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特許7157277硬化性樹脂組成物、プリプレグおよびその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、プリプレグおよびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20221012BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C08F290/06
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022541780
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007840
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021028150
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関 允諭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌典
(72)【発明者】
【氏名】土方 大地
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172725(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054601(WO,A1)
【文献】特表2008-510059(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230945(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159080(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/004211(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/172342(WO,A1)
【文献】特開2018-028078(JP,A)
【文献】国際公開第2021/149733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/02
C08J 5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるマレイミド化合物(A)と、不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)とを含有し、
前記成分(B)は下記式(2)で表される化合物又は下記式(4)で表される化合物であり、
前記 成分(A)1当量に対して前記成分(B)が0.5~4.2当量である硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは0~3の整数を表す。nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
【化2】
(式(2)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<10である。)
【化3】
(式(4)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<10である。)
【請求項2】
さらに硬化促進剤を含有する請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物をシート状の繊維基材に保持したプリプレグ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物、又は請求項に記載のプリプレグを硬化して得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、プリプレグおよびその硬化物に関するものであり、半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板などの電気・電子部品、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックなどの軽量高強度材料、3Dプリンティング用途に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品を搭載する積層板はその利用分野の拡大により、要求特性が広範かつ高度化している。例えば従来、半導体チップは金属製のリードフレームに搭載することが主流であったが、CPUなどの高度な処理能力のある半導体チップは高分子材料で作られる積層板に搭載されることが多くなっている。CPU等の素子の高速化が進みクロック周波数が高くなるにつれて信号伝搬遅延や伝送損失が問題となり、配線板に低誘電率化や低誘電正接化が求められている。
【0003】
通信技術の発達の面から、近年の5Gの機運が高まり、Sub6だけでなく、10GHz以上、特に28GHz以上の準ミリ波、ミリ波を用いた通信デバイスが爆発的に増加することが予想されており、基地局、アンテナ、通信デバイスにおいて、高周波に対応する基板材料が必要となっている。これら基板材料などにおいては伝送速度を低下させないようにするために高度な誘電特性(特に誘電正接)を重要視しており、これらの領域で安定して使用できる材料が求められている。
【0004】
また、近年携帯電話などのモバイル電子機器の普及により、精密電子機器が屋外環境や人体の極近傍で使用・携帯されるようになってきているため、外的環境(特に耐湿熱環境)に対する耐性が必要とされている。更に自動車分野においては急速に電子化が進み、エンジンの近くに精密電子機器が配置されることもあり、耐熱・耐湿性がより高いレベルで要求されている。
【0005】
特許文献1のようなビスフェノールA型シアネートエステル化合物とビスマレイミド化合物を併用した樹脂であるBTレジンを使用した配線板は耐熱性や耐薬品、誘電特性などに優れているため、従来、高性能配線板として幅広く使用されてきたが、上記のような更なる高性能対応するために改善が必要となっている。
【0006】
このような中、市場で入手可能なマレイミド樹脂は、上述の用途に従来使用されてきたエポキシ樹脂等に比べると大幅に耐熱性が向上し、高周波領域で優れた誘電特性を発揮するが、高い耐熱性を有したマレイミド樹脂は、耐湿性が低く、また剛直である故に脆く、銅箔に対する接着力も低いといった欠点がある。
【0007】
これに対して、特許文献2、3のようなマレイミド樹脂も開発されているがいまだ十分とは言えない。
【0008】
また、特許文献4のようなマレイミド樹脂とプロペニル基含有フェノール樹脂を含む組成物が提案されているが、硬化反応時に反応に関与しないフェノール性水酸基が残存してしまうため誘電特性が十分でないのに加え、吸水率が高いといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特公昭54-30440号公報
【文献】特開平3-100016号公報
【文献】特許第5030297号公報
【文献】特開平04-359911号公報
【文献】特公平4-75222号公報
