(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】燃焼器の消音装置
(51)【国際特許分類】
F01N 1/06 20060101AFI20221012BHJP
F01N 1/10 20060101ALI20221012BHJP
F23J 13/00 20060101ALI20221012BHJP
F24H 9/00 20220101ALN20221012BHJP
【FI】
F01N1/06 G
F01N1/10 G
F23J13/00 B
F24H9/00 N
(21)【出願番号】P 2020032028
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2019100826
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】田村 竹年
(72)【発明者】
【氏名】内山 高志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿英
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-042006(JP,A)
【文献】特開昭50-089001(JP,A)
【文献】実開昭54-118510(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/06
F01N 1/10
F23J 13/00
F24H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器で発生する排気ガスを通過させることで排気ガスの騒音を低減する燃焼器の消音装置において、
前記消音装置は、
略直方体状のケーシングと該ケーシングの内壁に当接する内壁吸音材とからなり、内方に空間を形成する箱体と、
前記箱体内に形成される空間を区画して前記排気ガスの排気流路を形成する仕切部材と、を備え、
前記箱体は、第1の方向の一側壁側に前記排気ガスが流入する流入口が設けられると共に、前記第1の方向の一側壁と対向する前記第1の方向の他側壁側に前記排気ガスを外部に排出する排気口が設けられ、
前記仕切部材は、
前記第1の方向において前記排気口よりも前記第1の方向の一側壁寄りの位置であって第1の方向と直交する第2の方向の一側壁を基端部として、前記第2の方向の一側壁から前記第2の方向の一側壁と対向する第2の方向の他側壁側に向かって延在し、その終端部を前記第2の方向の他側壁に当接しないように位置させた第1片部と、該第1片部の終端部を基端部として、その基端部から前記第1の方向の一側壁側に向かって延在し、その終端部を前記第1の方向の一側壁に当接しないように位置させた第2片部とで構成され、吸音材からなるL字状の第1仕切部材と、
前記第2の方向の一側壁と前記第2片部との間であって、その基端部を前記第1片部に当接しないように位置させ、その基端部から前記第1の方向の一側壁側に向かって延在し、その終端部を前記第2片部の終端部よりも前記第1の方向の一側壁側に延在させ、且つ前記第1の方向の一側壁に当接しないように位置させた第3片部と、該第3片部の終端部を基端部として、その基端部から前記第2の方向の他側壁側に向かって延在し、その終端部を前記第2の方向の他側壁に当接しないように位置させた第4片部とで構成され、少なくとも一部が吸音材からなるL字状の第2仕切部材と、で構成され、
前記第4片部は、前記第1の方向において前記流入口と対向するように位置しており、前記流入口から第4片部までの間に前記排気流路の一部として空間部が形成され、さらに、前記第4片部の終端部と前記第2の方向の他側壁との間に前記排気ガスが通過する第1間隙と、前記第4片部の基端部と前記第2の方向の一側壁との間に前記排気ガスが通過する第2間隙とが形成され、
前記排気流路として、前記第1間隙と連通し前記第1間隙を通過した前記排気ガスを前記第2片部と前記第2の方向の他側壁との間の空間を通過させて前記排気口まで導く第1流路と、前記第2間隙と連通し前記第2間隙を通過した前記排気ガスを前記第2の方向の一側壁と前記第3片部との間および前記第3片部と前記第2片部との間の空間を通過させて前記第1流路の上流区間に合流させる第2流路とが形成され、前記流入口から前記空間部を介し前記第1間隙を通過して前記第2流路からの前記排気ガスと合流する合流箇所までの前記排気ガスの経路と、前記流入口から前記空間部を介し前記第2間隙を通過して前記合流箇所で合流するまでの前記排気ガスの経路との経路長さを異ならせるようにしたことを特徴とする燃焼器の消音装置。
【請求項2】
前記第3片部を薄板材とすると共に、前記第4片部を吸音材としたことを特徴とする請求項1記載の燃焼器の消音装置。
