(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】人工肩関節のための改良された関節窩アンカー、特に変換可能な人工関節及び関連するパーツキットに関する。
(51)【国際特許分類】
A61F 2/40 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
A61F2/40
(21)【出願番号】P 2021077558
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2017549320の分割
【原出願日】2016-03-21
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】MI2015A000417
(32)【優先日】2015-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517248683
【氏名又は名称】リマ コーポレート エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】プレッサッコ、 ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】ファットーリ、 アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ビドーニ、 ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】コナー、 パトリック マイケル
(72)【発明者】
【氏名】イスキエルド、 ローランド
(72)【発明者】
【氏名】プーン、 ピーター チャンネル
(72)【発明者】
【氏名】スカリーゼ、 ジェイソン ジェイ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0221111(US,A1)
【文献】国際公開第2011/098890(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/148437(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0069443(US,A1)
【文献】特表2009-523578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0236304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩甲骨の関節窩に固定されるタイプの人工肩関節である変換可能な人工関節のための改良された関節窩アンカーであって、
テーパ付きの遠位端(3)と開放近位端(4)を有し、内部が中空で実質的に指貫きのような円錐スリーブ(12)となった、構造的に独立したピン(2)と、
人工関節コンポーネント(9、9’、9”)の
一部である支持体フランジの円錐状の突起(30)のエッジ(34、54)をスナップ係合によって受けるための、前記ピン(2)の内部空洞(13)内に形成された環状リセス(15、55)であって、
前記ピン(2)の内部空洞(13)は、前記円錐状の突起(30)の外側表面への円錐連結を付与するように形成された円錐状の表面(7)を含み、前記人工関節コンポーネント(9、9’、9”)の前記円錐状の突起(30)を前記ピン(2)の前記内部空洞(13)の内部に実質的に固定する環状リセス(15、55)と、
骨形成及び骨結合に有利な、不規則または小柱状の構造を有する
前記ピン(2)の前記円錐スリーブ(12)の外側表面と、
を備える関節窩アンカー。
【請求項2】
前記
円錐状の突起(30)のベースに設けられた歯(18、19、28、29)に夫々支持接触によって係合させるために、前記内部空洞(13)の開口(6)の近傍に形成されたノッチ(16、17、26、27)をさらに備える、請求項1に記載の関節窩アンカー。
【請求項3】
前記ノッチ(16、17、26、27)は、前記
円錐状の突起(30)のベース上に規則的な間隔で配置された対応する歯(18、19)を受けるように形成された回転防止ノッチであることを特徴とする請求項2に記載の関節窩アンカー。
【請求項4】
前記環状リセス(15、55)の近傍には、前記ピン(2)と係合することを意図して前記
円錐状の突起(30)に対向配置された歯(18、19)を受けるための少なくとも一対の対向配置された回転防止ノッチ(16、17)が設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の関節窩アンカー。
【請求項5】
前記環状リセス(15、55)は、
更に、前記
