(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】磁場を生成する装置及び当該装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 43/08 20060101AFI20221012BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01L43/08 Z
H01L29/82 Z
(21)【出願番号】P 2020502997
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 IB2018054662
(87)【国際公開番号】W WO2019021078
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-03-08
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509096201
【氏名又は名称】クロッカス・テクノロジー・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】アルヴァレス-エロール・ジェレミィ
(72)【発明者】
【氏名】ロンバール・ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ステネル・カンタン
(72)【発明者】
【氏名】チルドレス・ジェフリー
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138839(JP,A)
【文献】特開2004-193540(JP,A)
【文献】国際公開第2016/050982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/08
H01L 29/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石のそれぞれが、所定の間隔で隣の磁石から空間的に離して平面に沿って平面に配置されている、複数の永久磁石を備え、
前記複数の永久磁石のそれぞれは、隣の磁石の磁場が実質的に
前記平面に垂直で隣の磁石の磁場と反対方向に配向されるように、隣の磁石の磁場とは反対向きの磁極性を持ち、
前記永久磁石のそれぞれは、
前記平面において、非磁性材料によって隣の磁石から空間的に分離されている、
磁場を生成する装置を備えるシステムであって、
さらに、
低いしきい値温度でピン止めされ、高いしきい値温度で自由に配向可能な第1磁化を有する第1磁性層と、複数の磁気セルのそれぞれから物理的に分離され、複数の磁気セルのいずれか一つを加熱するための加熱電流パルスを通すように構成された加熱線とを備える、複数の磁気セルを備える磁気機器を備える前記システムにおいて、
前記磁場を生成する装置によって生成される磁場は、高いしきい値温度で加熱されている複数の磁気セルの任意の1つの第1磁化を切り替えるように構成されていることと、
前記磁場を生成する装置は、
前記平面に沿って磁気機器の上又は下に移動可能に構成されてい
て、
前記磁場を生成する装置が前記磁気機器の上又は下に移動する際に、前記平面に沿って前記磁気機器の1面に対向する板部であって、鉄を含有する前記板部を備えることと
を特徴とするシステム。
【請求項2】
所定の間隔が0.25mmと50mmとの間、又は1.2mmと25mmとの間の値である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記平面に沿っ
た磁石の横方向の寸法は、2.5mmと80mmとの間、又は12mmと50mmとの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
板部は、0.25mmと50mmとの間、又は5mmと25mmとの間の厚みを持つ、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
磁場を生成する装置と、磁気機器とを備えるシステムを使用する方法であって、
磁気機器は、低いしきい値温度でピン止めされ、高いしきい値温度で自由に配向可能な第1磁化を有する第1磁性層と、複数の磁気セルのそれぞれから物理的に分離され、複数の磁気セルのいずれか一つを加熱するための加熱電流パルスを通すように構成された加熱線とを備える、複数の磁気セルを備え、
前記磁場を生成する装置は、
永久磁石のそれぞれが、所定の間隔で隣の磁石から空間的に離して平面に配置されている、複数の永久磁石を備え、
