(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】航空機用の推進装置及びそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B64C 39/00 20060101AFI20221012BHJP
B64C 11/32 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B64C39/00 A
B64C11/32
(21)【出願番号】P 2020531692
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2018084371
(87)【国際公開番号】W WO2019115532
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】102017011890.6
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518221564
【氏名又は名称】シクロテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィンダール,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ランサー,ステファン
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4194707(US,A)
【文献】米国特許第1753252(US,A)
【文献】特開2013-184645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0200029(US,A1)
【文献】特開2009-051381(JP,A)
【文献】米国特許第10279900(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0196992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/00
B64C 11/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(100)用の推進装置(1)であって、
-円形経路(52)に沿って前記推進装置(1)の回転軸(51)を中心として回転され得る羽根(2)と、
-結合装置(31)及びベアリング装置(33)を有するピッチメカニズム(3)であって、
-前記羽根(2)は、前記推進装置の前記回転軸(51)に平行に羽根ベアリング軸(33)を中心として回動するべく取り付けられている、ピッチメカニズム(3)と、
-前記羽根が接続点(42)において前記結合装置(31)によって結合されるオフセット装置(4)であって、前記オフセット装置(4)は、
-オフセット距離(43)が非ゼロの値に設定された際に、前記推進装置の前記回転軸(51)を中心とした前記円形経路(52)に沿った前記羽根(2)の前記回転が前記羽根(2)のピッチ運動(α)を実現するように、
前記推進装置の前記回転軸(51)に平行に調節可能なオフセット距離(43)において取り付けられた偏心ベアリング軸(41)を定義している、オフセット装置(4)と、
を有し、
-前記結合装置(31)は、結合点(32)において前記羽根(2)に結合されており、前記結合点(32)は、前記オフセット距離(43)がゼロに設置された際に、前記羽根ベアリング軸(33)及び前記結合点(32)を有す
る平面並びに前記羽根ベアリング軸(33)を通じた前記円形経路(52)に対する接平面(54)が特定のゼロにならない角度(wα)を含むような方式により、位置決めされ
て、
前記特定のゼロにならない角(wα)は、前記オフセット距離(43)がゼロに設定された際に、回転軸(51)から羽根ベアリング軸(33)までの距離(r)に対する羽根ベアリング軸(33)から結合点(32)までの距離の比率の75%~125%の範囲の値をとる、推進装置。
【請求項2】
前記特定のゼロにならない角(wα)は、前記オフセット距離(43)がゼロに設定された際に、前記羽根ベアリング軸(33)及び前記結合点(32)を有する前記平面並びに前記推進装置の前記回転軸(51)及び前記結合点(32)から前記回転軸(51)までの接続ラインを有する前記平面が、ほとんど90°の角度を含むような方式により、設定されている請求項1に記載の推進装置(1)。
【請求項3】
前記特定のゼロにならない角(wα)は、前記オフセット距離(43)がゼロに設定された際に、回転軸(51)から羽根ベアリング軸(33)までの距離(r)に対する羽根ベアリング軸(33)から結合点(32)までの距離の比率の90%~110%の範囲の値をとる請求項1又は2に記載の推進装置(1)。
【請求項4】
前記羽根における前記結合装置(31)の前記結合点(32)は
、羽根プロファイルの外側において位置決めされている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の推進装置(1)。
【請求項5】
前記羽根ベアリング軸(32)は、前記羽根の質量中心(250)を通じて延在する、且つ前記回転軸(51)及び前記羽根の翼弦(230)の両方に平行に延在する、平面との関係において、特定の距離(wgx)だけ、前記推進装置の前記回転軸(51)に向かってシフトされている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の推進装置(1)。
【請求項6】
前記羽根ベアリング軸(33)は、前記羽根プロファイルの外側において延在している請求項5に記載の推進装置(1)。
【請求項7】
接続要素(61)を更に有し、前記接続要素(61)は、前記羽根(2)が前記ベアリング装置(33)によって回動するべく取り付けられている地点において、前記羽根(2)と堅固に接続され、且つ前記羽根の前記結合点(32)においては、前記結合装置(31)と運動自在に接続されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の推進装置(1)。
【請求項8】
航空機(100)用の推進装置(1)であって、
-円形経路(52)に沿って前記推進装置の回転軸(51)を中心として回転され得る羽根(2)と、
-結合装置(31)及びベアリング装置(33)を有するピッチメカニズム(3)であって、
-前記羽根(2)は、前記推進装置の前記回転軸(51)に平行に羽根ベアリング軸(33)を中心として回動するべく前記ベアリング装置(33)によって取り付けられている、ピッチメカニズム(3)と、
-前記羽根が、接続点(42)において前記結合装置(31)によって結合されるオフセット装置(4)であって、前記オフセット装置(4)は、
-オフセット距離(43)が非ゼロ値に設定された際に、前記円形経路(52)に沿った前記推進装置の前記回転軸(51)を中心とした前記羽根(2)の前記回転が、前記羽根(2)のピッチ運動(α)を実現するような方式で、前記結合装置(51)が、前記羽根(2)を前記オフセット装置(4)に結合するように、
前記推進装置の前記回転軸(51)に平行に調節可能なオフセット距離(43)において取り付けられた偏心ベアリング軸(41)を定義している、オフセット装置(4)と、
を有し、
前記羽根ベアリング軸(33)は、前記羽根
の質量中心(250)を通じて延在する、且つ前記羽根の前記回転軸(51)及び翼弦(230)の両方に平行に延在する、平面との関係において、特定の距離(wgx)だけ、前記推進装置の前記回転軸(51)に向かってシフトされて
おり、
前記特定の距離(wgx)は、下記式が略ゼロとなるように選択される、推進装置。
M:羽根(2)の質量
r:回転軸(51)からの羽根ベアリング軸(33)の距離
α
A
:ピッチ運動(α)の振幅
I
cm
:羽根の質量中心(250)との関係において算出された質量慣性モーメント
wgz:羽根の質量中心(250)を通じて延在する、且つ翼弦(230)に垂直である、平面との関係において、羽根ベアリング軸(33)の距離
【請求項9】
前記羽根(2)は、前記特定の距離(wgx)だけの前記シフトを生成するほどに不均一な質量分布を有する請求項8に記載の推進装置(1)。
【請求項10】
前記羽根ベアリング軸(33)は、一方において、前記翼弦(230)に垂直である、且つ前記質量中心(250)を通じて延在する、平面により、且つ他方においては、前記翼弦(230)に垂直である、且
つリーディングエッジ(210)を通じて延在する、平面により、閉じ込められた領域内において位置決めされている請求項8又は9に記載の推進装置(1)。
【請求項11】
前記羽根ベアリング軸(33)は
、羽根プロファイルの外側において延在している請求項8乃至10
のいずれか1項に記載の推進装置(1)。
【請求項12】
前記結合装置(31)は、前記オフセット装置の前記接続点(42)を前記羽根
の結合点(32)と接続するコンロッドを有する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の推進装置(1)。
【請求項13】
個々の関連するピッチメカニズム(3)を有する更なる羽根(2)を有し、すべての羽根(2)及び前記羽根のピッチメカニズム(3)は、類似のタイプであり、且つ前記推進装置の前記羽根(2)は、前記円形経路(52)に沿って前記推進装置の前記回転軸(51)を中心として均等に分散されている請求項1乃至12のいずれか1項に記載の推進装置(1)。
【請求項14】
合計で5つの羽根(2)を有する請求項13に記載の推進装置(1)。
【請求項15】
前記推進装置は、サイクロジャイロ回転翼である請求項1乃至14のいずれか1項に記載の推進装置(1)。
【請求項16】
航空機(100)用の推進装置(1)を製造する方法であって、
-円形経路(52)に沿って前記推進装置(1)の回転軸(51)を中心として回転させ得る羽根(2)を提供するステップと、
-結合装置(31)及びベアリング装置(33)を有するピッチメカニズム(3)を提供するステップと、
-前記推進装置の前記回転軸(51)に平行に羽根ベアリング軸(33)を中心として前記ベアリング装置(33)により前記羽根(2)を回動可能に取り付けるステップと、
-前記羽根(2)を接続点(42)において結合装置(31)によってオフセット装置(4)に結合するステップであって、
-オフセット距離(43)が非ゼロの値に設定された際に、前記推進装置の前記回転軸(51)を中心とした前記円形経路(52)に沿った前記羽根(2)の前記回転が前記羽根(2)のピッチ運動(α)を実現するような方式で、前記結合装置(31)が前記羽根(2)をオフセット装置(4)に結合するように、
前記オフセット装置(4)は、前記推進装置の前記回転軸(51)に平行に調節可能なオフセット距離(43)において取り付けられた偏心ベアリング軸(41)を定義しているステップと、
-前記羽根の質量中心(250)を通じて延在する、且つ前記回転軸(51)及び前記羽根の翼弦(230)の両方に平行に延在する、平面との関係において、特定の距離(wgx)だけ、前記推進装置の前記回転軸(51)に向かってシフトされるように、前記羽根ベアリング軸(33)を位置決めするステップであって、
前記羽根ベアリング軸(33)を位置決めするステップは、
