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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】車両用吸音材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/08 20060101AFI20221012BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B60R13/08
G10K11/168
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020541011
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2019018633
(87)【国際公開番号】W WO2020049797
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018167670
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518106168
【氏名又は名称】MT-Tec合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 智行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 盛雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善秋
(72)【発明者】
【氏名】島田 聡
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-316366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0146758(US,A1)
【文献】特表2000-516175(JP,A)
【文献】特開2015-138055(JP,A)
【文献】特開2009-126496(JP,A)
【文献】特開2016-45450(JP,A)
【文献】特開2011-121549(JP,A)
【文献】実開昭54-26219(JP,U)
【文献】特表2017-533142(JP,A)
【文献】特開2006-160177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
B60N 2/00 - 90/00
G10K 11/16 - 11/178
A47C 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に取付られる車両用吸音材であって、
少なくとも繊維材と表皮材とが一体成形され、前記車室内の座席の背面に組付けられる本体部を備え、
前記本体部の少なくとも一部に設けられた吸音部は、
前部座席のヘッドレスト下面から下方への鉛直距離Elhが0.1~0.4mの範囲内で車室内に取り付けられるように形成され、通気抵抗AFR(Ns/m3)及び鉛直距離Elh(m)が、
210<AFR+10/Elh<3020
の関係を満たし、前記本体部の他の領域とは厚さが異なることによって前記関係を満たす通気抵抗AFRが設定されていること
を特徴とする車両用吸音材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用吸音材において、
前記吸音部は、
前記繊維材の前記表皮材とは反対側に非通気性材が重ねられていること
を特徴とする車両用吸音材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用吸音材において、
前記吸音部は、
前記繊維材と前記表皮材との間に5mm以上15mm以下の厚さの発泡層を有すること
を特徴とする車両用吸音材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用吸音材において、
前記吸音部は、
1000Hz以上の吸音率が1000Hz未満の吸音率よりも高くされていること
を特徴とする車両用吸音材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用吸音材において、
少なくとも前記本体部は、
前記座席の背面の外観の一部を構成するように組付けられること
を特徴とする車両用吸音材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用吸音材において、
前記吸音部は、
上部の厚さよりも下部の厚さが厚くされていること
