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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】男性用の一時的避妊装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 6/22 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
A61F6/22
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020027022
(22)【出願日】2020-02-20
(62)【分割の表示】P 2017121959の分割
【原出願日】2009-10-09
(65)【公開番号】P2020078582
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】0802137-0
(32)【優先日】2008-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】61/227,810
(32)【優先日】2009-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517409413
【氏名又は名称】インプランティカ・パテント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フォーセル,ピーター
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159141(JP,A)
【文献】米国特許第03817237(US,A)
【文献】特開平03-123543(JP,A)
【文献】特開2008-006275(JP,A)
【文献】特開昭50-045497(JP,A)
【文献】特開昭60-116349(JP,A)
【文献】特開昭50-037299(JP,A)
【文献】特開昭50-001591(JP,A)
【文献】国際公開第01/012108(WO,A1)
【文献】特表2002-517277(JP,A)
【文献】国際公開第01/054615(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 6/00 - A61F 6/24
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下移植用に構成された制御デバイスであって、前記制御デバイスは、精管の一時的制限のために締め付けデバイスを制御するよう構成され、それによって精子が尿道に到達するのを一時的に防止し、時間を限定した不妊を提供し、前記制御デバイスは:
a.無線エネルギー受信可能な無線エネルギー受信器、
b.前記締め付けデバイスにエネルギーを供給可能なエネルギー供給ユニット、
c.患者の体の外に位置する遠隔制御装置からの制御信号受信可能な遠隔制御受信機
を備える制御デバイス。
【請求項2】
前記エネルギー供給ユニットは、受信した無線エネルギーを第1の形態から第2の形態のエネルギーに変換可能に構成される、請求項1に記載の制御デバイス。
【請求項3】
前記第2の形態のエネルギーは電気エネルギーである、請求項2に記載の制御デバイス。
【請求項4】
前記エネルギー供給ユニットは、前記締め付けデバイスを作動するために、前記電気エネルギーを前記締め付けデバイスの作動デバイスに供給するように構成されている、請求項3に記載の制御デバイス。
【請求項5】
前記作動デバイスは、前記締め付けデバイスを機械式に作動させるための機械式作動デバイスである、請求項4に記載の制御デバイス。
【請求項6】
前記作動デバイスは、前記締め付けデバイスを液圧式に作動させるための液圧式作動デバイスである、請求項4に記載の制御デバイス。
【請求項7】
記電気エネルギーは、アキュムレータを充填するために少なくとも部分的に使用される、請求項3に記載の制御デバイス。
【請求項8】
前記患者の体の外からプログラム可能に構成される、請求項1からのいずれか1項に記載の制御デバイス。
【請求項9】
記患者の身体的パラメータまたは前記制御デバイスまたは前記締め付けデバイスの関数パラメータを感知するためのセンサを更に備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の制御デバイス。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の制御デバイス、
精管を一時的制限し、それによって精子が尿道に到達するのを一時的に防止し、時間を限定した不妊を提供する締め付けデバイスを備え、
前記締め付けデバイスは、前記締め付けデバイスを作動するための作動デバイスを備える、システム。
【請求項11】
前記エネルギー供給ユニットは、受信した無線エネルギーを第1の形態から第2の形態のエネルギーに変換可能に構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2の形態のエネルギーは、電気エネルギーである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記エネルギー供給ユニットは、前記電気エネルギーを前記作動デバイスに供給するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記作動デバイスは、前記締め付けデバイスを機械式に作動させるための機械式作動デバイスである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記作動デバイスは、前記締め付けデバイスを液圧式に作動させるための液圧式作動デバイスである、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記作動デバイスは、液圧流体をポンプするためのポンプを備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記作動デバイスは、液圧流体を保持するリザーバを備え、前記リザーバからの液圧流体の輸送は、精管を制限するように前記締め付けデバイスを起動し、液圧流体を前記リザーバに戻す輸送は、精管を開放するように前記締め付けデバイスを停止する、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記作動デバイスは、液圧流体の供給のための注入ポートを備える、請求項15から17のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、制御された一時的な期間に精管を閉じるように動作する、男性用の避妊システムおよび避妊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
男性の避妊の一般的手法は精管(精子を輸送する管)を閉塞することである。精管切除法は、精管を切断するための外科的介入であり、最も多くの場合に永続的不妊に限定される。最近では、精管に挿入し封止効果を得るようにデバイスを形成することによる他の代替方法が利用可能になっている。こうした技法の1つが、精管に挿入するための1組のシリコン・プラグに関する米国特許第6513528号に記載されている。しかし、この技術は個人の生殖能力を回復させる可能性を示していても、精子の抗体の形成などの副作用にも関連する。したがって、身体機能への影響を最小限に抑えつつ回復を可能にする、男性の避妊を制御する、より穏やかな技法が必要である。本発明の目的は、以下で概要を説明するように、精管の閉塞に基づいた男性の避妊をより安全で便利である、装置、システム、および方法にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6513528号
【発明の概要】
【0004】
概して、本発明は、雄の哺乳動物の個体を一時的に不妊にする男性用避妊装置に関するものである。その装置は、制御された期間に精管のうち膨大部の下流領域を制限するように適合された植込み可能な制限デバイスを備え、それにより、前記デバイスは精子が尿道に到達するのを防止する。その装置はさらに、制限デバイスの動作を制御する制御デバイスを備える。制限デバイスは、液圧式または機械式の締め付けデバイス、ならびに単独または任意の組合せで精管を一時的に制限するための刺激デバイスを備えることができる。
【0005】
この明細書では、精管の制限とは、外側から精管を操作することによって精子が尿道に到達するのを防止するようにして、精管の管腔が閉塞されることを意味する。用語「精管」は一方の精管または両方の精管を含むことができる。本発明による制御された精管の制限を説明するときは、「管腔」または「組織部分」または「身体器官」のような他の用語も使用されるが、こうした用語は機能的に同義語であると見なされるものとする。用語「膨大部」は、精管のうちの精嚢にぶつかる位置の近くの拡大部分を指す。
【0006】
用語「膨大部の下流」は、尿道および精嚢の方向において膨大部の後の位置を指す。したがって、「膨大部の上流」は、精巣に向かう方向で、精管のうち膨大部の前の位置を指すことになる。制限デバイスがこうした特定の領域で精管を制限するように適合されていることは、好ましくは、身体のこの領域に収容されるように設計されていることを意味する。
【0007】
精管のうち膨大部の下流の部分を制限することによって、本発明の装置は、膨大部に区分化して精子を遮蔽して、それにより、装置がすぐに避妊具の効果を与えることができることで、信頼できる一時的な不妊を可能にする。装置の主な使用が、性交中に制限デバイスを起動することによって、制御された一時的な期間精子の輸送を防止することであっても、例えば、本発明の特定の実施形態では、こうした輸送系に障害のある人を助けるために精管を通る精子の輸送を支援することも可能である。有利なことに、本発明は、制限が
必要な期間を非常に限られた期間に限定することが可能である。現行の治療は、安全になる少なくとも5日前には、つまり精子の生存期間は閉じる必要があり、したがって、精管が損傷するリスクがある。さらに、その装置は、望ましくない合併症を引き起こす可能性がある長期間の制限のせいでそれらの精子が精管に蓄積することを妨げる。
【0008】
制限デバイスは、膨大部の下流の特定の位置に非常に注意深く適合される。空間の大きさが限られており、要件は、前立腺と精管膨大部との間の領域への配置を可能にするのに特有のものである。膨大部が精子の貯留部を備えるので、性交中に精子が尿道に到達する可能性を防止するために下流領域で制限が行われる。関係があるときは、本発明による制限デバイスを、近接して位置する精嚢の出口管の制限を実現するように適合することもできる。この出口管を同時に制限することは、本発明によって得られる効果の1つと見るべきである。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、制限デバイスは、精管中の流れを止めるように精管の組織壁のうちの膨大部の下流の少なくとも一部分を締め付けるための締め付けデバイスを備える。そのために、装置は、調節可能な制限デバイスと、精管の壁部分の制限を変更するために調節可能な制限デバイスを機械式または液圧式に動作させるための動作デバイスとを備える。動作デバイスは、好ましくは、非磁気的および/または非手動で制限デバイスを動作させる。好ましくは、動作デバイスは、モータまたは倍力サーボ・システムなど、電動の動作デバイスを備える。用語「倍力サーボ・システム」は、システムが、長いストロークを有する可動要素に作用する弱い力を、短いストロークを有する別の可動要素に強い力を作用させる伝達機構を含むことを意味する。一代替形態によれば、制限デバイスは、器官の異なる側部において患者の精管中の流れの方向に器官に沿って延びる細長いクランプ要素を少なくとも2つ具備する締め付けデバイスを備え、動作デバイスは、壁部分を締め付けるためにクランプ要素間で壁部分をクランプ留めするようにクランプ要素を動作させる。あるいは、動作デバイスは、液圧手段に動作可能に接続された制限デバイスおよび逆倍力(リバース)サーボを液圧式に調節する液圧手段を備えることができる。用語「逆倍力サーボ」は、短いストロークを有する可動要素に作用する強い力を、長いストロークを有する可動要素に作用する弱い力に伝達する機構として理解すべきである。好ましくは、逆倍力サーボは、液圧流体を含む少なくとも2つの植込み可能なリザーバを備え、好ましくは、第1のリザーバは皮下に植込み可能な調整リザーバである。逆倍力サーボはさらに、第2の植込み可能なサーボ・リザーバを備え、そのサーボ・リザーバは、好ましくは、調整リザーバと流動的接続している。一実施形態では、第2のサーボ・リザーバは、締め付けデバイスの拡大/収縮を直接制御する。別の実施形態では、サーボ・リザーバは、締め付けデバイスの拡大/収縮を間接的に制御し、逆倍力サーボはさらに第3のリザーバを備え、その第3のリザーバは、腹部または腹膜後腔もしくは骨盤領域に植え込まれるように適合され、締め付けデバイスを動作させるために前記第3のリザーバの液圧流体を移動させるために第2のサーボ・リザーバに動作可能に接続されている。適切には、第3のリザーバは第1のリザーバより容積が大きい。第3のリザーバは、締め付けデバイスと流動的接続することができ、サーボ・リザーバは、第3のリザーバを機械式相互接続で制御することができる。