前記複数の永久磁石のそれぞれは、隣の磁石の磁場が実質的に平面に垂直で隣の磁石の磁場と反対方向に配向されるように、隣の磁石のとは反対向きの磁極性を持ち、
前記複数の永久磁石のそれぞれは
、非磁性材料によって隣の磁石から空間的に分離されている、
前記方法において、
加熱ラインに加熱電流パルスを通すことにより、複数の磁性セルのいずれか一つを高い
しきい値温度に加熱することと、
複数の磁気セルのうちのいずれか一つが高い
しきい値温度になったならば、複数の磁気セルのうちのいずれか一つの第1磁化の向きを再設定するために、
前記磁場を生成する装置によって生成された磁場を適用することと
を備えることと、
前記磁場を生成する装置は、磁場を適用している間、移動されることと
を特徴とする、システムを使用する方法。
【請求項6】
プログラミング線は、複数の磁気セルの一つ又は複数の行を含む第1サブセットをプログラミングするために配置された少なくとも一つの第1支線と、第1サブセットの複数の磁気セルの一つ又は複数の行の隣の複数の磁気セルの一つ又は複数の行を備える第2サブセットをプログラミングするために配置された少なくとも1本の第2の支線とを備え、
当該方法が、
第1方向の第1サブセットの磁気セルの基準磁化を再配向することと、
第2サブセットの磁気セルの基準磁化を、第1方向と反対向きの第2方向に再配向することと、
を備える、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
第1サブセット内の磁気セルの基準磁化の再配向は、第1サブセット内の磁性セルを加熱するように、第1加熱電流パルスを少なくとも一つの第1支線内に通すことを備え、
第1サブセットの任意の磁気セルが高いしきい値温度にひとたびなると、当該装置によって生成される第1磁場を提供し、そして
第2サブセットの磁気セルを加熱するように少なくとも1つの第2支線に第2加熱パルスを通し、
第2サブセットのいずれかの磁気セルが高いしきい値温度にひとたびなると、当該装置によって生成される第2磁場を提供する、
請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1磁場を提供することは、第1方向に平面に沿って装置を移動させて、第1サブセット内の磁性セルの基準磁化を第1プログラム方向にプログラムすることを備え、
前記第2磁場を提供することは、第1方向に対向する第2方向に平面に沿って装置を移動させて、第1プログラムされた方向に対向する第2プログラム方向に第2サブセット内の磁性セルの基準磁化をプログラムすることを備える、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1磁場を提供することは、磁気機器をアニールすることと、第1切り替えられた方向に複数の磁性セルの第1磁化を切り替えるために外部磁場を提供することとを備え、 前記第2磁場を提供することは、第1方向に対向する第2方向に平面に沿って装置を移動させて、第1プログラム方向に対向する第2プログラム方向に第2サブセット内の磁性セルの第1磁化をプログラムすることを備える、
請求項
7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場の生成に関し、特に、実質的にゼロの電力消費及び自己発熱を有する高磁場の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場は、物品の製造又は試験でよく使用される。例えば、ディスクドライブ、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)、又は磁気論理ユニット(MLU)でデータを読み書きするために使用される磁気ヘッドは、通常、磁場に置かれた状態でテストされる。そのような装置をテストして、欠陥のある装置がディスクドライブ、センサ、又はメモリシステム内にインストールされていないことを確認することが重要である。さらに、コストを削減するため、及び/又はスループットを向上させるために、生産サイクルの早い段階で欠陥のある装置の有無をテストすることが望ましい。
【0003】
