(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】レーザによるエアロゾル生成装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20221012BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20221012BHJP
A24F 40/44 20200101ALI20221012BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/40
A24F40/44
(21)【出願番号】P 2021163045
(22)【出願日】2021-10-01
(62)【分割の表示】P 2018555144の分割
【原出願日】2017-04-20
【審査請求日】2021-10-01
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】JT INTERNATIONAL S.A.
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローガン,アンドリュー ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スタルダー,ローランド
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104643290(CN,A)
【文献】国際公開第2015/082651(WO,A1)
【文献】特開2005-034021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/46
A24F 40/40
A24F 40/44
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットと
気化可能材料を包含するための容器と、を備え、
前記容器および前記ターゲットは、それぞれ、少なくとも部分的に中空シリンダとして形成され、それによって、前記容器は、少なくとも部分的に前記ターゲットを取り囲み、
前記ターゲットは、前記ターゲット内に光ガイドを受け取るように構成されている、エアロゾル生成装置。
【請求項2】
前記容器内に延びるウィックをさらに備え、前記ウィックは、前記ターゲットと流体連通している、請求項1に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項3】
前記ターゲットが、繊維または糸を含む、請求項1又は2に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項4】
前記ターゲットの材料が、Kevlar、セラミック、および/または金属を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項5】
前記ターゲットが、第1領域および第2領域を含み、前記第1領域が前記第2領域よりも低密度であるため、毛細管現象によって、前記第1領域から前記第2領域に液体が吸い寄せられる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項6】
前記第1領域と前記第2領域とがそれぞれ、同じ材料の繊維または糸を含み、前記繊維または糸が、前記第2領域よりも前記第1領域で太い、請求項5に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項7】
前記容器と前記ターゲットとの間に位置付けられ、使用時に孔が開けられるまで前記容器と前記ターゲットとの間の液体連通を防止する穿孔可能部材をさらに備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項8】
前記容器は、エアロゾル生成システムを形成するために外殻に取り付け可能である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項9】
前記容器は、スナップフィット機構を介して前記外殻に嵌入される、請求項8に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項10】
前記容器は、吸口に取り付け可能である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項11】
気化可能材料を包含するための容器と、
ターゲットと、を備え、前記ターゲットは、前記ターゲットに取り付けられるウィックを有し、前記ウィックが前記気化可能材料と流体連通するように前記容器内に延び、
