(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】腹巻
(51)【国際特許分類】
A41B 9/12 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
A41B9/12 B
(21)【出願番号】P 2021067375
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】521154936
【氏名又は名称】岡田 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 恵美子
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-013201(JP,A)
【文献】特開平08-100303(JP,A)
【文献】特開2003-221703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の腹部・腰部・臀部・大腿部を覆う円筒形の腹巻であって、
該腹巻がたくし上がるのを防止するたくし上げ防止用の股布(5)を有し、該股布(5)を左大腿部(8)と右大腿部(9)との間に挟んで着用することで、装着者の腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆う適正な位置で着用することができ、なおかつ腹巻の下端(3)が就寝中、足を開いてもたくし上がるのを防ぐことができる腹巻において;
該たくし上げ防止用の股布(5)の後端部(5A)は、腹巻の後身頃(6)に縫製固定されるか、または後身頃(6)に対し上下方向に取付位置が調整可能かつ脱着可能な後部・上下位置調整機構(100A)を有し
該たくし上げ防止用の股布(5)の前端部(5B)は、前身頃(7)に対し上下方向に取付位置が調整可能かつ脱着可能な前部・上下位置調整機構(100B)を有し、
該たくし上げ防止用の股布(5)の後身頃(6)または前身頃(7)に対する上下方向の取付位置を調整することにより、後身頃(6)および前身頃(7)が装着者の腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆うように調整できるように構成されたことを特徴とする腹巻(1)。
【請求項4】
前記腹巻の前身頃(7)の布地が二重になっていることを特徴とする請求項1および請求項2および請求項3に記載の腹巻(1)
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝時に腹部から大腿部に装着する腹巻に関するものであり、装着者の体形に応じて十分に腹部・腰部・臀部・大腿部を覆うことができ、特にたくし上げを防止し、着け心地の良い腹巻に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腹巻は主に腹部を冷やさないようにするために着用されるものであり、一般的に比較的厚い伸縮性のある布地が短筒状に形成され、身体に密着させて使用する。また、腹巻は腹部に直接または肌着の上に重ね着して着用される。
【0003】
腹部・腰部に加えて臀部・大腿部も温めるには、腹巻に加えて丈の長めのパンツやスパッツを着用するが、これらはそれぞれ個別に独立している。
【0004】
腹巻を装着者の体に密着させるためには、装着者の体形に合致した腹巻を選定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-13201
【文献】実用新案登録第3223949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の腹巻付パンツによれば、腹部・腰部・臀部を十分に温められ、かつマチ部があることで股を圧迫することは防げるが、大腿部を覆うことはできない。
【0007】
また、上記特許文献2の長パンツにもなる腹巻では、大腿部まで覆うことができるが、腹巻として使用した場合には使用中に下部がたくし上がって全体を覆えなくなることがあり、本来の腹巻の機能が損なわれる。
【0008】
さらに、上記特許文献1および2では、腹巻を装着者の体に密着させることが求められており、伸縮性のある布地であっても、装着者の体形に合致した腹巻の選定が必要である。
【0009】
また、上記特許文献1および2では、腹巻を装着者の体に密着させることが求められているが、装着時の締め付け感や着用により体の動きが制限されるため、特に子どもは不快感により装着を嫌がり、また、成長期の幼児では適切な上下位置に腹巻を装着できない場合がある。
【0010】