【0010】
あるいは、制限デバイスは、膨張不能な機械式締め付けデバイスを備え、動作デバイスは、機械式締め付けデバイスを液圧式に調節する液圧手段を備える。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、制限デバイスは、精管中の流れに影響を及ぼすように前記壁部分を収縮させるように、精管の組織壁のうち膨大部の下流領域にある壁部分を刺激する刺激デバイスを備える。制御デバイスが、壁部分を刺激するように刺激デバイスを制御し、その制御デバイスは、好ましくは、刺激と共に使用するためのエネルギーを放出するために植込み可能なエネルギー源を制御するように、患者の体外から操作可能である
。刺激デバイスは、壁部分の異なる領域を刺激するように適合され、制御デバイスは、それらの壁部分の領域を間欠的かつ個別に刺激するように、刺激デバイスを制御する。器官の壁部分の異なる領域をこのように間欠的かつ個別に刺激すると、壁部分の組織が、本発明の装置の動作中に事実上正常な血液循環を維持することが可能になる。刺激による制限を実現する様々な代替形態および有用な構成要素を以下に説明する。
【0012】
制限デバイスが上記で説明したような機械動作式または液圧動作式の締め付けおよび上記で説明したような刺激デバイスを備えることも本発明の実施形態である。制御デバイスは、精管の制限と組み合わせて締め付けデバイスおよび刺激デバイスを制御するように適合されている。
【0013】
本発明は膨大部を刺激する方法も実施し、その方法は、精管のうちの膨大部の下流の部分を制限する、刺激デバイスを有する、説明したような装置を採り入れるステップを含む。それにより、膨大部の逆流の刺激を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明は、前の段落で説明した任意の装置を含むシステムを備える。好ましい実施形態では、そのシステムは、装置を手動で非侵襲的に制御するための、患者に植込み可能な少なくとも1つのスイッチを備える。別の好ましい実施形態では、そのシステムは、装置を非侵襲的に制御する無線遠隔制御装置を備える。好ましい実施形態では、そのシステムは、装置を動作させるための液圧動作デバイスを備える。別の実施形態では、システムは、装置を動作させるためのモータまたはポンプを備える。そのシステムの他の構成要素を本明細書の詳細な部分でより詳細に説明する。
【0015】
刺激 神経組織または筋組織を刺激するときに、刺激が適切に行われない場合は、組織を徐々に損傷または悪化させるリスクがある。本発明の装置は、そうしたリスクを軽減し、さらに無くすように設計されている。したがって、本発明によれば、制御デバイスは、器官の壁部分の異なる領域を間欠的に刺激するように刺激デバイスを制御し、そのため、それらの領域のうちの少なくとも2つが異なる時点で刺激され、すなわち、ある領域から別の領域に刺激が徐々にシフトする。さらに、制御デバイスは、異なる領域のうちの現時点で刺激されていない領域が、刺激デバイスがその領域を再度刺激する前に事実上正常な血液循環を回復する時間を有するように、刺激デバイスを制御する。さらに、制御デバイスは、連続する期間に各領域を刺激するように刺激デバイスを制御し、各期間は、その期間が経過するまでその領域で十分な血液循環を維持するのに十分に短い。これは、器官を損傷するリスクなしに、器官の元々の物理的特性をある期間にわたって本質的に維持しながら、本発明の装置が、所望の流れの制御を実現するために器官の壁部分の連続する刺激を可能にするという利点をもたらす。
【0016】
さらに、上記で説明したように器官の刺激位置を徐々に物理的に変更することによって、所望の流れの制御を実現するために器官上の有利な刺激変化パターンを作り出すことが可能である。
【0017】
制御デバイスは、例えば異なる領域を順次刺激することによって、一度に壁部分の1つまたは複数の領域を刺激するように、刺激デバイスを制御することができる。さらに、制御デバイスは、好ましくは決められた刺激パターンに従って、壁部分に沿った領域の刺激が周期的に伝搬するように、刺激デバイスを制御することができる。組織壁を刺激する間にその所望の反応を実現するために、制御デバイスは、好ましくは周期的に、壁部分の刺激の強度が変更されるように、刺激デバイスを制御することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、制御デバイスは、好ましくはパルス列を形成するパルスで壁部分の領域が間欠的に刺激されるように、刺激デバイスを制御する。壁部分の領域
のうち少なくとも第1の領域および第2の領域を、第1および第2のパルス列が互いに対して徐々にシフトするようにそれぞれ第1のパルス列および第2のパルス列で繰り返し刺激することができる。例えば、第1の領域を第1のパルス列で刺激することができ、第2の領域を前記第2のパルス列で刺激せず、その逆も同様である。あるいは、第1および第2のパルス列は、第1および第2のパルス列が少なくとも部分的に互いに重なるように互いに対してシフトすることができる。
【0019】
多くの異なる方法でパルス列を構成することができる。したがって、制御デバイスは、パルス列のパルスの振幅、各パルス列の個々のパルスのデューティ・サイクル、パルス列の各パルスの幅、各パルス列の長さ、パルス列のパルスの繰り返し数、パルス列の繰り返し数、各パルス列のパルスの数、および/またはパルス列間のオフ期間が変更されるように、刺激デバイスを制御することができる。異なる構成の複数のパルス列を用いて所望の効果を実現することができる。
【0020】
制御デバイスが、壁部分のそれぞれの領域を刺激するパルス列間のオフ期間を変更するように刺激デバイスを制御する場合は、オフ期間中にその領域が刺激されないときに、その領域で事実上正常な血液循環が回復するのに十分に長く続くようにパルス列間の各オフ期間を制御することも可能である。
【0021】
電気刺激 本発明の好ましい実施形態によれば、刺激デバイスは、患者の身体器官の組織の壁部分を好ましくは電気パルスで電気的に刺激する電動の刺激デバイスである。この実施形態は、壁部分が電気刺激に反応する筋線維を含む用途に特に適している。この実施形態では、制御デバイスは、壁部分を収縮させるように壁部分が締め付けられた状態のときに、好ましくは電気パルス列の形態の電気パルスで壁部分を刺激するように、刺激デバイスを制御する。当然のことながら、電気パルス列の構成は上記で説明したパルス列と同様でよく、制御デバイスは、上記で説明したのと同様にして器官の壁の異なる領域を電気的に刺激するように、刺激デバイスを制御することができる。
【0022】
電気刺激デバイスは、電気パルスによって壁部分に係合しそれを刺激するための、少なくとも1つの、好ましくは複数の、電極などの電気素子を適切に備える。任意選択で、互いに固定した方向に電気素子を配置することができる。制御デバイスは、1回に1つの電気素子、または1回にいくつかの群の電気素子に電気的な付勢(エネルギーを供給)するように、電気刺激デバイスを制御する。好ましくは、制御デバイスは、電気パルスで各素子に周期的に付勢をするように、電気刺激デバイスを制御する。任意選択で、制御デバイスは、1回に1つの電気素子に順次付勢をするか、または複数の電気素子もしくはいくつかの群の電気素子に同時に付勢をするように、電気素子に付勢をするように、刺激デバイスを制御することができる。さらに、いくつかの群の電気素子に、ランダムにまたは所定のパターンに従って、順次付勢をすることができる。
【0023】
電気素子は、どんなパターンの電気素子も形成することができる。好ましくは、電気素子は、細長いパターンの電気素子を形成することができ、それらの電気素子は、細長いパターンの電気素子が器官の壁の長さに沿って延び、それらの素子が壁部分のそれぞれの領域に当接するように、患者の器官の壁に適用可能である。細長いパターンの電気素子は、器官の壁に沿って長さ方向に延びる1つまたは複数の列の電気素子を含むことができる。各列の電気素子は、直線、らせん、またはジグザグの経路の電気素子、あるいは任意の形態の経路を形成することができる。制御デバイスは、患者の管腔中の流れに対して反対方向、または同じ方向に、長手方向に細長いパターンの電気素子に沿って電気素子が順次に付勢されるように、刺激デバイスを制御することができる。
【0024】
任意選択で、制御デバイスは、締め付けられた壁部分の事実上中心の位置から細長いパ
ターンの電気素子の両端に向かって電気素子に連続的に付勢をするように刺激デバイスを制御することができる。器官の管腔を比較的長い時間閉じたままにすべき場合は、制御デバイスは、付勢をされる電気素子が、付勢をされる電気素子の2つの波を形成するように電気素子の付勢がされるように、刺激デバイスを制御することができ、それらの波は、締め付けられた壁部分の中心から2つの反対の方向に細長いパターンの電気素子の両端に向かって同時に前進する。器官を傷つけることなしに、器官の管腔の任意の方向に流体またはガスを移動させることなしに、付勢をされる電気素子のこうした波を何度も繰り返すことができる。
【0025】
制御デバイスは、現時点でエネルギーが供給されている電気素子が、互いに隣接する付勢をされる電気素子の少なくとも1つの群を形成するように、電気素子に付勢をするように、刺激デバイスを適切に制御する。第1の代替形態によれば、付勢をされる電気素子群の素子は、付勢をされる電気素子の1つの経路を形成する。付勢をされる電気素子の経路は、患者の器官の周りを少なくとも部分的に延びることができる。第2の代替形態では、付勢をされる電気素子群の素子は、好ましくは器官の管腔中の流れの方向を事実上横切る、患者の器官の互いの側部で延びる、付勢をされる電気素子の2つの経路を形成することができる。第3の代替形態では、付勢をされる電気素子群の素子は、好ましくは患者の管腔中の流れの方向を事実上横切る、患者の器官の異なる側部を延びる、付勢をされる電気素子の3つ以上の経路を形成することができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、電気素子は、素子の複数の群を形成し、それらの群は、患者の管腔中の流れの方向で患者の器官に沿って延びる一連の群を形成する。各電気素子群の電気素子は、患者の器官の周りを少なくとも部分的に延びる素子の経路を形成することができる。第1の代替形態では、各電気素子群の電気素子は、好ましくは患者の管腔中の流れの方向を事実上横切る、患者の器官の異なる側部を延びる、素子の3つ以上の経路を形成することができる。制御デバイスは、一連の群のうちいくつかの電気素子群に、ランダムにまたは所定のパターンに従って付勢をするように、刺激デバイスを制御することができる。あるいは、制御デバイスは、締め付けられた壁部分の事実上中心の位置から開始して、患者の管腔中の流れに対して反対方向、または同一の方向に、または前記方向の両方に、一連の群のうちのいくつかの群の電気素子に順次的な付勢をするように、刺激デバイスを制御することができる。例えば、いくつかの群の付勢をされる電気素子は、上記で説明したように付勢をされる電気素子の前進する波を形成することができ、すなわち、制御デバイスは、付勢をされる電気素子が、締め付けられる壁部分の中心から2つの反対の方向に電気素子の細長いパターンの両端に向かって同時に前進する、付勢をされる電気素子の2つの波を形成するように、いくつかの群の電気素子に付勢をする刺激デバイス制御することができる。
