IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アリス・コンポジッツ・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】複合流成形のための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/48 20060101AFI20221012BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B29C70/48
B29C45/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021519697
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 US2019055445
(87)【国際公開番号】W WO2020076984
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】62/743,390
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/597,647
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/597,676
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521016379
【氏名又は名称】アリス・コンポジッツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリック・デヴィッドソン
(72)【発明者】
【氏名】イーサン・エスコウィッツ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・ヘネシー
(72)【発明者】
【氏名】ライリー・リース
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-269786(JP,A)
【文献】特開2005-033133(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00177736(EP,A2)
【文献】特開2011-131421(JP,A)
【文献】米国特許第05753164(US,A)
【文献】米国特許第05435953(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29C 45/00-45/84
B29C 43/00-43/58
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャキャビティ内の積み重ねにおいて、プリフォームの第1および第2のグループを順番付けるステップであって、各グループは複数のプリフォームを含み、各プリフォームは樹脂コーティング繊維を含み、プリフォームの前記第1のグループおよびプリフォームの前記第2のグループは、少なくとも1つの特性に関して互いに異なる、ステップと、
前記樹脂を液化するステップと、
前記プランジャキャビティを通じてプランジャを前進させて、モールドキャビティ内に、プリフォームの2つのグループからの繊維および樹脂を押し込むステップと、
順に、第1のベント、次いで第2のベントを作動させるステップとを含み、
前記第1のベントは前記モールドキャビティの第1の領域に流体結合され、
前記第2のベントは前記モールドキャビティの第2の領域に流体結合され、
前記第1のベントを作動させた結果、前記第1の領域に繊維が優先的に流れ、
前記第2のベントを作動させた結果、前記第2の領域に繊維が優先的に流れ、前記積み重ね内のプリフォームの順番付けおよび前記ベントの作動の順序付けは、プリフォームの前記第1のグループからの繊維が前記第1の領域に流れ、プリフォームの前記第2のグループからの繊維が前記第2の領域に流れるように協調される、
成形のための方法。
【請求項2】
前記繊維および樹脂を冷却して複合部品を作成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
積み重ねにおいて順番付けするステップは、前記プランジャキャビティにおいて、プリフォームの前記第1のグループに第1の空間的配向を、プリフォームの前記第2のグループに第2の空間的配向をもたらすステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の空間的配向および前記第2の空間的配向は、前記プランジャキャビティの軸方向に配列されること、前記プランジャキャビティ横断方向に配列されること、前記モールドキャビティの軸方向に配列されること、前記モールドキャビティの横断方向に配列されることからなる群から個別に選択される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
プリフォームの前記第1のグループおよびプリフォームの前記第2のグループは、前記プランジャキャビティの横断方向に配列され、互いに直交することも平行になることもない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つの特性は、前記プリフォームの前記繊維の長さ、前記プリフォームの前記繊維の組成、および前記プリフォームの繊維体積分率からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プリフォームの前記第1のグループは、プリフォームの前記第2のグループよりも積み重ね内で相対的に低く、モールドキャビティに近く、したがってプリフォームの前記第1のグループからの前記繊維は、プリフォームの前記第2のグループからの繊維の前に、前記モールドキャビティを通じて流れる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の領域は、前記第2の領域に関連する特徴部よりも相対的に小さい特徴部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プリフォームの前記第1のグループは、前記プランジャキャビティおよび前記モールドキャビティのいずれかの少なくとも一方に関してプリフォームの前記第2のグループとは異なる空間的配向を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記樹脂を液化する前に、プリフォームを前記モールドキャビティに追加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
繊維の大部分は、前記モールドキャビティの主軸と実質的に同じ長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記繊維および樹脂が前記モールドキャビティを通じて流れた後に、モールドキャビティを冷却するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記プランジャキャビティは、前記モールドキャビティの最長軸に関して少なくとも45度面外に配向される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連件の陳述
本件は、2018年10月9日に出願された米国特許出願第62/743,390号の優先権を主張するものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、複雑な部品、特に、非常に小さい、薄い、または複雑な特徴を有する部品の成形に関するものである。
【背景技術】
【0003】
繊維複合材料から部品を加工することが望ましい場合がしばしばある。繊維複合部品は、樹脂から形成されたマトリックス内に分散された繊維を含む。マトリックスは、繊維が摩耗および環境攻撃を受けるのを防ぐことに加えて、繊維の相対的位置を維持することによって繊維を取り囲んで支持する。繊維は、その機械的および物理的性質を付与することでマトリックスの機械的および物理的性質を高める。この組合せには相乗効果があり、複合物は、非常に高い強度対重量比など、個別の構成要素からは得られない材料性質を有する。
【0004】
圧縮成形、フィラメントワインディング、引抜成形、湿式レイアップ、およびトランスファー成形などの、様々な異なる成形プロセスが、繊維複合部品の形成に利用可能である。しかしながら、非常に小さい、薄い、または複雑な特徴を有する複雑な部品、特に十分な強度および剛性を必要とする部品を加工するために、このようなプロセスを使用することは難題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、非常に小さい、薄い、または複雑な特徴、さらには所望の性質を有する、繊維強化部品を加工するための方法を提供する。そのような部品は、曲げられたプリフォームに対応するには小さすぎる/薄すぎる特徴のサイズを有することもあり得るであろうが、それと同時に、強度および剛性のために連続した繊維を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本教示によると、プリフォームは、モールドキャビティの一部に置かれる。プリフォームは、繊維のサイズが決められた、またはサイズと形状が決められた束である。例示的な実施形態において、繊維の束は、数千本の繊維を含み、典型的には「トウ」と称される。例示的な実施形態において、トウ内の繊維は、ポリマー樹脂を(予)含浸されており、そこで、トウは、「トウプレグ」または「プリプレグトウ」と称される。
