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特許7157252リチウム二次電池用正極添加剤、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用正極添加剤、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池 図1
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  • 特許-リチウム二次電池用正極添加剤、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極添加剤、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20221012BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221012BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
C01G51/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021531270
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2019015354
(87)【国際公開番号】W WO2020111580
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0153090
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジョン イル
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジェ ミュン
(72)【発明者】
【氏名】ファンボ、 グン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
【審査官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059443(JP,A)
【文献】特開平05-325971(JP,A)
【文献】特開平09-147863(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118834(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0171524(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108717977(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107180955(CN,A)
【文献】国際公開第2018/043515(WO,A1)
【文献】特開2013-239434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/05-10/0587
C01G51/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、リチウム二次電池用正極添加剤。
[化学式1]
Li6xCo1-y
(前記化学式1において、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.1であり、
=Bであり、0a≦0.1、0b≦0.1であ。)
【請求項2】
前記正極添加剤は、ホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上をコートしたものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極添加剤。
【請求項3】
下記化学式2で表されるコアと、
ホウ素(B)およびタングステン(W)を含むコート層と、を含む、リチウム二次電池用正極添加剤。
[化学式2]
Li6xCoO
(前記化学式2において、0.9≦x≦1.1である。)
【請求項4】
CoOまたはCo(OH) である前駆体粒子を準備する段階;
前記前駆体粒子、リチウム原料物質およびドーピング原料物質を混合して混合物を製造する段階;
前記混合物を焼成して焼成物を製造する段階;および
前記焼成物を冷却および粉砕する段階;を含み、
前記混合物を焼成して焼成物を製造する段階;において、
前記焼成条件は、600~800℃の温度範囲で1~15時間の間不活性雰囲気で焼成し、
前記ドーピング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)を含み、
前記前駆体粒子と前記リチウム原料物質の混合比率は1:5.9~1:6.1モル比であり、
前記混合物に対する前記ドーピング原料物質の混合比率は0.001~0.02モル比である、下記化学式1で表される、リチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
[化学式1]
Li 6x Co 1-y
(前記化学式1において、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.1であり、
=B であり、0<a≦0.1、0<b≦0.1である。)
【請求項5】
前記リチウム原料物質はLiCO、LiOH、CLiO、LiNO、LiSO、LiSO、LiO、Li、LiClからなる群より選ばれた1種以上である、請求項4に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項6】
下記化学式3で表される化合物を準備する段階;
前記化合物およびドーピング原料物質を混合して混合物を製造する段階;
