(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】キナーゼJAK阻害剤としてのピラゾロ[1,5-a]ピリミジン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20221012BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20221012BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221012BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20221012BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221012BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C07D487/04 142
A61K31/519
A61K31/5377
A61P29/00
A61P37/00
A61P37/06
A61P43/00 111
C07D487/04 CSP
(21)【出願番号】P 2019562296
(86)(22)【出願日】2018-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2018062164
(87)【国際公開番号】W WO2018206739
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-30
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】515255146
【氏名又は名称】セロン ファーマ エス.アー.
【氏名又は名称原語表記】CELON PHARMA S.A.
【住所又は居所原語表記】ul. Ogrodowa 2A,PL-05-092 Kielpin/Lomianki,Republic of Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】モッツキエヴィチ,ミハウ
(72)【発明者】
【氏名】シュツーピク,バルトシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブヤク,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】シムチャク,クシシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】グネルカ,パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】デュビエル,クシシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエチョレク,マチェイ
(72)【発明者】
【氏名】ピエシシュコラン,イェジー
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/125893(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/039595(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/084861(WO,A1)
【文献】特表2008-519059(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118434(WO,A1)
【文献】特表2012-532112(JP,A)
【文献】特表2006-502163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
式中、
R
1は:
-ハロゲンおよびC1~C3アルコキシからなる群から選択される1または2の置換基で置換されているフェニル;
あるいは
-1または2の窒素原子を有する6員ヘテロアリールであって、非置換であるか、または
-NH
2、
-ハロゲン、
-アルキルC1-C4、
-アルコキシC1-C3、ならびに
-NおよびOからなる群から選択される1または2のヘテロ原子を含む6員ヘテロシクリル:
からなる群から選択される置換基で置換される、前記6員ヘテロアリール、
を表す、
の化合物あるいはその酸付加塩。
【請求項2】
R
1が、ハロゲンおよびC1-C3アルコキシからなる群から選択される1または2の置換基で置換されるフェニルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって
式中、
R
1が、1または2の窒素原子を有する6員ヘテロアリールであって、非置換であるか、または
-NH
2、
-ハロゲン、
-アルキルC1-C4、
-アルコキシC1-C3、ならびに
-NおよびOからなる群から選択される1または2のヘテロ原子を含む6員ヘテロ環:からなる群から選択される置換基で置換される、前記6員ヘテロアリール、
を表す、前記化合物。
【請求項4】
ヘテロアリールがピリジニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
ヘテロアリールがピリミジニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の化合物であって、ヘテロアリールがアルキルC1~C4、アルコキシC1~C3、ならびにNおよびOからなる群から選択される1または2のヘテロ原子を含む6員ヘテロ環からなる群から選択される置換基で置換される、前記化合物。
【請求項7】
請求項4に記載の化合物であって、ピリジニル、特にピリジン-2-イル、ピリジン―3-イルまたはピリジン-4-イルが、C1~C3アルコキシで置換されている、前記化合物。
【請求項8】
請求項5に記載の化合物であって、ピリミジニル、特にピリミジン-5-イルが、C1~C3アルコキシで置換されている、前記化合物。
【請求項9】
以下の群:
1)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(4-メトキシ-フェニル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
2)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
3)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(ピリジン-3-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
4)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
5)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-エトキシ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
6)(R)-2-(6-アミノピリジン-3-イル)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチル-ピペリジン-4-イル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
7)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-モルホリノ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
8)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-メトキシ-ピリミジン-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
9)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-エトキシ-ピリミジン-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
10)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-フルオロピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
11)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシ-ピリジン-2-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
12)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-メチルピリジン-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
13)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-モルホリノピリジン-4-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
14)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシピリジン-2-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド塩酸塩
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシピリジン-2-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミドである、請求項1に記載の化合物またはその酸付加塩。
【請求項11】
医薬としての使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
慢性の炎症性および自己免疫性疾患の処置方法における使用のための請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
活性成分として請求項1~10のいずれか一項に定義されたとおりの化合物を含む、医薬組成物。
【請求項14】
哺乳動物の対象における慢性の炎症性および自己免疫性疾患の処置方法
における使用のための請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はチロシンキナーゼJAK、特にJAK1/JAK3、阻害剤の活性を示す新規化合物、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン誘導体に関する。化合物は疾患の処置における使用を見出すことができ、その発症はキナーゼJAK1およびJAK3に関与する。特に、化合物は免疫応答モジュレーターとしての、例えば、移植学の分野における免疫抑制剤としての、ならびに自己免疫性のおよび炎症性疾患の処置における使用を見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
先行技術
ヤーヌスキナーゼJAKは、JAK-STATシグナル経路においてシグナルを誘導するサイトカインおよびケモカインの細胞内伝達に関連する非受容体型チロシンキナーゼのファミリーである。それらは、他の炎症メディエーターをコードする遺伝子の中で、STATタンパク質の活性化および遺伝子転写の開始において重要な役割を果たす。細胞における転写因子STATの活性はそのリン酸化レベルに依存する。細胞におけるリン酸化レベルの増大はキナーゼJAK活性に依存する;キナーゼの阻害はリン酸化の減少およびSTATタンパク質の転写活性をもたらし、結果的に調製された遺伝子の発現の減少を引き起こす。したがって、キナーゼJAK阻害剤は、自己免疫疾患を強調する炎症の誘導および維持の原因となる特異的な信号伝達を妨げる。炎症疾患の発症と臨床経過に関連するサイトカインがJAK-STAT経路を活性化することが繰り返し確認され、これは間接リウマチ、乾癬、喘息などのかかる疾患の発症および臨床経過における公社の重要な要素を作る。炎症性(pro-inflammatory)サイトカインにより誘導されるリンパ球TにおけるJAKキナーゼの刺激はSTAT転写因子の活性化へと導く。これはリンパ球Bを刺激して免疫グロブリンEの製造を増強し、好酸球の補充および成熟の原因となるリンパ球Tの差別化に作用し、これは部分的な炎症応答の発症へと導く。STAT因子、キナーゼ阻害剤のリン酸化を妨げるために、キナーゼJAK阻害剤はリンパ球T集団および炎症応答の差別化を阻害することができ、それゆえ、炎症疾患の処置において有益であり得る。
【0003】