【0007】
プリフォームは、圧縮され、そして加熱され、これにより中にある樹脂が溶融される。例示的な実施形態において、圧縮は、プランジャキャビティ内で直線的に移動するプランジャによって施され、プランジャのストローク軸(方向)は、モールドキャビティの主面に関して少なくとも45度面外に向けられる。例示的な実施形態において、モールドキャビティの主面は、プランジャのストローク軸に実質的に直交している。
【0008】
本発明の実施形態は、プランジャを利用する先行技術の成形プロセスでは可能でないレベルの繊維の移動/配置の制御を使用可能にする。先行技術において、特に射出成形プロセスでは、細断繊維が原材料として使用される。細断繊維がプランジャを介してモールド内に押し込まれるときに、モールドキャビティを通る樹脂の移動、さらには他の繊維の複雑なランダムマトリックスとの衝突に基づき回転し、ターンする。しかしながら、本発明の実施形態において、原材料は、相対的に長い繊維(すなわち、形成される部品の主軸の長さと同程度の長さを有する繊維)の大部分を含む。長い繊維を使用することで、部品の基礎繊維構造が安定化されると考えられるが、これは、プロセスの特徴により繊維がある程度の張力をかけられたままにされ、繊維は液体樹脂の流れに厳密に従わないからである。むしろ、モールドキャビティ内の繊維の位置および配向、したがって、最終部品は、液化樹脂ではなくむしろ、繊維の特性(たとえば、長さ、プランジャキャビティ内の配向など)によって、十分な程度に制御される。
【0009】
本発明の方法の実施形態において、プリフォームは、
・プリフォームがプランジャのストローク方向に揃うか、または
・プリフォームがプランジャのストローク方向に直交する平面に揃うか、または
・一部がプランジャのストローク方向に揃い、一部がプランジャのストローク方向に直交する平面内にあるか、
・プリフォームがモールドキャビティの主面に平行である1つまたは複数の平面に揃うか、または
・プリフォームがプランジャのストローク方向に揃うことも、プランジャのストローク方向に直交する平面に揃うこともない
ように配向される。
モールドキャビティの主面に平行である1つまたは複数の平面に揃うプリフォームについて、この方法のいくつかの実施形態において、
・プリフォームは、モールドキャビティの(最)長軸に揃えられる(すなわち、「軸」方向である)か、または
・プリフォームは、モールドキャビティの(最)長軸に対して横断(面内および直交)する(すなわち、「横断」方向である)か、または
・一部は軸方向に揃い、一部は横断方向に揃うか、または
・軸方向および横断方向に関して非ゼロの角度で配向されるか、または
・軸方向および横断方向に関して異なる非ゼロの角度で配向される少なくとも2つのグループに分離される。
様々な実施形態において、プリフォームは、
・連続繊維(すなわち、モールドキャビティの最長軸と同じ長さの繊維)、または
・より短い繊維(すなわち、モールドキャビティのより小さい特徴の長さに類似する長さを有する繊維)、または
・連続繊維およびより短い繊維の両方の混合体
を含む。
【0010】
繊維は、ある程度まで、モールドキャビティを通る流れの方向に揃う傾向がある。また、繊維は、圧力が相対的に低い領域に流れる。その結果、本発明者らは、適切なサイズの繊維であれば、非常に薄い、小さい、または他の何らかの形で複雑な特徴に誘導され得るか、または部品内の最終的な配向が設計され得ることに気付いた。その点に関する重要なパラメータは、繊維のサイズ(すなわち、小さな特徴のサイズと同程度のサイズ)、さらにはモールドキャビティを通る樹脂および繊維の流れを変えることができる、ベントの選択的配置および作動である。
【0011】
いくつかの実施形態により、プランジャ駆動式圧縮成形時のモールドキャビティ内の繊維の最終的な場所、したがって、加工されている部品内の最終的な場所は、用途の詳細に応じて、
(a)繊維長、
(b)プランジャキャビティ内の繊維の配向、
(c)プランジャキャビティ内で繊維(プリフォーム)が積み重ねられる順番、
(d)モールドキャビティ内の、ベントの組み込み、およびその特定の配置、
(e)ベント作動の順序付け
のパラメータのうちの1つまたは複数を使用することを通じて制御され得る。
【0012】
原材料(すなわち、プリフォーム)は、プランジャキャビティ内に配置される。いくつかの実施形態において、プリフォームは、プランジャキャビティ内に連続的な層として積み重ねられる。樹脂が溶融した後(熱/エネルギーが加えられることにより)、プランジャキャビティを通じてプランジャを前進させることで、繊維および溶融樹脂をモールドキャビティ内に押し込む。いくつかの実施形態において、単一のプランジャストロークにおいてベントが複数回開閉される。ベントの使用は、モールドキャビティの所望の領域内で圧力が選択的に減圧されることを可能にし、これは樹脂および繊維の流れをそのような減圧領域に誘導することを円滑にする。
【0013】
方法のいくつかの実施形態により、ベントの作動の順序付けは、その積み重ね内のプリフォームの異なる層/グループがモールドキャビティの異なる領域に誘導されることを可能にする。
【0014】
たとえば、モールドキャビティの第1の特徴に近接する第1のベントがあり、モールドキャビティの第2の特徴に近接する第2のベントがあるモールドキャビティを考える。繊維を第1の特徴に選択的に誘導するために、第1のベントが開かれる。繊維を第2の特徴に選択的に誘導するために、第2のベントは、第1のベントの後しばらくしてから開かれる。たとえば、モールドキャビティの第1の特徴がモールドキャビティの全体的サイズに比べて相対的に小さい場合、その領域を対象とする繊維は、モールドキャビティの主要な領域に誘導される繊維よりも小さくなる。より具体的には、これらのより小さい繊維は、第1の(相対的に小さい)特徴のサイズと同程度のサイズである。典型的には、より小さい繊維は、この特徴よりもいくぶん長く、より長い繊維がキャビティの主要領域内にあるそれらの繊維の重なりを円滑にする。そのような重なりは、部品の強度を高める。
【0015】
典型的には、第1のベントは、第2のベントを開く前に閉じられる必要はない。特に、第1の特徴が繊維と樹脂とで満たされると、その特徴により多くの材料を押し込むために必要な圧力が劇的に増大する。したがって、第2のベントが開いた後、材料が第2の特徴の方へ流れるが、それは圧力が低く、繊維および樹脂が流れやすいからである。この例では、第1のベントの開放、および一定期間後の第2のベントの開放は、両方とも、単一のプランジャストロークにおいて生じる。
【0016】
さらに、モールドキャビティ内の繊維の配向、したがって、最終部品の配向は、プリフォームの配向の影響を受け得る。そのような配向は、(1)プランジャのストローク方向に関する、および/または(2)モールドの軸に関する、プリフォーム(繊維)の配向を含む。これらのパラメータを使用して繊維配向を制御することで、部品の軸外方向の強度を高めることができる。
【0017】
さらに、モールドキャビティ内の繊維の端部の場所を制御することができると前に述べたことに基づき、部品を通して弾性率勾配(すなわち、ヤング率の勾配)が確立され得る。これは、たとえば、繊維のタイプが異なるプリフォーム(たとえば、炭素繊維を含むプリフォーム、ガラス繊維を含むプリフォームなど)を使用し、またプランジャキャビティ内の積み重ねにおいてそれらを適切に編成することによって達成され得る。ベントを選択的に作動させることと併せて、異なる材料はモールドキャビティ内の異なる場所で終わる。
【0018】
代替的に、弾性率勾配は、繊維体積分率を制御することによって得ることができる。たとえば、プリフォームの第1のグループは、繊維体積分率がプリフォームの第2のグループよりも相対的に大きくなるように形成され得る(すなわち、樹脂は、プリフォームの第2のグループに比べて、プリフォームの第1のグループにおいて、全構成要素のパーセンテージとして相対的に少ない)。ベントの選択的作動の前述の技術を使用することで、モールドキャビティ内でプリフォームの第1のグループと第2のグループとを適切に積み重ねることと併せて、プリフォームの第1のグループからの樹脂および繊維は、モールド内の第1の場所へ誘導され、プリフォームの第2のグループからの樹脂および繊維は、モールド内の第2の場所へ誘導され得る。この結果、モールドの第1の場所、したがって最終部品内に、繊維が相対的に豊富な領域が作られ、それによって前述の弾性率勾配が得られる。
【0019】