【文献】特公平6-37465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性、銅箔ピール強度、誘電特性、耐湿性を示す硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定構造を有するマレイミド化合物と不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物からなる硬化性樹脂組成物の硬化物が耐熱性、銅箔ピール強度、誘電特性、耐湿性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち本発明は以下の[1]~[7]に関する。
[1]
下記式(1)で表されるマレイミド化合物(A)と、不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)とを含有し、成分(A)と成分(B)の重量比率が50/50~5/95である硬化性樹脂組成物。
【0013】
【化1】
【0014】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは0~3の整数を表す。nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
[2]
下記式(1)で表されるマレイミド化合物(A)と、不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)とを含有し、成分(A)1当量に対して成分(B)が0.20~4.2当量である硬化性樹脂組成物。
【0015】
【化2】
【0016】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは0~3の整数を表す。nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
[3]
前記成分(B)が(メタ)アクリル基を有するポリフェニレンエーテル化合物である前項[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]
前記成分(B)が下記式(2)で表される化合物又は下記式(4)で表される化合物である前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0017】
【化3】
【0018】
(式(2)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<10である。)
【0019】
【化4】
【0020】
(式(4)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<10である。)
[5]
さらに硬化促進剤を含有する前項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[6]
前項[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物をシート状の繊維基材に保持したプリプレグ。
[7]
前項[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物、又は前項[6]に記載のプリプレグを硬化して得られる硬化物。
【発明の効果】
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物においては耐熱性、銅箔ピール強度、誘電特性、耐湿性に優れる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】合成例1のGPCチャートである。
図2】合成例2のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物について、以下に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記式(1)で表されるマレイミド化合物(以下、成分(A)とも称する。)と、不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(以下、成分(B)とも称する。)とを含有する。
【0024】
【化5】
【0025】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは0~3の整数を表す。nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である)
【0026】
前記式(1)で表される化合物は、下記式(1-a)で表されるときが特に好ましい。
【0027】
【化6】
【0028】
前記式(1)中、nの値はマレイミド樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、検出器:RI)の測定により求められた数平均分子量の値、あるいは分離したピークの各々の面積比から算出することが出来る。
【0029】
前記式(1)中、n=1の場合、溶剤への溶解性が低く、またnが5以上の場合、成型時のフロー性が悪くなり、硬化物としての特性が十分発揮できない。
【0030】
成分(A)は分子量分布を有することが好ましく、前記式(1)中、n=1体のGPC分析(RI)による含有量は98面積%以下であることが好ましく、より好ましくは20~90面積%、さらに好ましくは30~80面積%、特に好ましくは40~80面積%の範囲である。n=1体の含有量が98面積%以下であると、耐熱性が良好となる。また結晶性が低下し、溶剤溶解性が良好となる。一方、n=1体の下限値が20面積%以上であると樹脂溶液の粘度が低下し、含浸性が良好となる。また固体として取り出す際に低温で溶剤を除去できるため、自己重合が起こりづらく取り扱いが容易となる。
【0031】
成分(A)はマレイミド基に対する配向性が異なる非対称構造の割合を多くすることで溶剤溶解性が良好となり、またその硬化物において誘電特性を向上させることができる。前記式(1)のn=1体中の配向比はHPLC分析(225nm)から求めることができ、オルト-パラ体はn=1体総量中30面積%以上60面積%未満であることが好ましく、35面積%以上55面積%未満であることがさらに好ましく、40面積%以上55面積%未満が特に好ましい。
【0032】
成分(A)の軟化点は50℃~150℃であることが好ましく、より好ましくは80℃~120℃であり、更に好ましくは90℃~120℃、特に好ましくは95℃~120℃である。また、150℃での溶融粘度は0.05~100Pa・s、好ましくは0.1~40Pa・sである。
【0033】
以下、成分(A)の製造方法について説明するが、本製法に限定されるものではない。
【0034】
[芳香族アミン樹脂の製造方法]
成分(A)は、前駆体として下記式(3)で表される芳香族アミン樹脂を用いることができる。
【0035】
【化7】
【0036】
(式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは0~3の整数を表す。nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
【0037】