JAKファミリーは4つの既知のメンバー、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を含む。キナーゼJAK1、JAK2およびTYK2は普遍的に発現され、一方、キナーゼJAK3は、主に造血細胞に発現される。したがって、JAK3阻害効果は免疫系に限定されるだろう。JAK3は膜貫通γc受容体を介して、インターロイキンIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21によって活性化される。JAK3と同様に、JAK1はIL-2受容体と関連しており、JAK3と一緒にIL-2シグナル伝達カスケードを媒介してT細胞増殖を調節する。JAK1はまた、炎症応答に関連するIL-6およびIFN-ガンマシグナル伝達において役割を担う。JAK3および/またはJAK1阻害剤は、免疫応答モジュレーターとしての使用を見いだすことができる医薬の探索、特に移植学における移植による拒絶反応を防ぐためのおよび自己免疫性および炎症性疾患の治療における興味深い標的である。
【0004】
キナーゼJAK1および/またはJAK3阻害の活性を発現する、特にJAK2を超えて選択的である化合物が探索される。
WO2014/039595A1は、JAK2を超えて選択的なJAK3および/またはJAK1阻害剤および慢性炎症性疾患および自己免疫疾患の処置のための潜在的な医薬として式
【化1】
のイミダゾ[1,2b]-ピリダジン-6-カルボキシアミドコアを有する化合物を開示する。
WO2012/125893は、JAK2を超えて選択的なJAK3および/またはJAK1阻害剤ならびに慢性炎症性および自己免疫疾患の処置のための潜在的な医薬として式
【化2】
のピロロ[1,2-b]-ピリダジン-6-カルボキシアミドコアを有する化合物を開示する。
【0005】
WO2012/125886は、JAK2を超えて選択的なJAK3および/またはJAK1阻害剤ならびに慢性炎症性および自己免疫疾患の処置のための潜在的な医薬として式
【化3】
のピロロ[1,2-b]-ピリダジン-6-カルボキシアミドコアを有する化合物を開示する。
WO2011/014817は、式
【化4】
の二環式複素環コアを有するJAK3阻害剤化合物を開示し、ピロロ[1,2b]ピリダジン-6-カルボキシアミドコアを有する誘導体のみが特定の化合物として開示している。
【0006】
US2010/0105661は、望ましくないまたは異常なサイトカインシグナル伝達に関連する疾患における使用のためのキナーゼJAK3阻害剤として、式
【化5】
のピロロ[2,3-b]ピリジンコアを有する化合物を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
炎症性および自己免疫疾患の処置おいて潜在的に有用であり得る高い有効性および/または選択性のキナーゼJAK阻害能を発現する新しい化合物の必要性がある。この課題が本発明によって解決される。
本発明の目的は、一般式(I)
【化6】
(I)
式中、
R
1は:
-ハロゲンおよびC1~C3アルコキシからなる群から選択される1または2の置換基で置換されるフェニル;
あるいは
-1または2の窒素原子を有する6員ヘテロアリールであって、
非置換であるか、または
-NH
2、
-ハロゲン、
-アルキルC1-C4、
-アルコキシC1-C3、ならびに
-NおよびOからなる群から選択される1または2のヘテロ原子を含む6員ヘテロシクリル、
からなる群から選択される置換基で置換される、前記6員ヘテロアリール、
を表す、
の化合物あるいはその酸付加塩である。
【0008】
式(I)の化合物は、JAK2を超えて、キナーゼJAK3および/またはJAK1を選択的な阻害能力を有し、自己免疫性および炎症性疾患の処置における使用を見出すことができる。
さらなる側面において、本発明はまた、医薬としての使用のための上に定義した通りの式(I)の化合物に関する。
さらなる側面において、本発明はまた、上で定義される通りの式(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。
さらなる側面において、本発明はまた、自己免疫性および炎症性疾患の処置における使用のための医薬の調製のための上に定義した通りの式(I)の化合物の使用に関する。
【0009】
さらなる側面において、本発明はまた、哺乳動物の対象における自己免疫性および炎症性疾患の処置方法であって、該対象に上に定義した通りの式(I)の化合物を治療上有効量で投与することを含む、前記方法に関する。
さらなる側面において、本発明はまた哺乳動物の対象における自己免疫性および炎症性疾患の処置方法における使用のための上に定義した通りの式(I)の化合物に関する。
【0010】
発明の詳細な説明
発明の好ましい態様は、以下の詳細な説明および添付した特許請求の範囲に記載される。発明の様々な側面がより詳細に本明細書に定義される。したがって、他に明確に示されない限り、各定義される側面は任意の他の側面(単数)または側面(複数)と組み合わせられてもよい。特に、好ましいまたは有利なものとして示される任意の特徴は、好ましいまたは有利なものとして示される他の特徴(単数)または特徴(複数)と組み合わせられてもよい。
【0011】
明細書を通して「1つの態様」または「ある態様」は、この態様に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「1つの態様において」または「ある態様において」という語句の任意の出現は、必ずしも同じものに関するものではないが、そうであることができる。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1以上の態様において、本開示の当業者に理解されるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載されるいくつかの態様は、いくつかを含み、他の態様に含まれる他の特徴を含まないが、当業者には理解されるように、様々な態様の特徴の組み合わせが本発明の範囲に含まれることができ、態様の様々な例を形成することができる。例えば、添付の特許請求の範囲において、任意のクレームされる態様は、任意の組み合わせで使用され得る。
【0012】
1つの側面において、本発明は以下の式(I)
【化7】
(I)
式中、R
1は:
-ハロゲンおよびC1-C3アルコキシからなる群から選択される1または2の置換基で置換されたフェニル;または
-1または2の窒素原子を有する6員ヘテロアリールであって、非置換であるか、または
-NH
2、
-ハロゲン、
-アルキルC1-C4、
-アルコキシC1-C3、および
-NおよびOからなる群から選択された1または2のヘテロ原子を含む6員ヘテロシクリル:
からなる群から選択される置換基で置換される、1または2の窒素原子を有する6員ヘテロアリール、
を表す、
の化合物、またはその酸付加塩を提供する。
【0013】
本発明のある態様において、R1は、ハロゲン原子およびC1-C3アルコキシからなる群から選択される1または2の置換基で置換されたフェニルを表す。
本発明のある態様において、R1は、1または2のハロゲン原子、好ましくは1または2のフッ素原子で置換されたフェニルを表す。有利には、R1は1つのフッ素原子で置換されたフェニルを表す。また有利には、R1は2つのフッ素原子で置換されたフェニルを表す。
本発明のある態様において、R1は、2-メトキシフェニル、4-メトキシフェニルおよび5-メトキシフェニル、特に4-メトキシフェニルおよび5-メトキシフェニルを含む、1または2のC1-C3アルコキシ基、好ましくはメトキシ基、特に1つのメトキシ基で置換されたフェニルを表す。
【0014】
本発明のある態様において、R1は、1つのハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、および1つのC1-C3アルコキシ基、特にメトキシで置換されたフェニルを表す。有利には、R1は、1つのフッ素原子および1つのメトキシ基で置換されたフェニルを表す。かかる置換の例は、2-フルオロ-5-メトキシフェニルおよび2-フルオロ-4-メトキシフェニル、特に2-フルオロ-5-メトキシフェニルを含む。
【0015】
本発明のある態様において、R1は、1または2の窒素原子を含み、非置換またはNH2;ハロゲン;C1-C4アルキル;C1-C3アルコキシ;ならびにNおよびOからなる群から選択される1または2のヘテロ原子を含む6員ヘテロシクリルで置換された、6員ヘテロアリールを表す。
ある態様において、R1は、非置換の6員ヘテロアリール、特にピリジニルまたはピリミジニルを表す。
【0016】
もう1つの態様において、R1は、NH2;ハロゲン;C1-C4アルキル;C1-C3アルコキシ;およびNおよびOからなる群から選択される1または2のヘテロ原子を含む、6員ヘテロシクリル、からなる群から選択される置換基によって置換されている、6員ヘテロアリール、特にピリジニルまたはピリミジニルを表す。
特に、上述の6員ヘテロアリール、好ましくはピリジニルまたはピリミジニルは、
NH2;ハロゲン、特にフッ素;C1-C4アルキル、特にメチルまたはエチル;C1-C3アルコキシ、特にメトキシまたはエトキシ;およびNおよびOからなる群から選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含む6員ヘテロシクリル、特に4-モルホリニルからなる群から選択される置換基によって置換される。有利には、上述の態様において、R1は、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イルまたはピリジン-4-イルを表すか、あるいはR1は、ピリミジン-2-イルまたはピリミジン-5-イルを表す。
特に、上述の6員ヘテロアリールは、C1-C3-アルコキシ、特にメトキシまたはエトキシで置換されているピリジニル、特にピリジン-2-イル、ピリジン-3-イルまたはピリジン-4-イルである。
【0017】
特に、上述の6員ヘテロアリールは、メトキシで置換された、ピリジニル、特にピリジン-2-イル、ピリジン-3-イルまたはピリジン-4-イルである。
特に、上述の6員ヘテロアリールは、C1-C3-アルコキシで、特にメトキシまたはエトキシで置換された、ピリミジニル、特にピリミジン-2-イルまたはピリミジン-5-イルである。
【0018】
定義
本明細書において用いられる用語「アルキル」は、単独でまたはもう1つの置換基の一部として、直鎖または分岐鎖を有し、炭素-炭素単結合で連結し、定義において示された炭素原子の数、例えばC1-C4またはC1-C3を有する、炭化水素基に関する。炭素原子の後ろに与えられる数字は基に含まれ得る炭素原子の数に関する。したがって、例えば、C1-C4-アルキルは、1~4個の炭素原子を有するアルキルを意味し、C1-C3-アルキルは、1~3個の炭素原子を有するアルキルを意味する。C1-C3-アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、およびイソプロピルであり、およびC1-C4アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルである。
本明細書で使用される用語「ヘテロシクリル」は、ヘテロ環基に由来する置換基、すなわち、示された数の員環ならびに示された数および種類のヘテロ原子を有する脂環式飽和炭化水素基、に関する。「ヘテロシクリル」は、酸素(O)および窒素(N)から選択される1または2のヘテロ原子を含む6員飽和ヘテロ環式環、例えば、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、およびジオキサニル、特にピペリジニル、モルホリニルおよびピロリジニル、を含む。
【0019】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、ヘテロアリール基に由来する置換基、すなわち、示された数の員環ならびに示された数および種類のヘテロ原子を有する芳香族炭化水素環式基、に関する。6員のヘテロアリールは、特にピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニルおよびピラジニル、特にピリジニルおよびピリミジニルを含む。
ハロゲンは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)原子、特にフッ素原子に関する。
【0020】
本発明の式(I)の化合物の酸付加塩は、特に医薬的に許容される無機または有機酸を有する塩を包含する。医薬的に許容される塩は好ましいものである。塩基性窒素原子を含む化合物と医薬的に許容される塩を形成してもよい無機および有機酸は技術分野でよく知られている。無機酸を有する塩は、特に、塩酸、臭化水素酸、硫酸(VI)、硝酸(V)、およびリン酸(V)の塩を含む。有機酸を有する塩は、特に、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩を含む。本発明は、本発明の化合物の調製、単離および精製の工程における中間体として特に有用な薬学的に許容される塩以外の塩もまたその範囲に含むということが理解されるべきである。
酸付加塩は、かかる通り一般的に知られている方法で調製され得る。典型的に、例えば有機溶媒中の溶液中の式(I)の化合物を、水性または水性アルコール溶液、例えば水性メタノールまたはエタノール溶液中の酸と反応させ、沈殿塩を従来の方法、例えばろ過、洗浄および乾燥によって単離する。
【0021】
本発明の特定の化合物は、以下の化合物およびその、無機および有機酸付加塩を含む、酸付加塩からなる群から選択される:
