(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】バイオマス発電設備の管理装置、バイオマス発電設備、木質チップの燃料使用時の使用水分率の算出方法
(51)【国際特許分類】
F23K 1/00 20060101AFI20221012BHJP
F23K 3/00 20060101ALI20221012BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F23K1/00 A
F23K3/00 302
F23N5/00 L
(21)【出願番号】P 2020107087
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 栄二
(72)【発明者】
【氏名】小島 久幸
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真哉
(72)【発明者】
【氏名】大西 紀行
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-222265(JP,A)
【文献】特開2005-017018(JP,A)
【文献】特開昭57-043114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 1/00
F23K 3/00
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス発電設備の管理装置であって、
演算部と、
記憶部と、を備え、
チップ貯蔵庫のチップ残量がゼロの状態から、前記チップ貯蔵庫に受け入れた木質チップを使い切って再びチップ残量がゼロとなるまでの期間を残量ゼロ期間と定義し、
前記記憶部は、前記残量ゼロ期間における木質チップの平均使用水分率と、前記残量ゼロ期間における平均燃料消費率との相関性のデータを記憶し、
前記平均使用水分率は、前記残量ゼロ期間における木質チップの使用重量合計から、受入絶乾重量合計を減じて算出した使用水分重量合計を、木質チップの使用重量合計で除算したデータであり、
前記受入絶乾重量合計は、前記残量ゼロ期間における木質チップの受入重量合計から、前記残量ゼロ期間における木質チップ受入重量合計に受入水分率を乗じた値を減じて算出したデータであり、
前記平均燃料消費率は、前記残量ゼロ期間における木質チップの使用重量合計と発電電力量合計から算出したデータであり、
前記演算部は、
前記バイオマス発電設備の燃料として使用される木質チップの使用重量と、前記バイオマス発電設備の発電電力量とから前記バイオマス発電設備の燃料消費率を算出し、
前記記憶部に記憶された、前記残量ゼロ期間における木質チップの平均使用水分率と、前記残量ゼロ期間における平均燃料消費率との相関性に基づいて、前記バイオマス発電設備の燃料として使用される木質チップの燃料使用時の使用水分率を、
前記燃料消費率から算出する、バイオマス発電設備の管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマス発電設備の管理装置であって、
前記演算部は、
算出した前記使用水分率に基づいて、木質チップの低位発熱量を算出し、
算出した前記低位発熱量に基づいて、ボイラの入熱量を算出し、
算出した前記入熱量と、前記バイオマス発電設備の発電電力量とに基づいて、前記バイオマス発電設備の発電効率を算出する、バイオマス発電設備の管理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバイオマス発電設備の管理装置であって、
前記演算部は、前記燃料消費率と前記使用水分率に基づいて、木質チップの絶乾重量と前記バイオマス発電設備の発電電力量の比である絶乾燃料消費率を算出する、バイオマス発電設備の管理装置。
【請求項4】
請求項1~
請求項3のいずれか一項に記載のバイオマス発電設備の管理装置であって、
前記演算部は、
木質チップの当日の受入絶乾重量と当日の使用絶乾重量と木質チップの前日の絶乾残量とに基づいて、木質チップの当日の絶乾残量を算出し、
算出した木質チップの当日の前記絶乾残量と木質チップの前記使用水分率に基づいて木質チップの残量を算出し、
算出した木質チップの前記残量と木質チップの低位発熱量に基づいて木質チップの残熱量を算出する、バイオマス発電設備の管理装置。
【請求項5】
請求項1~
請求項4のいずれか一項に記載のバイオマス発電設備の管理装置であって、
表示部を備え、
前記表示部は、前記演算部による演算結果のうち、少なくとも1つの演算結果を表示する、バイオマス発電設備の管理装置。
【請求項6】
請求項1~
請求項5のいずれか一項に記載の管理装置を備えたバイオマス発電設備。
【請求項7】
木質チップの燃料使用時の使用水分率の算出方法であって、
チップ貯蔵庫のチップ残量がゼロの状態から、前記チップ貯蔵庫に受け入れた木質チップを使い切って再びチップ残量がゼロとなるまでの期間を残量ゼロ期間と定義し、
前記残量ゼロ期間における木質チップの平均使用水分率と、前記残量ゼロ期間における平均燃料消費率との相関性のデータを作成する第1ステップと、
