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特許7157117固体電解質のための接触面調節材料及びそのコンポジット電解質系
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】固体電解質のための接触面調節材料及びそのコンポジット電解質系
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/056 20100101AFI20221012BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221012BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221012BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20221012BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01M10/056
H01M10/052
H01M4/13
H01B1/06 A
C08L101/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020175063
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2021066879
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】108138054
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6-1, Ziqiang 7th Rd., Zhongli Dist., Taoyuan City, Taiwan
(73)【特許権者】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】楊思▲ダン▼
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリ ベロフ
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-530195(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015111806(DE,A1)
【文献】特開2018-032621(JP,A)
【文献】特表2019-503050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学系に適合させられ且つ固体電解質の外面上に位置し、
ポリマー基材と、
前記ポリマー基材の中に混ぜ込まれた添加剤と、
前記ポリマー基材の結晶成長阻害材料と、を含み、
前記ポリマー基材により金属イオンはその内部を移動でき、
前記添加剤は金属塩を解離させることができ、また可塑剤としての役割を果たすことを特徴とする、
固体電解質のための接触面調節材料。
【請求項2】
第1無機固体電解質である第1粒子と、
第2無機固体電解質、パッシブセラミック材料又は活物質から選択される第2粒子と、
前記第1粒子と前記第2粒子との間に位置し且つ固体電解質のための接触面調節材料から構成され、第1粒子と第2粒子とを接着させてその間にイオン伝導路を形成するブリッジ部とを含み、
前記接触面調節材料はポリマー基材と、前記ポリマー基材の中に混ぜ込まれた添加剤と、を含み、前記ポリマー基材の結晶成長阻害材料をさらに含み、
前記ポリマー基材により金属イオンはその内部を移動でき、
前記添加剤は金属塩を解離させることができ、また可塑剤としての役割を果たすことを特徴とする、
コンポジット電解質系。
【請求項3】
第1無機固体電解質である第1粒子と、
第2無機固体電解質、パッシブセラミック材料又は活物質から選択される第2粒子と、
前記第1粒子の外面を覆う第1シェル層と、を含み、
固体電解質のための接触面調節材料から構成される前記第1シェル層は、前記第1粒子と前記第2粒子とを接着させてその間にイオン伝導路を形成し、
前記接触面調節材料はポリマー基材と、前記ポリマー基材の中に混ぜ込まれた添加剤と、を含み、
前記ポリマー基材により金属イオンはその内部を移動でき、
前記添加剤は金属塩を解離させることができ、また可塑剤としての役割を果たすことを特徴とする、
コンポジット電解質系。
【請求項4】
前記ポリマー基材は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルアクリレート(PEGDMA)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(PEGME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ポリ[エチレンオキシド-コ-2-(2-メトキシエトキシ)エチルグリシジルエーテル](PEO/MEEGE)、超分岐ポリマー又はポリニトリルから選択され、
また前記添加剤は粘性結晶電解質(PCE)又はイオン液体であり、
前記粘性結晶電解質(PCE)は、スクシノニトリル(SN)[ETPTA//SN、PEO/SN、PAN/PVA-CN/SN]、N-エチル-N-メチルピロリジウム、[Cmpyr]+アニオンN、N-ジエチル-ピロリジニウム、[C2epyr]、第四アルキルアンモニウム、n-アルキルトリメチルホスホニウム、[P1,1,1,n]、デカメチルフェロセニウム、[Fe(CMe]、1-(N,N-ジメチルアンモニウム)-2-(アンモニウム)エタントリフレート([DMEDAH][Tf])、アニオン=[FSI]、[FSA]、[CFSA]、[BETA]、LiSi(CH(SO)又はトリメチ(リチウムトリメチルシリルサルフェート)から選択される
