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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】発泡粒子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/20 20060101AFI20221012BHJP
   C08J 9/24 20060101ALI20221012BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20221012BHJP
   B29D 35/12 20100101ALI20221012BHJP
   B29D 35/08 20100101ALI20221012BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20221012BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
B29C67/20 D
C08J9/24 CER
C08J9/24 CEZ
A43B13/04 A
B29D35/12
B29D35/08
B29K105:04
B29K101:12
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020173148
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2021062618
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10 2019 215 874.9
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】20200152
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン ゴーテ
(72)【発明者】
【氏名】マックス クルツ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ディッキマンス
(72)【発明者】
【氏名】アミール ファティ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド ソマー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター ロマノブ
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ロサウグ
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-315993(JP,A)
【文献】特開2002-265660(JP,A)
【文献】特開平07-088876(JP,A)
【文献】特開2019-115704(JP,A)
【文献】特開2017-061143(JP,A)
【文献】特開2014-128414(JP,A)
【文献】特開2005-111246(JP,A)
【文献】特開2015-000907(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088551(WO,A1)
【文献】特表2009-538247(JP,A)
【文献】特表2014-531352(JP,A)
【文献】特開平10-120029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072599(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01990170(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第103974813(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08J 9/00 - 9/42
B29C 44/00 - 44/60
B29C 67/20
A43B 1/00 - 23/30
A43C 1/00 - 19/00
A43D 1/00 - 999/00
B29D 35/00 - 35/14
A43B 1/00 - 23/30
A43C 1/00 - 19/00
A43D 1/00 - 999/00
B29D 35/00 - 35/14
B29K 105/04
B29K 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝性要素を製造する方法であって、
発泡粒子を型の型穴に供給するステップと、
前記供給するステップを実行したときよりも前記型穴のサイズを小さくすることにより所定の圧力を前記発泡粒子に印加しつつ、前記型穴において前記発泡粒子を結合するステップと、
を含み、
前記発泡粒子が、少なくとも10重量%の割合の細断されたリサイクル発泡粒子を含み、前記発泡粒子の前記結合が、電磁波によって実行され、
前記電磁波は電磁RF放射である、
方法。
【請求項2】
細断されたリサイクル発泡粒子の前記割合が、少なくとも20重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記型穴における前記所定の圧力が、少なくとも2barである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記発泡粒子が、ポリスチレン(ePS)、ポリプロピレン(ePP)、ポリウレタン(eTPU)、ポリエーテルブロックアミド(ePEBA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(ePA)、ポリブチレンテレフタレート(ePBT)、ポリエステル-エーテルエラストマ(eTPEE)、またはポリエチレンテレフタレート(ePET)に基づく、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
電磁波による結合中に、伝熱媒体が前記発泡粒子に追加される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を用いて緩衝性要素を製造する装置であって、
型穴を規定する型と、
前記型穴に位置付けられた発泡粒子に所定の圧力を印加する手段と、
前記型穴において前記発泡粒子を結合する電磁波を発生させる発生装置と、
を備え、
細断されたリサイクル発泡粒子および細断されていない非リサイクル発泡粒子を混合する混合装置および/またはリサイクル対象の発泡材料を細断する細断装置が設けられたことを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を用いて、スポーツ用ボールの発泡構成要素の緩衝性要素を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の特に好適な応用分野は、シューズソールもしくはミッドソール等のスポーツウェア、または、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素の製造である。また、本発明は、本発明に係る方法および/または本発明に係る製造装置により製造されたシューズソールもしくはミッドソール等のスポーツウェア、または、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素を含む。