【0027】
固定した方向に電気素子を保持する構造を設けることができる。その構造は締め付けデバイスとは別個でよいが、締め付けデバイスと一体であることが好ましく、これは、実用的な設計であり、締め付けデバイスおよび刺激デバイスの植込みを容易にする。電気素子が細長いパターンの電気素子を形成する場合は、その構造は、細長いパターンの電気素子が、患者の管腔中の流れと同一の方向に器官に沿って延び、素子が器官の壁部分のそれぞれの領域に当接するように患者の器官に適用可能であってよい。
【0028】
熱刺激 本発明の別の実施形態では、刺激デバイスは器官の壁部分を熱刺激する。したがって、制御デバイスは、壁部分の収縮を引き起こすために、壁部分が締め付けられているときに壁部分が冷却されるように、刺激デバイスを制御することができる。例えば、締め付けデバイスは、管腔中の流れを少なくとも制限するように壁部分を締め付けることができ、制御デバイスは、管腔中の流れが、少なくともさらに制限されるか、またはさらに制限されるが停止しないか、または停止するように、締め付けられた壁部分を冷却してそ
の収縮を引き起こすように、刺激デバイスを制御することができる。あるいは、制御デバイスは、壁部分を拡大するために、壁部分が締め付けられ収縮するときに壁部分を加熱するように、刺激デバイスを制御することができる。壁部分が血管を含む場合は、制御デバイスは、血管を冷却して収縮するように、または血管を加熱して拡大させるように、刺激デバイスを制御することができる。適用可能な場合は、本発明のどの実施形態でも熱刺激を実行することができ、様々なセンサ、例えば歪みセンサ、運動センサ、または圧力センサに応答して熱刺激を制御することができる。
【0029】
センサ制御された締め付けデバイスおよび/または刺激デバイス 上記で言及したように、装置は、少なくとも1つの植込み可能なセンサを備えることができ、制御デバイスは、締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスをセンサからの信号に応答して制御する。概して、センサは、患者の少なくとも1つの物理的パラメータ、または装置の少なくとも1つの関数パラメータ、または患者の医療用移植片の少なくとも1つの関数パラメータを直接または間接的に感知する。
【0030】
物理的パラメータを感知する多くの種類のセンサを使用することができる。例えば、器官の動き、すなわち、胃や腸の収縮など、自然な収縮を感知する感知する運動センサ、器官中の圧力を感知する圧力センサ、器官の歪みを感知する歪みセンサ、器官の管腔中の流体の流れを感知するフロー・センサ、分光測光センサ、器官の管腔中の流体の酸性度またはアルカリ度を感知するPhセンサ、器官の管腔中の流体の酸素含有量を感知する酸素センサ、あるいは刺激される器官への刺激の分配を感知するセンサ。任意の他の種類の有用な物理的パラメータを感知する、任意の予想されるセンサを使用することができる。
【0031】
締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスを制御するために、装置の関数パラメータを感知する多くの種類のセンサを使用することもできる。例えば、装置の植込み式電気構成要素の電気的パラメータを感知するセンサ、または装置の植込み式モータの動作を感知するセンサ。
【0032】
センサは、患者の身体器官の管腔中の圧力に関係する患者の身体の圧力を物理的パラメータとして感知する圧力センサを備えることができ、制御デバイスは、測定した圧力の所定の値を感知する圧力センサに応答して患者の壁部分の締め付けを変更するように、締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスを制御する。
【0033】
あるいは、または圧力センサと組み合わせて、水平に対する患者の向きを物理的パラメータとして感知する位置センサを設けることができる。位置センサは、米国特許第4942668号および第5900909号に示すセンサを生体適合性にしたセンサでよい。例えば、制御デバイスは、患者が事実上水平方向であると想定していることを、すなわち患者が横たわることを、位置センサが感知するのに応答して、患者の壁部分の締め付けを変更するように、締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスを制御することができる。
【0034】
適用可能な場合は本発明のどの実施形態でも上記で説明したセンサを使用することができる。
【0035】
制御デバイスは、時刻に応答して患者の壁部分の締め付けを変更するように、締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスを制御することができる。そのためには、制御デバイスは、異なる期間中の管腔中の流れへの影響を増大または減少させるために患者の壁部分の締め付けを変更するように、締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスを制御するための計時機構を含むことができる。物理的パラメータまたは関数パラメータを感知するための上記で説明したタイプの任意のセンサが設けられる場合は、センサによって感知されたパラメータが計時機構を超越しない場合に、締め付けデバイスおよび/または刺激
デバイスを制御する計時機構が使用されるか、あるいは計時機構がセンサを超越しない場合に、締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスを制御するセンサが使用される。適切には、制御デバイスは、センサからの信号に応答して音響信号またはディスプレイされる情報などの表示を作る。
【0036】
制御デバイスは、センサからの信号に応答して締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスを直接制御する、植込み可能な体内制御ユニットを備えることができる。その制御デバイスはさらに、患者を機械によって穿孔することなしに、患者の体外から体内制御ユニットの制御パラメータを設定するように適合された無線遠隔制御装置を備えることができる。無線遠隔制御装置によって設定可能な制御パラメータのうちの少なくとも1つは、物理的パラメータまたは関数パラメータである。適切には、体内制御ユニットは、上記で言及した計時機構を含み、無線遠隔制御装置は、やはり計時機構を設定するように適合される。
【0037】
あるいは、制御デバイスは、センサからの信号に応答して締め付けデバイスおよび/または刺激デバイスを制御する体外制御ユニットを患者の体外に備えることができる。
【0038】
次に、添付の図面を参照しながら非限定的な例によって本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A】人体に植え込まれた本発明による装置を概略的に示す。
図1B】人体に植え込まれた本発明による装置を概略的に示す。
図1C】人体に植え込まれた本発明による装置を概略的に示す。
図1D】人体に植え込まれた本発明による装置を概略的に示す。
図1E】人体に植え込まれた本発明による装置を概略的に示す。
図1F】人体に植え込まれた本発明による装置を概略的に示す。
図1G】患者に植え込まれた図1Aから図1Fのいずれかの装置を含む、疾患を治療するシステムを示す。
図2図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図3図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図4図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図5図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図6図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図7図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図8図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図9図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図10図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図11図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図12図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図13図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図14図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図15図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図16図1A図1Fに示す装置に無線で動力を供給するシステムの様々な実施形態を概略的に示す。
図17図2に示す装置の動作のために使用される正確な量の付勢をする機構を示す概略ブロック図である。
図18】ワイヤ接続されたエネルギーによって装置が動作する、システムの実施形態を概略的に示す。
図19図2に示す装置の動作のために使用される無線エネルギーの伝送を制御する機構のより詳細なブロック図である。
図20】可能な実装例による図19に示す機構のための回路である。
図21】患者に植え込まれた装置の液圧または空気圧による動力供給を行う様々な方法を示す。
図22】患者に植え込まれた装置の液圧または空気圧による動力供給を行う様々な方法を示す。
図23】患者に植え込まれた装置の液圧または空気圧による動力供給を行う様々な方法を示す。
図24】患者に植え込まれた装置の液圧または空気圧による動力供給を行う様々な方法を示す。
図25】患者に植え込まれた装置の液圧または空気圧による動力供給を行う様々な方法を示す。
図26】患者に植え込まれた装置の液圧または空気圧による動力供給を行う様々な方法を示す。