【請求項3】
前記空間部の断面積は、前記流入口の開口面積より大きいことを特徴とする請求項1または2記載の燃焼器の消音装置。
【請求項4】
前記第2片部と前記第2の方向の他側壁との間に形成される前記第1流路の断面積は、前記第1間隙の断面積より大きいことを特徴する請求項1から3の何れか一項に記載の燃焼器の消音装置。
【請求項5】
前記第1間隙の断面積は、前記第2間隙の断面積、または前記第2の方向の一側壁と前記第3片部との間に形成される前記第2流路の断面積、または前記第3片部と前記第2片部との間に形成される前記第2流路の断面積より小さいことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の燃焼器の消音装置。
【請求項6】
前記第2片部と前記第2の方向の他側壁との間に形成される前記第1流路の断面積は、前記第2の方向の一側壁と前記第3片部との間に形成される前記第2流路の断面積、または前記第3片部と前記第2片部との間に形成される前記第2流路の断面積より大きいことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の燃焼器の消音装置。
【請求項7】
前記第3片部の基端部と前記第1片部との間に形成される前記第2流路の断面積は、前記第2の方向の一側壁と前記第3片部との間に形成される前記第2流路の断面積、または前記第3片部と前記第2片部との間に形成される前記第2流路の断面積より大きいことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の燃焼器の消音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器等の燃焼器の消音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のものでは、給湯器等の燃焼器で発生する排気ガスの騒音を抑えるために消音装置が備えられ、この消音装置内部の空間を吸音材等の仕切部材で区画することにより、消音装置内部に排気ガスの排気流路として、排気ガスが流入される流入口から排気ガスが排出される排気口まで上下方向に蛇行する一本道の蛇行流路が形成されるものがあった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、給湯器等の燃焼器は器具の小型化が望まれており、それに伴い、器具内部の構成部品も小型化が望まれ消音装置も例外ではない。従来の消音装置を小型化しようとした場合、上下方向の寸法は変更せずに、単純に上下方向と直交する左右方向(幅)を小さくすることが考えられるが、そうすると、消音装置内部の排気流路の幅が狭くなるため、排気抵抗が大きくなると共に騒音も増加する傾向にあり、単純な方法での騒音の低減と排気抵抗の低減の両立は困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、消音装置の小型化に際し、騒音を低減しながら排気抵抗を低減可能な燃焼器の消音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1では、燃焼器で発生する排気ガスを通過させることで排気ガスの騒音を低減する燃焼器の消音装置において、前記消音装置は、略直方体状のケーシングと該ケーシングの内壁に当接する内壁吸音材とからなり、内方に空間を形成する箱体と、前記箱体内に形成される空間を区画して前記排気ガスの排気流路を形成する仕切部材と、を備え、前記箱体は、第1の方向の一側壁側に前記排気ガスが流入する流入口が設けられると共に、前記第1の方向の一側壁と対向する前記第1の方向の他側壁側に前記排気ガスを外部に排出する排気口が設けられ、前記仕切部材は、前記第1の方向において前記排気口よりも前記第1の方向の一側壁寄りの位置であって第1の方向と直交する第2の方向の一側壁を基端部として、前記第2の方向の一側壁から前記第2の方向の一側壁と対向する第2の方向の他側壁側に向かって延在し、その終端部を前記第2の方向の他側壁に当接しないように位置させた第1片部と、該第1片部の終端部を基端部として、その基端部から前記第1の方向の一側壁側に向かって延在し、その終端部を前記第1の方向の一側壁に当接しないように位置させた第2片部とで構成され、吸音材からなるL字状の第1仕切部材と、前記第2の方向の一側壁と前記第2片部との間であって、その基端部を前記第1片部に当接しないように位置させ、その基端部から前記第1の方向の一側壁側に向かって延在し、その終端部を前記第2片部の終端部よりも前記第1の方向の一側壁側に延在させ、且つ前記第1の方向の一側壁に当接しないように位置させた第3片部と、該第3片部の終端部を基端部として、その基端部から前記第2の方向の他側壁側に向かって延在し、その