前記容器および前記ターゲットは、それぞれ、少なくとも部分的に中空シリンダとして形成され、それによって、前記容器は、少なくとも部分的に前記ターゲットを取り囲み、
前記ターゲットは、前記ターゲット内に光ガイドを受け取るように構成されている、交換可能な部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、ゲル、または固体を気化させるためのレーザ光源を有するエアロゾル生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子タバコ等のエアロゾル生成システムが、ユーザの間でますます人気を博している。これら電子タバコの動作原理は通例、風味のあるエアロゾルを、材料を燃焼させることなくユーザに提供することを中心とする。いくつかの既知の装置は、毛細管ウィックと、たとえば装置の吸い口での吸引または装置の押しボタンの作動によってユーザが起動できるコイルヒータとを備える。これにより、液体、ゲル、または固体材料を気化させるヒータを起動するバッテリ電源がオンに切り替わる。さらに、吸い口での吸引により、1つまたは複数の吸気口を通じて空気が装置に引き込まれ、毛細管ウィックを介して吸い口へと向かう。また、毛細管ウィックの近くで発生した蒸気が吸気口からの空気と混ざり合い、エアロゾルとして吸い口へと運ばれる。
【発明の概要】
【0003】
このようなエアロゾル生成システムの設計において直面することが多い特有の課題として、材料を燃焼させることなく効果的に加熱する方法が挙げられる。従来技術のシステムにおいては、セラミック、電線コイル、誘導加熱手段、超音波加熱手段、および/または圧電加熱手段のうちのいずれか1つを備えたヒータが知られている。特に、材料を燃焼させることなく加熱するための適切な手段を実現するものとして、電線コイルヒータとウィックとの構成が見出されている。ただし、電線コイルヒータは、温まるまでにある程度の時間を要する場合があるため、結果としての加熱をユーザが制御するのは、必ずしも容易とは限らない。
【0004】
本発明は、材料を燃焼させることなく加熱するための改良された手段の提供を含めて、前述の問題を克服するエアロゾル生成システムを提供しようとするものである。
【0005】
本発明者らは、電子タバコ等のエアロゾル生成システムの喫煙体験を向上させるには、加熱プロセスにおいて、より高度な柔軟性および制御が求められることを認識した。
【0006】
したがって、本発明の一態様によれば、ターゲットと、使用時に光を放出して気化可能材料をターゲットで気化させるように構成されたレーザ放出器と、を備えた、エアロゾル生成装置が提供される。このエアロゾル生成装置は、最終的に吸い口からユーザにエアロゾルを提供するように構成されていてもよい。該エアロゾル生成装置は、電子タバコ等のエアロゾル生成システムでの使用に特に適していてもよい。この装置は、レーザ放出器から放出された光をターゲットに誘導するための光ガイドをさらに備えることが好ましい。
【0007】
レーザ放出器は、レーザ光を放出する任意の装置として理解され得る。レーザ放出器は、大略同相で同一または同様の波長の光をコヒーレントに放出する点が他の光源と異なる。気化対象の材料を加熱するための手段として、レーザ放出器(半導体型のレーザダイオードであってもよい)を使用することは、材料に供給される熱量をユーザがはるかに容易に制御し得る点において、電線コイルヒータ等の従来の加熱手段よりも都合が良い。
【0008】
レーザ放出器は、ターゲットの表面材料の吸収ピークと一致する波長スペクトルの光を放出可能であることが好ましく、この波長スペクトルは、赤外(IR)スペクトルであることが好ましい。一例として、この波長範囲は、375~3500ナノメートル、より好ましくは700~1000ナノメートル(IR範囲)、さらに好ましくはおよそ785ナノメートルが可能である。
【0009】
このエアロゾル生成装置は、レーザ放出器から放出された光を、ターゲットにおいて液体が気化される点に誘導するための光ガイドを利用することが好ましい。光ガイドは、たとえば内部全反射によって、光源(本発明ではレーザ放出器)からある程度離れた距離の点まで、最小限の損失で光を搬送する導波装置として規定されていてもよい。光ガイドは通例、アクリル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ、およびガラス等の光学等級材料で作られており、本発明のコンテキストにおいて、光ガイドは、光ガイドバーとして成形されていてもよい。
【0010】