MLUセルは、磁気センサ又はコンパスで磁場を感知するために使用できる。MLUセルは、典型的には、基準磁化を有する基準層と自由センス磁化を有するセンス層との間にトンネル障壁層がある磁気トンネル接合を備える。基準磁化が外部磁場によって実質的に妨害されていない状態の間、センス磁化は外部磁場の存在下で配向可能である。外部磁場は、そのため、外部磁場によって方向付けられたセンス磁化の相対的な向きと、記憶磁化とに依存する磁気トンネル接合の抵抗を測定することによって、検出可能である。MLUに基づくセンサ装置は、通常アレイ状に配置された複数のMLUセルを備える。生産サイクルの早い段階で装置の性能と信頼性を確保するために使用されるテスターの1つは、MLUセルが数千個のMLUセルを含むウエハの状態で、磁気抵抗特性をテストする。通常、ウエハ内のMLUセルの1サブセットのみがテストされる。ウエハ形式のMLUセルをテストするには、特定のMLUセル又はテスト中のMLUセルの平面に磁場が生成される中で、1つ又は複数のMLUセルに接触するプローブが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエハをプローブしながらウエハレベルで、又はパッケージレベルで、高い平面磁場を印加可能である。これを実現するために、電磁石を使用して磁場を生成する。ただし、電磁石は、通常1から3kOeの大きさの磁場を生成できる。電磁石の別の問題は、自己発熱が重要であることである。コイルによって生成される熱の問題に遭遇することなく、高強度の磁場を長時間印加することはできない。電磁石は大きな電源を必要とし、冷却要件のために電力消費、費用、サイズの問題がある。電磁石は、そのため、ウエハ又はパッケージが高温にさらされるため、又はテストのデューティサイクルが制限されるため、テスト中の高磁場の生成における使用が限定又は制限される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、高磁場を生成するための装置を備えるシステムに関する。装置は、平面に配置された複数の永久磁石を備え、各磁石は、平面に沿って所定の間隔で隣りの磁石から空間的に分離され、各磁石は、磁場が平面に対して実質的に垂直かつ隣の1つの磁石とは反対方向に向けられる極性を持ち、各磁石は、非磁性材料によって隣りの磁石から平面内で空間的に分離されている。システムは、低いしきい値温度でピン止めされ、高いしきい値温度で自由に配向可能な第1磁化を有する第1磁性層と、複数の磁気セルのそれぞれから物理的に分離され、複数の磁気セルのいずれかを加熱するための加熱電流パルスを通すように構成された加熱線とを備える、複数の磁気セルを備える磁気機器をさらに備える。当該装置によって生成される磁場は、高いしきい値温度で加熱されている複数の磁気セルの任意の1つの第1磁化を切り替えるように構成されていて、装置は、磁気機器の上又は下に移動可能に構成されている。
【0006】
本開示はまた、磁気機器又はセンサ機器をプログラミングする、上記システムを使用する方法に関する。
【0007】
本明細書に開示される、当該システムに備わる装置は、10kOe以上の大きさの磁場の生成を可能にする。当該装置は、実質的に電力消費と自己発熱がゼロであり、費用対効果が高い。
【0008】
本発明は、例として与えられ以下の内容の図面によって示される、実施形態の説明の援用によりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態による、磁場を生成し、複数の磁石を備える装置の底面図を示す。
【
図2】
図2は、一実施形態による装置の断面図を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態による、非磁性枠部によって埋め込まれた、装置の磁石を示す図である。
【
図4】
図4は、磁石間の間隔の関数として、装置によって生成される磁場の変化を示す。
【
図5】
図5は、磁石間の間隔の関数として、装置によって生成される磁場の均一性の変化を報告する。
【
図6】
図6は、装置と、装置の近くに配置された物品の拡大図を示している。
【
図8】
図8は、一実施形態による、複数のMLUセルを備えるMLUベースの機器の上面図を示す。
【
図9】
図9は、一実施形態による、装置とMLUベースの機器とを備えるシステムを示す図である。
【
図10】
図10は、別の実施形態による、MLUベースの機器の上面図を示す。
【
図11】
図11は、一実施形態による、プローブカードの下のウエハに磁場を印加するために使用される装置を示す。
【
図12】
図12は、一実施形態による、プローブカードの下のウエハに磁場を印加するために使用される装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、磁場60を生成するための装置5の上面図を示し、
図2は、装置5の断面図を示す。この装置は、第2永久磁石52と並んで配置された第1永久磁石51を備える。第1磁石51は、第2磁石52によって生成される磁場60とは反対の方向に磁場60を生成するように、第2磁石52の磁極と反対の方向に向けられた磁極を有する。
【0011】
