合、又は、低水素分圧における還元反応速度が低すぎる場合、正極電解液及び負極電解液中の電気活性種の電荷の状態をリバランスするために、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から水素ガスが供給されてもよい。1つの実施例として、コントローラ88は、測定されたpHの変化に応じて、又は電解液又は電気活性種(electro-active species)の測定された電荷の状態の変化に応じて、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から水素ガスを供給してもよい。例えば、負極電解液チャンバ50又は負極室20のpHの上昇は、レドックスフロー電池システム10から水素が漏れていること、及び/又は、利用可能な水素分圧では反応速度が遅すぎることを示している場合がある。pH上昇に応じて、コントローラ88は、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からレドックスフロー電池システム10への水素ガスの供給を増加させてもよい。さらなる例として、第1の閾値のpHを超えて増加する、又は、第2の閾値のpHを超えて減少するというpHの変化に応じて、コントローラ88は、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から水素ガスを供給してもよい。IFBの場合、コントローラ88は、第二鉄イオン(ferric ion)の還元速度及びプロトンの生成速度を増加させるため、追加の水素を供給してもよく、これにより、正極電解液のpHを低下させることができる。さらに、正極電解液から負極電解液にクロスオーバーする(crossing over)第二鉄イオンの水素還元によって、又は、正極側で生成されて、プロトン濃度勾配及び電気泳動力により負極電解液にクロスオーバーするプロトンによって、負極電解液pHは低下する場合がある。このようにして、第二鉄イオン(正極室からクロスオーバーする)がFe(OH)として沈殿するリスクを低減しながら、負極電解液のpHを安定した領域内に維持することができる。
【0038】
酸素還元電位(ORP)メータまたは光学センサ等の他のセンサによって検出された、電解液のpHの変化又は電解液の電荷の状態の変化に応じて、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からの水素ガスの供給速度を制御するための他の制御スキームが実装されてもよい。さらに、コントローラ88の動作をトリガーするpHの変化又は電荷の状態の変化は、変化率又は一定の期間にわたって測定された変化の速さに基づいてもよい。変化の速さを算出する期間は、レドックスフロー電池システムの時定数に基づいて事前に決定又は調整されてもよい。例えば、時定数が小さいため、(例えば、副反応やガス漏れによる)濃度の局所的な変化を迅速に測定することができ、再循環率が高い場合は、当該期間を短縮できる。
【0039】
図2を見ると、燃料電池リバランス反応器200の燃料電離のフロー図の例が提供されている。燃料電池リバランス反応器200は、触媒表面において、レドックスフロー電池の負極及び正極室からの電解液と水素ガスとを接触させるように設計されている。触媒は、グラファイト又は担持貴金属(例えば、炭素担持Pt、Pd、Rh、Ru、イリジウム、タンタル、又はこれらの合金)を含み、レドックスフロー電池システムにおける実用化のために化学式(5)によって記述される反応速度を上げることがある。1つの実施例として、レドックスフロー電池システム内で生成される水素ガスは、触媒表面に導かれて、水素ガス及び電解液(例えば第二鉄イオンを含む)は、触媒表面で流体接触し、水素ガスは、第二鉄イオンを化学的に第一鉄イオンに還元し、正の水素イオン(例えばプロトン)を生成する。上述のように、触媒表面はグラファイトを含んでいてもよい。いくつかの例では、化学式(5)によって記述される反応は、触媒が炭素担持Pt、Pd、Rh、Ru、又はこれらの合金などの貴金属ベースの触媒を含む場合、より速い速度で進行することがある。1つの実施例では、レドックスフロー電池は、IFBを含んでいてもよく、本開示の範囲から逸脱することなく他のタイプのフロー電池ケミストリーを含んでいてもよい。