また、部品の選択された領域の強度および剛性は、異なる長さを有するプリフォームを使用することによって制御され得る。それらのパラメータは、部品の特定の領域内の繊維の重なりの程度(すなわち、部品の主要部分におけるより長い繊維が部品のより小さい/入り組んだ特徴における潜在的により小さい繊維と重なる量)に応じて変更され得る。ここでもう一度、これは、ベントを使用し、ベントを選択的に作動させ、異なる長さ、およびいくつかの用途ではプランジャキャビティおよび/またはモールドキャビティに関して異なる配向の、繊維を有するプリフォームを適切に積み重ねることで実装される。
【0020】
要約すると、本発明のいくつかの実施形態は、圧縮成形を介した部品の加工のためのモールドと併せてモールドキャビティに関して面外にあるプランジャを利用する。いくつかの実施形態では、それに加えて、ベントが、繊維の移動をモールドキャビティの特定の領域に誘導するのを助けるために使用される。ベントおよびプランジャは、従来技術において、典型的には射出成形で使用することについて知られているが、そのような使用は本発明の実施形態とは異なる。従来技術とは異なり、出願人は、いくつかの実施形態について、
・繊維および樹脂の流れをモールドキャビティ内の特定の場所に誘導する、ベントの順序付けされた作動、
・部品を成形するための差別化されたプリフォーム(たとえば、異なる長さ、異なる材料、異なる配向など)の使用、
・差別化されたプリフォームがモールドのプランジャキャビティ内で特定の順番で積み重ねられる、順番付けされたプリフォームの積み重ねの使用、および
・順序付けされたベント作動と順番付けされたプリフォームの積み重ねを調整することを開示する。
これらの技術は、モールドキャビティ内の繊維配置、したがって成形される部品を、これまでにないレベルで制御することができる。そのような教示は、従来技術では知られていなかった。たとえば、射出成形プロセスへの原材料は典型的には均質であり、モールドキャビティ内の異なる領域に原材料を誘導するという概念がないことに加えて、原材料が差別化されていなかったのでそうする理由がなかったと考えられる。
【0021】
本発明の教示により、プリフォームは、プランジャキャビティ内に配置される。プリフォームの最下層は、モールドキャビティの一部に載る。プランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に対して面外にある。例示的な実施形態において、プランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に対して90度面外にある(すなわち、直交する)。いくつかの他の実施形態では、プランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に対して45度より大きい角度で面外にある。モールドに関するプランジャ/プランジャキャビティの配向により、モールドキャビティ内の繊維の最初の移動は(繊維が積み重ね内のその位置から離れる方向に移動するときに)、剪断力を介する。
【0022】
第1の実施形態において、本発明は、
プランジャキャビティを通じてプランジャを前進させることであって、前進するプランジャは複数のプリフォームから供給される液化樹脂および複数の繊維をプランジャキャビティからモールドキャビティ内に押し込む、前進させることと、
液化樹脂および複数の繊維のうちの繊維の第1のグループを、モールドキャビティ内の第1の領域の方へ優先的に流すことと、
液化樹脂および繊維の第1のグループがモールドキャビティの第1の領域に流れた後に、液化樹脂および複数の繊維のうちの繊維の第2のグループをモールドキャビティ内の第2の領域の方へ優先的に流すこととを含む方法を提供する。
【0023】
第2の実施形態において、第1の実施形態に加えて、液化樹脂および繊維の第1のグループを優先的に流すことは、モールドキャビティの他の領域に比して第1の領域内の圧力を低減することをさらに含む。
【0024】
第3の実施形態において、第2の実施形態に加えて、第1の領域内の圧力を低減することは、第1の領域に流体結合されている第1のベントを作動させることをさらに含む。
【0025】
第4の実施形態において、第2の実施形態に加えて、液化樹脂および繊維の第2のグループを優先的に流すことは、モールドキャビティの他の領域に比して第2の領域内の圧力を低減することをさらに含む。
【0026】
第5の実施形態において、第4の実施形態に加えて、第1の領域内の圧力を低減することは、第1の領域に流体結合されている第1のベントを作動させることをさらに含み、第2の領域内の圧力を低減することは、第2の領域に流体結合されている第2のベントを作動させることをさらに含む。
【0027】
第6の実施形態において、第1の実施形態に加えて、複数のプリフォームは、繊維の第1のグループを有するプリフォームの第1のグループと、繊維の第2のグループを有するプリフォームの第2のグループとを含み、プリフォームの第1および第2のグループは、少なくとも1つの特性に関して互いに異なる。
【0028】
第7の実施形態において、第6の実施形態に加えて、少なくとも1つの特性は、プリフォームの繊維の長さ、プリフォームの繊維の組成、およびプリフォームの繊維体積分率からなる群から選択される。
【0029】
第8の実施形態において、第6の実施形態に加えて、1つの特性は、プリフォームの繊維の長さであり、プリフォームの第1のグループは、プリフォームの第2のグループよりも相対的に短い繊維を有し、この方法は、第1のグループがモールドキャビティに相対的に近い位置に位置付けられるようにプランジャキャビティ内の積み重ね内のプリフォームの第1のグループおよび第2のグループを順序付けすることをさらに含む。
【0030】
第9の実施形態において、第6の実施形態に加えて、プランジャキャビティ内のプリフォームの第1のグループおよびプリフォームの第2のグループの空間的配向は、互いに異なる。
【0031】
第10の実施形態において、第1の実施形態に加えて、方法は、プランジャを前進させる前に、プリフォームをモールドキャビティに追加することをさらに含む。
【0032】
第11の実施形態において、第6の実施形態に加えて、この方法は、プリフォームの第1のグループおよびプリフォームの第2のグループがプランジャキャビティ内で積み重ねられる順番を、繊維の第1のグループおよび繊維の第2のグループがモールドキャビティのそれぞれ第1および第2の領域の方へ優先的に流される順序と協調させることをさらに含む。
【0033】
第12の実施形態において、本発明は、
プランジャキャビティ内の積み重ねにおいて、プリフォームの第1および第2のグループを順番付けることであって、各グループは複数のプリフォームを含み、各プリフォームは樹脂コーティング繊維を含み、プリフォームの第1のグループおよびプリフォームの第2のグループは、少なくとも1つの特性に関して互いに異なる、順番付けることと、
樹脂を液化することと、
プランジャキャビティを通じてプランジャを前進させて、モールドキャビティ内に、プリフォームの2つのグループからの繊維および樹脂を押し込むことと、
順に、第1のベント、次いで第2のベントを作動させることとを含む、成形のための方法を提供し、
第1のベントはモールドキャビティの第1の領域に流体結合され、
第2のベントはモールドキャビティの第2の領域に流体結合され、
第1のベントを作動させた結果、第1の領域に繊維が優先的に流れ、
第2のベントを作動させた結果、第2の領域に繊維が優先的に流れ、
積み重ね内のプリフォームの順番付けおよびベントの作動の順序付けは、プリフォームの第1のグループからの繊維が第1の領域に流れ、プリフォームの第2のグループからの繊維が第2の領域に流れるように協調される。
【0034】
第13の実施形態において、第12の実施形態に加えて、方法は繊維および樹脂を冷却して複合部品を作成することを含む。
【0035】
第14の実施形態において、第12の実施形態に加えて、積み重ねにおいて順番付けすることは、プランジャキャビティにおいて、プリフォームの第1のグループに第1の空間的配向を、プリフォームの第2のグループに第2の空間的配向をもたらすことをさらに含む。
【0036】
第15の実施形態において、第14の実施形態に加えて、第1の空間的配向および第2の空間的配向は、プランジャキャビティに関して軸方向に揃えられること、プランジャキャビティに関して横断方向に揃えられること、モールドキャビティに関して軸方向に揃えられること、モールドキャビティに関して横断方向に揃えられることからなる群から個別に選択される。
【0037】
第16の実施形態において、第14の実施形態に加えて、プリフォームの第1のグループおよびプリフォームの第2のグループは、プランジャキャビティに関して横断方向に揃えられ、互いに直交することも平行になることもない。
【0038】
第17の実施形態において、本発明は、
プリフォームの第1のグループを、プランジャキャビティ内で第1の配向に置くことと、
プリフォームの第2のグループを、プランジャキャビティ内で第2の配向に置くことであって、プリフォームの第2のグループはプリフォームの第1のグループの上に配置される、置くことと、