終端部を前記第2の方向の他側壁に当接しないように位置させた第4片部とで構成され、少なくとも一部が吸音材からなるL字状の第2仕切部材と、で構成され、前記第4片部は、前記第1の方向において前記流入口と対向するように位置しており、前記流入口から第4片部までの間に前記排気流路の一部として空間部が形成され、さらに、前記第4片部の終端部と前記第2の方向の他側壁との間に前記排気ガスが通過する第1間隙と、前記第4片部の基端部と前記第2の方向の一側壁との間に前記排気ガスが通過する第2間隙とが形成され、前記排気流路として、前記第1間隙と連通し前記第1間隙を通過した前記排気ガスを前記第2片部と前記第2の方向の他側壁との間の空間を通過させて前記排気口まで導く第1流路と、前記第2間隙と連通し前記第2間隙を通過した前記排気ガスを前記第2の方向の一側壁と前記第3片部との間および前記第3片部と前記第2片部との間の空間を通過させて前記第1流路の上流区間に合流させる第2流路とが形成され、前記流入口から前記空間部を介し前記第1間隙を通過して前記第2流路からの前記排気ガスと合流する合流箇所までの前記排気ガスの経路と、前記流入口から前記空間部を介し前記第2間隙を通過して前記合流箇所で合流するまでの前記排気ガスの経路との経路長さを異ならせるものとした。
【0007】
また、請求項2では、前記第3片部を薄板材とすると共に、前記第4片部を吸音材とするものとした。
【0008】
また、請求項3では、前記空間部の断面積は、前記流入口の開口面積より大きいものとした。
【0009】
また、請求項4では、前記第2片部と前記第2の方向の他側壁との間に形成される前記第1流路の断面積は、前記第1間隙の断面積より大きいものとした。
【0010】
また、請求項5では、前記第1間隙の断面積は、前記第2間隙の断面積、または前記第2の方向の一側壁と前記第3片部との間に形成される前記第2流路の断面積、または前記第3片部と前記第2片部との間に形成される前記第2流路の断面積より小さいものとした。
【0011】
また、請求項6では、前記第2片部と前記第2の方向の他側壁との間に形成される前記第1流路の断面積は、前記第2の方向の一側壁と前記第3片部との間に形成される前記第2流路の断面積、または前記第3片部と前記第2片部との間に形成される前記第2流路の断面積より大きいものとした。
【0012】
また、請求項7では、前記第3片部の基端部と前記第1片部との間に形成される前記第2流路の断面積は、前記第2の方向の一側壁と前記第3片部との間に形成される前記第2流路の断面積、または前記第3片部と前記第2片部との間に形成される前記第2流路の断面積より大きいものとした。
【発明の効果】
【0013】
この発明の請求項1によれば、空間部は、第1間隙および第2間隙と連通しており、排気ガスが、第1間隙と通じる第1流路と、第2間隙と通じる第2流路とに分流するため、従来のような排気流路が一本道の場合と比較して、圧力が分散され排気抵抗が低減される。さらに、排気ガスが合流する合流箇所までの2つの排気ガスの経路の経路長さを異ならせたことで、一方の経路を流れた排気ガスの音波と他方の経路を流れた排気ガスの音波との間に位相差を生じさせ、この位相差の生じた音波を合流箇所で互いに干渉させることにより、排気ガスの騒音を低減させることができる。
【0014】
また、請求項2によれば、第3片部を薄板材としたことで、第2流路を極力狭くしないようにするので、排気抵抗を低減させることができる。
【0015】
また、請求項3によれば、空間部の断面積を、流入口の開口面積より大きくしたことで、流入口の直下流に流入口よりも広い空間である空間部が形成されているので、空間部で排気抵抗が減少すると共に、流入口から流入した排気ガスは空間部で膨張するため、排気ガスの音のエネルギーを低減でき、騒音を低減することができる。
【0016】
また、請求項4によれば、第2片部と第2の方向の他側壁との間に形成される第1流路の断面積を、第1間隙の断面積より大きくしたことで、空間部流出時に二分される一方の排気ガスの流路の断面積である第1間隙の断面積よりも、合流後の排気ガスが流れ排気口につながる第1流路の断面積の方が大きくなり、排気口に向かう排気ガスが流れやすくなるので、排気抵抗を低減させることができる。
【0017】
また、請求項5によれば、第1間隙の断面積は、第2間隙の断面積、または第2の方向の一側壁と第3片部との間に形成される第2流路の断面積、または第3片部と第2片部との間に形成される第2流路の断面積より小さくしたことで、空間部流出時に二分される排気ガスは、断面積が小さく排気抵抗の大きい第1間隙側よりも、断面積が大きく排気抵抗の小さい第2間隙、第2流路側に流れる割合が多くなる。すなわち、排気ガスの合流箇所までの経路長さの長い方の経路を流れる排気ガスの割合が多くなり、経路長さが長い分、吸音材と接触する距離および時間が長くなるので、排気ガスの騒音をより低減させることができる。