【0040】
燃料電池リバランス反応器200は、図1のレドックスフロー電池システムにおけるリバランス反応器80及び82の一方又は両方に対応していてもよい。燃料電池リバランス反応器200は、負極側210及び正極側240と、多孔質層230と、を含み、負極側210及び正極側240を介在して空間的に分離する。負極側210は、水素側とも呼ばれることがあり、正極側240は、電解液側と呼ばれることがある。1つの実施例では、多孔質層230は、イオン導電性であり、プロトンは、それを通過して輸送されてもよく、導電性であり、内部電流によって反応を起こす(drive)。水素ガスは、マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110等の電解液貯蔵タンクのガスヘッドスペースから、レドックスフロー電池システムのガス/液体セパレータから、又は外部水素源から、負極側210の負極入口212に導かれていてもよい。電解液は、多段式電解液貯蔵タンク110の負極又は正極電解液チャンバ50及び52から、又は負極又は正極電解液貯蔵タンクから、独立して、燃料電池リバランス反応器の正極側240において正極入口242に導かれてもよい。1つの実施例では、電解液ポンプ250は、負極又は正極電解液チャンバ50及び52から正極側240に電解液を供給してもよい。このように、電解液ポンプ250は、レドックスフロー電池システム10のポンプ30又は32に対応していてもよい。
【0041】
多孔質層230は、グラファイト又は炭素/グラファイト複合材等の炭素質材料を含んでいてもよく、炭素フェルト、炭素スポンジ、及び炭素メッシュ等の多孔質炭素構造体を含んでいてもよい。多孔質層230の孔の表面は、親水性であってもよく、イオン伝導性媒体を作成するために電解液で完全に多孔質層230を濡らすことを促進する。炭素多孔質層の親水性は、その表面をコーティング又は処理することによって増加し得る。換言すると、多孔質層は、導電性、多孔質、親水性、炭素質基材を含んでいてもよい。さらに、多孔質層230は、セパレータの表面において水素ガスと電解液液体とが接触するときに、多孔質層230の境界層フィルムを横切る相間物質輸送損失を減らすために、離散した粒子又はピースのない連続的な1ピースの材料を含んでいてもよい。例えば、離散的にパッキングされた触媒粒子を含む充填層は、個々の粒子を囲む質量輸送制限境界層フィルムを含んでいてもよく、これによって、バルク領域から粒子表面領域への水素ガス及び液体電解液の質量輸送の速度が低下する。
【0042】
燃料電池リバランス反応器200は、1つ又はそれ以上の圧力トランスポーター215及び217を含んでいてもよく、負極及び正極入口212及び242、及び負極及び正極出口214及び244にそれぞれ配置されている。このように、負極入口212及び負極出口214、正極入口242及び正極出口244の間における圧力降下、並びに入口及び出口において多孔質層を横切る圧力降下を、コントローラ88によって監視可能である。多孔質層を横切る圧力降下は、正極入口242及び負極入口212、正極出口244及び負極出口214、正極出口244及び負極入口212、の間における圧力差から決定されてもよい。燃料電池リバランス反応器200の動作は、負極側210から正極側240への水素ガスのクロスオーバーのリスクを減らすために、正極出口244および正極入口242の間における圧力降下を、多孔質層を横切る圧力降下よりも低く維持することを含んでいてもよい(例えば、負極側210における圧力を正極側240における圧力よりも大きくする)。負極側210から正極側240へクロスオーバーするガスは、液体電解液が多孔質層230の孔に入ることを妨げ、これによって多孔質層230のイオン伝導性を低下させることがある。1つの実施例では、正極側240を横切る圧力降下は、閾値圧力差よりも大きいだけ、多孔質層230の圧力降下よりも低く維持されてもよい。さらに、負極側210を横切る圧力降下は、閾値圧力差よりも大きいだけ、多孔質層230の圧力降下よりも低く維持されてもよい。閾値圧力差は、多孔質層230を横切る圧力降下に対する有圧力差に対応していてもよく、それを超えると、水素ガスが負極側210から正極側240へクロスオーバーするリスクが減少することがある。コントローラ88は、閾値圧力差よりも小さいだけ多孔質層230を横切る圧力降下よりも低い1つ又はそれ以上の正極側240及び負極側210を横切る圧力降下に応じて、電解液流れ及び水素ガス流れをリダイレクトし、現在の燃料電池リバランス反応器への水素流れ及び電解液流れを遮断する。