第1磁石51及び第2磁石52は、隣りの磁石51、52のそれぞれによって生成される磁場60が平面50に対して実質的に垂直かつ反対方向に配向されるように、平面50に並んで配置される。
図1と
図2の例では、第1磁石51は、第1磁石51の上面から出る磁場60を「上向き」に向けて示され、第2磁石52は、下第2磁石52の面58から出ている磁場60を「下向き」に向けて示されている。
【0012】
第1磁石51は、平面50に沿って、隣りの第2磁石52から所定の間隔Dだけ空間的に分離されている。
【0013】
一実施形態では、第1磁石51は、非磁性材料55によって第2磁石52から空間的に分離されている。言い換えると、所定の間隔Dは、非磁性材料55で満たされている。非磁性材料は、プラスチック、金属、木材、又は磁化率が低い他の適切な剛性材料を含有してよい。
【0014】
図2に示す変形例では、第1及び第2磁石51、52は、非磁性材料55によって埋め込んでもよい。そのような中で構成では、非磁性材料は、2つの磁石51、52を保持する枠部55を形成してもよい。
図2の変形例では、磁石51、52の上面57及び下面58のみが非磁性枠部によって覆われていない。
【0015】
図3は、非磁性の枠部55に埋め込まれた第1磁石51及び第2磁石52を備える装置5を示す。この例では、磁石51、52は実質的に立方体形状であり、1辺は約25mmの長さを有する。しかしながら、第1磁石51及び第2磁石52は、長方形、多角形、円筒形などの他の任意の寸法及び任意の他の適切な形状を有してよい。
【0016】
図4では、装置5によって生成される磁場60の振幅が、磁石51、52間の間隔Dに対してプロットされている。
図4は、間隔Dとともに磁場60が減少することを示している。
【0017】
図5に示されるグラフは、磁石51、52間の間隔Dの関数として、装置5によって生成される磁場60の均一性の変化を報告する。磁場60の均一性は、間隔Dの増加とともに増加し、間隔Dが約0.5インチ(12.7mm)を超えると減少する。約12.7mmの間隔の均一性に、最適値が存在する。
【0018】
一実施形態では、所定の間隔Dは0.25mmから50mmの間である。好ましくは、所定の間隔Dは1.2mmから25mmの間である。
【0019】
別の実施形態では、平面50に沿った磁石51、52の横方向寸法L(又はその幅)は、2.5mmから80mmの間である。好ましくは、磁石51、52の横方向寸法Lは、12mmから50mmの間である。
【0020】
さらに別の実施形態では、装置5は、板部56を備え、板部56は、平面50内にあって、鉄を含有し、装置5の表面の隣にある。板部50を磁石51、52の一方の面(
図2の例では上面57)に追加すると、板部56が追加された面に対向する面(
図2の例では下面58)での磁場60が大幅に増加する。板部56は、生成された磁場60の均一性及び最大値をさらに改善可能である。
【0021】
一実施形態では、板部56は、0.25mmから50mmの間の厚さを有する。好ましくは、板部56は、5mmから25mmの間の厚さを有する。
【0022】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されることなく、そして実施の他の例もまた特許請求の範囲内で可能であることが理解される。
【0023】
例えば、装置5は、平面50に配置された複数の永久磁石51、52を備えてもよく、各磁石は、所定の間隔Dだけ隣りの磁石から平面50において空間的に分離されている。そのような構成において、各磁石51、52は、隣の磁石の磁場60が実質的に平面50に垂直で反対方向に配向されるように、隣の1つの磁石と反対の極性を有する。
【0024】
図6は、装置5の拡大図を示していて、この図に、2つの隣り合う磁石51、52の一部と非磁性材料55の間隔Dと、装置5の近傍に位置する物品61が見られる。
【0025】
この例は、装置5の表面(下面58)及び約0.5cmの物品距離Daに位置する物品の表面における磁場60の例示的な大きさを示している。この例では、間隔55の中央の磁場60の大きさは0.9T(テスラ)である。
間隔55の中央に垂直な位置での物品61の表面での磁場60の大きさは約0.38Tである。磁場60の大きさは、第1磁石51と間隔55との境界、及び第2磁石52と間隔55との境界に垂直な位置にある物品61の表面で約0.37Tである。磁場60は、物品61の表面で均一である。
【0026】
磁場60の大きさは、物品と装置5との間の距離Daが増加するにつれて減少するので、距離Da及び磁場60が適用されるアプリケーションと互換性がある磁場60の大きさを得るために、磁石51、52の幾何学的形状(厚さ、横寸法)を適合させてもよい。