【0018】
また、請求項6によれば、第2片部と第2の方向の他側壁との間に形成される第1流路の断面積を、第2の方向の一側壁と第3片部との間に形成される第2流路の断面積、または第3片部と第2片部との間に形成される第2流路の断面積より大きくしたことで、第2流路の断面積よりも、合流後の排気ガスが流れ排気口につながる第1流路の断面積の方が大きくなり、排気口に向かう排気ガスが流れやすくなるので、排気抵抗を低減させることができる。
【0019】
また、請求項7によれば、第3片部の基端部と第1片部との間に形成される第2流路の断面積を、第2の方向の一側壁と第3片部との間に形成される第2流路の断面積、または第3片部と第2片部との間に形成される第2流路の断面積より大きくしたことで、排気ガスの流れが偏向し排気抵抗が高くなる傾向がある箇所としての第3片部の基端部と第1片部との間に形成される第2流路の断面積が大きくなり、排気ガスが流れやすくなるので、排気抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】消音装置内の各部の空間の断面積を説明するための図。
【
図4】他の消音装置内の各部の空間の断面積を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の一実施形態の燃焼器について
図1に基づいて説明する。
【0022】
1は本実施形態の燃焼器としての給湯器、2は石油やガス等を燃料とし下向きに火炎を発生する逆燃式の燃焼部である燃焼バーナ、3は燃焼バーナ2に燃焼用の空気を供給する送風機、4は燃焼バーナ2の下方に形成される燃焼室、5は燃焼室4内に設けられ燃焼バーナ2の燃焼に伴い発生する排気ガスの熱を回収するフィンチューブ式の熱交換器である。
【0023】
6は燃焼室4と連通しており、燃焼室4よりも排気ガス流れ方向下流側に位置し、熱交換器5の下方に配置される排気集合室である。排気集合室6は左右方向に延在し、一方側で熱交換器5と接続され、他方側で消音装置7と接続される。
【0024】
前記消音装置7は、燃焼バーナ2の燃焼に伴い発生する排気ガスの騒音を低減させるものであり、排気集合室6と連通し、排気集合室6よりも排気ガス流れ方向下流側に位置し、排気集合室6の上方に配置される。消音装置7は上下方向に延在し、その上部に排気ガスを器具外部に排出する排気口8を備えている。
【0025】
9は給水管、10は給湯器1の器具外の給湯栓(図示せず)まで温水を供給する給湯管である。
【0026】
前記給水管9からの給水は、熱交換器5に導入され、熱交換器5にて燃焼バーナ2の燃焼に伴い発生した高温の排気ガスと熱交換加熱され、給湯管10を介して給湯栓からユーザの設定した給湯温度にて出湯されるものである。
【0027】
前記燃焼バーナ2の燃焼に伴い発生した排気ガスは、送風機3の送風力により、燃焼室4を下向きに流れ、熱交換器5を通過する。そして、熱交換部5を下向きに通過した排気ガスは、排気集合室6にて下向きから上向きにUターンされ、消音装置7に上向きに流入し、消音装置7を通過して排気口8から器具外に排出されるものである。
【0028】
次に、本発明の消音装置7について、
図2~
図3に基づいて説明する。
図2は
図1のA-A線に沿う断面図で、消音装置7の内部構造を示しており、
図3は消音装置7内の各部の空間の断面積を説明するための図である。本実施形態においては、消音装置7の上下方向が本発明でいう第1の方向であり、前後方向が本発明でいう第1の方向と直交する第2の方向である。
【0029】
前記消音装置7は、四方の一側壁(前面壁、後面壁、左側面壁、右側面壁)と、天面壁、底面壁からなる縦長の略直方体状のケーシング11と、そのケーシング11の内壁に当接する内壁吸音材12(前面壁内壁吸音材、後面壁内壁吸音材、左側面壁内壁吸音材、右側面壁内壁吸音材、天面壁内壁吸音材、底面壁内壁吸音材)とで構成され、内方に略直方体状の空間を形成する箱体13を備えている。また、内壁吸音材12の内表面(略直方体状の空間と接する面)には、複数の孔が形成された金属板(いわゆる多孔鋼板やパンチングメタル)が配設される。
【0030】
なお、本実施形態の箱体13については、ケーシング11の前面壁と内壁吸音材12の前面壁内壁吸音材を合わせたものを前面壁13aとし、ケーシング11の後面壁と内壁吸音材12の後面壁内壁吸音材を合わせたものを後面壁13bとし、ケーシング11の左側面壁と内壁吸音材12の左側面壁内壁吸音材を合わせたものを左側面壁13cとし、ケーシング11の右側面壁と内壁吸音材12の右側面壁内壁吸音材を合わせたものを右側面壁13dとし、ケーシング11の天面壁と内壁吸音材12の天面壁内壁吸音材を合わせたものを天面壁13eとし、ケーシング11の底面壁と内壁吸音材12の底面壁内壁吸音材を合わせたものを底面壁13fとする。