【0003】
発泡粒子部品等、プラスチックで構成され、たとえばパッケージング等の1回使用の製品は、環境に有害と考えられる。このようなプラスチック部品は、他の材料で構成された部品によって急速に置き換えられている。したがって、より環境に配慮した発泡粒子部品の構成が強く求められている。環境適合性は、材料のかなりの割合をリサイクル可能な場合に高くなり得る。このことは、たとえばシューズソールの場合と同様に、成型部品が1回使用であるか長期使用を意図するかに関わらず当てはまる。
【0004】
膨張熱可塑性ポリスチレン(ePS)で構成された発泡粒子部品の場合は既に、最大10%のリサイクル率となっている。これは、発泡粒子部品の製造に用いられる原料の最大10%がリサイクル材料であることを意味する。
【0005】
リサイクル発泡粒子部品は、細断され、新たな材料と混合される。以下、細断されたリサイクル発泡粒子材料を「再生材料(regenerated material)」と称し、非リサイクル発泡粒子を「出発材料(original material)」と称する。これにより、用語「出発材料」は、再度融かされて押し出されたものでなければ、一体的結合による発泡粒子部品の構成が未実施または不実施の発泡粒子を表すのに用いられる(以下参照)。出発材料の発泡粒子は、表面が閉じている。また、発泡剤で充填可能である。材料が加熱されると、材料に閉じ込められた空気または材料に含まれる発泡剤が膨張し、隣り合う発泡粒子の壁同士が加熱時に押圧し合って一体結合することにより、発泡粒子部品(たとえば、シューズソール、特にミッドソール、またはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素)を構成可能である。
【0006】
細断されたリサイクル発泡粒子(再生材料)は通例、表面が閉じていない。したがって、加熱時に膨張することはない。使用目的に応じて、発泡粒子部品の製造に対する影響がゼロまたはほぼゼロと考えられる細断されたリサイクル発泡粒子部品の割合は低い。
【0007】
ただし、少なくとも、リサイクル材料の割合が高くなると、発泡粒子を結合して発泡粒子部品とする際の必要な圧力が得られず、均一な結合を可能とするには、発泡粒子同士が押圧し合う必要がある。再生材料の割合が10%超の場合、従来の製造方法では、粒子の結合が特定のエリアで発生しないため、仕上がった発泡粒子部品において、正しく結合していない部分が存在する、という問題がある。このため、発泡粒子部品において発泡粒子が構成する小片は、緩んでいる。
【0008】
このことは通常、最新のスポーツシューズのソールまたはスポーツ用ボールの発泡構成要素の場合と同様に、使用目的に応じて非常に多くの負荷サイクルに通すべき、かつ、一定の安定性を確保する必要がある発泡粒子部品の場合に、特に不都合である。場合によっては、このような主たる不都合により、既知の方法を用いた上記のようなシューズソール(または、スポーツウェアもしくはスポーツ用品の他の緩衝性要素)の製造に(相当量の)再生材料を使用することは、完全に不可能である。
【0009】
これに対処するため、十分な一体的押圧がなされるように発泡粒子に外部圧力を印加する内部試験が実行されている。リサイクル材料の割合が大きく10%を超える場合は、およそ5barの圧力が十分な結合の実現に適当であることが分かっている。ただし、これには、発泡粒子の接触面が本質的に大きい、という不都合がある。その結果、(いわゆる「蒸気箱成型」と同様に)型穴に導入されて発泡粒子を結合する蒸気は、型穴の縁部へと十分に進入できず、構成要素の内部へと十分に進入しない可能性がある。その結果、発泡粒子は、構成要素の中心よりも縁部エリアにおいて、より強く結合される。これにより、中心部の不十分な結合のため、発泡粒子部品の品質が低下する。
【0010】
再生材料の割合を増やしたい場合は、基本的にリサイクル対象となる発泡粒子部品を細断し、押圧/溶融し、再押し出しすることができる。これにより、リサイクル材料から、表面が閉じた発泡粒子が得られる。このようにして、上記説明した問題を克服することができる。ただし、リサイクル材料の再押し出しには、添加剤の添加が必要となる場合がある。これらの添加材は、高価である。また、このようにして生成された発泡粒子は汚染されており、非リサイクル材料から生成された発泡粒子よりも品質が劣り得るリスクがある。それにも関わらず、本願および本発明の意味においては、このような粒子が出発材料として了解され得るため、必要に応じて使用され得る。
【0011】
たとえば、国際公開第2014/128214号パンフレットには、飽和乾燥蒸気によって発泡粒子から発泡粒子部品を製造する方法および装置が記載されている。
【0012】
たとえば、米国特許第3060513号明細書、米国特許第3242238号明細書、英国特許第1403326号明細書、米国特許第5128073号明細書、および国際公開第2018/1001541号パンフレットには、電磁波により発泡粒子を結合して発泡粒子部品とする方法および装置が記載されている。
【0013】
また、国際公開第2019/122122号パンフレット、独国特許出願公開第102017205830号明細書、米国特許出願公開第2018/0327564号明細書、および独国特許出願公開第102016100690号明細書によって、別の従来技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2014/128214号パンフレット
【文献】米国特許第3060513号明細書
【文献】米国特許第3242238号明細書
【文献】英国特許第1403326号明細書
【文献】米国特許第5128073号明細書
【文献】国際公開第2018/1001541号パンフレット
【文献】国際公開第2019/122122号パンフレット
【文献】独国特許出願公開第102017205830号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0327564号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016100690号明細書
【文献】独国特許出願ADI156759号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、再生材料の割合が高い発泡粒子を簡単かつ確実に高品質で結合可能な方法および装置を創造する目的に基づく。
【0016】
詳細な目的は、特にスポーツウェア(特にシューズソール)またはスポーツ用品(特にスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素)の緩衝性要素の製造に使用する上記のような方法および上記のような装置を提供することである。この目的は、独立請求項により達成される。有利な実施形態については、各従属請求項において示される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る、シューズソールもしくはミッドソール等のスポーツウェア、または、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の発泡粒子部品、特に緩衝性要素を製造する方法は、
発泡粒子を型の型穴に供給するステップと、