前記混合物を焼成して焼成物を製造する段階;および
前記焼成物を冷却および粉砕する段階;を含み、
前記混合物を焼成して焼成物を製造する段階;において、
前記焼成条件は、250~450℃の温度範囲で1~10時間の間不活性雰囲気で焼成し、
前記ドーピング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)を
下記化学式3で表される化合物に対する前記ドーピング原料物質の混合比率は0.001~0.02モル比である、下記化学式1で表される、リチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
[化学式1]
Li 6x Co 1-y
(前記化学式1において、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.1であり、
=B であり、0<a≦0.1、0<b≦0.1である。)
[化学式3]
Li6xCo
(前記化学式3において、0.9≦x≦1.1、0.9≦a≦1、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1である。)
【請求項7】
前記リチウム金属酸化物を収得する段階;その後に、
前記リチウム金属酸化物にコーティング原料物質を混合後焼成してコート層を形成させる段階;をさらに含み、
前記コーティング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)を含む、請求項4またはに記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項8】
集電体;および
前記集電体の表面に位置する正極活物質層;を含み、
前記正極活物質層は、正極活物質および正極添加剤を含み、
前記正極添加剤は下記化学式3で表されるものであり、
前記正極活物質および正極添加剤の合計100重量%に対して、前記正極添加剤は0.1~7重量%である、リチウム二次電池用正極。
[化学式3]
Li6xCo
(前記化学式3において、0.9≦x≦1.1、0.9≦a≦1、0b≦0.1、0c≦0.1である。)
【請求項9】
前記正極添加剤はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上をコートしたものである、請求項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項10】
前記正極添加剤は初期充放電時、分解されてLi供給源および下記化学式4で表される化合物に転換される、請求項に記載のリチウム二次電池用正極。
[化学式4]
LiCo1-y
(前記化学式4において、0<y≦0.1であり、
=Bであり、0a≦0.1、0b≦0.1である。)
【請求項11】
正極;
負極;および
前記正極と負極の間に位置する電解質を含み、
前記正極は請求項1または3に記載の正極添加剤を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池用正極添加剤、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池に関する。より具体的には負極の不可逆特性を改善するための不可逆容量改善添加剤であるリチウム二次電池用正極添加剤、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は高性能の小型電池の形態に製造されてスマートフォン、ノートブック、およびコンピュータをはじめとする移動用情報通信機器のエネルギー貯蔵源として使用されているだけでなく、近年では、高出力の大型電池の形態に製造して電気自動車(Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle)などに活用するための研究も進められている。
【0003】
このようなリチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)が主に使用されており、その他にスピネル結晶構造のLiMnなどのようなリチウム含有マンガン酸化物と、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)なども使用されている。
【0004】
負極活物質としては炭素材料が主に使用されており、リチウム金属、硫黄化合物などの使用も考慮されており、特に、純粋なシリコン(Si)の理論的比容量(specific capacity)は4200mAh/gであり、グラファイト炭素の372mAh/gよりはるかに大きいので、Si系活物質を使用するリチウム二次電池が大いに注目されており、一部は炭素材料と混合された電極として使われたりもする。
【0005】
しかし、負極が正極に比べて不可逆効率が低い場合、負極活物質の量が過度に多く投入されて電池のエネルギー密度に悪影響を及ぼす。
【0006】
このような電極において、正極と負極の効率を類似の水準に調節すると非効率的な電極の浪費を最小化することができる。例えば、ほぼ100%の効率を有する負極に対して100%の効率を有する正極を使用する場合、電池は100%の効率を発揮できることに対し、100%の効率を有する正極に対して90%の効率を有する負極を使用する場合、電池は90%の効率のみ発揮し得る。結果的に、正極における効率の10%が不要に浪費される問題がある。
【0007】
これと関連して、一般的に正極活物質として高容量のニッケル(Ni)およびコバルト(Co)、マンガン(Mn)を含むリチウム複合酸化物を使用し、シリコン-炭素複合系負極活物質を使用する場合、初期充電を含む初期充放電時の正極の不可逆効率は90%以上で非常に高いことに対し、負極の初期不可逆効率は80~90%程度に留まる。
【0008】
