(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】コア、ステータ、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 21/24 20060101AFI20221012BHJP
H02K 1/02 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02K21/24 Z
H02K1/02 A
(21)【出願番号】P 2020552944
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019035080
(87)【国際公開番号】W WO2020084926
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2018202373
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】上野 友之
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 聖
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠一
(72)【発明者】
【氏名】福永 由加
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-030334(JP,A)
【文献】特開2017-229191(JP,A)
【文献】特開2013-017312(JP,A)
【文献】特開2006-014436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/14
H02K 1/02
H02K 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップ型の回転電機に用いられるコアであって、
環状のバックヨークと、
前記バックヨークの第一平面に対して垂直な軸方向に突出する複数のティースと、を備え、
前記バックヨークは、前記第一平面とは反対側の面である第二平面を有し、
前記複数のティースは前記第一平面の周方向に間隔をあけて設けられ、
前記バックヨークと前記ティースとは一体成形された圧粉成形体で構成されており、
前記ティースと前記バックヨークとの角部に、前記ティースの周面と前記バックヨークの前記第一平面との間をつなぐ第一曲面部を有し、
前記第一曲面部と前記第二平面との距離は、前記第一平面から前記ティースの周面に向けて大きくなり、
前記第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上1.5mm以下である、
コア。
【請求項2】
前記第一平面と前記バックヨークの外周面との間をつなぐ外側曲面部と、
前記第一平面と前記バックヨークの内周面との間をつなぐ内側曲面部と、を有し、
前記外側曲面部及び前記内側曲面部の各曲率半径が0.5mm以上である請求項1に記載のコア。
【請求項3】
前記外側曲面部の曲率半径と前記内側曲面部の曲率半径とが異なる請求項2に記載のコア。
【請求項4】
前記バックヨークの外周面及び内周面の少なくとも一方に、軸方向に沿って延びる直線部を有し、
前記直線部の長さが前記バックヨークの厚みの15%以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコア。
【請求項5】
前記バックヨークの軸中心から外周面までの径方向の寸法と、前記バックヨークの軸中心から前記ティースの外周側に位置する面までの径方向の寸法との差が6.0mm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコア。
【請求項6】
前記バックヨークの軸中心から前記ティースの内周側に位置する面までの径方向の寸法と、前記バックヨークの軸中心から内周面までの径方向の寸法との差が7.0mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコア。
【請求項7】
前記バックヨークの外周面及び内周面の少なくとも一方に部分的に設けられ、径方向に突出する凸部又は径方向に凹む凹部を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコア。
【請求項8】
前記圧粉成形体は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成され、
前記軟磁性粒子が、純鉄、又は、Fe-Si系合金、Fe-Al系合金、Fe-Cr-Al系合金及びFe-Cr-Si系合金から選択される少なくとも一種の鉄基合金からなる鉄基粒子である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコア。
【請求項9】
前記絶縁被覆がリン酸塩被覆を含む請求項8に記載のコア。
【請求項10】
前記圧粉成形体の相対密度が90%以上である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のコア。
【請求項11】
アキシャルギャップ型の回転電機に用いられるコアであって、
環状のバックヨークと、
前記バックヨークの第一平面に対して垂直な軸方向に突出する複数のティースと、を備え、
前記バックヨークは、前記第一平面とは反対側の面である第二平面を有し、
前記複数のティースは前記第一平面の周方向に間隔をあけて設けられ、
前記バックヨークと前記ティースとは一体成形された圧粉成形体で構成されており、
前記ティースと前記バックヨークとの角部に、前記ティースの周面と前記バックヨークの前記第一平面との間をつなぐ第一曲面部を有し、
前記第一曲面部と前記第二平面との距離は、前記第一平面から前記ティースの周面に向けて大きくなり、
前記第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上1.5mm以下であり、
前記第一平面と前記バックヨークの外周面との間をつなぐ外側曲面部と、
前記第一平面と前記バックヨークの内周面との間をつなぐ内側曲面部と、を有し、
前記外側曲面部及び前記内側曲面部の各曲率半径が0.5mm以上であり、
前記バックヨークの外周面及び内周面の少なくとも一方に、軸方向に沿って延びる直線部を有し、
前記直線部の長さが前記バックヨークの厚みの15%以上である、
コア。
【請求項12】
アキシャルギャップ型の回転電機のステータであって、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のコアと、
前記コアの各ティースに配置されるコイルと、を備える、
ステータ。
【請求項13】
ロータとステータとを備え、前記ロータと前記ステータとが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記ステータが請求項12に記載のステータである、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コア、ステータ、及び回転電機に関する。
本出願は、2018年10月26日付の日本国出願の特願2018-202373号に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2は、ロータとステータとが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型のモータ(回転電機)を開示する。この種の回転電機に用いられるステータは、円環状のバックヨークと、バックヨークから軸方向に突出する複数のティースとを有するコアと、各ティースに配置されるコイルとを備える。複数のティースは、バックヨークの一面(上面)に周方向に間隔をあけて設けられる。
【0003】
特許文献1には、バックヨークとティースとが一体成形された圧粉成形体でコアを構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-142095号公報
【文献】特開2017-229191号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示のコアは、
アキシャルギャップ型の回転電機に用いられるコアであって、