ことを特徴とする、請求項1に記載の接触面調節材料。
【請求項5】
粒径がナノメートのオーダーの第2ドーパントを更に含み、前記第2ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料、導電性材料又はこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の接触面調節材料。
【請求項6】
前記第2粒子の外面を覆う第2シェル層をさらに含み、前記第2シェル層は、固体電解質のための前記接触面調節材料から構成されて、前記第1粒子と前記第2粒子とをその間に前記第1シェル層とともにイオン伝導路を形成するように接着させることを特徴とする、請求項3に記載のコンポジット電解質系。
【請求項7】
少なくとも前記第2シェル層の外面は複数の第1ドーパントをさらに含み、
前記第2粒子が前記第2無機固体電解質又は前記パッシブセラミック材料から選択される場合、前記第1ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料又はこれらの組み合わせから選択され、
前記第2粒子が前記活物質である場合、前記第1ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料、導電性材料又はこれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする、請求項6に記載のコンポジット電解質系。
【請求項8】
前記第2粒子が前記活物質である場合、前記第2粒子は前記第2粒子と前記第2シェル層との間に配置された人工不動態膜をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載のコンポジット電解質系。
【請求項9】
前記第1シェル層と前記第2シェル層との間に位置し且つそれらを接着させるブリッジ部をさらに含み、前記ブリッジ部は、固体電解質のための前記接触面調節材料から構成されて、前記第1粒子と前記第2粒子とをその間に前記第1シェル層及び前記第2シェル層とともにイオン伝導路を形成するように接着させることを特徴とする、請求項6に記載のコンポジット電解質系。
【請求項10】
前記ブリッジ部の、少なくとも前記第1粒子及び前記第2粒子と接触していない表面は複数の第1ドーパントを含み、
前記第2粒子が前記第2無機固体電解質又は前記パッシブセラミック材料から選択される場合、前記第1ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料又はこれらの組み合わせから選択され、
前記第2粒子が前記活物質である場合、前記第1ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料、導電性材料又はこれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする、請求項2に記載のコンポジット電解質系。
【請求項11】
前記ブリッジ部の、少なくとも前記第1シェル層及び前記第2シェル層と接触していない表面は複数の第1ドーパントを含み、
前記第2粒子が前記第2無機固体電解質又は前記パッシブセラミック材料から選択される場合、前記第1ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料又はこれらの組み合わせから選択され、
前記第2粒子が前記活物質である場合、前記第1ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料、導電性材料又はこれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする、請求項9に記載のコンポジット電解質系。
【請求項12】
前記第1ドーパントは前記第1粒子及び/又は前記第2粒子の外面までさらに延びて堆積していることを特徴とする、請求項10に記載のコンポジット電解質系。
【請求項13】
前記第1ドーパントは前記第1シェル層及び/又は前記第2シェル層の外面までさらに延びて堆積していることを特徴とする、請求項11に記載のコンポジット電解質系。
【請求項14】
前記接触面調節材料は粒径がナノメートルのオーダーの第2ドーパントをさらに含み、
前記第2粒子が前記第2無機固体電解質又は前記パッシブセラミック材料から選択される場合、前記第2ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料又はこれらの組み合わせから選択され、
前記第2粒子が前記活物質である場合、前記第2ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料、導電性材料又はこれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする、請求項2、3又は9に記載のコンポジット電解質系。
【請求項15】
前記第2粒子が前記活物質である場合、前記第2粒子は前記第2粒子の外面に配置された人工不動態膜をさらに含むことを特徴とする、請求項2又は3に記載のコンポジット電解質系。
【請求項16】
少なくとも前記第1シェル層の外面は複数の第1ドーパントをさらに含み、
前記第2粒子が前記第2無機固体電解質又は前記パッシブセラミック材料から選択される場合、前記第1ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料又はこれらの組み合わせから選択され、