前記式(3)で表される芳香族アミン樹脂の製法は特に限定されるものではなく、例えば、特許文献5では、アニリンとm-ジイソプロペニルベンゼンまたはm-ジ(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンとを、酸性触媒の存在下で180~250℃で反応させることにより前記式(3)におけるn=1体が主成分として得られる。n=1体の中には1,3-ビス(p-アミノクミル)ベンゼン、1,3-ビス(o-アミノクミル)ベンゼンのようなアニリン2分子に対しての配向性が同じである対称構造の化合物や、1-(o-アミノクミル)-3-(p-アミノクミル)ベンゼンのようなアニリン2分子に対しての配向性が異なった非対称構造の化合物の3つの異性体が含まれている。さらに、副成分としてn=2~5体も生成されるが、特許文献5ではこれらを晶析により精製して純度98%の1,3-ビス(p-アミノクミル)ベンゼンを得ている。また、特許文献6では1,3-ビス(p-アミノクミル)ベンゼンをマレイミド化してN,N’-(1,3-フェニレン-ジ-(2,2-プロピリデン)-ジ-p-フェニレン)ビスマレイミドを合成して結晶の生成物を得ているが、これを溶剤に溶解するためには加熱が必要であり、加熱後に室温で放置すると数時間で結晶が析出してしまう。そのため、樹脂組成物を調整する場合も結晶が析出する可能性があり、N,N’-(1,3-フェニレン-ジ-(2,2-プロピリデン)-ジ-p-フェニレン)ビスマレイミドの濃度が高まるほど結晶化の可能性が高くなる。プリント配線板や複合材を作成するために、ガラスクロスや炭素繊維をワニスに含浸させて樹脂を付着させるが、結晶が析出してしまうと含浸作業が不可能となり、一方溶解状態を保つために温度を上げると組成物の反応が早まってしまい、ワニスの可使時間が短くなってしまう。
【0038】
前記式(3)で表される芳香族アミン樹脂を合成する際、用いられる酸性触媒は、塩酸、燐酸、硫酸、蟻酸、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の酸性触媒等が挙げられる。本発明においては塩酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などのプロトン酸が好ましい。これらは単独でも二種以上併用しても良い。触媒の使用量は、使用されるアニリン100重量%に対して、好ましくは1~12重量%、さらに好ましくは1~10重量%、特に好ましくは1~7重量%であり、12重量%より多いと目的とする非対称構造の化合物が少なく、対称構造を有する化合物が優先してできてしまう。一方、1%未満であると反応の進行が遅くなるだけでなく、反応が完結できない場合もあることから好ましくない。
【0039】
反応は必要によりトルエン、キシレンなどの有機溶剤を使用して行っても、無溶剤で行っても良い。例えば、アニリンと溶剤の混合溶液に酸性触媒を添加した後、触媒が水を含む場合は共沸により水を系内から除くことが好ましい。しかる後にジイソプロペニルベンゼンまたはジ(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンを添加し、その後溶剤を系内から除きながら昇温して140~190℃、好ましくは160~190℃で5~50時間、好ましくは5~30時間反応を行う。反応温度が高すぎる場合、非対称構造が生成後に再結合し、対称構造が優先してできてしまうことで、目的とする溶剤溶解性、電気特性を発揮できない。ジ(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンを使用した時には水が副生されるため、昇温時に溶剤と共沸させながら系内から除去する。反応終了後、アルカリ水溶液で酸性触媒を中和後、油層に非水溶性有機溶剤を加えて廃水が中性になるまで水洗を繰り返したのち、溶剤および過剰のアニリン誘導体を加熱減圧下において除去する。活性白土やイオン交換樹脂を用いた場合は、反応終了後に反応液を濾過して触媒を除去する。
また、反応温度や触媒の種類によってはジフェニルアミンが副生するため必要に応じて除去することは好ましい。高温・高真空下で、もしくは水蒸気蒸留等の手段を用いて、ジフェニルアミン誘導体を1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下まで除去する。
【0040】
[マレイミド樹脂の製造方法]
成分(A)は、上記工程により得られる前記式(3)で表される芳香族アミン樹脂と、マレイン酸または無水マレイン酸(以下、「マレイン酸無水物」ともいう。)を溶剤、触媒の存在下に付加もしくは脱水縮合反応させることで得られる。
【0041】
反応で使用する溶剤は反応中に生成する水を系内から除去する必要があるため、非水溶性の溶剤を使用することが好ましい。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種以上を併用しても良い。
【0042】
また、前記非水溶性溶剤に加えて非プロトン性極性溶剤を併用することもできる。例えば、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられ、2種以上を併用しても良い。非プロトン性極性溶剤を使用する場合は、併用する非水溶性溶剤よりも沸点の高いものを使用することが好ましい。
【0043】
また、反応で使用する触媒は酸性触媒であり、特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、ヒドロキシ-p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。酸触媒の使用量は、芳香族アミン樹脂に対して通常0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%である。
【0044】
例えば、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンに前記式(3)で表される芳香族アミン樹脂を溶解し、そこへマレイン酸無水物を添加してアミック酸を生成し、その後p-トルエンスルホン酸を加えて、還流条件下で生成する水を系内から除去しながら反応を行う。
【0045】
または、マレイン酸無水物をトルエンに溶解し、撹拌下で前記式(3)で表される芳香族アミン樹脂のN-メチル-2-ピロリドン溶液を添加してアミック酸を生成し、その後p-トルエンスルホン酸を加えて、還流条件下で生成する水を系内から除去しながら反応を行う。
【0046】
または、マレイン酸無水物をトルエンに溶解し、p-トルエンスルホン酸を加え、撹拌・還流状態において前記式(3)で表される芳香族アミン樹脂のN-メチル-2-ピロリドン溶液を滴下しながら、途中で共沸してくる水は系外へ除き、トルエンは系内へ戻しながら反応を行う(以上、第一段反応)。
【0047】
いずれの方法においても、マレイン酸無水物は前記式(3)で表される芳香族アミン樹脂のアミノ基に対して、通常1.0~3.0倍当量、好ましくは1.2~2.0倍当量使用する。
【0048】
未閉環のアミック酸を少なくするためには、上記に列記したマレイミド化反応後に反応溶液に水を加え、樹脂溶液層と水層に分離させ、過剰のマレイン酸や無水マレイン酸、非プロトン性極性溶媒、触媒などは水層側に溶解しているので、これを分液除去し、さらに同様の操作を繰り返して過剰のマレイン酸や無水マレイン酸、非プロトン性極性溶媒、触媒の除去を徹底する。過剰のマレイン酸や無水マレイン酸、非プロトン性極性溶媒、触媒が除去された有機層のマレイミド樹脂溶液に触媒を再度添加して加熱還流条件下での残存アミック酸の脱水閉環反応を再度行うことにより酸価が低いマレイミド樹脂溶液が得られる(以上、第二段反応)。