環状のバックヨークと、
前記バックヨークの第一平面に対して垂直な軸方向に突出する複数のティースと、を備え、
前記複数のティースは前記第一平面の周方向に間隔をあけて設けられ、
前記バックヨークと前記ティースとは一体成形された圧粉成形体で構成されており、
前記ティースと前記バックヨークとの角部に、前記ティースの周面と前記バックヨークの前記第一平面との間をつなぐ第一曲面部を有し、
前記第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上1.5mm以下である。
【0006】
本開示のステータは、
アキシャルギャップ型の回転電機のステータであって、
本開示のコアと、
前記コアの各ティースに配置されるコイルと、を備える。
【0007】
本開示の回転電機は、
ロータとステータとを備え、前記ロータと前記ステータとが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記ステータが本開示のステータである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコアの概略上面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るコアを成形する金型の一例を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、金型でコアを成形した状態を示す部分拡大概略断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るステータの概略上面図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る回転電機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
アキシャルギャップ型の回転電機の効率を向上させることが望まれている。回転電機の効率を向上させる観点から、回転電機に用いられるコアの磁気特性を改善することが望まれる。
【0010】
本開示は、磁気特性を改善できるコアを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記コアを備えるステータを提供することを目的の一つとする。更に、本開示は、上記ステータを備える回転電機を提供することを目的の一つとする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示のコアは磁気特性を改善できる。また、本開示のステータはコアの磁気特性に優れる。更に、本開示の回転電機は効率に優れる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
本発明者らは、アキシャルギャップ型の回転電機に用いられるコアの磁気特性について鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。
【0013】
アキシャルギャップ型の回転電機において、コイルに電流を流すと、コアに磁束が流れて磁路が形成される。コアに流れる磁束が減少すると、回転電機のトルクが低下する。回転電機のコアにおいて、ティースでは軸方向に磁束が流れ、バックヨークでは周方向に磁束が流れる。そのため、ティースとバックヨークとの間で磁束の方向が変わる。
【0014】
従来の圧粉成形体からなるコアでは、特許文献2にも記載があるように、金型を用いて成形する際、2つの下パンチを用い、ティースの端面と、ティースが突出するバックヨークの第一平面とをそれぞれ異なる下パンチで成形することが一般的である。この場合、パンチ強度などの観点から、ティースの周面と、ティースが突出するバックヨークの第一平面とが直交するように成形される。このようなコアでは、ティースの周面とバックヨークの第一平面とが直交するため、ティースとバックヨークとの間の角部を磁束が流れる際、磁束の一部がコアの外側を通ってティースの周面とバックヨークの第一平面との間をショートカットすることがある。つまり、ティースとバックヨークとの角部に漏れ磁束が発生し易い。回転電機のコアに漏れ磁束が発生すると、トルクの低下を招いたり、コアの損失が増大して効率の低下を招く。
【0015】
本発明者らは、段付きダイを用いて、ティースの端面を下パンチで、バックヨークの第一平面をダイで成形することを試みた。これにより、ティースとバックヨークとの角部に第一曲面部を形成可能とし、上述した従来のコアに比較して、ティースとバックヨークとの角部に発生するコアの漏れ磁束を低減できることを見出した。これは、ティースとバックヨークとの角部に第一曲面部を形成することによって、ティースの周面とバックヨークの第一平面との間をショートカットする漏れ磁束が減少するためである。そして、ティースとバックヨークとの角部に第一曲面部を有するコアをアキシャルギャップ型の回転電機に用いることで、漏れ磁束によるトルクの低下やコアの損失を抑制できる。したがって、上記第一曲面部を有することで、コアの磁気特性を改善でき、ひいては回転電機の効率を向上させることが可能である。
【0016】
本開示は、以上の知見に基づいてなされたものである。最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0017】
(1)本開示の実施形態に係るコアは、
アキシャルギャップ型の回転電機に用いられるコアであって、
環状のバックヨークと、
前記バックヨークの第一平面に対して垂直な軸方向に突出する複数のティースと、を備え、
前記複数のティースは前記第一平面の周方向に間隔をあけて設けられ、
前記バックヨークと前記ティースとは一体成形された圧粉成形体で構成されており、
前記ティースと前記バックヨークとの角部に、前記ティースの周面と前記バックヨークの前記第一平面との間をつなぐ第一曲面部を有し、
前記第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上1.5mm以下である。
【0018】
上記本開示のコアは、ティースとバックヨークとの角部に第一曲面部を有することで、ティースとバックヨークとの角部に発生する漏れ磁束を低減できる。よって、上記コアは磁気特性を改善できる。第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上であることで、漏れ磁束を効果的に低減できる。また、第一曲面部の曲率半径が1.5mm以下であることで、ティースに配置されるコイルのスペースを確保して、コイルの占積率の向上を図ることができる。これにより、コイルのターン数の減少を抑制することができるので、回転電機のトルクの低下を抑制できる。
【0019】
(2)上記コアの一形態として、
前記第一平面と前記バックヨークの外周面との間をつなぐ外側曲面部と、
前記第一平面と前記バックヨークの内周面との間をつなぐ内側曲面部と、を有し、
前記外側曲面部及び前記内側曲面部の各曲率半径が0.5mm以上であることが挙げられる。
【0020】
圧粉成形体からなる上記コアは、金型で軟磁性粉末を圧縮して成形する。具体的には、ティースを下パンチで、バックヨークをダイで成形することが挙げられる。金型を用いてコアを成形する際の成形圧によって、金型、特にダイの角部に曲げ応力が集中し易く、金型の角部に亀裂が発生することがある。上記形態は、バックヨークの外側曲面部及び内側曲面部の各曲率半径が0.5mm以上であることで、金型の角部における応力集中を緩和できる。よって、上記形態は金型の破損を抑制できる。外側曲面部及び内側曲面部の各曲率半径の上限は、特に限定されないが、例えば5.0mm以下であることが挙げられる。外側曲面部及び内側曲面部の各曲率半径が大きくなると、バックヨークの厚みに対してバックヨークの外周面及び内周面の直線部の長さが短くなる。外側曲面部及び内側曲面部の各曲率半径が5.0mm以下であれば、バックヨークの外周面及び内周面の直線部の長さを確保し易い。
【0021】
(3)上記(2)に記載のコアの一形態として、
前記外側曲面部の曲率半径と前記内側曲面部の曲率半径とが異なることが挙げられる。
【0022】