前記第2粒子が前記活物質である場合、前記第1ドーパントは無機固体電解質、パッシブセラミック材料、導電性材料又はこれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする、請求項3に記載のコンポジット電解質系。
【請求項17】
前記ポリマー基材の結晶成長阻害材料をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載のコンポジット電解質系。
【請求項18】
前記ポリマー基材は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルアクリレート(PEGDMA)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(PEGME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ポリ[エチレンオキシド-コ-2-(2-メトキシエトキシ)エチルグリシジルエーテル](PEO/MEEGE)、超分岐ポリマー又はポリニトリルから選択され、
また前記添加剤は粘性結晶電解質(PCE)又はイオン液体であり、
前記粘性結晶電解質(PCE)は、スクシノニトリル(SN)[ETPTA//SN、PEO/SN、PAN/PVA-CN/SN]、N-エチル-N-メチルピロリジウム、[Cmpyr]+アニオンN、N-ジエチル-ピロリジニウム、[C2epyr]、第四アルキルアンモニウム、n-アルキルトリメチルホスホニウム、[P1,1,1,n]、デカメチルフェロセニウム、[Fe(CMe]、1-(N,N-ジメチルアンモニウム)-2-(アンモニウム)エタントリフレート([DMEDAH][Tf])、アニオン=[FSI]、[FSA]、[CFSA]、[BETA]、LiSi(CH(SO)又はトリメチ(リチウムトリメチルシリルサルフェート)から選択される
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載のコンポジット電解質系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学系層構造体の電解質、特には固体電解質のための接触面調節材料及びそのコンポジット電解質系に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー危機及びエネルギー革命の時代において、二次化学エネルギー、特に高い比エネルギー及び比出力を有する金属イオン電池、例えばナトリウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、マグネシウムイオン電池又はリチウムイオン電池は極めて重要な役割を果たす。これらの電池は情報機器及び家電製品で利用され、近年は輸送エネルギーの分野に進出している。
【0003】
二次化学エネルギーにおける周知の電解質系は液体の電解質系及び固体の電解質系である。上記の固体電解質系には無機電解質及び有機ポリマー電解質が含まれる。リチウムイオン電池等の、動作電圧が3-4Vの電池系に適合させるために、液体電解質系においては、溶媒として水は使用せず、高い電圧下でも容易に分解されない有機溶媒及び電解質塩を主な組成物として使用する。
しかしながら、これらの有機溶媒は引火し易く揮発性であり、また爆発や火災につながる液漏れを引き起こす可能性がある。そこで、安全を考慮して、電解質系の組成は液体電解質からより安全性が高い固体電解質系へと変化しており、特には熱安定性が高い無機固体電解質系において、例えば酸化物固体電解質である。
【0004】
しかしながら、酸化物固体電解質の形が変化しないという特徴は、応用の際に問題となる場合がある。例えば、酸化物固体電解質間又は酸化物固体電解質と電極層の活物質との間の界面は大抵の場合、点での接触である。液体電解質又はゲル電解質と別の材料との接触は面での接触又は含浸に近いコーティングタイプとなる。したがって、二次化学エネルギーにおいて、高い界面抵抗は酸化物固体電解質の主な欠点の1つとなる。
【0005】
したがって、本発明は、上記の問題点を解決するために、固体電解質のための接触面調節材料及びそのコンポジット電解質系を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、無機固体電解質が有する高い界面抵抗という問題点を克服するために、固体電解質のための接触面調節材料及びそのコンポジット電解質系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を果たすために、本発明では、電気化学系に適合させた、固体電解質のための接触面調節材料を開示する。この接触面調節材料は、ポリマー基材と、その中に混ぜ込まれた添加剤とを含む。ポリマー基材により金属イオンはその内部を移動でき、添加剤は金属塩を解離させることができ、また可塑剤としての役割を果たす。
【0008】
本発明はさらに、上記の接触面調節材を有するコンポジット電解質系を提供する。このコンポジット電解質系は、第1無機固体電解質である第1粒子と、第2無機固体電解質、不活性セラミック材料又は活物質から選択される第2粒子と、第1粒子と第2粒子との間に位置し且つ固体電解質のための接触面調節材料から構成され、第1粒子と第2粒子とを接着させてイオン伝導路を形成するブリッジ部とを含む。
【0009】
本発明はさらに、上記の接触面調節材料を有するコンポジット電解質系を提供する。このコンポジット電解質系は、第1無機固体電解質である第1粒子と、第2無機固体電解質、不活性セラミック材料又は活物質から選択される第2粒子と、第1粒子の外面を覆う第1シェル層とを含む。固体電解質のための接触面調節材料から構成されるこの第1シェル層は、第1粒子と第2粒子とを接着させてイオン伝導路を形成するために使用される。
【0010】
