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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】遠心圧縮機及びターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/16 20060101AFI20221012BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F02B37/16 Z
F02B39/00 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020529957
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2018026549
(87)【国際公開番号】W WO2020012648
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-11-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 良洋
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊
(72)【発明者】
【氏名】岩切 健一郎
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】水野 治彦
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-62822(JP,A)
【文献】特開2017-155664(JP,A)
【文献】特開2005-351193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/73287(US,A1)
【文献】実開昭61-57137(JP,U)
【文献】国際公開第2018/69975(WO,A1)
【文献】特開2005-240569(JP,A)
【文献】特開2012-241558(JP,A)
【文献】特開2012-241560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B37/00-37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、
前記インペラに空気を案内するコンプレッサ入口管と、
前記インペラの外周側に設けられたスクロール流路と、
前記インペラを迂回して前記コンプレッサ入口管と前記スクロール流路とを接続するバイパス流路であって前記スクロール流路を流れる圧縮空気の一部を前記コンプレッサ入口管に還流させるためのバイパス流路と、
を備える遠心圧縮機であって、
前記コンプレッサ入口管の軸方向において前記コンプレッサ入口管に形成された前記バイパス流路の接続口の周縁のうち最も下流側に位置する下流端は、前記インペラの翼の前縁よりも上流側に位置しており、
前記バイパス流路の断面の重心を前記バイパス流路の流れ方向に繋いだ仮想線をBとし、
前記インペラの回転軸線に直交する断面において、前記コンプレッサ入口管の内壁面を構成する仮想円をC、
前記仮想円Cと前記仮想線Bとの交点をP1、前記交点P1における前記仮想線Bの接線をL2とし、
前記遠心圧縮機の子午面において、前記コンプレッサ入口管の軸心O1と前記接線L2との交点をP3、前記コンプレッサ入口管の軸心O1のうち前記コンプレッサ入口管の流れ方向における前記交点P3よりも上流側の線分をL5、前記接線L2のうち前記交点P3から前記バイパス流路内に延びる半直線をL6とすると、
前記交点P3において前記線分L5と前記半直線L6とがなす角度θ3は、90°<θ3を満た
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記コンプレッサ入口管の内壁面と前記バイパス流路の内壁面との接続箇所のうち前記インペラの回転方向における下流側の接続箇所をA1、前記接続箇所A1における前記仮想円Cの接線をL1とすると、前記バイパス流路の内壁面は、前記接続箇所A1から前記接線L1に沿って形成され、
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記仮想円Cと前記仮想線Bとの交点をP1、前記仮想円Cと前記バイパス流路の内壁面との接続箇所のうち前記インペラの回転方向における上流側の接続箇所をA2とすると、
前記仮想円に沿った前記接続箇所A1から交点P1までの距離は、前記仮想円に沿った前記接続箇所A2から交点P1までの距離よりも大きい、遠心圧縮機。
【請求項2】
記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記コンプレッサ入口管の軸心を通るとともに前記接線L2に平行な直線をL3、前記仮想円Cと前記直線L3との交点をP2とすると、
前記交点P1は、前記交点P2に対して前記インペラの回転方向における下流側に位置する、請求項に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記接続箇所A1における前記接線L1と前記バイパス流路の内壁面とのなす角度θ1は0°≦θ1≦45°を満たす、請求項1又は2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記接続箇所A1における前記接線L1と前記バイパス流路の内壁面とのなす角度をθ1、前記仮想円Cと前記バイパス流路の内壁面との接続箇所のうち前記インペラの回転方向における上流側の接続箇所をA2、前記接続箇所A2における前記仮想円の接線をL4、前記接続箇所A2における前記接線L4と前記バイパス流路の内壁面とのなす角度をθ2とすると、θ1<θ2を満たす、請求項乃至の何れか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記仮想円Cと前記バイパス流路の内壁面との接続箇所のうち前記インペラの回転方向における上流側の接続箇所をA2、前記接続箇所A2における前記仮想円の接線をL4とすると、前記接線L4と前記バイパス流路の内壁面とのなす角度θ2が45°≦θ2≦90°を満たす、請求項乃至の何れか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記角度θ3は、θ3≦135°を満たす、請求項1乃至の何れか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項7】