プランジャキャビティ内でプランジャを前進させて、プリフォームの第1のグループからの繊維および樹脂をモールドキャビティ内に押し込むことと、
プリフォームの第1のグループからの繊維をモールドキャビティの第1の領域に誘導することと、
プランジャキャビティ内でプランジャを前進させて、プリフォームの第2のグループからの繊維および樹脂をモールドキャビティ内に押し込むことと、
プリフォームの第2のグループからの繊維をモールドキャビティの第2の領域に誘導することとを含む、成形のための方法を提供する。
【0039】
第18の実施形態において、第17の実施形態に加えて、プリフォームの第1のグループからの繊維を第1の領域に誘導することは、モールドキャビティの第1の領域に流体結合されている第1のベントを作動させることをさらに含む。
【0040】
第19の実施形態において、第18の実施形態に加えて、プリフォームの第2のグループからの繊維を第2の領域に誘導することは、プリフォームの第1のグループからの繊維がモールドキャビティの第1の領域に流れた後に、モールドキャビティの第2の領域に流体結合されている第2のベントを作動させることをさらに含む。
【0041】
第20の実施形態において、本発明は、
プランジャキャビティと、
プランジャキャビティによって受け入れられ、その中で直線的に移動するプランジャと、
モールドキャビティであって、プランジャキャビティ内のプランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に関して面外にあり、プランジャキャビティの口の断面積は、モールドキャビティの断面積よりも実質的に小さい、モールドキャビティと、
モールドキャビティの第1の部分に流体結合されている第1のベントと、
モールドキャビティの第2の部分に流体結合されている第2のベントとを備える、圧縮モールドを提供する。
【0042】
第21の実施形態において、第20の実施形態に加えて、第1のベントは、モールドキャビティの主面よりも実質的に小さい特徴に結合される。
【0043】
第22の実施形態において、第20の実施形態に加えて、ストローク軸に沿ったプランジャキャビティの長さは、モールドキャビティの深さよりも実質的に大きい。
【0044】
第23の実施形態において、本発明は、
複数のプリフォームをプランジャキャビティ内に配置することであって、各プリフォームは樹脂でコーティングされた繊維を含み、そのプリフォームの一部は、モールドキャビティの表面上に置かれ、この表面は、プランジャおよびプランジャキャビティに関して面外である、配置することと、
樹脂を液化することと、
プランジャキャビティを通じて移動するプランジャを介して、剪断力を繊維および液化樹脂に印加し、それによって繊維および樹脂をモールドキャビティを通じて流させることであって、繊維の少なくとも一部の移動が、モールドキャビティの軸方向に揃う、印加することとを含む、成形のための方法を提供する。
【0045】
第24の実施形態において、第23の実施形態に加えて、複数のプリフォームをプランジャキャビティ内に配置することは、プリフォームの少なくとも一部をプランジャキャビティに関して横断方向に揃えることをさらに含む。
【0046】
第25の実施形態において、第23の実施形態に加えて、複数のプリフォームは、プリフォームの第1のグループとプリフォームの第2のグループとを含み、プリフォームの第1および第2のグループは第1の特性の点で異なっている。
【0047】
第26の実施形態において、第25の実施形態に加えて、第1の特性は、プリフォームの繊維の長さ、プリフォームの繊維の組成、およびプリフォームの繊維体積分率からなる群から選択される。
【0048】
第27の実施形態において、第26の実施形態に加えて、複数のプリフォームは、プランジャキャビティ内の積み重ね内に配置構成され、プリフォームの第1のグループは、プリフォームの第2のグループよりも積み重ね内で相対的に低く、モールドキャビティに近く、したがってプリフォームの第1のグループからの繊維は、プリフォームの第2のグループからの繊維の前に、モールドキャビティを通じて流れる。
【0049】
第28の実施形態において、第27の実施形態に加えて、方法は、プリフォームの第1のグループからの繊維をモールドキャビティ内の第1の場所に誘導することと、プリフォームの第2のグループからの繊維をモールドキャビティ内の第2の場所に誘導することとを含む。
【0050】
第29の実施形態において、第28の実施形態に加えて、第1の場所は、第2の場所に関連する任意の特徴よりも相対的に小さい特徴を含む。
【0051】
第30の実施形態において、第25の実施形態に加えて、プリフォームの第1のグループは、プランジャキャビティおよびモールドキャビティのいずれかの少なくとも一方に関してプリフォームの第2のグループとは異なる空間的配向を有する。
【0052】
第31の実施形態において、第23の実施形態に加えて、方法は、樹脂を液化する前に、プリフォームをモールドキャビティに追加することをさらに含む。
【0053】
第32の実施形態において、第23の実施形態に加えて、繊維の大部分は、モールドキャビティの主軸と実質的に同じ程度の長さを有する。
【0054】
第33の実施形態において、第23の実施形態に加えて、方法は、モールドキャビティを、繊維および樹脂がモールドキャビティを通じて流れた後に冷却することを含む。
【0055】
第34の実施形態において、本発明は、プランジャキャビティを通じてプランジャを前進させることを含む、成形のための方法を提供し、前進するプランジャは液化樹脂および複数の繊維に剪断力を印加し、それによって繊維および樹脂をモールドキャビティを通じて流させ、繊維の少なくとも一部の移動は、モールドキャビティの軸方向に揃う。
【0056】
第35の実施形態において、第34の実施形態に加えて、プランジャキャビティは、モールドキャビティの最長軸に関して少なくとも45度だけ面外に配向される。
【0057】
第36の実施形態において、第34の実施形態に加えて、液化樹脂および複数の繊維は、プランジャキャビティ内に位置する複数のプリフォームから供給される。
【0058】
第37の実施形態において、第36の実施形態に加えて、複数のプリフォームは、プリフォームの少なくとも2つのグループを含み、2つのグループは、少なくとも1つの特性に関して異なる。
【0059】
第38の実施形態において、第37の実施形態に加えて、少なくとも1つの特性は、プリフォームの組成に関する。
【0060】
第39の実施形態において、第37の実施形態に加えて、少なくとも1つの特性は、プリフォームの空間的配向に関する。
【0061】
第40の実施形態において、第37の実施形態に加えて、方法は、プランジャキャビティ内でプリフォームの2つのグループを積み重ねることを含み、積み重ねは順番付けられ、順番内で最初のプリフォームのグループが、最初にモールドキャビティに入り、モールドキャビティ内の第1の領域に流れ、順番内で2番目のプリフォームのグループが、2番目にモールドキャビティに入り、モールドキャビティ内の第2の領域に流れる。
【0062】
第41の実施形態において、本発明は、
プランジャキャビティと、
プランジャキャビティによって受け入れられ、その中で直線的に移動するプランジャと、
モールドキャビティであって、プランジャキャビティ内のプランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に関して面外にある軸に揃えられ、プランジャキャビティの口の断面積は、モールドキャビティの断面積よりも実質的に小さい、モールドキャビティとを備える、圧縮モールドを提供する。
【0063】
第42の実施形態において、第41の実施形態に加えて、プランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に関して90度面外にある。
【0064】
第43の実施形態において、第41の実施形態に加えて、プランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に関して90度から45度の範囲で面外にある。
【0065】
第44の実施形態において、第41の実施形態に加えて、ストローク軸に沿ったプランジャキャビティの長さは、モールドキャビティの深さよりも実質的に大きい。
【0066】
第45の実施形態において、本発明は、
プランジャキャビティと、
プランジャキャビティによって受け入れられ、その中で直線的に移動するプランジャと、
モールドキャビティであって、ストローク軸に沿ったプランジャキャビティの長さはモールドキャビティの深さよりも実質的に大きい、モールドキャビティとを備える、圧縮モールドを提供する。
【0067】
第46の実施形態において、第45の実施形態に加えて、プランジャキャビティの口の断面積は、モールドキャビティの断面積よりも実質的に小さい。
【0068】
本発明の追加の実施形態は、上で開示された実施形態において記載された特徴の任意の他の矛盾しない組合せを含む。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】従来のトランスファー成形装置を示す図である。