-前記円形経路に沿った前記羽根(2)の回転中に、前記偏心ベアリング軸(41)の偏向の方向において示す平均力の成分が負になるように前記特定の距離(wgx)を決定して、前記平均力が前記偏心ベアリング軸(41)の偏向を妨げるステップを含み、
前記平均力は、前記円形経路(52)に沿った前記羽根(2)の完全な回転の最中においてオフセット装置(4)に作用する力全体の平均であるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、航空機用の推進装置である。具体的には、本発明は、回転翼の構造要素に対する低減された負荷を伴うサイクロジャイロ回転翼に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクロジャイロ回転翼は、回転羽根による推力生成の原理に基づいている。ヘリコプタの推進装置において使用されているものなどの、従来の回転羽根とは対照的に、サイクロジャイロ回転翼の羽根の回転軸は、羽根の長手方向軸に対して平行に方向付けられている。サイクロジャイロ回転翼全体の推力の方向は、回転軸に対して垂直である。
【0003】
サイクロジャイロは、推進装置としてサイクロジャイロ回転翼を使用する航空機である。更には、サイクロジャイロは、ヘリコプタと同様に、所謂、垂直離陸航空機(「Vertical Take-Off and Landing」の略号であるVTOL機とも呼称される)であり、即ち、滑走路を必要とすることなしに垂直方向において離陸及び着陸する能力を有する航空機である。
【0004】
静止動作においては、サイクロジャイロ回転翼のすべての羽根は、理想的には、最低限必要とされる駆動力によって推力全体に対する最大寄与を生成するように、可能な限り、常に流れの方向に対して方向付けることを要する。流れの方向との関係における羽根の最大ピッチ角が、生成される推力の量に対して直接的な影響を及ぼす。回転翼の回転に起因して、回転の際に、それぞれの羽根のピッチ角を継続的に変更しなければならない。従って、サイクロジャイロ回転翼のそれぞれの羽根は、ピッチ角の定期的な変更を実行している。このピッチ角の定期的な変化は、ピッチ運動と呼称される。
【0005】
ピッチ運動の生成においては、様々なピッチメカニズムが知られている。例えば、それぞれの羽根は、1つ又は複数のコンロッドを介して偏心ベアリング軸と接続することができる。その結果、結果的に得られる羽根のピッチ運動が、すべての回転翼の回転に伴って周期的に反復される。この結果、ピッチ角の変化を現時点の回転翼の捩じれの関数としてフーリエ級数に展開することができる。この表現においては、基本調波値が、通常、支配的である。これは、平均値により、且つ更に高次の調波値により重畳されている。後者は、サイクロジャイロ回転翼の個々の構造要素に応力を印加する、望ましくない振動を構成する。これらは、その振幅及び位相を直接的に選択することができないことから、空力学的効率を最適化するべく使用することができない。
【0006】
動作の際のサイクロジャイロ回転翼の迅速な回転速度に起因して、そのコンポーネントには、特に、慣性力及び慣性モーメントの形態における、負荷が印加される。これは、特に羽根の場合に当て嵌まり、その理由は、これらが原理上、回転軸から非常に遠く離れており、複雑な運動を実行し、且つサイクロジャイロ回転翼の相対的に大きな合計質量の割合を形成しているからである。
【0007】
サイクロジャイロ回転翼の通常の実装形態においては、羽根に作用する遠心力の一部分が、コンロッドの一側部において導入されている。コンロッドによって強制されるピッチ運動は、羽根の質量慣性に起因して、当初言及されているものにおいて更なる力を生成する。コンロッドの第2側部は、偏心した方式によって取り付けられたオフセット円板と(或いは、直接的にオフセットピンと)接続されている。羽根の数とは無関係に、これは、半径方向を外向きに作用する力の形態において、偏心ベアリング軸に対する負荷を結果的にもたらす。この力の時間平均は、羽根の最大ピッチ角とは線形で、且つ回転速度とは二乗により、良好な近似状態において増大する。
【0008】
この負荷は、サイクロジャイロ回転翼を設計する際に大きな難問を構成する。利用可能である設置空間と、飛行においては通常のものである軽量の構造要件との関係において、偏心ベアリング軸を任意に安定するように設計することは、不可能である。
【0009】
通常、偏心ベアリング軸の位置は、推力を変更するべく調節可能となるように設計されている。必要な調節ユニットが、発生する力によって過負荷状態となる場合がある。この結果は、偏心ベアリング点が、回転軸から更に離れるように移動するというものであり、これは、相対的に大きな最大ピッチ角と、その結果である偏心ベアリング軸上における相対的に大きな負荷とを結果的にもたらす。この結果は、通常はサイクロジャイロ回転翼の破壊に結び付く、不安的な振る舞いである。これに加えて、偏心ベアリング軸に対する負荷は、調節ユニット内のエネルギー消費を増大させ、且つその力学を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、高速におけるサイクロジャイロ回転翼の偏心ベアリング軸に対する上述の負荷を低減するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有する航空機用の推進装置により、且つ請求項8の特徴を有する航空機用の推進装置により、解決されている。本発明の有利な実施形態は、従属請求項2~7及び9~15において示されている。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、円形経路に沿って推進装置の回転軸を中心として回転しうる羽根と、結合装置及びベアリング装置を有するピッチメカニズムと、というコンポーネントを有する、航空機用の推進装置が提供されている。羽根は、ベアリング装置により、推進装置の回転軸に対して平行に羽根ベアリング軸を中心として回動するべく、取り付けられている。本発明による推進装置は、羽根が接続点において結合装置によって結合されるオフセット装置を更に有する。オフセット装置は、オフセット距離が非ゼロの値に設定された際に、円形経路に沿った推進装置の回転軸を中心とした羽根の回転が羽根のピッチ運動を実現するような方式により、推進装置の回転軸に平行な調節可能なオフセット距離において取り付けられる偏心ベアリング軸を定義している。結合装置は、結合点において羽根に結合されており、この場合に、結合点は、オフセット距離がゼロに設定された際に、羽根ベアリング軸及び結合点を有する平面並びに羽根ベアリング軸を通じた円形経路に対する接平面が特定のゼロにならない角を含むような方式により、位置決めされている。
【0013】
オフセット装置によって定義された偏心ベアリング軸が、推進装置の回転軸に対して平行なオフセット距離において偏心した方式によって取り付けられているという事実に起因して、羽根が結合装置によって結合された際に、羽根の羽根ベアリング軸を中心とした羽根の振子運動が結果的に得られる。この振子運動は、ピッチ運動と呼称される。
【0014】
本発明によれば、ピッチ運動は、羽根ベアリング軸を通じた円形経路に対する接線及び/又は接平面並びに羽根の翼弦によって含まれる角度により、表される。ピッチ運動が、円形経路に対する接線を中心として-50°~+50°の角度範囲において発生する場合に有利である。この角度範囲が使用される際には、適切な推進力を生成することができる。円形経路に対する接線との関係における対称的なピッチ運動のケースにおいては、羽根は、羽根ベアリング点及び結合点との関係において、オフセット距離がゼロである際に、翼弦及び円形経路に対する接線が平行となるような方式により、位置決めされる。翼弦が、オフセット距離ゼロに伴って、円形経路に対する接線との関係において捩じれた方式によって既に位置決めされている場合には、結果は、ゼロにならないが、オフセット距離ゼロを伴う一定のピッチ角と、その結果として、ゼロにならないオフセット距離を伴う円形経路に対する接線との関係における非対称なピッチ運動とである。従って、ピッチ運動が、円形経路に対する接線を中心として非対称的に発生している、即ち、このケースにおいては、接線の上方のピッチ運動の最大角度が、接線の下方の最大角度超である、或いはこの逆になっていることが有利でありうる。
【0015】
特定のゼロにならない角がゼロのオフセット距離を伴って設定されているという事実に起因して、特定のゼロにならない角の定義が明確である。ゼロにならないオフセット距離のケースにおいては、この角度は、ピッチ角の関数として常に変化することになろう。
【0016】
翼弦とは、羽根のリーディングエッジとトレーリングエッジの間の接続ラインを意味している。
【0017】
リーディングエッジ及びトレーリングエッジは、プロファイル外形とのカンバ線の交差により付与される。カンバ線(スケルトンライン、曲率線、又は曲げ線とも呼称される)は、翼弦に垂直である羽根プロファイルの上部側と下部側の間の中心から構成されるラインである。カンバ線は、羽根プロファイルの上部側と下部側の間における非対称性に関係している。対称的なプロファイルのケースにおいては、カンバ線は、翼弦に対応している。好ましくは、対称的なプロファイルが使用される。但し、本発明は、対称的なプロファイルに限定されるものではない。
【0018】
オフセット距離がゼロに設定された際に、羽根ベアリング軸及び結合点を有する平面及び羽根ベアリング軸を通じた円形経路に対する接平面が特定のゼロにならない角を含むように、結合点が位置決めされているという事実に起因して、羽根のピッチ運動の相対的に高次の調波値が影響されうると共に、低減されうる。
【0019】
ここでは、本発明による効果は、羽根及び/又は羽根プロファイルの特定の形状及び設計とは完全に独立した状態において発生することを強調しておきたい。本発明によれば、羽根ベアリング軸を通じた円形経路に対する接平面及び羽根ベアリング軸及び結合点を有する平面によって含まれる、及び/又は羽根ベアリング点における円形経路に対する接線及び羽根ベアリング点及び結合点を通じた接続直線によって含まれる、角度のみが重要である。
【0020】
ピッチ運動は、オフセット距離が非ゼロ値に設定された際に発生する。従って、本発明によれば、結合点は、オフセット装置及び推進装置の回転軸によって定義される偏心ベアリング軸がマッチングしている構成において、判定されている。推進装置の動作のためには、オフセット距離をゼロにならない値に設定し、これにより、ピッチ運動を生成することが好都合である。ゼロにならないオフセット距離が存在している際には、推力は、特定の方向において生成される。
【0021】
羽根のピッチ運動は、すべての回転翼の回転に伴って、循環的に反復される。従って、ピッチ角の変化は、現時点の回転翼の捩じれの関数として、フーリエ級数に展開することができる。この表現においては、通常、基本調波値が支配的である。これは、平均値により、且つ上述の更に高次の調波値により重畳されている。
【0022】