1)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(4-メトキシ-フェニル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
2)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
3)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(ピリジン-3-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
4)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
5)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-エトキシ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
6)(R)-2-(6-アミノピリジン-3-イル)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチル-ピペリジン-4-イル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
7)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-モルホリノ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
【0022】
8)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-メトキシ-ピリミジン-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
9)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-エトキシ-ピリミジン-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
10)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-フルオロピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
11)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシ-ピリジン-2-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
12)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-メチルピリジン-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
13)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-モルホリノピリジン-4-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド;
14)(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシピリジン-2-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド塩酸塩
【0023】
さらなる側面において、本発明は、上で定義され、薬剤としての使用のためのいずれか1つの提示された態様による式(A)の化合物に関する。
さらなる態様において、本発明は、医薬賦形剤と組み合わせて、上に定義された式(A)の化合物を含み、且つ有効成分としてのいずれか1つの提示された態様による医薬組成物に関する。
キナーゼJAK1/JAK3阻害剤として、上で定義された式(A)の化合物は、慢性炎症性および自己免疫疾患の処置に有用であり得る。
したがって、本発明は、ヒトを含む、哺乳動物の慢性炎症性および自己免疫疾患の処置方法における使用のための上に定義された式(I)の化合物に関する。
【0024】
したがって、本発明は、ヒトを含む、哺乳動物の慢性炎症性および自己免疫疾患の処置方法における使用のための薬剤の調製のための上に定義された式(I)の化合物の使用に関する。
本発明はまた、ヒトを含む、哺乳動物における慢性炎症および自己免疫疾患の処置方法にも関し、それは当該哺乳動物に上に定義された式(I)の化合物または上に定義された式(I)の化合物を含む医薬組成物を治療有効量を投与することを含む。
【0025】
慢性炎症性および自己免疫疾患には、連結する組織の全身性疾患、特に関節リウマチ、反応性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、強皮症;非特異的な炎症性腸疾患、特にクローン病および潰瘍性大腸炎;副腎疾患、特に多発性硬化症および筋無力症;皮膚疾患、特に乾癬; ならびに喘息(astma)を含む。
本発明の化合物はまた、移植学における移植拒絶の防止のための使用を見出すことができる。
本発明の化合物を、スキーム1で表される工程により調製することができる。
以下では次の略語が使用される:
AcOEt‐酢酸エチル;Boc‐tert-ブトキシカルボニル基;CN‐ニトリル基;(COCl)2‐オキサリルクロリド;Et‐エチル;EtO‐エトキシ;LiOH‐水酸化リチウム;Me‐メチル;MeCN‐アセトニトリル;MS-ESI‐エレクトロスプレー質量分析;m/z‐質量電荷比;NH4OH‐水性アンモニア、アンモニア水;NMR‐核磁気共鳴;Pd/C‐パラジウム炭素;POCl3‐オキシ塩化リン(V);TFA‐トリフルオロ酢酸。
【0026】
【0027】
スキーム1に示す通り、式(I)の化合物は、式IIの5-アミノ-3-ブロモ-1H-ピラゾールから出発して調製される。
式IIの化合物は、酢酸中還流温度で、1~2モル当量の量において用いたジエチル2-(エトキシ-メチレン)マロナートIIIを用いて環化され、式IVのピラゾロ[1,2-b]ピリミジンを得る。
式IVの化合物のヒドロキシ基は、オキシ塩化リン(V)、五塩化リン、塩化チオニル、好ましくはオキシ塩化リン(V)などの試薬を、2~30モル当量の量で使用して、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、N、N-ジメチルアニリンなどのアミン、1~5モル当量の量の存在下、またはアミンなしで、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムまたはベンジルトリエチルアンモニウムブロミドまたはクロリドなどの塩を1~3モル当量の量で添加または無添加で、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、クロロホルムなどの非プロトン性溶媒中、または溶媒なしで、60~120℃でまたは還流下で塩素と置換される。
【0028】
式Vの化合物をWO2014/039595A1(中間体4)に記載の手順にしたがって得られる、tert-ブチル(R)-4-アミノ-3,3-ジメチルピペリジン-1-カルボキシラートVIを1~1.5モル当量の量で用いて、1~3モル当量の量のトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンまたはピリジンなどのアミンの存在下、0~30℃で反応させ、式VIIの化合物を得る。
その後、式VIIの化合物のエステル基を加水分解して、0~80℃、好ましくは40~55℃で、溶媒、例えば水/アルコール、できれば水/メタノールなどの溶媒の混合物中で、金属水酸化物、好ましくは水酸化リチウムなどの塩基を2~10モル当量の量で使用して、酸VIIIを得る。
【0029】
式VIIIの化合物を2ステップの工程において式IXの対応するアミドに変換する。第1ステップにおいて、2~4モル当量の量におけるオキサリルクロリドと、触媒量のジメチルホルムアミドとの0~30℃での反応において酸塩化物を調製する。続いて、酸塩化物を、5~20モル当量の量におけるアンモニア水と0~30℃で反応させる。
式IXの化合物中のアミン保護tert-ブトキシカルボニル基は、ジクロロメタン溶液中10~40モル当量のトリフルオロ酢酸を使用して0~30℃で除去され、式Xの化合物を得る。
【0030】
その後、式Xの化合物を、非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミドまたはジクロロメタン、あるいはプロトン性溶媒、例えばメタノールまたはエタノールにおいて、2~10モル当量の量におけるアミン、例えばトリエチルアミン、N、N-ジイソプロピルエチルアミンまたはピリジンの存在下で、1~1.5モル当量の量における6-クロロピリダジン-3-カルボニトリルを使用してアリール化し、式XIの化合物を得る。
最終ステップにおいて、式XIの化合物を、1~2のモル当量の量における、対応するボロン酸XIIaまたは式XIIbのボロン酸ピナコールエステルと、パラジウム触媒、例えば、酢酸パラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)-パラジウム(0)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物、または他の従来の鈴木カップリング触媒、0.05~0.2モル当量の量の存在下、1~3モル当量の量で固体としてまたは水溶液として用いられる無機塩基、例えば、炭酸ナトリウム、カルシウム、またはセシウム、リン酸ナトリウム、またはカリウム、水酸化リチウム、ナトリウムまたはカリウム、あるいは有機塩基、例えばナトリウムまたはカリウムtert-ブトキシドの添加を伴って、溶媒、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、C3~C6の脂肪族アルコール、ジメチルホルムアミドまたはジメトキシエタン中で、80~40℃で、好ましくは還流温度で、鈴木カップリング反応を用いて、反応させる。
【0031】
式VIの化合物(tert-ブチル(R)-4-アミノ-3,3-ジメチルピペリジン-1-カルボキシラート)をスキーム3に従って、US2005/182095A1およびWO2014/039595A1に記載される手順により得ることができる。
式VIの化合物は、市販されているtert-ブチル4-オキソピペリジン-1-カルボキシラートXVIIIからtert-ブチル3,3-ジメチル-4-オキソピペリジン-1-カルボキシラートXIXを得るための、2~3モル当量の量において用いられるメチル化剤、例えばヨウ化メチルとの反応において、2~3モル当量の量において用いられる塩基、例えば水素化ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムtert-ブタノラート、nーブチルリチウム、炭酸カリウム、好ましくは水素化ナトリウムの存在下、非プロトン性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、好ましくはテトラヒドロフラン中における反応において得ることができる。
【0032】
次のステップにおいて、式XIXの化合物を2段階の還元的アミノ化反応において変換する。
第一に、式XIXの化合物を、1~2モル当量の量において使用される(R)-1-フェニルエタン-1-アミンXXと、任意に0.05~1モル当量の量における酸、例えばパラ-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸または硫酸、好ましくはパラ-トルエンスルホン酸の存在下で、非プロトン性溶媒、例えばトルエン、ベンゼンまたはキシレン、好ましくはトルエンにおいて、共沸蒸留のためのディーンシュタークトラップを備えた反応器において還流温度で反応させ、式XXIのtert-ブチル(R)-3,3-ジメチル-4-((1-フェニルエチル)イミノ)ピペリジン-1-カルボキシラートを得、これは分離することなくさらなる反応のために使用される。
【0033】
その後、式XXIの化合物との反応混合物を-78から0℃の温度に冷却し、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、好ましくはエタノール、および還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを2~3モル当量の量で加え、式XXIIのtert-ブチル(R)-3,3-ジメチル-4-(((R)-1-フェニルエチル)-アミノ)ピペリジン-1-カルボキシラートを得る。
最後のステップにおいて、式XXIIの化合物におけるアミン基を保護する1-フェニルエチル基を除去する。1-フェニルエチル基は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、好ましくはエタノールなどの溶媒において、水素および0.01~0.02モル当量の量において用いられるPd/C触媒を使用する還元により除去され、式VIの化合物、すなわちtert-ブチル((R)-4-アミノ-3,3-ジメチルピペリジン-1-カルボキシラートを得る。
【0034】