所定の圧力を印加しつつ、型穴において発泡粒子を結合するステップと、
を含み、
発泡粒子が、少なくとも10重量%の割合の細断されたリサイクル発泡粒子(再生材料)を含み、発泡粒子の結合が、電磁波によって実行される。
【0018】
いくつかの実施形態において、発泡粒子部品の細断により得られる粒子は、元々が一体的に結合され、細断後も依然として閉じた状態の複数の個々の発泡粒子(「ビーズ」または「ペレット」と称する場合もある)を含み得る。いくつかの実施形態において、これらの粒子は、元の個々の発泡粒子(ビーズまたはペレット)が分離される程度に細断可能である。これにより通例、個々の発泡粒子の表面が損傷を受けるため、このように強く細断される粒子としては、表面が閉じていない前述の「再生材料」が可能である。
【0019】
本発明の発明者らは、電磁波によって発泡粒子を結合する場合、電磁波が発泡粒子に完全に進入して内側から加熱するため、発泡粒子の結合に対する影響なく、任意の圧力を発泡粒子に印加し得ることを認識している。再生材料の品質、サイズ、および割合に応じて、型穴中の隣り合う発泡粒子が十分に接触するように、圧力を調整可能である。また、電磁波をエネルギー源として使用することにより、複雑な3次元形状と、特に厚さが異なるエリアとを有する成型部品を製造可能となるため、この方法は、スポーツシューズのシューズソール、特にミッドソール(または、形状が複雑なスポーツウェアの他の緩衝性要素)の製造に特に好適である。
【0020】
再生材料すなわち細断されたリサイクル発泡粒子は、特に古い成型部品の細断(たとえば、粒子が一体結合済みの古いシューズソールもしくはミッドソールまたはスポーツ用ボールの発泡構成要素等の古いスポーツ用品の細断)によって得られる。これは、再生材料を回収する特に簡単かつコスト効率の良い方法となり得るため、すべての部品の取り扱いが容易である。
【0021】
ただし、一方では、本発明の範囲内において、(たとえば、古い材料の在庫余剰品をリサイクルして処分の必要性をなくすため)一体結合による成型部品の構成が未実施の古い粒子から再生材料を回収することも可能である。
【0022】
ここで再度、原理上は、溶融リサイクル材料から再押し出しされた、表面が閉じた粒子を出発材料として使用することも可能であることに言及しておく。
【0023】
本出願人が行った実験から、細断されたリサイクル発泡粒子(再生材料)の割合が最大で約60重量%までは、ePSで構成された発泡粒子部品を結合する際に、品質がほとんど損なわれないことが分かっている。これにより、重大な問題が非常に簡単に解決されるため、非常に驚くべきことである。
【0024】
ポリスチレンは、電磁波をほとんど吸収しない。したがって、ePSの発泡粒子を電磁波により結合する場合は、水等の伝熱媒体を追加して、電磁波を吸収する。これにより、発泡材料が電磁波によって間接的に加熱される。再生材料の割合が70%以上であれば、高レベルの不要な残留水分が発泡粒子部品に含まれることになる。
【0025】
膨張熱可塑性ポリウレタン(eTPU)等の材料の場合は、シューズソールまたはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの製造に特に好適であり、ポリスチレンよりも電磁波を吸収することから、必ずしも結合用の伝熱媒体を追加する必要はない。これらの材料により、残留水分の問題はなくなるため、再生材料の割合が70%を超える発泡粒子部品であっても、高品質で確実に製造可能である。
【0026】
細断されたリサイクル発泡粒子の割合は、少なくとも20重量%であってもよいし、特に少なくとも30重量%であってもよいし、少なくとも50重量%であってもよいし、少なくとも70重量%であってもよい。
【0027】
型穴における所定の圧力は、好ましくは少なくとも2bar、特に少なくとも3barであり、少なくとも5barに設定することも可能である。圧力が高いほど、細断されたリサイクル発泡粒子の割合を高く設定することおよび/またはより多くのリサイクル材料を細断することが可能となる。
【0028】
一方、設定圧力は、製造される成型部品の機械的特性(たとえば、シューズソールの剛性)にも影響するため、ここでは所望の特性に応じて(高低いずれかの圧力に対応して)、より多くの再生材料を使用することも可能であるし、より少ない再生材料を使用することも可能である。
【0029】
電磁波は、好ましくは電磁RF放射である。電磁RF放射は、少なくとも30KHzまたは少なくとも0.1MHz、特に少なくとも1MHzまたは少なくとも2MHzの周波数を有するのが好ましく、少なくとも10MHzが好ましい。
【0030】
電磁RF放射は、最大周波数が300MHzであるのが好ましい。
【0031】
電磁波を発生させる発生装置は、振幅が少なくとも10V、特に少なくとも10Vの電磁波を発生させるのが好ましい。市販の発生装置は、周波数が27.12MHzのRF放射を生成する。
【0032】
また、電磁波としては、マイクロ波も可能である。
【0033】
発泡粒子は、ePS(膨張ポリスチレン)またはePP(膨張ポリプロピレン)に基づき得る。これら2つの材料は、電磁放射をわずかしか吸収しない。したがって、結合時には水等の誘電性伝熱媒体を追加するのが望ましい。
【0034】
また、発泡粒子は、他の膨張熱可塑性プラスチック、特に電磁波をよく吸収するものにより形成することも可能である。
【0035】
膨張ポリウレタン(ePU)、押し出しポリエーテルブロックアミド(ePEBA)、膨張ポリ乳酸(PLA)、膨張ポリアミド(ePA)、膨張ポリブチレンテレフタレート(ePBT)、膨張ポリエステル-エーテルエラストマ(eTPEE)、または膨張ポリエチレンテレフタレート(ePET)に基づく発泡粒子も使用可能である。このような材料は、電磁波をよく吸収するため、これらの材料の発泡粒子は、伝熱媒体の追加なく電磁波を用いることにより、一体的に結合可能である。このことは特にRF放射の使用に当てはまり、サイズが最大数メートルの型穴に電磁波を均一に照射可能となる。
【0036】
電磁放射、特にRF放射をよく吸収する材料はそれぞれ、双極子モーメントに影響を及ぼす官能基(ここでは、アミド基、ウレタン基、またはエステル基)を有する。これらの官能基は、分子による電磁放射の吸収を担う。したがって、電磁放射、特にRF放射による結合には、双極子モーメントに影響を及ぼすこのような官能基を有する他の熱可塑性プラスチックも好適である。
【0037】
細断されたリサイクル発泡粒子は、混合装置を用いて、細断されていない発泡粒子と所定の比率で混ぜ合わせ、型に供給することができる。このような方法により、細断されたリサイクル発泡粒子の割合の自由な調整および迅速な変更が可能となる。
【0038】
また、リサイクル発泡粒子材料を細断した後、型穴に供給することも可能である。
【0039】
本発明の別の態様は、スポーツウェア、または、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の発泡粒子部品、特に緩衝性要素を製造する装置であって、
型穴を規定する型と、
型穴において所定の圧力を発泡粒子に印加する手段と、
型穴において発泡粒子を結合する電磁波を発生させる発生装置と、
を備えた、装置に関する。
【0040】
この装置は、細断されたリサイクル発泡粒子および細断されていない非リサイクル発泡粒子を混合する混合装置および/またはリサイクル対象の発泡材料を細断する細断装置が設けられたことを特徴とする。