本発明は以下の詳細な説明を読むことでより深く理解できるが、この説明は例示的なものであり、したがって本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a】本発明の固体電解質のための接触面調節材料により構成されるコンポジット電解質系の概略図である。
図1b】本発明のブリッジ部と無機固体電解質との間の接触面の概略図である。
図1c】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図1d】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図1e】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図1f】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図1g】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図2a】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。2a’は、図2aの部分拡大図である。
図2b】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図2c】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図2d】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図2e】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図2f】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図2g】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図2h】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図3a】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図3b】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図3c】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図3d】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図3e】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図3f】本発明のコンポジット電解質系の異なる実施形態の概略図である。
図4】様々な材料のイオン伝導度と周波数との関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を特定の実施形態について特定の図面を参照しながら説明していくが、本発明はこれらに限定されず、請求項によってのみ限定される。請求項中の参照符号は発明の範囲を限定すると解釈されない。図は概略的なものにすぎず、非限定的である。図においては、例示を目的として、縮尺通りではなく一部の要素のサイズが誇張されて描かれることもある。
【0013】
明細書で使用する用語は特定の実施形態だけについて説明することを目的にしており、発明の一般概念を限定することを意図してはいない。本明細書において、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈からそうではないことがはっきりとわかる場合を除いて、複数形も含むものとする。特に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語(技術的及び科学的用語を含む)は、実施形態例が属する分野の当業者が一般に理解するものと同一の意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書において定義されている用語は関連分野の文脈におけるその意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、また本明細書で明確に定義されない限り、理想化されることや過剰に形式ばった形で解釈されるべきではないことがわかる。
【0014】
本明細書全体を通して、「1つの実施形態」又は「ある実施形態」とは、その実施形態に関連して説明した特定の特色、構造又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書のいたる箇所に「1つの実施形態において」又は「ある実施形態において」という文言があっても、これは必ずしも全て同一の実施形態に言及しているわけではなく、そういう場合もあるということである。さらに、特定の特色、構造又は特徴は1つ又はより多くの実施形態において任意の適切なやり方で組み合わせ得、このことは本開示から当業者には明白である。
【0015】
本発明の説明において、「設置」、「接続」及び「配置」という語は広く解釈され、例えば固定又は着脱式になり得、機械的又は電気的なものになり得、直接又は中間媒体を介して間接的に接続され得、その接続は2つの構成要素の間の内部接続になり得ることに留意されたい。本発明の上記の用語の特定の意味は、当業者により特定の状況下で理解され得る。
【0016】
まず、本発明の固体電解質のための接触面調節材料は主に、ポリマー基材と、その中に混ぜ込まれた添加剤とを含む。ポリマー基材によりリチウムイオン等の金属イオンはその内部を移動でき、添加剤はリチウム塩等の金属塩を解離させることができ、また可塑剤としての役割を果たす。また、接触面調節材料はイオン供給材料及び結晶成長阻害材料をさらに含む。以下の説明においては、金属イオンをリチウムイオンとし、金属塩をリチウム塩とする。