【0049】
再脱水閉環反応の時間は通常1~5時間、好ましくは1~3時間であり、必要により前述の非プロトン性極性溶剤を添加しても良い。反応終了後、冷却して、水洗水が中性になるまで水洗を繰り返す。その後、加熱減圧下において水を共沸脱水で除いてから、溶剤を留去したり、別の溶剤を加えたりして所望の濃度の樹脂溶液に調整しても良いし、溶剤を完全に留去して固形の樹脂として取り出しても良い。
【0050】
次に、成分(B)について説明する。
成分(B)は不飽和二重結合及びポリフェニレンエーテル構造を有するものであれば特に限定されない。成分(B)中の不飽和二重結合としては、(メタ)アクリル基、スチレン基、アリル基、ビニル基、メタリル基を挙げることができ、(メタ)アクリル基であることが好ましい。市販品としては、下記式(2)で表されるSA-9000-111(Sabic社製、メタクリル基を有するポリフェニレンエーテル化合物)や下記式(4)で表されるOPE-2St 1200(三菱瓦斯化学社製、スチレン基を有するポリフェニレンエーテル化合物)などが挙げられる。特に、誘電特性の観点から下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0051】
【化8】
【0052】
(式(2)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<10である)
【0053】
【化9】
【0054】
(式(4)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<10である)
【0055】
成分(B)の重量平均分子量(Mw)は、500~5000であることが好ましく、2000~5000であることがより好ましく、2000~4000であることがさらに好ましい。分子量が500以上であると硬化物の耐熱性が向上する。分子量が5000以下であると溶融粘度が低くなり、充分な流動性を得ることができ、成形性が良好となる。また、反応性が向上するため、硬化時間を短くすることができ、硬化物の耐熱性も向上する。重量平均分子量は、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
【0056】
成分(B)は、ポリフェニレンエーテル化合物をメタクリルクロリド、アクリルクロリド、クロロメチルスチレン等の不飽和二重結合を有する化合物と反応させることでラジカル重合性を付与することができる。
【0057】
ポリフェニレンエーテル化合物は重合反応により得られたものであっても、重量平均分子量10000~30000の高分子量のポリフェニレンエーテル化合物を再分配反応させて得られたものであってもよい。再分配反応は、例えば、高分子量のポリフェニレンエーテル化合物をトルエン等の溶媒中で、フェノール化合物とラジカル開始剤との存在下で加熱し再分配反応させる。このように再分配反応により得られるポリフェニレンエーテル化合物は、分子鎖の両末端に硬化に寄与するフェノール系化合物に由来する水酸基を有するために、さらに高い耐熱性を維持することができる点から好ましい。また、重合反応により得られるポリフェニレンエーテル化合物は、優れた流動性を示す点から好ましい。
【0058】
ポリフェニレンエーテル化合物の分子量の調整は、重合反応により得られるポリフェニレンエーテル化合物の場合、重合条件等を調整することにより行うことができる。また、再分配反応によって得られるポリフェニレンエーテル化合物の場合は、再分配反応の条件等を調整することにより、分子量を調整することができる。より具体的には、再分配反応において用いるフェノール系化合物の配合量を調整すること等が考えられる。すなわち、フェノール系化合物の配合量が多いほど、得られる成分ポリフェニレンエーテル化合物の分子量が低くなる。
【0059】
また、ポリフェニレンエーテル化合物は、具体的には、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等が挙げられる。すなわち、再分配反応によって得られる成分(B)の場合は、高分子量のポリフェニレンエーテル化合物として、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を用いて得られたポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。また、前記再分配反応に用いられるフェノール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のように、フェノール性水酸基を分子中に2個以上有する多官能のフェノール系化合物が好ましく用いられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物中の成分(A)と成分(B)の重量比率は50/50~5/95であることが好ましく、より好ましくは30/70~5/95であり、さらに好ましくは25/75~5/95であり、特に好ましくは25/75~10/90である。また、成分(A)と成分(B)の官能基当量比率としては、成分(A)1当量に対し、成分(B)は0.2~4.2当量であることが好ましく、より好ましくは、0.5~4.2当量であり、さらに好ましくは0.7~4.2当量であり、特に好ましくは0.7~2.0当量である。成分(B)が0.2当量未満である場合、マレイミド基が増大するため、吸水特性の悪化や硬化物が脆くなることで銅箔ピール強度が低下する。一方、成分(B)が4.2当量よりも多い場合、架橋密度が低下し耐熱性が悪くなる。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物には、成分(A)と成分(B)以外にも公知のいかなる樹脂材料も用いることができる。具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂、活性アルケン含有樹脂、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、プロペニル樹脂、メタリル樹脂、活性エステル樹脂などが挙げられ、1種類で用いても、複数併用してもよい。また、成分(A)以外のマレイミド化合物を併用してもかまわない。
【0062】
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂、活性アルケン含有樹脂、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂としては、それぞれ以下に例示するものを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
フェノール樹脂:フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、フルフラール等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、もしくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、ポリフェニレンエーテル。
【0064】