羽根に対する結合装置の結合点は、推進装置の動作において、2つの回転運動を実行する。第1の回転運動は、推進装置の回転軸を中心とした羽根の回転に起因して発生する。第2の回転運動は、羽根ベアリング軸を中心として羽根を回動させるピッチメカニズムにより生成される。ピッチメカニズムの形状構造に起因して、第2の回転運動、即ち、ピッチ運動においては、相対的に高次の調波値が結果的に存在しており、且つその継続において、第1の回転運動との間の重畳に起因して、羽根の負荷においては、相対的に高次の調波値が結果的に存在している。
【0023】
これらの相対的に高次の調波値は、結合装置を介してオフセット装置及び/又はその偏心ベアリング軸に伝達されうる、意図してはいない負荷の振動を構成する。これは、オフセット装置及びその偏心ベアリング軸の安定性を損なう。
【0024】
好ましくは、結合点は、推進装置の回転軸に対向する円形経路に対する接平面の側部において位置決めされている。
【0025】
特定のゼロにならない角が、5°~15°の範囲内、好ましくは8°~12°の範囲内、特に好ましくは9.5°~10.5°の範囲内に存在するような方式により、結合点が、推進装置の回転軸の方向において円形経路の接平面からシフトするように位置決めされる場合に有利である。
【0026】
更には、オフセット距離がゼロに設定された際に、羽根ベアリング軸及び結合点を有する平面と、推進装置の回転軸及び結合点から回転軸までの接続ラインを有する平面とが、ほとんど90°の角度を含むように、特定のゼロにならない角が設定されている場合に特に有利である。このケースにおいて、その回転軸を中心とした推進装置の回転の際に、ピッチ運動の相対的に高次の偶数調波値のすべてが、ほとんど相殺する。従って、オフセット装置に対する負荷も、ピッチ運動の相対的に高次の偶数調波値により極小化される。
【0027】
第1に、羽根ベアリング軸から結合点まで距離と、第2に、推進装置の回転軸から羽根ベアリング軸までの距離と、という2つの寸法の比率の関数として、特定のゼロにならない角を判定することが好都合であり、これらのそれぞれは、オフセット距離がゼロに設定された場合のものである。好ましくは、ラジアンを単位として示される特定のゼロにならない角は、上述の第2寸法に対する第1寸法の比率の75%~125%の範囲内の値をとり、特に好ましい方式によれば、特定のゼロにならない角は、言及されている比率の90%~110%の範囲内の値をとる。
【0028】
更には、オフセット距離がゼロに設定された際に、羽根ベアリング軸及び結合点を有する平面と、推進装置の回転軸及び結合点から回転軸までの接続ラインを有する平面とが、ほとんど90°の角度を含むように、特定のゼロにならない角が設定されている場合に特に有利である。このケースにおいては、その回転軸を中心とした推進装置の回転の際に、ピッチ運動の相対的に高次の偶数調波値のすべてが、ほとんど相殺する。又、従って、オフセット装置に対する負荷も、ピッチ運動の相対的に高次の偶数調波値により極小化される。
【0029】
好ましくは、羽根に対する結合装置の結合点は、羽根プロファイルの外側において位置決めされている。これは、羽根そのものが、結合装置の結合によって損なわれないという利点を有する。従って、有利には、羽根の安定性には悪影響が及ばない。
【0030】
好ましくは、翼弦との関係において対称的であるプロファイルを有する羽根が使用されている。但し、本発明は、このような対称的なプロファイルに制限されるものではない。
【0031】
羽根ベアリング軸が、羽根の質量中心を通じて延在する、且つ羽根の回転軸及び翼弦の両方に対して平行に延在する平面との関係において、特定の距離だけ、推進装置の回転軸に向かってシフトされている場合に有利である。
【0032】
羽根の質量中心を通じて延在する、且つ羽根の回転軸及び翼弦の両方に対して平行に延在する平面との関係において、特定の距離だけ回転軸に向かって羽根ベアリング軸をシフトさせることは、オフセット装置における、及び/又はオフセット装置によって定義された偏心ベアリング軸における平均力が、極小化されるという利点を有する。オフセット装置における平均力とは、完全な回転翼の回転の最中においてオフセット装置に作用する力全体の平均である。オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸に作用する力がフーリエ級数に展開された場合には、平均力は、ゼロ次の項である。従って、オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸に対する負荷が更に低減される。又、負荷は、羽根に係合するトルクに起因して、オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸に対しても作用する。既に上述したように、羽根は、推進装置の動作の際に互いに結合される2つの回転運動を実行している。第1の回転運動は、円形経路に沿った推進装置の回転軸を中心とした羽根の回転に由来している。第2の回転運動は、羽根ベアリング軸を中心とした羽根のピッチ運動に対応している。結果的に、羽根ベアリング軸との関係において、羽根に作用するトルクに対して、2つの寄与が得られる。第1の寄与は、円形経路に沿った推進装置の回転軸を中心とした羽根の回転運動と関係している。この回転運動は、羽根に対する遠心力を実現する。従って、羽根がその重心から所定の距離において取り付けられた際に、対応するトルクが常に生成される。第2の量は、その羽根ベアリング軸を中心とした羽根のピッチ運動と関係している。対応するトルクは、一方においては、羽根の慣性の質量モーメントに、且つ他方においては、ピッチ運動の際に経験される羽根の(角)加速度に依存している。
【0033】
言及されているトルクに対する両方の寄与は、質量中心からの羽根ベアリング点及び/又は羽根ベアリング軸の距離に依存している。従って、この距離を変更することにより、結果的に得られるトルクを極小化することができる。
【0034】
結果的に得られるトルクは、結合装置内において、引張及び/又は圧縮性の力などの、多様な力を生成する。これらの力は、結合装置を介してオフセット装置に伝達される。従って、本発明による羽根ベアリング点及び/又は羽根ベアリング軸の位置決めにより、オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸における平均力を極小化することができる。
【0035】
好ましくは、羽根は、特定の距離だけのシフトを生成するほどに不均一な質量分布を有する。この不均一な質量分布という単純な実装形態は、例えば、羽根の上部面上において更なる重み又は適切な被覆を適用することにより、回転軸とは対向していない羽根の上部面上の質量密度を増大させることを有する。従って、羽根の質量中心は、回転翼の回転軸との関係において、半径方向において更に外向きに変位している。従って、羽根形状を変更することなしに、本発明による効果を生成することができる。
【0036】
羽根ベアリング軸が、一方においては、翼弦に対して垂直である、且つ質量中心を通じて延在する平面により、且つ他方においては、翼弦に垂直である、且つリーディングエッジを通じて延在する平面により、閉じ込められた領域内において位置決めされている場合に有利である。この結果、結合装置内において引張力のみを取得することが可能となり、その結果、その高度に単純化された構造が可能となる。
【0037】
好ましくは、羽根ベアリング軸は、羽根プロファイルの外側において延在している。これは、羽根の安定性がベアリング装置によって損なわれないという利点を有する。
【0038】
本発明による推進装置が、推進装置の残りのコンポーネントから空力学的に1つ又は複数の羽根を分離するように設計された円板を更に有する場合に有利である。このような円板は、推進装置が相対的に高速において動作しているケースの場合に、特に有利である。
【0039】
好ましくは、推進装置は接続要素を更に有しており、この場合に、接続要素は、羽根がベアリング装置によって回動するべく取り付けられる地点において羽根と堅固に接続されており、且つ羽根の結合点において結合装置と運動自在に接続されている。接続要素は、特に好ましい方式によれば、レバーアームを有する。これは、羽根との間のレバーアームの堅固な接続を可能にする。接続要素は、好ましくは、結合装置を羽根に結合するための独立的な構造要素である。特に好適な方式によれば、レバーアームは、外側から羽根と接続されている。従って、ピッチ運動が、ベアリング装置を介して羽根に導入される。利点は、結合装置の結合点が、羽根プロファイルの外側において選択されうるという点にある。羽根自体の上部において、取付とピッチ運動の導入とのための場所が十分である。特に好適な方式によれば、羽根ベアリング点が、最大のプロファイル厚さを有する羽根の場所において位置決めされている。これは、発生する力が、羽根内において相対的に良好に分散されうるという利点を有する。又、その結果は、羽根及び/又はピッチメカニズム及び/又は推進装置の、改善された構造と重さの低減とである。
【0040】
具体的には、推進装置の残りの要素から空力学的に1つ又は複数の羽根を分離するように設計された円板を有する推進装置のケースにおいては、接続要素は、結合点において結合装置用の凹部が円板内において提供される必要がない、という更なる利点を有する。その理由は、このケースにおいては、結合点が円板との接触状態にならないように選択されうるからである。
【0041】
オフセット装置が、その中心を通じて偏心ベアリング軸が延在する、且つ偏心ベアリング軸を中心として回転するべく取り付けられた、オフセット円板を有する場合に有利であり、且つこの場合には、オフセット円板上の接続点は、その中心の外側において配置されている。複数の羽根のケースにおいては、オフセット円板は、それぞれの羽根用の対応する接続点を有する。接続点は、オフセット円板の周囲において均等に分散されている。又、オフセット円板の代わりに、所謂、オフセットピンを使用することもできる。複数の羽根のケースにおいては、それぞれの羽根は、同一のオフセットピンに結合されている。従って、個々の羽根の結合装置は、互いの上下にオフセットピンに結合されている。従って、オフセットピンが使用される場合には、オフセット円板の使用との比較において、推進装置の軸方向の延在が増大する。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、円形経路に沿って推進装置の回転軸を中心として回転されうる羽根と、結合装置及びベアリング装置を有するピッチメカニズムであって、羽根は、推進装置の回転軸に平行に羽根ベアリング軸を中心として回動するべくベアリング装置によって取り付けられている、ピッチメカニズムと、羽根が接続点において結合装置によって結合されているオフセット装置とを有する、航空機用の推進装置が提供されている。オフセット装置は、オフセット距離が非ゼロ値に設定された際に、円形経路に沿った推進装置の回転軸を中心とした羽根の回転が羽根のピッチ運動を実現するような方式により、結合装置がオフセット装置に羽根を結合させるように、推進装置の回転軸に平行な調節可能なオフセット距離において取り付けられる偏心ベアリング軸を定義している。羽根ベアリング軸は、羽根の質量中心を通じて延在する、且つ回転軸及び羽根の翼弦の両方に平行に延在する平面との関係において、特定の距離だけ、推進装置の回転軸に向かってシフトされている。
【0043】