図27】患者に植え込まれた装置の液圧または空気圧による動力供給を行う様々な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1Aは、図1Bに示す男性の避妊装置の概略図である。図1Bの装置100は、精管200A、200B(両方の精管)のうちの精管の膨大部の下流部分の制限を示す。それにより、その装置は、尿道に到達するのを一時的に防止し、時間を限定した不妊を実現するように動作可能である。装置100は、機械式または液圧式に精管を締め付けるように適合された制限デバイス120と、概略的に示した動作デバイス170によって動作するように制限デバイスの動作を制御する制御デバイス150とを有する。制御デバイス150は、皮下に配置され、体外部分および体内部分を含む。エネルギー供給ユニット(エネルギー伝送デバイス)180が、無線で伝送されるエネルギーを有するデバイスをエネルギー変換デバイス151に供給可能であり、エネルギー変換デバイス151は、装置のエネルギー消費部分に付勢をするためのエネルギー源152に接続されている。体外遠隔制御装置ユニット190は、制御デバイス150、制御デバイスの体内制御ユニット153と通信可能である。制御デバイス150の体外部分150Aは、締め付けが液圧動作式のときの液圧流体の供給のための注入ポートなど、体外の動作に必要な機能と、制限デバイスを動作させるための起動/停止ボタンとを含む。制御デバイス150Bの体内部分は、制限デバイス120を制御し動作させるのに必要な機能を複数含むことができる。液圧動作式の制限デバイス120では、制御デバイス150は、液圧流体(図示せず)のリザーバ上で動作可能なポンプ154を含むことができ、それにより、リザーバから流体を輸送すると、精管を制限するように制限デバイスが起動し、リザーバに戻すように輸送すると、精管を解放するように制限デバイスが停止する。図1Cに、制御デバイスなしの図1B
の装置を示す。制限デバイス120は、図1Bと同じタイプのものであるが、ここでは、精管および精嚢の出口管の両方を制限するように適合されている。図1D図1Bまたは図1Cの装置を示し、これは、改変型の制限デバイス120Aが刺激デバイスを両方の精管に対して動作させている。刺激デバイスは、ここでは、1組の電極によって表されている。図1Eに、図1Bまたは図1Cの装置を示し、制限デバイスが、制御デバイスによって制御される刺激デバイス120Aおよび締め付けデバイス120Bを備え、それらの作用を組み合わせることによって両方の精管が制限される。一実施形態では、締め付けデバイス120Bは、精管を締め付けるようにリザーバ上で動作するポンプによって手動で動作し、制御デバイスによって動作する刺激デバイスは、精子の輸送をブロックする効果を得るために精管を刺激する。図1Fに、図1Bの装置の別の変形形態を示す。制限デバイス120は締め付けデバイスを2つ含み、各締め付けデバイスは、精子および精液の両方の流れを止めるためにそれぞれ精管および精嚢の出口管を締め付けるように適合されている。本発明の制御デバイスおよび他の部分の機能を、以下で図1Gから図27Cと一緒にさらに説明する。
【0041】
図1Gに、本発明の装置10が患者の腹部に配置された、疾患を治療するためのシステムを示す。植込み式エネルギー変換デバイス302が、装置のエネルギー消費構成要素に動力供給ライン303を介して付勢をするように適合されている。装置10に非侵襲的にエネルギー供給する体外エネルギー伝送デバイス304が、少なくとも1つの無線エネルギー信号によってエネルギーを伝送する。植込み式エネルギー変換デバイス302は、無線エネルギー信号からのエネルギーを動力供給ライン303に供給される電気エネルギーに変換する。
【0042】
無線エネルギー信号は、音波信号、超音波信号、電磁波信号、赤外線信号、可視光信号、紫外線信号、レーザ光線信号、マイクロ波信号、電波信号、x線照射信号、およびガンマ線照射信号から選択された波動信号を含むことができる。あるいは、無線エネルギー信号は、電場もしくは磁場、または電場と磁場の組合せを含むことができる。
【0043】
無線エネルギー伝送デバイス304は、無線エネルギー信号を搬送するための搬送信号を伝送することができる。こうした搬送信号は、デジタル信号、アナログ信号、またはデジタル信号とアナログ信号の組合せを含むことができる。その場合は、無線エネルギー信号は、アナログ信号またはデジタル信号、あるいはアナログ信号とデジタル信号の組合せを含む。
【0044】
概略的には、エネルギー変換デバイス302が、エネルギー伝送デバイス304によって伝送される第1の形態の無線エネルギーを、典型的には第1の形態のエネルギーとは異なる第2の形態のエネルギーに変換するために設けられる。植込み式装置10は、第2の形態のエネルギーに応答して動作可能である。エネルギー変換デバイス302は、エネルギー伝送デバイス304によって伝送される第1の形態エネルギーを第2の形態エネルギーに変換するときに、第2の形態エネルギーで装置に直接電力を供給することができる。そのシステムはさらに、植込み可能なアキュムレータを含むことができ、アキュムレータを充填するために第2の形態エネルギーが少なくとも部分的に使用される。
【0045】
あるいは、エネルギー伝送デバイス304によって伝送される無線エネルギーを使用して、無線エネルギーがエネルギー伝送デバイス304によって伝送されているときに、装置に直接電力を供給することができる。そのシステムが、以下に詳細に説明するように、装置を動作させるための作動デバイスを備える場合は、エネルギー伝送デバイス304によって伝送される無線エネルギーを使用して、作動デバイスに直接電力を供給して、装置の動作のための運動エネルギーを生み出すことができる。
【0046】
第1の形態の無線エネルギーは音波を含むことができ、エネルギー変換デバイス302は、音波を電気エネルギーに変換するための圧電素子を含むことができる。第2の形態のエネルギーは、直流もしくは脈動直流電流または直流と脈動直流電流の組合せ、あるいは交流または直流と交流の組合せの形態の電気エネルギーを含むことができる。通常、装置は、電気エネルギーでエネルギー供給される電気構成要素を備える。システムの他の植込み可能な電気構成要素は、装置の電気構成要素に接続された少なくとも1つの電圧レベル・ガードまたは少なくとも1つの定電流ガードでよい。
【0047】
任意選択で、第1の形態のエネルギーおよび第2の形態のエネルギーの一方は、磁気エネルギー、運動エネルギー、音響エネルギー、化学エネルギー、放射エネルギー、電磁エネルギー、光エネルギー、原子エネルギー、または熱エネルギーを含むことができる。好ましくは、第1の形態のエネルギーおよび第2の形態のエネルギーの一方は、非磁気、非運動、非化学、非音響、非原子力、または非熱である。
【0048】
電磁気の無線エネルギーを放出するようにエネルギー伝送デバイスを患者の体の外から制御することができ、放出された電磁気の無線エネルギーは装置を動作させるために使用される。あるいは、エネルギー伝送デバイスは、非磁気無線エネルギーを放出するように患者の体の外から制御され、放出された非磁気無線エネルギーは装置を動作させるために使用される。
【0049】
体外エネルギー伝送デバイス1004は無線遠隔制御装置も含み、その無線遠隔制御装置は、装置を非侵襲的に制御するための無線制御信号を伝送する体外信号伝送器を有する。制御信号は植込み式信号受信器によって受信され、その信号受信器は、植込み式エネルギー変換デバイス1002に組み込まれてもよく、それとは別個でもよい。
【0050】
無線制御信号は、周波数、振幅、もしくは位相を変調した信号、またはそれらの組合せを含むことができる。あるいは、無線制御信号は、アナログ信号もしくはデジタル信号、またはアナログ信号とデジタル信号の組合せを含む。あるいは、無線制御信号は、電場もしくは磁場、または電場と磁場の組合せを含む。
【0051】
無線遠隔制御装置は、無線制御信号を搬送する搬送信号を伝送することができる。こうした搬送信号は、デジタル信号、アナログ信号、またはデジタル信号とアナログ信号の組合せを含むことができる。制御信号がアナログ信号もしくはデジタル信号、またはアナログ信号とデジタル信号の組合せを含む場合は、無線遠隔制御装置は、好ましくは、デジタル制御信号またはアナログ制御信号を搬送する電磁気の搬送波信号を伝送する。
【0052】
図2に、より概略的なブロック図の形態で図1Gのシステムを示し、この図は、装置10と、動力供給ライン303を介して装置10に動力を供給するエネルギー変換デバイス302と、体外エネルギー伝送デバイス304を示す。垂直の線で概略的に示す患者の皮膚305により、線の右側の患者の体内が線の左側の患者の体外から分けられている。
【0053】
図3に、例えば極性エネルギーによって動作可能な電気スイッチ306の形態の反転デバイスも装置10を反転させるために患者に植え込まれていることを除いて、図2の実施形態と同一の本発明の実施形態を示す。スイッチが極性エネルギーによって動作するときは、体外エネルギー伝送デバイス304の無線遠隔制御装置は、極性エネルギーを搬送する無線信号を伝送し、植込み式エネルギー変換デバイス302は、電気スイッチ306を動作させるために無線極性エネルギーを極性電流に変換する。植込み式エネルギー変換デバイス302によって電流の極性が変更されると、電気スイッチ306は、装置10によって実行される機能を反転させる。
【0054】
図4に、装置10を動作させるための患者に植え込まれた作動デバイス307が、植込み式エネルギー変換デバイス302と装置10との間に設けられていることを除いて図2の実施形態と同一の実施形態を示す。こうした作動デバイスは、電気サーボモータなどのモータ307の形態でよい。モータ307は、体外エネルギー伝送デバイス304の遠隔制御装置が無線信号を、植込み式エネルギー変換デバイス302の受信器に伝送するときに、植込み式エネルギー変換デバイス302からのエネルギーで動力供給される。
【0055】
図5に、モータ/ポンプ・ユニット309および流体リザーバ310を含むアセンブリ308の形態であり、患者に植え込まれた、作動デバイスを備えることを除いて図2の実施形態と同一の実施形態を示す。この場合は、装置10が液圧式に動作し、すなわち、液圧流体は、装置を動作させるためにモータ/ポンプ・ユニット309によって流体リザーバ310から導管311を通って装置10までポンプ輸送され、装置を始動位置に戻すためにモータ/ポンプ・ユニット309によって装置10から流体リザーバ310に戻されるようにポンプ輸送される。植込み式エネルギー変換デバイス302は、電力供給ライン312を介してモータ/ポンプ・ユニット309に動力を供給するために、無線エネルギーを電流、例えば極性電流に変換する。
【0056】
液圧式に動作する装置10の代わりに、作動デバイスが空気圧作動デバイスを備えることも想定される。その場合、液圧流体は調整のために使用される加圧空気でよく、流体リザーバの代わりに空気室が用いられる。
【0057】
これら全ての実施形態では、エネルギー変換デバイス302は、無線エネルギーによって充填されるバッテリまたはコンデンサのような充填可能なアキュムレータを含むことができ、システムの任意のエネルギー消費部分に付勢をする。
【0058】
代替形態として、上記で説明した無線遠隔制御装置の代わりに、患者の手によって、多くの場合に間接的に、例えば皮膚の下に配置された押しボタンによって接触する、植込み式部分の手動制御を用いることができる。
【0059】
図6に、無線遠隔制御装置を有する体外エネルギー伝送デバイス304と、この場合は液圧式に動作する装置10と、植込み式エネルギー変換デバイス302とを備え、全て患者に植え込まれている、液圧流体リザーバ313と、モータ/ポンプ・ユニット309と、液圧バルブ・シフト・デバイス314の形態の反転デバイスとをさらに備える、本発明の実施形態を示す。当然、液圧動作は、ポンプ輸送の方向を変更するだけで簡単に実行することもでき、したがって液圧バルブを省略することができる。遠隔制御装置は、体外エネルギー伝送デバイスとは別個のデバイスでもよく、それに含まれてもよい。モータ/ポンプ・ユニット309のモータは電気モータである。体外エネルギー伝送デバイス304の無線遠隔制御装置からの制御信号に応答して、植込み式エネルギー変換デバイス302は、制御信号によって搬送されたエネルギーからのエネルギーでモータ/ポンプ・ユニット309に動力を供給し、それにより、モータ/ポンプ・ユニット309は、液圧流体リザーバ313と装置10の間で液圧流体を分配する。体外エネルギー伝送デバイス304の遠隔制御装置は、装置を動作させるために流体がモータ/ポンプ・ユニット309によって液圧流体リザーバ313から装置10にポンプ輸送される一方の方向と、装置を始動位置に戻すために流体がモータ/ポンプ・ユニット309によって装置10から液圧流体リザーバ313に戻るようにポンプ輸送されるもう一方の反対の方向との間で、液圧流体の流動方向をシフトするように液圧バルブ・シフト・デバイス314を制御する。