を特徴とする車両用吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、車室内の意匠性を向上させつつ、不要な音を吸収する吸音材を使用することが知られている。また、消音のために、2つの繊維層の間に1つの通気性中間フィルム層を備え、厚みが4~12.5mmである領域において、全気流抵抗(AFRoverall:単位はNs/m)と全体密度ρ(kg/m)とが、1500<AFRoverall-10ρ<3800の関係を有する自動車用多層トリム部品が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-533142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のダッシュインシュレータやカーペットでは、通気抵抗が比較的高めに設定されて吸音効果を上げられており、搭乗者の会話の周波数帯においても吸音効果があった。そのため、同じ材料により形成された吸音材が搭乗者の耳の位置に近い前部座席の背面などに配置されると、後部座席の搭乗者が前部座席の搭乗者に対して話をする時に、後部座席の搭乗者の声が吸収されてしまい、会話がしづらくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、後部座席の搭乗者と前部座席の搭乗者との会話の明瞭性を維持しつつ、車室内の不要な音を吸収することができる車両用吸音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様にかかる車両用吸音材は、車室内に取付られる車両用吸音材であって、少なくとも繊維材と表皮材とが一体成形され、前記車室内の座席の背面に組付けられる本体部を備え、前記本体部の少なくとも一部に設けられた吸音部は、前部座席のヘッドレスト下面から下方への鉛直距離Elhが0.1~0.4mの範囲内で車室内に取り付けられるように形成され、通気抵抗AFR(Ns/m3)及び鉛直距離Elh(m)が、210<AFR+10/Elh<3020の関係を満たし、前記本体部の他の領域とは厚さが異なることによって前記関係を満たす通気抵抗AFRが設定されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様にかかる車両用吸音材において、前記吸音部は、前記繊維材の前記表皮材とは反対側に非通気性材が重ねられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様にかかる車両用吸音材において、前記吸音部は、前記繊維材と前記表皮材との間に5mm以上15mm以下の厚さのウレタン等の発泡素材を有することを特徴とする。また、本発明の一態様にかかる車両用吸音材において、前記吸音部は、1000Hz以上の吸音率が1000Hz未満の吸音率よりも高くされていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様にかかる車両用吸音材において、少なくとも前記本体部は、前記座席の背面の外観の一部を構成するように組付けられることを特徴とする。また、本発明の一態様にかかる車両用吸音材において、前記吸音部は、上部の厚さよりも下部の厚さが厚くされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、後部座席の搭乗者と前部座席の搭乗者との会話の明瞭性を維持しつつ、車室内の不要な音を吸収することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態にかかる車両用吸音材を表側から見た状態を例示する斜視図である。
図2】一実施形態にかかる車両用吸音材が車室内の前部座席の背面側に組み付けられる状態を例示する斜視図である。
図3】車両用吸音材の裏側の構成を例示する図である。
図4】一体成形されている本体部の断面を模式的に示す図である。
図5】固定部の概略を例示する斜視図である。
図6】(a)は、図1に示したA-A線における断面構造を示す図である。(b)は、図1に示したB-B線における断面構造を示す図である。
図7】(a)は、それぞれ図6(a)における端末部の第1拡大図である。(b)は、図6(a)における端末部の第2拡大図である。
図8】直線距離幅に対する実幅の比と、車両用吸音材における端末部の強度比との関係を実験により計測した結果を示すグラフである。
図9】車両用吸音材が車室内に取り付けられる位置を吸音部の配置によって例示する図である。
図10】車室内に配置される部材の吸音特性を例示するグラフである。
図11】車両用吸音材の第1変形例を裏側からみた構成例を示す図である。
図12】車両用吸音材の第2変形例を示す図である。
図13】(a)は、吸音部の第1変形例を示す図である。(b)は、吸音部の第2変形例を示す図である。
図14】吸音部の第3変形例を示す図である。
図15】吸音部の第4変形例を示す図である。
図16】吸音部の第1変形例~第3変形例の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、車両用吸音材の一実施形態を、図面を用いて説明する。図1は、一実施形態にかかる車両用吸音材1を表側から見た状態を例示する斜視図である。また、図2は、一実施形態にかかる車両用吸音材1が車室内の前部座席50の背面側に組み付けられる状態を例示する斜視図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、車両用吸音材1は、表側に取付穴が設けられることなく車室内に取付可能となるように、本体部10が一体成形されている。本体部10の略中央には、所定の通気抵抗が設定された吸音部12が設けられている。吸音部12は、図2に斜線で示した領域において、他の領域とは吸音特性が異なるように、厚さが他の領域よりも厚くされてもよい。例えば、吸音部12は、搭乗者の会話に対する吸音を抑えつつ、車室内のその他の不要な音を吸収するように吸音特性が設定される。