【0043】
燃料電池リバランス反応器は、さらに、負極220を含んでいてもよく、負極側210及び多孔質層230の間に挿入された負極と、正極側240及び多孔質層230の間に挿入された正極と、を含んでいてもよい。いくつかの例では、多孔質層230は、1つ又はそれ以上の負極及び正極として働いてもよい。電極を横切る電流を印加すると、リバランス反応器200の触媒表面における正極電解液の還元を促進するのに役立つ。例えば、負極は、電圧源の負極側に結合され、電子は、正極を介して発生する(例えば、水素ガスHが水素プロトンHに酸化される)。負極に供給された電子は、電解液中のFe3+を還元して正極側にFe2+を形成し、電解液電化のリバランスを促進する。
【0044】
燃料電池リバランス反応器の負極及び正極側は、構造かチャネル又はフローフィールドを含んでいてもよく、水素ガス及び電解液を負極側210から多孔質層230まで、及び正極側240及び多孔質層230の間の界面領域全体に向けてそれぞれ分配する。例えば、フローフィールドは、対向櫛形流路(IDFF)、又は蛇行フローフィールド、並行フローフィールド、ピンフローフィールド等の非対向櫛形流路を含んでいてもよい。終了する(terminate)IDFFフローチャネルは、多孔質層230への流体の押し込み及び押し出しを促進し、リバランス反応器200の負極側210又は正極側240から多孔質層230の孔への流体の分配を増加させることを促進し得る。このように、燃料電池リバランス反応器200は、負極側からの水素ガスと、正極側からの電解液液体と、の接触を促進し得る。
【0045】
図8には、対向櫛形流路(IDFF)プレート1800によって促進される構造かフローフィールドが、対向櫛形リブ1812及び1822と共に示されている。IDFFプレート1800を正極側240に配置することによって、多孔質層230を通って正極側に電解液の流れを導くことを促進し、一方、IDFFプレート1800を負極側210に配置することによって、多孔質層230を通って負極側に電解液の流れを導くことを促進する。特に、電解液及び/又は水素流体流れは、正極フローフィールドプレート2010の入口1810から出口1820に導かれてもよい。対向櫛形正極流路の断面図1850に示すように、対向櫛形リブ1812の櫛形の入口チャネルから対向櫛形リブ1822の出口チャネルへの流体の流れ(矢印1830によって示される)は、多孔質層230を通って起こる可能性があり、電解液の強制的な対流を提供する。他の実施例では、構造化フローフィールドプレートは、蛇行フロープレート、スパイラルフロープレート、ピンフロープレート、又は非対向櫛形リブを備える並行フロープレート等の非IDFFフロープレートであってもよい。デッドエンドチャネルのおかげで、IDFFフローフィールドは、電解液がフローフィールド全体にわたってより完全に分配され、多孔質層230を通って入口チャネルから出口チャネルに拡散する前に対向櫛形デッドエンドチャネルを満たすため、有利であることがある。
【0046】