羽根の質量中心を通じて延在する、且つ回転軸及び羽根の翼弦の両方に平行に延在する平面との関係において、特定の距離だけ、推進装置の回転軸に向かって羽根ベアリング軸をシフトさせることは、オフセット装置及び偏心ベアリング軸における平均力が極小化されるという利点を有する。従って、オフセット装置の、且つ偏心ベアリング軸の負荷が、更に低減される。羽根に係合する力に起因したオフセット装置に対して作用する負荷(一方においては、遠心力、他方においては、慣性力)の詳細な説明は、以上において本発明の第1の態様の有利な一実施形態との関連において既に更に付与されており、本発明の第2の態様との関係においても、これを参照されたい。言及されている2つの寄与は、質量中心からの羽根の羽根ベアリング点及び/又は羽根ベアリング軸の距離に依存している。従って、この距離を変化させることにより、結果的に得られる力を極小化することができる。この力は、結合装置を介してオフセット装置に伝達される。従って、質量中心からの特定の距離における羽根ベアリング点及び/又は羽根ベアリング軸の位置決めに起因して、オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸における平均力を極小化することができる。
【0044】
好ましくは、羽根は、特定の距離だけのシフトを生成するほどに不均一である質量の分布を有する。この不均一な質量分布という単純な一実装形態は、例えば、更なる重さ又は適切な被覆を羽根の上部面において適用することにより、回転軸とは対向していない羽根の上部面上の質量密度を増大させることを有する。従って、羽根の質量中心は、推進装置の回転軸との関係において半径方向において更に外向きに変位している。これは、質量中心よりも推進装置の回転軸に半径方向において近接している、質量中心との関係における羽根ベアリング軸と等価である。従って、羽根形状を変更することなしに、本発明による効果を生成することができる。
【0045】
羽根ベアリング軸が、一方において、翼弦に垂直である、且つ質量中心を通じて延在する平面により、且つ他方においては、翼弦に垂直である、且つリーディングエッジを通じて延在する平面により、閉じ込められた領域内において位置決めされる場合に有利である。この結果、結合装置内において引張力のみを得ることが可能となり、その結果、その高度に単純化された構造が可能となる。
【0046】
好ましくは、羽根ベアリング軸は、羽根プロファイルの外側において延在している。従って、羽根の安定性が、ベアリング装置によって損なわれない。
【0047】
好ましくは、結合装置は、オフセット装置を羽根の結合点と接続するコンロッドを有する。コンロッドは、構造的な観点において特に適する、本発明による結合装置の一実装形態を構成している。好ましくは、コンロッドの末端部は、オフセット装置に回転自在に結合されている。
【0048】
1つの推進装置内において、本発明の第1の態様の有利な実施形態を本発明の第2の態様の有利な実施形態と組み合わせることが特に有利である。
【0049】
好ましくは、本発明による推進装置は、個々に関連するピッチメカニズムを伴って、更なる羽根、特に好適な方式によれば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの羽根を有しており、この場合に、推進装置のすべての羽根及びピッチメカニズムは類似のタイプであり、且つ推進装置の羽根は、円形経路に沿って推進装置の回転軸を中心として均等に分散されている。従って、本発明の第1又は第2の態様による航空機用の推進装置は、好ましくは、円形経路に沿って推進装置の回転軸を中心として均等に分散された複数の羽根を有しており、これらのそれぞれは、円形経路に沿って推進装置の回転軸を中心として回転可能である。更には、好適な推進装置は、個々の結合装置及びベアリング装置を有する複数のピッチメカニズムを有する。それぞれの羽根は、推進装置の回転軸に平行に対応する羽根ベアリング軸を中心として回動するべく、対応するベアリング装置によって取り付けられている。更には、好適な推進装置は、それぞれの羽根が、対応する接続点において対応する結合装置によって結合されるオフセット装置をも有する。オフセット装置は、オフセット距離が非ゼロの値に設定された際に、円形経路に沿った推進装置の回転軸を中心とした羽根の回転が、羽根のピッチ運動を実現するような方式により、結合装置が関連する羽根をオフセット装置に結合するように、推進装置の回転軸に平行な調節可能なオフセット距離において取り付けられた偏心ベアリング軸を定義している。本発明によれば、それぞれの結合装置は、個々の結合点において対応する羽根に結合されており、この場合に、結合点のそれぞれは、オフセット距離がゼロに設定された際に、対応する羽根ベアリング軸及び対応する結合点を有する平面並びに関連する羽根ベアリング軸を通じた円形経路に対する対応する接平面が特定のゼロにならない角を含むように、位置決めされている。及び/又は、それぞれの羽根の羽根ベアリング軸は、羽根の個々の質量中心を通じて延在する、且つ推進装置の回転軸及び個々の羽根の翼弦の両方に平行に延在する平面との関係において、特定の距離だけ、推進装置の回転軸に向かってシフトされている。
【0050】
複数の羽根のケースにおいては、円形経路に沿った推進装置の回転軸を中心とした均等な分布は、本発明との関連において、羽根の羽根ベアリング点及び/又は羽根ベアリング軸が円形経路上においてほぼ位置決めされており、且つ2つの隣接する羽根の羽根ベアリング点及び/又は羽根ベアリング軸が、それぞれ、互いからほぼ同一の距離を有することを意味している。
【0051】
複数の羽根の使用は、推進装置の相対的に大きな推進力が生成されうるという利点を有する。更には、円形経路に沿った羽根の均等な分布は、オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸に作用する力の少なくとも部分的な取消を可能にしている。本発明の第1及び/又は第2の態様の有利な実施形態は、対応する方式により、複数の羽根を有する推進装置に適用することができる。結果的に得られる利点は、本発明の第1及び/又は第2の態様との関連において記述されているものに対応している。
【0052】
推進装置が、合計で5つの羽根を有する場合に特に有利である。計算は、異なる数の羽根を有する本発明による推進装置が、対応する結合装置からオフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸に伝達される力の調波値に対して、異なる方式により反応することを示している。発生する調波値が大きいほど、最終的なオフセット装置の負荷も大きくなる。合計で5つの羽根のケースにおいては、相対的に高次の調波値が強力に抑圧される。この抑圧は、本発明による羽根における結合装置の結合点の位置決めにより、及び/又は本発明による羽根ベアリング軸の位置決めにより、特定の方式により特に強化される。
【0053】
好ましくは、推進装置は、サイクロジャイロ回転翼である。但し、本発明は、サイクロジャイロにおける使用に制限されるものではない。又、例えば、所謂、超小型無人飛行機(MAV)、即ち、小さなサイズの無人ドローンにおいて、或いは有人の航空機において、本発明による推進装置を使用することもできる。更には、例えば液体などの、空気以外の流体との関連において本発明による推進装置を使用することもできる。
【0054】
以下においては、以下の図を利用し、本発明の好適な実施形態について説明することとする。添付図面は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明による複数の推進装置を有する航空機の斜視図である。
【
図3】特定のゼロにならない角を定義するための、本発明の第1の実施形態による、オフセット装置に結合されたピッチメカニズムの側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態による、結合装置を有するオフセット装置に結合された羽根の側面図である。
【
図5a】本発明による、羽根の結合点における結合装置の結合の機能モードの概略図である。
【
図5b】結合装置を伴ってオフセット装置に結合された羽根の側面図であり、この場合に、結合点は、オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸に対する負荷を低減するべく最適な位置において選択されている。
【
図5c】側面図における、4つの羽根を有する回転翼の本発明による推進装置であり、この場合に、結合点は、すべての羽根に伴って最適に位置決めされている。
【
図6】オフセット装置の負荷に対する羽根の結合点の位置の影響に関するパラメータの検討である。
【
図7a】本発明による、結合点の位置決めを実装するための接続要素を使用した第1の実施形態の第1の構造変形形態である。
【
図7b】本発明による、結合点の位置決めを実装するための羽根に対する接続を使用した第1の実施形態の第2の構造変形形態である。
【
図8】本発明の第2の態様による、結合装置を伴ってオフセット装置に結合された羽根の側面図である。
【
図9】オフセット装置における力に対する質量中心からの羽根ベアリング点の距離の影響に関するパラメータの検討である。
【
図10】調波振動に起因したオフセット装置に対する負荷を羽根の数の関数として示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、本発明による、複数の推進装置1を有する航空機100の斜視図を示している。図示の航空機100は、4つの推進装置1を有する。図示の推進装置1は、サイクロジャイロ回転翼である。従って、
図1に示されている航空機100は、サイクロジャイロとも呼称されうる。以下の図との関連において、推進装置について詳細に説明することとする。これらの推進装置1のそれぞれは、回転軸を中心として回転するべく取り付けられている。それぞれの推進装置1は、その長手方向軸を中心として回動するべく取り付けられた複数の羽根2を有する。従って、推進装置1の回転の際に、羽根2のピッチ角を変化させることができる。推進装置1の回転の速度と、羽根2のピッチ角の制御とを制御することにより、生成される推力の量及び方向を変化させることができる。航空機100は、その前面において2つの主推進装置1を有する。その後面において、航空機100は副推進装置1を有する。
【0057】
例えば、図示の航空機100は、航空機、有人航空機、ドローン、或いは所謂、超小型無人飛行機(MAV)であってよい。
【0058】
図2は、本発明による推進装置1を斜視図において示している。この推進装置1は、5つの羽根2と、個々に関連付けられたピッチメカニズム3と、オフセット装置4と、円板11とを有する。羽根2は、推進装置1の回転軸を中心として回転するべく取り付けられている。オフセット装置4は、推進装置1の回転軸との関係において偏心した方式で取り付けられた偏心ベアリング軸を定義している。
