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特許7157135冷却システムを備えたインホイール電動モータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】冷却システムを備えたインホイール電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20221012BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/14 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020502561
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 NL2018050503
(87)【国際公開番号】W WO2019017787
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】2019302
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】505335968
【氏名又は名称】エー-トラクション ユーロペ ベスローテン フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】E-TRACTION EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン セヴェンター,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ヴァル,ラインハルト ピーター
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0159468(US,A1)
【文献】特開平09-163680(JP,A)
【文献】特開2013-188030(JP,A)
【文献】特開2006-197781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)車両側(2)の細長いコネクタ部材(33)、前記コネクタ部材(33)に連結された、中心軸(R)を有する円筒状中空ステータ本体(31)、および、前記ステータ本体(31)の外面上に設けられたステータ巻線を含む、ステータ(30)と、
(b)前記ステータ(30)を同軸状に取り囲みかつ電動モータ回転軸を中心に回転可能な円筒状ロータ本体(60)と、
(c)前記円筒状中空ステータ本体(31)の周囲に位置していて、前記ステータ巻線を冷却するために配置された冷却ジャケット(37)と、
(d)前記中空ステータ本体(31)内に配置されていて、前記ステータ巻線に電力供給するように適合されたパワーエレクトロニクス装置(42)と、
を備えた、車両用のインホイール電動モータ(4)であって、
(イ)前記コネクタ部材(33)に、液体冷却剤のためのフィードチャネルの第1開口部(92)と、前記液体冷却剤のためのリターンチャネルの第2開口部(93)とが設けられ、前記フィードチャネルおよびリターンチャネルの各々が、前記コネクタ部材(33)の軸方向(A)に対してほぼ平行とされ
(ロ)前記電動モータが内部冷却回路を有し、前記内部冷却回路が、前記液体冷却剤のためのフィードコネクタ(102)およびリターンコネクタ(103)を有し、前記フィードコネクタ(102)が、前記フィードチャネルの前記第1開口部(92)への液密な接続のために配置され、前記リターンコネクタ(103)が、前記リターンチャネルの前記第2開口部(93)への液密な接続のために配置されており、
(ハ)前記内部冷却回路が冷却剤供給チャネル(45A-45E)を含み、前記冷却剤供給チャネル(45A-45E)が、前記フィードコネクタ(102)から最初に前記パワーエレクトロニクス装置(42)を通り、次いで、前記リターンコネクタ(103)に到達し、そして、前記リターンコネクタ(103)から前記前記冷却ジャケット(37)に到達し、かつ、
前記フィードコネクタ(102)が、前記パワーエレクトロニクス装置(42)への前記冷却剤供給チャネル(45A)の入口に配置されており、前記リターンコネクタ(103)が、前記冷却ジャケット(37)への前記冷却剤供給チャネルの出口に配置されていることを特徴とする、前記インホイール電動モータ(4)
【請求項2】
前記内部冷却回路の前記冷却剤供給チャネルが第1ループ(45B,45C)を含み、前記第1ループ(45B,45C)が、前記フィードコネクタ(102)から、前記パワーエレクトロニクス装置(42)を通って延在し、前記リターンコネクタ(103)に戻り、前記第1ループ(45B,45C)が前記冷却ジャケット(37)よりも完全に上流に配置されている、請求項1に記載のインホイール電動モータ(4)
【請求項3】
前記内部冷却回路の前記冷却剤供給チャネルが、前記第1ループ(45B,45C)よりも完全に下流に配置されかつ前記第1ループ(45B,45C)に接続された第2ループ(45D,45E)を含み、前記第2ループ(45D,45E)が、前記コネクタ部材(33)から延在し、前記冷却ジャケット(37)を通って前記コネクタ部材(33)内に戻る、請求項に記載のインホイール電動モータ(4)
【請求項4】
前記内部冷却回路の第1部分(45A)が前記フィードチャネル(92)を含み、前記内部冷却回路の第2部分(45B,45C)が前記パワーエレクトロニクス装置(42)内の冷却ダクト(45B、45C)を含み、
前記内部冷却回路が、さらに、前記中空ステータ本体(31)に沿って延びる回路を形成している、前記冷却ジャケット(37)内のチャネル(38)を含み、
前記第2部分(45B,45C)が、前記冷却ジャケット(37)内の前記チャネル(38)よりも完全に上流にあり、かつ前記冷却ジャケット(37)内の前記チャネル(38)が形成されている前記中空ステータ本体(31)の円筒状容積の半径方向内部に配置されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)
【請求項5】
前記内部冷却回路の前記第2部分(45B,45C)により規定される円筒状容積が、前記冷却ジャケット(37)の前記チャネル(38)により規定される前記円筒状容積内に完全に配置されている、請求項4に記載のインホイール電動モータ(4)
【請求項6】
前記内部冷却回路の前記第2部分(45B,45C)が、前記液体冷却剤のためのループを前記パワーエレクトロニクス装置(42)内に形成し、かつまたは、前記冷却ジャケット(37)が前記液体冷却剤のためのループを形成している、請求項4または5に記載のインホイール電動モータ(4)
【請求項7】