燃料電池リバランス反応器200は、さらに、水素側(図2)の出口側、又は燃料電池リバランス反応器200の電解液側(図3)の入口側に配置されたエジェクター260を含んでいてもよい。エジェクター260が燃料電池リバランス反応器200の水素側の出口側に配置されていると、正極出口244からの電解液の出口流れは、負極出口214から出る水素ガスを引く又は吸引し、それに巻き込まれ、正極電解液チャンバ52、又は負極電解液チャンバ50に戻される。未使用の水素は、マルチチャンバ貯蔵タンク110内の液体電解液から分離され、分離された水素ガスは、正極及び負極ガスヘッドスペース90及び92を占め、溢流孔96を介して圧力平衡化される。エジェクター260が燃料電池リバランス反応器200(図3)の電解液側の入口側に配置されている場合、正極入口242からの電解液の入口流れは、負極出口214から出る水素ガスを引く又は吸引し、それに巻き込まれ、負極電解液チャンバ50又は正極電解液チャンバ52に戻る前に燃料電池リバランス反応器を通って流れ、次いで分離する。この構成では、エジェクター260は、液体電解液への水素ガスの分散を促進し、それによって燃料電池リバランス反応器200内のリバランス反応を促進する。巻き込まれたガスは、マルチチャンバ貯蔵タンク110の場合のように、自発的に、正極電解液チャンバ52又は負極電解液チャンバ50に戻る際に液体電解液から分離されてもよく、正極電解液チャンバ52及び負極電解液チャンバ50に流体接続された追加のガス/液体セパレータによって分離されてもよい。
【0047】
燃料電池リバランス反応器200内の滞留時間中、水素ガスは、化学式(6)に従って、多孔質層230の表面において液体電解液中の金属鉄を還元可能であり、炭素多孔質層230は、そこで触媒(例えば触媒表面)として働き得る。IFBの場合、水素ガスは、化学式(5)に従って、多孔質層230の表面において液体電解液中の金属鉄を還元可能である。電解液リバランス速度を上げるために、複数の燃料電池リバランス反応器は、スタックされて並列に流体接続されてもよく、水素ガス及び電解液のより速い流速は、燃料電池リバランス反応器のスタックに導かれる。このように、コントローラ88は、圧力降下差が閾値圧力差よりも小さいことに応じて、電解液流れ及び水素ガス流れを他の燃料電池リバランス反応器にリダイレクトし、例えば、コントローラ88に応じて、現在の燃料電池リバランス反応器への水素ガス流れ及び電解液流れを遮断する。
【0048】
ここで図4を見ると、それは、燃料電池リバランス反応器200の第1の実施形態400を示す。負極側410は、IDFF又は蛇行フローフィールドのような構造化フローチャネルを含み、正極入口242からの入口水素ガスが導かれる。構造化負極フローチャネルは、水素ガスを負極側410及び負極420の間で共有される境界表面領域全体に分配して流れるように強制することを促進する。1つの実施例では、負極フローチャネルは、プラスチックフローチャネルを含む。負極は、炭素、グラファイト、又はグラファイトペーパー及びフェルトを含む炭素/グラファイト複合材を含んでいてもよい。1つの実施例では、負極は、多孔質層430(負極と同じ材料及び構造)と一体化されてもよい。負極420は、さらに、それにコーティングされ、Pt、Pd、Rh、Ru、イリジウム、タンタル又はそれらの合金等の金属触媒で処理された、5~50%テフロン(登録商標)の表面層を含んでいてもよい。正極は、正極側440に一体化されてもよく、炭素、グラファイト、又は炭素発泡体、炭素又はグラファイトフェルト等の炭素/グラファイト複合材を含んでいてもよい。多孔質層430は、炭素、グラファイト、及び/又は、グラファイトペーパー又はフェルト等の炭素/グラファイト複合材を含んでいてもよく、親水性になるように表面処理されてもよい。図4には示されていないが、燃料電池リバランス反応器200と同様に、燃料電池リバランス反応器200の第1の実施形態400は、さらに、水素側(図2)の出口側、又は燃料電池リバランス反応器200の電解液側(図3)の入口側に配置されたエジェクター260を含んでいてもよい。
【0049】
ここで図5を見ると、それは、燃料電池リバランス反応器200の第2の実施形態500を示す。正極側550及び負極側510の両方は、IDFF又は蛇行フローフィールドのような構造化フローチャネルを含み、正極入口242からの入口電解液と、負極入口212からの水素ガスと、がそれぞれ導かれる。構造化正極及び負極フローチャネルは、水素ガスを、正極側550及び正極540の間、及び、負極側510及び負極520の間で共有される境界表面領域全体に分配して流れるように強制することを促進する。1つの実施例では、負極フローチャネル及び正極フローチャネルは、プラスチックフローチャネルを含む。