【0017】
リチウムイオンの内部での移動を可能にする上記のポリマー基材とは、(原料の状態又は電気化学的反応開始時に)それ自体はリチウムイオンを有していないもののリチウムイオンを移動させることができる材料のことである。例えば、ポリマー基材は塩を含有しない直鎖構造材料、例えばポリエチレンオキシド(PEO)になり得る。あるいは、リチウムイオンの移動が可能なことに加えて、ポリマー基材は、その架橋構造により皮膜形成の機械的強度を上昇させることができる材料でもあり、例えばポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルアクリレート(PEGDMA)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(PEGME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ポリ[エチレンオキシド-コ-2-(2-メトキシエトキシ)エチルグリシジルエーテル](PEO/MEEGE)、超分岐ポリマー、例えばポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート]又はポリニトリル、例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メタクリロニトリル)(PMAN)又はポリ(N-2-シアノエチル)エチレンアミン)(PCEEI)である。
【0018】
結晶成長阻害材料は結晶化度を低下させるための材料から選択され、例えばポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(シアノアクリレート)(PCA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリ(ビニルクロリド)(PVC)、PVC-PEMA、PEO-PMMA、ポリ(アクリロニトリル-コ-メチルメタクリレート)P(AN-co-MMA)、PVA-PVdF、PAN-PVA、PVC-PEMA、ポリカーボネート、例えばポリ(エチレンオキシド-コ-エチレンカーボネート)(PEOEC)、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)、ポリ(エチルグリシジルエーテルカーボネート)(P(Et-GEC)又はポリ(t-ブチルグリシジルエーテルカーボネート)P(tBu-GEC)、環状カーボネート、例えばポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリシロキサン系、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(ジメチルシロキサン-コ-エチレンオキシド)P(DMS-co-EO)又はポリ(シロキサン-g-エチレンオキシド)、ポリエステル、例えばエチレンアジペート、エチレンスクシネート又はエチレンマロネートである。さらに、結晶成長阻害材料は、ポリ(ビニリデンジフルオリドヘキサフルオロプロピレン)(PvdF-HFP)、ポリ(ビニリデンジフルオリド)(PvdF)又はポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)である。
【0019】
リチウム塩等の金属塩を解離させることができ且つ可塑剤として機能する添加剤は柔粘性結晶電解質(PCE)から選択し得、例えばスクシノニトリル(SN)[ETPTA//SN、PEO/SN、PAN/PVA-CN/SN]、N-エチル-N-メチルピロリジウム、[C2mpyr]+アニオンN、N-ジエチル-ピロリジニウム、[C2epyr]、第四アルキルアンモニウム、n-アルキルトリメチルホスホニウム、[P1,1,1,n]、デカメチルフェロセニウム、[Fe(C5Me5)2]、1-(N,N-ジメチルアンモニウム)-2-(アンモニウム)エタントリフレート([DMEDAH2][Tf]2)、アニオン=[FSI]、[FSA]、[CFSA]、[BETA]、LiSi(CH(SO)又はトリメチ(リチウムトリメチルシリルサルフェート)又はイオン液体であり、イミダゾリウム、例えばアニオン/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アニオン/ビス(フルオロスルホニル)イミド又はアニオン/トリフルオロメタンスルホネート又はアンモニウム、例えばアニオン/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド又はピロリジウム、例えばアニオン/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アニオン/ビス(フルオロスルホニル)イミド又はピペリジニウム、例えばアニオン/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アニオン/ビス(フルオロスルホニル)イミドから選択し得る。
【0020】
イオン供給材料はリチウム塩になり得、例えばLiTFSI、LiFSI、LiBF又はLiPFである。
【0021】
加えて、接触面調節材料はナノメートルスケールの第2ドーパントをさらに含み、第2ドーパントは無機固体電解質、不活性セラミック材料、例えば非電解質酸化物、導電性材料又はこれらの組み合わせから選択される。
【0022】
第2ドーパントが不活性セラミック材料(電解質ではない)である場合、ポリマー基材及び添加剤の使用量を減らすことができ、皮膜形成能も改善されるため、皮膜形成促進剤として機能する。不活性セラミック材料は例えば二酸化ケイ素になり得る。