前記第1ステップで作成した前記相関性のデータを用いて、バイオマス発電設備の燃料として使用される木質チップの燃料使用時の使用水分率を、木質チップの燃料使用時の燃料消費率から算出する第2ステップと、を含み、
前記平均使用水分率は、前記残量ゼロ期間における木質チップの使用重量合計から、受入絶乾重量合計を減じて算出した使用水分重量合計を、木質チップの使用重量合計で除算したデータであり、
前記受入絶乾重量合計は、前記残量ゼロ期間における木質チップの受入重量合計から、前記残量ゼロ期間における木質チップ受入重量合計に受入水分率を乗じた値を減じて算出したデータであり、
前記平均燃料消費率は、前記残量ゼロ期間における木質チップの使用重量合計と発電電力量合計から算出したデータである、
木質チップの燃料使用時の使用水分率の算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス発電に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止に向けたCO2削減や持続可能な社会の実現に向けたエネルギー自給率の向上のためには、再生可能エネルギー、特に森林資源の豊富なわが国では木質バイオマス発電の拡大が期待されている。尚、バイオマス発電に関する特許として、下記特許文献1がある。
【0003】
下記特許文献1には、供給ホッパ12の下流側に計量コンベア13を設けており、供給ホッパ12からボイラへ供給されるバイオマス燃料の流量を、計量コンベア13で計測する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオマス発電設備の管理方法として、ボイラ入熱量と発電電力量の比である発電効率を管理する方法が有効と考えられる。しかし、現状では、燃料となる木質チップの使用水分率を特定できないため、ボイラの入熱量が算出できず、発電効率を管理することが出来ない。また、木質チップの使用水分率を特定することは、発電効率の管理以外に、木質チップの残量管理を行う上でも、意味があると考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、燃料となる木質チップの使用水分率を算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
バイオマス発電設備の管理装置は、演算部を備え、前記演算部は、前記バイオマス発電設備の燃料として使用される木質チップの使用重量と、前記バイオマス発電設備の発電電力量とから前記バイオマス発電設備の燃料消費率を算出し、前記燃料消費率との相関性に基づいて、前記バイオマス発電設備の燃料として使用される木質チップの燃料使用時の使用水分率を算出する。使用水分率は、ホッパ投入時など、木質チップを燃料として実際に使用する時(燃料使用時)の水分率である。この構成では、燃料消費率との相関性に基づいて、木質チップの使用水分率を算出することが出来る。
【0008】
この発明の実施態様として以下の構成でもよい。
チップ貯蔵庫のチップ残量がゼロの状態から前記チップ貯蔵庫に受け入れた木質チップを使い切って再びチップ残量がゼロとなるまでの期間を残量ゼロ期間と定義し、前記相関性として、前記残量ゼロ期間の木質チップの平均使用水分率と前記残量ゼロ期間の平均燃料消費率との相関性を用いてもよい。残量ゼロ期間の平均使用水分率は、想定を入れずに、測定値のみから算出出来るので、確度が高いと言うメリットがある。つまり、平均使用水分率を正確に特定することが出来、精度の高い相関性を得ることが出来る。そのため、精度の高い相関性を利用して木質チップの使用水分率を高精度に特定することが出来る。
【0009】
この発明の実施態様として以下の構成でもよい。
前記演算部は、算出した前記使用水分率に基づいて、木質チップの低位発熱量を算出し、算出した前記低位発熱量に基づいて、ボイラの入熱量を算出し、算出した前記入熱量と、前記バイオマス発電設備の発電電力量とに基づいて、前記バイオマス発電設備の発電効率を算出してもよい。この構成では、バイオマス発電設備の発電効率を特定することが可能となり、バイオマス発電設備の管理に有効である。
【0010】
この発明の実施態様として以下の構成でもよい。
前記演算部は、前記燃料消費率と前記使用水分率に基づいて、木質チップの絶乾重量と前記バイオマス発電設備の発電電力量の比である絶乾燃料消費率を算出してもよい。絶乾燃料消費率は、燃料購入量を評価するための指標となることから、事業性の評価に有効である。
【0011】
この発明の実施態様として以下の構成でもよい。
前記演算部は、木質チップの当日の受入絶乾重量と当日の使用絶乾重量と木質チップの前日の絶乾残量とに基づいて、木質チップの当日の絶乾残量を算出し、算出した木質チップの当日の前記絶乾残量と木質チップの前記使用水分率に基づいて木質チップの残量を算出し、算出した木質チップの前記残量と木質チップの低位発熱量に基づいて木質チップの残熱量を算出してもよい。この構成では、木質チップの残量や残熱量を精度よく推定することが可能となり、木質チップの十分な残量管理が可能となる。
【0012】
この発明の実施態様として以下の構成でもよい。