光ガイドは、レーザ放出器および/またはターゲットとは別個の構成要素であることが好ましい。光ガイドは、ターゲットとレーザ放出器との間の中間位置において、エアロゾル生成装置中に配置可能であることが好ましい。
【0011】
比較のため、屈折により光を集中または分散させるための光学装置として、レンズが規定されていてもよい。このエアロゾル生成装置は、レーザ放出器と光ガイドとの間に配設されたレンズであって、レーザ放出器により放出され、光ガイドに沿ってターゲットに向けて搬送された光の集中手段を提供するように作用するレンズをさらに備えていてもよい。光ガイドおよびレンズは一体として、非常に正確に設計および実装可能なように、レーザ放出器からの光をターゲットに案内して集中させるように作用するアセンブリを形成する。
【0012】
本明細書において、用語「気化可能」は、当技術分野におけるその通例の意味を有し、加熱によって固体、ゲル、または液体状態から気体状態へと変換可能な材料を表す。したがって、気化可能材料は、液体、固体、およびゲルのうちの1つまたは複数であってもよい。本明細書においては、用語「エアロゾル形成材料」および「気化可能材料」を区別なく使用する場合がある。
【0013】
液体材料としては、タバコ、またはタバコを含む風味物質が挙げられる。追加または代替として、液体材料としては、タバコを含まない風味物質が挙げられる。また、気化対象の液体としては、プロピレングリコール、グリセリン、またはグリコール誘導体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0014】
気化可能材料がゲルの場合、該ゲルは、Nicogel(ニコチンゲル)を含んでいてもよい。気化可能材料が固体の場合、該固体は、固体タバコまたはベイプワックスを含んでいてもよい。また、気化対象のゲルまたは固体としては、プロピレングリコール、グリセリン、またはグリコール誘導体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0015】
用語「エアロゾル」は一般的に、気体(たとえば、空気)中に浮遊している固体または液体粒子を意味するものと理解可能であり、用語「蒸気」は一般的に、たとえば液相から転移した気相の物質を意味するものと理解可能である。ただし、「エアロゾル」および「蒸気」に関する言及は、一般用語であり、他方を除外するものではない。特に、蒸気は、エアロゾルに加えて、ターゲットのごく近くで生成される場合がある。
【0016】
場合によっては、気化可能材料自体がターゲットであってもよく、または、ターゲットが気化可能材料を含んでいてもよく、または、ターゲットとの関連もしくは動作上の近さで、ターゲットが気化可能材料を有していてもよい。
【0017】
また、気化可能材料が液体の場合、エアロゾル生成装置には、使用時に、液体を包含するための容器からターゲットまで気化対象の液体を運ぶためのウィックが設けられていてもよい。ある例においては、ターゲットを、エアロゾル生成装置に挿入して使用する前に液体に浸すようにしてもよい。
【0018】
特に、気化可能材料が液体であり、該液体を気化部位すなわちターゲットまで運ぶためにウィックが採用されている場合、レーザ放出源は、光ガイドによって気化部位から離して配置可能であり、このため、容器から漏れた液体がレンズまたはレーザ放出器にかかるというリスクが低減される。
【0019】
また、光ガイドは、その長さに比較して相対的に薄いことが好ましい。たとえば、光ガイドは、幅が2mm、長さが4cmであってもよい。別の例において、光ガイドの幅対長さの比は、1:5~1:100、より好ましくは1:10~1:50、さらに好ましくは1:20であってもよい。したがって、液体の気化可能材料が用いられる例においては、容器内の液体が光ガイドにかかることがあっても、液体がかかる面積は比較的小さい。
【0020】
光ガイドは、存在する場合には通常、ターゲットのごく近くに配置され得るため、容器から漏れた液体が光ガイドにかかる場合でも、光ガイドを出るレーザ光の散乱が小さいことから、結果的にターゲットに与えられる電力密度は、ほとんど影響を受けない。結局、光ガイドがターゲットのごく近くに配置されていることは、容器から漏れた少量の液体が光ガイドにすら到達しないうちに、該液体がターゲット内に吸収されて包含され得ることを意味する。
【0021】
本発明の例において、ターゲットは、気化対象の液体の特に良好な保持を提供し得るメッシュ構造であってもよい。
【0022】
ターゲットは、繊維または糸を含んでいてもよい。特に、繊維または糸を含むメッシュ構造のターゲットは、気化対象の液体の保持に特に都合が良いと考えられる。