図2A】部品200を示す図である。
図2B】部品200を作製するための複合成形装置を示す図である。
図2C図2Aの部品200を作製するための、図2Bの装置内に置かれている、繊維束の第1の配置構成を示す図である。
図2D図2C内の繊維束の第1の配置構成に基づく部品200内の繊維の分布の概念図を示す図である。
図2E図2Aの部品200を作製するための、図2Bの装置内に置かれている、繊維束の第2の配置構成を示す図である。
図2F図2E内の繊維束の第2の配置構成に基づく部品200内の繊維の分布の概念図を示す図である。
図2G図2Aの部品200を作製するための、図2Bの装置内に置かれている、繊維束の第3の配置構成を示す図である。
図2H図2Gに示されている繊維束の第3の配置構成に基づく部品200内の繊維の分布の概念図を示す図である。
図2I】尖叉の末端のところのベントを示す、図2Aの部品200を作製するためのモールドキャビティを示す図である。
図2J図2Iに示されているモールドキャビティのベントおよびプランジャを作動させるためのタイミングチャートを示す図である。
図2K】尖叉の末端のところの、モールドキャビティの本体部の側部に沿った、ベントを示す、図2Aの部品200を作製するためのモールドキャビティを示す図である。
図2L図2Kに示されているモールドキャビティのベントおよびプランジャを作動させるためのタイミングチャートを示す図である。
図3A】部品300を示す図である。
図3B】部品300を作製するための複合成形装置を示す図である。
図3C図3Aの部品300を作製するための、図3Bの装置内に置かれている、繊維束の第1の配置構成を示す図である。
図3D図3Cに示されている繊維束の第1の配置構成に基づく部品300内の繊維の分布の概念的イラストを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
次の用語およびその活用形は、本開示および付属の請求項での使用に関して次のように定義される。
・「軸方向または軸方向に揃えられる」は、たとえば、プランジャまたはプランジャキャビティの文脈では、プランジャのストローク方向に揃えられることを意味し、モールドキャビティの文脈では、モールドキャビティの(最)長軸または主軸に揃えられることを意味する。
・「横断方向または横断方向に揃えられる」は、たとえば、プランジャまたはプランジャキャビティの文脈では、プランジャのストローク方向に直交することを意味し、モールドキャビティの文脈では、モールドキャビティの(最)長軸/主軸に関して、90度回転した、面内の軸に揃えられることを意味する。
・「面外」は、たとえば、モールドキャビティの文脈において、モールドキャビティの主面の平面から外へ回転された軸に揃えられることを意味する。本発明の実施形態において、プランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に関して面外にある。
・「繊維」は、材料の個々のより糸を意味する。繊維は、その直径よりもかなり大きい長さを有する。本明細書での使用に関して、繊維は(i)連続繊維または(ii)短繊維に分類される。連続繊維は、それらが配置されるモールドの主特徴の長さにほぼ等しい長さを有する。また、同様に、連続繊維は、それらが置かれる部品の長さにほぼ等しい長さを有する。短繊維は、これらが配置されるモールドの主特徴の長さより短く、典型的にはモールドの小特徴の長さに連続繊維などの他の繊維との「重なり」を可能にするように追加の長さを足した同程度の長さを有する。本明細書において使用される「短繊維」という用語は、当技術分野においてそれの用語が典型的に使用される「細断繊維」または「切断繊維」とは異なる。本開示の文脈において、短繊維は、プリフォーム内に存在し、そのようなものとして、プリフォーム、モールド、および最終部品内の定められた配向を有する。当技術分野において一般的に使用されるように、細断または切断繊維は、モールドおよび最終部品内でランダムな配向を有する。それに加えて、本明細書において使用されているように、「短繊維」の長さは、モールドのより小さな特徴の長さに基づく(それらは同等の長さになる)。対照的に、細断または切断繊維の長さは、典型的には、モールド/部品の任意の特徴の長さとは、事前定義された関係を持たない。
・「剛性」は、ヤング率で測定されるような、曲げに対する抵抗を意味する。
・「引張強さ」は、材料が伸ばされ/引っ張られたときに材料に「ネッキング」またはその他の何らかの衰え(脆い材料の場合)が生じるまで材料が耐えられる最大応力を意味する。
・「連続」繊維または繊維束は、繊維/束が配置されるモールドの主特徴の長さにほぼ等しい長さを有する繊維/束を意味する。
・「トウ」は、繊維の束を意味し、それらの用語は、別段の断りのない限り、本明細書において取り替え可能に使用される。トウは、1Kトウ、4Kトウ、8Kトウなど、数千本単位で番号付けされた繊維で利用可能である。
・「プリプレグ」は、樹脂を含浸させた繊維を意味する。
・「トウプレグ」または「プリプレグトウ」は、樹脂を含浸させた繊維束(すなわち、トウ)を意味する。
・「プリフォーム」は、トウ/トウプレグのサイズを決められた、またはサイズと形状とを決められた部分を意味し、繊維束の断面は、約0.25から約6の間のアスペクト比(幅:厚さ)を有する。プリフォームという用語は、サイズ/形状を決められた(i)テープ(上記のような断面において、典型的には、約10から約30の間のアスペクト比を有する)、(ii)繊維のシート、および(iii)積層体を明示的に除外している。
・「約」または「実質的に」は、記載されている数字または公称値に関して±20%を意味する。
【0071】
これらの例以外において、または別段に指示がある場合、本明細書および請求項において使用されている、たとえば構成要素の量を表現するすべての数は、すべての場合において「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対のことが指示されていない限り、以下の明細書および付属の請求項に記載されている数値パラメータは、当業者に理解される仕方で取得されるべき所望の性質に応じて変化し得る近似値であると理解される。一般的に、これは少なくとも±20%の変動を意味する。
【0072】
また、本明細書で引用されている数値範囲は、そこに包含されるすべての部分範囲を含むことを意図されていることは理解されるべきである。たとえば、「1から10」の範囲は、約1の記載されている最小値と約10の記載されている最大値のとの間(およびそれを含む)のすべての部分範囲を含むこと、すなわち、約1以上の最小値および約10以下の最大値を有することを意図されている。
【0073】
本明細書において使用するためのプリフォームを形成するようにサイズが決められるか、またはサイズと形状とが決められた繊維束は、数千本の個々の繊維を含み、典型的には1000の倍数である(たとえば、1k、10k、24kなど)。そのような繊維束は、典型的には「トウ」と呼ばれる。いくつかの実施形態において、トウ中の繊維は、ポリマー樹脂を含浸され、そのような材料は「トウプレグ」または「プリプレグトウ」と呼ばれる。図に描かれているトウプレグはすべて円筒形である(すなわち、円形の断面を有する)が、それらは任意の好適な断面形状(たとえば、楕円形、三葉形、多角形など)を有することができる。
【0074】
個々の繊維は、任意の直径を有することができ、これは、典型的には、ただし必ずというわけではないが、1から100ミクロンの範囲内にある。個々の繊維は、限定はしないがサイジングなどの外側コーティングを含むことができ、これにより、処理、バインダーの接着を円滑にし、繊維の自己接着を最小にするか、または特定の特性(たとえば、導電性など)を付与する。
【0075】
各個々の繊維は、単一の材料または複数の材料(以下に列挙する材料など)から形成され得るか、またはそれ自体が複合物であり得る。たとえば、個々の繊維は、導電性材料、電気絶縁性材料、熱伝導性材料、または熱絶縁性材料などの第2の材料でコーディングされた(第1の材料の)コアを備えることができる。
【0076】
組成に関して、各個々の繊維は、たとえば、限定はしないが、炭素、ガラス、天然繊維、アラミド、ホウ素、金属、セラミック、ポリマーフィラメント、およびその他のものであってよい。金属繊維の非限定的な例としては、スチール、チタン、タングステン、アルミニウム、金、銀、前記のいずれかの合金、および形状記憶合金を含む。「セラミック」は、すべての無機および非金属材料を指す。セラミック繊維の非限定的な例は、ガラス(たとえば、Sガラス、Eガラス、ARガラスなど)、石英、金属酸化物(たとえば、アルミナ)、アルミナシリケート、ケイ酸カルシウム、石綿、窒化ホウ素、炭化ケイ素、および前記のいずれかの組合せを含む。さらに、カーボンナノチューブが使用されてもよい。
【0077】