表示部を備え、前記表示部は、前記演算部による演算結果のうち、少なくとも1つの演算結果を表示してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料となる木質チップの使用水分率を算出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態におけるバイオマス発電設備の概略構成図
【
図6】燃料消費率および使用水分率、発電効率、絶乾HRの時間推移を示すグラフ
【
図7】木質チップPの残量計算結果と残量実査の年間の時間推移を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
1.バイオマス発電設備10の全体構成の説明
図1には、本発明を適用可能なバイオマス発電設備10の概略構成図を示した。このバイオマス発電設備10は、ボイラ21と、タービン23と、発電機25と、復水器27と、給水ポンプ29と、バグフィルタ31と、フライアッシュサイロ33と、排気塔35と、燃料供給部40と、が備えられている。
【0016】
バイオマス発電設備10は、燃料供給部40より供給される木質チップPを燃料として、ボイラ21で蒸気を生成し、生成した蒸気をタービン23に供給する。そして、蒸気の供給によりタービン23が回転すると、タービン23に直結された発電機25が発電を行う。
【0017】
また、ボイラ21の排ガスは、ガス中に含まれる煤じん(フライアッシュ)をバグフィルタ31でろ過して除去した後、排気塔35より廃棄される構成となっている。
【0018】
燃料供給部40は、木質チップPを貯蔵するチップ貯蔵庫41と、投入クレーン43と、供給ホッパ45と、供給フィーダ47とを備えている。
【0019】
木質チップPには、切削チップと破砕チップの2種がある。切削チップは、木材をカッター等で切断したチップである。破砕チップは、木材をハンマー等で破砕したチップである。切削チップは角形で厚さが厚いのに対し、破砕チップは繊維方向に細長い形状を持つなど、両チップは形状が相違している。
【0020】
チップ貯蔵庫41には、切削ヤード41A、破砕ヤード41B、混合ヤード41Cの3種のヤードが設けられている。切削ヤード41Aは、切削チップの貯蔵用、破砕ヤード41Bは破砕チップの貯蔵用、混合ヤード41Cは、切削チップと破砕チップを混合した混合チップの貯蔵用である。
【0021】
投入クレーン43は、
図1の左右方向に移動可能である。チップ貯蔵庫41に貯蔵された木質チップPは、クレーン43により、供給ホッパ45に投入される。尚、本例では、供給ホッパ45に投入する燃料として、混合チップを使用する。
【0022】
投入クレーン43は、荷重計43Aを付設しており、供給ホッパ45に投入された木質チップPの重量[t]を計量する。
【0023】
ホッパ下部の供給フィーダ47を駆動すると、供給ホッパ45から燃料配管49を通じて燃料である木質チップPが、ボイラ21に供給される。
【0024】
供給フィーダ47はスクリュー式であり、スクリュー48の回転より木質チップPを供給する。スクリュー48は、
図1にて紙面と直交する方向に複数設ける構成としてもよい。
【0025】
次にバイオマス発電設備10の電気的構成について説明する。バイオマス発電設備10は、投入クレーン43を制御するクレーン制御装置51と、管理装置55と、を備えている。
【0026】
管理装置55は、燃料供給部40の制御機能と、バイオマス発電設備10の管理機能を有している。具体的には、燃料供給部40の制御機能として、発電機出力や主蒸気圧力の測定値と目標値との差分が小さくなるように、ボイラ21に供給する木質チップPの供給量を調整する。
【0027】
例えば、発電機出力や主蒸気圧力の測定値が目標値より低い場合、供給フィーダ47の回転速度Vを高くする指令を送る。これにより、供給フィーダ47の回転速度Vが速くなり、ボイラ21に対する木質チップPの供給量が増加する。そのため、発電機出力や主蒸気出力を目標値に近づけることが出来る。
【0028】
また、管理装置55は、バイオマス発電設備10の管理機能の1つとして、発電効率eff0の傾向管理を行う。以下、バイオマス発電設備10の燃料である木質チップPの管理工程についてまず説明を行い、その後、バイオマス発電設備10の発電効率eff0の算出方法について、説明を行う。
【0029】
2.木質チップPの管理工程と測定項目
<受入工程>
受入工程は、木質チップPをチップ貯蔵庫41に対して受け入れる工程である。
図1に示すように、木質チップPは、トラックに積載されて、バイオマス発電設備10に運ばれる。バイオマス発電設備10のトラックヤード15には、搬入される木質チップPを計測するための計器として、トラックスケール15Aと水分率計15Bが設けられている。
【0030】
トラックスケール15Aは、木質チップPを積載したトラックの重量を計測する。トラックスケール15Aの計測値からトラックの重量を引くことで、木質チップPの受入重量[kg]を計測することが出来る。また、水分率計15Bにより、木質チップPの受入水分率[%]を計測することが出来る。このように、受入工程では、木質チップPの「受入重量」と「受入水分率」の2項目を計測することが出来る。
【0031】
