(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】眼部品、その製造方法、及び人形体
(51)【国際特許分類】
A63H 3/38 20060101AFI20221012BHJP
A63H 3/42 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A63H3/38 Z
A63H3/42
(21)【出願番号】P 2020184634
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2021-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】林田 翔一
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169801(JP,A)
【文献】特開2003-311026(JP,A)
【文献】実開昭58-051785(JP,U)
【文献】実開昭53-003686(JP,U)
【文献】特開平09-192356(JP,A)
【文献】特開2018-187256(JP,A)
【文献】特開2017-170205(JP,A)
【文献】特開2012-024382(JP,A)
【文献】特開2017-113122(JP,A)
【文献】実開昭53-066389(JP,U)
【文献】特開2009-247798(JP,A)
【文献】特開2008-259886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 3/38
A63H 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形体の顔面部品に組み付けられる眼部品であって、
前記眼部品の前面に配置される虹彩部と、
前面が凸形状で形成されるとともに、前記虹彩部の後方から突出して該虹彩部の内部に突出する突出部分を有する瞳孔部と
を備え、
前記虹彩部では、前記突出部分とは異なる部分の底面が凹形状で形成され
、
前記突出部分は、前記虹彩部の表面まで突出することなく、該虹彩部の奥に位置することを特徴とする眼部品。
【請求項2】
前記突出部分の表面全体が前記虹彩部によって被覆されることを特徴とする請求項1に記載の眼部品。
【請求項3】
前記突出部分は、前記虹彩部の前記底面の中心付近で突出しており、
前記虹彩部の底面から内部へ突出した前記突出部分とは異なる部分で該虹彩部の底面と接するように不透明の下地部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の眼部品。
【請求項4】
前記下地部は、少なくとも部分的に前記虹彩部に被覆されず、前記虹彩部の前面まで延伸した部分を有することを特徴とする請求項3に記載の眼部品。
【請求項5】
前記虹彩部の底面に接する前記下地部の表面の一部は凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の眼部品。
【請求項6】
前記眼部品は、複数種類の樹脂を使用したインサート成形により成形されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の眼部品。
【請求項7】
前記眼部品は瞳部分を形成し、白目部及びまつ毛部とは別に形成されることを特徴とする請求項5に記載の眼部品。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の眼部品が組み付けられた顔面部品を有する人形体。
【請求項9】
人形体の顔面部品に組み付けられる眼部品の製造方法であって、
前記眼部品の前面を被覆する虹彩部を成形する虹彩部成形工程と、
前面が凸形状で形成されるとともに、前記虹彩部の後方から突出して該虹彩部の内部に突出する突出部分を有する瞳孔部を成形する瞳孔部成形工程と、
前記瞳孔部が形成されていない部分で前記虹彩部の底面と接するように下地部を成形する下地部成形工程と
を含み、
前記虹彩部では、前記突出部分とは異なる部分の底面が凹形状で形成され
、
前記突出部分は、前記虹彩部の表面まで突出することなく、該虹彩部の奥に位置することを特徴とする製造方法。
【請求項10】
眼部品の各成形工程では、複数種類の樹脂を使用したインサート成形を繰り返すことを含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼部品、その製造方法、及び人形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィギュアなどの人形体の顔表現は、その表情を左右するとともにフィギュアの価値を決定する上で非常に重要な部位である。顔の中でも眼部品は特に表情や印象に大きく影響するものであり、眼部品における追視機能も重要である。例えば、特許文献1には、透過性の板状体の一面と他面を利用する簡単で安価な方法で、顔の正面から見た場合だけでなく、顔を上下左右から見た場合でも、見ているものに視線が向いているような印象を与える面白味のある顔が描かれた板状商品が提供されている。また、特許文献2には、人間の目の位置に、底面部に瞳部が描画された凹部を有する模型の頭部が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3216743号