エポキシ樹脂:前記のフェノール樹脂、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシドや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)やトリグリシジル-p-アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂。
【0065】
アミン樹脂:ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ナフタレンジアミン、アニリンノボラック、オルソエチルアニリンノボラック、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、日本国特許第6429862号公報に記載のアニリンと置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、もしくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)との反応により得られるアミン樹脂。
【0066】
活性アルケン含有樹脂:前記のフェノール樹脂と活性アルケン含有のハロゲン系化合物(クロロメチルスチレン、アリルクロライド、メタリルクロライド、アクリル酸クロリド等)の重縮合物、活性アルケン含有フェノール類(2-アリルフェノール、2-プロペニルフェノール、4-アリルフェノール、4-プロペニルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール等)とハロゲン系化合物(4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジブロモベンゾフェノン、塩化シアヌル等)の重縮合物、エポキシ樹脂もしくはアルコール類と置換もしくは非置換のアクリレート類(アクリレート、メタクリレート等)の重縮合物、マレイミド樹脂(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン)。
【0067】
イソシアネート樹脂:p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環構造のジイソシアネート類;イソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体又は、上記ジイソシアネート化合物を3量化したイソシアネート体等のポリイソシアネート;上記イソシアネート化合物とポリオール化合物とのウレタン化反応によって得られるポリイソシアネート。
【0068】
ポリアミド樹脂:アミノ酸(6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等)、ラクタム(ε-カプロラクタム、ω-ウンデカンラクタム、ω-ラウロラクタム)およびジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン等)とジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;これらジカルボン酸のジアルキルエステル、およびジクロリド)との混合物から選ばれた1種以上を主たる原料とした重合物。
【0069】
ポリイミド樹脂:前記のジアミンとテトラカルボン酸二無水物(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2’-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物 、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、rel-[1S,5R,6R]-3-オキサビシクロ[3,2,1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、エチレングリコール-ビス-(3,4-ジカルボン酸無水物フェニル)エーテル、4,4’-ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)との重縮合物。
【0070】
シアネートエステル樹脂:フェノール樹脂をハロゲン化シアンと反応させることにより得られるシアネートエステル化合物であり、具体例としては、ジシアナートベンゼン、トリシアナートベンゼン、ジシアナートナフタレン、ジシアナートビフェニル、2、2’-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン、ビス(4-シアナートフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタン、2,2’-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)エタン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)ヘキサフロロプロパン、ビス(4-シアナートフェニル)スルホン、ビス(4-シアナートフェニル)チオエーテル、フェノールノボラックシアナート、フェノール・ジシクロペンタジエン共縮合物の水酸基をシアネート基に変換したもの等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、特開2005-264154号公報に合成方法が記載されているシアネートエステル化合物は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているためシアネートエステル化合物として特に好ましい。
シアネート樹脂は、必要に応じてシアネート基を三量化させてsym-トリアジン環を形成するために、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、鉛アセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート等の触媒を含有させることもできる。触媒は、硬化性樹脂組成物の合計質量100質量部に対して通常0.0001~0.10質量部、好ましくは0.00015~0.0015質量部使用する。
【0071】
活性エステル樹脂:エポキシ樹脂等、硬化性樹脂の硬化剤として1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を必要に応じて用いることができる。活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及びチオカルボン酸化合物の少なくともいずれかの化合物と、ヒドロキシ化合物及びチオール化合物の少なくともいずれかの化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及びナフトール化合物の少なくともいずれかの化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン- ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱化学社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学社製);リン原子含有活性エステル系硬化剤としてDIC社製の「EXB-9050L-62M」;等が挙げられる。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに硬化促進剤(硬化触媒)を併用して硬化性を向上させることもできる。