インペラと、
前記インペラに空気を案内するコンプレッサ入口管と、
前記インペラの外周側に設けられたスクロール流路と、
前記インペラを迂回して前記コンプレッサ入口管と前記スクロール流路とを接続するバイパス流路であって前記スクロール流路を流れる圧縮空気の一部を前記コンプレッサ入口管に還流させるためのバイパス流路と、
を備える遠心圧縮機であって、
前記コンプレッサ入口管の軸方向において前記コンプレッサ入口管に形成された前記バイパス流路の接続口の周縁のうち最も下流側に位置する下流端は、前記インペラの翼の前縁よりも上流側に位置しており、
前記バイパス流路の断面の重心を前記バイパス流路の流れ方向に繋いだ仮想線をBとし、
前記インペラの回転軸線に直交する断面において、前記コンプレッサ入口管の内壁面を構成する仮想円をC、
前記仮想円Cと前記仮想線Bとの交点をP1、前記交点P1における前記仮想線Bの接線をL2とし、
前記遠心圧縮機の子午面において、前記コンプレッサ入口管の軸心O1と前記接線L2との交点をP3、前記コンプレッサ入口管の軸心O1のうち前記コンプレッサ入口管の流れ方向における前記交点P3よりも上流側の線分をL5、前記接線L2のうち前記交点P3から前記バイパス流路内に延びる半直線をL6とすると、
前記交点P3において前記線分L5と前記半直線L6とがなす角度θ3は、90°<θ3を満たし、
前記接続口と前記インペラの翼の前記前縁との間に位置し、前記コンプレッサ入口管の前記内壁面から前記コンプレッサ入口管の径方向における内側に向かって突出するように、前記軸心O1に平行な方向に沿って延設された少なくとも一つの延設部を更に備える、遠心圧縮機。
【請求項8】
前記少なくとも一つの延設部は、前記コンプレッサ入口管の周方向に間隔を空けて設けられた複数の前記延設部を含む、請求項に記載の遠心圧縮機。
【請求項9】
前記延設部の各々は板状に構成された、請求項又はに記載の遠心圧縮機。
【請求項10】
インペラと、
前記インペラに空気を案内するコンプレッサ入口管と、
前記インペラの外周側に設けられたスクロール流路と、
前記インペラを迂回して前記コンプレッサ入口管と前記スクロール流路とを接続するバイパス流路であって前記スクロール流路を流れる圧縮空気の一部を前記コンプレッサ入口管に還流させるためのバイパス流路と、
を備える遠心圧縮機であって、
前記コンプレッサ入口管の軸方向において前記コンプレッサ入口管に形成された前記バイパス流路の接続口の周縁のうち最も下流側に位置する下流端は、前記インペラの翼の前縁よりも上流側に位置しており、
前記バイパス流路の断面の重心を前記バイパス流路の流れ方向に繋いだ仮想線をBとし、
前記インペラの回転軸線に直交する断面において、前記コンプレッサ入口管の内壁面を構成する仮想円をC、
前記仮想円Cと前記仮想線Bとの交点をP1、前記交点P1における前記仮想線Bの接線をL2とし、
前記遠心圧縮機の子午面において、前記コンプレッサ入口管の軸心O1と前記接線L2との交点をP3、前記コンプレッサ入口管の軸心O1のうち前記コンプレッサ入口管の流れ方向における前記交点P3よりも上流側の線分をL5、前記接線L2のうち前記交点P3から前記バイパス流路内に延びる半直線をL6とすると、
前記交点P3において前記線分L5と前記半直線L6とがなす角度θ3は、90°<θ3を満たし、
前記コンプレッサ入口管の内壁面のうち前記コンプレッサ入口管の流れ方向において前記バイパス流路の前記接続口よりも上流側の内壁面から前記流れ方向における下流側に向かって突出する環状の突出部を含む、遠心圧縮機。
【請求項11】
前記突出部は、前記コンプレッサ入口管の径方向視において前記接続口の少なくとも一部にオーバーラップするように設けられた、請求項10に記載の遠心圧縮機。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の遠心圧縮機と、前記遠心圧縮機のインペラと回転軸を共有するタービンと、を備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機及びターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば乗用車向けに使用されるターボチャージャでは、エンジンの減速時における急激な流量減少に伴うサージングを回避するためのデバイスとして、バイパスバルブが採用される場合がある。この場合、コンプレッサ入口管とスクロール流路とを接続するバイパス流路にバイパスバルブが設けられ、サージライン近傍の高圧力比の作動点においてバイパスバルブを開放することで、ブースト圧力を低下させ、所定のサージマージンを確保することができる。
【0003】
バイパスバルブを設けることによって、サージライン近傍でのアクティブ制御が可能となる反面、スクロール流路からバイパス流路への分岐部が形成されることによって、分岐部にて付加的な流動損失が発生する。
【0004】
特許文献1では、バイパスバルブの弁体の表面を圧縮機のスクロール流路の内壁に沿った形状にすることを提案している。このような構造にすれば、スクロール流路からバイパス流路への分岐部において、バイパス流路への流れの流入による圧力損失の増大を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-241558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に、コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面における、サージライン近傍での軸方向速度分布及び流れ方向を示す。図10において、軸方向速度が正の値を有する場合は流れがインペラに向かって流れていることを意味し、軸方向速度が負の値を有する場合は流れがインペラから逆流していることを意味する。本発明者の検討の結果、図10に示すように、インペラからの逆流がインペラの回転方向の旋回成分を伴ってコンプレッサ入口管とバイパス流路との接続箇所近傍でバイパス流路に衝突し、この衝突に起因する局所的な減速により速度分布に歪みが生じて非軸対称な流れが形成されていることが明らかとなった。
【0007】
また、この非軸対称な流れにより、図11に示すようにインペラの各羽根の流動損失のばらつきが生じ、一部の羽根は設計点から大きく離れた作動点にて動作することとなる。これにより、インペラの回転領域における圧力損失が増大して圧縮機効率が低下することが判明した。
【0008】