バックヨークの外側曲面部及び内側曲面部の曲率半径は異なっていてもよい。外側曲面部及び内側曲面部の曲率半径を異ならせる場合、外側曲面部の曲率半径を内側曲面部の曲率半径よりも大きくすることが好ましい。金型を用いて上記コアを成形する際、バックヨークの外周縁の角部を成形する金型の外縁角部の方がバックヨークの内周縁の角部を成形する金型の内縁角部よりも応力が高くなる傾向がある。外側曲面部の曲率半径が内側曲面部の曲率半径よりも大きい場合、金型の外縁角部における応力集中を効果的に緩和できる。よって、上記形態は、金型の破損を抑制し易い。上記コアを用いて回転電機を構成した場合、バックヨークの内周側は外周側よりも磁束が流れ易い傾向がある。外側曲面部の曲率半径が内側曲面部の曲率半径よりも大きいことで、バックヨークの有効磁路面積を確保し易くなる。その結果、バックヨークの内周側での磁束の集中を抑制でき、ひいては回転電機のトルクや効率を向上させる効果が期待できる。
【0023】
(4)上記コアの一形態として、
前記バックヨークの外周面及び内周面の少なくとも一方に、軸方向に沿って延びる直線部を有し、
前記直線部の長さが前記バックヨークの厚みの15%以上であることが挙げられる。
【0024】
上記コアをケースに収納して回転電機を構成する場合、バックヨークの外周面をケースの内周面に嵌合させることがある。バックヨークの外周面に直線部を有する場合、外周面の直線部がケースの内周面に面接触することにより、ケースに対してコアを固定し易くなる。また、上記コアを用いて回転電機を構成する場合、バックヨークの内側にコイルを結線するバスバーが取り付けられることがある。バックヨークの内周面に直線部を有する場合、内周面の直線部がバスバーに面接触することにより、コアに対してバスバーを固定し易くなる。上記形態は、バックヨークの外周面及び内周面の少なくとも一方の直線部の長さがバックヨークの厚みの15%以上であることで、コアに対するケースやバスバーの組み付けが容易になる。バックヨークの外周面及び内周面において、バックヨークの厚みに対する直線部の長さの比率の上限は、特に限定されないが、例えばバックヨークの厚みの75%以下であることが挙げられる。直線部の長さは、例えば0.5mm以上9mm以下であることが挙げられる。バックヨークの厚みは、例えば1.5mm以上10mm以下であることが挙げられる。
【0025】
(5)上記コアの一形態として、
前記バックヨークの軸中心から外周面までの径方向の寸法と、前記バックヨークの軸中心から前記ティースの外周側に位置する面までの径方向の寸法との差が6.0mm以下であることが挙げられる。
【0026】
バックヨークにおいて、バックヨークの外周面からティースが突出する部分までの領域を外周領域とする。成形した上記コアを金型から取り出す際、バックヨークの外周領域に曲げ応力が作用することがある。この応力によって外周領域が変形してしまうことがある。バックヨークにおける外周領域の径方向の寸法が小さいほど、金型から取り出す際の応力による外周領域の変形を抑制し易い。上記形態は、バックヨークの軸中心から外周面までの径方向の寸法と、バックヨークの軸中心からティースの外周側に位置する面までの径方向の寸法との差が6.0mm以下である。これにより、バックヨークにおける外周領域の径方向の寸法が小さくなり、外周領域の変形を抑制できる。以下では、バックヨークの軸中心から外周面までの径方向の寸法のことを「バックヨークの外半径」という場合がある。バックヨークの軸中心からティースの外周側に位置する面までの径方向の寸法のことを「ティースの外半径」という場合がある。
【0027】
また、バックヨークの外半径とティースの外半径との差が6.0mm以下であれば、金型を用いてコアを成形する際の圧縮面積が小さくなる。そのため、高い成形圧を加えることができるので、コアを高密度化できる。バックヨークの外半径とティースの外半径との差は、更に4.0mm以下、3.0mm以下であることが挙げられる。
【0028】
(6)上記コアの一形態として、
前記バックヨークの軸中心から前記ティースの内周側に位置する面までの径方向の寸法と、前記バックヨークの軸中心から内周面までの径方向の寸法との差が7.0mm以下であることが挙げられる。
【0029】
バックヨークにおいて、バックヨークの内周面からティースが突出する部分までの領域を内周領域とする。成形した上記コアを金型から取り出す際、バックヨークの内周領域に曲げ応力が作用することがある。この応力によって内周領域が変形してしまうことがある。バックヨークにおける内周領域の径方向の寸法が小さいほど、金型から取り出す際の応力による内周領域の変形を抑制し易い。上記形態は、バックヨークの軸中心からティースの内周側に位置する面までの径方向の寸法と、バックヨークの軸中心から内周面までの径方向の寸法との差が7.0mm以下である。これにより、バックヨークにおける内周領域の径方向の寸法が小さくなり、内周領域の変形を抑制できる。以下では、バックヨークの軸中心からティースの内周側に位置する面までの径方向の寸法のことを「ティースの内半径」という場合がある。バックヨークの軸中心から内周面までの径方向の寸法のことを「バックヨークの内半径」という場合がある。
【0030】
また、ティースの内半径とバックヨークの内半径との差が7.0mm以下であれば、金型を用いてコアを成形する際の圧縮面積が小さくなる。そのため、高い成形圧を加えることができるので、コアを高密度化できる。ティースの内半径とバックヨークの内半径との差は、更に5.0mm以下、4.0mm以下であることが挙げられる。
【0031】
(7)上記コアの一形態として、
前記バックヨークの外周面及び内周面の少なくとも一方に部分的に設けられ、径方向に突出する凸部又は径方向に凹む凹部を有することが挙げられる。
【0032】
上記コアを用いて回転電機を構成する場合、上記形態は、バックヨークの外周面に凸部又は凹部を有することで、この凸部又は凹部をケースに対する位置決めに利用できる。例えば、バックヨークの外周面に凸部又は凹部を設け、この凸部又は凹部に対応する凹部又は凸部をケースの内周面に設けておく。これら凸部と凹部との嵌合により、ケースに対してコアを位置決めすることが可能である。また、上記コアを用いて回転電機を構成する場合、バックヨークの内側に上記バスバーを配置することがある。バックヨークの内周面に凸部又は凹部を有することで、この凸部又は凹部をバスバーの位置決めに利用できる。例えば、バックヨークの内周面に凸部又は凹部を設け、この凸部又は凹部に対応する凹部又は凸部をバスバーに設けておく。これら凸部と凹部との嵌合により、コアに対してバスバーを位置決めすることが可能である。
【0033】
(8)上記コアの一形態として、
前記圧粉成形体は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成され、
前記軟磁性粒子が、純鉄、又は、Fe-Si系合金、Fe-Al系合金、Fe-Cr-Al系合金及びFe-Cr-Si系合金から選択される少なくとも一種の鉄基合金からなる鉄基粒子であることが挙げられる。
【0034】
純鉄又は上記鉄基合金は比較的軟質である。そのため、軟磁性粒子が純鉄又は上記鉄基合金からなる鉄基粒子であることで、圧粉成形体の成形時に軟磁性粒子が変形し易い。よって、上記形態は、高密度で寸法精度の高い圧粉成形体が得られる。圧粉成形体を高密度化することで、コアの機械的強度や磁気的特性を改善できる。また、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有することで、軟磁性粒子間の電気的絶縁性を高めることができる。そのため、渦電流損に起因するコアの鉄損を低減できる。
【0035】
(9)上記(8)に記載のコアの一形態として、
前記絶縁被覆がリン酸塩被覆を含むことが挙げられる。
【0036】
リン酸塩被覆は鉄基粒子との密着性が高く、変形性にも優れている。そのため、絶縁被膜がリン酸塩被覆を含むことで、圧粉成形体の成形時に鉄基粒子の変形に追従し易い。よって、上記形態は、絶縁被覆が損傷し難く、コアの鉄損を低減できる。
【0037】
(10)上記コアの一形態として、
前記圧粉成形体の相対密度が90%以上であることが挙げられる。
【0038】
上記形態は、圧粉成形体の相対密度が90%以上であることで、圧粉成形体の密度が高い。圧粉成形体の高密度化により、コアの機械的強度や磁気的特性を改善できる。
【0039】
(11)本開示の実施形態に係るコアは、
アキシャルギャップ型の回転電機に用いられるコアであって、
環状のバックヨークと、