【0023】
ターゲットの材料は、Kevlar、セラミック、および/または金属を含んでいてもよい。一例において、ターゲットは、Kevlar糸を含むメッシュ構造である。別の例において、ターゲットは、セラミック発泡体を含むメッシュ構造である。さらに別の例において、ターゲットは、金属ワイヤメッシュを含むメッシュ構造である。
【0024】
気化可能材料が液体である特に好適な例において、ターゲットは、第1領域と第2領域とを含み、第1領域が第2領域よりも低密度であるため、毛細管現象によって、第1領域から第2領域に液体が吸い寄せられるようになっていてもよい。これを実現し得る方法として、第1領域と第2領域とがそれぞれ、同じ材料の繊維または糸を含み、該繊維または糸が、第2領域よりも第1領域で太くなるようにする。これを実現し得る別の方法として、第1領域と第2領域とが異なる材料の繊維または糸を含み、第1領域の材料が第2領域の材料よりも低密度になるようにする。これらの各構成において、ターゲットの第1領域および第2領域は、第2領域と同じ材料で作られ得るウィックにおいて1つになっていてもよい。
【0025】
第1領域と第2領域との間で密度を異ならせることにより、毛細管現象によって第1領域から第2領域に液体を吸い寄せることが容易になる。このように、エアロゾル生成装置の光ガイドは、液体の濃度がより高いターゲットの第2領域に光を案内することによって、装置の効率を向上させるように構成されていてもよい。
【0026】
さらに効率を向上させるため、エアロゾル生成装置のレーザ放出器は、ターゲットの表面材料の吸収ピーク(たとえば、785ナノメートル)と一致する波長スペクトルの光を放出するように構成されていてもよい。
【0027】
レーザ放出器が赤外スペクトルの光を放出可能であり、ターゲットの表面材料が赤外スペクトルの吸収ピークを有し得ることが好ましい。たとえば、赤外スペクトルは、700~1000ナノメートルであってもよい。ターゲットの材料が本質的に、たとえばUV波長スペクトルの光の影響をより受けやすい場合は、IR光の影響を特に受けやすい被膜をターゲットに塗布することにより、ターゲットの吸収ピークをIR波長スペクトルへとシフトするようにしてもよい。
【0028】
ターゲットが主としてKevlar繊維を含み、該Kevlar繊維が通常、UV光を主に吸収する例においては、IR光波長スペクトルの影響を特に受けやすい被膜をターゲットに塗布することにより、Kevlar繊維が吸収するIR光の量を最適化して、エアロゾル生成装置における液体の気化の効率を向上させるようにしてもよい。
【0029】
エアロゾル生成装置は、気化可能材料を包含するための容器をさらに備えていてもよく、該容器は、エアロゾル生成装置から取り外し可能である。気化可能材料が液体の場合、容器は、気化対象の液体を包含することが好ましく、気化対象の液体は、使用時にウィックを介して容器から引き出されてもよい。
【0030】
容器に加えて、エアロゾル生成装置は、容器とターゲットとの間に位置付けられ、使用時に孔が開けられるまで容器とターゲットとの間の液体連通を防止する穿孔可能部材をさらに備えていてもよい。穿孔可能部材(箔部材であってもよい)は、液体をターゲットに向けて流すために該穿孔可能部材に押し通すことができるように、ウィック自体によって孔開けできるように構成することも可能である。穿孔可能部材を使用する利点は、ユーザがエアロゾル生成装置を使用する準備が整うまで液体を容器に包含させることにより、使用まで液体を新鮮に保つことができることである。
【0031】
ある例においては、それぞれが気化対象の液体を含む2つ以上の容器が(「分割型タンク」容器構成で)採用されていてもよく、気化対象の液体は、互いに同じ液体であってもよいし、それぞれ異なる液体であってもよい。液体が同じ場合は、たとえば生成されるエアロゾルの濃さを調整するために1度に解放する液体の量をユーザがより柔軟に選択できるように、1つまたは複数の穿孔可能部材と併せて分割型タンクを使用可能であることが好ましい。各容器内の液体が異なる場合、ユーザは、1度に使用する液体の風味または数を好みに応じて選択でき、好都合である。
【0032】
2つ以上の容器が用いられる場合、該容器は、一体的にスナップフィットして単一のユニットを形成するように構成されていてもよい。2つ以上の容器をスナップフィット式に組み立てるのに先立ち、気密ブリスターホイルを使用して、容器それぞれを独立に保つとともに、穿孔可能部材が設けられている場合は、そのような穿孔可能部材に予期せず孔が開いてしまうことを防止してもよい。
【0033】