第2ドーパントがナノメートルスケールの無機固体電解質の場合、ポリマー基材及び添加剤の使用量を減らせること以外に、第2ドーパントは高速のイオン伝導路を提供できる。無機固体電解質は、例えば、酸化物系の固体電解質、スルフィド系固体電解質又は他の無機固体電解質になり得る。例えば、イオンが接触面調節材料中を移動する場合、イオンは接触面調節材料により直接移動でき、あるいはイオンは、接触時、ナノメートルスケールの無機固体電解質により移動できる。第2ドーパントが導電性材料の場合、特に電極層に適用した場合に、導電性を改善できる。
【0023】
加えて、ポリマー基材の流動性は添加剤の添加により改善される。ポリマー基材は室温でより高いイオン導電性とより低い機械的性質を有し、固体電解質粒子間又は固体電解質粒子と別の材料の粒子との間を埋め、点ではなく面での又は含浸に近いコーティングタイプの接触を成し遂げる。したがって、固体電解質の界面抵抗を低下させることができる。さらに、イオン液体等の添加剤は非揮発性である。可燃性の気体が発生する問題は起きない。また、接触面調節材料は、添加した添加剤が乾燥工程中に揮発することによるサイズの収縮やイオン伝導性の低下を引き起こさない。
【0024】
図1aを参照されたい。図1は本発明の固体電解質のための接触面調節材料により構成されるコンポジット電解質系の1つの実施形態を示す。図示するように、コンポジット電解質系1は、第1無機固体電解質である第1粒子と、第2無機固体電解質、不活性セラミック材料又は活物質から選択される第2粒子12と、第1粒子と第2粒子との間に位置し且つ固体電解質のための接触面調節材料から構成され、第1粒子11と第2粒子12とを接着させて面でのイオン伝導路を形成するブリッジ部13とを含む。上述したように、ポリマー基材の流動性は添加剤、例えばイオン液体の添加により改善される。
ポリマー基材は室温でより高いイオン伝導性とより低い機械的性質を有し、第1粒子11と第2粒子12との間を埋める。そのため、無機固体電解質(第1粒子11)と別の粒子(固体電解質又は活物質の表面)は、従来の点での接触により固体電解質粒子と別の粒子との間でイオンを伝導するのではなく、面での又は含浸に近いコーティングタイプの接触を成し遂げる。したがって、固体電解質の界面抵抗を低下させることができる。上記の無機固体電解質は、例えば、酸化物系固体電解質、スルフィド系固体電解質又は他の無機固体電解質になり得る。
【0025】
本発明の面での又は含浸に近いコーティングタイプの接触を図1bに示す。例えば、第1粒子11は半径D1を有する球体であり、第2粒子12は半径D2を有する球体である。ブリッジ部13と第1粒子11との間の接触は中心角θ1の弧長r1である。したがって、弧長r1は2πD1*θ1/360、0<θ1<90となる。
ブリッジ部13と第2粒子12との間の接触は中心角θ2の弧長r2である。したがって、弧長r2は2πD2*θ2/360、0<θ2<90となる。第1粒子11及び第2粒子12のイオン伝導に関する有効接触長さは弧長r1、r2となる。しかしながら、固体電解質粒子と別の粒子との間でのイオン伝導のための従来の接触は点での接触であり、すなわち弧長r≒0(θ≒0)である。
【0026】
イオン伝導を除くと、コンポジット電解質系の上記のポリマー基材は、第1粒子11と第2粒子12とを接着させるための接着剤及び皮膜形成剤としての役割を果たす。
【0027】
図1cを参照されたい。図1cは本発明の別の実施形態を示す。図示するように、ブリッジ部13の、第1粒子11及び第2粒子12と接触していない表面は複数の第1ドーパント14をさらに含む。第1ドーパント14は、皮膜形成を強化するために、第1粒子11及び第2粒子12の直径より小さい直径を有する無機固体電解質又は不活性セラミック、すなわち非酸化物電解質から選択される。
さらに、第1ドーパント14は、図1dに示すように、第1粒子11及び第2粒子12の外面上まで延びて堆積し得る。さらに、第1ドーパント14は第1粒子11又は第2粒子12の外面上にのみ堆積し得る。第2粒子12が活物質である場合、第1ドーパント14は導電性材料になり得て、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラフェン又はこれらの組み合わせから選択される。
【0028】
図1eを参照されたい。図1eは本発明の別の実施形態を示す。図示するように、ブリッジ部13はナノメートルスケールの第2ドーパント15をさらに含む。第2ドーパント15は、無機固体電解質、不活性セラミック材料又はこれらの組み合わせから選択される。混合される第2ドーパント15の機能は実質的に上記の実施形態と同一であるため、わかりやすくするため説明の繰り返しは省略する。
また、第2粒子12が活物質である場合、第2ドーパント15は導電性材料になり得、あるいはさらにナノメートルスケールの粒子、例えば酸化物又は固体電解質と混合し得る。導電性材料は、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラフェン又はこれらの組み合わせから選択される。
【0029】
第2ドーパント15をブリッジ部13に混ぜ込む実施形態は図1c又は図1dの上記の実施形態と組み合わせることができる。例えば、図1fに示すように、第2ドーパント15をブリッジ部13に混ぜ込み、ブリッジ部13の、第1粒子11及び第2粒子12と接触していない表面は複数の第1ドーパント14を含む。
【0030】
続く実施形態において、同一構造、材料又は特徴の構成要素は同一名称及び数字で示す。
【0031】
