(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20221012BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20221012BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20221012BHJP
E04B 1/04 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D21/00 B
E04B5/02 B
E04B1/04 D
(21)【出願番号】P 2020026811
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 将之
(72)【発明者】
【氏名】若松 宏知
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052424(JP,A)
【文献】特開2017-106231(JP,A)
【文献】特開2002-227130(JP,A)
【文献】特開2014-163082(JP,A)
【文献】米国特許第08468766(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 21/00
E04B 5/02
E04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のプレキャストコンクリート部材と他方のプレキャストコンクリート部材とを対向させてすき間をあけて配置して、前記すき間には前記プレキャストコンクリート部材どうしの対向端部のそれぞれから、対向する相手側の前記対向端部に向かって延在する多数本の鉄筋を横方向に間隔をあけて配筋した状態にするとともに、上下方向に間隔をあけて配筋した状態にした後、前記すき間にコンクリートを打設して多数本の前記鉄筋が埋設された前記コンクリートが固化することで前記プレキャストコンクリート部材どうしを接続して一体化させるプレキャストコンクリート構造物の構築方法において、
それぞれの前記対向端部を、上側端面とこの上側端面よりも相手側の前記対向端部に向かう方向に突出する下側端面とを有するステップ状に形成して、それぞれの前記下側端面には横方向に間隔をあけて配列された多数の鉄筋接続部を設け、それぞれの前記上側端面には横方向に間隔をあけて配列された多数本の上側鉄筋を相手側の前記対向端部に向かう方向に突出させ、その突出端を自分側の前記下側端面から所定長さ以上突出しない許容範囲に設定しておき、
それぞれの前記プレキャストコンクリート部材を互いの前記対向端部どうしの前記すき間をあけて配置した後、それぞれの前記鉄筋接続部に下側つなぎ鉄筋を接続して相手側の前記対向端部に向かって延在させて、それぞれの前記対向端部から延在させた前記下側つなぎ鉄筋どうしをオーバーラップさせた状態に配筋する下側配筋作業を、それぞれの前記上側端面から延在して対向する前記上側鉄筋どうしの間に上側つなぎ鉄筋を配筋することで対向するそれぞれの前記上側鉄筋どうしを連結した状態にする上側配筋作業に先行して行うことを特徴とするプレキャストコンクリート構造物の構築方法。
【請求項2】
地盤に立設されている支持体の上方に、それぞれの前記プレキャストコンクリート部材を互いの前記対向端部どうしの前記すき間をあけて配置する請求項1に記載のプレキャストコンクリート構造物の構築方法。
【請求項3】
それぞれの前記プレキャストコンクリート部材の対向するそれぞれの前記鉄筋接続部どうしを横方向にオフセットした配置にしておく請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート構造物の構築方法。
【請求項4】
それぞれの前記プレキャストコンクリート部材の対向するそれぞれの前記上側鉄筋どうしを横方向および上下方向に一致した配置にしておく請求項1~3のいずれかに記載のプレキャストコンクリート構造物の構築方法。
【請求項5】
それぞれの前記プレキャストコンクリート部材を互いの前記対向端部どうしの前記すき間をあけて配置した時に、前記すき間に対応する設置面には、打設する前記コンクリートに埋設される金属突出物がない状態にしておき、前記下側つなぎ鉄筋を配筋してから前記上側つなぎ鉄筋を配筋するまでの間に、前記設置面に前記金属突出物を突設する請求項1~4にいずれか記載のプレキャストコンクリート構造物の構築方法。
【請求項6】