前記バックヨークの第一平面に対して垂直な軸方向に突出する複数のティースと、を備え、
前記複数のティースは前記第一平面の周方向に間隔をあけて設けられ、
前記バックヨークと前記ティースとは一体成形された圧粉成形体で構成されており、
前記ティースと前記バックヨークとの角部に、前記ティースの周面と前記バックヨークの前記第一平面との間をつなぐ第一曲面部を有し、
前記第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上1.5mm以下であり、
前記第一平面と前記バックヨークの外周面との間をつなぐ外側曲面部と、
前記第一平面と前記バックヨークの内周面との間をつなぐ内側曲面部と、を有し、
前記外側曲面部及び前記内側曲面部の各曲率半径が0.5mm以上であり、
前記バックヨークの外周面及び内周面の少なくとも一方に、軸方向に沿って延びる直線部を有し、
前記直線部の長さが前記バックヨークの厚みの15%以上である。
【0040】
上記本開示のコアは、ティースとバックヨークとの角部に第一曲面部を有することで、ティースとバックヨークとの角部に発生する漏れ磁束を低減できる。よって、上記コアは磁気特性を改善できる。特に、第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上であることで、漏れ磁束を効果的に低減できる。また、第一曲面部の曲率半径が1.5mm以下であることで、ティースに配置されるコイルのスペースを確保して、コイルの占積率の向上を図ることができる。これにより、コイルのターン数の減少を抑制することができるので、回転電機のトルクの低下を抑制できる。
【0041】
また、上記(2)に記載の形態で説明したように、バックヨークの外側曲面部及び内側曲面部の各曲率半径が0.5mm以上であることで、金型の角部における応力集中を緩和できる。よって、上記コアは金型の破損を抑制できる。
【0042】
更に、上記(4)に記載の形態で説明したように、バックヨークの外周面及び内周面の少なくとも一方の直線部の長さがバックヨークの厚みの15%以上であることで、コアに対するケースやバスバーの組み付けが容易になる。
【0043】
(12)本開示の実施形態に係るステータは、
アキシャルギャップ型の回転電機のステータであって、
上記(1)から(11)のいずれか1つに記載のコアと、
前記コアの各ティースに配置されるコイルと、を備える。
【0044】
上記ステータはコアの磁気特性に優れる。これは、実施形態に係る上記コアを備えることで、コアの磁気特性を改善できるからである。
【0045】
(13)本開示の実施形態に係る回転電機は、
ロータとステータとを備え、前記ロータと前記ステータとが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記ステータが上記(12)に記載のステータである。
【0046】
上記回転電機は効率に優れる。これは、実施形態に係る上記ステータを備えることで、コアの磁気特性に優れるからである。
【0047】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係るコア、ステータ、及び回転電機の具体例を説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0048】
<コア>
図1~
図3を参照して、実施形態に係るコア1について説明する。コア1は、アキシャルギャップ型の回転電機に用いられる。コア1は、環状のバックヨーク2と、バックヨーク2から突出する複数のティース3とを備える。コア1の特徴の1つは、
図2、
図3に示すように、ティース3とバックヨーク2との角部に第一曲面部31を有する点にある。以下の説明では、コア1について説明するときは、ティース3が突出する側を上、その反対側を下とする。
【0049】
(バックヨーク)
図1に示すバックヨーク2は、円環板状である。
図2に示すように、バックヨーク2において、その一方の平面、即ち上面を第一平面21とし、第一平面21とは反対側の面、即ち下面を第二平面22とする。バックヨーク2の第一平面21には、
図2に示すように、ティース3が突出して設けられる。バックヨーク2の厚みは、例えば1.5mm以上10mm以下、更に2.0mm以上7.0mm以下である。
図2中、バックヨーク2の厚みをT2で示す。本例では、第一平面21及び第二平面22が、バックヨーク2の軸方向に直交する方向に沿った平面である。
【0050】
バックヨーク2において、第一平面21の外周縁の角部には、
図2に示すように、第一平面21とバックヨーク2の外周面とをつなぐ外側曲面部23を有する。外側曲面部23は、第一平面21の延長面とバックヨーク2の外周面に対して内接する円弧、換言すれば両延長面の交線に向かって凸となる円弧である。また、第一平面21の内周縁の角部には、第一平面21とバックヨーク2の内周面とをつなぐ内側曲面部24を有する。内側曲面部24は、第一平面21の延長面とバックヨーク2の内周面に対して内接する円弧、換言すれば両延長面の交線に向かって凸となる円弧である。外側曲面部23及び内側曲面部24の各曲率半径は、例えば0.5mm以上であることが好ましく、更に1.0mm以上、1.5mm以上がより好ましい。外側曲面部23及び内側曲面部24の各曲率半径の上限は、例えば5.0mm以下、更に4.0mm以下、3.0mm以下である。また、外側曲面部23及び内側曲面部24の各曲率半径は、例えばバックヨーク2の厚みの10%以上85%以下、更に20%以上60%以下であることが好ましい。外側曲面部23の曲率半径と内側曲面部24の曲率半径は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図2では、外側曲面部23の曲率半径と内側曲面部24の曲率半径とが同じである。
【0051】
外側曲面部23及び内側曲面部24の各曲率半径が0.5mm以上であることで、金型を用いてコア1を成形する際、金型の角部における応力集中を緩和できる。よって、金型の破損を抑制できる。この理由については後述する。また、外側曲面部23及び内側曲面部24の各曲率半径が5.0mm以下であれば、バックヨーク2の外周面及び内周面の直線部25、26の長さを確保し易い。これは、外側曲面部23又は内側曲面部24の曲率半径を大きくすると、バックヨーク2の厚みに対して外周面又は内周面の直線部25、26の長さが短くなるからである。
【0052】
外側曲面部23及び内側曲面部24の曲率半径を異ならせる場合、外側曲面部23の曲率半径を内側曲面部24の曲率半径よりも大きくすることが好ましい。金型を用いてコア1を成形する際、バックヨーク2の外周縁の角部を成形する金型の外縁角部の方がバックヨーク2の内周縁の角部を成形する金型の内縁角部よりも応力が高くなる傾向がある。外側曲面部23の曲率半径が内側曲面部24の曲率半径よりも大きい場合、金型の外縁角部における応力集中を効果的に緩和できる。よって、金型の破損を抑制し易い。
【0053】
バックヨーク2の外周面及び内周面の少なくとも一方には、軸方向に沿って延びる直線部を有することが好ましい。この例では、外周面及び内周面に直線部25、26を有する。直線部25、26の長さは、例えばバックヨーク2の厚みの15%以上であることが好ましく、更に25%以上がより好ましい。
【0054】
コア1をケースに収納する場合、バックヨーク2の外周面をケースの内周面に嵌合させることがある。バックヨーク2の外周面に直線部25を有する場合、直線部25がケースの内周面に面接触することにより、ケースに対してコア1を固定し易くなる。また、コア1を用いて回転電機を構成する場合、バックヨーク2の内側にバスバーを設けることがある。バックヨーク2の内周面に直線部26を有する場合、直線部26がバスバーに面接触することにより、コア1に対してバスバーを固定し易くなる。直線部25、26の長さがバックヨーク2の厚みの15%以上であることで、コア1に対するケースやバスバーの組み付けが容易になる。バックヨーク2の厚みに対する直線部25、26の長さの比率の上限は、例えばバックヨーク2の厚みの90%以下、更に80%以下であることが挙げられる。直線部25、26の長さは、例えば0.5mm以上9mm以下、更に0.8mm以上8.0mm以下であることが挙げられる。
【0055】
(ティース)
ティース3は、
図1に示すように、バックヨーク2の第一平面21に周方向に間隔をあけて設けられている。ティース3は、