図2aを参照されたい。図2aは本発明の固体電解質のための接触面調節材料により構成されるコンポジット電解質系の別の実施形態を示す。図示するように、コンポジット電解質系2は第1無機固体電解質である第1粒子11と、第2無機固体電解質、不活性セラミック材料又は活物質から選択される第2粒子12と、第1粒子11の外面を覆う第1シェル層21とを含む。固体電解質のための接触面調節材料から構成される第1シェル層21を使用して第1粒子11と第2粒子12とを接着させて非1点イオン伝導路を形成する。
図2aの部分拡大図である図2a’に示すように、接触面調節材料の機械的性質は高くないことから、第2粒子12及び第1シェル層21の接着部は、点ではなく面での又は含浸に近いコーティングタイプの接触となる。続く説明において、接触面調節材料により形成される構成要素は、硬質面又は固定した形状の外観を有する別の物質(粒子)に接触する場合、同じ含浸コーティングタイプの接触になる。
【0032】
図2bを参照されたい。図2aの実施形態と比較すると、第1シェル層21の外面はさらに複数の第1ドーパント14を含み、さらに延びて第2粒子12の外面上に堆積している。加えて、第1シェル層21又は第2粒子12の外面の1つは複数の第1ドーパント14を含み得る。
図2cを参照されたい。図2bの実施形態と比較すると、第2ドーパント15が第1シェル層21に混ぜ込まれている。
図2dを参照されたい。第2シェル層22が第2粒子12の外面上に形成されている。第2シェル層22もまた、固体電解質のための接触面調節材料から構成される。
【0033】
図2eを参照されたい。図2dの実施形態と比較すると、第1シェル層21及び第2シェル層22の外面は複数の第1ドーパント14をさらに含む。加えて、第1シェル層21又は第2シェル層22の外面の1つは複数の第1ドーパント14を含み得る。
図2fを参照されたい。図2eの実施形態と比較すると、第2ドーパント15が第1シェル層21及び第2シェル層22に混ぜ込まれている。さらに、第2ドーパント15は第1シェル層21又は第2シェル層22だけに混ぜ込んでもいい。
【0034】
図3aを参照されたい。図3aは本発明の固体電解質のための接触面調節材料により構成されるコンポジット電解質系の別の実施形態を示す。図示するように、コンポジット電解質系3は、第1無機固体電解質である第1粒子11と、第2無機固体電解質又は活物質から選択される第2粒子と、第1粒子11の外面を覆う第1シェル層21と、第2粒子12の外面を覆う第2シェル層22と、第1シェル層21と第2シェル層22との間に位置し且つこれらを接着させるブリッジ部13とを含む。第1シェル層21、第2シェル層22及び固体電解質のための接触面調節材料から構成されるブリッジ部13を使用して、第1粒子11及び第2粒子12の面接触タイプのイオン伝導路を形成する。
【0035】
図3bを参照されたい。図3aの実施形態と比較すると、複数の第1ドーパント14は、ブリッジ部13の、第1シェル層21及び第2シェル層22と接触していない外面に含まれている。
図3cを参照されたい。図3bの実施形態と比較すると、複数の第1ドーパント14はさらに第1シェル層21及び第2シェル層22の外面まで延びている。加えて、複数の第1ドーパント14はさらに第1シェル層21又は第2シェル層22の外面まで延び得る。
【0036】
図3dを参照されたい。図3aの実施形態と比較して、第2ドーパント15が第1シェル層21、第2シェル層22及びブリッジ部13に混ぜ込まれている。
【0037】
図3eを参照されたい。図3dの実施形態と比較すると、第1ドーパント14はさらに第1シェル層21及び第2シェル層22の外面まで延びている。加えて、複数の第1ドーパント14はさらに第1シェル層21又は第2シェル層22の外面まで延び得る。
【0038】
上記の実施形態において、第2粒子12が活物質である場合、コンポジット電解質系は電極層に適用できる。人工的な不活性膜を第2粒子12の表面上に形成することで、電解質(接触面調節材料)が活物質に接触して構造的に劣化し、結果的に表面伝導性が低下することや、リチウムイオンの表面層通過率が低下するのを回避できる。例えば、図1gを参照されたい。第2粒子12はその表面上に人工的な不活性膜16をさらに有し得る。
あるいは図2g、図2h及び図3fを参照されたい。第2粒子12はその表面上に人工的な不活性膜16をさらに有し得る。人工的な不活性膜16は、図2h及び図3fに示されるように、第2粒子12と第2シェル層22との間に位置する。人工不活性膜16を使用することで接触面調節材料が過剰に第2粒子12と接触するのを効率的に低減又は防止する。人工不活性膜16の材料は、移動させるイオンに基づいて又は基づくことなく、非固体電解質系列又は固体電解質系列になり得る。人工不活性膜16の厚さは実質的に100ナノメートル未満である。非固体電解質系列は導電性材料、リチウム非含有セラミック材料及びこれらの組み合わせから選択し得る。リチウム非含有セラミック材料はジルコニア、シリカ、アルミナ、酸化チタン又は酸化ガリウムを含み得る。
【0039】
第2粒子12が無機固体電解質又は不活性セラミック材料である場合、コンポジット電解質系はセパレータに適用できる。またコンポジット電解質系はイオン供給材料、例えば塩を有する必要がある。また、第1粒子11及び第2粒子12が共に無機固体電解質であり且つシェル層構造を有さないならば、第1粒子11及び第2粒子12は電池素子の極性にしたがって選択しなければならない。例えば、コンポジット電解質系を正電極に適用する場合、第1粒子11及び第2粒子12はLATP(Li1+xAlTi2-x(PO)又はLLZO(リチウムランタンジルコニウムオキシド、LiLaZr12)から選択し得る。