それぞれの前記プレキャストコンクリート部材の多数本の前記上側鉄筋を交差して延在する補強用鉄筋を、それぞれの前記プレキャストコンクリート部材を互いの前記対向端部どうしの前記すき間をあけて配置する前に予め配筋しておく請求項1~5にいずれか記載のプレキャストコンクリート構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート構造物の構築方法に関し、さらに詳しくは、作業の煩雑さを軽減してプレキャストコンクリート構造物をより効率的に構築できる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路橋などを構築するには、橋脚などの支持体に支持された桁の上にプレキャストコンクリート部材である床版を配置して、隣り合う床版どうしの間にコンクリートを打設して互いを接続する方法が知られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。接続されるそれぞれの床版の対向端部どうしの間には、相手側の対向端部に向かって延在する多数本の鉄筋が床版の幅方向に間隔をあけて配筋される。このように横並びに配筋される多数本の鉄筋は、上下方向にも間隔をあけて2段以上に配筋される。その後、配筋された多数本の鉄筋が、床版の対向端部どうしの間に打設されたコンクリートに埋設された状態になり、このコンクリートが固化することで隣り合う床版どうしが接合されてプレキャスト構造物である床版が構築される。このような接合方法は、海上桟橋のプレキャスト施工を行う場合でも、杭に支持された梁の上に床版を構築する際にも適用されることがある。
【0003】
床版を構築する際に、床材としてプレキャストコンクリート部材を用いると、現場打ちコンクリートを用いて部材を形成する場合に比して作業工数を大幅に削減することができる。しかしながら、床材の対向端部どうしの間の規定されたスペースに、幅方向および上下方向に間隔をあけて多数本の鉄筋を配筋するには依然として多大な作業工数を要する。それ故、配筋作業などの煩雑さを軽減してプレキャストコンクリート構造物をより効率的に構築するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-2251号公報
【文献】特開2019-132070号公報
【文献】特開2019-183425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、作業の煩雑さを軽減してプレキャストコンクリート構造物をより効率的に構築できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のプレキャストコンクリート構造物の構築方法は、一方のプレキャストコンクリート部材と他方のプレキャストコンクリート部材とを対向させてすき間をあけて配置して、前記すき間には前記プレキャストコンクリート部材どうしの対向端部のそれぞれから、対向する相手側の前記対向端部に向かって延在する多数本の鉄筋を横方向に間隔をあけて配筋した状態にするとともに、上下方向に間隔をあけて配筋した状態にした後、前記すき間にコンクリートを打設して多数本の前記鉄筋が埋設された前記コンクリートが固化することで前記プレキャストコンクリート部材どうしを接続して一体化させるプレキャストコンクリート構造物の構築方法において、それぞれの前記対向端部を、上側端面とこの上側端面よりも相手側の前記対向端部に向かう方向に突出する下側端面とを有するステップ状に形成して、それぞれの前記下側端面には横方向に間隔をあけて配列された多数の鉄筋接続部を設け、それぞれの前記上側端面には横方向に間隔をあけて配列された多数本の上側鉄筋を相手側の前記対向端部に向かう方向に突出させ、その突出端を自分側の前記下側端面から所定長さ以上突出しない許容範囲に設定しておき、それぞれの前記プレキャストコンクリート部材を互いの前記対向端部どうしの前記すき間をあけて配置した後、それぞれの前記鉄筋接続部に下側つなぎ鉄筋を接続して相手側の前記対向端部に向かって延在させて、それぞれの前記対向端部から延在させた前記下側つなぎ鉄筋どうしをオーバーラップさせた状態に配筋する下側配筋作業を、それぞれの前記上側端面から延在して対向する前記上側鉄筋どうしの間に上側つなぎ鉄筋を配筋することで対向するそれぞれの前記上側鉄筋どうしを連結した状態にする上側配筋作業に先行して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、それぞれの前記プレキャストコンクリート部材の互いの前記対向端部が、前記上側端面と前記下側端面とを有するステップ状に形成されている。