特許文献1に記載の遠心圧縮機では、スクロール流路からバイパス流路への分岐部における圧力損失を抑制することで圧縮機効率の低下を抑制することができるものの、圧縮機効率の低下を抑制するためにバイパス流路とコンプレッサ入口管との接続部分を如何に構成するべきかという観点では、特許文献1には何ら知見が開示されていない。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、バイパス流路とコンプレッサ入口管との接続部分の構成に起因する圧縮機効率の低下を抑制可能な遠心圧縮機及びターボチャージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機は、
インペラと、
前記インペラに空気を案内するコンプレッサ入口管と、
前記インペラの外周側に設けられたスクロール流路と、
前記インペラを迂回して前記コンプレッサ入口管と前記スクロール流路とを接続するバイパス流路と、
を備え、
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記コンプレッサ入口管の内壁面と前記バイパス流路の内壁面との接続箇所のうち前記インペラの回転方向における下流側の接続箇所をA1、前記コンプレッサ入口管の内壁面を構成する仮想円をC、前記接続箇所A1における前記仮想円Cの接線をL1とすると、前記バイパス流路の内壁面は、前記接続箇所A1から前記接線L1に沿って形成される。
【0011】
上記(1)に記載の遠心圧縮機によれば、コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、バイパス流路の内壁面をインペラの回転方向における下流側の接続箇所A1から接線L1に沿って形成したことにより、サージライン近傍の運転領域においてインペラから逆流する旋回流れ(スワール)に沿うようにバイパス流路の内壁面が形成される。このため、接続箇所A1においてバイパス流路の内壁面が接線L1に沿っていない場合と比較して、インペラから逆流する旋回流れがバイパス流路の内壁面に衝突することによる当該旋回流れの局所的な減速を抑制することができる。これにより、コンプレッサ入口管における周方向の流動歪みが低減されて、速度分布における周方向の均一性を高めることができる。このため、インペラの各羽根の流動損失のばらつきが低減されるため、圧縮機効率の低下を抑制することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の遠心圧縮機において、
前記バイパス流路の断面の重心を前記バイパス流路の流れ方向に繋いだ仮想線をBとし、
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記仮想円Cと前記仮想線Bとの交点をP1、前記交点P1における前記仮想線Bの接線をL2、前記コンプレッサ入口管の軸心を通るとともに前記接線L2に平行な直線をL3、前記仮想円Cと前記直線L3との交点をP2とすると、
前記交点P1は、前記交点P2に対して前記インペラの回転方向における下流側に位置する。
【0013】
上記(2)に記載の遠心圧縮機によれば、バイパス流路の内壁面が接続箇所A1から接線L1に沿うようにバイパス流路を構成することが容易となるため、バイパス流路の構成の複雑化を抑制しつつ圧縮機効率の低下を抑制することができる。
また、コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、コンプレッサ入口管の内壁面とバイパス流路の内壁面との接続箇所のうちインペラの回転方向における上流側の接続箇所をA2、接続箇所A2における仮想円Cの接線をL4、接続箇所A2における接線L4とバイパス流路16の内壁面24とのなす角度をθ2とすると、上記のように交点P1を交点P2に対してインペラの回転方向における下流側に位置させることにより、上記角度θ2を大きくすることが容易となる。このため、インペラから逆流する旋回流れのバイパス流路への侵入を抑制して、圧縮機効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の遠心圧縮機において、
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記仮想円Cと前記仮想線Bとの交点をP1、前記仮想円Cと前記バイパス流路の内壁面との接続箇所のうち前記インペラの回転方向における上流側の接続箇所をA2とすると、
前記仮想円に沿った前記接続箇所A1から交点P1までの距離d1は、前記仮想円に沿った前記接続箇所A2から交点P1までの距離d2よりも大きい。
【0015】
上記(3)に記載の遠心圧縮機によれば、バイパス流路の内壁面が接続箇所A1から接線L1に沿うようにバイパス流路を構成することが容易となるため、バイパス流路の構成の複雑化を抑制しつつ圧縮機効率の低下を抑制することができる。
また、コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、コンプレッサ入口管の内壁面とバイパス流路の内壁面との接続箇所のうちインペラの回転方向における上流側の接続箇所をA2、接続箇所A2における仮想円Cの接線をL4、接続箇所A2における接線L4とバイパス流路16の内壁面24とのなす角度をθ2とすると、上記のように距離d1を距離d2よりも大きくすることにより、上記角度θ2を大きくすることが容易となる。このため、インペラから逆流する旋回流れのバイパス流路への侵入を抑制して、圧縮機効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載の遠心圧縮機において、
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記接続箇所A1における前記接線L1と前記バイパス流路の内壁面とのなす角度θ1は0°≦θ1≦45°を満たす。
【0017】
上記(4)に記載の遠心圧縮機によれば、接続箇所A1における接線L1とバイパス流路の内壁面とのなす角度θ1が0°≦θ1≦45°を満たすようにバイパス流路を構成することにより、サージライン近傍の運転領域においてインペラから逆流する旋回流れ(スワール)に沿うようにバイパス流路の内壁面が形成される。
このため、45°<θ1≦90°を満たす場合と比較して、インペラから逆流する旋回流れがバイパス流路の内壁面に衝突することによる当該旋回流れの局所的な減速を抑制することができる。これにより、コンプレッサ入口管における周方向の流動歪みが低減されて、速度分布における周方向の均一性を高めることができる。このため、インペラの各羽根の流動損失のばらつきが低減されるため、圧縮機効率の低下を抑制することができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載の遠心圧縮機において、