【0060】
図7に、無線遠隔制御装置を有する体外エネルギー伝送デバイス304と、装置10と、植込み式エネルギー変換デバイス302と、体外エネルギー伝送デバイス304の無線遠隔制御装置によって制御される植込み式体内制御ユニット315と、植込み式アキュム
レータ316と、植込み式コンデンサ317とを備える本発明の実施形態を示す。体内制御ユニット315は、エネルギーを装置10に供給するアキュムレータ316に、植込み式エネルギー変換デバイス302から受信した電気エネルギーを蓄積する。体外エネルギー伝送デバイス304の無線遠隔制御装置からの制御信号に応答して、体内制御ユニット315は、アキュムレータ316からの電気エネルギーを放出し、放出したエネルギーを電力線318および319を介して伝達するか、または電気エネルギーを植込み式エネルギー変換デバイス302から電力線320、電流を安定させるコンデンサ317、電力線321、および装置10の動作のための電力線319を介して直接伝達する。
【0061】
体内制御ユニットは、好ましくは、患者の体の外からプログラム可能である。好ましい実施形態では、体内制御ユニットは、予めプログラムされた時間スケジュール、または患者の任意の可能な物理的パラメータもしくはシステムの任意の関数パラメータを感知する任意のセンサからの入力に従って、装置10を調整するようにプログラムされる。
【0062】
代替形態によれば、図7の実施形態のコンデンサ317を省略することができる。別の代替形態によれば、この実施形態のアキュムレータ316を省略することができる。
【0063】
図8に、装置10の動作のために付勢をするためのバッテリ322と、装置10の動作を切り換えるための電気スイッチ323も患者に植え込まれていることを除いて図2の実施形態と同一の実施形態を示す。バッテリ322が使用されていないオフ・モードから、バッテリ322が装置10の動作のために付勢をするオン・モードに切り換えるために、電気スイッチ323を遠隔制御装置によって制御することができ、植込み式エネルギー変換デバイス302によって供給されたエネルギーによって動作させることもできる。
【0064】
図9に、体外エネルギー伝送デバイス304の無線遠隔制御装置によって制御される体内制御ユニット315も患者に植え込まれていることを除いて図8の実施形態と同一の実施形態を示す。その場合、電気スイッチ323は、植込み式エネルギー変換デバイス302によって供給されたエネルギーによって、無線遠隔制御装置により体内制御ユニット315の制御が防止されバッテリが使用されていないオフ・モードから、装置10の動作のためにバッテリ322から電気エネルギーを放出するように遠隔制御装置が体内制御ユニット315を制御することが可能である待機モードに切り換えるように動作する。
【0065】
図10に、バッテリ322の代わりにアキュムレータ316が用いられ、植込み式構成要素の相互接続が異なることを除いて図9の実施形態と同一の実施形態を示す。その場合、アキュムレータ316は、植込み式エネルギー変換デバイス302からのエネルギーを蓄積する。体外エネルギー伝送デバイス304の無線遠隔制御装置からの制御信号に応答して、体内制御ユニット315は、アキュムレータ316が使用されていないオフ・モードから、アキュムレータ316が装置10の動作のために付勢をするオン・モードに切り換えるように、電気スイッチ323を制御する。アキュムレータをコンデンサと組み合わせてもよく、アキュムレータの代わりにコンデンサを用いてもよい。
【0066】
図11に、バッテリ322も患者に植え込まれており、植込み式構成要素の相互接続が異なることを除いて図10の実施形態と同一の実施形態を示す。体外エネルギー伝送デバイス304の無線遠隔制御装置からの制御信号に応答して、体内制御ユニット315は、バッテリ322が使用されていないオフ・モードから、バッテリ322が装置10の動作のために電気付勢をするオン・モードに切り換えるように、電気スイッチ1023を動作させるためにエネルギーを送出するようにアキュムレータ316を制御する。
【0067】
あるいは、電気スイッチ323は、無線遠隔制御装置により電気付勢をするようにバッテリ322を制御することが防止されその無線遠隔制御装置が使用されていない、オフ・
モードから、無線遠隔制御装置が装置10の動作のために電気付勢をするようにバッテリ322を制御できる待機モードに切り換えるように、アキュムレータ316によって供給されるエネルギーによって動作することができる。
【0068】
スイッチ323およびこの出願の他の全てのスイッチを最も範囲が広い実施形態のものと解釈すべきであることを理解されたい。これは、トランジスタ、MCU、MCPU、ASIC、FPGAもしくはDA変換器または他の任意の電子構成要素もしくは回路が電力のオンとオフを切り換えできることを意味する。好ましくは、スイッチは、体外から制御されるか、あるいは植込み式体内制御ユニットによって制御される。
【0069】
図12に、モータ307と、ギア・ボックス324の形態の機械式反転デバイスと、ギア・ボックス324を制御する体内制御ユニット315も患者に植え込まれていることを除いて図8の実施形態と同一の実施形態を示す。体内制御ユニット315は、(機械式に動作する)装置10によって実行される機能を反転させるようにギア・ボックス324を制御する。さらに単純なことにモータの方向を電子的に切り換える。最も範囲が広い実施形態に解釈されるギア・ボックスは、より長い作動ストロークに有利なように作動デバイスのための力を節約するサーボ機構を表すことができる。
【0070】
図13に、植込み式構成要素の相互接続が異なることを除いて図19の実施形態と同一の本発明の実施形態を示す。したがって、その場合は、体内制御ユニット315は、アキュムレータ316、適切にはコンデンサが電気スイッチ323を始動させてオン・モードに切り換えるときに、バッテリ322によって動力が供給される。電気スイッチ323がオン・モードのときは、体内制御ユニット315は、エネルギー装置10の動作のためのエネルギーを、供給するように、または供給しないようにバッテリ322を制御することが可能である。
【0071】
図14に、様々な通信の選択肢を実現するための、装置の植込み式構成要素の考えられる組合せを概略的に示す。基本的に、装置10と、体内制御ユニット315と、モータまたはポンプ・ユニット309と、体外無線遠隔制御装置を含む体外エネルギー伝送デバイス304がある。すでに上記で説明したように、無線遠隔制御装置は、体内制御ユニット315によって受信された制御信号を伝送し、その体内制御ユニット315は装置の様々な植込み式構成要素を制御する。
【0072】
好ましくは、センサまたは測定デバイス325を備えるフィードバック・デバイスを、患者の物理的パラメータを感知するために患者に植え込むことができる。物理的パラメータは、圧力、容積、直径、伸長、延長、拡張、移動、湾曲、伸縮性、筋収縮、神経インパルス、体温、血圧、血流、心拍、および呼吸からなる群から選択された少なくとも1つでよい。センサは、上記の物理的パラメータのいずれも感知することができる。例えば、センサは圧力センサまたは運動性センサでよい。あるいは、関数パラメータを感知するようにセンサ325を構成することができる。関数パラメータは、植込み式エネルギー源を充填するためにエネルギーを伝達するように互いに関連付けることができ、電気、任意の電気的パラメータ、圧力、容積、直径、伸長、延長、拡張、移動、湾曲、伸縮性、温度、および流れからなるパラメータの群から選択された少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0073】
体内制御ユニットに、または好ましくは体内制御ユニットを介して外に体外制御ユニットにフィードバックを送ることができる。エネルギー伝達システム、または受信器および伝送器を有する別個の通信システムを介して、フィードバックを体外に送出することができる。
【0074】
体内制御ユニット315、あるいは体外エネルギー伝送デバイス304の体外無線遠隔制御装置は、センサ325からの信号に応答して装置10を制御することができる。感知した物理的パラメータの情報を体外無線遠隔制御装置に送るために、トランシーバをセンサ325と組み合わせることができる。無線遠隔制御装置は信号伝送器またはトランシーバを備えることができ、体内制御ユニット315は信号受信器またはトランシーバを備えることができる。あるいは、無線遠隔制御装置は信号受信器またはトランシーバを備えることができ、体内制御ユニット315は信号伝送器またはトランシーバを備えることができる。上記のトランシーバ、伝送器、および受信器を使用して、装置10に関する情報またはデータを患者の体内から体外に送ることができる。
【0075】
モータ/ポンプ・ユニット309と、モータ/ポンプ・ユニット309に電力を与えるバッテリ322が植え込まれている場合は、バッテリ322の充填に関する情報をフィードバックすることができる。より正確にするには、バッテリまたはアキュムレータをエネルギーで充填するときに、前記充填プロセスに関するフィードバック情報を送信し、それに従ってエネルギー供給を変更する。
【0076】
図15に、装置10が患者の体外から調整される代替の実施形態を示す。システム300はバッテリ322を備え、バッテリ322は皮下の電気スイッチ326を介して装置10に接続されている。したがって、装置10の調整は、手動で皮下スイッチを押し、それにより装置10の動作がオンとオフで切り換えられることによって、非侵襲的に実行される。図示の実施形態は単純化したものであり、体内制御ユニットまたは本出願で開示した他の任意の部分など、追加の構成要素をシステムに追加できることが理解されよう。皮下スイッチを2つ使用することもできる。好ましい実施形態では、1つの植込み式スイッチが、ある所定の動作を実行するように情報を体内制御ユニットに送信し、患者が再度スイッチを押すと動作が反転する。
【0077】
図16に、システム300が装置に液圧式に接続された液圧流体リザーバ313を備える代替の実施形態を示す。装置に接続された液圧リザーバを手で押すことによって非侵襲的な調整が行われる。
【0078】
そのシステムは、体外データ通信器と、体外データ通信器と通信する植込み可能な体内データ通信器を含むことができる。体内通信器が体外データ通信器に装置または患者に関するデータを供給し、かつ/または体外データ通信器が体内データ通信器にデータを供給する。
【0079】
図17に、システムの機構を概略的に示し、その機構は、装置10の植込み式エネルギー消費構成要素に接続された植込み式体内エネルギー受信器302に正確な量の付勢をするために、装置もしくはシステムの少なくとも1つの関数パラメータまたは患者の物理的パラメータに関するフィードバック情報を提供するように患者の体内から体外に情報を送信できる。こうしたエネルギー受信器302は、エネルギー源および/またはエネルギー変換デバイスを含むことができる。簡単に説明すると、無線エネルギーは、患者の外側に位置する体外エネルギー源304aから伝送され、患者の内側に位置する体内エネルギー受信器302によって受信される。体内エネルギー受信器は、スイッチ326を介して装置10のエネルギー消費構成要素に受信したエネルギーを直接または間接的に供給するように適合されている。エネルギー・バランスは、体内エネルギー受信器302によって受信したエネルギーと、装置10のために使用されるエネルギーとの間で決定され、次いで、無線エネルギーの伝送は、決定されたエネルギー・バランスに基づいて制御される。したがって、エネルギー・バランスは、適切に、過度の温度上昇なしに装置10を動作させるのに十分な、必要なエネルギーの正確な量を正確に提示する。