【文献】特許第6198551号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、キャラクター製品の裏面側に顔が描かれており、より詳細には瞳と白目とが透明のアクリル製板の裏面に描かれ、これにより追視機能を備えるものである。しかし、上記従来技術では上下方向や左右方向からある程度の角度をもった位置でキャラクターを見た場合には単に瞳が奥に描かれているため見えなくなってしまう。同様に、単に凹部の底面に瞳部を描画した場合であっても、上下方向や左右方向からある程度の角度の位置となると瞳部が見えなくなり追視機能が失われてしまう。
【0005】
また、複数の部品を組み立てて眼部品を構成する場合にはそれらの組み付け誤差等から製品ごとにその表情や印象に個体差が生まれてしまう。従って、できるだけ組立部品が少なく、その組み立てによるズレや隙間に応じて表情や追視効果に影響を与えないフィギア等の人形体が要望されている。
【0006】
本発明は、人形体の眼部品において広範囲に追視機能を自然な印象で実現し、また同機能を好適に製造可能な仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、人形体の顔面部品に組み付けられる眼部品であって、前記眼部品の前面に配置される虹彩部と、前面が凸形状で形成されるとともに、前記虹彩部の後面から突出して該虹彩部の内部に突出する突出部分を有する瞳孔部とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、例えば、人形体の顔面部品に組み付けられる眼部品であって、前記眼部品の前面に配置される虹彩部と、前面が凸形状で形成されるとともに、前記虹彩部の後方から突出して該虹彩部の内部に突出する突出部分を有する瞳孔部とを備え、前記虹彩部では、前記突出部分とは異なる部分の底面が凹形状で形成され、前記突出部分は、前記虹彩部の表面まで突出することなく、該虹彩部の奥に位置することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、例えば、人形体の顔面部品に組み付けられる眼部品の製造方法であって、前記眼部品の前面を被覆する虹彩部を成形する虹彩部成形工程と、前面が凸形状で形成されるとともに、前記虹彩部の後面から突出して該虹彩部の内部に突出する突出部分を有する瞳孔部を成形する瞳孔部成形工程と、前記瞳孔部が形成されていない部分で前記虹彩部の後面と接するように下地部を成形する下地部成形工程とを含むことを特徴とする。
また、本発明は、例えば、人形体の顔面部品に組み付けられる眼部品の製造方法であって、前記眼部品の前面を被覆する虹彩部を成形する虹彩部成形工程と、前面が凸形状で形成されるとともに、前記虹彩部の後方から突出して該虹彩部の内部に突出する突出部分を有する瞳孔部を成形する瞳孔部成形工程と、前記瞳孔部が形成されていない部分で前記虹彩部の底面と接するように下地部を成形する下地部成形工程とを含み、前記虹彩部では、前記突出部分とは異なる部分の底面が凹形状で形成され、前記突出部分は、前記虹彩部の表面まで突出することなく、該虹彩部の奥に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、人形体の眼部品において広範囲に追視機能を自然な印象で実現し、また同機能を好適に製造可能な仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る人形体の顔面部品の表面及び裏面の斜視図。
【
図5】一実施形態に係る眼部品の追視機能及び分割ラインを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ参照符号は、同じ要素を示している。また、各図において、紙面に対する上下左右方向を、本実施形態における装置の上下左右方向として、本文中の説明の際に用いることとする。なお本発明は、以下に説明する実施形態において成形素材として異なる色の樹脂材料を例示するがこれに限定されず、例えば異なる材質(ポリスチレン、ポリエチレン、ABS等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等)、異なる透明度の樹脂等の成形素材にも適用可能である。
【0012】
<顔面部品>
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る人形体に組み付けられる顔面部品について説明する。以下に説明する顔面部品20は、人の顔を模した人形体(例えば、フィギュア)を例示するが、これに限定されず、特に眼を備える形象物であれば、例えば動物、昆虫、恐竜、魚類等の生き物や、目に相当する部分を備えるキャラクター等の形象物であってもよい。なお、以下では人形体を構成する部位のうち、顔面部品のみについて説明し、他の部位の説明については省略するがこれらの部位を本発明の構成から除外するわけではない。つまり、本実施形態に係る眼部品が含む顔面部品はその他の部位(胴体部、腕部、脚部や、武器等のオプションパーツ)とともに人形体を構成するものである。