【0031】
前記箱体13(消音装置7)には、排気集合室6を通過してきた排気ガスが流入する流入口14が設けられると共に、箱体13内を通過した排気ガスを外部に排出する排気口8が設けられる。前記流入口14は、箱体13の底面壁13f(本発明でいう第1の方向の一側壁)に設けられ、前記排気口8は、箱体13の天面壁13e(本発明でいう第1の方向の他側壁)側であって、前面壁13a(本発明でいう第2の方向の一側壁)の上部に設けられている。
【0032】
また、消音装置7は、前記箱体13内に形成される略直方体状の空間を区画して流通する排気ガスの排気流路15を形成する仕切部材16を備えている。
【0033】
前記仕切部材16は、第1仕切部材17と第2仕切部材18とで構成され、前記第1仕切部材17は、上下方向において排気口8よりも底面壁13f寄りの位置であって、前面壁13aを基端部として、前面壁13aから前面壁13aと対向する後面壁13b(本発明でいう第2の方向の他側壁)側に向かって延在し、その終端部を後面壁13bに当接しないように、前後方向において前面壁13aと後面壁13bの間の略中間位置に位置させた第1片部17aを有する。さらに、第1仕切部材17は、その第1片部17aの終端部を基端部として、その基端部から底面壁13f側に向かって延在し、その終端部を底面壁13fに当接しないように位置させた第2片部17bを有し、前記第1片部17aと第2片部17bとで第1仕切部材17が構成されている。
【0034】
前記第1片部17aおよび第2片部17bは吸音材からなり、第1仕切部材17としてはL字状に形成されている。第1片部17aおよび第2片部17bは連続的につながった吸音材でもよく、第1片部17aと第2片部17bとで分割された吸音材でもよい。なお、第1仕切部材17は、箱体13内の空間を区画するため、左右方向において、その一端が左側面壁13cに当接し、他端が右側面壁13dに当接し、第1仕切部材17の左右方向の長さは左側面壁13cから右側面壁13dまでとなる。
【0035】
また、第1片部17aおよび第2片部17bにおいて、排気ガスと接する面には金属板が配設され、必要に応じて、貫通孔のない金属板や複数の孔が形成された所謂パンチングメタルなどを選定することができる。
【0036】
前記第2仕切部材18は、前後方向において前面壁13aと第2片部17bとの間(略中間位置)であって、その基端部を第1片部17aに当接しないように位置させ、その基端部から底面壁13f側に向かって延在し、その終端部を上下方向において第2片部17bの終端部よりも底面壁13f側に延在させ、且つ底面壁13fに当接しないように位置させた第3片部18aを有する。さらに、第2仕切部材18は、その第3片部18aの終端部を基端部として、その基端部から後面壁13b側に向かって延在し、その終端部を前後方向において第2片部17bよりも後面壁13b側に延在させ、且つ後面壁13bに当接しないように位置させた第4片部18bを有し、前記第3片部18aと第4片部18bとで第2仕切部材18が構成されている。なお、上下方向において第4片部18bと第2片部17bの終端部との間には排気ガスが通過するための間隙が形成されている。
【0037】
前記第4片部18bにおいて、排気ガスと接する面には金属板が配設され、必要に応じて、貫通孔のない金属板や複数の孔が形成された所謂パンチングメタルなどを選定することができる。
【0038】
ここで、前記第3片部18aは薄板材としての薄鋼板(板状に加工された板金)からなり、第4片部18bは吸音材からなり、第2仕切部材18としてはL字状に形成されている。本実施形態では、第3片部18aを薄鋼板とし、第4片部18bを吸音材として、第2仕切部材18の少なくとも一部が吸音材からなるものとしているが、第3片部18aを吸音材からなるものとしてもよく、第3片部18aを吸音材とした場合、第3片部18aおよび第4片部18bは連続的につながった吸音材でもよく、第3片部18aと第4片部18bとで分割された吸音材としてもよい。ただし、第3片部18aを吸音材とした場合、その厚みは他の吸音材(第1片部17a、第2片部17b、第4片部18b)よりも薄くすることが望ましい。なお、第2仕切部材18は、箱体13内の空間を区画するため、左右方向において、その一端が左側面壁13cに当接し、他端が右側面壁13dに当接し、第2仕切部材18の左右方向の長さは左側面壁13cから右側面壁13dまでとなる。
【0039】
また、前記第4片部18bは、上下方向において底面壁13fに形成された流入口14と対向するように位置しており、流入口14から第4片部18bまでの間に空間部としての膨張室19が形成される。この膨張室19は箱体13内において排気ガスが流れる前記排気流路15の一部として機能する。