【0041】
混合装置を設けることにより、個々の比率の細断されたリサイクル発泡粒子(=再生材料)および細断されていない非リサイクル発泡粒子(=出発材料)を型に供給するとともに、これらの比率を迅速に変更可能である。細断装置によれば、再結合に適した発泡粒子のサイズまでリサイクル対象の発泡粒子部品を細断して供給することができる。特に細断装置は、細断によって所定サイズの発泡粒子が明確に生成され得るように調整可能である。
【0042】
このようにして生成される細断粒子のサイズによって、製造される成型部品(たとえば、シューズソールまたはスポーツ用ボール、特にサッカーボール(既に細断中))の機械的特性に影響を及ぼすことも可能であるため都合が良い。たとえば、小さな直径となるように細断すれば、大きな直径となるように細断する場合と比較して、成型部品の剛性が高くなり得る。
【0043】
型穴において所定の圧力を発泡粒子に印加する装置としては、2つの半型が1つになって構成された型を押圧して型穴中に圧力を生成するプレスが可能である。ただし、この装置は、発泡粒子を型穴に移送する搬送ガスを運ぶことにより型穴を所定の圧力下に設定するポンプを具備していてもよい。型穴を発泡粒子で充填する際には、このようにして所望の圧力が設定される。
【0044】
上述の方法は、この目的のために上記装置が使用されるように設計可能である。
【0045】
複数回にわたって既に述べた通り、本発明の特に重要な応用分野は、スポーツウェア、特にシューズソール(たとえば、ミッドソールもしくはインソール)の緩衝性要素またはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素の製造であり、以下により詳しく取り上げる。
【0046】
したがって、本発明の重要な一態様は、スポーツウェア、特にシューズソールもしくはミッドソールまたはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素を製造する方法であって、
発泡粒子を型の型穴に供給するステップと、
所定の圧力を印加しつつ、型穴において発泡粒子を結合するステップと、
を含み、
発泡粒子が、少なくとも10重量%の細断されたリサイクル発泡粒子を含み、発泡粒子の結合が、電磁波によって実行される、方法を含む。
【0047】
1つの可能性として、細断されたリサイクル発泡粒子を含む発泡粒子で緩衝性要素全体が構成される。ただし、他の非粒状材料も使用可能である。この場合、重量%は、使用する粒状材料を表す。
【0048】
ここで再度、細断されたリサイクル発泡粒子は、古い成型部品の細断(たとえば、粒子が一体結合済みの古いシューズソールもしくはミッドソールまたはスポーツ用ボールの古い発泡構成要素の細断)によって得られることと、一体結合による成型部品の構成が未実施の古い粒子の細断によって再生材料を得ることも可能であることに言及しておく。いずれの場合も、細断された再生材料の(平均)サイズは、製造される緩衝性要素の機械的特性に影響を及ぼす別の調整手段として機能し得る。
【0049】
一方、溶融リサイクル材料から再押し出しされた、表面が閉じた粒子を出発材料として使用することも可能である。
【0050】
さらに、細断されたリサイクル発泡粒子(すなわち、再生材料)の割合はそれぞれ、少なくとも20重量%、特に少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、および少なくとも70重量%であってもよい。この場合、型穴における所定の圧力としては、少なくとも2bar、特に少なくとも3barが可能であり、少なくとも5barであるのが好ましい。前述の通り、使用する圧力は、再生材料の量の増加に合わせて高くすることができるものの、製造品の所望の機械的特性等の他の因子もまた、好適な圧力の選定に影響を及ぼす。
【0051】
また、発泡粒子は、ポリスチレン(ePS)、ポリプロピレン(ePP)、ポリウレタン(eTPU)、ポリエーテルブロックアミド(ePEBA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(ePA)、ポリブチレンテレフタレート(ePBT)、ポリエステル-エーテルエラストマ(eTPEE)、またはポリエチレンテレフタレート(ePET)に基づいて、スポーツウェア、または、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素に使用可能である。
【0052】
緩衝性要素、特にシューズソールまたはサッカーボールでの使用に特に適したものとして、構成する緩衝性要素に対してもたらし得る機械的特性から、eTPU、ePA、ePEBA、および/もしくはeTPEEを含む発泡粒子またはこれらの材料から成る発泡粒子が可能である。
【0053】
電磁波を用いた接合処理、特に結合が可能であることを前提として、ある材料の細断粒子を別の材料の非細断粒子と組み合わせることができる。
【0054】
電磁波を用いた結合中に、伝熱媒体を発泡粒子に追加することができる。伝熱媒体としては、たとえば水等の液体が可能である。金属も使用可能である。
【0055】
このような手段の追加によって、局所的とはいえ結合の程度への影響および制御が可能となり、これが製造品の機械的特性にも影響を及ぼし得る。
【0056】
ただし、発泡粒子は、十分な結合の程度が既に可能となっていることを前提として、伝熱媒体の追加なく、電磁波によって結合することも可能である。この可能性により、プロセス工学の観点から特に簡単で都合が良い。
【0057】
スポーツウェアまたはスポーツ用品の緩衝性要素の製造方法においては、細断されたリサイクル発泡粒子および細断されていない発泡粒子を所定の比率で混合して型に供給する混合装置を使用可能である。たとえば、リサイクル発泡粒子材料(たとえば、古いシューズソール等またはスポーツ用ボールの発泡構成要素(たとえば、古いサッカーボールのボールパネル)の形態)を細断した後、型穴に供給することができる。
【0058】
さらに、本発明は、発泡粒子から、スポーツウェア、特にシューズソールもしくはミッドソールまたはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素を製造する装置であって、
型穴を規定する型と、
型穴において所定の圧力を発泡粒子に印加する装置と、
型穴において発泡粒子を結合する電磁波を発生させる発生装置と、
を備え、
細断されたリサイクル発泡粒子および細断されていない発泡粒子を混合する混合装置および/またはリサイクル対象の発泡粒子を細断する細断装置が設けられたことを特徴とする、装置を含む。
【0059】
緩衝性要素を製造する装置は、細断された発泡粒子を選別する選別装置をさらに具備していてもよい。
【0060】
このような装置において、上述のような方法の実行により、スポーツウェア、特にシューズ用ソールもしくはミッドソールまたはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素を製造することができる。技術的に可能な限り、本発明に係る方法のさまざまな設計オプションを互いに組み合わせることができる。
【0061】