円錐状の突起(30)のエッジ(34、54)をスナップ係合によって受け入れるように構成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の関節窩アンカー。
【請求項6】
前記ピン(2)の前記内部空洞(13)の前記
円錐状の表面(7)は、前記ピンの長手方向軸(X-X)に関して所定の角度(β、β1)で傾斜して、前記ピン(2)の前記遠位端(3)に向かって内径が実質的に減少し、他方、前記人工関節コンポーネント(9、9’)の前記
円錐状の突起(30)の前記外側表面(37)は、同じ前記長手方向軸(X-X)に関して、前記所定の角度(β、β1)より少し小さい角度(δ、β2)で傾斜していることを特徴とする、請求項
1に記載の関節窩アンカー。
【請求項7】
前記ピン(2)の前記遠位端(3)は前記人工肩関節の固定ネジを受けるためのネジ溝つき貫通孔(5)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の関節窩アンカー。
【請求項8】
前記人工関節コンポーネント(9、9’、9”)は前記ピン(2)から構造的に独立していることを特徴とする、請求項
1に記載の関節窩アンカー。
【請求項9】
前記ピン(2)の前記開放近位端(4)は、前記内部空洞(13)へのアクセスを可能とする、裾広がりの近位端開口(6)を画定することを特徴とする、請求項1に記載の関節窩アンカー。
【請求項10】
前記ピン(2)の前記内部空洞(13)の内側で、前記近位端開口(6)に隣接してより小さな直径が設けられ、前記より小さな直径は、前記人工関節コンポーネント(9、9’)の前記
円錐状の突起(30)の表面(33)を支持接触で着座させるためのエッジ又は内部ステップ(14)を画定することを特徴とする、請求項
9に記載の関節窩アンカー。
【請求項11】
前記人工関節コンポーネント(9、9’、9”)は前記ピン(2)から構造的に独立しており、かつ異なる材料でできていることを特徴とする、請求項1に記載の関節窩アンカー。
【請求項12】
前記人工関節コンポーネント(9’)は、前記
円錐状の突起(30)の反対に位置し、凸型の関節面(44)を備える反転型人工関節の肩甲骨コンポーネント(42)に係合するように意図された部分(41)を備えることを特徴とする、請求項
11に記載の関節窩アンカー。
【請求項13】
前記反転型人工関節の前記肩甲骨コンポーネント(42)は、前記ピン(2)の前記遠位端(3)内に形成されたネジ穴(5)の内部に係合するネジ(45)によって前記人工関節コンポーネント(9’)に結合されることを特徴とする、請求項
12に記載の関節窩アンカー。
【請求項14】
前記環状リセス(55)は、前記内部空洞(13)における前記テーパ付きの遠位端(3)の近傍に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の関節窩アンカー。
【請求項15】
人工関節コンポーネントと、請求項1~請求項
14のいずれか一項に記載の少なくとも1つの関節窩アンカーと、を備える、変換可能ハイブリッド人工関節を設置するためのパーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工肩関節のための改良された関節窩アンカーに関し、特にハイブリッド人工関節、すなわち変換可能な人工関節に関する。
【0002】
より具体的には本発明は、これに限定するものではないが、肩関節用人工関節を肩甲骨の関節窩に安定かつ確実に固定可能するアクセサリアンカー要素、及びこの人工関節のアナトミー型人工関節から反転型人工関節への変換に関する。以下の説明においては、説明を簡単にするためにこの特定の適用分野に関して記述する。
【背景技術】
【0003】
周知のように、多少とも自然な形で肩甲上腕の解剖学的構造を再現する人工肩関節が通常使用される。これらの人工関節はアナトミー型であると定義され、肩甲骨の関節窩内部に固定されるアンカー要素又は関節窩インサートを備える。
【0004】
この人工関節は、関節窩と上腕骨の人工関節コンポーネントを有する。関節窩コンポーネントは、人工関節の上腕骨コンポーネントであって上腕骨そのものの内部に挿入される固定ステムによって上腕骨上端に固定される球形コンポーネントと関節接合する。当該のインサートは、凹型の関節窩コンポーネントの取り付けを可能とする。
【0005】
肩甲上腕の解剖学的構造を反転した形で再生する人工肩関節もまた知られており、この人工関節は反転型と定義される。
【0006】
反転型人工関節では、人工関節の形式がアナトミー型人工関節に対して実質的に反転している。そこでは実際に関節窩コンポーネントは凸型関節面となった一端を有し、これが上腕骨に固定されたカップ状の凹型関節面と回転可能に係合する。
【0007】