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記接続箇所A1における前記接線L1と前記バイパス流路の内壁面とのなす角度をθ1、前記仮想円Cと前記バイパス流路の内壁面との接続箇所のうち前記インペラの回転方向における上流側の接続箇所をA2、前記接続箇所A2における前記仮想円の接線をL4、前記接続箇所A2における前記接線L4と前記バイパス流路の内壁面とのなす角度をθ2とすると、θ1<θ2を満たす。
【0019】
上記(5)に記載の遠心圧縮機によれば、接続箇所A1における接線L1と内壁面とのなす角度θ1を接続箇所A2における接線L2と内壁面とのなす角度θ2よりも小さくすることで、上記のようにサージライン近傍の運転領域においてインペラから逆流する旋回流れの局所的な減速を抑制するとともに、該旋回流れのバイパス流路への侵入を抑制することができる。したがって、遠心圧縮機の効率低下を効果的に抑制することができる。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載の遠心圧縮機において、
前記コンプレッサ入口管の軸心に直交する断面において、前記仮想円Cと前記バイパス流路の内壁面との接続箇所のうち前記インペラの回転方向における上流側の接続箇所をA2、前記接続箇所A2における前記仮想円の接線をL4とすると、前記接線L4と前記バイパス流路の内壁面とのなす角度θ2が45°≦θ2≦90°を満たす。
【0021】
上記(6)に記載の遠心圧縮機によれば、接続箇所A2における接線L4とバイパス流路の内壁面とのなす角度θ2を45°以上の直角に近い角度に設定することにより、サージライン近傍の運転領域においてインペラから逆流する旋回流れのバイパス流路への侵入を効果的に抑制することができる。したがって、遠心圧縮機の効率低下を効果的に抑制することができる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかに記載の遠心圧縮機において、
前記バイパス流路の断面の重心を前記バイパス流路の流れ方向に繋いだ仮想線をBとし、
前記インペラの回転軸線に直交する断面において、前記仮想円Cと前記仮想線Bとの交点をP1、前記交点P1における前記仮想線Bの接線をL2とし、
前記遠心圧縮機の子午面において、前記コンプレッサ入口管の軸心O1と前記接線L2との交点をP3、前記コンプレッサ入口管の軸心O1のうち前記コンプレッサの入口管の流れ方向における前記交点P3よりも上流側の線分をL5、前記接線L2のうち前記交点P3から前記バイパス流路内に延びる半直線をL6とすると、
前記交点P3において前記線分L5と前記半直線L6とがなす角度θ3は90°以上である。
【0023】
上記(7)に記載の遠心圧縮機によれば、上記角度θ3が90°未満である従来形態と比較して、サージライン近傍の運転領域においてインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入することが抑制される。これにより、コンプレッサ入口管とバイパス流路との接続部分の近傍領域における圧力損失が低減される。
【0024】
また、従来は、コンプレッサ入口管におけるインペラへ向かう順方向の流れがバイパス流路に干渉することを抑制するために、上記角度θ3は90°未満に設定されていた。これに対し、本願発明者の鋭意検討の結果、バイパス流路に係る上記角度θ3は、インペラへ向かう順方向の流れがバイパス流路に干渉することを抑制するために90°未満に設定するよりも、サージライン近傍でインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入することを抑制するために上記(7)に記載のように90°以上に設定した方が圧縮機効率の点で有利であるという新たな知見を得た。
【0025】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機は、
インペラと、
前記インペラに空気を案内するコンプレッサ入口管と、
前記インペラの外周側に設けられたスクロール流路と、
前記インペラを迂回して前記コンプレッサ入口管と前記スクロール流路とを接続するバイパス流路と、
前記バイパス流路の断面の重心を前記バイパス流路の流れ方向に繋いだ仮想線をBとし、
前記インペラの回転軸線に直交する断面において、前記コンプレッサ入口管の内壁面を構成する仮想円をC、前記仮想円Cと前記仮想線Bとの交点をP1、前記交点P1における前記仮想線Bの接線をL2とし、
前記遠心圧縮機の子午面において、前記コンプレッサ入口管の軸心O1と前記接線L2との交点をP3、前記コンプレッサ入口管の軸心O1のうち前記コンプレッサの入口管の流れ方向における前記交点P3よりも上流側の線分をL5、前記接線L2のうち前記交点P3から前記バイパス流路内に延びる半直線をL6とすると、
前記交点P3において前記線分L5と前記半直線L6とがなす角度θ3は、90°<θ3を満たす。
【0026】
上記(8)に記載の遠心圧縮機によれば、上記角度θ3が90°未満である従来形態と比較して、サージライン近傍の運転領域においてインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入しにくい角度θ3に設定されており、またコンプレッサ入口管の内壁面におけるバイパス流路の接続口とインペラとの距離を確保することが容易となる。これにより、サージライン近傍の運転領域においてインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入することが抑制され、コンプレッサ入口管とバイパス流路との接続部分の近傍領域における圧力損失が低減される。
【0027】
また、従来は、コンプレッサ入口管におけるインペラへ向かう順方向の流れがバイパス流路に干渉することを抑制するために、上記角度θ3は90°未満に設定されていた。これに対し、本願発明者の鋭意検討の結果、バイパス流路に係る上記角度θ3は、インペラへ向かう順方向の流れがバイパス流路に干渉することを抑制するために90°未満に設定するよりも、サージライン近傍でインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入することを抑制するために上記(8)に記載のように90°よりも大きい角度に設定した方が圧縮機効率の点で有利であるという新たな知見を得た。