受入重量は木質チップPの受入時の重量、受入水分率は木質チップPの受入時の水分率である。受入時は、木質チップPをチップ貯蔵庫41に受け入れた時である。
【0032】
<保管工程>
保管工程は、チップ貯蔵庫41にて木質チップPを保管する工程である。受け入れた木質チップPは、切削チップと破砕チップに大別され、各ヤード41A、41Bに分けて保管され、自然乾燥される。各ヤード41A、41Bの木質チップPは、投入クレーン43により掴み上げられ、混合ヤード41Cに投入される。
【0033】
このとき、投入クレーン43で掴み上げて混合ヤード41Cに投入する投入回数を制御することで、切削チップと破砕チップの割合を、使用したい比率に調整することが出来る。
【0034】
例えば、切削チップと破砕チップの投入回数が1対1の場合、切削比率(混合チップ中の切削チップの割り合い)は50%である。そして、混合ヤード41Cに投入された2種の木質チップPは、混合ヤード41C内にて、混合してから使用される。
【0035】
<投入工程(使用工程)>
投入クレーン43は、混合ヤード41Cから木質チップPをランダムに掴みとり、供給ホッパ45に供給する。供給ホッパ45に供給された木質チップPは、その後、供給フィーダ47によりボイラ21に送られる。
【0036】
投入クレーン43には、荷重計43Aが設置されており、供給ホッパ45に対して投入した木質チップPの使用重量[kg](燃料として使用した重量)を測定することが出来る。しかし、水分率計は設けることが困難なため、木質チップPの使用水分率[%]は測定できない。尚、使用水分率は、燃料使用時(ホッパ投入時)の木質チップPの水分率である。
【0037】
投入クレーン43に水分率計を設けることが困難である理由は、水分率は、木質チップPからサンプルを抜き取って作業員が計測作業を行う必要があることから、木質チップPを供給ホッパ45に投入する度に、毎回、そのような作業を行うことは、手間が掛かり過ぎ、現実として困難であるからである。
【0038】
また、投入工程に付随する項目として、チップ燃料によるアウトプットとして発電電力量[kWh]を、発電機25に設けられた電力計25Aにより測定することが出来る。
【0039】
木質チップPの使用重量は、上記の通り荷重計43Aで計測することが出来、発電電力量は、電力計25Aにより測定することが出来る。そのため、1kWhの発電電力量を得るために消費する使用重量〔kg〕を表す燃料消費率HRを、木質チップPの使用重量と発電電力量より、求めることが出来る。
【0040】
<チップ性状の外部機関による分析>
木質チップPを定期的にサンプル採取して、外部機関で絶乾発熱量、灰分率の分析を行っている。
【0041】
このように、木質チップPの管理工程には、受入工程、保管工程、投入工程、性状分析の4つの工程がある。
図2は、各工程における木質チップPの測定項目を示している。
【0042】
3.発電効率eff0の算出と傾向管理
バイオマス発電設備10の発電効率eff0は、S1~S3の3つのステップにより算出することができる(
図3参照)。
【0043】
(S1)木質チップPの使用水分率Uwoutの算出
(S2)木質チップPの低位発熱量LHVoutの算出
(S3)発電効率eff0の算出
【0044】
<S1について>
1.チップ貯蔵庫保管中の水分重量の変化
受入工程で受け入れた木質チップPの受入重量Z1は、
図4に示すように、絶乾重量Xと受入水分重量W1との合計である。絶乾重量Xは、木質チップPの乾燥重量(乾燥後の重量)であり、水分重量Wは木質チップPに含まれる水分の重量である。
【0045】
木質チップPに含まれる水分の一部は、チップ貯蔵庫41に受け入れてから燃料として実際に使用されるまでの保管期間に蒸発または吸湿する。木質チップPの使用重量Z2は、受入時に比べて水分の蒸発量分Qだけ軽くなる、または、吸湿量分だけ重くなる。
【0046】
図4の「Q」は木質チップPの保管期間における水分蒸発量、「W2」は木質チップPの使用水分重量を示している。また、水分が蒸発しても、絶乾重量Xに変化はなく、絶乾重量Xは一定である。
【0047】
4.残量ゼロ期間に着目した使用水分率Uwoutの算出
残量ゼロ期間は、チップ貯蔵庫41のチップ残量が、ゼロの状態からチップ貯蔵庫に受け入れた木質チップPを使い切って、再びチップ残量がゼロとなるまでの期間である。言い換えると、チップ貯蔵庫41のチップ残量をゼロからゼロとする期間、つまり、チップ残量がゼロのチップ貯蔵庫41に木質チップPを受け入れてから、そのチップを全て使い切り、チップ残量がゼロに戻るまでの期間である。残量ゼロ期間は、例えば、数か月から半年程度である。
【0048】
残量ゼロ期間の重量計は、チップ貯蔵庫41内のチップ残量の影響を受けないため、その期間全体では、以下の1式、2式の関係が成り立つ。尚、重量計は合計重量である。
受入絶乾重量計=使用絶乾重量計・・・・・・(1)
使用水分重量計=使用重量計-使用絶乾重量計=使用重量計-受入絶乾重量計・・(2)
【0049】
そして、2式により求めた使用水分重量計から、以下の3式より、木質チップについて、残量ゼロ期間の平均使用水分率を求めることが出来る。
残量ゼロ期間の平均使用水分率=使用水分重量計/使用重量計・・・・(3)
【0050】