本発明の別の態様は、一体的に結合された発泡粒子を含むスポーツウェア、特にシューズ用ソールもしくはミッドソールまたはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素であって、発泡粒子が、少なくとも10重量%の割合の細断されたリサイクル発泡粒子を含む、緩衝性要素に関する。
【0062】
いくつかの実施形態において、スポーツウェア、特にシューズ用ソールまたはミッドソールの緩衝性要素は、細断されたリサイクル発泡粒子を含む材料の少なくとも1つの部分を備えていてもよい。少なくとも1つの部分は、細断されたリサイクル発泡粒子で全体が構成されていてもよい。少なくとも1つの部分は、重量割合が異なる細断されたリサイクル発泡粒子で構成されていてもよい。前述の通り、上記部分内の細断されたリサイクル発泡粒子の割合は、少なくとも10重量%であってもよいし、少なくとも20重量%であってもよいし、特に少なくとも30重量%であってもよいし、少なくとも50重量%であってもよいし、少なくとも70重量%であってもよい。細断されたリサイクル発泡粒子は、前述の非リサイクル発泡粒子の出発材料と混合されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子は、適合する別のポリマー材料と混合されていてもよい。
【0063】
細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分がシューズソール全体を構成していてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分がミッドソール全体を構成していてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、シューズソールまたはミッドソール内の特定の位置に配置されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、スポーツウェア、特にシューズ用ソールまたはミッドソールの緩衝性要素の前足部および/または後足部に配置されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、シューズソールまたはミッドソールの内側領域および/または外側領域に配置されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、上記位置の組み合わせに配置されていてもよい。
【0064】
さらに、細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、少なくとも1つの層として配置されていてもよい。シューズソールまたはミッドソールが単一の層を含んでいてもよい。シューズソールまたはミッドソールが2つ以上の層を含んでいてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の単一の部分で層全体が構成されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の複数の部分を層が含んでいてもよい。
【0065】
たとえば、サンドイッチ層構造を有する最終のソールをコスト効率的に製造するのに、細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分を有する予備製造層が用いられるようになっていてもよい。
【0066】
少なくとも2つの層が異なる厚さを有していてもよい。たとえば、スポーツシューズの場合は、ソールの前足部がソールのその他の部分に対して、細断されたリサイクル発泡粒子で異なる厚さを有することにより、このソール部分の緩衝性または剛性等の機械的特性が選択的に調整されるようになっていてもよい。
【0067】
緩衝性要素の部分が実質的に同じ特性を有することも考えられる。また、少なくとも1つの特性(たとえば、エネルギー回復、剪断安定性または剛性、色、硬度、厚さ、密度)について、緩衝性要素の部分が互いに異なることも考えられる。また、着用者に対する高い設計柔軟性をもたらすため、細断されたリサイクル発泡粒子の割合を層ごとに異ならせることも考えられる。また、この代替または追加として、異なる種類の細断されたリサイクル発泡粒子を使用すること(たとえば、ある部分に細断eTPU、別の部分に細断ePEBAを使用すること)も考えられる。また、細断されたリサイクル発泡粒子の混合物を使用し得るとも考えられる。前述の通り、細断されたリサイクル発泡粒子の割合は、所望の最終特性を緩衝性要素の所要性能に合わせるように調整可能である。
【0068】
また、細断されたリサイクル発泡粒子のこのような構成は、高い設計柔軟性をもたらす前述の着想にも従い、ソールの特定のエリアにおいて、着用者の特定のニーズに起因する機械的特性を選択的に調整可能とする。たとえば、ランニングシューズは、回内運動または回外運動を回避するため、安定性および緩衝性の両特性を良好に混ぜ合わせるべきである。
【0069】
いくつかの実施形態において、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素は、細断されたリサイクル発泡粒子を含む材料の少なくとも1つの部分を備えていてもよい。少なくとも1つの部分は、細断されたリサイクル発泡粒子で全体が構成されていてもよい。少なくとも1つの部分は、重量割合が異なる細断されたリサイクル発泡粒子で構成されていてもよい。前述の通り、上記部分内の細断されたリサイクル発泡粒子の割合は、少なくとも10重量%であってもよいし、少なくとも20重量%であってもよいし、特に少なくとも30重量%であってもよいし、少なくとも50重量%であってもよいし、少なくとも70重量%であってもよい。細断されたリサイクル発泡粒子は、前述の非リサイクル発泡粒子の出発材料と混合されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子は、適合する別のポリマー材料と混合されていてもよい。
【0070】
細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、スポーツ用ボールのパネルとして配置されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分がスポーツ用ボールのパネル全体を構成していてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、スポーツ用ボールのパネルの部分として配置されていてもよい。パネルは、細断されたリサイクル発泡粒子に対する保護被膜(たとえば、ポリウレタン(PU)吹き付け被膜または箔被膜(たとえば、PU箔))をさらに含んでいてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分が発泡構成要素全体またはスポーツ用ボール全体を構成していてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分がサッカーボール全体を構成していてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素内の特定の位置に配置されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、本質的に規則的なパターンにて、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素上の特定の位置に配置されていてもよい。不規則またはランダムに配置されたパターンも可能である。