負極520は、炭素、グラファイト、又はグラファイトペーパー及びフェルトを含む炭素/グラファイト複合材を含んでいてもよい。1つの実施例では、負極520は、多孔質層530(負極と同じ材料及び構造)と一体化されてもよい。負極520は、さらに、それにコーティングされ、Pt、Pd、Rh、Ru、イリジウム、タンタル又はそれらの合金等の金属触媒で処理された、5~50%テフロン(登録商標)の表面層を含んでいてもよい。正極540は、炭素、グラファイト、又は炭素発泡体、炭素又はグラファイトフェルト等の炭素/グラファイト複合材を含んでいてもよい。多孔質層は、炭素、グラファイト、及び/又は、グラファイトペーパー又はフェルト等の炭素/グラファイト複合材を含んでいてもよく、親水性になるように表面処理されてもよい。図5には示されていないが、燃料電池リバランス反応器200と同様に、燃料電池リバランス反応器の実施形態500は、さらに、水素側(図2)の出口側、又は燃料電池リバランス反応器200の電解液側(図3)の入口側に配置されたエジェクター260を含んでいてもよい。
【0050】
ここで図6を見ると、それは、燃料電池リバランス反応器200の第3の実施形態600を示す。正極側650及び負極側610の両方は、IDFF又は蛇行フローフィールドのような構造化フローチャネルを含み、正極入口242からの入口電解液と、負極入口212からの水素ガスと、がそれぞれ導かれる。構造化正極及び負極フローチャネルは、水素ガスを、正極側650及び多孔質層630の間、及び、負極側610及び多孔質層630の間で共有される境界表面領域全体に分配して流れるように強制することを促進する。1つの実施例では、負極フローチャネル及び正極フローチャネルは、プラスチックフローチャネルを含む。負極及び正極は、多孔質層630負極と同じ材料及び構造)と一体化されていてもよい。換言すると、多孔質層630は、負極及び正極の両方を含んでそれらとして働いてもよい。多孔質層630は、炭素、グラファイト、及び/又は、グラファイトペーパー又はフェルト等の炭素/グラファイト複合材を含んでいてもよく、親水性になるように表面処理されてもよい。燃料電池リバランス反応器200の第3の実施形態600では、燃料電池リバランス反応器は、金属触媒の非存在下でリバランス反応を実行する。図6には示されていないが、燃料電池リバランス反応器200と同様に、燃料電池リバランス反応器200の第3の実施形態600は、さらに、水素側(図2)の出口側、又は燃料電池リバランス反応器200の電解液側(図3)の入口側に配置されたエジェクター260を含んでいてもよい。
【0051】
したがって、レドックスフロー電池システム用のリバランス反応器は、水素ガスが流れる第1側と、レドックスフロー電池システムからの電解液が流れる第2側と、第1側と第2側とを分離して流体接続する多孔質層と、を含んでいてもよく、水素ガスと電解液とが、多孔質層の表面において流体接触しており、第2側を横切る圧力降下が、多孔質層を横切る圧力降下よりも小さい。リバランス反応器の第1の例では、第2側を横切る圧力降下が、第2側の入口及び出口を横切る圧力降下に対応する。リバランス反応器の第2の例は、第1の例を任意で含み、さらに、第1側を横切る圧力降下が、前記第2側を横切る前記圧力降下よりも大きいことを含む。リバランス反応器の第3の例は、第1及び第2の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、エジェクターを含み、第2側から出る電解液が、エジェクターを通って流れ、それによって、エジェクターを通って第1側から出る水素ガスを引く。リバランス反応器の第4の例は、第1から第3の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、エジェクターを含み、第2側に入る電解液が、エジェクターを通って流れ、それによって、エジェクターを通って第1側から出る水素ガスを引く。リバランス反応器の第5の例は、第1から第4の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、第1側が、水素ガスが流れる対向櫛形流路を含み、それによって、水素ガスを第1側から出る前に多孔質層を通って第1側に強制的に入れる。