また、このような正極と負極の不可逆効率の差によって、不可逆効率が高い電極の不可逆作用が誘発され、このような不可逆作用を改善するために不可逆効率が高い正極の活物質をより多く使用しなければならない。
【0009】
したがって、前記高ニッケル含有ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)、マンガン(Mn)を含むリチウム複合酸化物の正極と共に電池の設計のためには負極活物質を少なく投入し、本来の目的である高ニッケル含有ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)、マンガン(Mn)を含むリチウム複合酸化物を用いた高エネルギー密度の電池を設計するために、炭素系負極活物質の投入量が減り、効率的な設計が難しくなる問題がある。
【0010】
したがって、このような問題を解決できる技術としてLiNiOを添加して不可逆容量を改善する試みがあるが、添加剤の使用量が多くなることにより、LiNiOに残存する残留リチウムによるスラリ-ゲル化現象と充放電サイクルが行われ、Ni溶出およびガス発生が持続する問題があり、これに対する改善の必要性が高い実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はリチウム二次電池用正極添加剤、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池を提供する。より具体的には負極の不可逆特性を改善するための不可逆容量改善添加剤であるリチウム二次電池用正極添加剤、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極添加剤は、下記化学式1で表される。
【0013】
[化学式1]
Li6xCo1-y
【0014】
前記化学式1において、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.1であり、M=Bであり、0≦a≦0.1、0≦b≦0.1であり、aとbが共に0であることはない。
【0015】
正極添加剤は、ホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上をコートしたものであってもよい。
【0016】
また、本発明の一実施形態による他のリチウム二次電池用正極添加剤は、下記化学式2で表されるコアおよびホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含むコート層を含む。
【0017】
[化学式2]
Li6xCoO
【0018】
前記化学式2において、0.9≦x≦1.1である。
【0019】
一方、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法は、CoOまたはCo(OH)の金属水酸化物前駆体粒子を準備する段階;前駆体粒子、リチウム原料物質およびドーピング原料物質を混合して混合物を製造する段階;混合物を焼成して焼成物を製造する段階;および焼成物を冷却および粉砕する段階;を含み、ドーピング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含む。
【0020】
リチウム原料物質はLiCO、LiOH、CLiO、LiNO、LiSO、LiSO、LiO、Li、LiClからなる群より選ばれた1種以上であってもよい。
【0021】
前駆体粒子と前記リチウム原料物質の混合比率は1:5.9~1:6.1モル比であってもよい。
【0022】
混合物に対する前記ドーピング原料物質の混合比率は0.001~0.02モル比であってもよい。
【0023】
混合物を焼成して焼成物を製造する段階において、焼成条件は、600~800℃の温度範囲で1~15時間の間、不活性雰囲気で焼成してもよい。
【0024】
また、本発明の一実施形態による他のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法は、下記化学式3で表される化合物を準備する段階;化合物およびドーピング原料物質を混合して混合物を製造する段階;混合物を焼成して焼成物を製造する段階;および焼成物を冷却および粉砕する段階;を含み、ドーピング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含む。
【0025】
[化学式3]
Li6xCo
【0026】
前記化学式3において、0.9≦x≦1.1、0.9≦a≦1、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1である。
【0027】
化学式3で表される化合物に対する前記ドーピング原料物質の混合比率は0.001~0.02モル比であってもよい。
【0028】
混合物を焼成して焼成物を製造する段階において、焼成条件は、250~450℃の温度範囲で1~10時間の間、不活性雰囲気で焼成してもよい。
【0029】
上記二つの正極添加剤の製造方法において、リチウム金属酸化物を収得する段階;その後に、リチウム金属酸化物にコーティング原料物質を混合後焼成してコート層を形成させる段階;をさらに含み、コーティング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含んでもよい。
【0030】
また、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極は、集電体;および集電体の表面に位置する正極活物質層;を含み、正極活物質層は、正極活物質および正極添加剤を含み、正極添加剤は下記化学式3で表されるものであり、正極活物質および正極添加剤の合計100重量%に対して、前記正極添加剤は0.1~7重量%である。
【0031】
[化学式3]
Li6xCo
【0032】