【0028】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の遠心圧縮機において、
前記角度θ3は、θ3≦135°を満たす。
【0029】
上記(9)に記載の遠心圧縮機によれば、コンプレッサ入口管におけるインペラへ向かう順方向の流れがバイパス流路に干渉する影響を過度に大きくすることなく、サージライン近傍でインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入することを抑制することができる。これにより、高い圧縮機効率を実現することができる。
【0030】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)又は(9)に記載の遠心圧縮機において、
前記コンプレッサ入口管の軸方向において前記コンプレッサ入口管に形成された前記バイパス流路の接続口と前記インペラの翼の前縁との間に位置し、前記コンプレッサ入口管の前記内壁面から前記コンプレッサ入口管の径方向における内側に向かって突出するように、前記軸心O1に平行な方向に沿って延設された少なくとも一つの延設部を更に備える。
【0031】
上記(10)に記載の遠心圧縮機によれば、サージライン近傍でインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入することを延設部によって抑制することができる。また、延設部が軸心O1に平行な方向に沿って延設されているため、コンプレッサ入口管におけるインペラへ向かう順方向の流れは、延設部に沿ってスムーズに流れることができる。したがって、コンプレッサ入口管とバイパス流路との接続部分の近傍領域における圧力損失を効果的に低減することができる。
【0032】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)に記載の遠心圧縮機において、
前記少なくとも一つの延設部は、前記コンプレッサ入口管の周方向に間隔を空けて設けられた複数の前記延設部を含む。
【0033】
上記(11)に記載の遠心圧縮機によれば、サージライン近傍でインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入することを複数の延設部によって効果的に抑制することができる。
【0034】
(12)幾つかの実施形態では、上記(10)又は(11)に記載の遠心圧縮機において、
前記延設部の各々は、板状に構成される。
【0035】
上記(12)に記載の遠心圧縮機によれば、サージライン近傍でインペラから逆流する旋回流れがバイパス流路に侵入することを板状の延設部によって効果的に抑制することができる。
【0036】
(13)幾つかの実施形態では、上記(8)乃至(12)の何れか1項に記載の遠心圧縮機において、
前記コンプレッサ入口管の内壁面のうち前記コンプレッサ入口管の流れ方向において前記バイパス流路の接続口よりも上流側の内壁面から前記流れ方向における下流側に向かって突出する環状の突出部を含む。
【0037】
上記(13)に記載の遠心圧縮機によれば、バイパス流路から接続口を介してコンプレッサ入口管に流出した流れ(再循環流)が、環状の突出部によって転向されて、コンプレッサ入口管の内壁面に沿って流れるため、サージライン近傍でのインペラからの逆流を抑制することができる。
【0038】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)に記載の遠心圧縮機において、
前記突出部は、前記コンプレッサ入口管の径方向視において前記接続口の少なくとも一部にオーバーラップするように設けられる。
【0039】
上記(14)に記載の遠心圧縮機によれば、バイパス流路から接続口を介してコンプレッサ入口管に流出した流れ(再循環流)が、環状の突出部によって効果的に転向されて、コンプレッサ入口管の内壁面に沿って流れるため、サージライン近傍でのインペラからの逆流を効果的に抑制することができる。
【0040】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、
上記(1)乃至(14)の何れかに記載の遠心圧縮機と、前記遠心圧縮機のインペラと回転軸を共有するタービンと、を備える。
【0041】
上記(15)に記載のターボチャージャによれば、上記(1)乃至(14)の何れかに記載の遠心圧縮機を備えるため、コンプレッサ入口管における周方向の流動歪みが低減されて、速度分布における周方向の均一性を高めることができる。このため、インペラの各羽根の流動損失のばらつきが低減されるため、圧縮機効率の低下を抑制することができる。したがって、ターボチャージャ効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、バイパス流路とコンプレッサ入口管との接続部分の構成に起因する圧縮機効率の低下を抑制可能な遠心圧縮機及びターボチャージャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】一実施形態に係るターボチャージャ2の概略構成を示す部分断面図である。
図2図1に示した遠心圧縮機4のX-X断面(コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面)の一例を概略的に示す図である。
図3図1に示した遠心圧縮機4のX-X断面(コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面)の一例を概略的に示す図である。
図4図2及び図3に示した遠心圧縮機4のX-X断面における、サージライン近傍の運転点での軸方向速度分布及び流れ方向を示す図である。
図5図1に示した遠心圧縮機4の部分拡大図である。
図6】一実施形態に係る遠心圧縮機4におけるサージライン近傍でのコンプレッサ入口管40のエントロピーとインペラ6から逆流する旋回流れfを示す図である。
図7】従来形態に係る遠心圧縮機におけるサージライン近傍でのコンプレッサ入口管40のエントロピーとインペラ6から逆流する旋回流れfを示す図である。
図8】バイパス流路16の他の構成例を示す、遠心圧縮機4の部分的な子午面図である。
図9図1に示した遠心圧縮機4のX-X断面(コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面)の一例を概略的に示す図である。
図10】比較形態に係る遠心圧縮機の軸心O1に直交する断面における、サージライン近傍の運転点での軸方向速度分布及び流れ方向を示す図である。