数年の間この技法は、肩回旋筋腱板、したがって関節の、重症の不安定性の解決に最も効果的な技法であることが証明されてきた。
【0008】
既知のタイプの反転型人工関節は、例えば本出願人名義の欧州特許第1656910(B1)号明細書に記載されている。この特許では、関節窩に結合された凸型の関節要素25を有する肩の反転型人工関節が記述されている。関節要素25に固定された環状の金属要素24があって、これが、関節窩内部に挿入されてフランジ16と一体形成されたアンカー要素18への接続の中間要素として作用する。
【0009】
反転型人工関節用に意図された既知のタイプの同様なアンカー要素が、例えばZimmer名義の欧州特許第1598034(B1)号明細書に記載されており、
図1に示されている。この特許では、周辺リブ20を有する円錐ピン部分4と、わずかに凹面形状となって一体形成されたフランジ1とを備えるアンカー要素10が記載されている。フランジには穴3、21があり、ネジで関節窩に連結できるようになっている。
【0010】
フランジ付きのアンカー要素が反転型人工関節の関節窩コンポーネントの取付けに使用される既知の技術解決策の他の例が、仏国特許第2869217号明細書、及び欧州特許出願公開第1782764号明細書に記載されている。これらの方法はセメントを使用しないインプラント法を意図しているが、この方法ではアンカーコンポーネントは、人工関節コンポーネントを関節窩へネジを使って固定可能とするフランジと常に一体的に形成される。米国出願公開第2012/221111号明細書には、人工肩関節のための関節窩インプラントであって、肩甲骨の関節窩へのインプラントに使用するためのものが開示され、前記関節窩インプラントは、上腕骨と関節運動するように構成された関節本体と係合する中央固定要素を含む。
【0011】
また他の解決策として、例えば丸い突出形状に多少とも成形された、多孔性のチタンアンカー要素を使用することも提案されている。ただしこれは、関節窩に形成される対応の受け座の画定が必要となる。
【0012】
これらすべての公知の解決策は、多くの点で利点を有しまた実質的にその目的を達成するが、弛緩及び/又は分離という明らかに重大なリスクがあって、アンカー要素を関節窩内部に常に適正かつ耐久性よく固定することが保証できないという共通の欠点を持っている。
【0013】
具体的には、外科医は、関節窩内にピン部分のための着座を正確に形成し、しかもフランジが関節窩表面に嵌合して接着するように確実に位置取りしなければならず、その際アンカー要素のピン部分と一体的に形成されたフランジの存在は制約となる。
【0014】
さらには、これらのアンカー要素の形状では、それをアナトミー型人工関節としてまた反転型人工関節として同等には使用できないという点において、多機能的使用が促進されない。
【0015】
本願と同一出願人により提案され、欧州特許第1472999(B1)号明細書に記載の既知の技術的解決策は、必ずしもアンカー要素の除去を必要とせずにアナトミー型人工関節から反転型人工関節への切り替えを可能とする、凹型フランジを備えた、メタルバックと呼ばれるアンカー要素を想定している。
【0016】
様々な観点で有利でありまたその目的を実質的に満足するが、この解決策にも欠点がある。それは、フランジには、その上に取り付けられる通常はポリエチレンの合成材料の支持体があって、人工関節の変換時に凸形状の別部品に交換するためには、いずれの場合でもこれを除去しなければならない、ということである。さらに、合成材料の支持体が摩耗した場合、上腕骨頭と関節窩フランジとの間に、金属-金属の接触が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、従来技術に関して述べた欠点を克服し、アナトミー型人工関節から反転型人工関節への変換を、この人工関節のインプラントの外科処置中にも骨に結合されたピンを除去する必要なしに、容易に可能とするような構造及び機能上の特徴を有する、肩関節のハイブリッド人工関節用の改良された関節窩アンカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のベースを成す本提案の解決策は、アンカー要素のピン部分がシールド形状又はいずれの場合でも支持体型の人工関節コンポーネントの形状を取るフランジ部分とは構造的に独立しており、そのフランジ部分をピン部分にスナップ係合可能である、アンカー要素を提供するものである。有利なことには、人工関節コンポーネントとピン部分との間の係合は、機械的な干渉によって遂行される。
【0019】
この提案された解に基づいて、本発明によるアンカー要素の第1の実施形態は、
テーパ付きの遠位端と開放近位端をもつ円錐スリーブであって内部が中空で実質的に指貫きのような円錐スリーブを有する構造的に独立したピンと、