【0015】
また、本体部10は、周辺端末が圧縮されることにより端末部14が形成されている。さらに、端末部14は、例えば本体部10の側部及び上部において、折り曲げられた折曲部16が形成されている。
【0016】
そして、車両用吸音材1は、本体部10の側部及び上部に形成された折曲部16が前部座席50の背面周辺の丸みに合わせられ、前部座席50の背面側に沿って固定される。ここで、本体部10の下部に形成された端末部14は、前部座席50の下方に折り曲げられる。
【0017】
図3は、車両用吸音材1の裏側の構成を例示する図である。図3に示すように、吸音部12は、吸音機能を備える領域が広くなるように本体部10の略中央に配置されている。また、端末部14の裏側には、前部座席50に対して固定される複数の固定部18が例えば50~220mmの間隔で設けられている。そして、車両用吸音材1は、前部座席50に対して取り付けられるときに、固定部18と固定部18との間に負荷がかかってしまう。固定部18の形状・構造については、図5を用いて後述する。そして、端末部14は、複数の固定部18間で連続するように圧縮成形され、折曲部16が形成されている。また、吸音部12は、端末部14の内方に端末部14と段差を有して隣接し、かつ複数の固定部18間に設けられ、車室内の音を吸音する。また、折曲部16は、段差に略沿って、複数の固定部18間で連続するように、端末部14の少なくとも一部が折り曲げられている。
【0018】
図4は、一体成形されている本体部10の断面を模式的に示す図である。図4に示すように、本体部10は、例えば第1繊維材100、第2繊維材102、PEパウダー104及び表皮106が重ねられて一体成形されることによって構成されている。
【0019】
第1繊維材100は、例えば900g/mのPET(ポリエチレンテレフタレート)によって形成されている。第2繊維材102は、例えば200g/mのPETによって形成されている。PEパウダー104は、例えば100g/mの粉体のPE(ポリエチレン)である。表皮106は、例えば150g/mのトリコットなどの表皮材である。
【0020】
図5は、固定部18の概略を例示する斜視図である。固定部18は、例えばプラスチックによって形成されており、接合突起180の下面に接着面182が設けられた構成となっている。接合突起180は、前部座席50の背面側に設けられる複数の接合部(図示せず)に対し、接着剤が用いられることなく、材料の弾性により機械的に結合可能にされている。接着面182は、固定部18が車両用吸音材1の端末部14に対して接着剤で固定されるために設けられている。
【0021】
次に、本体部10の構造について詳述する。
【0022】
図6は、本体部10の断面構造を示す図である。図6(a)は、図1に示したA-A線における断面構造を示す図である。図6(b)は、図1に示したB-B線における断面構造を示す図である。また、図7(a),(b)は、それぞれ図6(a)における端末部14の拡大図である。
【0023】
図6(a)に示すように、吸音部12は、端末部14のように圧縮されておらず、本体部10の略中央に設けられ、所定の通気抵抗が設定されている。また、図6(b)に示すように、吸音部12は、端末部14のように圧縮されておらず、本体部10の略中央が図6(a)に示された部分よりも厚さが厚くされ、図6(a)に示された部分とは吸音特性が変えられている。
【0024】
また、端末部14は、位置X及び位置Yにおいて折り曲げられ、端部が湾曲させられることにより、折曲部16が形成されている。ここで、折曲部16は、図7(a)に示したように、位置Xで折り曲げられた部分において、直線距離幅L1に対する実幅(実長さ)L2の比が1よりも大きく1.3よりも小さくなるようにされている。つまり、折曲部16は、段差から端末部14の外側端までの直線距離幅に対する実幅の比が1よりも大きく1.3よりも小さい。段差は複数設けられ、吸音部12側の段差が端末部14側の段差より高くなっている。
【0025】
また、折曲部16は、図7(b)に示したように、位置X及び位置Yで折り曲げられた部分において、直線距離幅L1に対する実幅L2の比が1よりも大きく1.3よりも小さくなるようにされている。つまり、折曲部16は、幅方向で複数回折り曲げられている場合、折り曲げられた各々の直線距離幅L1に対する実幅L2の比、及び全体の直線距離幅L1に対する実幅L2の比がそれぞれ1よりも大きく1.3よりも小さくなるようにされている。
【0026】