前記コネクタ部材(33)が、前記ロータ本体(60)内に延在するフランジ(35)を含み、前記フランジ(35)に前記冷却ジャケット(37)のための入口チャネルが設けられ、前記入口チャネルが前記リターンコネクタ(103)の下流に配置されており、かつ、前記フランジ(35)に、前記冷却ジャケット(37)からの液体冷却剤のための出口チャネルが設けられている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)
【請求項8】
前記コネクタ部材(33)が、前記ロータ本体(60)内に延在するフランジ(35)を含み、前記フィードコネクタ(102)および前記リターンコネクタ(103)が前記回転軸に対してほぼ平行に延在し、かつ、少なくとも部分的に、前記パワーエレクトロニクス装置(42)と、前記フランジ(35)の、前記パワーエレクトロニクス装置(42)に面した側部(33-2)との間にある、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)
【請求項9】
前記冷却剤供給チャネル(45A-45E)が前記パワーエレクトロニクス装置(42)の電子部品に熱交換接触している、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項10】
前記パワーエレクトロニクス装置(42)内の前記冷却剤供給チャネル(45A-45E)に、前記電子部品の1以上に取り付けられた1以上の熱交換器が設けられている、請求項9に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項11】
第1シール(107)が前記フィードチャネルの前記第1開口部と前記フィードコネクタ(102)との間に配置されており、かつ、第2シール(108)が前記リターンチャネルの前記第2開口部と前記リターンコネクタ(103)との間に配置されている、請求項1ないし10のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項12】
前記フィードコネクタ(102)および前記リターンコネクタ(103)が、前記フランジ(35)上の、前記パワーエレクトロニクス装置(42)に面した側部に配置されており、
前記フィードコネクタ(102)が、前記フランジ(35)上の、前記パワーエレクトロニクス装置(42)に面した側部に配置されており、かつ、前記リターンコネクタ(103)が、前記パワーエレクトロニクス装置(42)上の、前記フランジ(35)に面した側部に配置されており、
前記フィードコネクタ(102)が、前記パワーエレクトロニクス装置(42)上の、前記フランジ(35)に面した側部に配置されており、かつ、前記リターンコネクタ(103)が、前記フランジ(35)上の、前記パワーエレクトロニクス装置(42)に面した側部に配置されており、または
前記フィードコネクタ(102)および前記リターンコネクタ(103)が、前記パワーエレクトロニクス装置(42)上の、前記フランジ(35)に面した側部に配置されている、請求項7に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項13】
相互接続ダクト(45D)が、前記パワーエレクトロニクス装置(42)内の前記冷却剤供給チャネル(45B,45C)と、前記冷却ジャケット(37)内の前記冷却剤供給チャネルとの間に配置されている、請求項12に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項14】
前記コネクタ部材(33)が、前記ロータ本体(60)内に延在するフランジ(35)を含み、かつ、前記パワーエレクトロニクス装置(42)に面した側部(33-2)を有し、前記フランジおよびまたは前記中空ステータ本体(31)の内周面に、1以上の支持体(91)が設けられており、前記支持体(91)が前記回転軸に対して平行に延在し、かつ、前記パワーエレクトロニクス装置(42)の、前記回転軸に沿った前記中空ステータ本体(31)への出入りのスライド移動を支持するように適合されている、請求項1ないし13のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)
【請求項15】
(a)車両側(2)の細長いコネクタ部材(33)、前記コネクタ部材(33)に連結されていて中心軸(R)を有する円筒状中空ステータ本体(31)、および、前記ステータ本体(31)の外面上に設けられたステータ巻線を有するステータ(30)と、(b)前記ステータ(30)を同軸状に取り囲む円筒状ロータ本体(60)と、(c)前記ステータ巻線に電力供給するためのパワーエレクトロニクス装置(42)とを備えたインホイール電動モータ(4)を組み立てる方法であって
(イ)前記コネクタ部材が、液体冷却剤のためのフィードチャネルの第1開口部(92)と、前記液体冷却剤のためのリターンチャネル開口部の第2開口部(93)とを含み、前記フィードチャネルおよび前記リターンチャネルの各々が、前記コネクタ部材(33)の軸方向(A)に対してほぼ平行であり、
(ロ)前記方法が、コントロールエレクトロニクスを含むハウジング(100)を設けるステップを含み、前記ハウジング(100)が、フィードコネクタ(102)を有する送出冷却チャネルおよびリターン冷却チャネルを有し、リターンコネクタ(103)が前記フィードコネクタ(102)の付近に配置されており、かつ、
(ハ)前記方法が前記ハウジング(100)の前記フィードコネクタ(102)および前記リターンコネクタ(103)をスライドさせて前記1開口部および前記第2開口部(92,93)内に入れるステップを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記方法が、前記インホイール電動モータ(4)内に、前記液体冷却剤のためのフィードコネクタ(102)およびリターンコネクタ(103)を有する内部冷却回路(45A-45E)を設けるステップを含み、前記フィードコネクタ(102)が、前記フィードチャネルの前記第1開口部(92)への液密な接続のために配置され、かつ、前記リターンコネクタ(103)が、前記リターンチャネルの前記第2開口部(93)への液密な接続のために配置されており、かつ、