式II(5-アミノ-3-ブロモ-1H-ピラゾール)の化合物は市販されている。J. Org. Chem. 1986, 51, 4656-4660およびJ. Med. Chem. 2010, 53, 1238-1249に記載される手順を使用して、1H-ピラゾールXIVからスキーム2で表される方法によっても得ることができる。
【化9】
【0035】
本発明はまた、薬学的に許容される賦形剤との混合物における、活性成分として上で定義された式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
上述の疾患および障害の処置において、本発明の式(I)の化合物は化合物(chemical compound)として投与することができるが、通常、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体(単数または複数)および補助物質(単数または複数)と組み合わせて含む医薬組成物の形態において使用するだろう。
【0036】
上述の疾患および障害の処置において、本発明の医薬組成物は、任意の適切なルート、好ましくは経口、非経口または吸入ルートによって投与することができ、意図する投与ルートに依存して、医薬における使用を目的とする製剤の形態となるだろう。
【0037】
経口投与用の組成物は、固体または液体製剤の形態を有することができる。 例えば、固体製剤は、結合剤(例えば、アルファコーンスターチ、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、サッカロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);崩壊剤(例えば、クロスポビドン、コーンスターチ、またはデンプングリコール酸ナトリウム); 潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される不活性賦形剤から従来の方法において製造された錠剤またはカプセルの形態を有することができる。錠剤を、当技術分野で周知のコーティング、例えば単純コーティング、遅延/制御放出コーティングまたは腸溶コーティングで被覆することができる。例えば、経口投与用の液体製剤は、溶液、シロップまたは懸濁液の形態であることができ、または使用前に水または他の適切なビヒクルで再構成するための乾燥固体製品の形態を有することができる。かかる液体製剤は、薬学的に許容される不活性賦形剤、例えば、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用油)、乳化剤(例えばレシチンまたはアカシアゴム)、非水性ビヒクル(例えばマンデルオイル、オイルエステル、エチルアルコールまたは分画植物油)、および防腐剤(たとえば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルあるいはソルビン酸)から従来の手段を使用して調製できる。調製物はまた、適切な緩衝剤、香味剤、着色剤および甘味料も含むことができる。
【0038】
経口投与用の製剤は、当業者に知られている方法を使用して活性化合物の制御された放出を得るように製剤化されることができる。
【0039】
投与の非経口ルートは、筋肉内および静脈内注射による投与、ならびに静脈内注入を含む。非経口投与のための組成物は、例えば、防腐剤の添加を伴う、単位剤形、例えばアンプル、または複数用量の容器の形を有することができる。組成物は、油性または水性ビヒクルにおける懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態を有することができ、賦形剤、例えば、懸濁化剤、安定剤、および/または分散剤など、を含むことができる。あるいは、活性成分は、適切な担体、例えば、滅菌した発熱物質を含まない水において、使用前に再構成するための粉末として製剤化することができる。
【0040】
吸入ルートを介した投与のための組成物は、吸入形態を有することができ、噴霧により投与される。かかる製剤には、エアロゾルとして投与される活性物質および補助物質(単数または複数)、すなわち、気体中に懸濁される固体または液体物質の細かく分割された小粒子系が含まれる。噴霧において使用される補助物質は、例えば、等張剤としての塩化ナトリウム、pH調整剤および安定剤としての無機酸および水酸化物、防腐剤としての塩化ベンザルコニウム、緩衝剤としてのクエン酸ナトリウム、界面活性剤としてのポリソルベート80、共溶媒としてのエタノールおよびプロピレングリコール、および抗酸化剤としての硫酸塩(VI)であり得る。吸入ルートによる投与のための製剤は、圧力吸入器または乾燥粉末吸入器の形態を有し得る。
【0041】
本発明の化合物の使用を用いた処置方法は、治療有効量の本発明の化合物の、好ましくは医薬組成物の形態における、かかる処置を必要とする対象への投与を含む。本発明の化合物の提案された用量は、単回投与または分割投与で、1日あたり0.1~約1000mgである。所望の生物学的効果を得るために必要とされる投与量の選択は、多くの要因、例えば特定の化合物、症状、投与方法、患者の年齢および状態に依存するだろうということ、および正確な投与量は最終的に主治医によって決定されるだろうということは、当業者に明らかであろう。
【0042】
例
以下の実施例は例示目的のためであり、本発明の化合物の調製に使用される中間体の合成のために使用される従来の合成方法を示す。
中間体
本発明の化合物の調製のための中間体を以下に記載の通り調製する。
【0043】
中間体P1.化合物VI tert-ブチル(R)-4-アミノ-3,3-ジメチルピペリジン-1-カルボキシラート
【化10】
ステップA:化合物XIX-tert-ブチル3,3-ジメチル-4-オキソピペリジン-1-カルボキシラート
【化11】
0℃に冷却したtert-ブチル4-オキソピペリジン-1-カルボキシラートXVIII(50.0g、246mmol)のテトラヒドロフラン(1000mL)溶液に、水素化ナトリウム(パラフィン油中60%懸濁液、21.6g、541mmol)を少量ずつ加えた。反応混合物を0℃で2時間撹拌した。この混合物に、テトラヒドロフラン(60mL)中のヨードメタン(34mL、541mmol)溶液を15分間滴加した。反応混合物を0℃でさらに2時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム溶液(500mL)を混合物に加えた。混合物を酢酸エチル(3x500mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:ヘキサン:AcOEt=9:1、v/v)で精製した。生成物を熱ヘキサンからの結晶化により精製した。生成物は白色結晶として得られた。(39.8g、175mmol)、収率71%。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 3.62 (t, J=6.4 Hz, 1H), 3.39 (s, 1H), 2.42 (t, J=6.4 Hz, 1H), 1.46-1.39 (m, 6H), 0.99 (s, 3H)。
【0044】
ステップB:化合物XXII‐tert-ブチル(R)-3,3-ジメチル-4-(((R)-1-フェニルエチル)-アミノ)-ピペリジン-1-カルボキシラート
【化12】
トルエン(1500mL)中、tert-ブチル3,3-ジメチル-4-オキソピペリジン-1-カルボキシラートXIX(100g、418mmol)の溶液に、(R)-1-フェニルエタン-1-アミンXX(59.7mL、460mmol)およびパラ-トルエンスルホン酸(0.80g、4.2mmol)を加えた。反応混合物を、共沸ディーンスタークトラップ下で24時間還流して撹拌した。その後、化合物XXIを含む得られた混合物を分離せずに-70℃に冷却し、エタノール(100mL)を加え、水素化ホウ素ナトリウム(19.0g、502mmol)を少量ずつ加えた。温度をゆっくりと室温まで上げながら、反応混合物を3時間撹拌した。混合物に水(300mL)を加え、その容量の1/3に濃縮した。混合物をAcOEt(2x300mL)で抽出した。有機相を合わせ、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液ヘキサン:AcOEt=9:1、v/v)により精製した。生成物を無色オイル(67.3g、418mmol)として収率48%で得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 7.37-7.25 (m, 4H), 7.22-7.15 (m, 1H), 3.85-3.70 (m, 1H), 3.72 (q, J=6.5 Hz, 1H), 3.58-3.42 (m, 1H), 2.70-2.40 (m, 2H), 2.16 (dd, 1H, J=10.7, 6.51 Hz, 1H), 1.44 (s, 1H), 1.36 (s, 9H), 1.22 (d, J=6.5 Hz, 3H), 1.18-1.02 (m, 1H), 0.92 (s, 3H), 0.76 (s, 3H)。
【0045】
ステップC:化合物VI-tert-ブチル(R)-4-アミノ-3,3-ジメチルピペリジン-1-カルボキシラート
【化13】
エタノール(1150mL)中のtert-ブチル(R)-3,3-ジメチル-4-(((R)-1-フェニルエチル)--アミノ)-ピペリジン-1-カルボキシラートXXII(44.9g、135mmol)の脱気された溶液に、10%Pd/C(4.0g)を加えた。反応混合物を室温で水素雰囲気下20時間撹拌した。混合物をセライトのベッドを通して濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:AcOEt~AcOEt:メタノール=50:50、v/v)で精製した。生成物を無色のオイル(26.5g、116mmol)として86%の収率で得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 4.20-3,88 (m, 1H), 3.85-3.53 (m, 1H), 2.95-2.70 (m, 1H), 2.60-2.45 (m, 1H), 2.50 (dd, J=10.9, 4.2 Hz, 1H), 1.68-1.54 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.45-1.32 (m, 1H), 1.13 (bs, 2H), 0.93 (s, 3H), 0.82 (s, 3H)。
【0046】
中間体P2:(R)-2-ブロモ-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド(化合物XII)
【化14】
ステップ1:エチル2-ブロモ-7-ヒドロキシピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシラートIV
【化15】
5-アミノ-3-ブロモ-1H-ピラゾールII(20.0g、121mmol)の酢酸中(200mL)の溶液に、ジエチルエトキシメチレンマロナートIII(25.9mL、127mmol)を加えた。反応混合物を撹拌しながら20時間加熱還流した。その後、混合物を室温に冷却し、沈殿した固体を濾過し、エタノールおよびジエチルエーテルで洗浄した。生成物をクリーム状固体(27.9g、97.4mmol)として収率81%で得た。MS-ESI:(m/z)C
9H
7BrN
3O
3[M-H]
-について計算=284.0、検出284.0。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 8.37 (s, 1H), 6.15 (s, 1H), 4.50 (bs, 1H), 4.14 (q, J=7.1 Hz, 2H), 1.24 (t, J=7.1 Hz, 3H)。
【0047】
ステップ2:エチル2-ブロモ-7-クロロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシラートV
【化16】
トリエチルアミン(22.9mL、163mmol)をステップ1において得られる、アセトニトリル(180mL)中のエチル2-ブロモ-7-ヒドロキシピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシラートIV(9.34g、32.6mmol)およびテトラブチルアンモニウムクロリド(18.9g、65.3mmol)の溶液に加えた。続いて、オキシ塩化リン(V)(30.4mL、326mmol)を15分間滴加した。反応混合物を撹拌しながら20時間加熱還流した。室温に冷却後、反応混合物を飽和炭酸ナトリウムおよび氷の混合物に注いだ。混合物を酢酸エチル(3x300mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥(Na
2SO
4)し、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ヘプタン:AcOEt=9:1~8:2、v/v)で精製した。生成物は薄い黄色のアモルファス固体(6.86g、22.5mmol)として69%の収率で得られた。MS-ESI: (m/z) C
9H
8BrClN
3O
2 [M+H]
+について計算= 303.9、検出303.9.