前記化学式3において、0.9≦x≦1.1、0.9≦a≦1、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1である。
【0033】
正極添加剤は初期充放電時、分解されてLi供給源および下記化学式4で表される化合物に転換され得る。
【0034】
[化学式4]
LiCo1-y
【0035】
前記化学式4において、0<y≦0.1であり、M=Bであり、0≦a≦0.1、0≦b≦0.1である。
【0036】
正極添加剤はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上をコートしたものであってもよい。
【0037】
また、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、正極;負極;および正極と負極の間に位置する電解質を含み、正極は前記言及した正極添加剤を含むものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明による負極の不可逆特性を改善するための不可逆容量改善添加剤である二次電池用正極添加剤の使用により、電池の100%の効率を発揮できるようにし、不可逆容量改善添加剤によるゲル化現象やカス発生の問題を解決して電池の寿命を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施例によるリチウム二次電池用正極添加剤の初期充電容量(0.1C充電)を示す図である。
図2】本発明の一実施例によるリチウム二次電池用正極添加剤の初期充電容量(0.1C充電)を示す図である。
図3】本発明の一実施例によるリチウム二次電池用正極添加剤のXRD分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書で、第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるがこれらに限定されない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するために使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
【0041】
本明細書で、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0042】
本明細書で、使用される専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0043】
本明細書で、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」の用語はマーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものであり、前記構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0044】
本明細書で、ある部分が他の部分「上に」または「の上に」あると言及する場合、これは他の部分のすぐ上にまたは上にあり得、その間に他の部分が介在し得る。対照的にある部分が他の部分の「すぐ上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
【0045】
特に定義していないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は関連技術文献と現在開示された内容に合う意味を有するものに追加解釈され、定義されない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈されない。
【0046】
また、特記しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0047】
以下、本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0048】
本発明の利点および特徴、並びにこれらを達成する方法は添付する図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると明確になる。しかし、本発明は、以下で開示する実施例に限定されるものではなく互いに異なる多様な形態で実現することができ、本実施形態は、単に本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一の参照符号は同一の構成要素を示す。
【0049】
したがって、いくつかの実施例で、良く知られている技術は本発明が曖昧に解釈されることを避けるために具体的に説明されない。他に定義のない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解される意味で使用される。
【0050】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極添加剤は、下記化学式1で表される。下記化学式1で表される添加剤は、ドーピングされ、過剰にリチウム化されたリチウムコバルト酸化物である。
【0051】
[化学式1]
Li6xCo1-y
【0052】
このとき、前記化学式1において、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.1であり、M=Bであり、0≦a≦0.1、0≦b≦0.1であり、aとbが共に0であることはない。すなわち、ホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上のドーピング元素を必ず含む。ホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上のドーピング元素を添加剤に含むと、そうではない場合より正極材スラリ-ゲル化現象を減少させる長所がある。