前記方法が、前記パワーエレクトロニクス装置(42)を前記フィードコネクタ(102)に接続して、冷却剤供給チャネル(45A-45E)を前記冷却回路内に設けるステップを含み、前記冷却剤供給チャネル(45A-45E)が前記フィードコネクタ(102)から延在し、最初に前記パワーエレクトロニクス装置(42)を通り、次いで、前記リターンコネクタ(103)に接続され、前記円筒状中空ステータ本体(31)の周囲に位置していて、前記ステータ巻線を冷却するために配置された、前記円筒状中空ステータ本体(31)の冷却ジャケット(37)に到達する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムを備えたインホイール電動モータに関する。また、本発明は、このようなインホイール電動モータの製造方法に関する。さらに、本発明は、このような電動モータを備えた車両のホイールのための駆動組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電動ホイールモータ用のトラクション/ブレーキ装置を開示している。この装置は、ステータ組立体と、ロータと、ロータと共に回転するブレーキディスクを有するブレーキシステムとを備えている。ステータ組立体は、スタブアクスル支持体と、ステータ本体と、ステータ冷却チャンバの境界を定めるカバーとを含み、スタブアクスル支持体は、トラクション/ブレーキ装置を車両に接続するための取り付けベースを含む。スタブアクスル支持体は3つの軸方向通路を含み、これらのうち2つが流体パイプのためのものであり、1つがケーブルの通路のためにある。これらの3つの通路は、取り付けベースの中央ゾーンへと開放されている。
【0003】
スタブアクスル支持体はステータ本体に固定され、ステータ本体の内部を通ってモータの車両側からモータの道路側まで延在し、その結果、ステータ本体の内周面の中空空間はスタブアクスル支持体によりほぼ完全に満たされている。インホイール電動モータに電力供給するためのコントロールエレクトロニクス(制御電子機器)はステータ本体内に設けられていない。その代わりに、ステータに取り付けられた複数のコイルが、ホイールの外側に収容されたコンピュータにより制御される。コンピュータは、ステータおよびロータ組立体により形成された電動モータにより発生されるトルクを制御するためのものである。
【0004】
制御電子機器がステータ内に配置されたインホイール電動モータが、特許文献2から公知である。この特許文献は、インホイール電動モータを有する電気車両を開示しており、この車両において、ロータは1以上のタイヤを支持しているホイールのリムに接続されている。ステータは車両のフレーム上にホイールサスペンションシステムを介して取り付けられている。公知のインホイール電動モータは、モータの電磁石がリムおよびタイヤを直接、いずれの中間ギアも有さずに駆動させるダイレクト駆動ホイールの一部であり、このようにして重量およびスペースが節減され、また、駆動組立体の部品の個数も最小限にされる。
【0005】
インホイール電動モータにより発生されるトルクは、ロータとステータとの間の磁束移送面に依存し、ロータ半径の二次関数である。ロータ磁石は、最大可能ロータ半径が得られるようにステータの周囲の可能な限り遠方に配置され、また、モータ設計は、最大パワーおよびトルクをタイヤに伝達するためにロータとステータとの間の間隙を最小化するように最適化される。一方で、ロータとステータとの間の間隙幅は、駆動状態中にホイールに与える機械的衝撃を吸収するように十分に大きく設計される。
【0006】
ステータの巻線は、ステータ内に配置されたパワーエレクトロニクスにより電力供給される。このパワーエレクトロニクスは、車両の電力供給システム、例えばバッテリーパックおよびまたは発電機からの電気エネルギーを、電動モータによる使用に適したAC電流に変換する。このようなパワーエレクトロニクスは、一般的に、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)電流モジュール、および電流調整器などのパワーエレクトロニクス(電力供給電子機器)を含み、これらは、例えば、特許文献3に記載されている。ステータの巻線に供給される電流およびまたは電圧を制御するためにパワーエレクトロニクスを使用することにより、ステータにより発生される磁界ベクトル束が制御されて、電動モータが所望のトルクおよびまたは回転速度で動作される。パワーエレクトロニクスをステータ内に組み込むことにより、パワーエレクトロニクスから電磁石まで延在するバスバーの長さを短く保つことができ、これは、このような電動モータの動作に一般的に必要な高電流および高電圧(例えば700V以上で300A)の損失を最小化する観点から、非常に望ましい。
【0007】
インホイール駆動組立体は、ほぼ内蔵型のモジュールとして具現化されることができ、車両の可動部品のいずれも、ロータに取り付けまたはロータ内に延在させる必要がない。ロータによる画成されている内部空間は、車両のブレーキシステムおよびまたは道路により放出される塵およびまたは摩耗粒子などの異物が前記内部に侵入するのを防ぐために、実質的に閉鎖されることが好ましい。
【0008】
駆動組立体の車両側を車両フレームに接続することにより、インホイール駆動組立体を車両の様々な位置に取り付け可能である。タイヤを取り付けるためのリムがロータに、好ましくはロータのほぼ円筒状の外面に取り付けられ得る。
【0009】
電動モータおよびまたはパワーエレクトロニクスを冷却するために、公知の駆動組立体に、蛇行冷却チャネルを有する冷却システムが設けられ、この蛇行冷却チャネルは、円筒状のシェル上のステータ巻線の内面付近に配置されている。液体冷却剤が冷却チャネルを通って流れて駆動組立体に出入りする。冷却システムの円筒状シェルは、さらに円形の端面を有し、この端面上にパワーエレクトロニクスが取り付けられている。蛇行冷却チャネルは円筒状面に沿って延在し、その途中で円形の端面を通過する。
【0010】
しかし、先行技術のインホイール電動モータにおいては、パワーエレクトロニクスの効率的な冷却が妨げられ、これにより、使用中のパワーエレクトロニクスが比較的高温まで上昇し、また、ステータ巻線に供給され得る電力が制限される。蛇行冷却チャネルによる冷却は効率的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2017-0110933号明細書
【文献】国際公開第2013/025096号パンフレット
【文献】欧州特許第1252034号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、先行技術による1以上の欠点を克服または軽減することである。詳細には、本発明の目的は、容易に組立ておよび分解され得る、効率的に冷却されるパワーエレクトロニクスを有するインホイール電動モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、インホイール電動モータであって、車両側のコネクタスタブを有するステータと;前記コネクタスタブに連結された円筒状中空ステータ本体であって、その外面上にステータ巻線が設けられている中空ステータ本体と;前記ステータを同軸状に取り囲み、かつ電動モータ回転軸を中心に回転可能な円筒状ロータ本体と;前記円筒状中空ステータ本体の周囲に位置し、かつ、前記ステータ巻線を冷却するために配置された冷却ジャケットと;前記中空ステータ本体内に配置され、かつ、前記ステータ巻線に電力供給するように適合されたパワーエレクトロニクス装置と、を備えた前記インホイール電動モータにより達成される。前記コネクタスタブに、液体冷却剤のためのフィードチャネルの第1開口部と、液体冷却剤のためのリターンチャネルの第2開口部とが設けられており、前記フィードチャネルおよび前記リターンチャネルの各々が、前記コネクタスタブの軸方向に対してほぼ平行である。前記電動モータは内部冷却回路を含み、当該内部冷却回路は、液体冷却剤のためのフィードコネクタおよびリターンコネクタを有する。前記フィードコネクタは、前記フィードチャネルの前記第1開口部への液密な接続のために配置され、前記リターンコネクタは、前記リターンチャネルの前記第2開口部への液密な接続のために配置されている。前記内部冷却回路は冷却剤供給チャネルを含み、当該冷却剤供給チャネルは、前記フィードコネクタから最初に前記パワーエレクトロニクス装置を通って延在し、次いで、前記リターンコネクタを通って前記円筒状中空ステータ本体内の冷却ジャケットに到達している