残量ゼロ期間の平均使用水分率は、想定を入れずに、測定値のみから算出することが出来るので、確度が高いと言うメリットがある。
【0051】
図5は、残量ゼロ期間の平均燃料消費率HRと残量ゼロ期間の平均使用水分率の関係を示すグラフである。このグラフは、残量ゼロ期間を一単位として、同期間の平均使用水分率と平均燃料消費率を調べる調査を、複数回(複数期間)行うことにより、得られたものである。得られたデータより、残量ゼロ期間の平均使用水分率と残量ゼロ期間の平均燃料消費率HRの相関をとると、
図5に示す実線で示す相関直線(一次近似直線)が得られる。
図5にて実線で示す相関直線より、木質チップPの使用水分率Uwoutを、燃料消費率HRを変数として、(4)式にて表すことが出来る。
【0052】
使用水分率=0.4431×HR-0.1940・・・・(4)
【0053】
なお、燃料消費率HRは、5式で示すように、荷重計43Aで計測可能な木質チップPの使用重量と、電力計25Aで計測可能な発電機25の発電電力量により求めることが出来る。すなわち、計測可能量のみを使って求めることができる。
燃料消費率HR=木質チップPの使用重量/発電電力量〔kg/kWh〕・・・・(5)
【0054】
相関性と発電効率eff0の関係について補足する。データを採取した木質バイオマス発電設備10では、効率改善に取り組んでいるため、高効率運転を行った期間とそれ以外の期間でグループ化して、残量ゼロ期間について、平均使用水分率と平均燃料消費率HRの相関をとると、
図5に点線で示す相関直線が得られ、さらに相関性が向上する。
【0055】
高効率運転期間とそれ以外の期間では、使用水分率Uwoutの絶対値は1%程度異なるが、燃料消費率HRに対する変化量(傾き)はほぼ一致する。相関直線は、高効率運転期間とそれ以外の期間を区別することなく、実線の特性を使用してもよいし、高効率運転期間とそれ以外の期間で、その期間に対応する破線の特性を選んで使用してもよい。
【0056】
また、(4)式に示すように、木質チップPの使用水分率Uwoutは、燃料消費率HRを変数とする1次式で示される。変数である燃料消費率HRは、使用重量や発電電力の計測値からリアルタイムに求めることが可能であることから、木質チップPの使用水分率Uwoutについても、リアルタイムで算出することが出来る。
【0057】
<S2について>
S2は、S1で算出した木質チップPの使用水分率Uwoutを用いて、木質チップPの低位発熱量LHVoutを算出する。尚、燃料(木質チップ)を燃焼させて得られる発熱量のうち、燃焼ガス中の生成水蒸気が凝縮したときに得られる凝縮潜熱を含めた発熱量を高位発熱量といい、水蒸気のままで凝縮潜熱を含まない発熱量を低位発熱量という。
【0058】
木質チップPの低位発熱量LHVと水分率Uwとの間には、一般的に以下の6式の関係が成り立つことが知られている。
LHV=1次項×Uw+定数項・・・・・(6)
【0059】
定数項は、水分率がゼロの場合の低位発熱量LHV、つまり、木質チップPの絶乾発熱量LHVmである。本実施形態では、外部分析機関により測定される木質チップPの分析データ(絶乾発熱量LHVm、灰分率Ua)から、下記の7式より、定数項を算出する。
定数項=LHVm/(1-Ua)・・・・(7)
【0060】
上記の6式において、Uwout=100%の場合、LHV=水の吸熱量である。そのため、水の吸熱量=1次項+定数項の関係が成り立つ。
【0061】
よって、1次項を下記の8式にて算出することが出来る。
1次項=(水の吸熱量-定数項)・・・・(8)
1次項<0である。
【0062】
尚、水の吸熱量は、水が気化する際の潜熱である539kcal/kgを用いる。
【0063】
以上により、1次項と定数項を求めることが出来るので、S1で求めた木質チップPの使用水分率Uwoutを、6式に代入することで、木質チップPの低位発熱量LHVoutを算出することが出来る。LHVoutは、木質チップPの燃料使用時の低位発熱量である。
【0064】
<S3について>
S3は、S2で算出した木質チップPの低位発熱量LHVoutを用いて、バイオマス発電設備10の発電効率eff0を算出する。発電効率eff0は、木質チップPが保有する熱エネルギー(ボイラの入熱量)を電気エネルギーに変換する効率である。
【0065】
ボイラ21の入熱量は、木質チップPの使用重量と低位発熱量LHVoutを用いて、以下の9式より、求めることが出来る。
ボイラの入熱量=木質チップPの使用重量×低位発熱量LHVout〔kcal〕・・・(9)
【0066】
発電効率eff0は、発電機25の発電電力量とボイラ21の入熱量を用いて、以下の10式より、求めることが出来る。
発電効率eff0=発電電力量〔kWh〕×860/ボイラの入熱量〔kcal〕・・・・(10)
なお、860は単位変換係数である。
【0067】
S1~S3のステップで、バイオマス発電設備10の発電効率eff0を求めることが出来る。発電効率eff0は、日単位、時間単位のデータとして、求めることが出来る。発電効率eff0の変化から、発電効率eff0の傾向を管理することが出来る。
【0068】