【0053】
このとき、正極添加剤はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上をコートするものであってもよい。コート層を使用する場合、安定した不可逆容量を実現し、電極スラリ製造時の問題となる正極材スラリ-ゲル化現象がないため、スラリの製造時、添加剤を多く使用しても大きな問題がない長所がある。理由は次のとおりである。添加剤の表面に残留しているLiO及びLiCOがホウ素化合物及びタングステン化合物と反応して安定したリチウムホウ素化合物(LiB)及びリチウムタングステン化合物(LiWO)に変化してスラリ製造時の塩基性リチウムによるPVDFバインダゲル化を減少させて電極を製造する工程においてもより安定的に使用できるからである。
【0054】
一般的にNiおよびCoを含むリチウム複合酸化物の表面には主に反応に関与しない炭酸リチウム(LiCO)および水酸化リチウム(LiOH)形態のリチウムがやむを得ず存在し、これを残留リチウムと称する。このように残留リチウムが表面に存在するリチウム複合酸化物を正極活物質として正極に適用した電池は、充放電中に残留リチウムによる気体(Gas)発生が引き起こされる。具体的には残留リチウムのうちLiOHは空気中のCOまたはカーボネート系電解液分解によって発生するCOと反応してLiCOを形成することができる。また、LiCOは再びHFと反応してCO気体を発生させ得る。このような気体発生は電池の初期容量の減少、初期充放電効率の減少などの問題を発生させる。しかし、上記したとおり、ホウ素やタングステンを添加する場合はこのような残留リチウムの量を減少させて初期充電容量を向上させることができる。
【0055】
また、本発明の一実施形態による他のリチウム二次電池用正極添加剤は、下記化学式2で表されるコアおよびホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含むコート層を含む。
【0056】
[化学式2]
Li6xCoO
このとき、前記化学式2において、0.9≦x≦1.1である。すなわち、過剰にリチウム化されたリチウムコバルト酸化物にホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含むコート層がコートされた形態である。コート層を使用する場合、寿命特性の向上、高温安定性の向上の効果などの前記言及した効果がある。
【0057】
前記言及した正極添加剤は本発明の発明者らの深い研究と多様な実験を重ねることにより開発したものである。不可逆効率設計に効果的に使用することができ、高い導電性により電極の導電ネットワーク構成を改善させることができ、過量の残留リチウムによるゲル化を減らす添加剤を開発して本発明に至った。本発明の一実施形態による正極添加剤は正極活物質と共に使用されて電池の100%の効率を発揮できるようにし、このような正極添加剤の不可逆容量の改善効果によって、ゲル化現象やガス発生の問題を解決して電池の寿命を増大することができる。
【0058】
このような正極添加剤は初期の充電時にのみ反応に関与し、分解されて放電時には反応に関与しない。このようなメカニズムにより電池の不可逆効率を効果的に設計することができる。
【0059】
また、正極添加剤は場合によって高い導電性を示すことができる。したがって、電極の導電ネットワーク構成も改善させることができる。
【0060】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法は、CoOまたはCo(OH)の金属水酸化物前駆体粒子を準備する段階;前駆体粒子、リチウム原料物質およびドーピング原料物質を混合して混合物を製造する段階;混合物を焼成して焼成物を製造する段階;および焼成物を冷却および粉砕する段階;を含み、ドーピング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含む。
【0061】
このとき、リチウム原料物質はLiCO、LiOH、CLiO、LiNO、LiSO、LiSO、LiO、Li、LiClからなる群より選ばれた1種以上であってもよい。
【0062】
このとき、ドーピング原料物質がホウ素(B)の場合の化合物はホウ素化合物であり、HBO、Bなどで表される。
【0063】
また、ドーピング原料物質がタングステン(W)の場合の化合物は、タングステン化合物であり、WO、HWO、(NH10(H1242)・O、(NH120・XHOなどで表される。
【0064】
このとき、金属水酸化物前駆体粒子とリチウム原料物質の混合比率は、駆体粒子:リチウム原料物質=1:5.9~1:6.1モル比であってもよい。
【0065】
また、混合物に対するドーピング原料物質の混合比率は0.001~0.02モル比であってもよい。
【0066】
混合物を焼成して焼成物を製造する段階において、焼成条件は、600~800℃の温度範囲で1~15時間の間、不活性雰囲気で焼成してもよい。より具体的には1~10時間の間焼成してもよい。
【0067】
その後、混合物を焼成して製造した焼成物を粉砕、分級して添加剤を収得し得る。
【0068】
また、本発明の一実施形態による他のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法は、化学式3で表される化学式を有する正極添加剤を準備する段階;化学式3で表される化学式を有する正極添加剤化合物およびドーピング原料物質を混合して混合物を製造する段階;混合物を焼成して焼成物を製造する段階;および焼成物を冷却および粉砕する段階;を含み、ドーピング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含む。すなわち、前述の製造方法とは異なるように既に製造されたドーピングされていない正極添加剤を、ドーピング原料物質と混合してドーピングされた正極添加剤を製造する方法である。