腹巻の使用で装着部が暖まりすぎた場合には発汗を防止する必要があるが、上記特許文献1および2では、腹巻全体を外す必要がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、成長期の子どもにも、成人の体形にも対応して、特に就寝時に腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆える位置に当てられ、特に腹部を十分に保温でき、締め付けによる不快感や体の動きが制限されることがない腹巻を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決し、その目的を達成するために、本発明による腹巻は、装着者の腹部・腰部・臀部・大腿部を覆う円筒形で、腹巻が上方向にたくし上げられるのを股部で防止するための股布が付いており、この股布の後端部は、腹巻の後身頃に縫い付けられているか、または、後身頃の上下方向に取付位置が調整可能で、脱着可能な上下位置調整機構を有しており、股布の前端部は、腹巻の前身頃の上下方向に取付位置が調整可能で、脱着可能な上下位置調整機構を有していることを特徴とする。
【0014】
このたくし上げ防止用の股布を後身頃または前身頃の上下方向の取り付け位置を調整することで、後身頃および前身頃が装着者の腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆うように調整できるように構成されたことを特徴とする。
【0015】
前記の上下位置調整機構の後部の位置調整は、股布の後端部に設けられたスナップボタン、ボタン、あるいは面ファスナーのいずれか一つと前記後身頃の上下方向に設けられた各々対応する複数個のスナップボタン、複数個のボタンホール、あるいは一列の面ファスナーにより構成されたことを特徴とする。
【0016】
前記の上下位置調整機構の前部の位置調整は、股布の前端部に設けられたスナップボタン、ボタン、あるいは面ファスナーのいずれか一つと前記前身頃の上下方向に設けられた各々対応する複数個のスナップボタン、複数個のボタンホール、あるいは一列の面ファスナーにより構成されたことを特徴とする。
【0017】
前記円筒形の腹巻の上端の周長は、装着者の胴囲・腰囲より長く、かつ下端の周長は、上端の周長に対して長くなっていることを特徴とする。
【0018】
前記円筒形の腹巻の前身頃は、布地が二重になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の腹巻は、特に就寝時に装着者の腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆う円筒形であり、装着者の胴囲・腰囲より大きいため締め付け感・装着感を感じずに着用できる。
また、股布の後身頃または前身頃への上下方向の取付位置を調整できることにより、装着者の腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆う位置に腹巻を当てることができる。
さらに、二重になっている前身頃で覆うことにより、最も冷やしたくない腹部を常に覆い、腹巻と装着者との間にできた隙間の通気により腰部・臀部・大腿部の発汗を適度に抑えることができる。
さらに、股布を左右大腿部内側で挟み込むことにより、就寝時に寝返りなどで体を動かしても、前身頃は、ずれることなく腹部を覆うことができる。
また、股布の一端が取り外しできるため、股布を取り外して腹巻を上方向にたくし上げて、例えばおむつ交換が腹巻全体を外すことなく容易にでき、交換後に腹巻を下して腹部・腰部・臀部・大腿部を覆うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図5】股布の後端部もしくは前端部に設けられたスナップボタンの1例を示す参考図である。
【
図6】股布の後身頃もしくは前身頃の上下位置調整機構に設けられたスナップボタンの1例を示す参考図である。
【
図7】股布の後端部もしくは前端部に設けられたボタンの1例を示す参考図である。
【
図8】股布の後身頃もしくは前身頃の上下位置調整機構に設けられたボタンホールの1例を示す参考図である。
【
図9】股布の後端部もしくは前端部に設けられた
面ファスナーの1例を示す参考図である。
【
図10】股布の後身頃もしくは前身頃の上下位置調整機構に設けられた
面ファスナーの1例を示す参考図である。
【
図11】従来例に係る股布付き腹巻を身体に装着した時の問題点を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る腹巻1の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施の形態に係る腹巻1は、腹部・腰部・臀部・大腿部を覆うように着用する
図1の腹巻1の斜視図ないし
図2の腹巻1の装着者右側側面から見た断面図に示す短筒状で腹巻1の上端2の幅より下端3の幅が広い腹巻1と腹巻1の後身頃6および前身頃7に設けられた上下位置調整機構100A、100Bと股布5で構成されている。
【0023】
図3の装着状態を正面から示す参考図および
図4の装着状態を右側面から示す参考図に示したように、腹巻1の上端2の周長は、装着者の胴囲・腰囲より長く、かつ下端3の周長は、上端2の周長に対して長くなっていることにより、締め付け感を全く感じることなく、また、就寝中の体の動きが制限されることによる不快感もない。
【0024】
また、
図3の装着状態を正面から示す参考図および
図4の装着状態を右側面から示す参考図に示したように腹巻1の後身頃6と前身頃7の前後方向に伸縮性のある布地でできた股布5が設けられており、この股布5を左大腿部8と右大腿部9との間に挟んで着用することで、装着者の腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆う適正な位置で着用することができ、なおかつ腹巻1のすそ部が就寝中、足を開いてもたくし上げるのを防ぐことができる。