図2においては、オフセット装置は、オフセット円板として示されている。オフセット円板は、偏心ベアリング軸を中心として自由回転するべく取り付けられている。オフセット円板4の偏心ベアリングは、ピッチメカニズム3の偏心ベアリングを意味している。ピッチメカニズム3の偏心ベアリングは、推進装置1の回転軸を中心とした回転の際に、羽根2の位置の変更を実現する。図示のピッチメカニズム3のそれぞれは、結合装置31と、ベアリング装置33とを有する。それぞれの羽根2は、対応するベアリング装置33により、回動のために取り付けられている。羽根2は、推進装置1の回転軸に平行な軸を中心として取り付けられている。この軸は、羽根ベアリング軸33である。羽根2のベアリングは、例えば、所謂メインピンである、1つ又は複数のピンなどのベアリング手段により発生しうる。ベアリング手段は、好ましくは、ベアリング装置33の一部分である。羽根ベアリング軸33は、羽根2の質量中心を通じて延在することができる。但し、好ましくは、羽根2のベアリングは、質量中心から所定の距離において発生する。ピッチメカニズム3の結合装置31は、推進装置1の回転軸を中心として回転した際に、且つ偏心ベアリング軸が推進装置1の回転軸と一致しない場合には、羽根2がピッチ運動を実行するような方式により、羽根2をオフセット装置4に結合している。結合装置31の一方の終端部は、接続点においてオフセット装置4に結合されている。結合装置31の他方の終端部は、羽根2に結合されている。
【0059】
オフセット円板4は、自由回転するべく取り付けられている。オフセット円板4の回転軸は、好ましくは、推進装置1の回転軸に平行に、特定のオフセット距離において延在している。これは、推進装置1の回転軸との関係におけるオフセット円板4の偏心ベアリングを生成する。このオフセット距離は、調節可能であってよい。調節可能な偏心を有するオフセット装置4は、例えば、プラネタリギアにより実装することができる。オフセット距離が非ゼロである際に、羽根2のピッチ運動が結果的に得られる。
【0060】
羽根2に対する結合装置31の結合は、結合点32において発生している。これを目的として、結合装置31は、結合手段を有することができる。
図2に示されている推進装置1においては、結合装置31は、コンロッドのみならず、所謂ピッチリンクピンをも有する。このピンは、本発明による結合手段の構造設計である。
図2に示されている実施形態においては、結合点32における羽根2への結合装置31の結合は、羽根2との直接的な接続によってではなく、接続要素61を使用することにより実行されている。接続要素61の一端は、羽根2と堅固に接続されている。この接続は、好ましくは、羽根ベアリング点において発生している。接続要素61の他端は、結合装置/コンロッド31に結合されている。このケースにおいては、ピッチ運動は、コンロッド31を利用して結合要素を介して、羽根2内に接続要素61を介して間接的に導入されている。
【0061】
但し、本発明によれば、羽根2への結合装置31の直接的な結合も可能である。
【0062】
ピッチメカニズムの結合装置31が推進装置1の回転軸との関係において偏心した方式によって取り付けられているという事実に起因して、結合点32は、羽根2が推進装置1の回転軸を中心として回転した際に、円弧上において羽根ベアリング軸33との関係において運動する。これは、羽根2のピッチ運動を生成する。従って、これは、羽根ベアリング軸33を中心とした羽根2の振子運動である。
【0063】
更には、
図2に示されている推進装置1は、円板11を有する。この円板11は、推進装置1の残りのコンポーネントから空力学的に羽根2を分離するように設計されている。このような円板11は、推進装置1が相対的に高速で動作しているケースの場合に、特に有利である。
【0064】
本発明の第1の態様による本発明の一実施形態においては、結合装置31は、オフセット距離がゼロに設定された際に、羽根ベアリング軸33及び結合点32を有する平面並びに羽根ベアリング軸33を通じた円形経路に対する接平面が特定のゼロにならない角を含むように、位置決めされた結合点32において、羽根2に結合されている。
図2に示されている羽根2は、対称的なプロファイルを有する。本発明による結合装置31の詳細な説明は、特に、
図3との関連において見出されることになる。
【0065】
推進装置1は、互いに結合された2つの回転運動に起因して、推力を生成する。第1の回転運動は、推進装置1の回転軸を中心とした羽根2の回転である。この第1の回転運動は、円形経路に沿った推進装置の回転軸を中心とした羽根2の運動を結果的にもたらす。具体的には、羽根ベアリング軸33及び/又は羽根ベアリング点が、円形経路に沿って運動する。それぞれの羽根ベアリング軸33は、羽根2の長手方向軸に対して平行である。羽根2の長手方向軸は、推進装置1の回転軸に対して平行である。従って、羽根2の長手方向軸は、羽根ベアリング軸33に対しても平行である。推進装置1の推力の方向は、推進装置1の回転軸に対して垂直である。最適な推力生成を目的として、すべての羽根2は可能な限り、任意の時点において、流れの方向に対して方向付けられることを要する。これは、それぞれの羽根2が合計推力に対する最大寄与を生成することを保証している。その回転軸を中心とした推進装置1の回転の際に、それぞれの羽根2のピッチは、上述のピッチメカニズムに起因して、継続的に変更される。それぞれの羽根2は、ピッチ角及び/又は振子運動の周期的な変化を実行する。これは、ピッチ運動である。このプロセスにおいて、結合点32は、羽根ベアリング軸33を中心とした円弧上において運動する。これが、第2の回転運動である。
【0066】
生成される推力の量及び方向は、羽根2のピッチに依存している。従って、推進装置1の回転軸からのオフセット装置4の、及び/又はピッチメカニズムの偏心ベアリングの距離が、生成される推力の量に影響を及ぼすことになる。円周方向におけるオフセット装置4の偏心ベアリングのシフトにより、即ち、推進装置1の回転軸からの一定の距離により、生成される推力の方向が変更される。
【0067】
図2において、ピッチメカニズム3は、推進装置1の一側部においてのみ示されているが、安定性の理由から、推進装置の反対側においても、対応するピッチメカニズムを適用することが好都合でありうる。
【0068】
図3は、本発明の第1の態様による推進装置の一部分を側面図において示している。
図3は、ピッチメカニズム及びオフセット装置4を示している。ピッチメカニズムは、結合装置31及びベアリング装置33を有する。更には、円形経路52の一部分が示されており、これに沿って、羽根ベアリング軸33が運動している。又、前記円形経路に対する接線54も示されている。本発明の第1の態様は、羽根の特定の形状を伴うことなしに完全に機能する。従って、
図3には、特定の羽根プロファイルが描かれてはいない。本発明によれば、重要なことは、接線54との関係における結合点32の位置決めのみである。更に詳しくは、本発明によれば、接線54並びに羽根ベアリング点33及び結合点32を通じた接続直線によって含まれている角度w
αが極めて重大である。角度w
αは、
図3に示されているように、偏心が存在していない、即ち、オフセット距離がゼロに設定されている際の、オフセット装置の構成において判定されている。これは、推進装置の回転軸51が偏心ベアリング軸41と一致しているのと等価である。本発明による効果、即ち、オフセット装置4における及び/又は偏心ベアリング軸41における負荷の低減は、角度w
αがゼロにならない値をとる際に発生する。以下、
図6の関連において、これについて示すこととする。角度w
αの代わりに、一方においては、結合点32に対する羽根ベアリング軸33の接続ラインにより、且つ他方においては、結合点32から回転軸51までの接続ラインにより含まれている、角度ρを検討するのも好都合でありうる。
【0069】
図3には、所謂オフセット円板が示されていることに留意されたい。結合装置31は、オフセット円板のベアリング軸41から特定の距離を有する、オフセット円板の接続点42において結合されている。但し、オフセット円板は、回転のために取り付けられているという事実に起因して、ピッチ運動をいまだ結果的にもたらさない。オフセット円板4のベアリング軸41が、オフセット距離だけ、半径方向において推進装置の回転の軸51との関係においてシフトした際にのみ、ピッチ運動が発生する。
【0070】
最後に、
図3は、側面の断面として、本発明による推進装置の一部分を示していることに留意されたい。第3の、図示されてはいない次元における推進装置の延在を考慮した際に、恐らくは、w
αを定義する際に、直線の代わりに、平面を検討しなければならなくなるだろう。一般的な形態においては、結合点32は、オフセット距離がゼロに設定された際に、羽根ベアリング軸33及び結合点32を有する平面及び羽根ベアリング軸33を通じた円形経路52に対する接平面54が特定のゼロにならない角w
αを含むように、位置決めされるということが適用される。
【0071】
以下において、問題を簡単にするべく、2次元の寸法が参照されている場合には、恐らくは、それらが対応する3次元寸法をも代表するように言及されていることを意味している。
【0072】
図4は、本発明の第1の態様による推進装置の一部分を側面図において示している。
図4は、羽根2と、ピッチメカニズムと、オフセット装置4とを示している。ピッチメカニズムは、結合装置31と、ベアリング装置33とを有する。ここでは、図示を簡単にするべく、対称的なプロファイルを有する羽根2について検討することとする。羽根2は、ベアリング装置33を利用して羽根ベアリング軸33を中心として回動するべく、取り付けられている。結合装置31は、結合点32において羽根2に結合されている。結合点32は、羽根ベアリング軸33及び結合点32を有する平面並びに羽根ベアリング軸33を通じた円形経路に対する接平面54が、特定のゼロにならない角w
αを含むように位置決めされている。角度w
αは、偏心が存在していないオフセット装置の構成において、即ち、オフセット距離43がゼロに設定された際に判定されている。翼弦230は、羽根のリーディングエッジ210とトレーリングエッジ220の間の接続として定義されている。w
αの定義は、
図3との関連において既に上述したとおりである。図示の結合装置31は、一端により、結合点32において直接的に羽根に結合されている。これは、結合装置31が、例えば、ピンなどの結合手段を使用することにより、運動のために羽根2と直接的に接続されることを意味している。又、羽根2に対する結合装置31の間接的な結合も可能であり、これについては、
図7aとの関連において更に後述することとする。
【0073】
羽根2は、円形経路52を中心として推進装置の回転軸51に沿って回転することができる。回転の方向は、矢印53によって示されており、従って、これは、羽根が時計回りに回転することを仮定している。図示のオフセット装置4は、オフセット円板である。これは、偏心ベアリング軸41を中心として回転するべく取り付けられている。好ましくは、オフセット装置4は、この偏心ベアリング軸41を中心として自由回転することができる。オフセット装置4の偏心ベアリング軸41は、推進装置の回転軸51との関係において距離43だけ平行にシフトされている。この横方向の変位43に起因して、オフセット装置4は、回転軸51との関係において偏心した方式によって取り付けられている。オフセット円板4の結合点42において、結合装置41は、オフセット円板4に結合されている。
【0074】