【0069】
[化学式3]
Li6xCo
【0070】
前記化学式3において、0.9≦x≦1.1、0.9≦a≦1、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1である。
【0071】
このとき、化学式3で表される化合物に対する前記ドーピング原料物質の混合比率は0.001~0.02モル比であってもよい。
【0072】
混合物を焼成して焼成物を製造する段階において、焼成条件は、250~450℃の温度範囲で1~10時間の間、不活性雰囲気で焼成してもよい。
【0073】
前記言及した正極添加剤の製造方法において、前記リチウム金属酸化物を収得する段階;その後に、リチウム金属酸化物にコーティング原料物質を混合後焼成してコート層を形成させる段階;をさらに含み、コーティング原料物質はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上を含み得る。すなわち、コート層をさらに形成する段階をさらに含み得る。
【0074】
本発明の一実施形態により製造された正極添加剤はリチウム二次電池の正極に有用に使用されることができる。
【0075】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極は、集電体;および集電体の表面に位置する正極活物質層;を含み、正極活物質層は、正極活物質および正極添加剤を含み、正極添加剤は化学式3で表されるものであり、正極活物質および正極添加剤の合計100重量%に対して、正極添加剤は0.1~7重量%である。このとき、より具体的には正極添加剤は0.1~3.5重量%であってもよい。
【0076】
[化学式3]
Li6xCo
【0077】
前記化学式3において、0.9≦x≦1.1、0.9≦a≦1、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1である。
【0078】
このとき、正極添加剤はホウ素(B)およびタングステン(W)のうち1種以上をコートしたものであってもよい。
【0079】
このとき、正極添加剤は初期充放電時、分解されてLi供給源および下記化学式4で表される化合物に転換されるものであってもよい。
【0080】
[化学式4]
LiCo1-y
【0081】
前記化学式4において、0<y≦0.1であり、M=Bであり、0≦a≦0.1、0≦b≦0.1である。
【0082】
本発明の一実施形態により製造された正極添加剤はリチウム二次電池の正極に使用され、このような正極はリチウム二次電池に有用に使用することができる。すなわち、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、正極;負極;および正極と負極の間に位置する電解質を含み、正極は前記言及した正極添加剤を含む。
【0083】
このとき、正極は不可逆容量改善添加剤であるリチウム二次電池用正極添加剤と正極活物質、導電材、結合剤および溶媒を混合して正極活物質組成物を製造した後、アルミニウム集電体上に直接コーティングおよび乾燥して製造する。または、前記正極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムをアルミニウム集電体上にラミネーションして製造することが可能である。
【0084】
このとき、導電材は、カーボンブラック、黒鉛、金属粉末を使用し、結合剤はビニリデンフルオリド/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリビニリデンフルオリド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびその混合物が可能である。また、溶媒はN-メチルピロリドン、アセトン、テトラヒドロフラン、デカンなどを使用する。このとき、正極活物質、導電材、結合剤および溶媒の含有量はリチウム二次電池で通常使用する水準を使用される。
【0085】
一方、負極は正極と同様に負極活物質、結合剤および溶媒を混合してアノード活物質組成物を製造し、これを銅集電体に直接コートしたり、別途の支持体上にキャスティングしてこの支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネーションして製造する。このとき、負極活物質組成物には必要に応じて導電材をさらに含有したりもする。
【0086】
このとき、負極活物質としては、リチウムをインターカレーション/デインターカレーションできる材料が使用され、例えば、リチウム金属やリチウム合金、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維などを使用する。また、導電材、結合剤および溶媒は前述した正極の場合と同様に使用される。
【0087】
このとき、セパレータは、リチウム二次電池で通常使用されるものであればすべて使用可能であり、一例としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができるのはもちろんである。
【0088】
一方、リチウム二次電池に充電される電解質としては、非水性電解質または公知の固体電解質などが使用可能であり、リチウム塩が溶解したものを使用する。
【0089】
このとき、非水性電解質の溶媒は特に限定されるものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類などを使用することができる。これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を好ましく使用することができる。
【0090】