【0080】
図17では、患者の皮膚は垂直の線305によって示される。ここでは、エネルギー受信器は、患者の体内に、好ましくは患者の皮膚305のすぐ下に配置されたエネルギー変換デバイス302を備える。概略的には、植込み式エネルギー変換デバイス302を、腹部、胸郭、(例えば腹壁の)筋膜、皮下に、または他の任意の適切な位置に配置することができる。植込み式エネルギー変換デバイス302は、体外エネルギー源304aから伝送される無線エネルギーEを受信するように適合されており、その体外エネルギー源304aは、植込み式エネルギー変換デバイス302の近傍の患者の皮膚305の外側に位置する体外エネルギー伝送デバイス304に設けられる。
【0081】
当技術分野でよく知られているように、無線エネルギーEは、一般に、体外エネルギー源304aに配置された一次コイルと、植込み式エネルギー変換デバイス302に配置された隣接する二次コイルとを含むデバイスなど、任意の適切な経皮エネルギー伝達(TET)デバイスによって伝達することができる。電流が一次コイルを通して供給されると、電圧の形態のエネルギーが二次コイルに誘導され、例えば入ってくるエネルギーを蓄電可能なバッテリまたはコンデンサなどの植込み式エネルギー源に蓄積した後で、これを利用して装置の植込み式エネルギー消費構成要素に電力を供給することができる。しかし、本発明は、概して、どんな特定のエネルギー伝達技法、TETデバイス、またはエネルギー源にも限定されず、任意の種類の無線エネルギーを使用することができる。
【0082】
植込み式エネルギー受信器から受信するエネルギー量を、装置の植込み式構成要素によって使用されるエネルギーと比較することができる。そのとき、用語「使用されるエネルギー」は、装置の植込み式構成要素によって蓄積されたエネルギーも含むことが理解される。制御デバイスが体外制御ユニット304bを含み、その体外制御ユニット304bは、決定されたエネルギー・バランスに基づいて、伝達されるエネルギーの量を調整するように体外エネルギー源304aを制御する。正確なエネルギー量を伝達するために、エネルギー・バランスおよび要求エネルギー量が、スイッチ326と装置10の間に接続された植込み式体内制御ユニット315を含む決定デバイスによって決定される。したがって、装置10の特徴を測定する適切なセンサなど(図示せず)によって得られる様々な測定値を受信するように、体内制御ユニット315を構成することができ、装置10の適切な動作のために必要な要求エネルギー量がある程度反映される。さらに、患者の現在の状態を、患者の状態を反映するパラメータを提供するために適切な測定デバイスまたはセンサによって検出することもできる。したがって、こうした特徴および/またはパラメータは、電力消費、動作モードおよび温度などの装置10の現在の状態ならびに体温、血圧、心拍、および呼吸などのパラメータに反映された患者の状態に関連してよい。患者の他の種類の物理的パラメータおよびデバイスの関数パラメータは別に記載する。
【0083】
さらに、アキュムレータ316の形態のエネルギー源を、任意選択で、装置10が後で使用する受信エネルギーを蓄積するために、制御ユニット315を介して植込み式エネルギー変換デバイス302に接続することができる。あるいは、またはさらに、やはり要求エネルギー量を反映するこうしたアキュムレータの特徴を測定することもできる。アキュムレータの代わりに蓄電可能なバッテリを使用することができ、測定した特徴は、エネルギー消費電圧、温度などの任意の電気的パラメータなど、バッテリの現在の状態に関するものでよい。十分な電圧および電流を装置10に供給し、さらに過熱を避けるために、正確なエネルギー量、すなわち少なすぎず、多すぎない量を植込み式エネルギー変換デバイス302から受信することによってバッテリを最適に充填すべきであることが明確に理解される。アキュムレータは、対応する特徴を有するコンデンサであってもよい。
【0084】
例えば、バッテリの現在の状態を決定するためにバッテリの特徴を定期的に測定することができ、次いで、それを体内制御ユニット315の適切な格納手段に状態情報として格納することができる。したがって、新規の測定が行われるときはいつでも、それに従って
バッテリ状態の格納した情報を更新することができる。このようにして、バッテリを最適な状態に維持するように正確なエネルギー量を伝達することによって、バッテリの状態を「較正」することができる。
【0085】
したがって、決定デバイスの体内制御ユニット315は、上記で言及した装置10のセンサまたは測定デバイス、または患者、または使用する場合は植込み式エネルギー源、あるいはそれらの任意の組合せで行った測定に基づいて、エネルギー・バランスおよび/または現在の要求エネルギー量(単位時間当たりのエネルギーまたは蓄積されたエネルギー)を決定するように適合されている。体内制御ユニット315はさらに、体内信号伝送器327に接続されており、その体内信号伝送器327は、決定された要求エネルギー量を反映する制御信号を体外制御ユニット304bに接続された体外信号受信器304cに伝送するように構成されている。次いで、受信した制御信号に応答して、体外エネルギー源304aから伝送されるエネルギー量を調整することができる。
【0086】
あるいは、決定デバイスは、体外制御ユニット304bを含むことができる。この代替形態では、体外制御ユニット304bに直接センサの測定値を伝送することができ、エネルギー・バランスおよび/または現在の要求エネルギー量を体外制御ユニット304bによって決定することができ、したがって、体内制御ユニット315の上記で説明した機能を体外制御ユニット304bに統合することができる。その場合は、体内制御ユニット315を省略することができ、センサの測定値は体内信号伝送器327に直接供給され、その体内信号伝送器327は、それらの測定値を体外信号受信器304cおよび体外制御ユニット304bに対して送信する。次いで、それらのセンサの測定値に基づいて体外制御ユニット304bによって、エネルギー・バランスおよび現在の要求エネルギー量を決定することができる。
【0087】
したがって、図17の機構による現在の解決策は、要求エネルギーを示す情報のフィードバックを用い、これは、受信エネルギーと比較した、例えば、装置の植込み式エネルギー消費構成要素によって使用されるエネルギーの割合と比較されるエネルギー量、エネルギー差、またはエネルギー受信割合を基準にした、実際のエネルギーの使用に基づいているので以前の解決策より効果的である。装置は、消費するために、または、植込み式エネルギー源などへのエネルギー蓄積のために、受信エネルギーを使用することができる。したがって、関連がありかつ必要な場合に、さらに実際のエネルギー・バランスを決定するためのツールとして、上記で説明した異なるパラメータを使用することになる。しかし、特に装置を動作させるために体内で行われる動作のために、本質的にこうしたパラメータを必要としてよい。
【0088】
無線信号、IR(赤外線)信号、または超音波信号など、適切な信号伝達手段を用いて、体内信号伝送器327および体外信号受信器304cを別個のユニットとして実装することができる。あるいは、基本的に同じ伝送技法を用いてエネルギー伝達に対して逆方向に制御信号を運ぶように、体内信号伝送器327および体外信号受信器304cを、それぞれ植込み式エネルギー変換デバイス302および体外エネルギー源304aに組み込むことができる。制御信号は、周波数、位相、または振幅に関して変調することができる。
【0089】
したがって、受信器および伝送器を含む別個の通信システムによって、フィードバック情報を伝達することもでき、エネルギー・システムに組み込むこともできる。本発明によれば、こうした一体型の情報フィードバックおよびエネルギー・システムは、第1の体内コイルおよび第1のコイルに接続された第1の電子回路を有する、無線エネルギーを受信するための植込み可能な体内エネルギー受信器を備え、第2の体外コイルおよび第2のコイルに接続された第2の電子回路を有する、無線エネルギーを伝送するための体外エネルギー伝送器を備える。エネルギー伝送器の第2の体外コイルは、エネルギー受信器の第1
のコイルによって受信される無線エネルギーを伝送する。このシステムはさらに、第1の電子回路に対する第1の体内コイルの接続のオンとオフを切り換える電力スイッチを備え、電力スイッチが第1の電子回路に対する第1の体内コイルの接続のオンとオフを切り換えるときに、第2の体外コイルの負荷のインピーダンスの変化の形態で第1のコイルの電荷に関するフィードバック情報が体外エネルギー伝送器によって受信される。こうしたシステムを図17の機構に実装する際に、スイッチ326は、体内制御ユニット315から分離して制御されるか、または体内制御ユニット315に組み込まれる。スイッチ326を最も範囲が広い実施形態に解釈すべきであることを理解されたい。これは、トランジスタ、MCU、MCPU、ASIC、FPGAもしくはDA変換器または他の任意の電子構成要素もしくは回路が電力のオンとオフを切り換えできることを意味する。
【0090】
結論としては、図17に示すエネルギー供給機構は、基本的には以下のようにして動作することができる。エネルギー・バランスは、最初に、決定デバイスの体内制御ユニット315によって決定される。要求エネルギー量を反映する制御信号も体内制御ユニット315によって生成され、その制御信号は、体内信号伝送器327から体外信号受信器304cに伝送される。あるいは、代わりに上記で言及したように、実装形態に応じて体外制御ユニット304bによってエネルギー・バランスを決定することができる。その場合は、制御信号は、様々なセンサからの測定結果を搬送することができる。次いで、決定されたエネルギー・バランスに基づいて、例えば受信した制御信号に応答して、体外エネルギー源304aから放出されたエネルギー量を体外制御ユニット304bによって調整することができる。このプロセスは、進行しているエネルギー伝達中に特定の間隔で間欠的に繰り返すこともでき、エネルギー伝達中にある程度連続して実行することもできる。
【0091】
伝達されたエネルギーの量は、概して、電圧、電流、振幅、波動周波数、およびパルスの特徴など、体外エネルギー源304aの様々な伝送パラメータを調節することによって調整することができる。
【0092】
このシステムを使用して、体内コイルに関する体外コイルの最適な位置を見つけると共に、エネルギー伝達を最適化するために、システムをさらに較正するように、TETシステムのコイル間の結合係数についての情報を得ることもできる。単純にこの場合に伝達されるエネルギー量を受信するエネルギー量と比較する。例えば、体外コイルが移動する場合は、結合係数は変わることがあり、移動が正確になると、体外コイルがエネルギー伝達のための最適な位置を見つけることもできる。好ましくは、体外コイルは、結合係数が最大になる前に決定デバイスのフィードバック情報を実現するように、伝達されるエネルギー量を較正するように適合されている。
【0093】
この結合係数の情報は、エネルギー伝達中にフィードバックとして使用することもできる。こうした場合には、本発明のエネルギー・システムは、第1の体内コイルおよび第1のコイルに接続された第1の電子回路を有する、無線エネルギーを受信する植込み可能な体内エネルギー受信器と、第2の体外コイルおよび第2のコイルに接続された第2の電子回路を有する、無線エネルギーを伝送する体外エネルギー伝送器とを備える。エネルギー伝送器の第2の体外コイルは、エネルギー受信器の第1のコイルによって受信される無線エネルギーを伝送する。そのシステムはさらに、フィードバック情報として第1のコイルで受信されるエネルギー量を通信するフィードバック・デバイスを備え、第2の電子回路は決定デバイスを含み、その決定デバイスは、フィードバック情報を受信し、第1のコイルと第2のコイルの間の結合係数を得るために、第2のコイルによって伝達されたエネルギー量を第1のコイルで受信されたエネルギー量に関するフィードバック情報と比較する。エネルギー伝送器は、得られた結合係数に応答して、伝送されたエネルギーを調整することができる。