図8は、直線距離幅L1に対する実幅L2の比と、車両用吸音材1における端末部14の強度比との関係を実験により計測した結果を示すグラフである。なお、図8においては、端末部14に設けられた固定部18と固定部18との間隔を58mmとし、この58mmを支点の間隔として、端末部14に荷重をかけた場合の変位量を計測し、この場合の直線距離幅L1に対する実幅L2の比が1であるときの強度を基準(強度=1)として、端末部14の強度比が示されている。ここで、直線距離幅L1に対する実幅L2の比が1であるときは、端末部14が折り曲げられることなく平面状であることを示している。
【0027】
よって、図8にAで示された曲線は、支点の間隔(固定部18と固定部18との間隔)を58mmとしたときの、直線距離幅L1に対する実幅L2の比と、端末部14の強度との関係を示している。また、図8にBで示された曲線は、支点の間隔を40mmとしたときの、直線距離幅L1に対する実幅L2の比と、端末部14の強度との関係を示している。また、図8にCで示された曲線は、支点の間隔を200mmとしたときの、直線距離幅L1に対する実幅L2の比と、端末部14の強度との関係を示している。
【0028】
図8に示すように、端末部14は、支点の間隔(固定部18と固定部18との間隔)の長短にかかわらず、直線距離幅L1に対する実幅L2の比が約1.3となるときに、強度が最も高くなる傾向があることが確認された。このため、端末部14は、直線距離幅L1に対する実幅L2の比が1よりも大きく1.3よりも小さくなるように形成されている。
【0029】
次に、車両用吸音材1が車室内に取り付けられる位置と、車両用吸音材1の吸音特性とについて説明する。
【0030】
図9は、車両用吸音材が車室内に取り付けられる位置を吸音部の配置によって例示する図である。例えば、図1に示した車両用吸音材1は、本体部10の略中央に設けられた吸音部12が、前部座席50のヘッドレスト500の下面から下方への鉛直距離Elhが0.1~0.4mの範囲内で車室内に取り付けられるように形成されている。
【0031】
また、前部座席50と後部座席52との間で、後部座席52側のドアなどの内側に車両用吸音材が設けられる場合にも、当該車両用吸音材の吸音部20は、前部座席50のヘッドレスト500の下面から下方への鉛直距離Elhが0.1~0.4mの範囲内で車室内に取り付けられるようにされている。また、ダッシュボード54と前部座席50との間で、前部座席50のドアなどの内側や、ダッシュボード54の表面に車両用吸音材が設けられる場合にも、図9に示すように、車両用吸音材それぞれの吸音部20、吸音部30は、前部座席50のヘッドレスト500の下面から下方への鉛直距離Elhが0.1~0.4mの範囲内で車室内に取り付けられるようにされている。
【0032】
そして、前部座席50及び後部座席52の背もたれ部分が、垂直に立てられたり、倒されて、例えば約0~30度の範囲で傾きが変えられることによりヘッドレスト500又はヘッドレスト520の位置が変化したとしても、鉛直距離Elhは0.1~0.4mの範囲内であるとする。
【0033】
そして、吸音部12は、通気抵抗AFR(Ns/m)及び鉛直距離Elh(m)が、下式(1)を満たすように構成されている。
【0034】
210<AFR+10/Elh<3020 ・・・(1)
なお、本願における車両用吸音材1は、ダッシュインシュレータ40及びカーペット42を含まないものとする。ダッシュインシュレータ40は、車室内の乗車空間とエンジンルームなどとの間に設けられ、搭乗者の目につきにくいために表皮106を備えておらず、一般的な大人の搭乗者の耳や口の位置から遠い位置に配置されているためである。また、カーペット42も、一般的な大人の搭乗者の耳や口の位置から遠い位置に配置されているためである。すなわち、ダッシュインシュレータ40及びカーペット42は、搭乗者の会話の明瞭性に対する影響度が相対的に低いと考えられている。
【0035】
図10は、車室内に配置される部材の吸音特性を例示するグラフである。図10において、Aの曲線は、鉛直距離Elhが小さく、通気抵抗AFRが200(Ns/m)である場合に設定される吸音部12の吸音特性を示している。また、Bの曲線は、鉛直距離Elhが大きく、通気抵抗AFRが3000(Ns/m)である場合に設定される吸音部12の吸音特性を示している。また、Cの曲線は、比較例としてのカーペット42の通気抵抗AFRが1500(Ns/m)以上である場合の吸音特性を示している。
【0036】
図10に示すように、吸音部12は、1000Hz以上の吸音率が1000Hz未満の吸音率よりも高くなるようにされている。ここでは、搭乗者の会話の明瞭性に対する影響度が大きな周波数帯が1000Hz未満であるとしているためである。また、1000Hz以上の周波数帯は、不要な車室内の音が多く含まれているとして、吸音率が高くされている。
【0037】
このように、吸音部12、吸音部20及び吸音部30は、それぞれ鉛直距離Elhが0.1~0.4mの範囲内となるように車室内に配置されることにより、一般的な大人の搭乗者の耳や口の位置よりも所定範囲内の下方に配置されることとなり、上述した吸音特性によって搭乗者の会話に対する吸音を抑えつつ、車室内のその他の不要な音を吸収することができる。
【0038】