コンポジット電解質系を負電極に適用する場合、第1粒子11及び第2粒子12は、チタン含有LATPを負電極に使用する場合、還元反応を回避するために、LLZOのみとなり得る。しかしながら、第1粒子11及び第2粒子12が共にシェル層構造を有する場合、極性(正又は負)に応じて使用固体電解質のタイプを選択する必要はない。つまり、コストの安いLATPを第1粒子11及び第2粒子12の両方に選択して、正極及び負極に適用できる。
【0040】
したがって、本発明の第1ドーパント14は3つのタイプから選択できる。第1のタイプは固体電解質であり、粒径は第1粒子11及び第2粒子12のサイズより小さい。第2タイプは不活性セラミック材料である。接触面調節材料の使用量は低減でき、また皮膜形成促進剤として機能できる。第3のタイプは導電性材料であり、主に電極層で使用される。第1のタイプ及び第2のタイプは電極層及びセパレータの両方に適用可能である。
【0041】
本発明の第2ドーパント15の粒径又は直径はナノメートルスケールであり、これも3つのタイプから選択できる。第1のタイプは固体電解質である。第2のタイプは不活性セラミック材料である。接触面調節材料の使用量は低減でき、また皮膜形成促進剤として機能できる。第3のタイプは導電性材料であり、主に電極層で使用される。第1のタイプ及び第2のタイプは電極層及びセパレータの両方に適用可能である。
【0042】
例えば、第2粒子12が活物質である場合、(ブリッジ部及び/又はシェル層として)接触面調節材料に混合又は充填したナノメートルスケールの第2ドーパント15は固体電解質、不活性セラミック材料、導電性材料又はこれらの組み合わせになり得る。同様に、第2粒子12が活物質である場合、第1粒子11、第2粒子12の表面又は第1シェル層21、第2シェル層22及びブリッジ部13のいずれの表面も第1ドーパント14を含み得る。第1ドーパント14は固体電解質、不活性セラミック材料、導電性材料又はこれらの組み合わせになり得る。
【0043】
図4を参照されたい。図4は本発明の接触面調節材料及び固体電解質LATPの低及び高周波でのイオン伝導性の特性チャートである。この図において、曲線AはLATPを表し、曲線Bは本発明のイオン供給材料なしの接触面調節材料を表す。曲線Cは本発明の接触面調節材料を含有するコンポジット電解質系を表し、重量でA70%、B30%の混合物と見なせる。これはイオン供給材料を含有せず、LATPは上記の第1粒子と同等である。
曲線Dはリチウムイオンを添加した曲線Cの組成である。高周波領域において、酸化物固体電解質LATPのイオン伝導性はより良好であること図から見て取れる。したがって、高周波状態において、イオンの動きは酸化物固体電解質の均質な構造中に留まりがちである。均質な構造とは概して、結晶、ガラス又は固溶体の均質な構造のことである。他方、中間及び低周波数レンジにおいて、イオン供給材料なしの本発明の接触面調節材料はより良好な性能を有する。したがって、中間及び低周波数レンジにおいて、イオンの動きは主に固体間の界面(異なる相又は材料)であることが見て取れる。
本発明の接触面調節材料はより良好な面での接触モード(含浸に近いコーティングタイプ)による良好な性能を有する。したがって、本発明のコンポジット電解質系は、特定の比で混合された曲線A及び曲線Bの組成物となる。図に示すように、イオン伝導特性(曲線C又はD)は低周波及び高周波の両方において最良な性能に達する。
【0044】
加えて、図4の曲線Cによると、コンポジット電解質系を得るために、接触面調節材料の体積率はA0であり、固体電解質の体積率はB0(A0+B0≒100、A0は30-40、B0は70-60)である(第2ドーパント15が固体電解質である場合、これもBの割合に含まれる)。接触面調節材料を使用して電極層において活物質と接触させる場合、コンポジット電解質系中の接触面調節材料及び固体電解質の体積率はおよそA1及びB1(A1+B1=100、50<A1<100)として適切に調節できる。他方、コンポジット電解質系が活物質から離れている場合、コンポジット電解質系中の接触面調節材料及び固体電解質の体積率はA2及びB2(A2+B2=100、50<B2<100)として適切に調節できる。このようにして、低周波での要件に合わせることができる。また高周波伝導性需要が活物質とは離れて位置し、そのため高い割合の固体電解質が使用される。つまり、活物質の外面からの距離が近いから遠いの順に、コンポジット電解質系における接触面調節材料は高-低の体積率分布を示す。
【0045】
言い換えると、このコンポジット電解質系から構成される電池は活物質層及びセパレータを含む。コンポジット電解質系をセパレータに適用する場合、接触面調節材料の体積含有率はコンポジット電解質系における固体電解質の体積含有率より小さい。コンポジット電解質系を活物質層に適用する場合、活物質の表面に近ければ近いほど、コンポジット電解質系における固体電解質の体積含有率に比べて、接触面調節材料の体積含有率は高くなる。
【0046】
したがって、本発明は、電気化学系、例えばリチウムイオン二次電池に適合させるための、固体電解質のための全く新しい接触面調節材料及びそのコンポジット電解質系を提供する。接触面調節材料は主に、ポリマー基材と、その中に混ぜ込まれた添加剤とを含む。ポリマー基材により金属イオンはその内部を移動でき、添加剤は金属塩を解離させることができ、また可塑剤としての役割を果たす。酸化物固体電解質と別の粒子材料との接触は面での又は含浸に近いコーティングタイプである。したがって、酸化物固体電解質の高い界面抵抗問題が克服できる。
【0047】
以上のように本発明を説明してきたが、本発明を様々なやり方で変更し得ることは明白である。そのような変更は本発明の趣旨及び範囲からの逸脱とはみなされず、当業者には明白なそのような改変は全て以下の請求項の範囲内に含まれるものとする。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図4