図11】インペラ6の各羽根の負か分布にばらつきが生じていることを示す図である。
図12】コンプレッサ入口管40の他の構成例を示す、遠心圧縮機4の部分的な子午面図である。
図13図12におけるX矢視図である。
図14】コンプレッサ入口管40の他の構成例を示す、遠心圧縮機4の部分的な子午面図である。
図15図14におけるX矢視図である。
図16】コンプレッサ入口管40の他の構成例を示す、遠心圧縮機4の部分的な子午面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0045】
図1は、一実施形態に係るターボチャージャ2の概略構成を示す部分断面図である。
図1に示すように、ターボチャージャ2は、遠心圧縮機4と、遠心圧縮機4のインペラ6と回転軸8を共有するタービンロータ10を含むタービン12と、を備える。
【0046】
遠心圧縮機4は、インペラ6と、インペラ6に空気を案内するコンプレッサ入口管40と、インペラ6の外周側に設けられたスクロール流路14と、インペラ6を迂回してコンプレッサ入口管40とスクロール流路14の出口管38とを接続するバイパス流路16と、バイパス流路16に設けられた弁ポート22を開閉可能なバイパスバルブ18と、を備える。バイパスバルブ18は、アクチュエータ19によって開閉動作を制御され、遠心圧縮機4の吐出圧が過度に上昇した場合に開となり、スクロール流路14内を流れる圧縮空気の一部をコンプレッサ入口管40に還流させる。
【0047】
図2は、図1に示した遠心圧縮機4のX-X断面(コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面)の一例を概略的に示す図である。図3は、図1に示した遠心圧縮機4のX-X断面(コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面)の一例を概略的に示す図である。図4は、図2及び図3に示した遠心圧縮機4のX-X断面における、サージライン近傍の運転点での軸方向速度分布及び流れ方向を示す図である。図4において、軸方向速度が正の値を有する場合は流れがインペラ6に向かって流れていることを意味し、軸方向速度が負の値を有する場合は流れがインペラ6から逆流していることを意味する。
【0048】
一実施形態では、例えば図2に示すように、コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面において、コンプレッサ入口管40の内壁面20とバイパス流路16の内壁面24との接続箇所A1,A2のうちインペラの回転方向rにおける下流側の接続箇所をA1、コンプレッサ入口管40の内壁面20とバイパス流路16の内壁面24との接続箇所A1,A2のうちインペラ6の回転方向rにおける上流側の接続箇所をA2、コンプレッサ入口管40の内壁面20を構成する仮想円をC、接続箇所A1における仮想円Cの接線をL1とすると、バイパス流路16の内壁面24は、接続箇所A1から接線L1に沿って形成される。
【0049】
ここで、コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面において内壁面24が「接線L1に沿って形成される」とは、内壁面24が接線L1と平行である場合だけでなく、内壁面24が接線L1と平行に近い場合(例えば接線L1と内壁面24とのなす角度θ1が0°≦θ1≦45°を満たす場合)も含まれる。また、「接続箇所A1,A2のうちインペラの回転方向rにおける下流側の接続箇所A1」とは、仮想円Cを、バイパス流路16内に収まる円弧c1と、バイパス流路16の内壁面20に対応する円弧c2とに分割した場合に、回転方向rにおける円弧c1の下流端を意味する。また、「接続箇所A1,A2のうちインペラの回転方向rにおける上流側の接続箇所A1」とは、回転方向rにおける円弧c1の上流端を意味する。
【0050】
上記のように、コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面において、バイパス流路16の内壁面24をインペラ6の回転方向rにおける下流側の接続箇所A1から接線L1に沿って形成したことにより、図4に示すように、インペラ6から逆流する上記旋回流れf(スワール)に沿うようにバイパス流路16の内壁面24が形成される。このため、図10に示した比較例(バイパス流路016の内壁面024が接線L1に沿っていない場合)と比較して、インペラ6から逆流する上記旋回流れfがバイパス流路16の内壁面24に衝突することによる当該旋回流れfの局所的な減速を抑制することができる。これにより、図4に示すようにコンプレッサ入口管40における周方向の流動歪みが低減されて、速度分布における周方向の均一性を高めることができる。このため、インペラ6の各羽根の流動損失のばらつきが低減されるため、圧縮機効率の低下を抑制することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、例えば図3に示すように、コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面において、コンプレッサ入口管40の内壁面20とバイパス流路16の内壁面24との接続箇所A2における仮想円Cの接線をL4、接続箇所A2における接線L4とバイパス流路16の内壁面24とのなす角度をθ2とすると、θ1<θ2を満たす。
【0052】
かかる構成によれば、接続箇所A1における接線L1と内壁面24とのなす角度θ1を接続箇所A2における接線L2と内壁面24とのなす角度θ2よりも小さくすることで、インペラ6から逆流する上記旋回流れfがバイパス流路16の内壁面24に衝突することによる当該旋回流れfの局所的な減速を抑制するとともに、旋回流れfのバイパス流路16への侵入を抑制することができる。したがって、遠心圧縮機4の効率低下を効果的に抑制することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、例えば図3に示すように、コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面において、接続箇所A2における接線L4と内壁面24とのなす角度θ2が45°≦θ2≦90°を満たす。
【0054】
かかる構成によれば、接続箇所A2における接線L4と内壁面24とのなす角度θ2を45°以上の直角に近い角度に設定することにより、サージライン近傍の運転領域においてインペラ6から逆流する旋回流れfのバイパス流路16への侵入を効果的に抑制することができる。したがって、遠心圧縮機4の効率低下を効果的に抑制することができる。