一方、電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどの重合体電解質に電解液を含浸したゲル状重合体電解質や、LiI、LiNなどの無機固体電解質が可能である。
【0091】
このとき、リチウム塩はLiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCl、およびLiIからなる群より選ばれた1種が可能である。
【実施例
【0092】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものでないことに留意しなければならない。本発明の権利範囲は特許請求範囲に記載された事項とこれに基づいて合理的に類推される事項によって決定されるからである。
【0093】
比較例1
1.00モル比NiOと2.00モル比LiOをモル比に合わせて称量する。その後、これらを均一に混合して真空炉(Vacuum furnace)に装入する。真空炉内を真空引きして窒素に置き換えた後、窒素を0.1L/minに流入させながら混合物を焼成した。焼成条件は700℃まで3時間の間昇温させて、昇温された温度で10時間維持した。その後、焼成物を冷却して粉砕および325mesh分級によりマイクロ粉末に製造してLiNiO正極添加剤を収得した。
【0094】
実施例1
1.00モル比CoO(高純度化学,99%)と3.00モル比LiO(ガンファン,99%)をモル比に合わせて称量する。その後、これらを均一に混合して真空炉(Vacuum furnace)に装入する。真空炉内を真空引きして窒素に置き換えた後、窒素を0.1L/minに流入させながら混合物を焼成した。焼成条件は700℃まで3時間の間昇温させて、昇温された温度で10時間維持した。その後、焼成物を冷却して粉砕および325mesh分級によりマイクロ粉末に製造して正極添加剤を収得した。
【0095】
実施例2
1.00モル比CoO(高純度化学,99%)と3.00モル比LiO(ガンファン,99%)をモル比に合わせて称量する。その後、これらを均一に混合して真空炉(Vacuum furnace)に装入する。真空炉内を真空引きして窒素に置き換えた後、窒素を0.1L/minに流入させながら混合物を焼成した。焼成条件において焼成温度を650℃にし、以後工程は実施例1と同様である。
【0096】
実施例3
1.00モル比CoO(高純度化学,99%)と3.00モル比LiO(ガンファン,99%)をモル比に合わせて称量する。その後、これらを均一に混合して真空炉(Vacuum furnace)に装入する。真空炉内を真空引きして窒素に置き換えた後、窒素を0.1L/minに流入させながら混合物を焼成した。焼成条件において焼成温度を600℃にし、以後工程は実施例1と同様である。
【0097】
実施例4
1.00モル比CoO(高純度化学,99%)と3.00モル比LiO(ガンファン,99%)をモル比に合わせて称量する。その後、これらを均一に混合して真空炉(Vacuum furnace)に装入する。真空炉内を真空引きして窒素に置き換えた後、窒素を0.1L/minに流入させながら混合物を焼成した。焼成条件において焼成温度を550℃にし、以後工程は実施例1と同様である。
【0098】
実施例5
1.00モル比CoO(高純度化学,99%)と3.00モル比LiO(ガンファン,99%)、0.001モル比WO(高純度化学,99%)、0.001モル比HBO(samchun化学,98%)をモル比に合わせて称量し、以後工程は実施例1と同様である。
【0099】
実施例6
1.00モル比CoO(高純度化学,99%)と3.00モル比LiO(ガンファン,99%)、0.005モル比WO(高純度化学,99%)、0.005モル比HBO(samchun化学,98%)をモル比に合わせて称量し、以後工程は実施例1と同様である。
【0100】
実施例7
1.00モル比CoO(高純度化学,99%)と3.00モル比LiO(ガンファン,99%)、0.01モル比WO(高純度化学,99%)、0.01モル比HBO(samchun化学,98%)をモル比に合わせて称量し、以後工程は実施例1と同様である。
【0101】
実施例8
1.00モル比CoO(高純度化学,99%)と3.00モル比LiO(ガンファン,99%)、0.05モル比WO(高純度化学,99%)、0.05モル比HBO(samchun化学,98%)をモル比に合わせて称量し、以後工程は実施例1と同様である。
【0102】
実施例9
実施例1で製造された粉末に0.001モル比WO(高純度化学,99%)、0.001モル比HBO(samchun化学,98%)をモル比に合わせて称量して均一にコーティング混合して真空炉(Vacuum furnace)に装入する。真空炉内を真空引きして窒素に置き換えた後、窒素を0.1L/minに流入させながら混合物を再焼成した。焼成段階では380℃まで2時間の間昇温させて、昇温された温度で5時間維持した。その後、焼成物を冷却して粉砕および325mesh分級によりマイクロ粉末に製造して正極添加剤を収得した。
【0103】
実施例10
実施例1で製造された粉末に0.005モル比WO(高純度化学,99%)、0.005モル比HBO(samchun化学,98%)をモル比に合わせて称量し、以後工程は実施例9と同様である。
【0104】
実施例11
実施例1で製造された粉末に0.01モル比WO(高純度化学,99%)、0.01モル比HBO(samchun化学,98%)をモル比に合わせて称量し、以後工程は実施例9と同様である。
【0105】
実施例12
実施例1で製造された粉末に0.05モル比WO(高純度化学,99%)、0.05モル比HBO(samchun化学,98%)をモル比に合わせて称量し、以後工程は実施例9と同様である。
【0106】
<実験例1>