【0071】
さらに、細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分は、少なくとも1つの層として配置されていてもよい。スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素は、単一の層を含んでいてもよい。スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素は、2つ以上の層を含んでいてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の単一の部分で層全体が構成されていてもよい。細断されたリサイクル発泡粒子の複数の部分を層が含んでいてもよい。少なくとも2つの層が異なる厚さを有していてもよい。
【0072】
たとえば、サンドイッチ層構造を有するスポーツ用ボール、特にサッカーボールの最終の発泡構成要素をコスト効率的に製造するのに、細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分を有する予備製造層が用いられるようになっていてもよい。
【0073】
緩衝性要素の部分が実質的に同じ特性を有することも考えられる。また、少なくとも1つの特性(たとえば、エネルギー回復、剪断安定性または剛性、色、硬度、厚さ、密度)について、緩衝性要素の部分が互いに異なることも考えられる。また、運動競技に対する高い設計柔軟性をもたらすため、細断されたリサイクル発泡粒子の割合を層ごとに異ならせることも考えられる。また、この代替または追加として、異なる種類の細断されたリサイクル発泡粒子を使用すること(たとえば、ある部分に細断eTPU、別の部分に細断ePEBAを使用すること)も考えられる。また、細断されたリサイクル発泡粒子の混合物を使用し得るとも考えられる。前述の通り、細断されたリサイクル発泡粒子の割合は、所望の最終特性をスポーツ用品の緩衝性要素の所要性能に合わせるように調整可能である。
【0074】
本発明の別の態様は、前述のステップのうちの1つまたは複数を含む、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素の緩衝性要素を製造する方法であって、サッカーボールがブラダーを有さず、細断されたリサイクル発泡粒子で構成された、方法に関する。細断されたリサイクル発泡粒子は、サッカーボールのコアとして配置されていてもよい。また、この代替または追加として、重量軽減の向上のため、細断されたリサイクル発泡粒子の層をサッカーボールが含むことも考えられる。これらの層は、異なる細断材料の層または非細断材料の層(たとえば、EVA等の軽量発泡体)とともに散在していてもよい。
【0075】
特に発泡粒子(すなわち、細断されたリサイクル発泡粒子および細断されていないリサイクル発泡粒子)は、eTPU、ePA、eTPEE、および/またはePEBAを含んでいてもよいし、これらから成っていてもよい。また、原理上、接合処理が可能であることを前提として、ある材料の細断粒子を別の材料の非細断粒子と組み合わせることも可能である。
【0076】
発泡粒子は、所定の圧力の印加および電磁波の使用により結合されていてもよい。
【0077】
一般的には、上記のような緩衝性要素の製造のため、技術的に可能な限り、緩衝性要素の意図する特性プロファイルに応じて、本発明に係る方法の上述の任意選択的な実施形態オプションを互いに組み合わせることができる。
【0078】
本発明は、図面を例として以下により詳しく説明する。図面は、以下のような模式図である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】リサイクル発泡粒子材料を用いて発泡粒子部品を製造する装置を示したブロック図である。
図2】本発明に係るシューズ用ソールまたはミッドソールの緩衝性要素の例示的な一実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、発泡粒子部品の製造装置の一例により、本発明を説明する(図1)。このような装置は、自動成型機1とも称する。
【0081】
前述の通り、このような装置およびそこで実行される方法は、特にスポーツウェア、または、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素(図2)の製造に使用可能であり、ここでは、目的に応じて可能な限り自由に(すなわち、技術的に可能な限り)、上記詳述した設計オプションを互いに組み合わせることができる。
【0082】
図1の自動成型機1は、上側半型3および下側半型4により形成された少なくとも1つの型2を備える。型2は、内部で一体的に結合されて、加熱により発泡粒子部品を構成する発泡粒子を受容する型穴(図示せず(たとえば、シューズソール210の形状))を規定する。
【0083】
型2は、いわゆるクラックギャップ型である。すなわち、2つの半型3、4が発泡粒子を取り込むように少しだけ離れた後、粒子が充填されると、プレス5による一体的な押圧によって、型穴中の発泡粒子に加圧することができるように設計されている。
【0084】
プレス5は、支持板7を備えたプレス台6およびプレス板9を備えたプレスプランジャ8を備える。プレスプランジャ8は、プレス板を上下(両方向矢印11)可能なシリンダ/ピストンユニット10を有する。
【0085】
さらに、リサイクル対象の発泡粒子部品を保持するコンテナ12が設けられている。コンテナ12は、漏斗状に開口するとともに、所定のサイズ範囲の発泡粒子へと細断される発泡粒子部品を細断するように設計された細断装置13に向かって、底面が下方に開いている。細断発泡粒子は、細断方法によって不規則に成形される。これらの発泡粒子の最大膨張は通例、少なくとも3mm、特に少なくとも4mmから、最大10mmまたは8mmの範囲である。細断発泡粒子の(平均)サイズは、たとえば2つの細断ローラ間の距離を調整することにより制御可能である。
【0086】
細断装置13は、ライン14を介して選別装置15に接続されている。発泡粒子を選別する選別装置については、たとえば出願番号ADI156759にて本願と同日に出願された本出願人の独国特許出願に記載されている。この特許出願は、そのすべての内容を本明細書に援用する。選別装置15により、所定の基準に従って細断発泡粒子を選別可能である。1つまたは複数の選別基準を適用可能である。所望の基準を満たさない発泡粒子は、排出ライン16を介して収集コンテナ17へと排出される。
【0087】
選別装置15は、ライン18により混合装置19に接続されている。ライン18を介して、選別基準を満たした細断リサイクル発泡粒子が選別装置15から混合装置19に移送される。これらの発泡粒子は、再生材料を構成する。
【0088】
混合装置は、ライン21を介して貯蔵タンク20に接続されている。
【0089】
ライン14、18において、発泡粒子は、搬送ガスにより移送される。搬送ガスは通例、空気である。この搬送ガスは、ポンプ22により加圧可能である。ポンプ22は、分岐ライン23を介してライン21に接続されている。
【0090】
貯蔵コンテナ20は、非リサイクル発泡粒子の提供に用いられる。これらは、出発材料と称する。出発材料は、ライン21を介して混合装置19に供給される。
【0091】