図2に示すように、第一平面21からバックヨーク2の軸方向に突出する。具体的には、ティース3が第一平面21に対して垂直な方向に突出する。ティース3の個数は、適宜決めればよく、例えば3個以上、更に6個以上である。この例では、
図1に示すように、9個のティース3が周方向に等間隔に配置されている。また、ティース3の形状は、特に限定されるものではなく、例えば円柱状、多角形柱状などの種々の形状とすることができる。この例では、ティース3の形状が三角柱状である。ティース3の形状は、台形柱状などの四角柱状などであってもよい。
【0056】
ティース3とバックヨーク2との角部には、
図2、
図3に示すように、ティース3の周面とバックヨークの第一平面21との間をつなぐ第一曲面部31を有する。第一曲面部31の曲率半径は0.2mm以上1.5mm以下、好ましくは0.3mm以上、更に0.4mm以上1.2mm以下である。この第一曲面部31を有することにより、ティース3のバックヨーク2に連結される根元部側は、ティース3の周面が第一平面21に向かって広がるように形成されている。ティース3の周面のうち、第一曲面部31以外の箇所はティース3の軸方向に沿って直線状に形成されている。
【0057】
ティース3の周面には、
図3に示すように、コイル110が配置される。コイル110に電流を流すことにより、コア1に磁束が流れて磁路が形成される。第一曲面部31の曲率半径が0.2mm以上であることで、ティース3とバックヨーク2との角部に発生する漏れ磁束を低減できる。また、第一曲面部31の曲率半径が1.5mm以下であることで、ティース3に配置されるコイル110のスペースを確保し易い。そのため、コイル110のターン数の減少を抑制できる。
【0058】
コア1とコイル110との間の電気的絶縁を確保するため、コア1の表面に図示しない絶縁塗膜を施してもよい。絶縁塗膜は、電気絶縁性を有する樹脂を塗装することで形成できる。絶縁塗膜を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。絶縁塗膜は、コア1の表面のうち、少なくともコイル110と接触する面に設けられていればよい。例えば、絶縁塗膜は、ティース3の周面及びバックヨーク2の第一平面21に設けることが挙げられる。また、コア1とコイル110との間に図示しないインシュレータを介在させてもよい。
【0059】
コア1において、バックヨーク2の外半径とティース3の外半径との差が0mm以上6.0mm以下であることが好ましく、更に4.0mm以下、3.0mm以下がより好ましい。バックヨーク2の外半径は、バックヨーク2の軸中心から外周面までの径方向の寸法を意味する。また、ティース3の外半径は、バックヨーク2の軸中心からティース3の外周側に位置する面までの径方向の寸法を意味する。
図1中、バックヨーク2の外半径をR2oで示し、ティース3の外半径をR3oで示す。バックヨーク2の外半径とティース3の外半径との差(R2o-R3o)が6.0mm以下であることで、
図3に示すように、バックヨーク2における外周領域27の径方向の寸法が小さくなる。バックヨーク2の外周領域27とは、バックヨーク2の外周面からティース3が突出する部分までの領域をいう。バックヨーク2における外周領域27の径方向の寸法が小さいほど、成形したコア1を金型から取り出す際に外周領域27に作用する曲げ応力を低減できる。この理由については後述する。よって、バックヨーク2の外半径R2oとティース3の外半径R3oとの差が6.0mm以下、更に4.0mm以下であることで、金型から取り出す際の応力による外周領域27の変形を抑制できる。
【0060】
また、バックヨーク2の外半径R2oとティース3の外半径R3oとの差が6.0mm以下、更に3.0mm以下であれば、金型を用いてコアを成形する際の圧縮面積が小さくなる。そのため、高い成形圧を加えることができるので、コア1を高密度化できる。この理由については後述する。
【0061】
コア1において、ティース3の内半径とバックヨーク2の内半径との差が0mm以上7.0mm以下であることが好ましく、更に5.0mm以下、4.0mm以下がより好ましい。ティース3の内半径は、バックヨーク2の軸中心からティース3の内周側に位置する面までの径方向の寸法を意味する。また、バックヨーク2の内半径は、バックヨーク2の軸中心から内周面までの径方向の寸法を意味する。
図1中、ティース3の内半径をR3iで示し、バックヨーク2の内半径をR2iで示す。ティース3の内半径とバックヨーク2の内半径との差(R3i-R2i)が7.0mm以下であることで、
図3に示すように、バックヨーク2における内周領域28の径方向の寸法が小さくなる。バックヨーク2の内周領域28とは、バックヨーク2の内周面からティース3が突出する部分までの領域をいう。バックヨーク2における内周領域28の径方向の寸法が小さいほど、成形したコア1を金型から取り出す際に内周領域28に作用する曲げ応力を低減できる。この理由については後述する。よって、ティース3の内半径R3iとバックヨーク2の内半径R2iとの差が7.0mm以下、更に5.0mm以下であることで、金型から取り出す際の応力による内周領域28の変形を抑制できる。
【0062】
また、ティース3の内半径R3iとバックヨーク2の内半径R2iとの差が7.0mm以下、更に4.0mm以下であれば、金型を用いてコアを成形する際の圧縮面積が小さくなる。そのため、高い成形圧を加えることができるので、コア1を高密度化できる。この理由については後述する。
【0063】
コア1における複数のティース3のうち、最も高いティース3の端面の位置と最も低いティース3の端面の位置との差は、例えば0.2mm以下であることが好ましい。ティース3の端面の位置とは、
図2に示すように、バックヨーク2の第二平面22、即ち下面を平面上に載置した状態で、その面からティース3の端面までの軸方向の高さ位置H3のことをいう。最も高いティース3の端面の位置と最も低いティース3の端面の位置との差が0.2mm以下であることで、ティース3の各端面の高さのばらつきが小さい。後述するように、コア1を用いて
図12に示す回転電機300を構成した場合、ティース3の各端面はロータ200の磁石220に対向するように配置される。ティース3の各端面の高さのばらつきが小さいことで、回転電機300において、ティース3の各端面とロータ200との間隔のばらつきを小さくできる。これにより、コギングを低減できるなど、回転電機300の特性の低下を抑制できる。
【0064】
(圧粉成形体)
バックヨーク2とティース3とは、一体成形された圧粉成形体で構成されている。つまり、コア1は圧粉成形体で構成されている。圧粉成形体は、軟磁性粉末を圧縮して成形したものである。軟磁性粉末は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体である。つまり、圧粉成形体は、複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成されている。本例では、コア1を構成する圧粉成形体が、実質的に、被覆軟磁性粒子からなる軟磁性粉末のみで構成されている。
【0065】
軟磁性粒子は、例えば、純度99質量%以上の純鉄、又は、Fe(鉄)-Si(シリコン)系合金、Fe(鉄)-Al(アルミニウム)系合金、Fe(鉄)-Cr(クロム)-Al(アルミニウム)系合金、Fe(鉄)-Cr(クロム)-Si(シリコン)系合金から選択される少なくとも一種の鉄基合金からなる鉄基粒子であることが挙げられる。純鉄又は上記鉄基合金は比較的軟質である。そのため、軟磁性粒子が純鉄又は上記鉄基合金からなる鉄基粒子であることで、コア1を構成する圧粉成形体の成形時に軟磁性粒子が変形し易い。よって、高密度で寸法精度の高い圧粉成形体が得られる。圧粉成形体を高密度化することで、コア1の機械的強度や磁気的特性を改善できる。また、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有することで、軟磁性粒子間の電気的絶縁性を高めることができる。そのため、渦電流損に起因するコア1の鉄損を低減できる。絶縁被覆としては、例えばリン酸塩被覆、シリカ被覆などが挙げられる。中でも、絶縁被覆はリン酸塩被覆を含むことが好ましい。リン酸塩被覆は鉄基粒子との密着性が高く、変形性にも優れている。そのため、絶縁被膜がリン酸塩被覆を含むことで、圧粉成形体の成形時に鉄基粒子の変形に追従し易い。よって、絶縁被覆が損傷し難く、コア1の鉄損を低減できる。