前記ピンの内部空洞の内側に形成された環状リセスであって、機械的干渉によって人工関節コンポーネントの円錐突起を受け入れるためのものであって、前記内部空洞の内側に前記円錐突起を実質的に係止するものであって、制御された機械的干渉を伴う円錐連結が、支持体フランジの前記円錐突起と前記ピンの前記内部空洞との間に付与される環状リセスと、
骨形成および骨の統合に好ましい、不規則な構造または小柱構造を有するピンのスリーブの外側表面と、
を有する。
【0020】
前記アンカー要素は、好ましくは、更に、前記突起のベースに形成された歯に夫々支持接触によって係合するために、前記内部空洞の開口近傍に形成されたノッチを有する。
【0021】
従来技術の解決策は一体成型されるのに対し、本発明の解決策では、アンカー要素のピン部分は関連するフランジから分離して設計され、インタフェース支持体をスナップ係合するためのクィックフィット連結手段を備えることを本質的に想定する。この支持体は一種のインタフェースフランジを形成し、アナトミー型人工関節から反転型人工関節に変換するために、ピンを関節窩から除去せずにこの支持体を容易に取り外すことが可能である。
【0022】
支持体フランジの円錐突起又は人工関節コンポーネントの関節インサートと、ピンの内部空洞との間の制御された機械的干渉を有する円錐連結が意図されている。貫通度合いは、最大屈曲点でのピンの最大支持をもまた保証する、フランジ又はインサートの横突起によって決定される。
【0023】
また、空洞内部では回転防止ノッチが想定される。これは上記の円錐突起のベース上に規則的間隔で配置された対応する歯を受けるように設計されている。
【0024】
アンカー要素、支持体、及び上腕骨コンポーネントと関節窩コンポーネントからなるアセンブリが、変換可能ハイブリッド人工関節取付け用のパーツキットを形成する。これはアナトミー型人工関節として装着可能であり、もし既にアナトミー型人工関節として装着されていれば、その時に生じる手術の必要性に依存して、反転型人工関節へ変換され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術に従って設計された人工肩関節用アンカーの斜視図である。
【
図2】本発明に従って設計された人工肩関節用アンカーの概略斜視図である。
【
図3】
図2のアンカーと協働する人工関節コンポーネントの概略斜視図である。
【
図4】本発明によるアンカー及び人工関節コンポーネントの、互いに係合するときの長手方向の概略断面図である。
【
図5】本発明によるアンカーと人工関節コンポーネントの間の係合の詳細を拡大した、概略断面図である。
【
図6】本発明による、互いに係合したアンカーと人工関節コンポーネントの、長手方向の概略断面図である。
【
図8】本発明による、互いに係合したアンカーと人工関節コンポーネントの、長手方向の概略側面図である。
【
図9】本発明による、互いに係合したアンカーと人工関節コンポーネントの、更なる長手方向の概略部分断面図である。
【
図10】本発明による、互いに係合したアンカーと別の人工関節コンポーネントの、長手方向の概略断面図である。
【
図11】本発明による、互いに係合したアンカーとその別の人工関節コンポーネントの斜視図であり、特にアナトミー型から反転型に変換可能とするコンポーネントの斜視図である。
【
図12】本発明による、互いに係合したアンカーとその別の人工関節コンポーネントの更なる長手方向の概略部分断面図である。
【
図13】本発明による、使用時のアンカーと人工関節コンポーネントの写真のような図である。
【
図14】
本発明による、使用時のアンカーと人工関節コンポーネントの写真のような図である。
【
図15】本発明による第2の実施形態における、互いに係合したアンカー及び人工関節コンポーネントの長手方向の概略断面図である。
【
図16】
図15のアンカーと人工関節コンポーネントの間の係合の詳細を拡大した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
これらの図面、特に
図2に示す実施例を参照すると、符号1が、肩関節用の人工関節を肩甲骨の関節窩に安定かつ確実に固定するための、本発明に従って設計された改良アンカー要素の全体及び概略形状を表す。
【0027】
以下の説明においては、このアンカー要素1を、より簡単な用語「関節窩アンカー」を用いて参照する。
【0028】
有利なことに、アンカー1は、人工肩関節をアナトミー型人工関節から反転型人工関節へ変換可能とするコンポーネントである。アンカー1は別の構造的に独立した人工関節コンポーネント9と協働するように意図されている。これは機械的な締り嵌めによってアンカー1にスナップ係合することができる。詳細を後で述べる。
【0029】