【0013】
本実施形態に係る人形体の顔は、顔面部品20に眼部品10を組み付けることにより形成される。
図1(a)は、顔面部品20の表側を示し、
図1(b)は顔面部品20の裏側を示す。なお、本実施形態における人形体の裏側は、図示しない髪パーツ等によって覆われて、フィギュアが完成した後に外部に曝されることはない。
【0014】
図2に眼部品10と顔面部品20とを分解した分解斜視図を示す。眼部品10は、顔面部品20の裏側から組み付けられ、顔面部品20に形成された孔部20aから眼部品10の一部となる左右の眼を構成する部分が露出する。また、顔面部品20側には、眼を構成する白目部201とまつ毛部202とが予め形成される。従って、顔面部品20に組み付けられる眼部品10はそれぞれ左右の瞳部分を形成している。これにより、顔面部品20と眼部品10とが白目部201と瞳とを境界として各部品へ分割されることになり、例えば白目部分と黒目部分(瞳)との境界で分割するものであり、色の差異から、より分割ラインを目立たなくすることができる。これにより、より自然な印象を維持することができる。分割ラインの詳細については
図5を用いて後述する。なお、本実施形態では、「白目部分」と「黒目部分」という用語を用いて説明するが、これらの用語は説明の便宜上使用しているだけであって、本発明における該当部分の色を限定しているわけではない。つまり、ここでは上述のような用語を用いるが、白目部分と黒目部分についてはキャラクターのデザイン等に応じて種々の色を採用することができ、ここで説明する色以外を除外するものではない。なお、本明細書や特許請求の範囲で使用する色に関する他の記載についても同様に本発明を限定する意図はないことに注意されたい。
【0015】
<顔面部品及び眼部品の側断面>
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る眼部品10を組み付けた顔面部品20の側断面図を用いてその構成例を説明する。
図3は、右眼の瞳孔部分を中心に上下方向に切断した側断面である。
【0016】
図3に示すように、顔面部品20の孔部20aに対して、当該顔面部品20の裏側から眼部品10が組み付けられる。眼部品10は、少なくとも虹彩部301、瞳孔部302、及び下地部303を含んで構成される。各部はそれぞれの色の異なる樹脂材料を使用したインサート成形及び多色成形によって形成される。
図3に示すように、眼部品10の前面を虹彩部301が被覆するように形成(配置)され、虹彩部301の後面の一部において瞳孔部302が立体的に突出するように形成されている。なお、眼部品10の詳細な説明については
図4及び
図5を用いて後述する。一方、顔面部品20には、上述したように、人形体の眼の構成の一部である白目部201及びまつ毛部202が予め設けられている。従って、本実施形態に係る眼部品10は、眼を構成する白目部やまつ毛部以外の瞳部分を構成するものである。なお、虹彩部301は、2層以上で構成されていてもよい。
【0017】
顔面部品20に対して眼部品10が組み付けられることにより、眼部品10が構成する瞳部分が顔の表面に現れ、人形体の表情が形成される。このように顔面部品20と眼部品10とを個別に形成することにより、例えば使用する樹脂材料の色を低減することができるため、各部品の後述するインサート成形を簡略化することができる。また、眼部品の種類を複数設けることにより、多彩な表情のパーツを容易に作製することができ、多様な商品展開やユーザによって付け替え可能として1体の人形体において多様な表情を実現することもできる。
【0018】
<眼部品の詳細構成>
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る眼部品10の詳細構成について説明する。
図4(a)は眼部品10の平断面図を示し、
図4(b)は顔面部品20に眼部品10を組み付けた状態で正面から見た人形体の両眼の拡大図を示す。
【0019】
図3を用いて説明したように、眼部品10では、その前面を虹彩部301が被覆するように形成され、虹彩部301の後面の一部において瞳孔部302が立体的に突出するように形成されている。さらに、瞳孔部302の少なくとも当該突出部分(先端部分)は、
図4(a)に示すように、虹彩部301によって表面全体が被覆され、虹彩部301の前面からは突出しないように形成される。また、虹彩部301には、透明の樹脂材料、例えば青色透明などの有色透明の樹脂材料が使用され、虹彩部301の奥に位置する瞳孔部302が視認可能な樹脂材料が使用される。一方、瞳孔部302には、虹彩部301よりも濃い色の樹脂材料、例えば黒色や紺色などの樹脂材料が使用され、虹彩部301を介しても明瞭に確認することができる。
【0020】