さらに、前記下側端面には横方向に間隔をあけて配列された多数の鉄筋接続部を有し、前記上側端面には横方向に間隔をあけて配列された多数本の上側鉄筋が相手側の前記対向端部に向かって突出して、その突出端が自分側の前記下側端面から所定長さ以上突出しない範囲に設定されている。そのため、前記対向端部どうしのすき間で、それぞれの前記鉄筋接続部を用いて、それぞれの前記対向端部から延在する前記下側つなぎ鉄筋どうしをオーバーラップした状態に配筋する下側配筋作業が先行して行われることで、前記上側鉄筋が下側配筋作業の障害物になって邪魔になることを回避できる。また、対向するそれぞれの前記上側鉄筋どうしを上側つなぎ鉄筋によって連結する上側配筋作業は、既に配筋されている下側つなぎ鉄筋の上方で行われるので、下側つなぎ鉄筋が障害物になって邪魔になることを回避できる。それ故、プレキャストコンクリート部材どうしを接続する際の配筋作業などの煩雑さが軽減されて、プレキャストコンクリート構造物をより効率的に構築するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のプレキャストコンクリート構造物の接続構造が適用された桟橋上部工を一部を切り欠いて平面視で例示する説明図である。
【
図3】
図2の近傍を平面視で拡大して例示する説明図である。
【
図4】梁の上面に配置された床版ユニットの対向端部周辺を側面視で例示する説明図である。
【
図6】
図4の対向端部に下側つなぎ鉄筋が配筋された状態を側面視で例示する説明図である。
【
図8】
図6の梁の上面にスタッドが突設され、下側鉄筋に幅方向鉄筋が配筋された状態を側面視で例示する説明図である。
【
図10】
図8の上側鉄筋の間に上側つなぎ鉄筋が配筋された状態を側面視で例示する説明図である。
【
図12】
図10の上側鉄筋に幅方向鉄筋が配筋された状態を側面視で例示する説明図である。
【
図14】
図12のそれぞれの床版ユニットの対向端部どうしのすき間にコンクリートが打設された状態を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のプレキャストコンクリート構造物の構築方法およびその接続構造を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
本発明の対象となるプレキャストコンクリート構造物は様々であるが、この実施形態では
図1~
図3に示すように桟橋上部工1を構成する床版3を例にして説明する。この床版3は、間隔をあけて水底地盤に立設された杭2aに支持された梁2の上に構築されている。この実施形態では梁2は平面視で格子状になっている。尚、プレキャストコンクリート構造物(床版3)は、地盤に載置した状態で梁2と同時に構築されることもある。
【0012】
床版3は、プレキャストコンクリート部材である複数の床版ユニット4と、それぞれの床版ユニット4の対向端部5どうしのすき間に配筋された多数本の鉄筋9、10と、このすき間に打設されて多数本の鉄筋9、10が埋設されて固化した現場打ちコンクリート部分14とを有している。床版ユニット4のそれぞれの対向端部5は、杭2aに支持された梁2の上面に載置されている。現場打ちコンクリート部分14は、梁2の上方に位置している。図面では、平面視で格子状の一方の梁2の延在方向を、床版ユニット4の長手方向として矢印Lで示し、長手方向Lに直交する方向を幅方向として矢印Wで示している。また、床版ユニット4の高さ方向を矢印Hで示している。
【0013】
床版ユニット4には、長手方向Lに延在する多数本の下側鉄筋9が幅方向Wに間隔をあけて埋設されている。また、配列された多数本の下側鉄筋9の上方に間隔をあけて、長手方向Lに延在する多数本の上側鉄筋10が幅方向Wに間隔をあけて埋設されている。
図1~
図3には記載されていないが、さらに、これら下側鉄筋9、上側鉄筋10に交差して幅方向Wに延在する多数本の幅方向鉄筋が長手方向Lに間隔をあけて埋設されている。現場打ちコンクリート部分14には、下側つなぎ鉄筋9a、上側鉄筋10、上側つなぎ鉄筋11および幅方向鉄筋12a、12bが埋設されている。下側つなぎ鉄筋9aは鉄筋接続部8を介して下側鉄筋9に連結されている。尚、幅方向Wにおける現場打ちコンクリート部分14での鉄筋の接続方法も同様となる。長手方向Lに対向する上側鉄筋10どうしは上側つなぎ鉄筋11によって連結されている。床版3の接続構造は、この床版3を構築する手順の一例の説明とともに詳述する。
【0014】
この床版3を構築するには、まず、クレーン等を用いて、
図4、
図5に例示するように床版ユニット4の対向端部5を梁2の上面に載置して、それぞれの床版ユニット4を梁2の上に配置する。これにより、それぞれの床版ユニット4を互いの対向端部5を対向させてすき間をあけて配置する。
【0015】