用い得る硬化促進剤の具体例として、オレフィン樹脂やマレイミド樹脂等のラジカル重合可能な硬化性樹脂の自己重合やその他の成分とのラジカル重合を促進する目的でラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)-ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート類、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物の公知の硬化促進剤が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーオキシカーボネート類等が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類がより好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物の100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が特に好ましい。用いるラジカル重合開始剤の量が多いと硬化物の誘電特性が悪化する。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じてラジカル重合開始剤以外の硬化促進剤を添加、または併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノールや1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ、カルボン酸亜鉛(2-エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛)やリン酸エステル亜鉛(オクチルリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛等)等の亜鉛化合物等の遷移金属化合物(遷移金属塩) 等が挙げられる。硬化促進剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100重量部に対して0.01~5.0重量部が必要に応じて用いられる。
【0074】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル-2,6-ジキシレニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量は(リン含有化合物)/硬化性樹脂組成物中の樹脂成分が0.1~0.6(重量比)の範囲であることが好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0075】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)〔{3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル}メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0076】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ-ナイロン系樹脂、NBR-フェノール系樹脂、エポキシ-NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100質量部に対して0.05~50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.05~20質量部である。
【0077】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて溶融シリカ、結晶シリカ、多孔質シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、石英粉、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、グラファイト、フォルステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、酸化鉄、アスベスト、ガラス粉末等の粉体、またはこれらを球形状あるいは破砕状にした無機充填材を添加することができる。また、特に半導体封止用の硬化性樹脂組成物を得る場合、上記の無機充填材の使用量は硬化性樹脂組成物中、通常80~92質量%、好ましくは83~90質量%の範囲である。
【0078】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。これら添加剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは700質量部以下の範囲である。
【0079】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られ、通常130~180℃で30~500秒の範囲で予備硬化し、更に、150~200℃で2~15時間、後硬化することにより充分な硬化反応が進行し、本発明の硬化物が得られる。又、硬化性樹脂組成物の成分を溶剤等に均一に分散または溶解させ、溶媒を除去した後硬化させることもできる。
【0080】
こうして得られる本発明の硬化性樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性、高接着性、低誘電率、低誘電正接を有する。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性、高接着性、低誘電率、低誘電正接の要求される広範な分野で用いることが出来る。具体的には、絶縁材料、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、封止材料、レジスト等あらゆる電気・電子部品用材料として有用である。又、成形材料、複合材料の他、塗料材料、接着剤、3Dプリンティング等の分野にも用いることが出来る。特に半導体封止においては、耐ハンダリフロー性が有益なものとなる。
【0081】
半導体装置は本発明の硬化性樹脂組成物で封止されたものを有する。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、前記記載のように各成分を溶剤等に分散または溶解させ、均一に混合し、必要に応じて溶剤を留去することで調製してもよいし、あるいはプレポリマー化してもよい。例えば成分(A)と成分(B)を触媒の存在下または非存在下、溶剤の存在下または非存在下において加熱することによりプレポリマー化する。同様に、成分(A)と成分(B)の他、エポキシ樹脂、アミン化合物、マレイミド系化合物、シアネートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物化合物などの硬化剤及びその他添加剤を追加してプレポリマー化してもよい。各成分の混合またはプレポリマー化は溶剤の非存在下では例えば押出機、ニーダ、ロールなどを用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0083】