この発明では、従来では困難であった、木質チップPの使用水分率Uwoutの算出を可能としたことで、木質チップPの低位発熱量LHVout引いては、ボイラ21の入熱量を特定することが可能となった。
【0069】
そのため、発電電力量から発電効率eff0を推定することが出来、化石燃料を使用した火力発電設備等と同様に、発電効率管理を行うことが可能となる。以上のことから、設備の劣化管理、運転状態の変化による異常兆候の早期発見や設備運用改善効果の確認など、事業性に直結する管理が期待出来る。
【0070】
燃料消費率HRおよび上記S1~S3のステップにより算出した、使用水分率Uwout、発電効率eff0の1年間の時間推移を
図6に示す。
【0071】
5.燃料消費率比について
燃料消費率の基準に対する比を、燃料消費率比と定義し、その値を求める。
HRr=HR/HRs・・・・・・・・(11A)
HRrは燃料消費率比、HRは燃料消費率、HRsは燃料消費率の基準値である。
【0072】
燃料消費率の基準値としては、発電設備10の計画値や残量ゼロ期間の平均値を用いるとよい。この例では、1日あたりの発電電力量の計画値、チップ使用重量の計画値などを用いて、次式に従って、燃料消費率の基準値を算出する。
【0073】
尚、Uwoutはその時の使用水分率、LHVoutは使用水分率Uwoutにおける低位発熱量LHV、effs0は基準発電効率である。
【0074】
基準発電電力量Es0[kWh/d]=発電機の定格出力[kW]×24[h]・・(11B)
基準入熱量Qs0[Mcal/d]=Es0×860/1000/effs0・・(11C)
基準使用重量Fs0[t/d]=Qs0/LHVout・・・・・・・・(11D)
HRs[kg/kWh]=Fs0×1000/Es0・・・・・・・・(11E)
【0075】
そして、11A式により求めた燃料消費率比HRrが1より大きい、すなわち、HR>HRsの場合、基準よりも燃料使用量が多く、発電効率eff0は基準発電効率effs0よりも悪化していると判断出来る。
【0076】
逆に、11A式により求めた燃料消費率比HRrが1より小さい、すなわち、HR<HRsの場合、基準よりも燃料使用量が少なく、発電効率eff0は基準発電効率effs0よりも良化していると判断出来る。
【0077】
基準値HRsは、1[kWh]の電力を発生させるために必要となる木質チップPの使用重量の基準値である。木質チップPの使用重量は、低位発熱量LHVが変われば、異なる値となるので、基準値HRsは、LHVごとに算出する必要がある。
【0078】
6.事業性を評価するための指標
発電効率eff0、チップの低位発熱量LHV、燃料消費率HRには、次の関係がある。
eff0×LHV×HR=定数・・・・(12)
LHV(kcal/kg)、HR(kg/kWh)の単位系では、定数は860である。
【0079】
バイオマス発電設備10において、木質チップPの使用重量と発電電力量は測定可能な項目であることから、5式より、燃料消費率HRはリアルタイムに測定可能することが可能である。そのため、燃料消費率HRから「860/HR」の値、すなわち、「eff0×LHV」の値は算出することが出来る。
【0080】
LNGを燃料とする火力発電設備などは、燃料のLHVが概ね一定となるため、HRが算出できれば、結局、発電効率eff0を特定することが出来る。
【0081】
しかし、木質チップPを燃料とする木質バイオマス発電設備においては、チップ貯蔵庫での保管中に、木質チップPの保有水分量の変動によりLHVが大きく変化する。
【0082】
本発明により、燃料消費率HRから使用水分率Uwoutを特定出来るようになったことで、低位発熱量LHVを特定出来、発電効率eff0も特定出来る。
【0083】
バイオマス発電設備10の事業性を評価するには、燃料購入量を管理する必要がある。12式より燃料使用量に相当する燃料消費率HRは13式で表される。
HR=860/LHV/eff0・・・・・(13)
【0084】
LHVの変化がほとんどない火力発電設備では、発電効率eff0と燃料消費率HRは反比例し、eff0を管理すれば、燃料購入量を管理することができる。
【0085】
一方、木質バイオマス発電設備では、木質チップPの保有水分量の変動によりLHVが大きく変化するため、発電効率eff0が向上してもLHVの低下量が大きければ、eff0とLHVの積は小さくなり、その結果、HRすなわち燃料購入量は増加する。
【0086】
上記より、木質バイオマス発電設備10では、発電効率eff0のみの管理では燃料購入量の管理は出来ず、事業性の評価は出来ない。
【0087】
事業性の評価、すなわち、燃料購入量の評価するための指標として絶乾HR(絶乾燃料消費率)を用いる。絶乾HRは、1kWhを発電するために消費する木質チップPの絶乾重量(木質重量)を表し、次式により定義する。
【0088】
絶乾HR(HRz)〔kg/kWh〕=絶乾重量/発電電力量
=使用重量×(1-使用水分率)/発電電力量
=燃料消費率HR×(1-使用水分率)・・・・・(14)
【0089】
木質チップPの受入時の絶乾重量と使用時の絶乾重量は一致するため、絶乾HRを用いることで、木質チップPの水分重量によらず、燃料購入量を管理することができる。
【0090】
例えば、1日の基準発電電力量Es0[kWh/d]とした場合、1日に使用した絶乾重量は15式となる。