図4に示されている羽根2の翼弦230は、回転軸51を中心とした回転の際に、羽根ベアリング点33によって表されている円形経路52に対する羽根ベアリング点33における接線54との関係において、角度αだけ傾斜している。これは、所謂ピッチ角である。ピッチ運動は、推進装置の回転軸51との関係におけるオフセット装置4の偏心ベアリング軸41の偏心ベアリングに起因して発生する。又、
図4は、オフセット装置4の偏心ベアリングに起因して、ピッチメカニズムの結合装置31の結合点42が、回転軸51との関係において偏心経路に沿って通過していることをも示している。その結果は、結合点42の半径方向距離が、羽根ベアリング軸33がそれに沿って運動する円形経路52との関係において、羽根2の回転の際に変化するというものである。従って、結合点32の位置も、この円形経路52との関係において変化する。その効果は、羽根2がピッチ運動αを実行するというものである。換言すれば、羽根2は、円形経路52との関係において上昇又は下降する。更に換言すれば、羽根2は、円形経路52に沿って運動しつつ、円形経路52を中心として振子運動を実行する。この振子運動及び/又は羽根2の上昇及び下降は、角度αによって示されている。これは、所謂、ピッチ角である。角度αは、円形経路52に対する羽根ベアリング点33における接線54及び翼弦230によって含まれている角度を示している。角度αが-50°~+50°の範囲において変化しうるように、ピッチ運動の最大振幅を選択することが有利である。このような角度は、適切な推力を生成するように、特に、サイクロジャイロ回転翼の場合に有利である。
【0075】
結合点32は、ピッチ運動αの際に、羽根ベアリング軸33を中心とした円弧上において運動する。この運動は、羽根2が、円形経路52に沿ったその運動の際に、基本調波振動に加えて、相対的に高次の調波値を有する、回転軸51を中心とした振子運動を実行することを結果的にもたらす。これらの相対的に高次の調波値は、ピッチ角αが大きくなるほど、より強力に表れる。-50°~+50°という上述の角度範囲のケースにおいては、相対的に高次の調波値は、もはや無視できない。
【0076】
本発明による結合点32の位置決めは、言及されている相対的に高次の調波値に対して影響を及ぼす可能性を提供している。
【0077】
図5aは、本発明による結合点32の位置決めが、ピッチ運動の相対的に高次の調波値に対する影響及びその低減に結び付く方式を概略的に示している。
図5aにおいては、ピッチメカニズムは、推進装置の回転軸51がオフセット装置の偏心ベアリング軸41とマッチングしているケースについて示されている。換言すれば、回転軸との関係における偏心ベアリング軸41の偏心がゼロである。更に換言すれば、ピッチ運動は、図示のケースにおいては発生しない。厳密に、この構成においては、角度w
αは、本発明に従って定義及び判定されている。結合点32における結合により、結合装置31によって羽根2に導入されるピッチ運動は、オフセット装置の偏心ベアリング軸41が、再度、推進装置の回転軸51から特定の距離だけ変位した際にのみ発生する。このケースにおいては、結合点32は、羽根ベアリング軸33を中心として円弧300に沿って運動している。
【0078】
角度wαの適切な選択のケースにおいては、一方において、結合点32を有する羽根ベアリング点33の接続と、他方においては、推進装置の回転軸51及び/又はオフセット装置の偏心ベアリング軸41との結合点32の接続の間に位置する角度ρは、直角である。
【0079】
角度wαが、一方において、羽根ベアリング点33と結合点32の間の接続ライン、並びに他方においては、推進装置の結合点32と回転軸51の間の接続ラインにより、含まれる角度ρが90°となるように選択された場合には、これは、結合点32における円弧300に対する接線からの円弧300の形状逸脱が対称的に分散されることを結果的にもたらす。これは、上述のように、直角の選択により、円弧300に対する接線との関係における結合点32の運動の対称化が生成されることを意味している。これは、相対的に高次の偶数調波値が、ピッチ運動において存在していないという事実と等価である。従って、ピッチ運動の相対的に高次の偶数調波値のすべてを角度wαを利用して極小化することができる。
【0080】
ピッチ運動の相対的に高次の調波値は、結合装置31内において力をもたらす。結合装置31は、これらの力をオフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸41に伝達している。これは、オフセット装置において負荷を生成する。又、ピッチ運動の相対的に高次の偶数調波値が、本発明による結合点32の位置決めにより極小化されるという事実に起因して、オフセット装置における及び/又は偏心ベアリング軸41における対応する負荷も極小化される。
【0081】
結合点32の最適な位置は、一方において、羽根ベアリング点33と結合点32の間の接続ライン、並びに他方においては、結合点32と推進装置の回転軸51の間の接続ラインによって含まれる角度ρが90°である際に、存在しているが、オフセット装置における負荷の低減は、必ずしも直角ρを結果的にもたらさないその他の角度w
αによっても発生する。対応するモデル計算について、
図6との関係において説明することとする。
【0082】
図5bは、本発明による推進装置の一断面を側面図において示しており、この場合に、結合点32は最適に位置決めされている。これは、図示の構成においては、ピッチ運動の相対的に高次の偶数調波値が可能な限り低減されることを意味している。
図5bは、非対称な羽根プロファイルを有する一般的なケースを示している。一方において、羽根ベアリング点33と結合点32の間の接続ライン、及び他方においては、結合点32と推進装置の回転軸51の間の接続ラインによって含まれている角度ρは、90°である。
図5aとの関連において上述したように、結合点32の位置決めと、従って、角度ρの設定とは、消失偏心性の前提の下において発生しており、即ち、オフセット装置4の偏心ベアリング軸41は、推進装置の回転軸51と一致している。
【0083】
オフセット装置4の有限の寸法に起因して、オフセット装置41に対する結合装置31の接続点42は、オフセット装置4の偏心ベアリング軸41と同様には一致していない。羽根2が、回転軸51を中心とした回転の際に、それに沿って運動する円形経路52の半径rは、通常、明瞭に、偏心ベアリング軸41からの接続点42の距離超である。従って、オフセット装置4における負荷の低減のいかなる損失をも被ることなしに、一方において、羽根ベアリング点33と結合点32の間の接続ライン、及び他方においては、結合点32とオフセット装置4の接続点42の間の接続ラインによって含まれる角度ρを最適化すること、即ち、これをほとんど90°に設定することも可能である。
【0084】
図5cは、4つの羽根2を有する回転翼の本発明による推進装置を側面図において示している。羽根2のそれぞれは、半径rを有する円形経路52上において推進装置の回転軸51を中心として運動することができる。それぞれの羽根2は、結合点42においてオフセット装置4に結合されている。図示の例においては、羽根2は、矢印53によって示されているように時計回りに回転している。
図5cにおいては、推進装置は、ゼロにならない偏心性を有するように示されており、即ち、偏心ベアリング軸41が、ゼロにならないオフセット距離43だけ回転軸51からシフトされている。既に更に上述したように、これは、羽根2のピッチ運動αを結果的にもたらす。それぞれの羽根2の結合点32は、最適に位置決めされている。これは、特に、
図3、
図5a、及び
図5bとの関係において記述したように、羽根ベアリング点33及び結合点32を通じた接続直線によりのみならず、結合装置31により含まれる角度が、ほとんど90に設定されたことを意味している。この角度は、偏心性が存在していない、即ち、オフセット距離がゼロに設定された際の、オフセット装置4の構成において判定されたものである。
【0085】
羽根2の特定の形状、ベアリング、又は特定のプロファイルは、―既に上述したように―、本発明による効果を実現するべく重要ではないが(極めて重要なことは、消失オフセット距離43を伴う、羽根ベアリング点33、結合点32、及び結合装置31の相対的な構成である)、
図5cに示されている実施形態においては、オフセット距離ゼロを伴う羽根2の翼弦は、円形経路52に対する接線54との関係におけるいかなる捩じれをも示さなかったものと仮定されている。この初期構成によれば、ピッチ運動の偶数調波値の極小化の発生を特に明確に示すことができる。その理由は、結合点32の最適な位置決めを伴う4つの羽根2を有する図示の回転翼によれば、対向する羽根2が、それぞれ、他方のものの負のピッチ角α及び/又は-αを有するように、ピッチ運動の偶数調波値の極小化が現れるからである。図示の位置においては、最も上部の羽根は、その最大正偏向αに位置しており、最も下部の羽根は、その最大負偏向-αに位置している。2つのその他の羽根は、ゼロ度の偏向を有する中央位置に位置している。
【0086】
完全を期すために、相対的に高次の偶数調波値は、実際の動作状態下においては極小化されるのみであり、且つ完全には消失しないという事実に起因して、対向する羽根は、個別に、他方のもののほぼ負の偏向値を有するのみであることに言及しておきたい。
【0087】
図6は、角度w
αの関数として、w
α=0の場合のオフセット装置における負荷のピーク-ピーク値A
vib,hub,0に正規化された、オフセット装置における負荷のピーク-ピーク値A
vib,hubを示すグラフ7を示している。ピーク-ピーク値は、オフセット装置の負荷の極小値と極大値の間の差を表しており、且つ従って、オフセット装置における負荷の振動の直接的な尺度である。縦軸71は、関数値A
vib,hub/A
vib,hub,0を示しており、横軸72は、度を単位として計測された角度w
αを示している。
【0088】
すべての力及びモーメントの更なる計算及び空力学的負荷の更なる検討を使用することにより、値wαの関数としてのオフセット装置における及び/又は偏心ベアリング軸における負荷を算出した。オフセット装置における負荷の低減を明瞭に認識することができる。具体的には、グラフ7の変化の結果として、オフセット装置における負荷の低減が、結合点が本発明に従って位置決めされるや否や発生していることが得られる。動作の際に、結合装置と、結合点と羽根ベアリング点の間の接続ラインとの間の角度は、あらゆる時点において、十分に鋭いものでなければならない。さもなければ、自己保持が発生することになり、且つもはや、ピッチメカニズムの機能が付与されなくなるであろう。経験は、50°の最大ピッチ角との関係において、捩れwαが、最大で20°に制限されることを示している。これは、本発明による現実的な使用状態下において、(偏心性が存在していないケースにおいて考慮される)円形経路に対する接線における結合装置の結合との比較における改善が、常に発生することを意味している。
【0089】
図6は、オフセット装置における負荷の極小値は、約10°の角度w
αにおいて発生することを示している。モデル計算の基礎をなす形状を考慮することにより、これは実際には、一方において、羽根ベアリング点から結合点までの接続ラインと、他方においては、結合点から推進装置の回転軸までの接続ラインとの間の直角にほぼ対応している。
【0090】
図7a及び