【0094】
図18を参照すると、非侵襲的な操作を可能にするように装置を動作させるためのエネルギーの無線伝達を上記で説明したが、装置はワイヤでつなげたエネルギーでも動作できることが理解されよう。こうした一例を図18に示し、その図では、体外スイッチ326は、装置10を動作させる電気モータ307などの作動デバイスと、体外エネルギー源304aとの間に相互接続されている。体外制御ユニット304bが、装置10が適切な動作を行うように体外スイッチ326の動作を制御する。
【0095】
図19に、受信したエネルギーを装置10に供給し装置10によって使用できる方法に関する異なる実施形態を示す。図17の例と同様に、体内エネルギー受信器302が、伝送制御ユニット304bによって制御される体外エネルギー源304aから無線エネルギーEを受信する。体内エネルギー受信器302は、エネルギーを定電圧で装置10に供給する定電圧回路を備えることができ、これを図では破線のボックス「定電圧V」で示している。体内エネルギー受信器302はさらに、装置10に定電流で付勢をする定電流回路を備えることができ、これを図では破線のボックス「定電流C」で示す。
【0096】
装置10はエネルギー消費部分10aを備え、そのエネルギー消費部分10aは、モータ、ポンプ、制限デバイス、または電気動作のためにエネルギーを必要とする他の任意の医療機器でよい。装置10はさらに、体内エネルギー受信器302から供給されたエネルギーを蓄積するエネルギー蓄積デバイス10bを備えることができる。したがって、供給されるエネルギーは、エネルギー消費部分10aによって直接消費されても、エネルギー蓄積デバイス10bに蓄積されてもよく、または供給されるエネルギーは、一部が消費され、一部が蓄積されてもよい。装置10はさらに、体内エネルギー受信器302から供給されたエネルギーを安定化するエネルギー安定化ユニット10cを備えることができる。したがって、エネルギーを増減させながら供給することができ、そのため消費または蓄積の前にエネルギーを安定化する必要がある。
【0097】
体内エネルギー受信器302から供給されたエネルギーはさらに、装置10によって消費および/または蓄積される前に、装置10の外側に位置する別個のエネルギー安定化ユニット328によって蓄積および/または安定化されてよい。あるいは、エネルギー安定化ユニット328を体内エネルギー受信器302に組み込むことができる。いずれの場合でも、エネルギー安定化ユニット328は、定電圧回路および/または定電流回路を備えることができる。
【0098】
図17および図19に、図示の様々な機能上の構成要素および要素を配置できる方法および互いに接続できる方法に関する、いくつかの可能であるが、非限定的な実装形態の選択肢を示していることに留意されたい。しかし、本発明の範囲内で多くの変更および改変を行うことができることを当業者は簡単に理解するであろう。
【0099】
図20に、無線エネルギーの伝送を制御するシステムまたはエネルギー・バランス制御システムの設計案のうちの1つであるエネルギー・バランス測定回路を概略的に示す。回路は出力信号を有し、その出力信号は、2.5Vを中心とし、エネルギーのアンバランスと比例関係にある。こうした信号の導関数は、値が上下しているかどうかと、そうした変化が生じる速度を示す。受信エネルギー量が装置の植込み式構成要素によって使用されるエネルギーより少ない場合は、より多くのエネルギーが伝達され、したがって、エネルギー源が充填される。回路からの出力信号は、典型的には、A/D変換器に供給され、デジタル・フォーマットに変換される。次いで、そのデジタル情報を体外エネルギー伝送デバイスに送信し、そこで伝送されたエネルギーのレベルを調節することができる。別の可能性は、比較器を使用する完全なアナログ・システムを有することであり、その比較器は、エネルギー・バランスのレベルを特定の最大閾値および最小閾値と比較し、バランスがずれて最大/最小ウィンドウから出てしまう場合は、情報を体外エネルギー伝送デバイスに
送信する。
【0100】
概略図20に、誘導性エネルギーの伝達を使用して患者の体外から本発明の装置の植込み式エネルギー構成要素にエネルギーを伝達するシステムの回路の実装形態を示す。誘導性エネルギー伝達システムは、典型的には、体外伝送コイルおよび体内受信コイルを使用する。受信コイルL1は概略図3に含まれ、システムの伝送部分は含まれない。
【0101】
エネルギー・バランスの概略的な概念および体外エネルギー伝送器への情報の伝送方法の実装形態は、当然、多数の異なる方法で実装することができる。情報を評価および伝送する、概略図20および上記で説明した方法は、制御システムの実装方法の例としてのみ解釈すべきである。
【0102】
回路の詳細 図20では、記号Y1、Y2、Y3などは、回路内の試験点を記号化している。図の構成要素およびそれぞれの値は、この特定の実装形態で機能する値であり、当然、これは無数の可能な設計の解決策の1つに過ぎない。
【0103】
回路に電力を供給するエネルギーは、エネルギー受信コイルL1で受信される。植込み式構成要素へのエネルギーは、この特定の場合には周波数25kHzで伝送される。エネルギー・バランス出力信号は試験点Y1にある。
【0104】
上記のシステムの様々な実施形態を多くの異なる方法で組み合わせることもできると当業者は認識するであろう。例えば、図3の電気スイッチ306を図6図12の実施形態のいずれかに組み込むこともでき、図6の液圧バルブ・シフト・デバイス314を図5の実施形態に組み込むこともでき、ギア・ボックス324を図4の実施形態に組み込むこともできる。スイッチは単に任意の電子回路または構成要素を意味することもできると認識されたい。
【0105】
図17図19、および図20に関連して説明した実施形態は、電気的に動作可能な装置の植込み式エネルギー消費構成要素への無線エネルギーの伝送を制御する方法およびシステムを特定する。こうした方法およびシステムを以下で概略的に定義する。
【0106】
したがって、上記で説明した装置の植込み式エネルギー消費構成要素に供給される無線エネルギーの伝送を制御する方法が提供される。無線エネルギーEは、患者の体外に位置する体外エネルギー源から伝送され、患者の体内に位置する体内エネルギー受信器によって受信され、体内エネルギー受信器は、受信したエネルギーを装置の植込み式エネルギー消費構成要素に直接または間接的に供給するために、そのエネルギー消費構成要素に接続される。体内エネルギー受信器によって受信されるエネルギーと、装置のために使用されるエネルギーとの間でエネルギー・バランスが決定される。次いで、体外エネルギー源からの無線エネルギーEの伝送は、決定されたエネルギー・バランスに基づいて制御される。
【0107】
体外エネルギー源の一次コイルから体内エネルギー受信器の二次コイルに誘導的に無線エネルギーを伝送ことができる。エネルギー・バランスの変化を決定して、そのエネルギー・バランスの変化に基づいて無線エネルギーの伝送を制御することができる。体内エネルギー受信器によって受信されたエネルギーと、医療デバイスのために使用されるエネルギーとの差を検出して、検出されたエネルギーの差に基づいて無線エネルギーの伝送を制御することもできる。
【0108】
エネルギー伝送を制御するときに、検出されたエネルギー・バランスの変化が、エネルギー・バランスが増大していることを示す場合は、伝送される無線エネルギーの量を低減
させることができ、その逆も可能である。エネルギー伝送の減少/増加はさらに、検出した変化量に一致してよい。
【0109】
検出されたエネルギーの差が、受信エネルギーが使用エネルギーより多いことを示す場合に、伝送される無線エネルギーの量をさらに減少させることができるか、またはその逆も可能である。そのとき、エネルギー伝送の減少/増加は、検出したエネルギーの差の大きさと一致してよい。
【0110】
上記で言及したように、医療デバイスのために使用されるエネルギーを、医療デバイスを動作させるために消費し、かつ/または医療デバイスの少なくとも1つのエネルギー蓄積デバイスに蓄積することができる。
【0111】
医療デバイスの電気的および/または物理的パラメータならびに/あるいは患者の物理的パラメータが決定されるときは、前記パラメータに基づいて決定された単位時間当たりの伝送速度に従って消費および蓄積するためにエネルギーを伝送することができる。伝送された全エネルギー量を前記パラメータに基づいて決定することもできる。
【0112】
体内エネルギー受信器によって受信された全エネルギー量と、消費および/または蓄積された全エネルギー量との間で差が検出され、その検出された差が、前記エネルギー・バランスに関する少なくとも1つの測定した電気的パラメータの時間積分に関係するときは、エネルギー・バランスに関係してモニタリングされた電圧および/または電流に関して積分を決定することができる。
【0113】
消費および/または蓄積エネルギーの量に関する測定された電気的パラメータの導関数がある期間にわたって決定されるときは、エネルギー・バランスに関係するモニタリングされた電圧および/または電流に関して導関数を決定することができる。
【0114】
無線エネルギーを伝送するように第1の電気回路から体外エネルギー源に、立ち上がりおよび立ち下がりを有する電気パルスを加え、電気パルスの連続する立ち上がりと立ち下がりの間の第1の時間間隔の長さ、および/または電気パルスの連続する立ち下がりと立ち上がりの間の第2の時間間隔の長さを変更し、無線エネルギーを伝送することによって、体外エネルギー源からの無線エネルギーの伝送を制御することができ、電気パルスから生じる伝送エネルギーは変更された電力を有し、電力の変化は第1および/または第2の時間間隔の長さに応じて変わる。
【0115】
その場合は、電気パルスの周波数は、第1のおよび/または第2の時間間隔を変更するときは事実上一定でよい。電気パルスを加えるときは、その電気パルスは、第1のおよび/または第2の時間間隔の変更を除いて変化がないままでよい。電気パルスの振幅は、第1のおよび/または第2の時間間隔を変更するときは事実上一定でよい。さらに、連続する立ち上がりと立ち下がりの間の第1の時間間隔の長さを変更するだけで電気パルスを変更することができる。
【0116】
2つ以上の電気パルス列を連続して供給することができ、パルス列を印加し、そのパルス列が、パルス列の開始点に第1の電気パルスを有し、パルス列の終了点に第2の電気パルスを有するときは、2つ以上のパルス列を連続して供給することができ、第1のパルス列の第2の電気パルスの立ち下がりと、第2のパルス列の第1の電気パルスの立ち上がりとの間の第2の時間間隔の長さは変更される。
【0117】
電気パルスを印加するときは、電気パルスは、事実上の定電流および事実上の定電圧を有することができる。電気パルスも事実上の定電流および事実上の定電圧を有することが
できる。さらに、電気パルスは、事実上の定周波数を有することもできる。パルス列内の電気パルスは、同様に、事実上の定周波数を有することができる。
【0118】
第1の電気回路によって形成された回路および体外エネルギー源は、第1の特性期間または第1の時定数を有することができ、伝送されるエネルギーを事実上変更するときは、こうした周波数時間期間は第1の特性期間または時定数の範囲内またはそれより短くてよい。
【0119】