【0040】
さらに、前後方向において第4片部18bの終端部と後面壁13bとの間には、排気ガスが通過する第1間隙20が形成され、第4片部18bの基端部と前面壁13aとの間には、排気ガスが通過する第2間隙21が形成される。流入口14から膨張室19に流入した排気ガスは、第1間隙20に向かう流れと第2間隙21に向かう流れに分かれるものである。
【0041】
また、前記第1間隙20を通過した排気ガスが流れる前記排気流路15として第1流路22が形成されており、該第1流路22は、第1間隙20と連通し第1間隙20を通過した排気ガスを、前後方向において第2片部17bと後面壁13bとの間の空間、およびその空間に連続する、上下方向において第1片部17aと天面壁13eとの間の空間を通過させて排気口8まで導く流路である。
【0042】
一方、前記第2間隙21を通過した排気ガスが流れる前記排気流路15として第2流路23が形成されており、該第2流路23は、第2間隙21と連通し第2間隙21を通過した排気ガスを、前後方向において前面壁13aと第3片部18aとの間の空間、および第3片部18aと第2片部17bとの間の空間を通過させて、第1流路22の上流区間、ここでは、第1間隙20直下流側の第1流路22に合流させる流路である。なお、第2流路23は、詳細に説明すると、上記の前後方向の空間の他に、上下方向において第3片部18aの基端部と第1片部17aとの間であって排気ガスの流れが折り返されるように偏向される空間が含まれると共に、上下方向において第4片部18bと第2片部17bの終端部との間の空間(間隙)が含まれる。
【0043】
ここで、
図2に示されているように、流入口14から膨張室19を介し第1間隙20を通過して第2流路23からの排気ガスと合流する合流箇所までの排気ガスの経路K1(一点鎖線で表記)と、流入口14から膨張室19を介し第2間隙21を通過して第2流路23を流れ前記合流箇所で合流するまでの排気ガスの経路K2(二点鎖線で表記)との経路長さを異ならせており、経路の長さとしては経路K2の方が経路K1よりも長い、K2>K1の関係性を有する。合流後の排気ガスは破線のように流れ、排気口8から排出される。上記のように、排気ガスが合流する合流箇所までの排気ガスの経路K1と経路K2との経路長さを異ならせたことで、経路K1を流れた排気ガスの音波と経路K2を流れた排気ガスの音波との間に位相差を生じさせ、この位相差の生じた音波を合流箇所で互いに干渉させることにより、排気ガスの騒音を低減できるものである。
【0044】
次に、
図3に基づいて消音装置7内に形成された各部の空間の断面積の大きさについて説明する。ここで、
図3に示したa、b、c、d、e、rの位置において左右方向の長さはそれぞれ同じ長さ(ただし、流入口14を示すrの位置における左右方向の長さはa、b、c、d、e、rの位置における左右方向の長さ以下とする。)となっており、
図3に示したa、b、c、d、e、rの各部の線分の長さの比較がすなわち各部の断面積の大きさの比較となるものである。
【0045】
まず、膨張室19の断面積dは、流入口14の開口面積r(断面積r)より大きくなっている。よって、流入口14の直下流に流入口14よりも広い空間である膨張室19が形成されているので、膨張室19で排気抵抗が減少すると共に、流入口14から流入した排気ガスは膨張室19で膨張するため、排気ガスの音のエネルギーを低減でき、騒音を低減することができる。
【0046】
また、膨張室19は、第1間隙20および第2間隙21と連通しており、排気ガスが、第1間隙20と通じる第1流路22と、第2間隙21と通じる第2流路23とに分流(排気ガスの経路が分岐)するため、従来のような排気流路が一本道の場合と比較して、圧力が分散され排気抵抗が低減される。なお、第4片部18bは上下方向において流入口14と対向する位置にあるため、流入口14から膨張室19に流入した排気ガスは第4片部18bにぶつかりやすく、排気ガスが二分しやすくなっている。
【0047】
次に、第2片部17bと後面壁13bとの間に形成される第1流路22の断面積aは、第1間隙20の断面積bより大きくなっている。また、前記第1流路22の断面積aは、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積c(=第2間隙21の断面積)、または第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより大きくなっている。よって、膨張室19流出時に二分される排気ガスの一方の流路の断面積である第1間隙20の断面積b、または第2流路23の断面積c(=膨張室19流出時に二分される排気ガスの他方の流路の断面積である第2間隙21の断面積)よりも、合流後の排気ガスが流れ排気口8につながる第1流路22の断面積aを大きくすることで、排気口8に向かう排気ガスが流れやすくなるため、排気抵抗を低減させることができる。