CR2032コインセルを用いて電気化学の評価を行った。極板製造用スラリは正極添加剤:導電材(super-C65):バインダ(PVDF,KF1120)=90:5:5wt%であり、固形分が約30%になるようにNMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)を添加してスラリ粘度を調整した。製造されたスラリは15μm厚さのAl箔上にドクターブレード(Doctor blade)を用いてコートした後乾燥および圧延した。電極ローディング量は14.6mg/cmであり、圧延密度は3.1g/cmであった。電解液は1M LiPF6 in EC:DMC:EMC=3:4:3(vol%)に1.5%のVCを添加したものを使用し、PP分離膜とリチウム負極(200um,Honzo metal)を使用してコインセルの製造後10時間常温でエージングした後充放電テストを行った。容量評価は380mAh/gを基準容量とし、充放電条件はCC/CV3.0~4.25V、0.005C cut-offを適用した。図1、2および表1にLiNiO(比較例1)およびLiCoO(実施例1~12)の初期充電容量(0.1C充電)を示した。
【0107】
【表1】
【0108】
図1をみると、比較例であるLiNiOは380mAh/g充電容量に対して放電容量を120mAh/g程度示して不可逆容量が260mAh/g程度であるが、実施例1は750mAh/g充電容量に対して放電容量30mAh/g程度で不可逆容量が720mAh/g程度示され、さらに大きい不可逆容量を示しており、LiNiOは充電以後LiNiOに変化して継続して充放電過程でNiOに分解溶出されながらガス発生の問題を発生させる。しかし、LiCoO不可逆容量の改善効果を示す正極添加剤は充電後にはLiCoOが分解されて6個のLiが負極に移動して負極の不可逆リチウムを補充する役割をし、正極には伝導性が良いLiCoOとして残っており、充電中に発生したOガスは完成セルでは初期充放電後の発生ガス除去段階で除去されると、その後には安定するためLiNiO正極添加剤のように充放電中の持続的なガス発生の問題がないためより大きい長所を有している。
【0109】
また、実施例5~12のサンプルは他のサンプルに比べて正極材スラリ-ゲル化現象がないため不可逆容量の改善効果がある正極添加剤を多く使用しても大きな問題がない長所がある。これは添加剤の表面に残留しているLiO及びLiCOがホウ素化合物及びタングステン化合物と反応して安定したリチウムホウ素化合物(LiB)及びリチウムタングステン化合物(LiWO)に変化してスラリ製造時の塩基性リチウムによるPVDFバインダゲル化を減少させて電極を製造する工程においてもさらに安定的に使用できる長所がある。
【0110】
ただし、BW含有量が高くなるほど充電容量で多くの低減があり、前記ドーピング原料物質の混合比率は0.001~0.02モル比であることが好ましい。
【0111】
<実験例2>
実験例2-1
極板製造用スラリは実施例11によって製造された正極添加剤を用いた。正極添加剤:正極活物質:導電材(super-C65):バインダ(PVDF,KF1120)=1:95.5:1.5:2%であり、固形分が約30%になるようにNMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)を添加してスラリ粘度を調整した。製造されたスラリは15μm厚さのAl箔上にドクターブレード(Doctor blade)を用いてコートした後乾燥および圧延した。電極ローディング量は14.6mg/cmであり、圧延密度は3.1g/cmであった。電解液は1M LiPF6 in EC:DMC:EMC=3:4:3(vol%)に1.5%のVCを添加したものを使用し、PP分離膜とリチウム負極(200um,Honzo metal)を使用してコインセル製造後10時間常温でエージングした後充放電テストを行った。容量評価は200mAh/gを基準容量とし、充放電条件はCC/CV3.0~4.25V、0.005C cut-offを適用した。
【0112】
実験例2-2
正極添加剤:正極活物質:導電材(super-C65):バインダ(PVDF,KF1120)=2:94.5:1.5:2%にしたことを除いては実験例2-1と同様に実験を行った。
【0113】
実験例2-3
正極添加剤:正極活物質:導電材(super-C65):バインダ(PVDF,KF1120)=3:93.5:1.5:2%にしたことを除いては実験例2-1と同様に実験を行った。
【0114】
比較例2-1
正極添加剤:正極活物質:導電材(super-C65):バインダ(PVDF,KF1120)=0:96.5:1.5:2%にしたことを除いては実験例2-1と同様に実験を行った。
【0115】
実験例2-4
実験例2-1でリチウム負極の代わりに黒鉛負極を使用して同様の実験を行った。
【0116】
実験例2-5
実験例2-2でリチウム負極の代わりに黒鉛負極を使用して同様の実験を行った。
【0117】
実験例2-6
実験例2-3でリチウム負極の代わりに黒鉛負極を使用して同様の実験を行った。
【0118】
比較例2-2
比較例2-1でリチウム負極の代わりに黒鉛負極を使用して同様の実験を行った。
【0119】
表2に実験例2-1~2-6、比較例2-1および比較例2-2の初期充放電容量(0.2C充放電)を示した。
【0120】
【表2】
【0121】
正極添加剤がない場合(比較例2-1、2-2)のようにリチウム負極の代わりに黒鉛負極を使用すると、負極の不可逆により20mAh/gの放電容量が減るが、正極添加剤が多く添加される場合(実験例2-5、2-6)のように負極の不可逆の部分を補償してリチウム負極を使用したときのような放電容量を示して安定した充放電容量を実現できる長所がある。前記正極添加剤の量は負極の不可逆容量に合わせて最適量を調節して使用することが可能である。
【0122】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3