【0014】
好ましくは、前記フィードコネクタは、前記パワーエレクトロニクス装置への前記冷却剤供給チャネルの入口に配置され、前記リターンコネクタは、前記冷却ジャケットからの前記冷却剤供給チャネルの出口に配置されている。本発明によれば、液体冷却剤は、前記車両の冷却ユニットまたは熱交換器を通過した後に前記インホイール電動モータに入り、最初に、前記パワーエレクトロニクス装置の電子部品に熱交換接触し、その後、前記ステータ本体の前記冷却チャネルを通過する。このようにして、前記電子部品(動作中に前記ステータ巻線よりも高温になり得る)が、比較的低温の液体冷却剤(先行技術の冷却回路と比較して、相対的に高い熱伝達をもたらす)により冷却され、前記電子部品が、前記ステータ巻線の冷却のために使用される前記液体冷却剤により冷却される。前記フィードコネクタおよびリターンコネクタは、好ましくは、前記パワーエレクトロニクス装置が前記回転軸に対して平行に、前記コネクタ部材に近づけおよび遠ざけるようにスライドされるときに、それぞれ、軸方向の連結および連結解除を可能にする。
【0015】
一実施形態において、前記内部冷却回路の前記冷却剤供給チャネルは第1ループを含み、当該第1ループは、前記フィードコネクタから、前記パワーエレクトロニクス装置を通って延在し、前記リターンコネクタに戻る。前記第1ループは前記冷却ジャケットよりも完全に上流に配置されている。こうして、冷却液が、前記コネクタ部材から前記パワーエレクトロニクス装置を通って前記道路側の端部に向って流れ、次いで、前記コネクタ部材へと戻り、このようにして前記第1ループを形成している。
【0016】
一実施形態において、前記内部冷却回路の前記冷却剤供給チャネルは、前記第1ループよりも完全に下流に配置されかつ前記第1ループに接続された第2ループを含み、前記第2ループは、前記コネクタ部材から延在し、前記冷却ジャケットを通って前記コネクタ部材内に戻る。こうして前記第1ループを通過した冷却液は、次いで、前記コネクタ部材から、前記冷却ジャケットを通り、前記道路側に向かって流れ、そして、前記コネクタ部材へと戻ることができ、このようにして前記第2ループを形成している。好ましくは、前記フランジは、前記リターンコネクタの下流に接続されたチャネルを含み、このチャネルが前記第1ループを前記第2ループに接続している。
【0017】
一実施形態において、前記内部冷却回路の第1部分が前記フィードチャネルを含み、前記内部冷却回路の第2部分が、前記パワーコントロール装置内の冷却ダクトを含む。前記内部冷却回路は、さらに、前記中空ステータ本体(31)に沿って延びる回路を形成している、前記冷却ジャケット内のチャネルを含み、前記第2部分は前記冷却ジャケット内の前記チャネルよりも完全に上流にあり、かつ、前記チャネルが架渡されている(spanned)容積(すなわち、冷却ジャケット内のチャネルが形成されている部分に対応してこれにより規定される、前記軸方向における中空ステータ本体の円筒状容積)の半径方向内部に配置されている。従って、前記第2部分は、前記冷却ジャケットのチャネルよりも上流に配置され、かつ、前記チャネルの内側にある。
【0018】
一実施形態において、前記第2部分が架渡されている容積(すなわち、前記内部冷却回路の第2部分に対応してこれにより規定される、前記軸方向における円筒状容積)は、前記冷却ジャケットの前記チャネルが架渡されている前記容積内に完全に配置されている。追加的にまたは代替的に、前記第2ループにより架渡されている容積は、前記第1ループにより架渡されている前記容積(すなわち、前記冷却ジャケットのチャネルに対応してこれにより規定される前記円筒状容積)内に完全に配置されている。このようにして、前記内部冷却回路の前記第2部分を前記冷却ジャケットの前記チャネルから離隔することにより、前記冷却液が最初に前記パワーエレクトロニクス装置を冷却し、次いで、前記パワーエレクトロニクス装置により電力供給されている前記電磁石を冷却することが保証され得る。
【0019】
一実施形態において、前記第2部分が、前記冷却液のためのループを前記パワーエレクトロニクス装置内に形成し、かつまたは、前記冷却ジャケットが、前記冷却液のためのループを形成している。このようにして、前記第2部分が第1ループを形成し、そして前記冷却ジャケットの前記チャネルが第2ループを、前記第1ループよりも下流に形成する。
【0020】
一実施形態において、前記コネクタ部材は、前記ロータ内に延在するフランジを含み、当該フランジに、前記冷却ジャケットのための入口チャネルが設けられ、当該入口チャネルは前記リターンコネクタよりも下流に配置されており、かつ、前記フランジに、前記冷却ジャケットからの冷却液のための出口チャネルが設けられている。このようにして、前記パワーエレクトロニクス装置を通過した冷却液が、前記入口チャネルを通して前記冷却ジャケットに供給されることができる。冷却液は、前記冷却ジャケットを循環した後、前記出口チャネルを通って前記冷却ジャケットから出ていくことができる。前記出口チャネルは、一般的に、前記インホイール電動モータの外側の、かつ車両内にある冷却装置、例えば、ラジエータに接続されている。
【0021】
一実施形態において、前記コネクタ部材は、前記ロータ内に延在するフランジを含み、前記フィードコネクタおよび前記リターンコネクタが前記回転軸に対してほぼ平行に延在し、かつ、少なくとも部分的に、前記パワーエレクトロニクス装置と、前記フランジの、前記パワーエレクトロニクス装置に面した側部との間にある。前記パワーエレクトロニクス装置を前記中空ステータ本体内に取り付けている間、前記パワーエレクトロニクス装置は、前記回転軸に対して平行に、前記フランジの、前記パワーエレクトロニクス装置に面した側部に向かってスライドされることができ、これにより、前記フィードコネクタおよび
記リターンコネクタが、前記フランジおよび前記パワーエレクトロニクス装置との流体接続
をもたらすことを可能にする。
【0022】