このような構成により、ある程度の角度をもって見ても瞳孔部302の突出部分を確認することができる。例えば、人形体の略真横から見た場合であっても、ある程度瞳孔を確認することができる。このように、本実施形態に係る眼部品10においては、広範囲の角度から瞳孔を確認することができ、後述する追視機能をより自然な印象で実現することができる。また、突出部分の表面全体が虹彩部301によって被覆されていることにより、正面から見た場合と、上下左右から見た場合とで同様の印象を与えることができる。つまり、瞳孔部302が透明の樹脂材料によって形成された虹彩部301によって一様に覆われているため広範囲の角度に渡って同様の印象で視認可能となり、より自然な印象で追視機能を実現することができる。一方、例えば瞳孔部を虹彩部の前面まで突出させるように形成した場合は、略真横や略真上などから十分に瞳孔が確認できるものの、瞳孔が飛び出したような不自然な印象を与えてしまう。従って、本実施形態のように、虹彩部301の奥に瞳孔を配置することは自然な印象で追視機能を実現する上で重要であり、例えば人間の眼のように潤いのある質感を出すことができる。また、虹彩部と瞳孔部を同系色で統一するとより自然な印象となり、例えば虹彩部を青色透明の樹脂材料で形成し、瞳孔部を紺色の樹脂材料で形成するなどである。
【0021】
なお、虹彩部301内に突出する突出部分の高さを限定する意図はないが、少なくとも虹彩部301の表面まで突出しないように形成し、基本的には虹彩部301の奥に突出部分が見える程度が望ましい。突出部分の高さは顔面部品20における眼自体の窪みや虹彩部301の厚みによってもその最適な高さは変動する。また、突出部分の高さは、より高ければ瞳孔が確認できる範囲が広がる一方で、追視効果や自然さが失われるというトレードオフの関係にある。従って、顔面における眼の周辺部の形態に応じて、できるだけ広範囲に瞳孔を確認できる一方で追視効果や自然さが失われない高さに突出部分を形成することが望ましい。
【0022】
また、眼部品10は、虹彩部301及び瞳孔部302に加えて、下地部303を含んで構成される。下地部303は白色の樹脂材料で形成される。なお、ここでは一例として下地部303を白色の樹脂材料で形成する例について説明するが本発明を限定する意図はない。下地部303は、虹彩部301や瞳孔部302の色に応じて他の色で形成されてもよく、不透明な色であればよい。例えば、人形体で実現するキャラクターのデザインに応じて瞳孔部302が白色で形成され、下地部303が黒色で形成されることもある。
図4(a)に示すように、下地部303は、瞳孔部302が形成される部分とは異なる部分で虹彩部301の後面に接するように形成される。また、虹彩部301と接する下地部303の表面に凸凹形状(段差形状、ダイヤモンドカットのようなカッティング形状、開口と突部で形成された形状等、様々な形状を含む)を形成してもよい。これにより、瞳部分へ入光する光の反射を多方向へ分散させることができ、自然な瞳の輝きを表現することができる。これと同様の効果を得るように虹彩部301の後面に同様の凹凸形状を形成してもよい。虹彩部301の後面に凹凸形状を形成することにより、虹彩部301の膜厚が部分的に変化し、下地部303の透過の程度を異ならせ、より複雑な色味を表現する効果も期待できる。
【0023】
また、
図4(a)に示すように、下地部303は、虹彩部301に隣接して虹彩部301の前面と同様の位置まで延伸して形成された部分を有してもよい。当該部分は、
図4(b)の下地部303に示されるように、瞳の白色部分を形成し、人間の眼のような光の反射を演出することができる。上述したように、キャラクターのデザインに応じて変化する下地部303と同様に、上記瞳の白色部分は他の色で形成されてもよい。また、下地部303と一体化して形成されなくてもよく、その場合は下地部303とは異なる色の別の樹脂材料で形成されてもよい。一方、一体化して形成される場合には、後述するインサート成形の工程を低減することができ、より簡易な製造工程を実現することができる。
【0024】
(インサート成形手順)
ここで、本実施形態に係る眼部品10のインサート成形(一体成形)の製造手順について説明する。眼部品10は、例えば3色の樹脂を使用したインサート成形及び多色成形によって生成される。なお、以下で説明する手順に本発明を限定する意図はない。
【0025】
図4(a)に示すような各樹脂材料の構成であれば、眼基礎部品に対して、例えば紺色の樹脂材料で瞳孔部302を1次成形する。続いて、白色の樹脂材料で下地部303を2次成形する。最後に、青色透明の樹脂材料で虹彩部301を3次成形することにより眼部品10の最終成形品となる。上述の手順では、各工程で単色の樹脂材料を用いる例について説明したが、本発明を限定する意図はなく、多色の樹脂材料で行ってもよい。また、各樹脂材料の色についても、キャラクターのデザインに応じて種々の色を採用することができる。なお、瞳の追視機能を維持するためには、少なくとも瞳孔部及び下地部が不透明な樹脂材料で形成され、虹彩部が透明又は半透明な樹脂材料で形成されることが望ましい。
【0026】
以上のように、複数種類の樹脂を使用したインサート成形を繰り返すことで眼部品10が成形される。これにより、従来では印刷やシールによって提供していた眼の表現を高い精度で、容易に形成することができる。さらにプラスチックモデルのようにユーザに組み立ての一部を実行させる場合であっても、眼の表現としてユーザによるシール貼り工程をなくすことができ、シール貼りや塗装等の高い技術がなくても、ユーザにとっても違和感のない形で満足のいく完成品を作成することができる。なお、眼部品10と顔面部品20とは異なる光沢を有するように成形されていてもよい。例えば、眼部品10は、ポリスチレン樹脂等の透明性の高い樹脂材料で成形し、顔面部品20はポリスチレン樹脂にゴム等を配合してつやを抑え、肌の質感を出した樹脂で成形してもよい。