任意の熱可塑性樹脂が、本発明の実施形態と併せて使用できる。本発明の実施形態と併せて使用できる例示的な熱可塑性樹脂は、限定はしないが、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ナイロン、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、およびポリカーボネート-ABS(PC-ABS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリリン酸(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスルホン(PSU)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)を含む。例示的な熱硬化性樹脂はエポキシである。
【0078】
本発明の実施形態と併せて使用される機器は、「トランスファー成形」として知られるプロセスとの間でいくつかの類似点を有する。図1は、トランスファー成形プロセスを介して部品を形成するための従来の装置100を示している。
【0079】
装置100は、図示されているように配置構成された、モールド102、モールドキャビティ104、トランスファーポット106、湯口108、プランジャ110、加熱装置112、および突き出しピン114を含む。通常はプラスチック/樹脂である原材料がトランスファーポット106内に配置される。プランジャ110はトランスファーポット106の下方に移動され、モールド内のプラスチックを圧縮する。加熱装置112は、モールドをプラスチックを溶かすのに十分な温度まで加熱する。次いで、液体プラスチックは、圧力下で湯口108を通り、モールドキャビティ104に流れ込む。湯口108(複数あってもよい)は、典型的には、トランスファーポット106からモールドキャビティ104に通じる小さな円筒形の開口部である。部品が形成され、モールドが開かれた後、突き出しピン114が使用されて、部品をモールドキャビティ104から押し出す。湯口の存在など、装置100の構造的配置構成により、繊維、特に連続繊維は、典型的には、このトランスファー成形プロセスと併せて使用されることはない。原材料が何らかの繊維を含む限り、それは、通常、「細断された」繊維であり、湯口を通り抜けることも可能であろう。
【0080】
図2Aは、スクープ200を示している。スクープは、ハンドル202、本体部204、およびフィンガーまたは尖叉206を備える。スクープ200は非常に薄く、相対的に細長い形状をしている。そのような構成を有する部品については、部品の剛性および強度がハンドルの長軸の方向に配向されていることが重要である。これは、たとえば、尖叉206が地面に固定されていて、ハンドル202に過度の上向きまたは下向きの圧力が加えられた場合に生じ得るような、屈曲を受けたときに部品がポキッと折れる傾向を低下させる。また、尖叉が本体部204を介してハンドルに強度および剛性に関して適切に接続されていることも必要である。
【0081】
図2Bおよび図2Cは、スクープ200を作製するためのモールド210を示している。モールドは、スクープのそれぞれの部分、すなわち、ハンドル202、本体部204、および尖叉206を形成するキャビティ部分202’、204’、および206’を含む、モールドキャビティ200’を備える。プランジャ214は、モールド210内のプランジャキャビティ212によって受け入れられ、その中で直線的に移動するように配置構成される。プランジャ214のストローク軸B-Bは、モールドキャビティ200’に関して面外にあることに留意されたい。実際には、ストローク軸B-Bは、キャビティ部分202’および206’に関して面外にあり直交している。
【0082】
モールド210において、本教示に合致する多くのモールドと同様に、
・プランジャのストローク軸は、モールドキャビティの主面に関して45度から90度の範囲内の量だけ面外にあり、
・プランジャキャビティの口の断面積は、モールドキャビティの断面積よりも実質的に小さく、
・ストローク軸に沿ったプランジャキャビティの長さは、モールドキャビティの深さよりも実質的に大きい。
【0083】
部品を形成するために使用される材料、すなわち、プリフォーム216’は、モールドキャビティ200’の一部、この実施形態では、部分202’の、プランジャキャビティ212内に位置付けられる。図2Cに示されている実施形態は、プリフォーム216’の第1の配置構成を示しており、プリフォームは水平に配向され、これはプランジャのストローク軸B-B(すなわち、プランジャ214が移動するときに沿う方向/軸)に関して面外である、実際には、直交する。さらに、プリフォーム216’は、モールドキャビティ200’に軸方向で揃えられる、すなわち、軸A-Aに揃えられる。
【0084】
スクープ200(または任意の部品)を作製するために必要なプリフォーム216’の数は、プリフォームの質量を作製されるスクープの質量に合わせることによって決定される。この実施形態では、プリフォーム216’の長さは、プランジャキャビティ212の幅と一致する。プリフォームはより短くてもよいが、相対的に長い繊維は、最終的に結果として、完成した部品に対してより良い材料性質をもたらす。
【0085】
図2Dは、成形部品、すなわちスクープ200における(プリフォーム216’からの)繊維の配向の表現を示している。加工中に、繊維は、この実施形態では軸A-Aである、部品の長軸の方向に沿って流れる傾向がある。この特定の部品について、繊維はハンドル202の長軸に追随し、その後、スクープ200の本体部204を通って扇状に広がり、最終的には尖叉206に流れ込む。繊維は、たとえば、場所218および220で例示されているように、重なり、スクープ200に相当な剛性および強度をもたらす。本発明の教示に従って作製された実際の部品では、もっと多くの繊維があり、したがってその重なりもさらに多く生じることが理解されるであろう。
【0086】
さらに、繊維の重なりの程度は、繊維の長さおよびベントなどのモールドキャビティ内の繊維の最終位置に影響を及ぼすパラメータに基づき変わり得る。すなわち、プランジャ214のストロークにおけるベント207の作動を順序付けることで、繊維の段階的な送出を行うことができる。図2Cは、ベント207を示しており、そのようなベントの1つは、モールドキャビティの各尖叉(図2Cには1つだけ示されている)の末端に流体結合されている。ベントおよびその動作は、本明細書の後半において、図2Iから図2Lに関連してより詳細に説明される。
【0087】
図2Eは、同じモールド210について、図2Cに示されている第1の配置構成と異なる第2の配置構成で配置構成されているプリフォーム216’’を示している。特に、プリフォーム216’’は垂直方向に配向され、プランジャのストローク軸B-Bに関して「軸方向に揃えられている」。モールド210において、プランジャキャビティ212は幅よりも長くなっているので、プリフォーム216’’は、図2Cのプリフォーム216’よりも長いものとしてよい。前に指摘されているように、プリフォーム216’に関してプリフォーム216’’内に存在するようなより長い繊維は、典型的には、結果として、完成した部品に対してより良い材料性質をもたらす。
【0088】
ここでもう一度、ベント(図2Eに示されていない)は、特定の領域(たとえば、尖叉など)への繊維の移動を円滑にし、他の繊維との重なりの程度を制御するために使用される。
【0089】
図2Fは、スクープ200内の(プリフォーム216’’からの)繊維の配向の表現を示している。図2Dに示されている実施形態のように、繊維は、たとえば、場所222で例示されているように、部品の長軸と揃えられ、重なる傾向がある。
【0090】
図2Gは、モールド210内のプリフォームの第3の配置構成を示しており、相対的に短いプリフォーム216’は、水平方向に配向され、モールドキャビティ200’に軸方向で揃えられ(すなわち、軸A-Aに平行)、プリフォーム216’’は、垂直方向に配向され、プランジャキャビティに軸方向で揃えられ(すなわち、軸B-Bに平行)、プリフォーム216’の上に位置付けられる。
【0091】
スクープ200内に存在するような、非常に薄い特徴については、より短い繊維とより長い繊維のそのような組合せを使用すると都合がよい。より短い繊維は、任意の薄い/小さい/入り組んだ特徴をより確実に充填する。その一方で、より長い繊維とより短い繊維が混じり合い、重なり合い、それによって薄い/入り組んだ特徴を部品の残りの部分に結合する。
【0092】
たとえば、スクープ200において、モールドの充填が問題になる場合、原材料の積み重ねの底部のところのより短いプリフォーム216’からの繊維は、最初にキャビティ部分206’(尖叉)に流れ込み、プリフォーム216’’からの長い繊維よりもこの部分をより容易に充填するであろう。示されていないが、前に説明されているように、ベントは、有利には、尖叉の各々の末端(すなわち、モールドキャビティ部分206’)に流体結合される。次に図2Hを参照すると、原材料の積み重ね内でより高い位置に置かれているプリフォーム216’’からのより長い繊維216f’’は、プリフォーム216’からのより短い繊維216f’と混合して、場所224などで重なり、尖叉206の先端部をスクープ200の残りの部分に接続することになるであろう。
【0093】