次に、車両用吸音材1の変形例について説明する。図11は、車両用吸音材1の第1変形例(車両用吸音材1a)を裏側からみた構成例を示す図である。以下、実質的に同一の構成には同一の符号が付してある。
【0039】
図11に示すように、車両用吸音材1aは、折曲部16の端部にファスナー19が設けられている。ファスナー19は、車両用吸音材1aを構成する各部に対し、任意の部材又は所定の部材の着脱を可能にしている。例えば、ファスナー19は、表皮106を交換可能に着脱するように構成されていてもよい。
【0040】
図12は、車両用吸音材1の第2変形例(車両用吸音材2)を示す図である。図12に示すように、車両用吸音材2は、例えば、後部座席52側のドア60に取り付けられ、図9に示した吸音部20を備えるように構成されている。
【0041】
次に、吸音部12の変形例について説明する。
【0042】
図13は、吸音部12の変形例を示す図である。図13(a)は、吸音部12の第1変形例(吸音部12a)を示す図である。図13(b)は、吸音部12の第2変形例(吸音部12b)を示す図である。
【0043】
図13(a)に示すように、吸音部12aは、例えば第3繊維材108、発泡層としての硬質ウレタン110、PEパウダー104及び表皮106が重ねられて一体成形されることによって構成されている。
【0044】
第3繊維材108は、例えば1200g/mのPETによって形成されている。硬質ウレタン110は、第3繊維材108と表皮106との間に挟まれて、厚さが5mm以上15mm以下にされている。例えば、硬質ウレタン110は、厚さが10mmにされている。
【0045】
図13(b)に示すように、吸音部12bは、例えば第4繊維材112、発泡層としての軟質ウレタン114、PEパウダー104及び表皮106が重ねられて一体成形されることによって構成されている。
【0046】
第4繊維材112は、例えば600g/mのPETによって形成されている。軟質ウレタン114は、第4繊維材112と表皮106との間に挟まれて、厚さが5mm以上15mm以下にされている。例えば、軟質ウレタン114は、厚さが10mmにされている。
【0047】
なお、吸音部12a及び吸音部12bは、いずれも繊維以外の部材である厚さが5mm以上の発泡層としてのウレタンを備えており、通気抵抗が所定値以上になるようにされている。例えば、ウレタンの厚さが1~2mmのように、5mm未満である場合には、通気抵抗が小さく、音響特性に対する影響が小さくなってしまうためである。なお、発泡層はウレタンに限らず、周知の発泡材料で成形できるものであればそれでもよい。
【0048】
図14は、吸音部12の第3変形例(吸音部12c)を示す図である。図14に示すように、吸音部12cは、例えば第4繊維材112、PEパウダー104及び表皮106が重ねられて一体成形されることによって構成されている。
【0049】
図15は、吸音部12の第4変形例(吸音部12d)を示す図である。図15に示すように、吸音部12dは、吸音部12cに対して、第4繊維材112の表皮106とは反対側に非通気性材120が重ねられることによって構成されている。例えば、非通気性材120は、非通気性の薄膜フィルムである。
【0050】
なお、上述した吸音部12a、吸音部12b及び吸音部12cに対しても、非通気性材120が設けられていてもよい。
【0051】
次に、吸音部12の第1変形例~第3変形例(吸音部12a、吸音部12b、吸音部12c)の特性について説明する。
【0052】
図16は、吸音部12の第1変形例~第3変形例(吸音部12a、吸音部12b、吸音部12c)の特性を示す図である。図16に示すように、吸音部12aは、面密度1671g/m、厚さ24.1mm、通気抵抗AFR900Ns/mとなっている。吸音部12bは、面密度1323g/m、厚さ23.1mm、通気抵抗AFR270Ns/mとなっている。吸音部12cは、面密度1065g/m、厚さ12.1mm、通気抵抗AFR240Ns/mとなっている。
【0053】
このように、一実施形態にかかる車両用吸音材によれば、車両用吸音材の意匠性を生かしながら、前部座席に座っているドライバーと隣の前部座席に座っている搭乗者との会話や、前部座席に座っている搭乗者と後部座席に座っている搭乗者との会話に対して明瞭性を高めつつ、車室内の不要な音を低減することができる。
【符号の説明】
【0054】
1,1a,2・・・車両用吸音材、10・・・本体部、12,12a,12b,12c,12d,20,22,30・・・吸音部、14・・・端末部、16・・・折曲部、18・・・固定部、19・・・ファスナー、50・・・前部座席、52・・・後部座席、54・・・ダッシュボード、100・・・第1繊維材、102・・・第2繊維材、104・・・PEパウダー、106・・・表皮、108・・・第3繊維材、110・・・硬質ウレタン、112・・・第4繊維材、114・・・軟質ウレタン、120・・・非通気性材、180・・・接合突起、182・・・接着面、500,520・・・ヘッドレスト

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16