アンカー1は、外科手術で肩甲骨の関節窩へインプラントされるようになっており、荷重を支え、また一般に粗い仕上げの結果として生物学的に統合される機能を有する。
【0030】
アンカー1は、人工関節コンポーネント9とは構造的に独立した実質的にピン2の形状であり、実質的に指貫きのような構造をした中空円錐スリーブ12を持っている。ピン2は長手軸X-Xに沿って延在し、直径やそのラジアル容積よりも大きな長さを有する。ピン2は、生体適合性を有する金属材料、例えばチタン又はその合金などでできており、例えば米国特許出願第12/601,510号明細書に記載されているように、一般的に粗い表面仕上げになっている。
【0031】
スリーブ12の外側表面は骨形成と骨結合に有利なように不規則又は小柱状の構造を有し、また外科医が肩甲骨の関節窩内に事前に準備しなければならない対応する受け座(図示せず)内部でのピン2の関連する接触摩擦を大きくするように選ばれている。
【0032】
ピン2は、開放された穴5を有するテーパ付きの遠位端3と、反対側の末広がりの近位端4を有している。穴5は、人工関節の肩甲骨コンポーネントが
図14に示すように凸型関節面を持っている場合には、それを固定するためにネジ45でネジ止めして係合できるように、対応してネジが切られている。
【0033】
上述したように、ピン2は内部が中空で、近位端4には近位開口6が画定され、これがピン2の円錐形内部空洞13へのアクセスを与える。
【0034】
ピン2の空洞13の既に内側ではあるが、近位開口6に近接して直径が小さくなっており、このより小さな直径が内部のステップ又はエッジ14を画定して、このピン2と協働する上記の人工関節コンポーネント9の表面33を支持接触させて着座させる。これは以下で説明する。
【0035】
ピン2の内部空洞13には、環状リセス15がその内部に形成されている。これはエッジ14の近傍に、空洞13の内側に向かってエッジから所定の離間関係で配置されている。
【0036】
この環状リセス15は、アンカー1にスナップ係合される人工関節コンポーネント9の突起30上に形成された環状エッジ34を受けるためのものである。
図5で明らかなように、人工関節コンポーネント9の環状エッジ34は歯の付いた外形をしており、それによりリセス15のエッジを通過した後にスナップ係合しやすくし、かつコンポーネントの離脱を防止する。さらに、人工関節コンポーネント9のインサートの貫通度合いは、エッジ14に支持接触する表面33によって決定される。
【0037】
図15に示す別の実施形態
においては、環状リセス55はピン2の内部空洞13の、遠位端3の近傍に形成されている。
【0038】
この環状リセス55は、アンカー1’にスナップ係合される人工関節コンポーネント9”の突起30上に形成された環状エッジ54を受けるためのものである。
図16で明らかなように、人工関節コンポーネント9”の環状エッジ54は歯の付いた外形をしており、それによりリセス55のエッジを通過した後スナップ係合しやすくし、かつコンポーネントの離脱を防止する。さらに、人工関節コンポーネント9”のインサートの貫通度合いは、エッジ14へ支持接触する表面33によって決定される。
【0039】
エッジ14の領域で、近位から遠位の方向に見て環状リセス15の前方に、少なくとも一対の対向配置された回転防止ノッチ16、17が設けられ、このピン2と機械的に干渉してスナップ係合するようにされた、同じ人工関節コンポーネント9の対応する歯18、19を受けるようになっている。
【0040】
より具体的かつ好適には、
図7の断面図で明らかに示されているように、4つの回転防止ノッチ16、17、26、27が設けられ、これらは互いに90°の角度で離間して、この人工関節コンポーネントの対応する歯18、19、28、29のそれぞれを受けて、スナップ係合するようになっている。これらのノッチはまたアンカー1’にも設けられ、人工関節コンポーネント9”に係合するようになっている。
【0041】
明らかに、ノッチ及び対応して係合する歯の数を多くすること、又はこれらの相対配置を異なる離間角度で選択することは、完全に可能であり、出願人の権利を少しも制限することにはならない。
【0042】
次に、アンカー1と協働する人工関節コンポーネント9又は9”の構造を詳細に説明する。このコンポーネントは好ましくは、固定ネジで貫通するのに十分な柔らかさのある、例えば高分子量ポリエチレンの生体適合性合成プラスチック材料でできている。
【0043】
既に述べたように、アナトミー型人工関節では人工関節コンポーネント9はアンカー1のピン部分2の内部へ制御された機械的干渉でスナップ係合可能な支持体構造を有している。
【0044】
図2から明らかなように、コンポーネント9は本質的に板状部分8で形成され、これはアナトミー型人工関節の一部を成す場合には凹型シールドとしても画定され得る。この部分8は、そこから延伸する3つの突起、すなわち中央突起30とその両側の符号10と11で示される2つの突起を持っている。