【0048】
なお、上記第1流路22の断面積aは、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積c、または第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより大きいものとしたが、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積cと第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cを足したものが、上記第1流路22の断面積aと略等しくなるようにすることが、排気抵抗低減の観点からすると望ましい。
【0049】
また、第2流路23を形成するために配設された第3片部18aは、薄鋼板としているので、厚みのある吸音材とした場合と比較して、第3片部18aと隣り合うそれぞれの第2流路23(第2流路23の断面積c)を極力狭くしないようにするので、排気抵抗を低減させることができる。
【0050】
さらに、第2流路23のうち、第3片部18aの基端部と第1片部17aとの間に形成される第2流路23の断面積eは、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積c、または第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより大きくなっている。第2流路23の断面積eの箇所のように、排気ガスの流れがUターンするように偏向または屈曲するところでは排気抵抗が高くなる傾向があるため、それを抑制するために、第2流路23の断面積eを、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積cまたは第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより大きくすることで、第2流路23の断面積eの箇所において排気ガスが流れやすくなり、排気抵抗を低減させることができる。
【0051】
以上説明してきた各種の方策により、排気ガスの騒音を低減しながら排気抵抗も低減することができ、消音装置7を小型化したとしても、排気ガスの騒音が大きくならず、排気抵抗も大きくならないものが提供可能となるものである。
【0052】
次に、先に説明した
図3の消音装置7とは別の実施形態としての
図4に示した消音装置7について説明する。なお、先に説明した
図3の消音装置7と同じ構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0053】
ここで、
図4に示す消音装置7において、消音装置7内に形成された各部の空間の断面積の大きさについて説明すると、
図4に示したa、B、C、d、e、rの位置において左右方向の長さはそれぞれ同じ長さ(ただし、流入口14を示すrの位置における左右方向の長さはa、B、C、d、e、rの位置における左右方向の長さ以下とする。)となっており、
図4に示したa、B、C、d、e、rの各部の線分の長さの比較がすなわち各部の断面積の大きさの比較となるものである。
【0054】
まず、膨張室19の断面積dは、流入口14の開口面積r(断面積r)より大きくなっている。よって、流入口14の直下流に流入口14よりも広い空間である膨張室19が形成されているので、膨張室19で排気抵抗が減少すると共に、流入口14から流入した排気ガスは膨張室19で膨張するため、排気ガスの音のエネルギーを低減でき、騒音を低減することができる。
【0055】
また、膨張室19は、第1間隙20および第2間隙21と連通しており、排気ガスが、第1間隙20と通じる第1流路22と、第2間隙21と通じる第2流路23とに分流(排気ガスの経路が分岐)するため、従来のような排気流路が一本道の場合と比較して、圧力が分散され排気抵抗が低減される。なお、第4片部18bは上下方向において流入口14と対向する位置にあるため、流入口14から膨張室19に流入した排気ガスは第4片部18bにぶつかりやすく、排気ガスが二分しやすくなっている。
【0056】