【0027】
<追視機能及び分割ライン>
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る眼部品10の追視機能と、顔面部品20との分割ラインについて詳細に説明する。
図5(a)は人形体の左眼の拡大図を示し、
図5(b)は瞳孔部302付近の平断面の拡大図を示す。
【0028】
(追視機能)
まず、本実施形態に係る追視機能について説明する。
図5(b)に示すように、本実施形態に係る眼部品10の追視機能は虹彩部301と瞳孔部302によって実現される。虹彩部301は、眼部品10の前面を被覆するように形成され、さらに、その後面が凹形状で形成される。これにより、瞳の下が一面で凹形状となり追視効果をより高めることができる。なお、後述する瞳孔部302の突出部分によっても追視効果を期待できるため、虹彩部301の後面については平坦な形状としてもよい。これにより、インサート成形での一工程をより簡易な工程で実現することができる。
【0029】
また、上述したように、瞳孔部302が虹彩部301の凹形状である後面の中心付近で一部が突出し、虹彩部301の内部へ侵入するように形成される。当該突出部分の前面は丸みを帯びた凸形状で形成されることが望ましい。さらに、当該突出部分の表面全体は虹彩部301によって被覆される。この突出部分により、
図5(b)に示すように、正面502から見た場合や、左503や右504から見た場合において、いずれの場合も虹彩部301の奥に瞳孔部302が形成されており、更には突出部分が丸みを帯びた凸形状で形成されているため、広範囲にわたって同様の印象となる。つまり、人形体を回転させながら見た場合であっても、所定の角度を超えた位置から見た場合には急に瞳孔部の印象が変化してしまうなどの違和感を抑制することができる。このように、本実施形態によれば広範囲に渡って追視機能をより自然な印象で実現することができる。
【0030】
(分割ライン)
続いて、本実施形態に係る顔面部品20と眼部品10との分割ラインについて説明する。
図5(a)に示すように、白目部201とまつ毛部202とを含む顔面部品20と、虹彩部301、瞳孔部3021及び下地部303を含む眼部品10とは501の一点鎖線に沿って分割される。このように、本実施形態によれば、顔面部品20に対して眼部品10を裏面から挿入して組み立てた場合の組立後の分割ラインが白目部分と瞳部分との境界付近に形成される。白目と瞳との境界付近では一般的に色差が大きくその境界をはっきり識別することができる。したがって、その境界付近に分割ラインを形成することにより当該ラインを目立たなくする効果が生まれ、組立による分割ラインによって表情に違和感を与えることを軽減することができる。なお、分割ラインについては、
図5(a)に示す一点鎖線501に本発明を限定する意図はなく、分割ラインが目立たない場所であればどのような場所であってもよい。
【0031】
また、本実施形態に係る顔面部品20及び眼部品10は複数色の樹脂を使用したインサート成形及び多色成形によって生成される。従って、各部品の各部、例えば虹彩部301や瞳孔部302は密着して成形されるため、組み立による隙間や組み付け誤差によるズレなどがなく、そのような組立による違和感を極力低減することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る人形体の顔面部品に組み付けられる眼部品は、眼部品の前面に配置される虹彩部と、前面が凸形状で形成されるとともに、虹彩部の後面から突出して当該虹彩部の内部に突出する突出部分を有する瞳孔部とを備える。また、本実施形態に係る眼部品は、眼を構成する白目部及びまつ毛部以外の瞳部分のみを形成するように構成されてもよく、更にはインサート成形を繰り返すことで成形されてもよい。これにより、本実施形態によれば、人形体の眼部品において広範囲に追視機能を自然な印象で実現するとともに、また同機能を好適に製造可能な仕組みを提供することができる。
【0033】
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。例えば、虹彩部に突出した瞳孔部の突出部分の表面全体が虹彩部によって被覆されてもよい。これにより、人形体の眼を正面から見た場合と、上下左右から見た場合とで、何れの場合においても瞳孔部が虹彩部の奥に位置するように見え、自然な印象で追視機能を実現することができる。
【0034】
また、虹彩部の後面と接する下地部の前面に凹凸形状が形成されてもよい。或いは、下地部の前面と接する虹彩部の後面に凹凸形状を形成してもよい。これにより、瞳部に入光する光の反射を多方向に分散することができ、人間の眼のような自然な輝きを再現することができる。
【符号の説明】
【0035】
10:眼部品、20:顔面部品、201:白目部、202:まつ毛部、301:虹彩部、302:瞳孔部、303:下地部