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 8.97 (s, 1H), 6.90 (s, 1H), 4.49 (q, J=7.1 Hz, 2H), 1.46 (t, J=7.1 Hz, 3H)。
【0048】
ステップ3:エチル(R)-2-ブロモ-7-((1-(tert-ブトキシカルボニル)-3,3-ジメチルピリジン-4-イル)-アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシラートVII
【化17】
トリエチルアミン(8.05mL、57.7mmol)をステップ2で得られるエチル2-ブロモ-7-クロロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシラートVI(5.86g、19.2mmol)のアセトニトリル(150mL)溶液に加えた。続いて、アセトニトリル(30mL)中のtert-ブチル(R)-4-アミノ-3,3-ジメチルピリジン-1-カルボキシラートVI(中間体P1)(4.61g、20.2mmol)の混合物溶液を15分間滴加した。反応混合物を室温で20時間撹拌し、その後減圧下で濃縮した。残渣をAcOEt(100mL)に溶解し、水(100mL)を加えた。相分離の後、水相をAcOEt(2x100mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥(Na
2SO
4)し、減圧下で蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:へプタン:AcOEt=95:5~85:15、v/v)により精製した。生成物はクリーム状の無定形固体(8.08g、16.3mmol)として収率85%で得られた。MS-ESI:(m/z) C
21H
31BrN
5O
4 [M+H]
+ について計算 = 496.2、検出496.2.
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 9.84 (d, J=8.8 Hz, 1H), 8.70 (s, 1H), 6.47 (s, 1H), 5.32 (t, J=8.6 Hz, 1H), 4.38 (q, J=7.1 Hz, 2H), 4.20-3.95 (m, 1H), 3.93-3.65 (m, 1H), 3.13-2.93 (m, 1H), 2.90-2.70 (m, 1H), 2.08-1.95 (m, 1H), 1.80-1.65 (m, 1H), 1.48 (s, 9H), 1.41 (t, J=7.1 Hz, 3H), 1.09 (s, 3H), 1.00 (s, 3H)。
【0049】
ステップ4:(R)-2-ブロモ-7-((1-(tert-ブトキシカルボニル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)-アミノ)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボン酸VIII
【化18】
エタノール(200mL)と水(50mL)の混合物中の混合物において、ステップ3で得られたエチル(R)-2-ブロモ-7-((1-(tert-ブトキシカルボニル)-3,3-ジメチロピペリジン-4-イル)-アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシラートVII(8.06g、16.2mmol)の溶液に、水酸化リチウム(3.41g、81.2mmol)を加えた。混合物を90分間撹拌しながら55℃で加熱した。室温に冷却後、エタノールを減圧下で混合物から蒸発させた。残渣に水(100mL)を加え、続いて白色固体が沈殿するまで1M塩酸水溶液を加えた。固体を濾過し、水で洗浄し、乾燥させた。次に、固体をジクロロメタンに溶解し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で蒸発させた。97%の収率でクリーム状の固体(7.37g、15.7mmol)として得られた粗生成物を精製せずに次のステップで使用した。
【0050】
ステップ5:tert-ブチル(R)-4-((2-ブロモ-6-カルバモイルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)-アミノ)-3,3-ジメチルピペリジン-1-カルボキシラートIX
【化19】
ステップ4からの粗(R)-2-ブロモ-7-((1-(tert-ブトキシカルボニル)-3,3-ジメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボン酸VIII(7.37g、15.7mmol)をアルゴン雰囲気下乾燥ジクロロメタン(200mL)に溶解した。冷却後、混合物を0℃に冷却し、オキサリルクロリド(2.72mL、31.5mmol)を加えた。その後、ジメチルホルムアミドの滴(0.5mL)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。続いて、反応混合物を減圧下で蒸発させた。残渣を乾燥ジクロロメタン(200mL)に溶解させた。混合物に25%アンモニア水(24.2mL、157mmol)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、ジクロロメタンを減圧下で蒸発させた。残渣に水(200mL)を加えた。混合物をAcOEt(3x200mL)で抽出した。有機相を合わせ、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製した(シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン:メタノール=97:3,v/v)。生成物が白色結晶(5.21g、11.1mmol)として収率71%で得られた。MS-ESI:(m/z)C
19H
28BrN
6O
3[M+H]
+について計算=467.1、検出467.1。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 10.72 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.35 (s, 1H), 6.45 (s, 1H), 6.04 (bs, 2H), 5.27 (t, J=8.4 Hz, 1H), 4.20-3.93 (m, 1H), 3.90-3.63 (m, 1H), 3.15-2.90 (m, 1H), 2.90-2.67 (m, 1H), 2.02 (dq, J=7.3, 3.4 Hz, 1H), 1.80-1.65 (m, 1H), 1.47 (s, 9H), 1.08 (s, 3H), 0.99 (s, 3H)。
【0051】
ステップ6:(R)-2-ブロモ-7-((3,3-ジメチルピぺリジン-4-イル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]-ピリミジン-6-カルボキシアミドX
【化20】
ジクロロメタン(80mL)中のステップ5からのtert-ブチル(R)-4-((2-ブロモ-6-カルバモイルピラゾロ[1,5-a]-ピリミジン-7-イル)-アミノ)-3,3-ジメチルピペリジン-1-カルボキシラートIX(5.21g、11.1mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(8.53mL、111mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。揮発物を減圧下で蒸発させた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。揮発物を減圧下で蒸発させた。残渣に水(100mL)を加えた後、pH=12まで6M水酸化ナトリウムを加えた。白色固体を混合物から沈殿させた。混合物をAcOEt(3x100mL)で抽出した。有機相を合わせ、乾燥させ(Na
2SO
4)、蒸発させた。収率100%で白色固体として得られた粗生成物(4.09g、11.1mmol)を、さらなる精製なしで次のステップにおいて使用した。
【0052】
ステップ7:(R)-2-ブロモ-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピリジン-4-イル)-アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミドXII
【化21】
ステップ6からの粗(R)-2-ブロモ-7-((3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピラゾロ-[1,5-a]-ピリミジン-6-カルボキシアミドXI(2.05g、5.58mmol)をアルゴン雰囲気下乾燥ジメチルホルムアミド(50mL)に溶解した。トリエチルアミン(3.91mL,27.9mmol)の溶液に、その後6-クロロピリダジン-3-カルボニトリル(963mg、6.69mmol)を加えた。反応混合物を撹拌しながら80℃で1時間加熱した。室温に冷却した後、100mLの水を加え、混合物をAcOEt(3x100mL)で抽出した。有機相を合わせ、乾燥させ、減圧下で蒸発させた。残渣にトルエン(50mL)を加え、減圧下で蒸発させた。これを2回繰り返した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製した(シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン:メタノール=98:2、v/v)。生成物が淡黄色の固体(2.35g、4.99mmol)として89%の収率で得た。
MS-ESI: (m/z) C
19H
21BrN
9O [M+H]
+について計算= 470.1,検出470.1。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 11.06 (d, J=8.3 Hz, 1H), 8.44 (s, 1H), 7.50 (d, J=9.7 Hz, 1H), 6.99 (d, J=9.7 Hz, 1H), 6.45 (s, 1H), 6.04 (bs, 2H), 5,49 (dd, J=10.6, 4.2 Hz, 1H), 4.48 (d, J=13,3 Hz, 1H), 4,29 (d, J=13.6 Hz, 1H), 3.40 (ddd, J=13.6, 9.4, 3.3 Hz, 1H), 3.17 (d, J=13.7 Hz, 1H), 2.26 (dq, J=11.3, 3.6 Hz, 1H), 1.96-1.80 (m, 1H), 1.11 (s, 3H), 1.10 (s, 3H)。
【0053】
本発明の化合物を、以下の例に記載される通り、一般的な手順に従って、中間体P2および各ボロン酸XIIaまたはボロン酸ピナコールエステルXIIbから調製した。