床版ユニット4のそれぞれの対向端部5は、上側端面7とこの上側端面7よりも長手方向Lに突出した下側端面6とを有するステップ状に形成されている。即ち、それぞれの下側端面6は、自分側の上側端面7よりも相手側の対向端部5に向かう方向に突出している。下側端面6の上側端面7からの突出長さは、床版ユニット4に埋設する鉄筋の径(太さ)によって異なるが、例えば50cm~100cm程度である。対向する下側端面6どうしのすき間は、例えば50cm~100cm程度である。
【0016】
下側端面6には幅方向Wに間隔をあけて一列に配列された多数の鉄筋接続部8が設けられている。それぞれの鉄筋接続部8は、床版ユニット4に埋設された下側鉄筋9に接続されている。鉄筋接続部8には例えば公知の機械式継手を用いることができる。
【0017】
上側端面7には幅方向Wに間隔をあけて一列に配列された多数本の上側鉄筋10が長手方向Lに突出している。即ち、床版ユニット4に埋設された上側鉄筋10が上側端面7から突出して、対向する相手側の対向端部5に向かう方向に延在している。これら上側鉄筋10の突出端は、自分側の下側端面6から長手方向Lに所定長さ(例えば10cm程度)以上突出しない範囲に設定されている。この実施形態では、上側鉄筋10は自分側の下側端面6の位置まで延在せずに、その突出端は下側端面6から長手方向Lに若干後退した位置に設定されている。上側鉄筋10の突出端は、自分側の下側端面6よりも長手方向Lに突出した位置に設定することもできるが、突出し過ぎると後述する配筋作業の邪魔になる。そのため、上側鉄筋10の突出端は自分側の下側端面6から突出させないことが好ましく、例えばその下側端面6の近傍に設定する。
【0018】
この実施形態では、上側鉄筋10の上側端面7から突出した部分に、補強用鉄筋として幅方向Wに延在する幅方向鉄筋12bが予め配筋されている。この幅方向鉄筋12bは、床版ユニット4を梁2の上に配置した後に配筋することもできる。この実施形態のように、床版ユニット4が梁2の上に配置される前に幅方向鉄筋12bが配筋されていると、梁2の上での作業を軽減するには有利になる。即ち、幅方向鉄筋12bは、それぞれの床版ユニット4を互いの対向端部5どうしのすき間をあけて配置する前に、工場や現場の作業ヤードなどで予め配筋しておくとよい。
【0019】
次いで、上側配筋作業に先行して下側配筋作業を行う。下側配筋作業では
図6、
図7に例示するように、それぞれの床版ユニット4のそれぞれの鉄筋接続部8に下側つなぎ鉄筋9aを接続して、他方の床版ユニット4の対向する対向端部5に向かって延在させる。これにより、それぞれの床版ユニット4の下側端面6の鉄筋接続部8から延在させた下側つなぎ鉄筋9aどうしを長手方向Lにオーバーラップさせた状態に配筋する。鉄筋接続部8に接続して延在させた下側つなぎ鉄筋9aの先端部には機械式定着具(例えば拡径部材であるエンドバンドなど)が取り付けられている。それぞれの下側つなぎ鉄筋9aは現場打ちコンクリート部分14で定着する。
【0020】
この実施形態では、それぞれの床版ユニット4の対向するそれぞれの鉄筋接続部8どうしが幅方向Wにオフセットされた(ずらされた)配置になっている。そのため、それぞれの対向端部5から延在して互いが長手方向Lにオーバーラップされた状態になる下側つなぎ鉄筋9aどうしが干渉することなく配筋作業が行えるので、作業の円滑化には有利になっている。それぞれの下側つなぎ鉄筋9aどうしのオーバーラップ長さPは、対向する下側端面6どうしのすき間Gの例えば50%以上90%以下にする。
【0021】
次いで、
図8、
図9に例示するように、梁2の上面に梁2と現場打ちコンクリート部分14の一体性を確保するため、必要に応じて、金属突出物として例えばスタッド13を打ち込んで突設する。下側つなぎ鉄筋9aを配筋する前に予めスタッド13を突設しておくこともできるが、このような作業手順にすることで、既に配筋された下側つなぎ鉄筋9aに干渉させることなく、適切な位置にスタッド13を突設することができる。しかも、下側つなぎ鉄筋9aを配筋する際には、梁2の上面にはスタッド13やスターラップなどの金属突出物13が突出していない状態なので、作業者の移動などの動作に対する障害物がなく、下側つなぎ鉄筋9aの配筋作業を円滑に行うには一段と有利になる。
【0022】