次に、第2片部17bと後面壁13bとの間に形成される第1流路22の断面積aは、第1間隙20の断面積Bより大きくなっている。また、前記第1流路22の断面積aは、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積c(=第2間隙21の断面積C)、または第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより大きくなっている。よって、膨張室19流出時に二分される排気ガスの一方の流路の断面積である第1間隙20の断面積B、または第2流路23の断面積c(=膨張室19流出時に二分される排気ガスの他方の流路の断面積である第2間隙21の断面積C)よりも、合流後の排気ガスが流れ排気口8につながる第1流路22の断面積aを大きくすることで、排気口8に向かう排気ガスが流れやすくなるため、排気抵抗を低減させることができる。
【0057】
なお、上記第1流路22の断面積aは、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積c、または第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより大きいものとしたが、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積cと第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cを足したものが、上記第1流路22の断面積aと略等しくなるようにすることが、排気抵抗低減の観点からすると望ましい。
【0058】
また、第1間隙20の断面積Bは、第2間隙21の断面積C、または前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積c、または第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより小さくなっている。よって、膨張室19流出時に二分される排気ガスは、断面積が小さく排気抵抗の大きい第1間隙20側よりも、断面積が大きく排気抵抗の小さい第2間隙21(第2流路23)側に流れる割合が多くなる。すなわち、前記経路K1よりも経路長さの長い前記経路K2を流れる排気ガスの割合が多くなり、経路長さが長い分、吸音材と接触する距離および時間が長くなるので、排気ガスの騒音をより低減させることができる。
【0059】
また、第2流路23を形成するために配設された第3片部18aは、薄鋼板としているので、厚みのある吸音材とした場合と比較して、第3片部18aと隣り合うそれぞれの第2流路23(第2流路23の断面積c)を極力狭くしないようにするので、排気抵抗を低減させることができる。
【0060】
さらに、第2流路23のうち、第3片部18aの基端部と第1片部17aとの間に形成される第2流路23の断面積eは、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積c、または第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより大きくなっている。第2流路23の断面積eの箇所のように、排気ガスの流れがUターンするように偏向または屈曲するところでは排気抵抗が高くなる傾向があるため、それを抑制するために、第2流路23の断面積eを、前面壁13aと第3片部18aとの間に形成される第2流路23の断面積cまたは第3片部18aと第2片部17bとの間に形成される第2流路23の断面積cより大きくすることで、第2流路23の断面積eの箇所において排気ガスが流れやすくなり、排気抵抗を低減させることができる。
【0061】
以上説明してきた各種の方策により、排気ガスの騒音を低減しながら排気抵抗も低減することができ、消音装置7を小型化したとしても、排気ガスの騒音が大きくならず、排気抵抗も大きくならないものが提供可能となるものである。
【0062】
なお、本発明は先に説明した2つの実施形態に限定されるものではなく、先に説明した実施形態では、消音装置7の上下方向を第1の方向、前後方向を第2の方向としたが、これは方向の一例を示したにすぎず、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0063】
また、先に説明した2つの実施形態では、排気口8は、箱体13の天面壁13e(本発明でいう第1の方向の他側壁)側であって、前面壁13aの上部に設けたが、排気口8は、天面壁13eに設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 燃焼器
7 消音装置
8 排気口
11 ケーシング
12 内壁吸音材
13 箱体
13a 前面壁
13b 後面壁
13e 天面壁
13f 底面壁
14 流入口
15 排気流路
16 仕切部材
17 第1仕切部材
17a 第1片部
17b 第2片部
18 第2仕切部材
18a 第3片部
18b 第4片部
19 膨張室
20 第1間隙
21 第2間隙
22 第1流路
23 第2流路
K1 排気ガスの経路
K2 排気ガスの経路