【0027】
固定磁場60の大きさは、磁石51、52に含まれる材料を適切に選択することにより最適化してもよい。
【0028】
本明細書に開示される装置5は、物品の製造、試験、又は磁気装置又はセンサのプログラミングに使用可能である。例えば、ディスクドライブのデータの読み取りと書き込みに使用される磁気ヘッドと光磁気ヘッドは、一般的に、磁場に置かれた状態でテストされる。
【0029】
図7は、第1電流線3の間に含まれている磁気トンネル接合2を備えるMLUセル1の例を表す。磁気トンネル接合2は、第1磁化211を有する第1強磁性層21、第2磁化231を有する第2強磁性層23、及び第1強磁性層21と第2強磁性層23との間のトンネル障壁層22を備える。第1磁性層21は基準層としてもよく、第2強磁性層23はセンス層としてもよい。第1及び第2強磁性層21、23のそれぞれは、磁性材料、特に強磁性タイプの磁性材料を含有するか、又はそれらから形成される。強磁性層21と第2強磁性層23との相対位置は逆にしてもよく、第1強磁性層21は第2強磁性層23の上に配置される。トンネル障壁層22は、酸化アルミニウム(例えば、Al
2O
3)及び酸化マグネシウム(例えば、MgO)といった酸化物のような絶縁材料を含有してもよいし、又はそのような絶縁材料で形成してもよい。
【0030】
第1及び第2磁化211、231の一方は磁気的に固定され、他方は可変の磁化方向を有してもよい。好ましくは、センス層21は、外部磁場の小さな変動の測定を容易にするために、外部磁場によって方向付けられたときに線形及び非ヒステリシス挙動を有してもよい。これは、0.5エルステッド(Oe)程度の平均値を持つ外部磁場(地球の磁場など)を感知する場合に関係する。外部磁場は、第1及び第2磁化211、231の相対的な向きに依存する磁気トンネル接合2の抵抗Rを測定することによって感知可能である。
【0031】
磁気トンネル接合2は、反強磁性層24を備えてもよく、反強磁性層24は、反強磁性層24の内部又は近傍の温度が低閾値温度TLにあるとき、すなわちニール温度又は反強磁性層24の別のしきい値温度のようなブロッキング温度以下のとき、交換バイアスを通じて特定の方向に沿って第1磁化211をピン止めする。反強磁性層24は、温度が高いしきい値TH、すなわちブロッキング温度より高温で、それにより第1磁化211が別の方向に切り替えられる温度にあるとき、第1磁化211のピンを外す、又は解放する。反強磁性層24は、反強磁性タイプの磁性材料を含有してもよく、又はそのような磁性材料で形成してもよい。
【0032】
第2(センス)磁化231は、固定解除され、低しきい値温度TL及び高閾値温度THで自由に調整可能であり得る。
【0033】
熱支援スイッチング(TAS)ベースのMLUセルの場合、第1磁化は低閾値温度TLに固定され、MLUセル1が高しきい値温度THにある場合にのみ切り替え可能である。
【0034】
図8は、行及び列のアレイに配置された複数のMLUセル1を備えるMLUベースの機器100の上面図を示し、各MLUセル1は、第1電流線3と第2電流線4の交差点にある。
【0035】
図9に示される実施形態では、システムは装置5及びMLUベースの機器100を備える。装置5は、MLUベースの機器100の近くに持ち込まれ、高しきい値温度THで加熱されるMRAMセルの第1及び第2磁化211、231のスイッチを入れるなど、MLUベースの機器100に磁場60を印加するために使用してもよい。
【0036】
一実施形態によれば、MLUベースの機器100をプログラミングする方法は、以下のステップを備える。
装置5を提供する。
加熱ライン4に加熱電流パルス41を流すことにより、複数のMLUセル1のいずれか1つを高しきい値温度THに加熱する。
複数のMLUセル1のいずれか1つが高しきい値温度THになったら、複数のMLUセル1のいずれか1つの第1(基準)磁化211を切り替えるように装置5によって生成される磁場60を印加する。
【0037】
図7に示すように、加熱線4及び磁気トンネル接合2は、誘電体又は酸化物層71によって表される非導電層によって互いに物理的に分離されている。したがって、加熱ライン4は、磁気トンネル接合部2に磁気的及び熱的に結合可能であるが、磁気トンネル接合部2と電気的には接触していない。加熱電流パルス41は、磁気トンネル接合2が高いしきい値温度T
Hで加熱可能な強度を有してもよい。加熱電流パルス41を通すことにより加熱線4を介してジュール効果により発生した熱は、誘電体/酸化物層71を介した熱伝導により磁気トンネル接合2に伝達される。
【0038】