【0025】
さらに、
図3の装着状態を正面から示す参考図および
図4の装着状態を右側面から示す参考図に示したように腹巻1の後身頃6と前身頃7の前後方向に伸縮性のある布地でできた股布5が設けられており、この股布5を左大腿部8と右大腿部9との間に挟んで着用することで、腹巻1は装着者に密着・締め付けていなくても、前身頃は常に腹部を覆うことができる。
【0026】
本実施の形態に係る腹巻1の股布5は、
図2の腹巻1の装着者右側側面から見た断面図に示す後端部5Aおよび前端部5Bに、
図5の参考図に示されたスナップボタン4A、もしくは
図7の参考図に示されたボタン4B、もしくは
図9の参考図に示された
面ファスナー4Cが設けられている。
【0027】
本実施の形態に係る腹巻1の後身頃6および前身頃7に設けられた上下位置調整機構100A、100Bには、
図6の参考図に示された股布5の後端部5Aのスナップボタン4Aに各々対応する複数個のスナップボタン4D、もしくは
図8の参考図に示された股布5の後端部5Aのボタン4Aに各々対応する複数個のボタンホール、もしくは
図10の参考図に示された股布5の後端部5Aの
面ファスナー4Cに対応する上下方向に長い
面ファスナー4Fが設けられている。
【0028】
前述の股布5の後端部5Aと前端部5Bに設けられたスナップボタン4Aあるいはボタン4Bもしくは面ファスナー4Cと、後身頃6に設けられた上下位置調整機構100Aおよび前身頃7に設けられた上下位置調整機構100Bのスナップボタン4Dあるいはボタンホール4Eもしくは面ファスナー4Fの脱着により、上下方向に取付位置が調整可能となり、装着者の体形に合わせて、腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆う最適な位置に腹巻1を装着することができる。
【0029】
股布5は、伸縮性のある柔らかい布地で構成されており、
図4の使用状態を正面から示す参考図に示すように、着用者の体の厚みより長い長さを有している。
【0030】
図3の使用状態を正面から示す参考図と
図4の使用状態を側面から示す参考図に示された股布5が、左右大腿部8,9の間に位置し、股布5以上上方に腹巻1の下端3がたくし上げられないことを示している。
【0031】
また、股布5の一端が取り外しできるため、股布5を取り外して腹巻1の下端3を上方向にたくし上げることで、例えばおむつ交換が腹巻1全体を外すことなく容易にでき、交換後に腹巻1の下端3を下して腹部・腰部・臀部・大腿部を覆うことが可能である。
【0032】
腹巻1の布地の全長は、
図1の腹巻の斜視図ないし
図2の腹巻の着用者右側面から見た断面図に示すように腹巻1の後身頃6の布地は一重であるのに対し、前身頃7の布地は二重構造となっており、最も冷えから保護したい腹部の保温性を高めている。
【0033】
一方で、腹巻1の周長が、装着者の胴囲・腰囲より長いことで、着用時に腹巻1の上端2あるいは下端3で装着者と腹巻1との間に隙間ができ、隙間の通気により腰部・臀部・大腿部の発汗を適度に抑えることができる。
【0034】
前記の布地は、肌触りの良い軽量性、保湿性、速乾性、吸湿性に優れた汎用の綿繊維が適している。
【0035】
以上、本発明に置ける腹巻1の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の目的を達成し、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えばここでは前面の布地を二重構造としているが、一重構造でも構わず、布地の材質も綿以外の化学繊維やウール等の天然素材が含まれてもよい。また、股布5の上下位置調整機構100A・100Bの固定にスナップボタン、ボタン、面ファスナー以外の既存の固定具を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明に係る腹巻は、特に就寝時に装着の締め付け感を感じることなく着用でき、股布により装着者の体形に合わせて、腹部・腰部・臀部・大腿部を十分に覆う最適な位置で着用でき、就寝中に体や足を大きく動かしても抵抗感がなく、股布により腹巻下部がたくし上がることなく、かつ前身頃が左右にずれることなく、腹部・腰部・臀部・大腿部を覆えるため、活用の範囲が広い。
【符号の説明】
【0036】
1 腹巻
2 腹巻の上端
3 腹巻の下端
4A 股布端部のスナップボタン(上下位置調整機構100)
4B 股布端部のボタン(上下位置調整機構100)
4C 股布端部の面ファスナー(上下位置調整機構100)
4D 4Aに対応するスナップボタン(上下位置調整機構100)
4E 4Bに対応するボタンホール(上下位置調整機構100)
4F 4Cに対応する面ファスナー(上下位置調整機構100)
5 股布
5A 股布の後端部
5B 股布の前端部
6 腹巻の後身頃
7 腹巻の前身頃
8 左大腿部
9 右大腿部
10 左上腕部
11 右上腕部
100A 後部・上下位置調整機構
100B 前部・上下位置調整機構