一実施形態において、前記冷却剤供給チャネルは前記パワーエレクトロニクス装置の電子部品に熱交換接触している。例えば、前記冷却剤供給チャネルは、IGBTおよびもしくはコンデンサまたは前記パワーエレクトロニクスのその他の部品(これらの部品は、前記パワーエレクトロニクス装置が車両からのAC電力を、前記インホイール電動モータでの使用に適した電力に変換するときに熱を生成する)の付近を通過し得る。
【0023】
一実施形態において、前記パワーエレクトロニクス装置内の前記冷却剤供給チャネルに、前記電子部品の1以上に取り付けられた1以上の熱交換器が設けられている。このような熱交換器は、例えば、前記電子部品にその外面が取り付けられている金属管を含み得、前記冷却液が、前記管内を流れる。前記冷却剤供給チャネルおよび前記パワーエレクトロニクス装置の両方に熱接触している場合に使用され得るその他の公知のタイプの熱交換器は、ヒートパイプおよび冷却フィンを含む。
【0024】
一実施形態において、第1シールが前記フィードチャネルの前記第1開口部と前記フィードコネクタとの間に配置されており、かつ、第2シールが前記リターンチャネルの前記第2開口部と前記リターンコネクタとの間に配置されている。前記シールは、好ましくは、一方では前記フィードコネクタおよび前記リターンコネクタと、他方では前記パワーエレクトロニクスおよびまたは前記フランジの、前記パワーエレクトロニクスに面した側部との液密な接続を提供するように適合されている。前記シールは、一般的に、その内部に前記フィードコネクタおよび前記リターンコネクタを挿入させるように適合されている。この挿入は、例えば前記パワーエレクトロニクス装置を前記中空ステータ本体内に取り付けているときに、前記回転軸に平行な方向に沿って行われる。
【0025】
一実施形態において、前記フィードコネクタおよび前記リターンコネクタが、前記フランジ上の、前記パワーエレクトロニクス装置に面した側部に配置されており;または、前記フィードコネクタが、前記フランジ上の、前記パワーエレクトロニクス装置に面した側部に配置されており;かつ、前記リターンコネクタが、前記パワーエレクトロニクス装置上の、前記フランジに面した側部に配置されており;または、前記フィードコネクタが、前記パワーエレクトロニクス装置上の、前記フランジに面した側部に配置されており、かつ、前記リターンコネクタが、前記フランジ上の、前記パワーエレクトロニクス装置に面した側部に配置されており;または、前記フィードコネクタおよび前記リターンコネクタが、前記パワーエレクトロニクス装置上の、前記フランジに面した側部に配置されている。これらの場合の全てにおいて、前記フィードコネクタおよび前記リターンコネクタは、開口部(好ましくはシールが設けられている)の内部にスライドさせることができる。これは、前記パワーエレクトロニクス装置を前記回転軸に沿って前記フランジに向かってスライドさせることにより行われる。
【0026】
一実施形態において、相互接続ダクトが、前記パワーエレクトロニクス装置内の前記冷却剤供給チャネルと、前記冷却ジャケット内の前記冷却剤供給チャネルとの間に配置されている。好ましくは、前記相互接続ダクトは、前記リターンコネクタから前記フランジを通り、そして、前記フランジが前記冷却ジャケットに接続されている前記フランジの周縁まで延在する。
【0027】
一実施形態において、前記コネクタ部材は、前記ロータ内に延在するフランジを含み、かつ、前記パワーエレクトロニクス装置に面した側部を有する。前記フランジおよびまたは前記中空ステータ本体の内周面に、1以上の支持体が設けられており、これらの支持体は前記回転軸に対して平行に延在し、かつ、前記パワーエレクトロニクス装置の、前記回転軸に沿った前記中空ステータ本体への出入りのスライド移動を支持するように適合されている。前記支持体は、前記パワーエレクトロニクス装置の、前記中空ステータ本体内への位置決めおよびスライド移動を容易にする。前記支持体は、前記フランジの、前記パワーエレクトロニクス装置に面した側部から延在でき、かつまたは、前記中空ステータ本体の内周上に、前記パワーエレクトロニクス装置を支持する縁部を含み得る。
【0028】
一態様によれば、本発明は、インホイール電動モータを組み立てる方法を提供する。前記電動モータはステータを備え、当該ステータは、車両側のコネクタスタブと、当該コネクタスタブに連結された円筒状中空ステータ本体とを含み、当該ステータ本体の外面上にステータ巻線が設けられている。前記電動モータは、さらに、円筒状ロータ本体を備え、当該円筒状ロータ本体は、前記ステータを同軸状に取り囲み、かつ、電動モータ回転軸を中心に回転可能である。前記電動モータは、さらに、前記ステータ巻線に電力供給するためのパワーエレクトロニクス装置を備えている。前記コネクタ部材は、液体冷却剤のためのフィードチャネルの第1開口部と、液体冷却剤のためのリターンチャネル開口部の第2開口部とを含み、前記フィードチャネルおよび前記リターンチャネルの各々が、前記コネクタスタブの軸方向に対してほぼ平行である。前記方法は、コントロールエレクトロニクスを含むハウジングを設けるステップを含む。前記ハウジングは、第1雄型コネクタ(すなわち、発明を実施するための形態において後述するフィードコネクタ102)を有する送出冷却チャネルおよびリターン冷却チャネルを有し、第2雄型コネクタ(すなわち、発明を実施するための形態において後述するリターンコネクタ103)が前記第1雄型コネクタの付近に配置されている。また、前記方法は、前記ハウジングの前記第1雄型コネクタおよび前記第2雄型コネクタをスライドさせて前記1開口部および前記第2開口部内に入れるステップを含む。
【0029】
前記方法は、さらに、前記インホイール電動モータ内に、液体冷却剤のためのフィードコネクタおよびリターンコネクタを有する内部冷却回路を設けるステップを含み、前記フィードコネクタは、前記フィードチャネルの前記第1開口部への液密な接続のために配置され、前記リターンコネクタは、前記リターンチャネルの前記第2開口部への液密な接続のために配置されており、前記方法は、さらに、前記パワーエレクトロニクス装置を前記フィードチャネルに接続して、冷却剤供給チャネルを前記冷却回路内に設けるステップを含み、前記冷却剤供給チャネルが前記フィードコネクタから延在し、最初に前記パワーエレクトロニクス装置を通り、次いで、前記円筒状中空ステータ本体内の前記冷却ジャケットを通って前記リターンコネクタに到達する。
【0030】
さらに、本発明は、上述のインホイール電動モータ、または、上述の方法により製造されるインホイール電動モータを含む、車両のホイールのための駆動組立体に関し、前記ロータ部および前記ステータ部は、両方共、少なくとも部分的に前記ホイール内に配置されるように適合されている。
【0031】
さらに、有利な実施形態を従属クレームにより定義する。
【0032】
本発明を、以下に、本発明の例示的実施形態を示した図面を参照しつつ、より詳細に説明する。図面は、単に例示を目的とするものであり、本発明の概念を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】本発明で使用するための駆動組立体の断面図である。