図10は、MLUベースの機器100の上面図を示し、MLUベース機器100は、行及び列のアレイに配置された複数のMLUセル1を備え、各行は、ビット線3及び導電性ストラップを介して直列に接続されたMLUセル1を有する。加熱ライン4は、前記複数のMLUセル1のいずれか1つを加熱するための加熱電流パルス41を通すように形成されている。加熱ライン4は、1つ又は複数の第1支線4’を備え、各第1支線4’は、複数のMLUセル1の1つ又は複数の行を備える第1サブセット111を加熱するように形成されている。加熱ライン4は、1つ又は複数の第2支線4”をさらに備え、各第2支線4”は、複数のMLUセル1の1つ又は複数の列を含む第2サブセット112を加熱するように形成されている。第1支線4’は、第2支線4”に電気的に直列接続してもよい。
【0039】
「U」字形又は蛇行的形状をなす第1支線4’及び第2支線4”の構成により、加熱電流パルス41は、反対方向で第1支線4’及び第2支線4”を通過するようにしてもよい。しかしながら、加熱電流パルス41は、同じ方向で第1支線4’及び第2支線4”を通過するものとしてもよい。
【0040】
一実施形態によれば、MLUベースの機器100をプログラミングする方法は、以下のステップを備える。
第1サブセット111のMLUセル1の基準磁化211を第1方向に再配向する。
第2サブセット112内のMLUセル1の基準磁化211を、第1方向とは反対の第2方向に向け直す。
【0041】
一実施形態では、第1サブセット111のMLUセル1の基準磁化211を再配向することは、第1サブセット111のMLUセル1を加熱するように第1支線4’に第1加熱電流パルス41’を通過させることを含む。第1サブセット111の任意のMLUセル1が高しきい値温度THになると、装置5によって生成される第1磁場60は、基準磁化を所望の方向に再配向する。そして、装置5によって生成された磁場を別の所望の方向に向けた後、第2サブセット112内のMLUセル1を加熱するように第2支線4”内に第2加熱電流パルス41を流す。そして第2サブセット112内の任意のMLUセル1が高しきい値温度THにあると、装置5によって生成される第2磁場60は、基準磁化を所望の方向に再配向する。
【0042】
一実施形態では、装置5を平面に沿って第1方向に動かして第1サブセット111のMLUセル1の基準磁化211を第1プログラム方向にプログラムすることにより、第1磁場60が印加される。第2磁場60を、第1方向とは反対の第2方向に平面50に沿って装置5を動かし、第2サブセット112のMLUセル1の基準磁化を第1プログラムとは反対の第2プログラム方向にプログラムすることにより、印加する。
【0043】
別の実施形態では、複数のMLUセル1の基準磁化211を第1切り替え方向に切り替えるように外部磁場を印加しながら、MLUベースの機器100を最初にアニールする。次に、装置5を平面50に沿って第2方向に動かし、第2サブセット112のMLUセル1の基準磁化211を第2プログラムされた方向にプログラムすることにより、第2磁場60が印加される。
【0044】
図11及び
図12に示されるように、装置5は、プローブカード120の下で、1つ又はいくつかのMLUベースの機器100に、あるいは1つ又はいくつかのMLUベースの機器100を備えるウエハ110に磁場60を印加するために使用できる。装置5はさらに、1つ又はいくつかのMLUベースの装置を備えるパッケージの上又は下に置いてもよい。装置5によって生成される固定磁場60は、磁石51、52の極性及び装置5が移動される方向に応じて、任意の方向に印加するものとしてよい。
【0045】
装置5をプローブカード120に固定的に取り付けるために、固定手段121を設けてもよい。
図11及び
図12に示すように、固定手段は、プローブカード120に対して2つの直交する向きで装置5を配置するように構成された当止部121を備える。
【符号の説明】
【0046】
1 MLUセル
100 MLUベースの機器
110 ウエハ
111 第1サブセット
112 第2サブセット
120 プローブカード
121 固定手段
2 磁気トンネル接合
21 第1強磁性層、センス層
211 第1磁化、センス磁化
22 トンネル障壁層
23 第2強磁性層、基準層
231 第2磁化、基準磁化
24 反強磁性層
3 第1電流線
32 センス電流
4 第2電流線
4’ 第1支線
4” 第2支線
41 加熱電流パルス
5 装置
50 平面
51 第1磁石
52 第2磁石
55 非磁性体、枠部
56 板部
57 上面
58 下面
60 外部磁場
61 物体
71 誘電体/酸化物層
D 間隔
Da 物体の距離
L 横寸法
R 接合抵抗
TH 高しきい値温度
TL 低しきい値温度