1日に使用した絶乾重量=絶乾HR(HRz)×基準発電電力量Es0/1,000〔t/d〕・(15)
【0091】
燃料購入時に基準としている水分率がUwsであれば、16式により上記の絶乾重量を基準水分率Uwsに換算することで、燃料購入量を算出、評価できる。
基準水分率Uws換算重量=1日に使用した絶乾重量/(1-Uws)・・・(16)
【0092】
図6に発電効率と絶乾HRの年間の時間推移を示す。
図6中における上の太線は「発電効率」の時間推移を示し、下の太線は、「絶乾HR」の時間推移を示す。LHVが一定であれば、発電効率eff0が増加すれば絶乾HRは減少するはずであるが、必ずしもその動きをしていない。これは、燃料購入量の評価には絶乾HRを管理する必要があることを表している。
【0093】
7.チップ貯蔵庫残量の管理
木質チップPの絶乾重量(=木質重量)は17式で表される。
木質チップPの絶乾重量=木質チップPの重量×(1-水分率Uw)・・・(17)
【0094】
絶乾重量は水分重量の影響を受けないため、当日の絶乾残量は、木質チップPの前日の絶乾残量と、木質チップPの受入絶乾重量と、木質チップPの使用絶乾重量とから、以下の18式に基づいて木質チップPの当日の絶乾残量を算出する。
当日の絶乾残量=前日の絶乾残量+受入絶乾重量-使用絶乾重量・・・・(18)
【0095】
また、木質チップPの当日の残量は、当日の絶乾残量と使用水分率Uwoutとから、以下の19式に基づいて算出する。
木質チップの当日の残量=当日の絶乾残量/(1-Uwout)・・・・・・(19)
【0096】
木質チップPの残熱量は、当日の残量と低位発熱量LHVを用いて、下記の20式より、算出する。
残熱量=残量×低位発熱量LHVout・・・・・(20)
【0097】
チップ貯蔵庫41の保管量は、熱量による管理を行う必要がある。従来は、月末に目視により体積を測定し、嵩比重想定値を掛け合わせて重量に換算しており、多大な労力を要することが課題となっていた。
【0098】
この発明では、木質チップPの使用水分率Uwoutの算出を可能としたことで、木質チップPの使用重量と、使用水分率Uwoutから、17式に基づいて、使用絶乾重量を算出することができる。そのため、チップ貯蔵庫41における、木質チップPの当日の残量や残熱量を求めることが出来る。
【0099】
図7に、この発明による残量計算結果と月末に目視により実測した残量実査結果の年間の時間推移を示す。残量計算結果と残量実査結果は概ね一致しており、残量計算は使用可能と評価する。
【0100】
また、残量は、上記に示すように、使用水分率Uwoutを用いて算出するため、使用水分率Uwoutに誤差があると、残量計算結果に蓄積され、残量の誤差が大きくなるが、
図7では残量計算結果と残量実査結果の誤差が小さいことから、この発明で算出した使用水分率Uwoutの誤差は小さいと評価することが出来る。
【0101】
上記により、木質チップPの残量や残熱量を精度よく推定することが可能となり、木質チップPの十分な残量管理が可能となる。以上のことから、燃料調達管理やチップ貯蔵庫での乾燥状況確認による事業性改善など、事業性に直結する管理が可能となる。
【0102】
8.管理装置55について、
図1に示すように、管理装置55は、演算部100と、記憶部150と、表示部160と、入力部170を備えている。記憶部150は、データの記憶用、表示部160はデータの表示用、入力部170は管理者の入力用である。記憶部150に記憶されるデータには、
図5に示す相関直線のデータなど、使用水分率Uwoutや発電効率eff0を算出するための各種データが含まれている。
【0103】
図8は、演算部100のブロック図である。演算部100は、第1演算部110と、第2演算部120と、第3演算部130を備えている。
【0104】
演算部100には、演算用信号として、発電電力量、木質チップPの使用重量、木質チップPの受入重量、木質チップPの受入水分率が入力される。尚、発電電力量は、発電機25の電力計25Aにて計測することが出来る。木質チップPの使用重量は、投入クレーン43の荷重計43Aにて計測することが出来る。木質チップPの受入重量は、トラックスケール15Aにて計測することが出来る。木質チップPの受入水分率は、水分率計15Bにて計測することが出来る。
【0105】
第1演算部110は、演算用信号に基づいて、木質チップPの使用水分率Uwoutを演算する。
【0106】
第1演算部110は、
図9に示すように、HR演算部110A、及び使用水分率演算部110Bを有している。
【0107】
HR演算部110Aは、発電電力量と木質チップPの使用重量に基づいて、バイオマス発電設備10の燃料消費率HRを求める。具体的には、上記した5式より求める。
【0108】
使用水分率演算部110Bは、木質チップPの使用水分率Uwoutを算出する。具体的には、バイオマス発電設備10の燃料消費率HRに基づいて、上記の4式より、木質チップPの使用水分率Uwoutを算出する。
【0109】
第2演算部120は、
図10に示すように、使用水分率Uwoutと、木質チップPの使用重量と、発電電力量に基づいて、発電効率eff0、燃料消費率比HRr、絶乾HRを演算する。