さらに、2つ以上の容器が用いられる場合は、容器ごとに1つのターゲットが設けられていてもよい。1つのレーザおよび1つの光ガイドならびに任意選択としてのレンズアセンブリが各容器と併用されてもよく、これらの構成要素はそれぞれ、互いに固定関係であってもよい。あるいは、単一のレーザおよび光ガイドならびに任意選択としてのレンズアセンブリが用いられてもよく、この場合は、異なる時間に異なるターゲットが加熱可能となるように、ターゲットに対して少なくとも光ガイドおよび任意選択としてのレンズアセンブリが移動可能、好ましくは回転可能であることが好ましい。
【0034】
本発明の別の態様によれば、上で規定したエアロゾル生成装置を備えたエアロゾル生成システムであって、エアロゾル生成装置を受容するための外殻をさらに備えることで、エアロゾル生成装置が少なくとも部分的に外殻内に含まれる、エアロゾル生成システムが提供される。
【0035】
エアロゾル生成システムの構成要素の配置に関するいくつかの例において、(ターゲット、ウィック、レーザ放出器、および光ガイドを備えた)エアロゾル生成装置は、外殻に対して少なくとも部分的に挿入可能かつ取り外し可能となるように構成されていてもよい。
【0036】
エアロゾル生成システムの構成要素の配置に関するいくつかの例において、レーザ放出器は、外殻内に受容および保持されるように構成されていてもよく、容器は、外殻に隣接して受容されるように構成されていてもよく、容器およびターゲットは、外殻から取り外し可能に構成されていてもよい。
【0037】
このシステムは、エアロゾル生成装置が外殻によって受容された時点でレーザ放出器の起動を許可する制御電子機器をさらに備える。場合により、制御電子機器は、エアロゾル生成装置が外殻によって受容された時点においてのみレーザ放出器の起動を許可し、エアロゾル生成装置に外殻がない場合は許可しないようにしてもよい。制御電子機器は、レーザ放出器が外殻によって受容され、該レーザ放出器に対してその他の構成要素が適所に配置されていなければレーザ放出器が光を放出することができないように、安全機能として作用する。制御電子機器は、たとえばエアロゾル生成装置の有無を検出する光学または他の近接センサであってもよい。
【0038】
容器およびターゲットそれぞれの形状は、少なくとも部分的に中空シリンダとして形成されており、容器が少なくとも部分的にターゲットを囲み、容器と外殻とが互いに対して回転可能であるため、外殻に対する容器の相対的な回転によって、光ガイドとターゲットとが相対的に回転してもよい。これにより、レーザ放出器により放出された光が、ターゲットの円周上のさまざまな部分でターゲットに当たる効果が奏される。
【0039】
当然のことながら、上述のエアロゾル生成システムのエアロゾル生成装置と関連付けられた特徴および利点はすべて、エアロゾル生成システムにも同様に当てはまり得る。
【0040】
本発明の別の態様によれば、レーザ放出器でレーザ光を生成するステップと、レーザ光を案内して、気化可能材料からエアロゾルを形成するステップと、を含む、エアロゾル生成装置またはエアロゾル生成システムでエアロゾルを生成する方法が提供される。実施形態において、この方法は、光ガイドでレーザ光を誘導することを含んでいてもよい。
【0041】
この方法とともに用いられるエアロゾル生成装置は、吸い口からユーザにエアロゾルを提供するように構成された装置であってもよい。レーザ光は、ターゲットおよび/または気化可能材料に誘導されてもよい。気化可能材料自体がターゲットであってもよく、または、ターゲットが気化可能材料を含んでいてもよく、または、ターゲットとの関連もしくは動作上の近さで、ターゲットが気化可能材料を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下、添付の図面を参照して、本発明の特定の好適な実施形態を説明するが、これらは単なる例示に過ぎない。
【
図1A】本発明の一例に係るエアロゾル生成装置の正面図である。
【
図1B】本発明の一例に係るエアロゾル生成装置の側面図である。
【
図1C】本発明の一例に係るエアロゾル生成装置の分解図である。
【
図2】本発明の一例に係る、エアロゾル生成装置に用いられるターゲットおよびウィックの正面図である。
【
図3A】2分割型タンク容器構成を示した図である。
【
図3B】2分割型タンク容器構成の一部の正面図である。
【
図4A】本発明の一例に係るエアロゾル生成システムの側面図である。
【
図4B】本発明の一例に係るエアロゾル生成システムの側面図である。
【
図5A】本発明の一例に係る、制御電子機器の形態のエアロゾル生成システムの安全機能の側面図である。
【