図7bは、結合装置31を羽根2に結合するための本発明による2つの変形を示している。
図7a及び
図7bの両方において、対称的な羽根プロファイルが示されている。オフセット距離は、ゼロに設定されるものと仮定している。
【0091】
図7aは、羽根2に対する結合装置31の間接結合を示している。これは、結合点32が、羽根2において直接的に位置決めされていないことを意味している。図示の結合点32は、羽根プロファイルの外側において位置決めされている。結合は、接続要素61を介して発生している。接続要素61は、レバーアームであってよい。接続要素は、一端により、羽根2に対して堅固に接続されている。接続要素61は、ベアリング装置33の支援により、好ましくは、所謂メインピンであるピンなどのベアリング手段により、羽根2と接続されることが示されている。接続要素61の他方の端部は、結合点32において結合装置31と運動自在に接続されている。結合点32は、角度w
αだけ、接線54から離れるように位置決めされている。
【0092】
羽根2において結合装置31を結合するための別個の構造要素としての接続要素61の使用に起因して、必要とされているのは、例えば、メインピンなどの1つのベアリング手段のみである。これは、羽根2の安定性が、1つの場所においてのみ、ベアリング装置33により損なわれることを意味しており、従って、例えば、更なるピンなどの、適切な結合手段によって羽根2において直接的に結合装置31を固定するなどのための第2の負荷が省略されている。接続要素61が、ベアリング装置33と、或いはベアリング手段と、且つ従って、羽根2と、外側において堅固に接続されているという事実に起因して、ピッチ運動が、ベアリング装置33内の及び/又はベアリング手段内のモーメントを介して、羽根2に導入される。
【0093】
図7aに示されている変形は、いくつかの利点をもたらす。第1に、接続手段61により、特に単純な方式により、羽根2における結合装置31の結合点32の最適な位置決めを実装することができる。接続要素61及び結合装置/コンロッド31によって含まれる角度ρが、約90°となるように、羽根ベアリング軸33を中心として接続要素61を捩じることにより、角度を簡単に調節することができる。従って、
図5a及び
図5bとの関係において記述されているように、結合点32のほとんど最適な位置が判定される。
【0094】
更には、接続手段61をも有するピッチメカニズムの合計重量は、羽根2に対する結合装置31の従来の直接的な結合を有するものよりも小さく、その理由は、力の導入のための、更なるピンなどの更なる結合手段が省略されているからである。更には、ピッチ運動のための力の導入が、ベアリング装置33を介して、及び/又はベアリング手段を介して、且つ従って、通常は、羽根2の最も厚い場所において発生している。従って、発生する力を羽根2内において相対的に良好に分散させることができる。この結果、推進装置の改善された構造及び更なる重量低減が可能となる。
【0095】
最後に、例えば、
図2において示されている(この場合には、参照符号11によって表記されている)ものと同様に、推進装置のコンポーネントの残りの部分からの羽根の空力学的な分離のための円板を提供する推進装置に伴って、更なる利点が結果的に得られる。接続要素61の支援による羽根2への結合装置31の結合は、羽根2における結合装置31の接続のための円板における更なる凹部の提供の必要性を回避している。従って、円板の相対的に単純な構造が可能になっている。更には、推進装置の空力学も改善されている。
【0096】
図7bは、羽根2に対する結合点32における結合装置31の結合のための接続要素62の更なる変形を示している。結合点32は、角度w
αだけ、接線54から離隔している。結合点32は、羽根プロファイルの外側において位置決めされている。接続要素62は、ベアリング装置33から遠い位置において、羽根の下部側において固定されている。結合装置33の一端は、接続要素の結合点32において運動するべく取り付けられている。
【0097】
図8は、本発明の第2の態様による推進装置の羽根2、ピッチメカニズム、及びオフセット装置4を示している。
図8に示されている羽根2のプロファイルは、非対称である。
図8に示されている本発明による推進装置の部分は、羽根ベアリング軸33が、羽根2の質量中心250から特定の距離w
gxにおいて配置されているという点において、
図4に示されている推進装置の対応する部分とは異なっている。更に詳しくは、羽根ベアリング軸33は、羽根の質量中心250を通じて、且つ羽根の回転軸51及び翼弦230の両方に対して平行に延在する平面260との関係において、推進装置の回転軸51に向かって、距離w
gxだけシフトされている。
図8においては、推進装置は、オフセット距離43だけ、回転軸51からシフトされた偏心ベアリング軸41を有するように示されている。
【0098】
翼弦230は、羽根2のリーディングエッジ210とトレーリングエッジ220の間の接続ラインとして定義されている。リーディングエッジ210及びトレーリングエッジ220は、プロファイルの外形とのカンバ線240の交差により付与されている。そして、カンバ線240は、翼弦230に対して垂直の羽根プロファイルの上部側241と下部側242の間の中心から構成されたラインとして定義されている。
【0099】
結合装置31及びベアリング装置33を有するピッチメカニズムを利用したピッチ運動αの生成は、
図4との関連において記述されているように発生する。羽根ベアリング軸33は、推進装置の回転軸51から距離rにおいて円形経路52に沿って回転する。従って、矢印53の方向における推進装置の回転の際の、羽根2における結合装置31の結合点32の、且つオフセット装置4における結合装置31の結合点42の運動に関する説明は、その繰り返しを省略する。又、ピッチメカニズムとの関連において上述したすべての内容は、
図8に示されている本発明の第2の態様による実施形態についても真である。
【0100】
図8においては、羽根ベアリング軸33は、羽根の質量中心250を通じて、且つ羽根の翼弦230に平行に延在する直線から(及び/又は、第3の次元における推進装置の延在が考慮される場合には、対応する平面260から)、距離w
gxだけ、回転軸51に向かってシフトされている。適切な寸法は、ここでは、回転軸51に垂直の平面上におけるその投影との関係において検討されたことを理解されたい。推進装置の3次元の延在を基礎とした際に、本発明によれば、羽根ベアリング軸33は、羽根の質量中心250を通じて、且つ羽根2の回転軸51及び翼弦230の両方に平行に延在している平面260との関係において、特定の距離w
gxだけ、回転軸51に向かってシフトされるということが適用される。更には、羽根ベアリング軸33は、翼弦230に垂直である、且つ質量中心250を通じて延在する平面との関係において、距離w
gzだけシフトされている。距離w
gzが、結合装置31内の負荷の平均値に対して大きな影響を及ぼすことが判明する。残りの部分については、w
gzは、オフセット装置4における負荷に対して無視可能な影響を有する。
【0101】
質量中心250から離れる方向の羽根ベアリング軸33のシフトw
gxは、羽根2におけるトルクの第1調波振動の低減を可能にしている。これについては、すぐに詳細に説明することとする。第1調波振動の低減は、オフセット装置4における平均力の低減と関連している。これについては、
図10との関連において詳細に説明することとする。
【0102】
以下においては、オフセット装置4における負荷に対する距離wgxの影響について説明することとする。羽根2は、羽根ベアリング軸33を中心として、及び/又は羽根ベアリング点33において、回動するべく取り付けられている。回転軸51を中心とした推進装置の回転の際に、羽根2は、2つの回転運動を実行する。第1の回転運動は、円形経路52に沿った羽根2の回転であり、第2のものは、ピッチ運動αに起因した羽根ベアリング軸33を中心とした羽根2の回転である。これらの回転運動のそれぞれは、羽根2に対する対応する力及び/又は対応するトルクを実現する。推進装置の回転軸51を中心とした羽根2の回転に起因して、遠心力FZが羽根2に対して作用する。この遠心力FZは、羽根2の質量中心250において作用する。Mが、羽根2の質量を表記し、rが、回転軸51からの羽根ベアリング点33の距離を示し、且つωが、推進装置の角速度を示している場合に、遠心力FZの量は、次式によって付与される。
FZ=M・r・ω2。
【0103】
そして、遠心力FZは、羽根2においてトルクTZを実現し、これは、羽根ベアリング軸33を中心として羽根2を回転させるべく試みる。このトルクTZは、次式によって付与され
TZ=FZ・l、
この場合に、lは、羽根ベアリング軸33からの質量中心250の距離であり、これは、lが、質量中心250に作用する遠心力FZのベクトル上における羽根ベアリング軸33からの垂線として付与されることを意味している。距離lは、羽根のピッチ角αに依存しており、換言すれば、距離lは、ピッチ角αの関数であり、更に換言すれば、距離lは、ピッチ運動αの関数である。従って、l=l(α)である。
【0104】
遠心力F
Zによって生成されるトルクT
Zに加えて、別のトルクT
Iが、羽根ベアリング軸33を中心としたピッチ運動αに起因して、羽根2に対して作用する。このトルクT
Iは、一方において、羽根ベアリング軸33に関係する羽根の質量慣性モーメントIに、且つ他方においては、ピッチ運動αの角加速度に依存している。トルクT
Iは、次式として付与され、
【数1】
ここで、角加速度は、ピッチ運動αの2次時間微分によって付与される。
【0105】
羽根に作用する合計トルクTは、次式によって付与される。
【数2】
【0106】
ピッチ角αにおける及び/又はピッチ運動αにおける合計トルクTのテーラー展開は、例えば、α
A=50°、即ち、-50°<α<+50°などの、現実的なピッチ運動αの振幅α
Aによれば、基本調波振動超のピッチ運動の調波値が、偏心ベアリング軸41上の平均力との関係において実質的に無視されうることを結果的にもたらす。更には、
図8に示されている形状の検討におけるテーラー展開の結果として、基本調波振動によって生成される羽根2に対する合計トルクTに対する寄与は、以下の項Rに比例することが得られる。
【数3】
【0107】
Icmは、羽根ベアリング軸33に関係する、質量慣性モーメントIからシュタイナーの定理を利用して算出されうる、羽根の質量中心250との関係において算出された質量慣性モーメントを表記している。wgzは、翼弦230に垂直である、且つ羽根ベアリング点33を通じて延在する、直線からの質量中心250の距離を示している。wgzは、モーメントの平均値に大きな影響を及ぼすことが判明する。従って、wgzは、結合装置31内の平均値に影響を及ぼすように使用することができる。この結合装置31は、形状に起因して、通常は、圧縮性負荷が捩じれによる障害を生成しうる、従って、臨界負荷印加状態を構成する非常に大きな構造要素である。いまや、パラメータwgzにより、圧縮力が動作の際にその内部において発生しないように、平均値のシフトにより、付勢を結合装置31内の延伸方向において実現することができる。従って、圧縮性の負荷の臨界負荷印加状態を考慮する必要がなく、且つこの構造要素は、格段に相対的に簡単な方式により設計することができる。更には、wgzは、偏心ベアリング軸41の負荷に対して大きな影響を有してはいない。円形経路52に沿った複数の結合装置31の対称的な分布に起因して、オフセット装置4の結合装置31内の平均値は相殺する。特に好適な方式によれば、wgzは、羽根ベアリング点が、質量中心250とリーディングエッジ210の間において位置するように選択されている。wgxは、羽根におけるトルクの第1調波値に対して大きな影響を及ぼす。この第1調波値の判定のためには、wgzを無視することができる。これは、wgzが、実際には最適化のための式に含まれているが(上述の項R)、これは、wgxとの比較において非常に小さな影響しか有していないという事実に起因している。これは、wgzが、R用の上述の式において、二乗によってのみ含まれているという事実によってわかる。