図1B】本発明で使用するための駆動組立体の切り取り等角図である。
図1C】本発明で使用するための駆動組立体の断面図である。
図2】本発明の実施形態によるコネクタスタブの詳細図である。
図3】本発明の実施形態による冷却回路の概略的なレイアウトを示す図である。
図4図3の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1Aは、本発明で使用するための駆動組立体1を示す断面図である。この駆動組立体は、中空ステータ本体31を有するステータ30を備えている。中空ステータ本体31は外面32を有し、外面32の周囲にロータ60が配置されている。駆動組立体は、さらに、コネクタスタブ33を備え、コネクタスタブ33は、駆動組立体を車両のアクスルに取り付けるために組立体1の車両側2に配置されている。コネクタスタブ33はステータ本体34に、フランジ35を介して固定的に接続されている。フランジ35はロータ60内に延在し、スタブ33の部分36(ロータ60の周方向外面63の外側に延在する)よりも大きい直径を有する。ロータ60の、回転軸Rを中心とした回転運動を支持するために、車両側ベアリング52が設けられており、車両側ベアリング52を介してロータが車両側にてスタブ33上に支持されている。ロータは道路側3にて、ステータ本体31上に、道路側ベアリング54を介して回転可能に支持されている。
【0035】
複数の永久磁石61がロータ60の内周面62上に取り付けられて、ステータ30の電磁石41の周囲で回転できる。電磁石41は、ステータ本体31上に固定されており、永久磁石61と電磁石41により発生される磁気磁束との相互作用によりロータを回転駆動させる。ステータ30およびロータ60は、回転軸Rを中心にホイールを直接回転駆動させるように適合された電動モータを形成している。
【0036】
ロータ60は、ほぼ円筒状のロータ本体71を含み、ロータ本体71は、横方向端部72,73(それぞれ、ロータ本体71の車両側2および道路側3にある)を有する。両方の横方向端部72,73が、車両のブレーキシステムおよびまたは道路により放出される塵およびまたは摩耗粒子などの異物が中空ロータ60の内部に侵入することを防ぐために、ほぼ閉鎖されている。ロータの車両側は、回転軸Rに対して横方向に延在するサイドプレート74およびカバープレート75により実質的に閉鎖されている。サイドプレート74およびカバープレート75には、それぞれ、コネクタスタブ33の部分34を貫通させる開口部が設けられている。サイドプレート74は車両側ベアリング52を支持し、一方、カバープレート75はサイドプレート74に取り付けられて、ベアリング51を、その横方向車両側2にて覆い、そして、部分34を貫通させる開口部77を備えている。カバープレート75は、開口部77の内周縁79とシャフト34の外周との間に配置されたシャフトシール78と共に、異物粒子が車両側ベアリング52を損傷することを防止する。また、カバープレート75およびシャフトシール78は、このような粒子が車両側2からロータの内部5に入って電磁石41に干渉する可能性を実質的に防止する。
【0037】
ステータ本体31の内側に配置された道路側ベアリング54は、道路側3にて着脱可能な第2カバープレート80により覆われている。レゾルバ81が、ステータ30を第2サイドプレート80に回転可能に接続し、かつ、ステータ30に対するロータ60の角度位置を検出するように適合されている。円形の開口部が第2カバープレート80に設けられており、この開口部においてレゾルバ81が第2カバープレート80に、ロータ部分への回転接続のために取り付けられている。
【0038】
電磁石41に制御および給電を提供するために、パワーエレクトロニクス42を保持しているハウジングまたはケーシング100が中空ステータ本体31内に配置されている。パワーエレクトロニクス42は、車両の電力供給システム(例えばバッテリーパックおよびまたは発電機)からの電気エネルギーを、電気モータによる使用に適したAC形態に変換するための部品、例えばIGBTを含む。レゾルバ81が、ロータの角度位置を示す角度位置信号をパワーエレクトロニクスに、交流電流がロータの磁場と同位相で供給されるように提供する。
【0039】
パワーエレクトロニクス42に電力を供給するための電力供給ライン43a,43bが、ロータ60の外部から、コネクタスタブ33のスルーホールを含む通路44を通ってパワーエレクトロニクスまで延在している。
【0040】
パワーエレクトロニクス42のハウジングまたはケーシング100はヘッド、すなわち、コネクタスタブ33のフランジ35に取り付けられている。円筒状ロータ本体71における道路側の開口部90の直径は、パワーエレクトロニクス42のケーシングの断面よりも大きい。円筒状ロータ本体71における道路側の開口部を閉鎖している着脱可能な第2カバープレート80がパワーエレクトロニクス42の取り付けを可能にしており、これは、ケーシングを円筒状ロータ本体71における道路側3の開口部を通して挿入することにより行われる。また、着脱可能な第2カバープレート80は、パワーエレクトロニクス装置のケーシングを所定位置にロックすることも可能にし、また、必要に応じてパワーエレクトロニクス42に比較的容易にアクセスすることも可能にしている。
【0041】
電動モータの動作中にパワーエレクトロニクスが過熱することを防止するために、冷却ポンプ(図示せず)および冷却回路を含む冷却システムが設けられている。冷却回路は、冷却剤供給チャネル45を含み、冷却剤供給チャネル45は、冷却ポンプからコネクタスタブ33内のフィードチャネル45Aを通って延在し、パワーエレクトロニクス装置42内のチャネル45B,45C,45Dを通り、次いで、ステータ本体30の外面32上に設けられた冷却ジャケット37を通り、最後に、コネクタスタブ33内のリターンチャネル45Eを通って冷却ポンプに戻る。
【0042】
フィードチャネルおよびリターンチャネルは、コネクタスタブ33内のそれぞれのスルーホールを通って、それぞれ、車両内の熱交換器または冷却ユニット(図示せず)の出口および入口に向かって延在する。さらに、冷却回路は、一般的に、冷却剤供給チャネル45内に、冷却剤供給チャネル45を通る液体冷却剤の流れを生成するための循環ポンプ(図示せず)を含む。
【0043】