図2Iは、囲んでいるモールド210のないモールドキャビティ200’を示している。ベント207-1、207-2、および207-3は、それぞれの尖叉の末端に個別に流体結合される。第1の特性を有する繊維がモールドキャビティの尖叉の全部ではなく一部を充填し、その一方で第2の特性を有する繊維が残りの尖叉を充填するようにすることが望ましい場合がある。
【0094】
たとえば、それらの尖叉のうちの1つもしくは複数が他の尖叉と長さが異なるか、またはそれらの尖叉の1つもしくは複数がそれらの尖叉のうちの他方の尖叉に比べて使用中に大きな応力を受けることがある。そのような場合、より長い尖叉またはより大きな応力を受ける尖叉は、相対的に長い繊維、または相対的に強い材料から、もしくは相対的に高い繊維体積分率を有する材料から作製された繊維を使えば恩恵を受けるであろう。
【0095】
いくつかの特性が異なる繊維を有するプリフォームの2つ(またはそれ以上)のグループをモールド内の異なる場所に誘導するためには、2つ(またはそれ以上)のプリフォームのグループがプランジャキャビティ内で適切な順番で積み重ねられる必要がある。したがって、プランジャが作動し(繊維および液化樹脂をモールドキャビティ内に押し込み)、適切な1つまたは複数のベントが作動する(モールドキャビティの特定の不連続領域において減圧が生じる)と、プランジャキャビティ内で最低のプリフォームのグループからの繊維が(液化樹脂とともに)モールドキャビティ内に入り、そのような不連続領域に流れる。それらの不連続領域が充填した後、プランジャが依然として下方に移動し、1つまたは複数の異なるベントが作動している状態で、積み重ね内のプリフォームの次のグループからの繊維が(液化樹脂とともに)モールドキャビティ内に入り、流れに入って、モールドキャビティの減圧下にある他の部分を充填する。
【0096】
引き続き図2Iを参照し、図2Jのタイミングチャートも参照すると、「ベント-1」はベント207-1に対応し、「ベント-2」はベント207-2に対応し、「ベント-3」はベント207-3に対応している。ベント-1およびベント-3は、「外側の尖叉」に対応するモールドキャビティの部分を制御し、ベント-2は、「中央の尖叉」に対応するモールドキャビティの部分を制御する。中央の尖叉は、最初に充填され、次に外側の尖叉が充填され、次いでモールドキャビティの残りの部分が充填される。第1のタイプのプリフォームが中央の尖叉を充填するのに適切な量だけプランジャキャビティの底部に配置される。第2のタイプのプリフォームが外側の尖叉を充填するのに適切な量だけ、第1のタイプのプリフォームの上に配置される。モールドキャビティの本体部(204’)およびハンドル(202’)部分のバランス部を充填するために、追加のプリフォームが第2のタイプのプリフォームの上に配置される。
【0097】
時刻Tにおいて、プランジャ(たとえば、プランジャ214、図2G)が作動し、下方に移動して、繊維および現在液化されている樹脂をモールドキャビティ200’内に押し込む。また、時刻Tにおいて、ベント-2が作動する(すなわち、開く)。このベントが作動すると、中央の尖叉に、外側の尖叉に比べて相対的に低い圧力が生じる。その結果、繊維および樹脂が流れて中央の尖叉を充填する。時刻Tまでに、中央の尖叉は樹脂および適切なタイプの繊維を充填されており、ベント-1およびベント-3が作動すると、中央の尖叉およびモールドキャビティの他の領域と比べて、外側の尖叉において相対的に低い圧力を生じる。プランジャは依然として下方に移動しており、繊維および液化樹脂をモールドキャビティ内に押し込んでいることに留意されたい。図2Jは、時刻Tにベント-2が閉じていることを示しているが、そうである必要はなく、それは、領域が材料で充填されると、その領域にさらに繊維を押し込むために必要な圧力が著しく増大するからである。したがって、繊維および樹脂は、優先的に別の所、この場合には、外側の尖叉に流れる。
【0098】
遅れて開くベント(ベント-1およびベント-3など)の作動は、たとえばベントの安全弁を使用して、受動的に制御され得る。そのような一実施形態において、モールドキャビティ内の圧力がある値を超えたときに(繊維および樹脂がモールドキャビティ内に押し込まれ続ける中で不連続領域が充填されたとき)、安全弁が作動し、それによって、最初に閉じられていたベントが開かれる。代替的に、ベントは、プランジャの位置制御を使用し、容積を制御することなどによって、能動的に制御され得る。すなわち、プランジャの単位移動量あたり、どのくらいの量の材料がモールドキャビティに押し込まれるのか、最初に充填されるべきモールドキャビティの部分を充填するのにどのくらいの量の材料が送出されなければならないのかを知ることで、その量の材料を送出するのに必要な、プランジャの位置の変化を決定することができる。したがって、プランジャが決定済みの量だけ移動した後、ベントの第2のセットが作動する。
【0099】
図2Kは、図2Aのスクープ200を作製するためのモールドの別の実施形態であるモールドキャビティ200’’を示している。各尖叉の末端にベントを有することに加えて、モールドキャビティ200’’は、4つのベント207-4、207-5、207-6、および207-7を備え、そのうちの2つは、モールドキャビティの本体部分204’の各側に流体結合されている。これらのベントは、尖叉の繊維とスクープの他の部分内の繊維との間に交差する重なりを作るために使用され得る。
【0100】
図2Lは、モールド充填プロセスを例示するタイミングチャートを示している。この例については、尖叉は一方のタイプの繊維を受け入れ、モールドの残りの部分は第2のタイプの繊維を受け入れると仮定される。もっぱら尖叉を対象とする繊維は、尖叉よりも約1.5倍長い。もっぱらモールドキャビティのバランス部を対象とする繊維は、尖叉の長さの約2.5倍である。尖叉を対象とする繊維を有するプリフォームの第1のグループは、プランジャキャビティ内に配置され、続いてモールドキャビティの残りの部分を対象とする繊維を有するプリフォームの第2のグループが配置される。図2Gのプランジャキャビティ内に積み重ねられて示されている相対的に短いプリフォーム216’および相対的に長いプリフォーム216’’は、例示的なものである。
【0101】
プリフォームの第1のグループ内の繊維および樹脂の量は、尖叉を充填するのに十分である。プリフォームの第2のグループは、モールドキャビティの残りの部分を充填するのに必要な繊維および樹脂を含む。
【0102】
時刻Tまでに、プリフォームの少なくとも第1の(低い)グループ内の樹脂が液化される。時刻Tにおいて、プランジャ、さらにはベント-1、ベント-2、およびベント-3が作動される。尖叉内の相対的に低い圧力により、相対的に短い繊維がプリフォームの第1のグループから尖叉内に引き込まれる。
【0103】
時刻Tにおいて、ベント-4、ベント-5、ベント-6、およびベント-7が作動し、モールド本体部分204’の側面に低圧領域が作られた。プランジャは下方への移動を続け、プリフォームの第2のグループからの繊維さらには液化樹脂をモールドキャビティ内に押し込む。本体部分204’に置かれるこれらのより長い繊維の部分は、その側部のうちのいずれかの方へ湾曲する傾向があり、尖叉から延在する繊維の部分と交差する。前に説明されているように、ベントは、それらが制御するキャビティ部分が充填されたときに、追加の材料をそれらの領域に押し込むのに実質的な圧力増大が必要になるので、閉じられる必要はない。
【0104】
図3Aは、ブラケット300を示している。ブラケットは、本体部302、4つの水平タブ304、留め具穴306、2つの垂直タブ308、およびロッド受け穴309を備える。ブラケット300は、たとえば、ロッド端部を制御面に接続するために使用することができる。ロッドは、ロッド受け穴309によって受け入れられる。留め具穴306で、ネジ、ボルト、ピンなどによりブラケット300を表面に装着する。垂直タブ308および水平タブ304は、互いに直交している。タブ304、308の各々において良好な曲げ剛性を有し、そのようなタブのすべてが、強度および剛性の点で適切に互いに接続されることが望ましい。
【0105】
図3Bおよび図3Cは、ブラケット300を作製するためのモールド310を示している。モールドは、モールドキャビティ300’を含む。プランジャ314は、モールド310のプランジャキャビティ内で、ストローク軸B-B(図3C)に沿って直線的に移動する。モールド300’の他の何らかの形で隠されている線は、部品がモールド内にどのように置かれるかを示すために描かれている。モールド上の分割線は省かれている。ここでもう一度、プランジャ314のストローク軸B-Bは、モールドキャビティ300’に関して、特にその本体部分302’および水平タブ部分304’に関して面外である。モールド310は、穴306および309を作成するための摺動するピン(明確にするために描かれていない)も備える。
【0106】