【0055】
ここで、例えば図2に示すように、バイパス流路16の断面の重心gをバイパス流路16の流れ方向に繋いだ仮想線をBとする。また、コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面において、仮想円Cと仮想線Bとの交点をP1、交点P1における仮想線Bの接線(仮想線Bが直線状である場合には仮想線Bと仮想線Bの延長線とを含む直線)をL2、コンプレッサ入口管40の軸心O1を通るとともに接線L2に平行な直線をL3、仮想円Cと直線L3との交点をP2とする。
【0056】
幾つかの実施形態では、例えば図2に示すように、交点P1は、交点P2に対してインペラ6の回転方向rにおける下流側に位置する。すなわち、図2に示す遠心圧縮機4では、コンプレッサ入口管40とバイパス流路16との接続部分において、バイパス流路16の断面の重心gは、コンプレッサ入口管40の軸心O1に対してインペラ6の回転方向rにおける下流側に偏心している。
【0057】
かかる構成によれば、バイパス流路16の内壁面24が接続箇所A1から接線L1に沿うようにバイパス流路16を構成することが容易となるため、バイパス流路16の構成の複雑化を抑制しつつ圧縮機効率の低下を抑制することができる。また、上記のように交点P1を交点P2に対してインペラ6の回転方向rにおける下流側に位置させることにより、接続箇所A2における接線L4と内壁面24とのなす角度θ2を大きくすることが容易となるため、インペラ6から逆流する上記旋回流れfのバイパス流路16への侵入を抑制して、圧縮機効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、例えば図3に示すように、コンプレッサ入口管40の軸心O1に直交する断面において、仮想円Cに沿った接続箇所A1から交点P1までの距離d1は、仮想円Cに沿った接続箇所A2から交点P1までの距離d2よりも大きい。
【0059】
かかる構成によれば、バイパス流路16の内壁面24が接続箇所A1から接線L1に沿うようにバイパス流路16を構成することが容易となるため、バイパス流路16の構成の複雑化を抑制しつつ圧縮機効率の低下を抑制することができる。また、上記のように距離d1を距離d2よりも大きくすることにより、接続箇所A2における接線L4と内壁面24とのなす角度θ2を大きくすることが容易となるため、インペラ6から逆流する上記旋回流れfのバイパス流路16への侵入を抑制して、圧縮機効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0060】
図5は、図1に示した遠心圧縮機4の部分拡大図である。図6は、一実施形態に係る遠心圧縮機4におけるサージライン近傍でのコンプレッサ入口管40のエントロピーとインペラ6から逆流する旋回流れfを示す図である。図7は、従来形態に係る遠心圧縮機におけるサージライン近傍でのコンプレッサ入口管40のエントロピーとインペラ6から逆流する旋回流れfを示す図である。
【0061】
一実施形態では、例えば図5に示すように、遠心圧縮機4の子午面(コンプレッサ入口管40の軸心O1を含む断面)において、コンプレッサ入口管40の軸心O1と上記接線L2との交点をP3、コンプレッサ入口管40の軸心O1のうちコンプレッサ入口管40の流れ方向F(コンプレッサ入口管40における流路断面に直交する流れの方向)における交点P3よりも上流側の線分をL5、接線L2のうち交点P3からバイパス流路16内に延びる半直線をL6とすると、交点P3において線分L5と半直線L6とがなす角度θ3は90°以上である。
【0062】
かかる構成によれば、図7に示す従来形態(上記角度θ3が90°未満の場合)と比較して、図6に示すように、インペラ6から逆流する上記旋回流れf(スワール)がバイパス流路に侵入することが抑制される。これにより、図7に示す従来形態と比較して、図6に示すように、コンプレッサ入口管40とバイパス流路16との接続部分の近傍領域Qにおける圧力損失の増大が抑制されて、圧縮効率の低下を抑制することができる。
【0063】
また、従来は、コンプレッサ入口管40におけるインペラ6へ向かう順方向の流れがバイパス流路16に干渉することを抑制するために、図7に示すように、上記角度θ3が90°未満に設定されていた。これに対し、本願発明者の鋭意検討の結果、バイパス流路16についての上記角度θ3は、インペラ6へ向かう順方向の流れがバイパス流路16に干渉することを抑制するために90°未満に設定するよりも、インペラ6から逆流する旋回流れfがバイパス流路16に侵入することを抑制するために90°以上に設定した方が圧縮機効率の点で有利であることが判明した。
【0064】
図12は、コンプレッサ入口管40の他の構成例を示す、遠心圧縮機4の部分的な子午面図である。図13は、図12におけるX矢視図である。図14は、コンプレッサ入口管40の他の構成例を示す、遠心圧縮機4の部分的な子午面図である。図15は、図14におけるX矢視図である。図16は、コンプレッサ入口管40の他の構成例を示す、遠心圧縮機4の部分的な子午面図である。
【0065】
幾つかの実施形態では、例えば図8図12図14及び図16に示すように、遠心圧縮機4の子午面(コンプレッサ入口管40の軸心O1を含む断面)において、上記角度θ3は、90°<θ3を満たす。
【0066】
かかる構成によれば、上記角度θ3が90°未満である従来形態と比較して、サージライン近傍の運転領域においてインペラ6から逆流する旋回流れがバイパス流路16に侵入しにくい角度θ3に設定されており、またコンプレッサ入口管40の内壁面におけるバイパス流路16の接続口とインペラ6との距離を確保することが容易となる。これにより、サージライン近傍の運転領域においてインペラ6から逆流する旋回流れがバイパス流路16に侵入することが抑制され、コンプレッサ入口管40とバイパス流路16との接続部分の近傍領域における圧力損失が低減される。
【0067】
また、従来は、コンプレッサ入口管40におけるインペラ6へ向かう順方向の流れがバイパス流路16に干渉することを抑制するために、上記角度θ3は90°未満に設定されていた。これに対し、本願発明者の鋭意検討の結果、バイパス流路16に係る上記角度θ3は、インペラ6へ向かう順方向の流れがバイパス流路16に干渉することを抑制するために90°未満に設定するよりも、サージライン近傍でインペラ6から逆流する旋回流れがバイパス流路16に侵入することを抑制するために90°よりも大きい角度に設定した方が圧縮機効率の点で有利であるという新たな知見を得た。