冷却回路は、液体冷却剤の流れをもたらすように構成されており、この流れは、最初に、パワーエレクトロニクス装置の電子部品を冷却するためにパワーエレクトロニクス装置42のケーシングを通り、リターン導管がケーシングのフロアプレート内に配置されている。リターン導管はコネクタスタブ内に入り、コネクタスタブにて、冷却ジャケット37に接続された導管に接続されており、これにより液体冷却剤をステータ本体の外面上で冷却ジャケット37に流通させ、リターンチャネルに戻らせ、そして最後にリターンチャネルを通して循環ポンプに戻らせる。なお、一実施形態においては、前記パワーエレクトロニクス42内の冷却剤供給チャネル45A-45Eに、電子部品の1以上に取り付けられた1以上の熱交換器(図示せず)が設けられていてもよい。このような熱交換器は、例えば、前記電子部品にその外面が取り付けられていて内部を液体冷却剤が流れる金属管とされてもよい。冷却剤供給チャネル45A-45Eおよびパワーエレクトロニクス装置42の両方に熱接触している場合に使用され得るその他の公知のタイプの熱交換器は、ヒートパイプおよび冷却フィンを含む。
【0044】
有利なことに、上述の冷却ダクトのレイアウトを有する冷却剤供給チャネルの構成により、最も高温の内部部品が最も低温の冷却剤流体により最初に冷却される。冷却剤流体は、パワーエレクトロニクス装置42の電子部品を冷却した後、電磁石を冷却するために、周辺の冷却チャネルを通って流れる。
【0045】
ステータ本体32の内部にあるパワーエレクトロニクス42のケーシング100に、1以上の内部冷却ダクト45B,45C(図3参照)が設けられている。これらのダクトは、パワーエレクトロニクス装置の電子部品に熱接触している。冷却剤が内部冷却ダクトの入口導管45A(図3参照)に冷却剤供給チャネル45を介して供給される。内部冷却ダクト45B,45Cの出口が冷却ジャケット37の入口に、相互接続冷却ダクト45Dを介して接続されている。一実施形態において、内部冷却ダクトは、ケーシング100のフロアに配置されている。フロア上に、比較的散逸性が高い電子部品が配置されており、これにより、これらの電子部品の十分な冷却が達成される。
【0046】
冷却剤流体は、パワーエレクトロニクス42を通過した後、ステータ本体30の外面32上に設けられた冷却ジャケット37に流れる。冷却ジャケット37にはチャネル38が設けられており、これらのチャネルは、中空円筒状本体31に沿って延在する回路を形成しており、この回路は、冷却ジャケット37の外側40に配置された電磁石41(またはステータ巻線)を冷却するために液体冷却剤の流れを通過させる通路を提供している。冷却ジャケット37の出口は、コネクタスタブ33内のリターンチャネル開口部に接続されている。
【0047】
比較的低温の冷却剤を冷却剤供給チャネル45を通して供給でき、冷却剤は、冷却ダクトを通過する間にパワーエレクトロニクス42から熱を吸収して昇温し、次いで、チャネル38を通過して電磁石41から熱を吸収し、その後、車両の車体内のポンプに戻る。昇温された冷却剤は、好ましくは、車両の熱交換器/冷却ユニットにて冷却される。その後、冷却剤は、冷却剤供給チャネル45A-45Eを通して再循環される(図3を参照)。
【0048】
図2を参照しつつさらに詳細に説明するが、パワーエレクトロニクスのケーシングおよびコネクタスタブ33はプラグおよびソケット構成を有して配置されており、これは、パワーエレクトロニクスを、機械的、電気的および熱的に、それぞれ取付、電力供給および冷却をもたらすために接続するためのものである。
【0049】
図1Bは、図1Aの駆動組立体の部分切り取り等角図を示しているが、この図において第2カバープレート80および道路側ベアリング54は、中空ステータ本体31およびレゾルバ81がより良好に見えるようにするために、図示されていない。
【0050】
図1Cは、本発明で使用するためのホイール駆動組立体の断面図を示している。ホイール駆動組立体は、インホイール電動モータ4、リム82、および、1以上のタイヤ84を含む。
【0051】
インホイール電動モータ4は、ステータ部分60およびロータ部分30を備えている。ステータ部分60は、車両の車体の一部であるコネクタスタブ33に連結されている。
【0052】
リム82は、ロータ部分60の外周に配置されている。リム82はロータ部分に、先行技術にて公知のようにボルト締め接続により取り付けられ得る。
【0053】
リム82上に、1以上のタイヤ84が取り付けられている。ロータ部分60およびステータ部30は両方共、少なくとも部分的にホイール内に配置されている。
【0054】
図2は、コネクタスタブ33の分解図を示している。コネクタスタブ33は、車両に面して取り付けられる第1の側部33-1を有し、また、第2の側部33-2を有する。第2の側部33-2は回転軸Rに対してほぼ垂直であり、かつ、中空ステータ本体31により画成された開口部に面している。組み立てられるときに、中空ステータ本体はフランジ35の周縁に対して固定され、冷却ジャケット37用の冷却液のための入口チャネル(図示せず)と、冷却ジャケットからの冷却液のための出口チャネルとが、コネクタスタブ33およびそのフランジ35を通ってコネクタジャケットまで延在する。こうして、冷却液は車両から、フランジ35を介して冷却ジャケット37のチャネル38内に流れることができ、そして、電磁石41を冷却した後、フランジ35を介して、次いでスタブ33を通って再び車両に戻ることができる。パワーエレクトロニクス装置42を適切に冷却することが重要であるため、車両からの液体冷却剤は、パワーエレクトロニクス装置を通して循環され、その後、冷却ジャケットのチャネル38に入る。冷却ジャケットの冷却チャネル38は、パワーエレクトロニクス装置内の冷却チャネルよりも完全に下流に配置され、冷却ジャケットは、パワーエレクトロニクス装置をほぼ半径方向に取り囲んでいる。
【0055】
中空ステータ本体内にパワーエレクトロニクス装置を容易に取り付けるために、フランジの第2の側部33-2に2つの支持体91が設けられており、これらの支持体は、回転軸Rに対して平行に突出して、パワーエレクトロニクス装置42を少なくとも部分的に支持する。また、2つの支持体91は、パワーエレクトロニクス装置がフランジの第2の側部33-2に取り付けられたときに、回転軸を中心として回転可能に位置合わせされることを保証し、これにより、パワーエレクトロニクス装置42のコネクタは、フランジの第2の側部33-2上に設けられた対応する開口部に軸方向に挿入され得る。図示されていないが、さらなる支持体を中空のステータ本体の内側に、エッジまたはリッジの形態で設けることもでき、これらの支持体は、内面に沿って回転軸に平行に延在して、パワーエレクトロニクス装置を支持するように配置される。
【0056】
図3は、本発明の実施形態による冷却回路のレイアウトの概略図であり、コネクタスタブ33、電力制御装置42を通り、次いで冷却ジャケット37を通る冷却液体の流れが概略的に示されている。
【0057】
冷却回路は、モータ組立体内に、冷却剤供給チャネル45を有して配置されている。冷却剤供給チャネル45は、コネクタスタブ33内の供給チャネル45Aを通り、パワーエレクトロニクス装置42内のチャネル45B,45Cを、パワーエレクトロニクス装置の場合、電子部品に沿って通り、そして、パワーエレクトロニクス装置のフロアにおけるリターンチャネル45Dを通って、コネクタスタブ33内のさらなるチャネル45Dに至り、そして、ステータ本体30の外面32に設けられた冷却ジャケット37内に入っている。冷却ジャケット37から、第2のリターンチャネル45Eがコネクタスタブ33を通って延在している。