また、補強用鉄筋として、配筋した下側つなぎ鉄筋9aに交差するように幅方向Wに延在する幅方向鉄筋12aを、長手方向Lに間隔をあけて配筋する。スタッド13の突設作業は、この幅方向鉄筋12aを配筋した後に行うこともできる。この実施形態のようにそれぞれの床版ユニット4を互いの対向端部5どうしのすき間をあけて配置した時に、すき間に対応する設置面(梁2の上面)には、後施工で打設されるコンクリートに埋設される金属突出物13が無い状態にしておくことが望しい。スタッド13は、下側つなぎ鉄筋9aを配筋してから後述する上側つなぎ鉄筋11を配筋するまでの間に突設するとよい。必要に応じてその他の鉄筋などを配筋して下側配筋作業が完了する。下側配筋作業は、上側鉄筋10や上側つなぎ鉄筋11などが存在しないオープンスペースで行えるので、作業の煩雑さが大幅に軽減する。
【0023】
次いで、
図10、
図11に例示する上側配筋作業では、それぞれの床版ユニット4のそれぞれの上側端面7から突出して対向している上側鉄筋10どうしの間に上側つなぎ鉄筋11を配筋する。これにより、上側端面7から突出して対向する上側鉄筋10どうしを、上側つなぎ鉄筋11を介して連結した状態にする。
【0024】
この実施形態では、上側つなぎ鉄筋11によって連結されるそれぞれの上側鉄筋10どうしが、床版ユニット4の幅方向Wおよび上下方向Hに一致した配置になっている。そのため、上側つなぎ鉄筋11をそれぞれの上側鉄筋10に容易に接続することができるので、円滑に配筋作業を行うには有利になっている。
【0025】
次いで、
図12、
図13に例示するように、補強用鉄筋として、配筋した上側つなぎ鉄筋11に交差するように幅方向Wに延在する幅方向鉄筋12bを、長手方向Lに間隔をあけて配筋する。必要に応じてその他の鉄筋などを配筋して上側配筋作業が完了する。
【0026】
下側配筋作業は上側配筋作業に先行して行うが、すべての下側配筋作業が完了した後に上側配筋作業を開始するだけではなく、すべての下側配筋作業が完了する前に上側配筋作業の一部を開始してもよい。例えば、下側つなぎ鉄筋9aを既に延在させた領域の上方では、上側配筋作業を開始することができる。
【0027】
次いで、それぞれの対向端部5どうしのすき間にコンクリートを打設して、
図14、
図15に例示するように、対向する対向端部5どうしのすき間に配筋された下側つなぎ鉄筋9a、上側鉄筋10、上側つなぎ鉄筋11、幅方向鉄筋12a、12b、スタッド13を現場打ちコンクリート部分14に埋設する。打設するコンクリートは一般的な仕様でもよいし、強靭化した特別な仕様でもよい。
【0028】
現場打ちコンクリート部分14が固化することで、対向して隣り合う床版ユニット4どうしが現場打ちコンクリート部分14を介して強固に接続されて一体化する。現場打ちコンクリート部分14は梁2に対しても強固に接合されて、梁2の上に床版3が構築される。
【0029】
上述したように、それぞれの床版ユニット4の対向端部5がそれぞれ、上下二段のステップ状に形成されている。さらに、下側端面6には幅方向Wに配列された多数の鉄筋接続部8を有し、上側端面7には幅方向Wに配列された多数本の上側鉄筋10が長手方向Lに突出して、その突出端が自分側の下側端面6から所定長さ以上突出しない範囲に設定されている。そのため、下側配筋作業を上側配筋作業に先行して行うことで、上側鉄筋10が障害物になって下側配筋作業の邪魔になることが回避されて、円滑に下側配筋作業を行うことができる。また、上側鉄筋10どうしを上側つなぎ鉄筋11によって連結する上側配筋作業は、既に配筋された下側つなぎ鉄筋9aの上方で行うので、下側つなぎ鉄筋9aが障害物にならずに円滑に行うことができる。
【0030】
床版ユニット4の対向端部5どうしのすき間は限定された狭いスペースであり、しかも、多数本の鉄筋を配筋するのは非常に煩雑な作業になる。ところが、本発明によれば、床版ユニット4の対向端部5の構造を工夫するとともに、下側配筋作業と上側配筋作業の手順を工夫することで、上述したように、床版ユニット4どうしを接続する際の作業の煩雑さが軽減されて、床版3をより効率的に構築することが可能になる。
【0031】
上述した実施形態では、同じ形態の床版ユニット4どうしを接続しているが、本発明では、接続される一方のプレキャストコンクリート部材と他方のプレキャストコンクリート部材とは異なる形状でもよい。また、接続されるそれぞれのプレキャストコンクリート部材の平面視形状は、長方形に限らず、正方形やその他の多角形、円形、楕円形など種々の形状を採用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 桟橋上部工
2 梁
2a 杭(支持体)
3 床版
4 床版ユニット(プレキャストコンクリート部材)
5 対向端部
6 下側端面
7 上側端面
8 鉄筋接続部
9 下側鉄筋
9a 下側つなぎ鉄筋
10 上側鉄筋
11 上側つなぎ鉄筋
12a、12b 幅方向鉄筋(補強用鉄筋)
13 スタッド(金属突出物)
14 現場打ちコンクリート部分