【0045】
部分8は僅かに凹型の近位面38を有し、その中央には、インサートの除去用器具のための中心ワイヤを挿入するためのガイドとして作用する、円筒座39を備えている。
【0046】
部分8の片側25は、関節窩とのよりよい係合を確実にするという解剖学的理由で曲線輪郭を有している。
【0047】
3つの突起30、10、11は、同じ方向にそれぞれの軸が実質的に相互に平行となって延伸している。ただし、側方の突起10、11の軸が4個以上であって、例えば120°で配置されて、したがって同じ面内にないことも可能である。
【0048】
中央突起30は、自由端31を有する円錐形であり、ピン2の内部空洞13内へ形状嵌合して挿入されるようになっている。この突起30は、2つのコンポーネント1と9が互いに係合する場合、ピン2の軸X-Xに実質的に一致する長手方向軸を有する。
【0049】
図2に明らかに示すように、突起30の外側表面37上の突起が形成されているベースの近傍に環状エッジ34が形成されている。
【0050】
より正確には、突起30のベースにはノッチ16、17、26、27に係合するようにされた歯18、19、28、29が備えられている。上記の歯は
図2に明示されている。
【0051】
各歯18、19、28、29の端面33は実質的に平坦であって、その軸に実質的に垂直な突起30の自由端31の表面に対して平行である。
【0052】
有利なことに本発明によれば、ピン2の内部空洞13の表面7はこのピンの長手軸X-Xに関して角度βだけ傾斜しており、
図9に示すように、ピン2の遠位端3に向かって内径が実質的に減少している。
【0053】
同様に、コンポーネント9の中央突起30の外側表面37は、コンポーネント1と9が互いに係合するときに実質的に軸X-Xに一致するこの突起30の長手軸に関して傾斜している。本質的に外側表面37は軸X-Xに対してβ以外の角度で傾斜し、ピン2の軸に沿って機械的干渉が可変であるようになっている。
【0054】
このことは、人工関節コンポーネント9の突起30がピン2の内部空洞13の内部に挿入されると、2つの表面7と37の間に直径の違いによる干渉が生じるまで挿入され、
図6に明示されているように、その突起が空洞13のほぼ底まで到達したときに突起30が空洞13の内部に実質的にロックされる、ということを意味する。傾斜角度の違いが、軸X-Xに沿う干渉の可変性を決定する。
【0055】
突起30の突出量及び角度βとδで定義される表面傾斜の選択(ここで突起のδは空洞のβより僅かに小さい)は、ピン2の遠位開口5に近い空洞13の部分の近傍で所望のギャップ22を得られるように設計される。言い換えれば、突起30と空洞13の幾何学的寸法は、突起30の端面31が空洞13の遠位端から所定の距離に確実にとどまるように選択される。突起30と空洞13の間に制御された干渉での係合が得られるとき、環状エッジ34の対応するリセス15内でのスナップ係合が同時に起きる。
【0056】
同様に、相対的幾何学的寸法のおかげで、突起30のベースにおける歯18、19、28、29の間でも係合が生じる。これらは空洞13の口6の近傍に形成された各ノッチ16、17、26、27と支持接触する。
【0057】
こうして歯18、19、28、29の端面33と内部エッジ14との間の支持接触が得られる。この支持接触で、コンポーネント9とアンカー1との間の係合が完結し、空洞13内部での突起30の貫通が一種の行き止まり停止となる。
【0058】
ピン2の環状リセス55とコンポーネント9”の突起30のエッジ54との間の遠位係合が提供される、
図15の実施形態においても、空洞13の内部表面と突起30の外側表面37との間の干渉はまだ発生する。
【0059】
この場合、人工関節コンポーネント9”はピン2の内部空洞13に挿入されて、2つの面7、37が直径の違いによって干渉するまで貫通し、エッジ54がリセス55内にスナップ係合されると突起30が空洞13内部に実質的に固定される。突起30の突出量及び角度β1、β2で定義される表面傾斜の選択(ここで突起のβ2は空洞のβ1より僅かに小さい)は、
図16に明示されているように、ピン2の遠位開口5に近い空洞13部分の近傍で所望のギャップ22が得られるように正確に設計される。
【0060】
中央突起30に平行な他の2つの突起10、11は、人工関節コンポーネントと同一材料で作られており、また関節窩の受け座の底に形成された対応する穴の内部に挿入されて支持及び機能安定の役目をするピンであるということも指摘しておきたい。
図9に部分的に示す代替実施形態において、中央突起30の周りに120°で配置された少なくとも3つの突起又はピンが提供される。