【0108】
又、この項Rが極小化される、即ち、R=0である場合には、羽根のトルクTも極小化される。羽根に対してトルクTによって作用された影響は、結合装置31を介して、オフセット装置4に伝達される。
図10との関連において、羽根2におけるトルクTの第1調波値が、オフセット装置4における平均力を結果的にもたらすことについて説明することとする。これは、距離w
gxの変動により、遠心力F
Z及び羽根2の質量慣性に起因して、オフセット装置4における負荷を極小化することができることを意味している。
【0109】
図9は、いずれもw
gx=0における力F
xに正規化された、x及び/又はz方向(グローバル座標系)における偏心ベアリング軸における平均力の2つの成分91、92の変化を示している。従って、成分の間の関係を読み取ることもできる。縦軸93は、関数値を示しており、横軸94は、センチメートルを単位として計測された距離w
gxを示している。
【0110】
このパラメータの検証においては、偏心ベアリング軸は、正のxの方向において偏向している。従って、x方向において、wgx=0において、大きな平均力が結果的に得られる。いまや、パラメータwgxにより、これを低減することができる。理想的な構成のケースにおいては、この成分は、場合によっては消失しうる。好ましくは、wgxは、成分Fx91が負になるように選択されている。従って、システムの安定化が結果的に得られ、その理由は、偏心ベアリング軸における平均力が、その偏向を妨げるからである。ここで、オフセット距離が増大された場合には、平均力も増大し、これが、この偏向を正確に妨げる。但し、wgx=0においては、成分Fx91は、偏向の方向において作用する。偏向が増大された場合には、平均力も偏向の方向において増大し、これは、不安定なプロパティに対応している。例えば、制御の障害の際に、偏心ベアリング軸が自由運動しうる場合には、回転翼は、wgx=0において、自身を破壊することになり、その理由は、平均力が、常に正の偏向方向において作用するからである。但し、力が偏向とは反対に方向付けられた場合には、これは、安定化効果を有する。オフセット装置における平均力の低減を明瞭に認識することができる。具体的には、グラフFxの変化は、羽根ベアリング軸及び/又は羽根ベアリング点が羽根の質量中心から距離wgxにおいて位置決めされるや否や、オフセット装置において平均力の低減が発生することを明らかにしている。これは、現実的な状態が基礎とされた際には、質量中心における羽根のベアリングとの比較における改善が、本発明に従って常に発生することを意味している。
【0111】
すべての力及びモーメントの更なる計算及び空力学的負荷の更なる検討を使用することにより、距離wgxの関数としてのオフセット装置における平均力を算出した。
【0112】
図9は、オフセット装置における平均力のF
x91のゼロ交差が、約3.4mmの距離w
gxにおいて発生することを明らかにしている。モデル計算の基礎をなす形状を考慮することにより、これは、
図8との関連において導出された項Rを極小化することによって得られた値に非常に良好に対応している。
【0113】
特に、
図4~
図6との関連において記述した、且つ本発明の第1の態様に関する実施形態は、羽根におけるトルクの振動の相対的に高次の偶数調波値の寄与の極小化を許容している。従って、例えば、5つの羽根などの複数の羽根が使用された際のオーバーラップに起因して、
図10との関連において詳細に示されているように、オフセット装置において、合計振動の極小化が結果的に得られる。
図8及び
図9との関連において記述した、且つ本発明の第2の態様に関する実施形態は、更に複数の羽根のオーバーラップに起因して、羽根におけるトルクの基本振動の、且つオフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸における平均力の極小化を許容している。
【0114】
従って、本発明の第1及び第2の態様を組み合わせることにより、推進装置のオフセット装置において、負荷を大幅に低減することができる。これは、角度wαの及び距離wgxの適切な選択により、オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸における振動の、且つ平均力の、且つ関係する負荷の大幅な低減が実現されることを意味している。
【0115】
図10は、オフセット装置及び/又は偏心ベアリング軸における負荷に対する調波値の影響を推進装置の羽根の数の関数として示す表を示している。パラメータn 81は、羽根の数を表記している。パラメータj 83は、個々の羽根の結果として得られるオフセット装置における負荷の調波値の序数を示しており、この場合に、負荷は、推進装置と共回転する基準システム内において算出されたものである。静止型基準システムへ進んだ場合には、その結果、すべての羽根の調波値j 83の再分配及びオーバーラップがもたらされることになる。静止型基準システムにおいて、パラメータk 82は、オフセット装置おける負荷の調波値の序数を表記している。この表は、静止型基準システム内のそれぞれの調波値k 82ごとに、同一のものを判定する、共回転する基準システム内の調波値j 83を示している。
【0116】
静止型基準システムの場合には、
図10の表から、以下の内容を導出することができる。羽根の数とは無関係に、共回転する基準システム内の基本調波値は、常にオフセット装置における平均力を結果的にもたらす。これは、84によって表記された列内のエントリによって明らかとなる。換言すれば、共回転する基準システム内の羽根の負荷における基本調波値j=1は、静止型基準システム内において、ゼロ次k=0の寄与によって特徴付けられた平均力を実現する。更には、異なる数の羽根を有する推進装置は、共回転する基準システム内の負荷における調波値j 83に対して異なる方式によって反応する。これは、静止型基準システムにおいては、異なる調波値kが消失するという事実から既に結果的に得られており、ここでは、消失する調波値は、空白フィールド87によって表記されている。
【0117】
図10の表は、最終的に、n=5つの羽根を有する推進装置が特に有利であることを明らかにしている。これは、まず、n=5のケースにおいては、序数k=1、2、3、4を有する負荷の調波値が静止型基準システム内において消失するという事実に起因している。大きな序数k=10及びk=15を有する調波値86は、強力に抑圧される。従って、
図10の表によれば、オフセット装置における負荷は、n=5つの羽根のケースにおいては、実質的に、参照符号84である平均力k=0、並びに参照符号85である第5次の調波値k=5の結果としてもたらされる。この表は、静止型基準システム内の平均力84が、共回転する基準システムの羽根内において及び/又は結合装置内において、基本調波振動j=1により実現されることを更に明らかにしている。この平均力が、
図8、
図9との関連において上述したように、羽根の質量中心から特定の距離における距離w
gxの位置決めにより極小化されうる。第5次の調波値は、
図10に従って、共回転する基準システム内の振動の第4のj=4次及び第6のj=6次の調波値から、結果的に得られる。これらは、相対的に高次の偶数調波値である。
図3~
図7に示されている実施形態との関連において記述したように、これらの値は、羽根ベアリング点を通じた接平面からの特定の角度における、羽根における結合装置の結合点の―本発明による―選択により、極小化することができる。
【0118】
これは、本発明による2つの態様が、5つの羽根を有する推進装置を有するオフセット装置における及び/又は偏心ベアリング軸における負荷の特に有利な低減を実現することを示している。
【符号の説明】
【0119】
参照符号のリスト
1 推進装置
100 航空機/サイクロジャイロ
11 推進装置1の円板
2 羽根
210 羽根2のリーディングエッジ
220 羽根2のトレーリングエッジ
230 羽根2の翼弦
240 羽根2のカンバ線
241 羽根2の上部側
242 羽根2の下部側
250 羽根2の質量中心
260 質量中心250を通じて通過し、回転軸51に平行に、且つ翼弦230に平行に延在する平面
3 ピッチメカニズム
31 ピッチメカニズム3/コンロッドの結合装置
32 羽根2に対する結合装置31の結合点
33 ピッチメカニズム3/羽根ベアリング軸/羽根ベアリング点のベアリング装置
300 ピッチ運動の円弧
4 オフセット装置
41 偏心ベアリング軸
42 オフセット装置4に対する結合装置31の結合点
43 推進装置1の回転軸51からの偏心ベアリング軸41のオフセット距離
51 推進装置1の回転軸
52 回転軸51を中心とした円形経路
53 推進装置1の回転の方向を示す矢印
54 羽根ベアリング軸33を通じた円形経路52に対する接平面/接線
61 羽根2に対する結合装置31の間接的結合用の接続要素
62 羽根2に対する結合装置31の結合用の接続要素
7 角度wαの関数としてのオフセット装置4における正規化された負荷のグラフ
71 オフセット装置4における正規化された負荷を表記する縦軸
72 度を単位とする角度wαを表記する横軸
81 羽根の数n
82 静止型基準システム内において示されたオフセット装置における負荷の調波値の序数k
83 推進装置と共に共回転する基準システム内において示されたオフセット装置における負荷の調波値の序数j
84、85、86 オフセット装置における負荷に対するゼロにならない寄与
87 消失寄与
9 質量中心250からの羽根ベアリング軸33の距離wgxの関数としてのオフセット装置4における正規化された平均力のグラフ
91 偏心ベアリング軸41における平均力のx成分
92 偏心ベアリング軸41における平均力のy成分
93 オフセット装置4における正規化された平均力を表記する縦軸
94 ミリメートルを単位とする距離wgxを表記する横軸
α ピッチ角/ピッチ運動
wα 円形経路に対する接線54と羽根ベアリング軸33に対する結合点32の接続ラインの間の角度
wgx 質量中心250を通じた、且つ翼弦230に平行な平面260からの羽根ベアリング軸33の距離
wgz 質量中心250を通じた、且つ翼弦230に垂直の平面からの羽根ベアリング軸33の距離
r 推進装置1の回転軸51からの羽根ベアリング軸33の距離
l 羽根ベアリング点33からの質量中心250の距離
ρ 羽根ベアリング軸33、結合点32、及び回転軸51の間の角度
FZ 羽根に作用する遠心力