【0058】
図4に示す例においては、フィードコネクタ102およびリターンコネクタ103はパワーエレクトロニクス装置42上の、フランジ35に面した側部に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。図4から理解されるように、フィードコネクタ102およびリターンコネクタ103は、フランジ35上の、パワーエレクトロニクス装置42に面した側部に配置されていてもよい。これに代えて、フィードコネクタ102が、フランジ35上の、パワーエレクトロニクス装置42に面した側部に配置される一方、リターンコネクタ103がパワーエレクトロニクス装置42上の、フランジ35に面した側部に配置されていてもよい。あるいは、フィードコネクタ102が、パワーエレクトロニクス装置42上の、フランジ35に面した側部に配置されている一方、リターンコネクタ103が、フランジ35上の、パワーエレクトロニクス装置42に面した側部に配置されていてもよい。これらの各例のいずれにおいても、フィードコネクタ102およびリターンコネクタ103は、パワーエレクトロニクス装置42を回転軸に沿ってフランジ35に向かってスライドさせることにより、開口部(好ましくはシールが設けられている)の内部にスライドさせることができる。
【0059】
好ましくは、フィードコネクタ102は、パワーエレクトロニクス装置42への前記冷却剤供給チャネル45の入口に配置され、リターンコネクタ103は、冷却ジャケット37からの冷却剤供給チャネル45の出口に配置されている。一実施形態によれば、液体冷却剤は、車両の冷却ユニットまたは熱交換器(不図示)を通過した後にインホイール電動モータに入り、最初に、パワーエレクトロニクス装置42の電子部品に熱交換接触し、その後、ステータ本体の冷却チャネルを通過する。このようにして、電子部品(動作中にステータ巻線よりも高温になり得る)が、比較的低温の液体冷却剤(先行技術の冷却回路と比較して、相対的に高い熱伝達をもたらす)により冷却され、電子部品が、ステータ巻線の冷却のために使用される液体冷却剤により冷却される。フィードコネクタ102およびリターンコネクタ103は、好ましくは、パワーエレクトロニクス装置42が前記回転軸に対して平行に、コネクタスタブ33に近づけおよび遠ざけるようにスライドされるときに、それぞれ、軸方向の連結および連結解除を可能にする。
【0060】
一実施形態において、図3に示す内部冷却回路の前記冷却剤供給チャネル45は、内部冷却ダクト45B,45Cによって規定される第1ループ45B,45Cと、相互接続冷却ダクト45Dおよびリターンチャネル45Eによって規定される第2ループ45D,45Eとを含んでいてもよい。具体的には、図3に示すように、第1ループ45B,45C(冷却剤供給チャネル45を示す矢印付き太線によって示した、部分的に閉じていない矩形として理解されうる)は、フィードコネクタ102から、パワーエレクトロニクス装置42を通って延在し、リターンコネクタ103に戻る。また、この第1ループは前記冷却ジャケット37よりも完全に上流に配置されていることが理解される。他方、第2ループ45D,45E(第1ループ45B,45Cの矩形よりも大きい部分的に閉じていない矩形として理解されうる)は、第1ループ45B,45Cよりも完全に下流に配置されかつ該第1ループに接続されている。第2ループ45D,45Eは、コネクタスタブ33から延在し、冷却ジャケット37を通り、コネクタスタブ33内に戻る。
【0061】
本発明を、好ましい実施形態に関して説明してきた。出願人以外の人々が上記の詳細な説明を読んで理解すれば、明らかな改変および変更が考えられよう。本発明は、そのような改変および変更の全てを、それらが添付の特許請求の範囲内にある限りにおいて含むものとみなされるものとする。
【0062】
図4は、図3の断面図の一部の図であり、フィードコネクタ102、リターンコネクタ103、およびシール107,108がより詳細に示されている。フィードコネクタおよびリターンコネクタは、ケーシング100上の、フィードチャネルおよびリターンチャネル92,93の開口部に面した側部に設けられており、従って、フィードコネクタおよびリターンコネクタの開口部への挿入および開口部からの取り出しが、パワーエレクトロニクス42を有するケーシング100を回転軸Rに沿って軸方向にフランジ35に近づけまたは遠ざけてスライドさせることにより行われ得る。フィードチャネルおよびリターンチャネル92,93の開口部にはシール107,108が設けられており、シール107,108は、コネクタが開口部に挿入されたときに、それぞれのコネクタ102,103を取り囲む。こうして、コネクタとシールとは協働して、パワーコントロールエレクトロニクスのためのケーシング内の冷却チャネルとステータのフランジ35との液密な接続を提供する。
【0063】
図4は、コネクタスタブ33のフランジ35に取り付けられたパワーエレクトロニクス装置42のケーシングの冷却剤コネクタを示している。この断面図において、フィードチャネルとフィード流体コネクタとの接続、および、リターンチャネルとリターン流体コネクタとの接続のそれぞれが示されている。また、端子の一方43aが、コネクタスタブ33における対応するスルーホール内に示されている。フィードチャネルとフィード流体コネクタとの接続、および、リターンチャネルとリターン流体コネクタとの接続に、各々、漏れ防止のためのシール107,108が設けられている。
【0064】
一実施形態において、フィードチャネルの開口部92およびリターンチャネルの開口部93に、シール107,108および逆止弁(図示せず)が設けられる。有利なことに、逆止弁は、パワーエレクトロニクス装置42をコネクタスタブ33のフランジから取り出すときにコネクタスタブ33のフランジ35の接続が開いた場合に、車両側2の冷却回路を閉鎖する。
【符号の説明】
【0065】
1 駆動組立体
2 車両側
3 道路側
4 インホイール電動モータ
30 ステータ
31 中空ステータ本体
32 中空ステータ外面
33 コネクタスタブ
33-2フランジの、前記パワーエレクトロニクス装置に面した側部
35 フランジ
41 電磁石
42パワーエレクトロニクス装置
43a 電力供給ライン
43b 電力供給ライン
44 通路
45A-45E 冷却剤供給チャネル(フィードチャネル)
52 車両側ベアリング
54 道路側ベアリング
60 ロータ
61 永久磁石
62 ロータの内周面
71 ロータ本体
74 サイドプレート
75 カバープレート
91 支持体
R 回転軸
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4