図3Cに示されているように、部品を形成するプリフォームは、プランジャキャビティ内で2つの異なる配向を有するように編成される。束の積み重ねの底部にあるプリフォーム316’は、モールドキャビティ300’の長軸である軸A-Aに揃えられる。言い換えると、繊維束316’は、モールドキャビティ300’に関して軸方向で揃えられている。積み重ねの頂部にあるプリフォーム316’’は、モールドキャビティ300’の長軸を横断する、軸C-Cに揃えられる。
【0107】
図3Dは、ブラケット300内の(プリフォーム316’および316’’からの)繊維の配向の表現を示している。上で暗黙のうちに示されているように、プリフォームからの繊維は、プランジャキャビティ内に位置付けられる順番に、モールドキャビティ300’内に流れ込み、底部にあるもの(すなわち、モールドキャビティ300’の表面にあるもの)が最初に流れ込む。
【0108】
したがって、下側の、軸方向に揃えられたプリフォーム316’からの繊維316f’は、一般的に軸A-Aに揃えられる、モールドキャビティの水平タブ部分304’(図3B)を最初に優先的に充填する。横断方向に配向されているプリフォーム316’からの繊維316f’’は、プリフォーム316’からのすべての繊維316f’がモールドキャビティに流れ込んだ後に、モールドキャビティ300’への充填を開始する。これの意図は、繊維316f’’に垂直タブ308を充填させることである。繊維316f’’の横断方向の配向は、垂直タブ308の方への流れを促進するためではなく、むしろ、軸方向に走る繊維316f’との重なりを円滑にするためである。
【0109】
プリフォームは最小抵抗の経路を辿るが、これは典型的にはモールドキャビティの長軸に沿って流れ、圧力が最も低い領域に向かうことを意味する。後者のパラメータ、圧力は、すでに開示されているように、目的に合わせて計画的に配置されたベントを使用することで変更することができる。この技術は、樹脂および繊維の流れを特定の場所に選択的に誘導ために使用され得る。
【0110】
したがって、本発明の実施形態において、ベント(図示せず)は、モールドキャビティの水平タブ部分304’の末端および垂直タブ部分308’の頂部で圧力を解放するために配置される(図3C)。本発明のいくつかの実施形態において、プリフォーム316’からの繊維316f’が水平タブ部分304’に流れた後、それらの場所での圧力を制御するベントは閉じられ、垂直タブ部分308’の先端部での圧力を制御するベントが開かれる。これは、モールドキャビティの垂直タブ部分の先端部には相対的に低い圧力の領域を作り、樹脂/繊維はそれらの場所の方へ優先的に流れる。
【0111】
垂直タブ308の結果として、重力が樹脂/繊維を優先的に水平タブ部分304’に流し、次いで、樹脂のレベルが上昇するにつれて、繊維/樹脂が最終的に垂直タブ部分308’に流れるということがありそうである。ある程度の混合が生じるが、束316’’からの繊維316f’’は、もっぱら、軸C-Cに揃えられた、垂直タブ308に行き着くであろう(図3Dを参照)。
【0112】
繊維配向間の混合は、場所320などの、ブラケット300の中央近くで生じる。これは、ブラケット300のすべての特徴の間の強い接続を円滑にする。また、場所322などの、異なる方向で穴306の周りを流れる繊維の間の重なりは、それらの特徴に対する良好なフープ強度を結果としてもたらす。
【0113】
他の角度の(すなわち、軸A-AまたはC-Cに揃えられていない)繊維束も含まれる可能性がある。いくつかの実施形態において、軸方向に揃えられたプリフォーム316’は炭素繊維トウプレグから作製され、横断方向に揃えられたプリフォーム316’’はガラス繊維トウプレグから作製され、両方とも同じ樹脂を組み込んでいる。この結果、垂直タブ308は水平タブ304よりもコンプライアンス性が高くなる。さらに、繊維体積分率は、ブラケット300の異なる部分に対して異なる材料性質を設計するために積み重ねを横切って変化させることも可能であろう。
【0114】
さらなる実施形態において、モールドキャビティにプリフォームを流す前にモールドキャビティ300’に配置されるプリフォームを使用して選択領域内で部品強度が高められる。たとえば、本明細書において開示されている方法から公称的に予期されるものよりも大きい量のフープ強度が必要とされる場合(すなわち、留め具穴306の両側から来る流れる繊維の重なりから結果として生じる)、プリフォーム318などの螺旋状、渦巻き形、または円形の繊維束プリフォームが、穴306の1つまたは複数の周りに配置される。本明細書において説明されている方法からの流れる繊維は、プリフォーム318に重なり、結合して、それを成形プロセスにおいて部品の残りの部分に接続する。
【0115】
本発明の方法により、スクープ200(図2A図2L)またはブラケット300(図3A図3D)を加工するために、プランジャを除いてモールド部品が組み合わされ(閉じられ)、プランジャのキャビティは開いたままにされる。部品の最終重量は、部品の体積と複合材料の密度から推定される。繊維に対する最大長は、モールドキャビティ内の意図された場所および配向に応じて決定される。プリフォームに対する最大長は、プランジャキャビティ内のその配向に応じて決定される。プリフォームは、モールド内の配向に基づき計算されるような、繊維の許容可能な長さは、プランジャキャビティのサイズに基づき決定され許されるような、実際の長さよりも長くなることもあり得ることを認識した上で、トウプレグを適切な長さに切断することによって作成される。
【0116】
すべての繊維は重量が測定され、それにより繊維/樹脂の重量が予想される最終部品の重量と一致するかチェックする。樹脂の一部、および繊維の一部さえも、モールドのベント内に流れ込むので、プリフォームの総重量は予想される部品重量をわずかに超え得る。
【0117】
次いで、プリフォームは、プランジャキャビティ内に必要な順番および配向で積み重ねられる。次いで、プランジャは、プランジャキャビティ内に配置される。プランジャキャビティ、プランジャ、およびモールドキャビティを含む、モールド全体が加熱される。いくつかの実施形態において、穴を通してモールド内に挿入される、カートリッジヒーターまたは同様のものは、プランジャ、プランジャキャビティ、およびモールドキャビティを加熱するために使用される。いくつかの他の実施形態において、モールドは、加熱されたプラテン上に置かれ、これはモールドを加熱するために使用される。大型のモールドでは、断熱ブランケットがモールドの周りに配置され、それにより輻射および対流熱損失を低減することができる。複数のグループ(異なるタイプ)のプリフォームが使用されるほとんどの実施形態において、異なるグループのプリフォームを示差加熱する必要はない。プリフォームが積み重ねられる仕方に応じて、異なるプリフォームからの異なる繊維のプランジャキャビティ内の後混合は最小である。いくつかの用途において、一方のタイプのプリフォームを他方のタイプのプリフォームの前に溶融することが望ましい限り、これは、モールドキャビティをプランジャ/プランジャキャビティよりも高い温度で操作することによって達成され得る。
【0118】
加熱後、プランジャは、プリフォームに押し当てられ、それによって繊維および樹脂を圧縮し、モールドキャビティに押し込む。圧縮成形プロトコルに従って熱および圧力の下で適切な一定の時間が経過した後、加熱は停止する。いくつかの実施形態において、モールドは、空気、水、蒸気、または油を冷却路に通すことなどによって、能動的に冷却される。冷却後、モールドは、このプロセスで形成された複合部品を取り出すために、必要に応じて分解される。
【0119】
本開示はいくつかの実施形態を説明すること、および本発明の多くの変更形態は本開示を読んだ後であれば当業者によって容易に考案され得ること、および本発明の範囲は次の請求項によって決定されるべきであることは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0120】
100 装置
102 モールド
104 モールドキャビティ
106 トランスファーポット
108 湯口
110 プランジャ
112 加熱装置
114 突き出しピン
200 部品
200 スクープ
200’ モールドキャビティ
200’’ モールドキャビティ
202 ハンドル
202’ 部分
204 本体部
204’ モールド本体部分
206 フィンガーまたは尖叉
202’、204’、206’ キャビティ部分
207 ベント
207-1、207-2、207-3 ベント
207-4、207-5、207-6、207-7 ベント
210 モールド
212 プランジャキャビティ
214 プランジャ
216’ プリフォーム
216’’ プリフォーム
216f’ より短い繊維
216f’’ より長い繊維
222 場所
300 部品
300 ブラケット
300’ モールドキャビティ
302 本体部
302’ 本体部分
304 水平タブ
304’ 水平タブ部分
306 留め具穴
308 垂直タブ
308’ 垂直タブ部分
309 ロッド受け穴
310 モールド
314 プランジャ
316’ プリフォーム
316f’ 繊維
316f’’ 繊維
316’’ プリフォーム
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図3A
図3B
図3C
図3D