【0110】
第2演算部120は、
図10に示すように、LHV演算部120A、ボイラ入熱量演算部120B、発電効率演算部120C、HR演算部120D、設定部120E、燃料消費率比演算部120F、及び絶乾HR演算部120Gを有している。
【0111】
LHV演算部120Aは、第1演算部110で算出した木質チップPの使用水分率Uwoutを用いて、上記の6式より、木質チップPの低位発熱量LHVoutを算出する。
【0112】
ボイラ入熱量演算部120Bは、木質チップPの低位発熱量LHVoutと木質チップPの使用重量とに基づいて、上記の9式より、ボイラ21の入熱量を算出する。
【0113】
発電効率演算部120Cは、ボイラ21の入熱量と発電電力量とに基づいて、上記の10式より、発電効率eff0を算出する。
【0114】
HR演算部120Dは、発電電力量と木質チップPの使用重量に基づいて、バイオマス発電設備10の燃料消費率HRを求める。
【0115】
設定部120Eは、LHV演算部120Aにて算出した木質チップPの低位発熱量LHVに基づいて、燃料消費率HRの基準値HRsを算出する。
【0116】
燃料消費率比演算部120Fは、HR演算部120Dで算出した燃料消費率HRの演算値と基準値HRsとに基づいて、上記の11A式より、燃料消費率比HRrを算出する。
【0117】
絶乾HR演算部120Gは、HR演算部120Dで算出した燃料消費率HRの演算値と使用水分率Uwoutとに基づいて、上記の14式より、絶乾HR(HRz)を算出する。
【0118】
第2演算部120は、算出した各値のデータを、表示部160に表示してもよい。例えば、発電効率eff0、燃料消費率比HRr、絶乾HRを日単位で算出し、そのデータを、横軸を時間軸としたグラフ等により表示してもよい。これらのデータの演算周期、表示周期は日単位に限らず、時間単位や半日単位、数日単位でもよい。
【0119】
第3演算部130は、
図11に示すように、受入絶乾重量演算部130A、使用絶乾重量演算部130B、当日の絶乾残量演算部130C、前日絶乾残量記憶部130D、当日の残量演算部130E、LHV演算部130F、残熱量演算部130Gを有している。
【0120】
受入絶乾重量演算部130Aは、木質チップPの受入重量と受入水分率Uwinとから、上記の17式に基づいて、木質チップPの受入絶乾重量を算出する。
【0121】
使用絶乾重量演算部130Bは、木質チップPの使用重量と使用水分率Uwoutとから、上記の17式に基づいて、木質チップPの使用絶乾重量を算出する。
【0122】
当日の絶乾残量演算部130Cは、木質チップPの前日の絶乾残量と、木質チップPの受入絶乾重量と、木質チップPの使用絶乾重量とから、上記の18式に基づいて木質チップPの当日の絶乾残量を算出する。
【0123】
当日の残量演算部130Eは、木質チップPの当日の絶乾残量と使用水分率Uwoutとから、上記の19式に基づいて木質チップPの当日の残量を算出する。
【0124】
LHV演算部130Fは、木質チップPの使用水分率Uwoutを用いて、上記の6式より、木質チップPの低位発熱量LHVoutを算出する。
【0125】
残熱量演算部130Gは、木質チップPの当日の残量と低位発熱量LHVを用いて、上記の20式より、木質チップPの残熱量を算出する。
【0126】
第3演算部130は、算出した各値のデータを、表示部160に表示してもよい。具体的には、木質チップPの絶乾残量、残量、残熱量の日単位のデータを、横軸を時間軸としたグラフ等により、表示してもよい。
【0127】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0128】
上記実施形態では、3式より、残量ゼロ期間の平均使用水分率を算出した。残量ゼロ期間の平均使用水分率に基づいて、残量ゼロ期間の平均低位発熱量を算出してもよい。また、算出した平均低位発熱量に基づいて、残量ゼロ期間のボイラの平均入熱量を算出してもよい。そして、残量ゼロ期間のボイラの平均入熱量と残量ゼロ期間の平均発電電力量とに基づいて、残量ゼロ期間のバイオマス発電設備の平均発電効率を算出してもよい。残量ゼロ期間であれば、各値を実測値のみで算出することが出来るので、確度の高い値が得られる。
【0129】
上記実施形態では、残量ゼロ期間の平均使用水分率と残量ゼロ期間の平均燃料消費率の実績データに基づいて、使用水分率と燃料消費率の相関性を求めた(
図5の相関直線)。
使用水分率と燃料消費率の相関性の求め方は、実施形態で例示した方法(残量ゼロ期間に着目した方法)に限らず、他の期間の実績データから求めるようにしてもよい。また、使用水分率と燃料消費率の相関性は、直線近似に限らず、曲線近似などでもよい。また、相関性のデータは、数式として保持する場合に限らず、これを参照テーブルとして持つようにしてもよい。
【符号の説明】
【0130】
10 バイオマス発電設備
21 ボイラ
23 タービン
25 発電機
40 燃料供給装置
43 クレーン
45 供給ホッパ
47 供給フィーダ
48 スクリュー
51 クレーン制御装置
55 管理装置
100 演算部
110 第1演算部
120 第2演算部
130 第3演算部