リバランス反応器の第6の例は、第1から第5の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、第2側が、電解液が流れる対向櫛形流路を含み、それによって、電解液を第1側から出る前に多孔質層を通って第2側に強制的に入れる。リバランス反応器の第7の例は、第1から第6の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、多孔質層に導電接続された負極及び正極を含み、負極及び正極を横切って印加される電流が、水素ガスと電解液との間におけるリバランス反応速度を大きくする。
【0052】
したがって、レドックスフロー電池システムは、複数のレドックスフロー電池セルと、第2のリバランス反応器に流体接続された第1のリバランス反応器と、を含み、第1及び2のリバランス反応器のそれぞれが、水素ガスが流れる第1側と、複数のレドックスフロー電池セルから電解液が流れる第2側と、第1側と前記第2側とを分離して流体接続する多孔質層と、を含み、水素ガスと電解液とが、多孔質層の表面において流体接触し、第2側を横切る圧力降下が、閾値圧力差よりも小さい多孔質層を横切る圧力降下より小さい。レドックスフロー電池システムの第1の例は、実行可能な命令がメモリーに格納されたコントローラを含み、閾値圧力差よりも小さい多孔質層を横切る圧力降下より小さい第1のリバランス反応器の第2側を横切る圧力降下に応じて、第1のリバランス反応器から第2のリバランス反応器への電解液の流れの一部をリダイレクトする。レドックスフロー電池システムの第2の例は、第1の例を任意で含み、さらに、実行可能な命令が、閾値圧力差よりも小さい多孔質層を横切る圧力降下より小さい、第1のリバランス反応器の第2側を横切る圧力降下に応じて、第1のリバランス反応器の第2側への電解液の流れを減少させる。
【0053】
ここで図7を見ると、それは、1つ又はそれ以上の燃料電池リバランス反応器200を備えるレドックスフロー電池システム10において電解液をリバランスする例示的な方法1100のフローチャートを示す。燃料電池リバランス反応器200は、図2~3並びに図4~6を参照して説明したその実施形態を参照して説明される構成要素を含んでいてもよい。方法1100は、コントローラ88基板上の非一時的メモリーに常駐する実行可能な命令として実行されてもよい。方法1100は、1100で開始し、コントローラ1100は、pH、燃料電池リバランス入口及び出口圧力、燃料電池リバランス反応器への水素ガス及び電解液流れ等のレドックスフロー電池システムの動作条件を決定する。1120では、方法1100は、水素ガスを燃料電池リバランス反応器の負極側に導く。水素ガスは、電解液貯蔵タンクの負極電解液チャンバ内のガスヘッドスペース又は外部水素源から供給されてもよい。1130では、液体電解液は、燃料電池リバランス反応器の正極側に導かれる。液体電解液は、正極電解液チャンバ52からの正極電解液又は負極電解液チャンバ50からの負極電解液を含んでいてもよい。したがって、液体電解液は、負極及び正極電解液ポンプ30又は32によって、又はこれらの反応器のみに用いられる別途のポンプによって、燃料リバランス反応器に供給されてもよい。1120及び1130では、水素ガス及び液体電解液は、並列に流体接続された複数の燃料電池リバランス反応器に導かれ、より高い電荷リバランス流量容量を可能にする。
【0054】
次に、ステップ1140では、水素ガス及び液体電解液は、燃料電池リバランス反応器内で流体接触していてもよい。水素ガスと液体電解液とを流体接触されることは、水素ガス及び/又は液体電解液を構造化フローチャネル(例えば対向櫛形又は非対向櫛形)に通し、水素ガス及び/又は液体電解液を多孔質層と正極及び負極との境界表面領域全体に分配することを含んでいてもよい。水素ガスと液体電解液とを流体接触されることは、さらに、水素ガス及び液体電解液を多孔質層230の孔に導くことを含んでいてもよい。多孔質層230の連続性は、セパレータ表面における水素ガス及び電解液液体の接触時に、多孔質層230の境界層フィルムを横切る相間物質輸送損失の減少を促進することがある。