溶剤等を使用しないで均一に混合する手法としては50~100℃の範囲内の温度でニーダ、ロール、プラネタリーミキサー等の装置を用いて練りこむように混合し、均一な硬化性樹脂組成物とする。得られた硬化性樹脂組成物は粉砕後、タブレットマシーン等の成型機で円柱のタブレット状に成型、もしくは顆粒状の粉体、もしくは粉状の成型体とする、もしくはこれら組成物を表面支持体の上で溶融し0.05mm~10mmの厚みのシート状に成型し、硬化性樹脂組成物成型体とすることもできる。得られた成型体は0~20℃でべたつきのない成型体となり、-25~0℃で1週間以上保管しても流動性、硬化性がほとんど低下しない。
得られた成型体についてトランスファー成型機、コンプレッション成型機にて硬化物に成型することができる。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスともいう。)とすることもできる。本発明の硬化性樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶剤に溶解させてワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10~70重量%、好ましくは15~70重量%を占める量を用いる。この範囲よりも溶剤量が少ないと、ワニス粘度が高くなり作業性が悪化し、溶剤量が多いと、硬化物にボイドを発生させる原因になる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有する硬化性樹脂硬化物を得ることもできる。
【0085】
また、本発明の硬化性組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB-ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、B-ステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱溶融し、低粘度化してガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることによりプリプレグを得ることができる。その具体例としては、例えば、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、球状ガラスクロス、NEガラスクロス、及びTガラスクロス等のガラス繊維、更にガラス以外の無機物の繊維やポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、全芳香族ポリアミド、ポリエステル;並びに、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド及び炭素繊維などの有機繊維が挙げられるが、これらに特に限定されない。基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマットなどが挙げられる。また、織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、織布を開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01~0.4mm程度である。また、前記ワニスを、強化繊維に含浸させて加熱乾燥させることによりプリプレグを得ることもできる。
【0087】
本実施形態の積層板は、上記プリプレグを1枚以上備える。積層板はプリプレグを1枚以上備えるものであれば特に限定されず、他のいかなる層を有していてもよい。積層板の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができ、上記プリプレグ同士を積層し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。このとき、加熱する温度は、特に限定されないが、65~300℃が好ましく、120~270℃がより好ましい。また、加圧する圧力は、特に限定されないが、加圧が大きすぎると積層板の樹脂の固形分調整が難しく品質が安定せず、また、圧力が小さすぎると、気泡や積層間の密着性が悪くなってしまうため2.0~5.0MPaが好ましく、2.5~4.0MPaがより好ましい。本実施形態の積層板は、金属箔からなる層を備えることにより、後述する金属箔張積層板として好適に用いることができる。
上記プリプレグを所望の形に裁断、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより電気電子用積層板(プリント配線板)や、炭素繊維強化材を得ることができる。
【0088】
本発明の硬化物は成型材料、接着剤、複合材料、塗料など各種用途に使用できる。本発明記載の硬化性樹脂組成物の硬化物は優れた耐熱性と誘電特性を示すため、半導体素子用封止材、液晶表示素子用封止材、有機EL素子用封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板等の電気・電子部品や炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の軽量高強度構造材用複合材料に好適に使用される。
【実施例
【0089】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。軟化点及び溶融粘度は下記の方法で測定した。
・軟化点:JIS K-7234に準じた方法で測定
・溶融粘度:ICI溶融粘度(150℃)コーンプレート法で測定し、単位はPa・sである。
【0090】
・GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析
メーカー:Waters
カラム:SHODEX GPC KF-601(2本)、KF-602、KF-602.5、KF-603
流速:0.5ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
【0091】
・HPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析
カラム:Inertsil ODS-2
流速:1.0ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:アセトニトリル・水
検出器:フォトダイオードアレイ(225nm)
【0092】
・DSC分析
メーカー:TAインスツルメント
装置:DSC2500
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:30℃~350℃
【0093】
・DMA
メーカー:TAインスツルメント
装置:DMAQ800
測定モード:引張
昇温速度:2℃/min.
測定温度範囲:25℃~350℃
測定周波数:10Hz
tanδの値が最大となった温度をTgとした。
【0094】
・Td5分析
メーカー:セイコーインスツル株式会社
装置:TG/DTA6200
測定温度範囲:30℃~580℃
昇温速度:10℃/min
【0095】
・TMA
メーカー:TAインスツルメント
装置:TMAQ400
測定モード:引張
昇温速度:2℃/min.
測定温度範囲:25℃~330℃
【0096】
・機械強度
メーカー:島津製作所
装置:オートグラフAGS-X
引張速度:0.5mm/min
試験片の長さが5cmになるように挟み、180°方向に上記の試験速度で引っ張り測定した。
【0097】
・ピール強度試験
メーカー:島津製作所
装置:オートグラフAGS-X
ピール試験引張速度:50mm/min