図5B】本発明の一例に係る、制御電子機器の形態のエアロゾル生成システムの安全機能の側面図である。
【
図6A】本発明の別の例に係る、エアロゾル生成装置の正面図および側面図である。
【
図6B】本発明の別の例に係る、エアロゾル生成装置の正面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の複数の例示的な実施形態を説明する前に、本発明が、以下の説明に記載の構成またはプロセスステップの内容に限定されないことが了解されるものとする。本開示の利益を享受する当業者には、本発明が他の実施形態も可能であり、さまざまな方法で実施または実行可能であることが明らかとなるであろう。
【0044】
図1A、
図1B、および
図1Cにはそれぞれ、本発明の一例に係る、エアロゾル生成装置10が、正面図、側面図、および分解図で示されている。基本的構成において、エアロゾル生成装置10は、ターゲット11と、使用時に、搬送対象の液体を包含するための容器18からターゲット11まで気化対象の液体17を運ぶための4本のウィック12と、使用時に光を放出して液体17をターゲット11で気化させるように構成された、レーザダイオード13の形態であってもよいレーザ放出器13と、レーザ放出器13から放出された光をターゲット11に誘導するための光ガイド14と、を備える。
図1A、
図1B、および
図1Cのエアロゾル生成装置10は、液体17を含む容器18と、制御電子機器16と、バッテリ19とをさらに備える。
【0045】
図1A、
図1B、および
図1Cには、容器18が、液体17が含まれた中空シリンダとして示されており、ターゲット11も、容器内に存在する中空シリンダとして示されており、ターゲット11には4本のウィック12が取り付けられ、ターゲット11は液体17と流体連通するように容器18へと延入している。光ガイド14はターゲット11内に存在し、レーザ放出器13により放出された光をターゲット11に向けて案内する。
図1A、
図1B、および
図1Cの例は、4本のウィック12を示しているが、本発明は、1本または複数本のウィックを用いても同様に実現可能である。図示しない別の例においては、1つまたは複数の導管の毛細管現象による等の別の手段によって、流体がターゲットに運ばれてもよい。
【0046】
図1Aでは、光ガイド14が、互いに隣接する2本の光バーから成り、一方の光バーがターゲット11に向かって光を上方に誘導し、他方の光バーが同じターゲット11に向かって光を下方に誘導することが分かる(ただし、図示しない別の例においては、単一の光バーが用いられるのであってもよい)。
図1Bでは、光が出ていく点において、光バーが最大45°の角度を有し、極めて正確かつ制御された光の再誘導がなされることが分かる。レーザ放出器は、IRスペクトルの波長(たとえば、700~1000ナノメートル、または、より好ましくは785ナノメートル)の光を放出してもよい。
図1Cには、レーザ放出器13から放出された光が、光ガイド14に到達する前に、放出レーザ像(たとえば、1マイクロメートル×100マイクロメートルのサイズであってもよい)を最終サイズ(たとえば、0.1ミリメートル×10ミリメートルのサイズ)へと適応させ得るレンズ15を最初に透過することを示している。上記例の変形例においては、レンズおよび/または光ガイド14が省略されていてもよい。
【0047】
ターゲット11は、たとえば容器18からウィック12を介して液体17が供給される部分的に被覆されたKevlar糸等のメッシュ構造を含んでいてもよい。Kevlar繊維は一般的に、紫外光吸収性であるため、被膜は、レーザ放出器13により放出された赤外光と協働するために主として赤外光を吸収する材料を含んでいることが好ましい。図示しない別の例において、メッシュ構造は、セラミック発泡体または金属ワイヤメッシュであってもよい。
【0048】
図2には、エアロゾル生成装置のターゲット21が拡大図で示されている。ターゲット21は、糸の質が異なる2つの異なるエリアから成るターゲットメッシュである。第1領域21Aは、細い繊維で高密度に織られた第2領域21Bよりも低密度に織られた、太い繊維を含む。この構成は、毛細管現象によって第1領域21Aから第2領域21Bに液体が吸い寄せられるように、第1領域21Aと第2領域21Bとの間に毛細管力の勾配を与えるように選ばれている。この例においては、2つの異なる糸エリアが、ウィック22において1つになる。光ガイドを経由した、レーザ放出器からのレーザ光は、生じる気化の量を最大化するために液体が集中する高密度糸の細い繊維に向かって案内され得ることが好ましい。
【0049】
図3A、
図3B、および