【0055】
次に、1150では、コントローラは、燃料電池リバランス反応器の正極側及び負極側を横切る圧力降下(ΔP)が、多孔質層を横切る圧力降下よりも閾値圧力差以上小さいかを判定してもよい。さらに、負極側を横切る圧力降下は、正極側を横切る圧力降下よりも大きく維持されてもよい。1つの実施例では、閾値圧力差は、燃料電池リバランス反応器の多孔質層230を横切る気泡圧力に基づく。多孔質層230の気泡圧力は、現場外(ex-situ)で決定されてもよく、それを超えると気泡が多孔質層230を強制的に通過する圧力に対応していてもよい。さらに又は代わりに、閾値圧力差は、多孔質層230を横切る圧力降下に基づいており、正極入口242及び負極入口212の間、正極出口244及び負極出口214の間、及び正極出口244及び負極入口212の間における圧力差の1つ又は組合せ(例えば平均又は加重平均)から決定可能である。1つの実施例では、正極側240及び負極側210を横切る圧力降下は、多孔質層230の気泡圧力よりも低く維持されてもよい。閾値圧力差は、それを超えると、水素ガスが負極側210から多孔質層230へクロスオーバーするリスクが減少し、又は水素のリスクが多孔質層230から液体を追い出し、より高いイオン抵抗となる、圧力差に対応していてもよい。燃料電池の正極側を横切る圧力降下(ΔP)が多孔質層を横切るΔPよりも小さい場合、方法1100は、1160まで続き、コントローラは、水素ガスを負極側に、電解液を燃料電池リバランス反応器の正極側に導き続ける。
【0056】
燃料電池の正極側を横切るΔPが多孔質層を横切るΔPよりも大きい場合、方法1100は、1170まで続き、ΔPを調整する。1つの実施例では、水素ガス及び液体電解液の流れは、並列に接続された他の燃料電池リバランス反応器に導いてもよい。方法は、閾値圧力差(例えば多孔質層の気泡圧力)に対して正極及び負極側を横切るΔPを比較するために進められてもよい。
【0057】
いくつかの例では、現在の燃料電池リバランス反応器は、遮断されて働いてもよく、1170において、正極側フローチャネルの洗浄、多孔質層の交換、及び正極の交換の1つ又はそれ以上を含んでいてもよい。
【0058】
したがって、レドックスフロー電池システムのためのリバランス反応器操作方法は、リバランス反応器の第1側を通って水素を流し、リバランス反応器の前記第1側に電解液を流すことなく、レドックスフロー電池からリバランス反応器の第2側に電解液を流し、第1側と第2側との間に挿入された多孔質層の表面において水素ガスと電解液とを流体接触させる。方法の第1の例は、第1側を通って水素を流すことが、第2側を通って水素を流すことなく、第1側を通って水素を流すことを含む。方法の第2の例は、第1の例を任意で含み、さらに、レドックスフロー電池から電解液を流すことが、レドックスフロー電池の正極チャンバから電解液を流すことを含む。方法の第3の例は、第1又は第2の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、レドックスフロー電池から電解液を流すことが、レドックスフロー電池の負極チャンバから電解液を流すことを含む。方法の第4の例は、第1から第3の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、水素ガスと電解液とを多孔質層の表面において流体接触させることが、多孔質層の炭素質表面において水素ガスによって電解液中の金属鉄を還元することを含む。方法の第5の例は、第1から第4の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、第2側を横切る圧力降下を、多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することを含む。方法の第6の例は、第1から第5の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、第2側を横切る圧力降下を、多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することが、第1側を横切る圧力降下を、多孔質層の気泡圧力よりも小さく維持することを含む。