【0066】
コア1を構成する圧粉成形体の相対密度は90%以上であることが好ましい。圧粉成形体の高密度化により、コア1の機械的強度や磁気的特性を改善できる。より好ましい相対密度は93%以上である。相対密度とは、圧粉成形体の真密度に対する実際の圧粉成形体の密度の比率(%)のことである。圧粉成形体の真密度は、軟磁性粉末の真密度から求めることができる。圧粉成形体の相対密度は、例えば、[(圧粉成形体の成形密度/圧粉成形体の真密度)×100]として求めることが挙げられる。圧粉成形体の成形密度は、圧粉成形体を油中に浸漬して圧粉成形体に油を含浸させ、[含油密度×(含油前の圧粉成形体の質量/含油後の圧粉成形体の質量)]から求めることができる。含油密度は、含油後の圧粉成形体の質量を体積で除した値である。圧粉成形体の体積は、代表的には液体置換法によって測定することができる。
【0067】
<金型>
圧粉成形体からなるコア1は、金型で軟磁性粉末を圧縮して成形することにより、製造することができる。以下、
図4~
図10を参照して、コア1の製造に用いる金型5について説明する。金型5は、
図4に示すように、ダイ50と、ダイ50内に配置されるコアロッド60と、ダイ50に嵌合される上下のパンチ70、80とを備える。
【0068】
ダイ50は、段付きダイである。ダイ50は、
図5、
図6に示すように、第一成形部51と、複数の第二成形部52とを含み、第一成形部51と第二成形部52との間に段部53を有する。第一成形部51は、
図1、
図2に示すバックヨーク2を成形する空間を形成する部分である。第二成形部52は、
図1、
図2に示すティース3を成形する空間を形成する部分である。第一成形部51は、ダイ50の上側に設けられている。第二成形部52は、ダイ50の下側に第一成形部51に連続して設けられている。コアロッド60は、ダイ50の第一成形部51内に同軸状に配置される。上パンチ70は、ダイ50の上側に位置し、第一成形部51に上方から嵌合される。下パンチ80は、ダイ50の下側に位置し、第二成形部52に下方から嵌合される。下パンチ80は、
図8、
図9に示すように、その先端側に
図5、
図6に示す第二成形部52に挿入される複数のパンチ部82を有する。パンチ部82の基端側は一体に形成されている。
【0069】
図4に示す金型5では、ダイ50の第一成形部51、コアロッド60及び上パンチ70によって、
図1、
図2に示すバックヨーク2を成形する環状の空間が形成される。また、ダイ50の第二成形部52及び下パンチ80のパンチ部82によって、
図1、
図2に示すティース3を成形する柱状の空間が形成される。金型5を用いてコア1を成形するときは、ダイ50の第一成形部51内にコアロッド60を配置すると共に、それぞれの第二成形部52に下パンチ80の各パンチ部82を挿入した状態とする。その状態で、第一成形部51及び第二成形部52内に図示しない原料粉末を充填する。そして、上パンチ70を下降させ、第一成形部51の上側から上パンチ70で原料粉末を押圧する。
図10に示すように、金型5を用いてコア1を成形した場合、第一成形部51の内周面でバックヨーク2の外周面を成形し、段部53の面でバックヨーク2の第一平面21を成形する。コアロッド60の外周面でバックヨーク2の内周面を成形する。上パンチ70の端面でバックヨーク2の第二平面22を成形する。また、第二成形部52の内周面でティース3の周面を成形する。下パンチ80のパンチ部82の端面でティース3の端面を成形する。一方、成形したコア1を金型5から取り出すときは、上パンチ70を上昇させ、ダイ50及びコアロッド60を下パンチ80に対して下降させる。そして、パンチ部82でティース3の端面を支持しながらダイ50からコア1を抜き出す。
【0070】
原料粉末は、軟磁性粉末を主成分とする。主成分とは、原料粉末を100質量%とするとき、90質量%以上含有することを意味する。原料粉末には、潤滑剤やバインダ樹脂などを必要に応じて添加してもよい。
【0071】
軟磁性粉末の平均粒子径は、例えば20μm以上300μm以下、更に40μm以上250μm以下とすることが挙げられる。軟磁性粉末の平均粒子径を上記範囲内とすることで、取り扱い易く、圧縮成形し易い。軟磁性粉末の平均粒子径は、レーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定し、積算質量が全粒子の質量の50%となる粒径を意味する。
【0072】
軟磁性粉末を含有する原料粉末を圧縮する際の成形圧を高くすることで、コア1を高密度化できる。成形圧は、例えば700MPa以上、更に800MPa以上とすることが挙げられる。
【0073】
図7に示すように、ダイ50において、段部53の面と第二成形部52の内周面との間の第一角部531は、
図2に示すコア1の第一曲面部31に対応する曲面状に形成されている。第一角部531の曲率半径は0.2mm以上1.5mm以下である。第一角部531が曲面状に形成されていることで、ティース3とバックヨーク2との角部に第一曲面部31が形成される。
【0074】
また、
図7に示すように、段部53の外縁角部532及び内縁角部533は、
図2に示すバックヨーク2の外側曲面部23及び内側曲面部24に対応する曲面状に形成されている。外縁角部532及び内縁角部533の各曲率半径は、例えば0.5mm以上5.0mm以下である。外縁角部532及び内縁角部533が曲面状に形成されていることで、バックヨーク2の外周縁及び内周縁の角部に外側曲面部23及び内側曲面部24が形成される。
【0075】
上パンチ70で原料粉末を押圧してコア1を成形するとき、
図10に示すように、上パンチ70の端面で押圧されるバックヨーク2の第二平面22が圧縮面となる。また、このとき、段部53の面と下パンチ80のパンチ部82の端面が受圧面となる。この場合、段部53の面に作用する圧力を外縁角部532及び内縁角部533で受けることになるので、外縁角部532及び内縁角部533に曲げ応力が集中し易い。外縁角部532及び内縁角部533の各曲率半径が0.5mm以上であることで、応力集中を緩和できる。よって、ダイ50の破損を抑制できる。
【0076】
一方、成形したコア1を金型5から取り出すときは、パンチ部82でティース3の端面のみを支持して、ダイ50を下げることで相対的にコア1を押し上げるようにダイ50から抜き出す。このとき、バックヨーク2の外周面が第一成形部51の内周面に摺動する。また、バックヨーク2の内周面がコアロッド60の外周面に摺動する。そのため、
図3に示すティース3から径方向の外側及び内側に張り出すバックヨーク2の外周領域27及び内周領域28には、曲げ応力が作用することになる。
図1に示すバックヨーク2の外半径R2oとティース3の外半径R3oとの差が6.0mm以下であることで、外周領域27の径方向の寸法が小さくなる。また、
図1に示すティース3の内半径R3iとバックヨーク2の内半径R2iとの差が7.0mm以下であることで、内周領域28の径方向の寸法が小さくなる。よって、コア1を金型5から取り出す際に、外周領域27及び内周領域28に作用する曲げ応力を低減できるので、外周領域27及び内周領域28の変形を抑制できる。
【0077】
バックヨーク2の外半径R2oとティース3の外半径R3oとの差、及びティース3の内半径R3iとバックヨーク2の内半径R2iとの差の一方、好ましくは両方が4.0mm以下、更に3.0mm以下であれば、第二平面22の面積を小さくできる。金型5でコア1を成形するとき、
図10に示すように、第二平面22の面積が小さいほど、上パンチ70の端面で押圧される圧縮面の面積が小さくなる。圧縮面積が小さい分、高い成形圧を加えることができるので、コア1を高密度化できる。バックヨーク2の外半径R2oとティース3の外半径R3oとの差と、ティース3の内半径R3iとバックヨーク2の内半径R2iとの差は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図1、