混合装置19においては、再生材料と出発材料とが一定の比率で混ぜ合わされる。混合比は、自由に調整可能である。
【0092】
混合装置19は、ライン24を介して、2つの半型の一方3に開口した充填注入器25に接続されている。この例において、充填注入器25は、上側の半型3に開口している。
【0093】
充填注入器は、圧縮空気ライン26を介して、圧搾空気を充填注入器25に供給可能な別のポンプ27に接続されている。この空気は、充填空気と呼ばれ、充填注入器25から型2の型穴へと発泡粒子を運び、必要に応じて加圧する。
【0094】
支持板7は、導電性であり、金属板であることが好ましい。たとえば、スチールまたはアルミニウムで構成可能である。支持板7は、同軸ライン28を介して高周波発生装置29に接続されている。
【0095】
高周波発生装置は、RF放射を生成するように設計されている。高周波発生装置は、電気接地30に接続されている。
【0096】
プレス板9も導電性であり、同じく金属板、特にアルミニウムまたはスチール板が可能であって、電気接地に接続されている。
【0097】
このように、支持板7およびプレス板9は、高周波発生装置によって高周波電磁界またはRF放射を間に適用可能な蓄電板を構成する。
【0098】
2つの半型3、4は、RF放射に対して本質的に透明な材料で構成されている。この材料は、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、特にUHMWPE、ポリエーテルケトン(PEEK)である。
【0099】
この自動成型機1により、たとえばスポーツウェア、特にシューズソール(たとえば、ミッドソールもしくはインソール)の緩衝性要素またはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の緩衝性要素の製造に関して、以下の方法を実行可能である。
【0100】
リサイクル対象の発泡粒子部品がコンテナ12に載置され、そこから細断装置13に移送される。細断装置13においては、発泡粒子へと細断される。発泡粒子は、調整可能な所定サイズに細断される。この再生材料は、選別装置15に供給される。選別装置15により、所定の基準に対応しない不純物または発泡粒子が取り除かれる。これらの基準としては、サイズ、形状、色、密度等、さまざまな種類が可能である。また、磁性粒子も除去され得る。
【0101】
このようにして作成された再生材料は、ライン18を介して混合装置19に供給され、所定の比率で出発材料と混合可能である。混合比自体は、希望通りに設定可能である。出発材料の割合としては、0%も可能である。
【0102】
発泡粒子は、混合装置19から型2に供給される。ここで、搬送ガスがポンプ22、27により加圧されるため、発泡粒子は、圧力下で型穴に供給される。
【0103】
発泡粒子の供給時には、2つの半型3、4が少しだけ引き離される。型穴が発泡粒子で充填されると、2つの半型3、4がプレス5によって少しだけ一体的に押圧されるため、型穴のサイズが小さくなり、型穴中の発泡粒子に対する圧力が高くなる。
【0104】
高周波発生装置29によって、加圧された発泡粒子にRF放射が適用され、発泡粒子が加熱されて一体的に結合される。
【0105】
RF放射は型穴中の発泡粒子を加熱するが、これは、RF放射の直接吸収またはRF放射を吸収して発泡粒子に伝達する水等の伝熱媒体の追加によって、完全に加熱される。
【0106】
発泡粒子の結合のため、外側から型2に蒸気を供給する必要はない。型穴中の発泡粒子の加圧は、電磁放射による熱供給に一切の影響を及ぼさない。
【0107】
このように、電磁放射と型穴中の発泡粒子への圧力印加との組み合わせによって、再生材料の割合が高い発泡粒子を結合可能となる。実施例については、以下により詳しく説明する。
【0108】
本発明の範囲内において、前述の例は、さまざまに改良可能である。たとえば、圧力印加には、ポンプまたはプレスのみを設ければ十分である。発泡粒子の圧力下でのポンプによる充填およびその後のプレスによる型の圧縮は不要である。ただし、ポンプによる加圧充填とプレスによるクラックギャップの圧縮との組み合わせによって、型穴中に高い圧力を印加可能となる。
【0109】
また、本発明に関連して、半型が電磁波に対して透明であることも必要ない。また、半型は、金属で構成可能であり、それ自体が蓄電板として機能し得る。半型がいずれも導電性の場合は、互いに絶縁する必要がある。
【0110】
任意選択としては、ライン18、21、および24の1つまたは複数の点にノズル31を設けることにより、水または別の流体を供給することができる。水は、液体または蒸気として供給可能である。
【0111】
流体の追加によって、一方では、ライン中の発泡粒子の移送を容易化することができる。このような発泡粒子は、凝集する傾向にある。発泡粒子の表面が水等の液体で湿っていると、この傾向が抑えられ、圧送がより確実になる。さらに、このような流体は、発泡粒子の結合時の伝熱媒体として機能し得る。ポリスチレン(ePS)およびポリプロピレン(ePP)等の特定のプラスチック材料は、電磁放射をごくわずかにしか吸収しない。伝熱媒体は、型穴中の電磁放射を吸収して、発泡粒子に伝達可能である。本質的に電磁放射をよく吸収する材料が用いられる場合は、伝熱媒体の追加が不要となる。
【実施例
【0112】
寸法が1000×500×60mm(=30リットル)の板を製造した。出発材料および再生材料ともに、ePSの発泡粒子とした。充填中、9mmのクラックギャップだけ型を開口させた。型穴の膨張容積は、34.5リットルであった。
【0113】
半型が接合された際に、圧力下で発泡粒子を投入した。
【0114】
再生材料の割合が0%、10%、20%、30%、40%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、および100%の板を製造した。
【0115】
伝熱媒体として水を追加した。水の量は、150ml~250mlとした。再生材料の割合が高いほど、追加する水の量も多くした。
【0116】
すべての板が結合可能となった。再生材料の含有率が70%以上のシートは、表面がより粗く、はるかに多くの残留水分を含んでおり、これが再生材料の開口有孔発泡粒子中に残っていた。
【0117】
再生材料が最大60%の板は、すべての品質要件を満たしていたが、再生材料を含まない板からの識別は、ほぼ不可能である。
【0118】
図2は、本発明に係る緩衝性要素としてソール210またはミッドソールを有するシューズ200の例示的な一実施形態を示している。シューズ200のソール210は、一体的に結合された発泡粒子220を含み、これらの発泡粒子は、少なくとも10重量%の割合の細断されたリサイクル発泡粒子230を含む。図2の実施形態において、細断されたリサイクル発泡粒子230の割合は、ソール210の少なくとも約40重量%である。
【0119】
ソール210は、少なくとも1つの層に配置された、細断されたリサイクル発泡粒子230の少なくとも1つの部分を備える。第1の部分がソール210の前足部240に配置され、第2の部分がソール210の中足部に配置され、第3の部分(図示せず)がソール210の踵部または後足部250に配置されている。対応する第1の層がソール210の上部において、前足部240から中足部まで延びている。第2の層がソール210の下部において、ソール210の前足部240からソール210の踵部または後足部250の先頭近くまで延びている。第3の層(図示せず)がソール210の下面上で、ソール210の前足部240から踵部または後足部250まで、言い換えると、ソール210の下面全体にわたって、延びていてもよい。当業者であれば、これら3つの部分および層が例示に過ぎず、他の部分および層構成も考えられることが理解されよう。