したがって、上記で説明したような装置を備えるシステムも、装置の植込み式エネルギー消費構成要素に供給される無線エネルギーの伝送を制御するために設けられる。最も範囲が広い意味で、そのシステムは、エネルギー伝送デバイスからの無線エネルギーの伝送を制御するための制御デバイスと、伝送される無線エネルギーを受信するための植込み可能な体内エネルギー受信器を備え、その体内エネルギー受信器は、受信したエネルギーを装置の植込み可能なエネルギー消費構成要素に直接または間接的に供給するためにそれらのエネルギー消費構成要素に接続されている。そのシステムはさらに、体内エネルギー受信器によって受信されたエネルギーと、装置の植込み可能なエネルギー消費構成要素で使用されるエネルギーとの間のエネルギー・バランスを決定するように適合された決定デバイスを備え、制御デバイスは、決定デバイスによって決定されたエネルギー・バランスに基づいて体外エネルギー伝送デバイスからの無線エネルギーの伝送を制御する。
【0120】
さらに、そのシステムは以下うちのいずれかを備えることができる。
【0121】
体内エネルギー受信器の二次コイルに誘導して無線エネルギーを伝送するように適合された、体外エネルギー源中の一次コイル。
【0122】
決定デバイスは、エネルギー・バランスの変化を検出するように適合されており、体外制御デバイスは、検出されたエネルギー・バランスの変化に基づいて無線エネルギーの伝送を制御する。
【0123】
決定デバイスは、体内エネルギー受信器によって受信されたエネルギーと、装置の植込み可能なエネルギー消費構成要素のために使用されるエネルギーとの差を検出するように適合されており、制御デバイスは、検出したエネルギーの差に基づいて無線エネルギーの伝送を制御する。
【0124】
検出したエネルギー・バランスの変化が、エネルギー・バランスが増大していることを示す場合に、制御デバイスは、伝送された無線エネルギーの量を減少させるように体外エネルギー伝送デバイスを制御し、またはその逆も可能であり、エネルギー伝送の減少/増加は検出された変化速度に一致する。
【0125】
検出されたエネルギーの差により、受信したエネルギーが使用されるエネルギーより大きいことが示される場合に、制御デバイスは、伝送される無線エネルギーの量を減少させるように体外エネルギー伝送デバイスを制御し、またはその逆も可能であり、エネルギー伝送の減少/増加は、前記検出したエネルギー差の大きさに一致する。
【0126】
装置のために使用されるエネルギーは、装置を動作させるために消費され、かつ/または装置の少なくとも1つのエネルギー蓄積デバイスに蓄積される。
【0127】
装置の電気的および/または物理的パラメータならびに/あるいは患者の物理的パラメータが決定される場合は、エネルギー伝送デバイスは、決定デバイスによって前記パラメータに基づいて決定された単位時間あたりの伝送速度に従って消費および蓄積するエネル
ギーを伝送する。決定デバイスは、前記パラメータに基づいて伝送される全エネルギー量も決定する。
【0128】
体内エネルギー受信器によって受信された全エネルギー量と、消費および/または蓄積された全エネルギー量との間で差が検出され、その検出された差が、エネルギー・バランスに関する少なくとも1つの測定された電気的パラメータの時間積分に関係するときは、決定デバイスは、エネルギー・バランスに関してモニタリングされた電圧および/または電流に関する積分を決定する。
【0129】
消費および/または蓄積したエネルギーの量に関する測定された電気的パラメータの導関数がある期間にわたって決定されるときは、決定デバイスは、エネルギー・バランスに関係するモニタリングされた電圧および/または電流に関する導関数を決定する。
【0130】
エネルギー伝送デバイスは、人体外に配置されたコイルを備え、電気回路は、無線エネルギーを伝送するように体外コイルに電気パルスで電力を供給するように設けられる。電気パルスは、立ち上がりおよび立ち下がりを有し、電気回路は、伝送される無線エネルギーの電力を変更するように、電気パルスの連続する立ち上がりと立ち下がりの間の第1の時間間隔および/または連続する立ち下がりと立ち上がりの間の第2の時間間隔を変更するように適合されている。その結果、伝送される無線エネルギーを受信するエネルギー受信器は変更された電力を有する。
【0131】
電気回路は、第1および/または第2の時間間隔を変更することを除いて変化がないままである電気パルスを送出するように適合されている。
【0132】
電気回路は、時定数を有し、第1および第2の時間間隔を第1の時定数の範囲でのみ変更するように適合されており、そのため、第1および/または第2の時間間隔の長さが変更されるときに、コイル上を伝送される電力が変更される。
【0133】
電気回路は、電気パルスの連続する立ち上がりと立ち下がりとの間の第1の時間間隔の長さを変更するだけで変更される電気パルスを送出するように適合されている。
【0134】
電気回路は、2つ以上の電気パルス列を連続して供給するように適合されており、前記列は、パルス列の開始点に第1の電気パルスを有し、パルス列の終了点に第2の電気パルスを有する。
【0135】
連続する第1のパルス列の第2の電気パルスの立ち下がりと、第2のパルス列の第1の電気パルスの立ち上がりとの間の第2の時間間隔の長さは、第1の電子回路によって変更される。
【0136】
電気回路は、事実上一定の高さおよび/または振幅および/または強度および/または電圧および/または電流および/または周波数を有するパルスとして電気パルスを供給するように適合されている。
【0137】
電気回路は、時定数を有し、第1および第2の時間間隔を第1の時定数の範囲でのみ変更するように適合されており、そのため、第1および/または第2の時間間隔の長さが変更されるときに、第1のコイル上を伝送される電力が変更される。
【0138】
電気回路は、第1の時定数の大きさと比較して、第1および/または第2の時間間隔の長さを第1の時定数を含むかまたは第1の時定数に比較的近い範囲内でのみ変更する電気パルスを供給するように適合されている。
【0139】
図21図24に、より詳細なブロック図に、本発明に従って植込み式装置に液圧式または空気圧式に動力を供給する、4つの異なる方法を示す。
【0140】
図21に、上記で説明したシステムを示す。そのシステムは、植込み式装置10を備え、別個の調整リザーバ1013、1方向ポンプ1009、および交互バルブ1014をさらに備える。
【0141】
図22に、装置10および流体リザーバ1013を示す。調整リザーバの壁を移動するか、または他の任意の異なる方法でそのサイズを変更することによって、リザーバの壁を移動することでいつでも流体のない単なる通路によって、バルブなしで装置の調節を行うことができる。
【0142】
図23に、装置10、2方向ポンプ1009、および調整リザーバ1013を示す。
【0143】
図24に、第2の閉じたシステムを制御する第1の閉じたシステムを有する逆倍力サーボ・システムのブロック図を示す。サーボ・システムは、調整リザーバ1013およびサーボ・リザーバ1050を備える。サーボ・リザーバ1050は、機械式相互接続部1054を介して植込み式装置10を機械式に制御する。装置は拡張可能/接触可能な空洞を有する。その空洞は、好ましくは、装置10と流動的接続したより大きい調節可能なリザーバ1052から液圧流体を供給することによって拡張または収縮する。あるいは、空洞は圧縮性のガスを収容し、そのガスは、サーボ・リザーバ1050の制御下で圧縮および膨張することができる。
【0144】
サーボ・リザーバ1050は、装置自体の一部とすることもできる。
【0145】
一実施形態では、調整リザーバは、皮下に患者の皮膚の下に配置されており、指でその外面を押すことによって動作する。このシステムを図25a~図25cに示す。図30aでは、可撓性皮下調整リザーバ1013は、導管1011によってバルジ形のサーボ・リザーバ1050に接続されていることが示されている。こうしたベロー形のサーボ・リザーバ1050は可撓性装置10に含まれる。図25aに示す状態では、サーボ・リザーバ1050は最少の流体を収容し、ほとんどの流体は調整リザーバ1013内にある。サーボ・リザーバ1050と装置10の間の機械式相互接続によって、装置10の外形は収縮し、すなわち、最大容積より小さい容積しか占有しない。この最大容積を図では破線で示す。
【0146】
図25bに、装置が植え込まれた患者などのユーザが、調整リザーバ1013を押し、そのため内部に収容された流体が導管1011を通って流れ、ベロー形のおかげで長手方向に延びるサーボ・リザーバ1050まで運ばれる状態を示す。次に、このように拡大すると、装置10が最大体積を占め、それにより、装置10が接触する膨大部の下流(図示せず)で精管を締め付けるように拡張する。
【0147】
調整リザーバ1013は、好ましくは、圧迫後にその形状を維持する手段1013aを備える。したがって、この手段は、図には概略的に示しており、ユーザが調整リザーバを解放するときにも装置10を伸長した姿勢に維持する。このようにして、調整リザーバは、本質的には、システムのためのオン/オフスイッチとして動作する。
【0148】
次に、図26および図27a~図27cを参照しながら液圧または空気圧動作の代替の実施形態を説明する。図26に示すブロック図は、第2の閉じたシステムを制御する第1の閉じたシステムを備える。第1のシステムは、調整リザーバ1013およびサーボ・リ
ザーバ1050を備える。サーボ・リザーバ1050は、機械式相互接続部1054を介してより大きい調節可能なリザーバ1052を機械式に制御する。次いで、拡張可能/接触可能な空洞を有する植込み式装置10が、装置10に流動的接続したより大きい調節可能なリザーバ1052から液圧流体を供給することによって、より大きい調節可能なリザーバ1052によって制御される。
【0149】
次に、図27a~図27cを参照しながらこの実施形態の例を説明する。前の実施形態のように、調整リザーバは、皮下に患者の皮膚の下に配置されており、指でその外面を押すことによって動作する。調整リザーバ1013は、導管1011によってベロー形のサーボ・リザーバ1050と流動的接続されている。図31aに示す第1の閉じたシステム1013、1011、1050では、サーボ・リザーバ1050は最少の流体を収容し、ほとんどの流体は調整リザーバ1013内にある。
【0150】
サーボ・リザーバ1050は、より大きい調節可能なリザーバ1052に機械式に接続されており、そのリザーバ1052は、やはりベロー形であるが、直径がサーボ・リザーバ1050より大きい。より大きい調節可能なリザーバ1052は装置10と流動的接続している。これは、ユーザが調整リザーバ1013を押し、それにより、流体が調整リザーバ1013からサーボ・リザーバ1050に移動すると、サーボ・リザーバ1050の拡張により、より多くの容積の流体がより大きい調節可能なリザーバ1052から装置10に移動することを意味する。言い換えると、このような反転したサーボ機構では、調整リザーバのより小さい容積がより大きい力で圧迫され、これにより、単位面積当たりより小さい力でより大きい全体の領域を移動させる。
【0151】
図25a~図25cを参照しながら上記で説明した前の実施形態のように、調整リザーバ1013は、好ましくは、圧迫後にその形状を維持する手段1013aを備える。したがって、図に概略的に示したこの手段は、ユーザが調整リザーバを解放するときにも装置10を伸長した姿勢に維持する。このようにして、調整リザーバは、本質的には、システムのためのオン/オフスイッチとして動作する。
【符号の説明】
【0152】
120 制限デバイス; 150 制御デバイス; 170 動作デバイス; 180 エネルギー供給ユニット; 190 体外遠隔制御装置ユニット。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
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図8
図9
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