方法の第7の例は、第1から第6の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、第2側を横切る圧力降下を、多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することが、第2側を横切る圧力降下を、多孔質層の気泡圧力よりも小さく維持することを含む。方法の第8の例は、第1から第7の例のうち1つ又はそれ以上を任意で含み、さらに、第2側を横切る圧力降下を、多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することが、第2側を横切る圧力降下を、閾値圧力差以上で多孔質層を横切る圧力降下よりも小さく維持することを含む。
【0059】
このように、本明細書に記載の燃料電池リバランス反応器は、充填床リバランス反応器又は他の従来のリバランス反応器よりもより効率的にレドックスフロー電池システムの電解液電化をリバランスする技術的効果を達成可能である。さらに、燃料電池リバランス反応器は、充填床反応器に比較して設計が単純なフロースルー反応器であり、容量、及び電解液リバランスの柔軟性及び冗長性を向上するために、並列に、スタックされ、接続されてもよい。例えば、燃料電池リバランス反応器の性能が低下する(例えば正極側を横切るΔPが多孔質層を横切るΔPよりも大きい)場合、水素ガス及び液体電解液は、他の燃料電池リバランス反応器に容易にリダイレクト可能であり、性能が低いリバランス反応器は、レドックスフロー電池システムの充電及び放電中に、レドックスフロー電池システムのダウンタイムを経験することなく、働く又は交換される。
【0060】
本開示に含まれる例示的な制御及び判断手順(estimation routines)は、様々な電池及び/又は自動車システムの構成で使用可能であることに留意されたい。本開示で開示される制御方法及び手順は、実行可能な命令として非一時的なメモリーに格納され、様々なセンサ、アクチュエーター、及び他の電池ハードウェアと組み合わせられたコントローラを含む制御システムによって実行されてもよい。ここで説明された特定の手順は、イベント駆動、割り込み駆動、マルチタスク、マルチスレッドなどの任意の数の処理ストラテジーのうち1つ又はそれ以上を表していてもよい。したがって、示された様々なアクション、動作、及び/又は機能は、示されたシーケンスにおいて、平行して又は場合によっては省略されて実行されてもよい。同様に、処理の順序は、本開示で開示された例示的な実施形態の特徴及び利点を達成するために必ずしも必要なものではないが、例示及び説明の容易のために提供される。示されているアクション、動作、及び/又は機能の1つ又はそれ以上は、使用されている特定のストラテジーに応じて繰り返し実行される。さらに、説明されたアクション、動作、及び/又は機能は、レドックスフロー電池制御システム内のコンピューター可読記憶媒体の非一時的メモリーにプログラムされるコードをグラフィカルに表すことができ、説明されたアクションは、電子コントローラと組み合わせられて様々な電池ハードウェアの構成を含むシステムで命令を実行することによって行われる。
【0061】
以下の請求項は、新規かつ非自明とみなされる特定の組合せ及び部分的組合せを特に指摘している。これらの請求項は、要素「an」又は要素「a first」又はそれらの同等物を指すことがある。そのような請求項は、2以上のそのような要素を必要とすることも除外されることもなく、そのような要素を1つ又はそれ以上組み込むことを含むと理解されるべきである。開示された特徴、機能、要素、及び/又は特性の他の組合せ及び部分的組合せは、現在の請求項の補正を通じて、又は、本願又は関連する出願における新しい請求項の提示を通じて、請求されることがある。そのような請求項は、元の請求項よりも、広い、狭い、等しい、又は異なる範囲であっても、本開示の構成要件内に含まれるものとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8