厚み18μmの電解銅箔(CF-T4X-SV-18:福田金属箔粉工業株式会社製)の粗面と、厚み35μmの電解銅箔(CF-T9B-HTE:福田金属箔粉工業株式会社製)の粗面で硬化性樹脂組成物を挟み、1MPaの圧力で、220℃2時間の条件で硬化させて試験片を作製した。得られた試験片を幅2cmに切断したのち、厚み18μmの電解銅箔を幅1cmが残るように切断して取り除いた。幅1cmの厚み18μmの電解銅箔を90°方向に上記の試験速度で引っ張り、ピール強度を測定した。
【0098】
・吸水率試験
水中に24時間浸漬した後、取り出し25℃30%の環境下で24時間放置した後の重量を測定し算出した。
【0099】
・誘電率試験、誘電正接試験
メーカー:株式会社AET
装置:10GHz空洞共振器
幅2.5mm、長さ5cmの試験片を、乾燥機で120℃2時間乾燥させたのちに測定を行った。さらに、試験片を水中に24時間浸漬した後、取り出し25℃30%の環境下で24時間放置した後、再度測定を行った。
【0100】
[合成例1]
芳香族アミン樹脂(A-1)の合成
温度計、冷却管、ディーンスターク共沸蒸留トラップ、撹拌機を取り付けたフラスコにアニリン192部とトルエン112部、1,3-ビス(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン100部を仕込み、35%塩酸21.5部を10分かけて滴下した。系内を160℃に昇温し、水、トルエンを留去しながら同温度で17時間反応を行った。その後80℃まで冷却したのち、トルエン124部を加え、30%水酸化ナトリウム水溶液30部を10分かけて滴下した。その後同温度で2時間攪拌し、30分静置した。分離した下層の水層を除去し、反応液の水洗を洗浄液が中性になるまで繰り返した。次いでロータリーエバポレーターで油層から加熱減圧下において過剰のアニリンとトルエンを留去することにより前記式()で表される芳香族アミン樹脂(A-1)158部を得た。芳香族アミン樹脂(A-1)のアミン当量は186.1g/eq、軟化点は58.8℃であった。GPC分析(RI)により、n=1体は62.5面積%であった。GPCチャートは図1に記す。
【0101】
[合成例2]
マレイミド樹脂(M-1)の合成
温度計、冷却管、ディーンスターク共沸蒸留トラップ、撹拌機を取り付けたフラスコに無水マレイン酸73.5部とトルエン126部、メタンスルホン酸1.86部、N-メチル-2-ピロリドン12,6部を仕込み、加熱還流状態とした。次に、芳香族アミン樹脂(A-1)93部をトルエン55.8部に溶解した樹脂溶液を、還流状態を保ちながら4時間かけて滴下した。この間、還流条件で共沸してくる縮合水とトルエンをディーンスターク共沸蒸留トラップ内で冷却・分液した後、有機層であるトルエンは系内に戻し、水は系外へ排出した。樹脂溶液の滴下終了後、還流状態を保ち、脱水操作をしながら10時間反応を行った。
反応終了後、水洗を4回繰り返してメタンスルホン酸及び過剰の無水マレイン酸を除去し、70℃以下の加熱減圧下においてトルエンと水の共沸により、水を系内から除去した。次いで、メタンスルホン酸0.93部を加え、加熱還流状態で4時間反応を行った。反応終了後、水洗水が中性になるまで4回水洗を繰り返したのち、70℃以下の加熱減圧下においてトルエンと水の共沸により、水を系内から除去したのち、トルエンを加熱減圧下において約70-80%程度の樹脂濃度になるまで溶剤を留去した後、トルエンを追加して樹脂濃度60%に調整をした。これにより本発明のマレイミド(M-1)を含有するマレイミド溶液(V-1)を得た。得られたマレイミド樹脂(M-1)のn=1体はGPC分析(RI)により57.4面積%、n=2体は21.3面積%、n=3体以上は21.3面積%であった。n=1体中の配向比(オルト-オルト体/パラ-パラ体/オルト-パラ体)は、HPLC分析(225nm)から、32.0%/25.4%/42.6%であった。また、軟化点は115.5℃、粘度は6.0Pa・sであった。GPCチャートは図2に記す。
【0102】
参考例1、実施例~5、比較例1~6]
マレイミド化合物と不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物を表1に示す割合で測り取り、樹脂固形分50%になるようにトルエンを加えたのち、70℃で1時間加熱混合することでワニスを作製した。このときの樹脂の溶解性と相溶性を目視で確認して、後述の条件にて評価した。結果は表1に示す。
さらに、硬化促進剤としてDCP(ジクミルパーオキサイド、化薬ヌーリオン社製)をワニスに溶解させた。硬化促進剤が溶解したワニスを真空乾燥機にて80℃で30分、120℃で1時間加熱することで硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物を銅箔で挟み、真空下で1MPaの圧力をかけ220℃で2時間硬化させた。このときの硬化性を確認して、後述の条件にて評価した。得られた硬化物について各種測定した結果は表1に示す。
【0103】
溶解性判定条件:〇・・・溶液中に沈殿がない
×・・・溶液中に沈殿あり
相溶性判定条件:〇・・・相溶している
×・・・相溶していない(相分離している)
220℃硬化性判定条件:〇・・・硬化物が得られる
:×・・・硬化物が得られない(硬化物が脆く取り出せない)
【0104】
・M-1(合成例2で得られたものの溶剤を加熱減圧により留去したもの)
・MIR-3000(MIR-3000-70MT(日本化薬株式会社製)の溶剤を加熱減圧により留去したもの)
・BMI-70(ケイ・アイ化成株式会社製)
・BMI-2300(大和化成株式会社製)
・SA-9000-111(Sabic社製)Mw:3653、Mn:2648
・OPE-2st1200(三菱瓦斯化学社製)Mn:1200
【0105】
【表1】
【0106】
実施例~5はいずれも溶剤溶解性、相溶性が良好であり、220℃2時間で硬化反応が良好に進行し、耐熱性、銅箔ピール強度、耐湿性、誘電特性に優れることが確認された。比較例1はマレイミド化合物(M-1)を多く用いているため、吸水率、誘電特性が高い(悪い)ことが確認された。比較例2のようにマレイミド化合物(M-1)単独の場合、耐熱性、誘電正接は良好であるが、銅箔ピール強度が低く、さらに吸水率が高いため吸水後の誘電正接も悪化することが確認された。比較例3のように不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物単独では、220℃2時間の硬化条件では硬化しなかった。比較例4~6のように他のマレイミド樹脂を用いた場合は、溶剤溶解性や相溶性が悪く、誘電特性及び吸水後の誘電特性が高い(悪い)結果となった。
【要約】
本発明は、優れた耐熱性、銅箔ピール強度、誘電特性、耐湿性を示す硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
下記式(1)で表されるマレイミド化合物(A)と、不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)とを含有し、成分(A)と成分(B)の重量比率が50/50~5/95である硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは0~3の整数を表す。nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)

図1
図2