一般的な手順:シュレンクフラスコ中の脱気されたジオキサン(20mL/1mmolP2)中の(R)-2-ブロモ-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド(中間体P2)(1eq.)、[1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0,1eq.)および各ボロン酸(2eq)またはボロン酸ピナコールエステルの混合物に、脱気した2Mリン酸カリウム(3eq.)水溶液を加えた。反応混合物を通してアルゴンを15分間パージした。フラスコを固く締め、反応混合物を3時間撹拌しながら120℃に加熱した。その後、反応混合物を冷却し、酢酸エチルで希釈し、セライトのベッドを通して濾過し、減圧下で濃縮した。油状残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:溶離液:ヘキサン:AcOEt)により精製して生成物を得た。
【0054】
例1)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(4-メトキシフェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミド
【化22】
化合物P2(51mg、0.11mmol)および(4-メトキシフェニル)ボロン酸(33mg、0.22mmol)を用いて、白色アモルファス固体(29mg、0.058mmol)として収率53%で調製した。MS-ESI: (m/z) C
26H
28N
9O
2 [M+H]
+ について計算 = 498.2,検出498.2。
1H NMR (300 MHz, CD
3OD) δ 8.51 (s, 1H), 7.92 (d, J=8.7 Hz, 2H), 7.66 (d, J=9.7 Hz, 1H), 7.67-7.47 (m, 2H), 7.35 (d, J=9.9 Hz, 1H), 7.03 (d, J=8.6 Hz, 2H), 6.71 (s, 1H), 5.82-5.70 (m, 1H), 4.67-4.55 (m, 1H), 4.42-4.25 (m, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.50-3.38 (m, 1H), 3.21 (d, J=14.3 Hz, 1H), 2.42-2.27 (m, 1H), 2.05-1.85 (m, 1H), 1.12 (s, 6H)。
【0055】
例2)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化23】
化合物P2(47mg、0.10mmol)および(2-フルオロ-5-メトキシ-フェニル)ボロン酸(34mg、0.20mmol)から白色アモルファス固体(25mg、0.049mmol)として収率49%で調製した。MS-ESI: (m/z) C
26H
27FN
9O
2 [M+H]
+について計算=516.2、検出516.2。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 11.22 (bs, 1H), 8.67 (s, 1H), 8.19 (bs, 1H), 7.87 (d, J=9.7 Hz, 1H), 7.59 (dd, J=5.8, 3.2 Hz, 1H), 7.55 (bs, 1H), 7.49 (d, J=9.8 Hz, 1H), 7.33 (dd, J=10.6, 9.2 Hz, 1H), 7.06 (dt, J=9.0, 3.5 Hz, 1H), 6.88 (d, J=3.3 Hz, 1H), 5.58-5.46 (m, 1H), 4.68 (d, J=13.7 Hz, 1H), 4.33 (d, J=13.5 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.34-3.24 (m, 1H), 3.13 (d, J=13.7 Hz, 1H), 2.36-2.24 (m, 1H), 1.92-1.74 (m, 1H), 1.05 (s, 3H), 1.04 (s, 3H)。
【0056】
例3)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化24】
化合物P2(50mg、0.11mmol)および3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)ピリジン(45mg、0.22mmol)から黄色アモルファス固体(40mg、0.085mmol)として収率78%で得た。MS-ESI: (m/z) C
24H
25N
10O [M+H]
+ について計算 = 469.2,検出469.2。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 11.23 (d, J=6.2 Hz, 1H), 9.26 (dd, J=2.0, 0.5 Hz, 1H), 8.65 (s, 1H), 8.65 (dd, J=4.7 Hz, 1H), 8.41 (dt, J=8.0, 1.9 Hz, 1H), 8.17 (bs, 1H), 7.87 (d, J=9.7 Hz, 1H), 7.56 (ddd, J=7.9, 4.8, 0.7 Hz, 1H), 7.53 (bs, 1H), 7.49 (d, J=9.8 Hz, 1H), 7.13 (s, 1H), 5.58-5,47 (m, 1H), 4.63 (d, J=12.2 Hz, 1H), 4.33 (d, J=14.0 Hz, 1H), 3.44-3,34 (m, 1H), 3.22 (d, J=13.5 Hz, 1H), 2.32-2,20 (m, 1H), 1.90-1,74 (m, 1H), 1.04 (s, 3H), 1.03 (s, 3H)。
【0057】
例4)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化25】
化合物P2(47mg、0.10mmol)および(6-メトキシピリジン-3-イル)ボロン酸(31mg、0.20mmol)から白色アモルファス固体(33mg、0.066mmol)として収率66%で調製した。MS-ESI:(m/z)C
25H
27N
10O
2[M+H]
+について計算=499.2、検出499.2。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 11.20 (d, J=5.9 Hz, 1H), 8.87 (d, J=1.3 Hz, 1H), 8.63 (s, 1H), 8.32 (dd, J=8.6, 1.7 Hz, 1H), 8.14 (bs, 1H), 7.87 (d, J=9.7 Hz, 1H), 7.50 (bs, 1H), 7.49 (d, J=9.7 Hz, 1H), 7.01 (s, 1H), 6.98 (d, J=8.7 Hz, 1H), 5.58-5.45 (m, 1H), 4.62 (d, J=12.3 Hz, 1H), 4.33 (d, J=13.4 Hz, 1H), 3.92 (s, 3H), 3.44-3.34 (m, 1H), 3.22 (d, J=13.6 Hz, 1H), 2.31-2.,19 (m, 1H), 1.90-1.72 (1H), 1.04 (s, 3H), 1.02 (s, 3H)。
【0058】
例5)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-エトキシ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化26】
化合物P2(53mg、0.11mmol)および(6-エトキシピリジン-3-イル)ボロン酸(37mg、0.22mmol)からクリーム状アモルファス固体(34mg、0.066mmol)として収率60%で調製した。。MS-ESI:(m/z)C
26H
29N
10O-
2[M+H]
+について計算=513.2、検出513.2。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 11.26 (d, J=8.2 Hz, 1H), 8.74 (s, 2H), 8.04 (d, J=8.3 Hz, 1H), 7.46 (d, J=9.5 Hz, 1H), 6.91 (d, J=9.6 Hz, 1H), 6.84 (d, J=8.6 Hz, 1H), 6.77 (s, 1H), 6.21 (bs, 2H), 5.78-5.65 (m, 1H), 4.53 (d,J=12.9 Hz, 1H), 4.42 (t, J=7.1 Hz, 2H), 4.32 (d, J=13.6 Hz, 1H), 3.44 (t, J=11.5 Hz, 1H), 3.19 (d, J=13.9 Hz, 1H), 2.36 (d, J=11.2 Hz, 1H), 2.06-1.86 (m, 1H), 1.44 (t, J=7,1 Hz, 3H), 1.16 (s, 6H).
【0059】
例6)
(R)-2-(6-アミノピリジン-3-イル)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化27】
化合物P2(48mg,0.10mmol)および5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン(44mg,0.20mmol)から白色のアモルファス固体として収率46%で調製した(22mg,0.046mmol)。MS-ESI: (m/z) C
24H
26N
11O [M+H]
+ について計算= 484.2、検出484.2。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 11.03-10.91 (m, 1H), 8.56 (dd, J=2.3, 0.7 Hz, 1H), 8.40 (s, 1H), 8.08 (dd, J=2.4, 0.7 Hz, 1H), 7.96 (dd, J=8.7, 2.3 Hz, 1H), 7.63 (dd, J=8.7, 2.5 Hz, 1H), 7.49 (d, J=9.6 Hz, 1H), 6.98 (d, J=9.7 Hz, 1H), 6.66 (ddd, J=8.7, 2.1, 0.7 Hz, 2H), 6.62 (s, 1H), 5.67 (dd, J=10.3, 3.8 Hz, 1H), 4.53 (d, J=13.7 Hz, 1H), 4.30 (d, J=13.1 Hz, 1H), 3.48-3.35 (m, 2H), 2.42-2.30 (m, 1H), 2.03-1.86 (m, 1H), 1.14 (s, 6H)。
【0060】
例7)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-モルホリノピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化28】
化合物P2(51mg、0.11mmol)および4-(5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(pirydyn)-2-イル)モルホリン(58mg、0.20mmol)からクリーム状アモルファス固体として収率33%で調製した(20mg、0.036mmol)。MS-ESI: (m/z) C
28H
32N
11O
2 [M+H]
+について計算= 554.3、検出554.2.