図2では、バックヨーク2の外半径R2oとティース3の外半径R3oとの差が、ティース3の内半径R3iとバックヨーク2の内半径R2iとの差よりも大きい場合を例示している。コア1の成形時、バックヨーク2とティース3の内周側の方がスプリングバックが小さく、金型5との摩擦が小さくなる。そのため、ティース3の根元部にかかる負荷が内周側の方が小さくなる。よって、ティース3の内半径R3iとバックヨーク2の内半径R2iとの差の方が、バックヨーク2の外半径R2oとティース3の外半径R3oとの差に比べて大きくできる。
【0078】
<ステータ>
図11を参照して、実施形態に係るステータ100について説明する。ステータ100は、アキシャルギャップ型の回転電機に用いられる。ステータ100は、コア1と、コア1の各ティース3に配置されるコイル110とを備える。コイル110は、巻線をティース3に巻回して構成される。
【0079】
<回転電機>
図12を参照して、実施形態に係る回転電機300について説明する。回転電機300は、モータであってもよいし、発電機であってもよい。回転電機300は、ロータ200と、ステータ100とを備える。回転電機300は、ロータ200とステータ100とが回転軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機である。
【0080】
ステータ100及びロータ200は、円筒状のケース310に収納されている。ケース310の両端にはそれぞれ円板状のプレート320が取り付けられている。両プレート320の中心には、貫通孔が形成されており、回転軸330がケース310内を貫通している。
【0081】
(ロータ)
ロータ200は、平板状の複数の磁石220と、これら磁石220を支持する円環状の保持板210とを備える。磁石220の平面形状は、ティース3の端面にほぼ対応した形状である。ティース3の端面の形状が三角形状の場合、磁石220の平面形状は、例えば三角形状や台形状であることが挙げられる。保持板210は、回転軸330に固定され、回転軸330と一緒に回転する。各磁石220は、保持板210に埋め込まれている。各磁石220は、保持板210に接着剤で固定されていてもよい。磁石220は、回転軸330の周方向に等間隔に配置されている。また、磁石220は、回転軸330の軸方向に着磁されている。周方向に隣り合う磁石220の磁化方向は互いに逆になっている。
【0082】
(ステータ)
ステータ100は、ティース3の端面がロータ200の磁石220に対向するように配置される。ステータ100は、コア1のバックヨーク2の外周面をケース310の内周面に嵌合させることにより、ケース310に固定されている。この例では、バックヨーク2の外周面に直線部25を有することから、ケース310に対してステータ100を構成するコア1を固定し易い。また、バックヨーク2の内周側には、回転軸330を回転自在に支持する円環状のベアリング340が配置されている。
【0083】
[変形例]
コア1において、バックヨーク2の外周面及び内周面の少なくとも一方に凸部又は凹部を有してもよい。
図13A及び
図13B、
図14A及び
図14Bを参照して、バックヨーク2の外周面に凸部41又は凹部42を有する例を説明する。
【0084】
図13Aに示すコア1は、バックヨーク2の外周面に径方向に突出する凸部41が形成されている。凸部41は、バックヨーク2の外周面に部分的に設けられている。
図13Aに示す例では、凸部41が1個の場合を示すが、凸部41の個数は複数であってもよい。この例では、コア1を平面視したときの凸部41の形状が矩形状である。凸部41の形状は、矩形状に限定されるものではなく、例えば半円状、三角形状、台形状などであってもよい。
【0085】
図13Aに示すコア1を用いて回転電機300を構成する場合、
図13Bに示すように、バックヨーク2の外周面の凸部41に対応する凹部311をケース310の内周面に設けておく。これら凸部41と凹部311との嵌合により、ケース310に対してステータ100のコア1を位置決めすることが可能である。
【0086】
図14Aに示すコア1は、バックヨーク2の外周面に径方向に凹む凹部42が形成されている。凹部42は、バックヨーク2の外周面に部分的に設けられている。
図14Aに示す例では、凹部42が1個の場合を示すが、凹部42の個数は複数であってもよい。この例では、コア1を平面視したときの凹部42の形状が矩形状である。凹部42の形状は、矩形状に限定されるものではなく、例えば半円状、三角形状、台形状などであってもよい。
【0087】
図14Aに示すコア1を用いて回転電機300を構成する場合、
図14Bに示すように、バックヨーク2の外周面の凹部42に対応する凸部312をケース310の内周面に設けておく。これら凹部42と凸部312との嵌合により、ケース310に対してステータ100のコア1を位置決めすることが可能である。
【0088】
図13A及び
図13B、
図14A及び
図14Bでは、バックヨーク2の外周面に凸部41又は凹部42を有する例を説明したが、バックヨーク2の内周面に凸部又は凹部を部分的に設けてもよい。凸部又は凹部の個数は、1個以上であればよく、特に限定されない。コア1を平面視したときの凸部又は凹部の形状は、矩形状とする他、例えば半円状、三角形状、台形状などであってもよい。
【0089】
例えば、バックヨーク2の内側に図示しないバスバーを配置することがある。その場合、バックヨーク2の内周面に凸部又は凹部を設けると共に、この凸部又は凹部に対応する凹部又は凸部をバスバーの外周面に設けておく。これら凸部と凹部との嵌合により、コア1に対してバスバーを位置決めすることが可能である。
【0090】
上述したように、バックヨーク2の外周面及び内周面の少なくとも一方に凸部又は凹部を有することで、この凸部又は凹部を位置決めに利用できる。また、凸部又は凹部を位置決めに利用する場合、コア1を平面視したときの凸部又は凹部の形状は、少なくとも1つの直線部を有することが好ましい。直線部は、コア1を平面視したときの凸部又は凹部の輪郭のうち、直線で構成される箇所である。凸部又は凹部の形状が直線部を有することで、位置決め精度を高めることができる。
【0091】
{実施形態の効果}
上述した実施形態のコア1、ステータ100、及び回転電機300は、次の効果を奏する。
【0092】
コア1は、ティース3とバックヨーク2との角部に曲率半径が0.2mm以上の第一曲面部を有することで、ティース3とバックヨーク2との角部に発生する漏れ磁束を低減できる。よって、漏れ磁束による損失を抑制できる。また、第一曲面部31の曲率半径が1.5mm以下であることで、コイル110のターン数の減少を抑制できる。これにより、回転電機300のトルクの低下を抑制できる。
【0093】
ステータ100は、コア1を備えることで、磁気特性に優れる。回転電機300は、ステータ100を備えることで、効率に優れる。
【0094】
[試験例1]
実施形態で説明したコア1と同じ構成のものを作製し、その評価を行った。試験例1では、第一曲面部31の曲率半径を異ならせた複数のコアを用意した。各コアを試料No.1-0~No.1-6とする。用意したコア1の各ティース3に巻線を巻回してコイル110を形成することにより、ステータ100を作製した。そして、作製したステータ100を用いて、アキシャルギャップ型の回転電機300を構成した。この回転電機300はモータとして機能する。
【0095】
巻線には、線径が1.5mmの銅線を使用した。各試料におけるコイルのターン数を表1に示す。
【0096】
電磁界解析ソフトウェアを用いて、コイルに電流を流したときのコアの磁束密度分布を解析し、ティースの根元部における最大磁束密度を求めた。使用した電磁界解析ソフトウェアは、JSOL社製「JMAG」である。各試料におけるティース根元部の最大磁束密度を表1に示す。また、電磁界解析により、コアの鉄損及びモータのトルクを求めた。その結果も表1に併せて示す。
【0097】
【0098】
表1から、第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上である試料No.1-1~No.1-6では、曲率半径が0mmである試料No.1-0に比較して、鉄損が小さいことが分かる。曲率半径が0mmである試料No.1-0では、ティースの周面とバックヨークの第一平面との間を磁束がショートカットすることにより、漏れ磁束による鉄損が大きくなったと考えられる。これに対し、試料No.1-1~No.1-6では、曲率半径が0.2mm以上であるため、ショートカットする漏れ磁束が減少し、漏れ磁束による鉄損が小さくなったと考えられる。