【0120】
本発明の他の例示的な実施形態を以下に一覧として記載するが、これらは、本発明がもたらす可能性のより深い理解に役立つ。
【0121】
1.スポーツウェア、特にシューズソールもしくはミッドソールまたはスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の発泡粒子部品を製造する方法であって、
発泡粒子を型の型穴に供給するステップと、
所定の圧力を印加しつつ、型穴において発泡粒子を結合するステップと、
を含み、
発泡粒子が、少なくとも10重量%の細断されたリサイクル発泡粒子を含み、発泡粒子の結合が、電磁波によって実行される、方法。
【0122】
2.細断されたリサイクル発泡粒子の割合が、少なくとも20重量%、特に少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも70重量%であることを特徴とする、例1に記載の方法。
【0123】
3.型穴における所定の圧力が、少なくとも2bar、特に少なくとも3bar、好ましくは少なくとも5barであることを特徴とする、例1または2に記載の方法。
【0124】
4.発泡粒子が、ポリスチレン(ePS)、ポリプロピレン(ePP)、ポリウレタン(eTPU)、ポリエーテルブロックアミド(ePEBA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(ePA)、ポリブチレンテレフタレート(ePBT)、ポリエステル-エーテルエラストマ(eTPEE)、またはポリエチレンテレフタレート(ePET)に基づくことを特徴とする、例1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
5.電磁波を用いた結合中に、伝熱媒体が発泡粒子に追加されることを特徴とする、例1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
6.伝熱媒体が、水等の液体であることを特徴とする、例5に記載の方法。
【0127】
7.発泡粒子が、伝熱媒体の追加なく、電磁波を用いて一体的に結合されることを特徴とする、例1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
8.細断されたリサイクル発泡粒子および細断されていない非リサイクル発泡粒子が混合装置により所定の比率で混合され、型に供給されることを特徴とする、例1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
9.リサイクル発泡粒子材料が細断された後、型穴に供給されることを特徴とする、例1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
10.発泡粒子から、特にシューズソールもしくはミッドソールの形態のスポーツウェア、または、スポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素等のスポーツ用品の発泡粒子部品を製造する装置であって、
型穴を規定する型と、
型穴において所定の圧力を発泡粒子に印加する手段と、
型穴において発泡粒子を結合する電磁波を発生させる発生装置と、
を備え、
細断されたリサイクル発泡粒子および細断されていない非リサイクル発泡粒子を混合する混合装置および/またはリサイクル対象の発泡粒子を細断する細断装置が設けられたことを特徴とする、装置。
【0131】
11.細断された発泡粒子を選別する選別装置が設けられたことを特徴とする、例10に記載の発泡粒子部品製造装置。
【0132】
12.例10または11に記載の装置が使用されることを特徴とする、例1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
13.一体的に結合された発泡粒子を含むスポーツウェア、特にシューズ用ソールまたはミッドソールの緩衝性要素であって、発泡粒子が、少なくとも10重量%の割合の細断されたリサイクル発泡粒子を含む、緩衝性要素。
【0134】
14.細断されたリサイクル発泡粒子を有する少なくとも1つの部分を備えた、例13に記載の緩衝性要素。
【0135】
15.細断されたリサイクル発泡粒子の重量割合が異なる少なくとも2つの部分を備えた、例13または14に記載の緩衝性要素。
【0136】
16.細断されたリサイクル発泡粒子の少なくとも1つの部分が、少なくとも1つの層として配置された、例13または14に記載の緩衝性要素。
【0137】
17.細断されたリサイクル発泡粒子を有する少なくとも2つの層が、異なる厚さを有する、例16に記載の緩衝性要素。
【0138】
18.スポーツウェア、特にシューズ用ソールまたはミッドソールを対象とし、細断されたリサイクル発泡粒子が、前足部および/または後足部に配置された、例13~17のいずれか一項に記載の緩衝性要素。
【0139】
19.スポーツ用ボールを対象とし、細断されたリサイクル発泡粒子が、スポーツ用ボールのコアとして配置された、例14~17のいずれか一項に記載の緩衝性要素。
【0140】
20.発泡粒子が、eTPU、ePA、eTPEE、および/またはePEBAを含むか、またはこれらから成る、例19に記載の緩衝性要素。
【0141】
21.発泡粒子が、所定の圧力の印加および電磁波の使用により結合された、例19または20に記載の緩衝性要素。
【0142】
22.例1~9のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された、例19~21のいずれか一項に記載の緩衝性要素。
【0143】
23.例13~22のいずれか一項に記載のスポーツウェア、特にシューズ用ソール(210)またはミッドソールの緩衝性要素を備えたシューズ(200)、特にスポーツシューズ。
【0144】
24.例1~9のいずれか一項に記載の方法を用いて、例13~22のいずれか一項に記載のスポーツ用ボール、特にサッカーボールの発泡構成要素の緩衝性要素を製造する方法。
【0145】
ここでもう一度、本発明の特に重要な一態様は、スポーツウェアの緩衝性要素の製造、特にシューズソールの製造にあるため、上記例示的な実施形態の一覧に記載のすべての特徴および設計オプションは、個別および/または種々組み合わせおよび副組み合わせにて、このようなスポーツウェアの緩衝性要素の製造との関連で適用可能であることを強調しておく。
【符号の説明】
【0146】
1 自動成型機
2 型
3 上側半型
4 下側半型
5 プレス
6 プレス台
7 支持板
8 プレスプランジャ
9 プレス板
10 シリンダ/ピストンユニット
11 両方向矢印
12 コンテナ
13 細断装置
14 ライン
15 選別装置
16 排出ライン
17 収集コンテナ
18 ライン
19 混合装置
20 貯蔵タンク
21 ライン
22 ポンプ
23 分岐ライン
24 ライン
25 充填注入器
26 圧力容器
27 ポンプ
28 同軸ライン
29 高周波発生装置
30 電気接地
31 ノズル
上記の参照符号のリストは、本出願の不可欠な部分である。
図1
図2