【0068】
幾つかの実施形態では、例えば図8図12図14及び図16に示すように、上記角度θ3は、θ3≦135°を満たす。
【0069】
かかる構成によれば、コンプレッサ入口管40におけるインペラ6へ向かう順方向の流れがバイパス流路16に干渉する影響を過度に大きくすることなく、サージライン近傍でインペラ6から逆流する旋回流れがバイパス流路16に侵入することを抑制することができる。これにより、高い圧縮機効率を実現することができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、例えば図12図16に示すように、コンプレッサ入口管40の軸方向においてコンプレッサ入口管40に形成されたバイパス流路16の接続口46とインペラ6の翼50の前縁44との間に位置し、コンプレッサ入口管40の内壁面20からコンプレッサ入口管40の径方向における内側に向かって突出するように、軸心O1に平行な方向に沿って延設された少なくとも一つの延設部42を更に備える。
【0071】
かかる構成によれば、サージライン近傍でインペラ6から逆流する旋回流れがバイパス流路16に侵入することを延設部42によって抑制することができる。また、延設部42が軸心O1に平行な方向(上記流れ方向Fに平行な方向)に沿って延設されているため、コンプレッサ入口管40におけるインペラ6へ向かう順方向の流れは、延設部42に沿ってスムーズに流れることができる。したがって、コンプレッサ入口管40とバイパス流路16との接続部分の近傍領域における圧力損失を効果的に低減することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、例えば図13及び図15に示すように、少なくとも一つの延設部42は、コンプレッサ入口管40の周方向に間隔を空けて設けられた複数の延設部42を含む。
【0073】
かかる構成によれば、サージライン近傍でインペラ6から逆流する旋回流れがバイパス流路16に侵入することを複数の延設部42によって効果的に抑制することができる。
【0074】
幾つかの実施形態では、例えば図12図14及び図16に示すように、インペラ6の翼50における前縁44の翼高さ(ハブ面52からの翼高さ)をHとすると、延設部42の各々は、翼高さHの70%の位置(ハブ面52から0.7Hの翼高さ)よりコンプレッサ入口管40の径方向における外側のみに設けられており、翼高さHの70%の位置よりコンプレッサ入口管40の径方向における内側には設けられていない。
【0075】
かかる構成によれば、サージライン近傍でインペラ6から逆流する旋回流れがバイパス流路16に侵入することを延設部42によって抑制しつつ、コンプレッサ入口管40におけるインペラ6へ向かう順方向の流れに延設部42が与える影響を抑制することができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、例えば図13及び図15に示すように、コンプレッサ入口管40の周方向における複数の延設部42のピッチd3と、軸心O1に平行な方向(上記流れ方向Fに平行な方向)における延設部42の各々の長さEと、上記バイパス流路16の接続口46の外径Dとは、E>d3の関係を満たす。
【0077】
かかる構成によれば、サージライン近傍でインペラ6から逆流する旋回流れの角度によらず、バイパス流路16に逆流が侵入することを抑制することができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、例えば図12図16に示すように、延設部42の各々は、板状に構成される。なお、遠心圧縮機4の子午面における延設部42の形状は、特に限定されないが、例えば図12及び図14に示すように略三角形状であってもよいし、図16に示すように方形であってもよい。
【0079】
かかる構成によれば、サージライン近傍でインペラ6から逆流する旋回流れがバイパス流路16に侵入することを板状の延設部によって効果的に抑制することができる。
【0080】
幾つかの実施形態では、例えば図14及び図15に示すように、コンプレッサ入口管40の内壁面20のうちコンプレッサ入口管40の流れ方向Fにおいてバイパス流路16の接続口46よりも上流側の内壁面20から流れ方向Fにおける下流側に向かって突出する環状の突出部48を含む。
【0081】
かかる構成によれば、バイパス流路16から接続口46を介してコンプレッサ入口管40に流出した流れ(再循環流)Jが、環状の突出部48によって転向されて、コンプレッサ入口管40の内壁面20に沿って流れるため、サージライン近傍でのインペラ6からの逆流を抑制することができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、例えば図15に示すように、突出部48は、コンプレッサ入口管40の径方向視(図14のX方向視)において接続口46の少なくとも一部にオーバーラップするように設けられる。
【0083】
かかる構成によれば、図14に示すように、バイパス流路16から接続口46を介してコンプレッサ入口管40に流出した流れJ(再循環流)が、環状の突出部48によって効果的に転向されて、コンプレッサ入口管40の内壁面20に沿って流れるため、サージライン近傍でのインペラ6からの逆流を効果的に抑制することができる。
【0084】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0085】
例えば、図3等に示した形態では、バイパス流路16がコンプレッサ入口管40の軸心O1に対して偏心した形態を例示したが、他の形態では、例えば図9に示すように、コンプレッサ入口管40の軸心O1は、接線L2上に位置してもよく、角度θ1は角度θ3と等しくてもよい。すなわち、インペラ6から逆流する上記旋回流れfがバイパス流路16の内壁面24に衝突することによる当該旋回流れの局所的な減速を抑制するためには、バイパス流路16の内壁面24が接続箇所A1から接線L1に沿って形成されていればよい。
【符号の説明】
【0086】
2 ターボチャージャ
4 遠心圧縮機
6 インペラ
8 回転軸
10 タービンロータ
12 タービン
14 スクロール流路
16 バイパス流路
18 バイパスバルブ
19 アクチュエータ
20 内壁面
22 弁ポート
24 内壁面
38 出口管
40 コンプレッサ入口管
42 延設部
44 前縁
46 接続口
48 突出部
50 翼
52 ハブ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16