【0061】
上記の説明から、本発明によるアンカーは指定された目的を達成し、数々の利点を提供することが明らかである。それらの主なものを以下に列挙する。
【0062】
本発明の解決策ではアンカー要素1のピン部分2は、従来技術の解決策で一体成型されるのとは異なり、関連するフランジとは分離して設計され、インタフェース支持体9又は9”の形の人工関節コンポーネントをスナップ係合するためのクィック嵌合連結手段7、15、14を備えることが本質的に想定される。
【0063】
この支持体9、9”は一種のフランジを形成し、アナトミー型人工関節から反転型人工関節に変換するために、ピン2の除去なしで容易に取り外すことが可能である。
【0064】
この関係で、
図12は人工関節をアナトミー型人工関節から反転型人工関節へ変換するのに有益な人工関節コンポーネント9’を示している。
【0065】
前述の人工関節コンポーネント9の実施形態の例と比較して、コンポーネント9’は生体適合性金属材料で作製されてもよい。
【0066】
この場合、コンポーネント9’は、ピン2の円錐形内部空洞13の内部に挿入されるようになった突起40と、肩甲骨コンポーネントが凸型関節面44を有する場合、反転型人工関節の肩甲骨コンポーネント42に係合するようになった対向部分41とを有する。
【0067】
ネジ45がこの肩甲骨コンポーネント42の固定用に提供され、ピン2のネジ穴5の中へねじこまれて、コンポーネント44をコンポーネント9’に、そして最終的にピン2そのものに固定するように円錐部を締め付ける機能を有する。ネジ45は、人工関節5の対応する円筒形空洞の中へ収容される、大きな直径の近位部分を有する。
【0068】
人工関節コンポーネント9’は、インサート40に向いた面が凸型である、プレート形部分48を備える。
【0069】
他方、この部分48は他の部分41に面する表面に窪みを有する。この部分48は、
図16にのみ示されている骨固定ネジ49を受けるための、人工関節コンポーネント9’の長手軸X-Xに関して横方向に位置する少なくとも2つの穴46、47を備える。
【0070】
人工関節コンポーネント9’を使用する決定は、手術中にも行われ得る。
【0071】
結果として、手術の段階においてもまた、アナトミー型人工関節を反転型人工関節に変換することが可能であって、万一肩回旋筋腱板に関わる病理があるとしたら、骨に結合させたアンカーピン2を除去する必要なしに、外科医は関節の補修が可能である。
【0072】
有利には、人工肩関節のアンカー要素1、支持体2、並びに上腕骨と関節窩コンポーネントとからなるアセンブリは、変換可能ハイブリッド人工関節を設置するためのパーツキットを形成し、これは手術の要求に依存して、アナトミー型人工関節又は反転型人工関節として取付け可能である。
【0073】
好適な実施形態では、人工関節コンポーネントは、基本的には
図2~
図9に示すアナトミー型構成で、既にピン2に機械的干渉によりスナップ係合されたコンポーネント9とともに事前組み立てして提供される。人工関節は、円錐連結と固定ネジとにより
図10~
図14に示すもう一方の人工関節コンポーネント9’の挿入を可能とするために、特別の器具を使用して高分子量ポリエチレン(UHMWPE)部品9を取り出すことによって、手術中に変換可能である。
【0074】
好ましい実施形態においては、前記アンカー要素は、
テーパ付きの遠位端と開放近位端を有する円錐スリーブであって内部が中空で実質的に指貫きのような円錐スリーブを有する構造的に独立したピンと、
前記ピンの内部空洞の内側における前記開放近位端の近傍に形成され、人工関節コンポーネントの突起のエッジをスナップ係合によって受け入れる環状リセスと、
前記ピンとスナップ係合することを意図して、前記の突起に対向配置された歯を受け入れるために前記環状リセスの近傍に対向配置された少なくとも一対の回転防止ノッチと、
を備える。
【0075】
一の態様においては、人工関節コンポーネント9、9’の突起30は円錐状であって、突起30のエッジ34、54が環状リセス15、55内に着座しているときに、ピン2の内部空洞13の内側に制御された干渉で挿入される。
【0076】
一の態様においては、前記アンカー要素は、第2の対の歯28、29にスナップ係合するもう一対の回転防止ノッチ26、27を有し、前記もう一対の回転防止ノッチ26、27は、互いに角度的に離間している。
【0077】
一の態様においては、エッジ34、54は、環状リセス15、55内部でスナップ係合するのに有利であり、その離脱を防止する歯のような外形を有する。
【0078】
一の態様においては、環状リセス15は、前記開放近位端4の近傍に形成されている。
【0079】
一の態様においては、環状リセス55は、ピン2の内部における遠位端3の近傍に形成されている。