図3Cには、容器およびターゲットの分割型タンク構成が図示されている。ここでは、容器38A、38B内に異なる風味の液体37A、37Bを保持することができる。これにより、ユーザは、喫煙体験中の任意の時に、気化させる液体37A、37Bの風味を柔軟に選ぶことができる。2つの容器38A、38Bは、たとえば図示のようなスナップフィット機構、フォースフィット、フリクションフィット、または他の適当な取り付け等の接続構成によって一体的に存在していてもよい。容器38A、38Bは、エアロゾル生成システムの外殻に対して挿入されて供給され、かつ該外殻から取り外し可能であってもよい。このため、上記のようなエアロゾル生成システムは再利用可能であってもよく、たとえば容器に含まれる液体がすべて気化した時点または異なる風味の液体をユーザが喫煙したい場合に、同一または異なる液体を含む容器が、必要に応じてユーザにより交換されてもよい。
【0050】
図3Cに示すように、使用に先立ち、交換式の容器が、該容器にアクセスするためにユーザが剥がすことができる箔膜を用いて気密に閉塞されたブリスターパック310に入っていてもよい。いくつかの例においては、容器38A、38B内に延びて使える状態であるようにウィック32Aがすでに配置されていてもよい。ただし、
図3Bに示すような別の例において、エアロゾル生成装置は、容器38Bとターゲット32Aとの間に位置付けられ、使用時に孔が開けられるまで容器38Aおよび38Bとターゲット31との間の液体連通を防止する穿孔可能部材300をさらに備える。
図3Bの例において、ユーザは、ブリスターパック310を剥がした後、たとえばウィック32Bを用いて穿孔可能部材300に孔を開けることにより、ウィック32Bを介した容器38Bとターゲット31との間の流体連通を可能にし得る。
【0051】
ここで
図4Aおよび
図4Bを参照すると、エアロゾル生成システム40A、40Bの2つの異なるセットアップが示されている。いずれの場合も、エアロゾル生成システム40A、40Bは、ターゲット41A、41B、ウィック42A、42B、レーザ放出器43A、43B、光ガイド44A、44B、レンズ45A、45B、制御電子機器46A、46B、容器48A、48B内に保持された液体47A、47B、バッテリ49A、49B、吸い口410A、410B、および外殻400A、400Bを備える。
【0052】
図4Aおよび
図4Bのエアロゾル生成システム40A、40Bの違いは、エアロゾル生成システム40Aの外殻400Aがエアロゾル生成装置全体を内部に保持するように構成されている点であり、エアロゾル生成システム40Aは、外殻400Aが吸い口410Aに隣接する、完全に組み立てられた状態で示されている。これに対して、エアロゾル生成システム40Bの外殻400Bは容器48Bに隣接しており、
図4Bにおいて、エアロゾル生成システム40Bは、部分的に挿入された状態で示されている。この場合は、バッテリ49B、制御電子機器46B、レーザ放出器43B、および光ガイド44Bが、外殻400B内に位置決めされて取り付けられている。容器48Bは、スナップフィット機構によって外殻400Bに嵌入されていてもよい。容器48Bは、吸い口410Bが取り付けられたエアロゾル生成システム(電子タバコであってもよい)の前端に位置付けられている。
【0053】
図4Aおよび
図4Bに示すように(ただし、図面の例のいずれにも適用可能)、容器48A、48Bは、透明材料で作られていてもよいため、容器48A、48B内の液体47A、47Bの残量レベルをユーザが視認可能である。これにより、容器48A、48Bを交換すべきタイミングまたは容器に含まれる液体47A、47Bを補充すべきタイミングをユーザに示すことができる。各例において、容器48A、48Bは、容易に交換可能であるとともに、使い捨てに適している。
【0054】
2つ以上の容器48A、48Bが設けられている場合、光ガイド44A、44Bを出る光の方向は、光ガイド44A、44Bの回転、または光ガイド44A、44Bおよびレンズ45A、45Bの回転、または光ガイド44A、44B、レンズ45A、45B、およびレーザ放出器43A、43Bというアセンブリ全体の回転によって変更可能である。したがって、レーザ放出器43A、43Bおよび光ガイド44A、44Bの単一アセンブリが、異なる液体47A、47Bを含む複数の容器48A、48Bと併用されてもよく、それぞれがウィック42A、42Bおよびターゲット41A、41Bのアセンブリを有し、ユーザによる適当な構成要素の回転によって、異なる容器48A、48Bと関連付けられた異なるウィック42A、42Bが加熱される。あるいは、容器およびターゲットごとに、レーザ放出器43A、43B、レンズ45A、45B、および光ガイド44A、44Bのアセンブリが設けられていてもよい。