【0099】
試料No.1-1~No.1-6の比較から、第一曲面部の曲率半径が大きいほど、鉄損を抑制できることが分かる。しかし、曲率半径が2.0mmである試料No.1-6では、曲率半径が1.5mm以下である試料No.1-1~No.1-5に比較して、トルクが減少していることが分かる。これは、試料No.1-6では、曲率半径が大きいため、試料No.1-1~No.1-5に比べてコイルのターン数が減少したことが原因である。
【0100】
以上のことから、第一曲面部の曲率半径は0.2mm以上1.5mm以下が好ましいといえる。
【0101】
[試験例2]
実施形態で説明したコア1を金型5で成形したときのダイ50に作用する応力分布をCAE(Computer Aided Engineering)により解析した。そして、CAEによる応力解析の結果から、ダイ50における段部53の外縁角部532に発生する最大応力を求めた。試験例2では、外縁角部532の曲率半径を異ならせ、それぞれの場合での最大応力を求めた。その結果を表2に示す。
【0102】
応力解析には、構造解析ソフトウェア、具体的にはシーメンス社製「NX Nastran」を使用した。解析条件は次のように設定した。成形圧は980MPaとした。ダイ50の物性値は、ヤング率:206000MPa、ポアソン比:0.3とした。また、成形するコア1のバックヨーク2の外半径R2oを25mm、内半径R2iを10mm、厚みT2を3.0mmとした。
【0103】
【0104】
表2から、外縁角部の曲率半径が大きいほど、コア成形時の外縁角部における最大応力を低減できることが分かる。特に、外縁角部の曲率半径が0.5mm以上である場合、外縁角部に発生する最大応力を2000MPa以下に低減できることが分かる。
【0105】
ダイにおける段部の外縁角部の曲面は、コアにおけるバックヨークの外側曲面部を成形する部分であるため、外側曲面部の曲率半径は0.5mm以上とすることが好ましいといえる。
【0106】
[試験例3]
試験例3では、試験例2と同様にCAEによる応力解析により、コア成形時のダイ50における段部53の内縁角部533に発生する最大応力を求めた。その結果を表3に示す。解析条件は、試験例2と同じである。
【0107】
【0108】
表3から、内縁角部の曲率半径が大きいほど、コア成形時の内縁角部における最大応力を低減できることが分かる。特に、内縁角部の曲率半径が0.5mm以上である場合、内縁角部に発生する最大応力を2000MPa以下、更に1500MPa以下に低減できることが分かる。
【0109】
ダイにおける段部の内縁角部の曲面は、コアにおけるバックヨークの内側曲面部を成形する部分であるため、内側曲面部の曲率半径は0.5mm以上とすることが好ましいといえる。また、表2、表3の結果から、ダイにおける段部の外縁角部の方が内縁角部よりもコア成形時の最大応力が高くなる傾向があることが分かる。よって、外縁角部の曲率半径を内縁角部の曲率半径よりも大きくする、つまり、外側曲面部の曲率半径を内側曲面部の曲率半径よりも大きくすることが好ましいといえる。また、バックヨークに流れる磁束は内周側を選択的に通り易い点に鑑み、モータ性能の観点からも、外側曲面部の曲率半径を内側曲面部の曲率半径よりも大きくすることが好ましいといえる。
【0110】
以上説明した本開示の実施形態に関連して、更に以下の付記を開示する。
【0111】
[付記1]
アキシャルギャップ型の回転電機に用いられるコアであって、
環状のバックヨークと、
前記バックヨークの第一平面から軸方向に突出する複数のティースと、を備え、
前記複数のティースは前記第一平面の周方向に間隔をあけて設けられ、
前記バックヨークと前記ティースとは一体成形された圧粉成形体で構成されており、
前記ティースと前記バックヨークとの角部に、前記ティースの周面と前記バックヨークの前記第一平面との間をつなぐ第一曲面部を有し、
前記第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上1.5mm以下である、
コア。
【0112】
付記1に係るコアは、ティースとバックヨークとの角部に第一曲面部を有することで、ティースとバックヨークとの角部に発生する漏れ磁束を低減できる。よって、付記1のコアは磁気特性を改善できる。第一曲面部の曲率半径が0.2mm以上であることで、漏れ磁束を効果的に低減できる。また、第一曲面部の曲率半径が1.5mm以下であることで、ティースに配置されるコイルのスペースを確保して、コイルの占積率の向上を図ることができる。これにより、コイルのターン数の減少を抑制することができるので、回転電機のトルクの低下を抑制できる。
【0113】
[付記2]
前記第一平面と前記バックヨークの外周面との間をつなぐ外側曲面部と、
前記第一平面と前記バックヨークの内周面との間をつなぐ内側曲面部と、を有し、
前記外側曲面部及び前記内側曲面部の各曲率半径が0.5mm以上5.0mm以下である付記1に記載のコア。
【0114】
圧粉成形体からなる上記コアは、金型で軟磁性粉末を圧縮して成形する。金型を用いてコアを成形する際、金型、特にダイの角部に曲げ応力が集中し易く、金型の角部に亀裂が発生することがある。付記2の形態は、バックヨークの外側曲面部及び内側曲面部の各曲率半径が0.5mm以上であることで、金型の角部における応力集中を緩和できる。よって、上記形態は金型の破損を抑制できる。外側曲面部及び内側曲面部の各曲率半径が大きくなると、バックヨークの厚みに対してバックヨークの外周面及び内周面の直線部の長さが短くなる。外側曲面部及び内側曲面部の各曲率半径が5.0mm以下であれば、バックヨークの外周面及び内周面の直線部の長さを大きく確保し易い。
【0115】
[付記3]
前記圧粉成形体は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成され、
前記軟磁性粒子の平均粒子径が20μm以上300μm以下である付記1に記載のコア。
【0116】
圧粉成形体を構成する軟磁性粒子の平均粒子径は、原料粉末に含まれる軟磁性粉末の平均粒子径に依存する。軟磁性粒子の平均粒子径が20μm以上300μm以下であることで、緻密で高密度な圧粉成形体が得られ易い。
【0117】
圧粉成形体における軟磁性粒子の平均粒子径は、次のようにして求めることができる。
圧粉成形体の任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡などの顕微鏡で観察する。観察視野内に存在する全ての軟磁性粒子を抽出し、各粒子の面積を測定する。各粒子の面積に等しい面積を有する円の直径をそれぞれ算出し、その平均値を軟磁性粒子の平均粒子径とする。観察視野のサイズは、例えば、50個以上の軟磁性粒子が含まれるように設定する。軟磁性粒子の抽出、面積の測定、等面積円相当径の算出は、画像解析ソフトウェアなどを用いて行うとよい。
【0118】
[付記4]
前記圧粉成形体は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成され、
前記軟磁性粒子の平均粒子径が40μm以上250μm以下である付記1に記載のコア。
【0119】
軟磁性粒子の平均粒子径が40μm以上250μm以下であることで、より緻密で高密度な圧粉成形体が得られ易い。
【0120】
[付記5]
前記圧粉成形体の相対密度が93%以上である付記1に記載のコア。
【0121】
圧粉成形体の相対密度が93%以上であることで、圧粉成形体の密度が高い。圧粉成形体の高密度化により、コアの機械的強度や磁気的特性を改善できる。
【符号の説明】
【0122】
1 コア
2 バックヨーク
21 第一平面 22 第二平面
23 外側曲面部 24 内側曲面部
25、26 直線部
27 外周領域 28 内周領域
3 ティース
31 第一曲面部
41 凸部 42 凹部
5 金型
50 ダイ
51 第一成形部 52 第二成形部
53 段部
531 第一角部
532 外縁角部 533 内縁角部
60 コアロッド
70 上パンチ 80 下パンチ 82 パンチ部
100 ステータ
110 コイル 200 ロータ
210 保持板 220 磁石
300 回転電機
310 ケース
311 凹部 312 凸部
320 プレート
330 回転軸 340 ベアリング
T2 厚み
R2o、R3o 外半径
R3i、R2i 内半径
H3 高さ位置