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 10.87 (d, J=8.8 Hz, 1H), 8.78 (d, J=2.1 Hz, 1H), 8.42 (s, 1H), 7.97 (dd, J=8.9, 2.4 Hz, 1H), 7.44 (d, J=9.6 Hz, 1H), 6.90 (d, J=9.7 Hz, 1H), 6.73 (d, J=8.8 Hz, 1H), 6.67 (s, 1H), 5.94 (bs, 2H), 5.71 (ddd, J=10.3, 8.9, 4.2 Hz, 1H), 4.52 (d, J=13.3 Hz, 1H), 4.29 (d, J=13.5 Hz, 1H), 3.88-3.82 (m, 4H), 3.64-3.57 (m, 4H), 3.49-3.37 (m, 1H), 3.17 (d, J=13.7 Hz, 1H), 2.42-2.30 (m, 1H), 1.94 (ddd, J=15.2, 11.7, 4.6 Hz, 1H), 1.14 (s, 6H)。
【0061】
例8)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-メトキシ-ピリミジン-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化29】
化合物P2(53mg、0.11mmol)および(2-メトキシピリミジン-5-イル)ボロン酸(34mg、0.22mmol)から白色アモルファス固体として収率76%で調製した(42mg、0.084mmol)。MS-ESI: (m/z) C
24H
26N
11O
2 [M+H]
+ について計算= 500.2、検出500.2。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 11.18 (d, J=8.1 Hz, 1H), 9.03 (s, 2H), 8.63 (s, 1H), 7.46 (d, J=9.6 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.13 (bs, 2H), 5.72-5.57 (m, 1H), 4.52 (d, J=12.7 Hz, 1H), 4.33 (d, J=13.7 Hz, 1H), 4.10 (s, 3H), 3.42 (t, J=10.9 Hz, 1H), 3.17 (d, J=13.7 Hz, 1H), 2.42-2,24 (m, 1H), 2,06-1,90 (m, 1H), 1.16 (s, 3H), 1.15 (s, 3H)。
【0062】
例9)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-エトキシ-ピリミジン-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化30】
化合物P2(50mg、0.11mmol)および(2-エトキシピリミジン-5-イル)-ボロン酸(37mg、0.22mmol)から白色アモルファス固体として収率30%で調製した(17mg、0.033mmol)。MS-ESI:(m/z)C
25H
28N
11O
2[M+H]
+について計算=514.2、検出514.2。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 11.07 (d, J=8.8 Hz, 1H), 9.00 (s, 2H), 8.54 (s, 1H), 7.45 (d, J=9.5 Hz, 1H), 6.90 (d, J=9.7 Hz, 1H), 6.76 (s, 1H), 6.04 (bs, 2H), 5.70-5,58 (m, 1H), 4.50 (q, J=7.0 Hz, 3H), 4.32 (d, J=13.6 Hz, 1H), 3.41 (t, J=11.4 Hz, 1H), 3.16 (d, J=13.6 Hz, 1H), 2.34 (d, J=10.5 Hz, 1H), 2,10-1,94 (m, 1H), 1.47 (t, J=7.1 Hz, 3H), 1.15 (s, 3H), 1.14 (s, 3H)。
【0063】
例10)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-フルオロ-ピリジン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化31】
化合物P2(47mg、0.10mmol)および(6-フルオロピリジン-3-イル)ボロン酸(28mg、0.20mmol)からクリーム状のアモルファスの固体として収率78%で調製した。MS-ESI: [M+H]
+について計算(m/z) = 487.2、検出487.2。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 11.06 (d, J=8.8 Hz, 1H), 8.79 (d, J=2.4 Hz, 1H), 8.44 (s, 1H), 8.29 (ddd, J=8.3, 7.8, 2.5 Hz, 1H), 7.48 (d, J=9.7 Hz, 1H), 7.09 (dd, J=8.5, 2.8 Hz, 1H), 6.95 (d, J=9.7 Hz, 1H), 6.74 (s, 1H), 5.65 (dd, J=10.4, 4.1 Hz, 1H), 4.52 (d, J=13.3 Hz, 1H), 4.31 (d, J=13.5 Hz, 1H), 3.50-3.34 (m, 1H), 3.18 (d, J=13.8 Hz, 1H), 2.40-2,28 (m, 1H), 2.06-1.88 (m, 1H), 1.15 (s, 6H)。
【0064】
例11)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシ-ピリジン-2-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化32】
化合物P2(201mg、0.43mmol)および2-メトキシ-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(202mg、0.86mmol)から白色アモルファス固体として収率67%で調製した(144mg、0.29mmol)。MS-ESI: (m/z) C
25H
27N
10O
2 [M+H]
+ について計算= 499.2、検出499.2。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 11.32 (d, J=8.8 Hz, 1H), 8.73 (s, 1H), 8.65 (d, J=5.1 Hz, 1H), 8.24 (s, 1H), 7.94 (d, J=9.8 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.87 (d, J=5.1 Hz, 1H), 7.60 (bs, 1H), 7.57 (d, J=9.8 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 5.62-5.50 (m, 1H), 4.73 (d, J=11.9 Hz, 1H), 4.42 (d, J=13.5 Hz, 1H), 3.52-3.40 (m, 1H), 3.28 (d, J=13.7 Hz, 1H), 2.64 (s, 3H), 2.35 (d, J=9,7 Hz, 1H), 1.98-1.80 (m, 1H), 1.11 (s, 3H), 1.10 (s, 3H)。
【0065】
例12)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-メチル-ピリジン-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化33】
化合物P2(49mg、0.10mmol)および2-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(44mg、0.20mmol)から白色の、アモルファス固体として収率41%で調製した(20mg、0.050mmol)。MS-ESI:(m/z)C
25H
27N
10O[M+H]
+について計算=483.2、検出483.2。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 10.89 (d, J=8.5 Hz, 1H), 8.62 (d, J=5.4 Hz, 1H), 8.36 (s, 1H), 7.66-7.57 (m, 2H), 7.46 (d, J=9.6 Hz, 1H), 6.92 (d, J=9.5 Hz, 1H), 6.85 (s, 1H), 5.86-5.61 (m, 3H), 4.58 (d, J=13.0 Hz, 1H), 4.33 (d, J=13.6 Hz, 1H), 3.44 (t, J=12.3 Hz, 1H), 3.19 (d, J=13.6 Hz, 1H), 2.6 (s, 3H), 2.40 (dd, J=13.4, 3.7 Hz, 1H), 2.07-1.90 (m, 1H), 1.16 (s, 6H)。
【0066】
例13)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(2-モルホリノピリジン-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化34】
化合物P2(52mg、0.11mmol)および(2-モルホリノピリジン-4-イル)-ボロン酸(46mg、0.22mmol)から白色アモルファス固体(30mg、0.054mmol)として収率49%で調製した。MS-ESI:(m/z)C
28H
32N
11O
2[M+H]
+について計算=554.3、検出554.2。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 11.05 (d, J=8.2 Hz, 1H), 8.48 (s, 1H), 8.29 (d, J=5.2 Hz, 1H), 7.49 (d, J=9.6 Hz, 1H), 7.20 (dd, J=5.2, 1.1 Hz, 1H), 7.12 (s, 1H), 6.97 (d, J=9.7 Hz, 1H), 6.78 (s, 1H), 5.68 (dd, J=10.3, 4.0 Hz, 1H), 4.55 (d, J=13.4 Hz, 1H), 4.28 (d, J=13.8 Hz, 1H), 3.91 ‐ 3.84 (m, 4H), 3.64 ‐ 3.56 (m, 4H), 3.43-3,31 (m, 1H), 3.18 (d, J=13.7 Hz, 1H), 2.45 ‐ 2.30 (m, 1H), 2.05-1.89 (m, 1H), 1.15 (s, 6H)。
【0067】
例14)
(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-2-(6-メトキシ-ピリジン-2-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド
【化35】
37%の塩酸水溶液(170μl、2.01mmol、1.0eq)をアセトン(10mL)中の(R)-7-((1-(6-シアノピリダジン-3-イル)-3,3-ジメチルピペリジン-4-イル)-アミノ)-2-(6-メトキシピリジン-2-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキシアミド(100mg、0.201mmol)溶液に加えた。沈殿した白色固体をろ過し、アセトンで洗浄し、乾燥させて、生成物(90mg、0.168mmol)を収率84%で得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 12.20 (d, J=6.6 Hz, 1H), 9.00 (s, 1H), 8.57 (bs, 1H), 7.95-7.78 (m, 4H), 7.50 (d, J=9.8 Hz, 1H), 7.04 (s, 1H), 6.94 (d, J=9,8 Hz, 1H), 5.70-5.50 (m, 1H), 4.63 (d, J=13.2 Hz, 1H), 4.35 (d, J=13.7 Hz, 1H), 3.98 (s, 3H), 3.39 (t, J=11.3 Hz, 1H), 3.23 (d, J=13.7 Hz, 1H), 2.35-2.22 (m, 1H), 1.95-1.77 (m, 1H), 1.08 (s, 3H), 1.05 (s, 3H)。
【0068】
本発明の化合物の生物学的活性
In vitro JAKキナーゼ阻害アッセイ
本発明の化合物の効果を、以下に記載するキナーゼJAK阻害アッセイを使用してin vitroで分析した。
試験された化合物を100%DMSOに溶解し、得られた貯蔵溶液を反応バッファー(50mMTris pH7.5、10mM MgCl2、0.25mM EGTA、0.1mM Na3VO4、0.01%Triton X-100、2.5mM DTT)において連続希釈した。組換えキナーゼJAK1(ProQinase)、JAK2、またはJAK3(Carna Biosciences)を希釈バッファー(50mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、10%グリセロール、0.05%Triton X-100、1mM DTT)において最終濃度3ng/μL(JAK1)、0.1ng/μL(JAK2)、または0.2ng/μL(JAK3)まで希釈した。得られた化合物の溶液5μLおよび各キナーゼの溶液5μLを96ウェルプレートのウェルに加えた。試験化合物と酵素との相互作用を開始するために、プレートを、プレート-サーモシェーカーにおいて400rpmで軌道撹拌しながら25℃で10分間インキュベートした。ネガティブコントロールのウェルは、試験化合物およびキナーゼを除く上記の全ての試薬を含み、ポジティブコントロールのウェルには、試験化合物を除く上記の全ての試薬を含んだ。以下の溶液15μLの添加により、酵素反応が開始された:5倍濃縮された反応バッファー(50mM Tris pH7.5、10mM MgCl2、0.25mM EGTA、0.1mM Na3VO4、0.01% Triton X-100、2.5mM DTT)、水、30μM ATPおよび特にキナーゼ:JAK1‐60μMペプチド IRS-1(Enzo)、JAK2またはJAK3‐10μMペプチドIGF-1Rtide(Lipopharm)。その後、プレートをプレート-サーモシェーカーにおいて25°Cで1時間、400rpmで軌道撹拌しながらインキュベートした。その後、酵素反応において形成されたADPの検出をADP-Gloキナーゼアッセイキット(Promega)を使用して行った。この目的のために、96ウェルプレートのウェルに25μLのADP-Glo試薬を加え、プレートを400rpmで軌道撹拌しながら、プレート-サーモシェーカーにおいて25°Cで40分間インキュベートした。その後、96ウェルプレートのウェルに50μLのキナーゼ検出試薬を加え、プレートをプレートサーモシェーカー内で25℃で30分間、400rpmで軌道撹拌した。インキュベーション後、Victor x Lightルミノメーターを使用して発光強度を測定した(Perkin Elmer, Inc.)。
【0069】
さまざまな濃度の試験化合物を含むウェルにおけるおよびコントロールウェルにおける発光測定に基づいて、IC50値を決定した。これらの値は、Graph Padソフトウェアv.5.03を用いて、非線形回帰法の曲線の点を合わせることにより決定された。各コントロールの少なくとも3つのウェルを使用して、2つの96ウェルプレートで、各化合物を少なくとも6回の繰り返し(6ウェル)で試験した。
【0070】
本発明の選択された化合物のキナーゼJAK阻害活性の平均された結果を以下の表1に提示する。提示されたデータは、本発明の化合物がJAK1およびJAK3キナーゼをキナーゼJAK2を超えて優先的に阻害できることを示す。
【表1】
【0071】
in vitroでのTF-1細胞の生存率のアッセイ
本発明の化合物の活性の効果は、以下に記載される細胞生存率アッセイを使用してin vitroで試験された。
試験化合物を100%DMSOに溶解し、得られたストック溶液をOptiMEM培地(Reduced Serum Medium-Thermo Fisher Scientific)で連続的に希釈した。5ng/mLのIL-3または20ng/mLのIL-4の存在下で、培養培地(80%RPMI 1640 + 20%FBS)におけるTF-1細胞(DSMZ no.:ACC334)をウェルあたり90μlの容量で、ウェルあたり1万個の細胞で96-ウェルプレートに播いた。96ウェルプレートのウェルに、化合物の調製された10X貯蔵溶液10μL。96ウェルプレート上の細胞を、化合物とともに、37°C、5%CO2で72時間インキュベートした。続いて、ATPliteキット(Perkin Elmer)を使用して、細胞の生存率を測定した。この目的のために、溶解バッファー(哺乳動物細胞溶解溶液)50μLを96ウェルプレートのウェルに加え、プレートを600rpmで軌道撹拌しながらプレートサーモシェーカーで25℃で10分間インキュベートした。その後、96ウェルプレートのウェルに50μLの基質(基質溶液)を加え、600rpmで軌道撹拌しながらプレートサーモシェーカーで暗所で15分間インキュベートした。インキュベーション時間後、Victor x Lightルミノメーター(Perkin Elmer、Inc.)を使用して、ウェル内の発光強度を測定した。
【0072】
さまざまな濃度の試験化合物を含むウェルにおけるおよびコントロールウェルにおける発光強度測定に基づいて、EC50値を決定した。これらの値は、Graph Padソフトウェアv.5.03を用いて非線形回帰法を使用して曲線の点を合わせることにより、決定された。各コントロールの少なくとも3つのウェルを使用して、2つの96ウェルプレートで、各化合物を少なくとも6回の繰り返し(6ウェル)で試験した。
【0073】
本発明の選択された化合物に対するIL-3(JAK2活性化)またはIL-4(JAK1/JAK3活性化)の存在下での細胞TF-1の生存率の阻害活性の平均化された結果を以下の表2に示す。提示されたデータは、本発明の化合物がJAKキナーゼを阻害できること、およびキナーゼJAK2阻害を越えてより強いJAK1/JAK3キナーゼ阻害が見られることを示す。
【表2】
【0074】
in vitroでのリンパ球TによるTNFaおよびINFγ産生の阻害アッセイ
本発明の化合物の活性は、以下に記載されるin vitroアッセイを使用して試験された。
試験した化合物を100%DMSOに溶解し、得られた貯蔵溶液をOptiMEM培地(Reduced Serum Medium-Thermo Fisher Scientific)で連続希釈した。リンパ球は、ヒト末梢血から得られた白血球のトップコート層から分離された。末梢血単核細胞の分離は、Ficoll-Paque + Leucoseptグラジエント法を使用し、CD4+T細胞分離キットを使用したリンパ球分離、およびT細胞活性化/拡張キット(Miltenyi Biotec)を使用した活性化を使用して行った。培養培地中の分離された細胞(90%RPMI 1640+10%FBS)を450μL/ウェル、30万/ウェルで12ウェルプレートに分注し、試験化合物の調製された10X貯蔵溶液50μLを加えた。48時間後、分泌されたサイトカインのレベルを決定するために上清を収集した。決定前に、細胞を1000gで10分間遠心分離した。LEGENDplexヒトThサイトカインキットを使用して、フローサイトメーターFACS Caliburで決定を行った。結果を、コントロール細胞を参照したリンパ球Tによって分泌されるTNFaiINFγサイトカインの阻害の百分率として表3に提示する。
【表3】
【0075】
in vitroでのSTAT6リン酸化阻害アッセイ
本発明の化合物の活性を、以下に記載されるインビトロアッセイを使用して試験した。
試験化合物を100%DMSOに溶解し、得られた貯蔵溶液をOptiMEM培地(Reduced Serum Medium-Thermo Fisher Scientific)に連続的に入れた。20ng/mLのIL-4の存在下で培養培地(80%RPMI 1640 + 20%FBS)のTF-1細胞(DSMZ no .: ACC 334)を900μl/ウェル、70万の細胞/ウェルで12ウェルプレート上に篩過した。12ウェルプレートのウェルに、得られた化合物の10X溶液100μLを加えた。12ウェルプレート上の細胞を試験化合物と37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。続いて、細胞をPBSで洗浄し、EDTA、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を加えたRIPA緩衝液に溶解し、氷上で5分間インキュベートした。タンパク質濃度は、Pierce BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して決定した。タンパク質溶解物を8%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動(SDS-PAGE)により分離し、その後ニトロセルロース膜に湿式転写し、試験タンパク質を抗体の製造者の使用上の注意に従って検出した。
化学発光強度の測定に基づいて濃度測定(densitometric)分析を行い、さまざまな濃度の試験化合物で処理される細胞で得られた結果をコントロール細胞で得られた結果と比較し、IC50値を決定した。
【0076】
これらの値は、非線形回帰法を使用して曲線のポイントをフィッティングすることにより、Graph Padソフトウェアv.5.03で決定された。各化合物を少なくとも3回繰り返して試験した。本発明の選択された化合物の存在下でのTF-1細胞におけるSTAT6タンパク質リン酸化の、または本発明の選択された化合物のIL-4(JAK1/JAK3活性化)の阻害活性の平均された結果を以下の表4に示す。
【表4】