【0055】
図面に示すいずれかの例のシステムの別の利点として、レーザ放出器43A、43Bの光源は、光ガイド44A、44Bの配置によって気化部位から離れているため、液体47A、47Bが容器48A、48Bから漏れてレンズ45A、45B、レーザ放出器43A、43B、または制御電子機器46A、46Bにかかるというリスクが低減されることが含まれる。
【0056】
光ガイド44A、44Bは、その長さに比較して相対的に薄くても、たとえば光ガイドは、幅が2mm、長さが4cmであってもよいため、容器48A、48B内の液体が光ガイドにかかることがあっても、液体がかかる面積は比較的小さい。
【0057】
さらに、光ガイド44A、44Bは、ターゲット41A、41Bのごく近くに配置されているため、容器48A、48Bから漏れた液体が光ガイド44A、44Bにかかる場合でも、光ガイド44A、44Bを出るレーザ光の散乱が小さいことから、結果的にターゲット41A、41Bに与えられる電力密度は、ほとんど影響を受けない。結局、光ガイド44A、44Bがターゲット41A、41Bのごく近くに配置されていることは、容器48A、48Bから漏れた少量の液体が光ガイド44A、44Bにすら到達しないうちに、該液体がターゲット41A、41B(高吸収性のメッシュ構造であってもよい)内に吸収されて包含され得ることを意味する。
【0058】
【0059】
図面のいずれかのエアロゾル生成システムに含まれ得る多くの安全機能を、
図5Aおよび
図5Bに示す。これらにより、たとえばエアロゾル生成システムに挿入された気化可能材料を含む容器がない場合の、不要なレーザビームが回避される。
図5Aにおいて、容器が制御電子機器56Aの受容部に挿入されると、電気安全回路が閉じる。回路が閉じた場合にのみ、レーザ放出器をオンに切り替えることができる。安全機能に加えて、異なる風味の液体に異なる抵抗値を割り当てることによって、容器58A内に含まれる異なる風味の液体が識別されてもよい。
【0060】
エアロゾル生成システムに設け得る別の安全機能を
図5Bに示すが、この場合は、レーザ放出器がオンに切り替え可能となる前に、光バリアを遮断または閉塞する必要がある。容器58Bの幾何学的形状は、制御電子機器56Bの受容部にぴったりと収まるように選択される。
【0061】
図6Aおよび
図6Bは、使用される気化可能材料が固体またはゲルであるエアロゾル生成装置60の一例を示すが、レーザ放出器は示していない。
図6Aは正面図を表し、
図6Bは側面図を表す。
【0062】
エアロゾル生成装置60は、この場合も固体またはゲルの気化可能材料であるターゲット61を備える。レーザ放出器(
図6Aにも
図6Bにも示さず)から放出された光をターゲット61に誘導するための光ガイド64も示されている。光がターゲットまたは気化可能材料61に当たると、該材料は気化して、喫煙に適した気体状態となる。
【0063】
特許請求の範囲においては、括弧内のいかなる符号も、該請求項を制限するものとは解釈されないものとする。単語「備える」は、請求項に記載されているもの以外の他の要素またはステップの存在を除外するものではない。さらに、本明細書で使用する用語「1つの」は、1つまたは複数として規定される。また、特許請求の範囲における「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」等の前置句の使用は、任意特定の請求項が前置句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「a」もしくは「an」等の不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」または「an」による別の請求要素の導入によって、そのような導入された請求要素を含む同請求項が、そのような要素を1つだけ含む発明に限定されることを示唆するものとは解釈されないものとする。同じことが、定冠詞の使用にも当てはまる。特に明記しない限り、「第1」および「第2」等の用語は、該用語が表す要素を任意に区別するために使用している。したがって、これらの用語は、該要素の時間的なまたは他の優先順位を指定することを必ずしも意図したものではない。相互に異なる請求項に特定の手段が列挙されているという事実だけでは、これらの手段の組み合わせを都合良く使用できない、ということにはならない。
【0064】
当然のことながら、本発明の一例に関して上述した特徴は、必要に応じて、その他の任意の例にも同様に当てはまり得る。