(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20221013BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221013BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20221013BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 M
H01L21/78 V
H01L21/304 622J
H01L21/304 621D
H01L21/304 631
B23K26/53
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2017213724
(22)【出願日】2017-11-06
【審査請求日】2020-10-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】片岡 陵佑
(72)【発明者】
【氏名】田母神 崇
(72)【発明者】
【氏名】押田 修平
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-004583(JP,A)
【文献】特開2016-225375(JP,A)
【文献】特開2003-243344(JP,A)
【文献】特開2014-165462(JP,A)
【文献】特開2017-017163(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104670(WO,A1)
【文献】特開2017-098331(JP,A)
【文献】特開2012-104644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
B23K 26/53
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの表面にバックグラインドテープを貼着するテープ貼着工程であって、前記ウェーハの表面に形成されたチップのバンプが、前記バックグラインドテープの糊層に埋設されるテープ貼着工程と、
切断ラインに沿って前記ウェーハの裏面からレーザー光を入射して前記ウェーハの内部に改質領域を形成する改質領域形成工程と、
前記改質領域が形成された前記ウェーハに対し、前記ウェーハの裏面を加工することにより前記ウェーハの厚さを薄くする裏面加工工程と、
前記ウェーハの裏面にダイシングテープを貼着することなく
前記ウェーハの表面に前記バックグラインドテープを貼着した状態で、前記ウェーハの裏面から
ブレイクバーによって前記切断ラインに荷重を加えて、前記ウェーハを前記切断ラインに沿って分割することにより前記ウェーハを個々のチップに分割する分割工程と、
を有するウェーハの加工方法。
【請求項2】
前記バックグラインドテープは、基材と中間層と前記糊層とが順に積層されて構成され、前記糊層が前記ウェーハの表面に貼付される、
請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
前記裏面加工工程は、
前記ウェーハの裏面を研削する研削工程と、
前記研削工程後の前記ウェーハの裏面を化学機械的に研磨する研磨工程と、
を有する請求項1又は2に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハをチップ毎に分割するウェーハの加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェーハの表面に保護テープを装着した状態でウェーハの裏面を研削し、その後、ウェーハの内部に改質領域を形成し、改質領域を起点としてウェーハを割断するレーザ加工方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献1には、保護テープの材料として、衝撃を吸収するとともに紫外線を照射することにより除去することが可能な材料を選択することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ウェーハの裏面を研削(バックグラインド)する時に、ウェーハの表面に形成されたチップを保護するために表面保護フィルムがウェーハの表面に貼付されることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、 バックグラインドが終了すると、ウェーハの裏面にダイシングフィルムを貼付して、表面保護テープをウェーハの表面から剥離した後、ウェーハを賽の目状にダイシングすることが記載されている。
【0006】
一方、特許文献3には、ウェーハの裏面をダイシングテープに貼り付けてウェーハをスクライブし、次に、ウェーハの表面に保護フィルムを載せた後、ダイシングテープ側からブレイクバーを基板に押し当てることにより基板をスクライブラインに沿って分割する分割装置が記載されている(特許文献3の段落〔0004〕参照)。また、特許文献3には、厚さが25μmのPET(polyethylene terephthalate)製の保護フィルムであって、粘着性を有しないか又は粘着性の小さい保護フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-1076号公報
【文献】特開2009-182099号公報
【文献】特開2016-40079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既述したように、特許文献1、2では、ウェーハの裏面を研削する際に、ウェーハの表面に保護テープ(特許文献1)、表面保護フィルム(特許文献2)を貼付してウェーハの表面を保護している。このような保護テープ又は表面保護フィルム(以下、バックグラインドテープと言う。)は、一般に裏面研削が終了すると表面から剥ぎ取られる。
【0009】
ここで、裏面研削後のウェーハを分割する方法として特許文献3に開示された分割方法を適用しようとすると、次のような問題がある。
【0010】
まず、一つ目の問題として、ウェーハの表面からバックグラインドテープを剥離した後、ウェーハの裏面をダイシングテープに貼り付けて、さらに、ブレーク時にウェーハの表面に保護フィルムを載せるという張替作業が必要となるので、ウェーハの加工工程が複雑になるとともにランニングコストも増えるという問題がある。
【0011】
また、二つ目の問題として、ウェーハの表面に載せられる保護テープは粘着性が弱いため、以下の問題がある。
【0012】
すなわち、ブレイクバーによってウェーハを分割すると、ウェーハのストリート(切断ライン)上のTEG(Test Element Group)等が割れてチップから分離し、これがコンタミとなる。このコンタミを除去するためには、ウェーハを洗浄すればよいが、チップに形成されたデバイスによっては洗浄を実施することができないウェーハがある。このようなウェーハの場合、コンタミがウェーハに付着したまま残存し、そして残存したコンタミが分割工程の後工程でデバイス面に付着すると、チップが不良品になるという問題があった。
【0013】
このように従来のウェーハの加工方法では、ウェーハの加工工程が複雑になるとともに、安定した品質のチップを効率よく得ることができないという問題があった。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ウェーハの加工工程を簡素化することができるとともに、安定した品質のチップを効率よく得ることができるウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のウェーハの加工方法は、本発明の目的を達成するために、ウェーハの表面にバックグラインドテープを貼着するテープ貼着工程と、切断ラインに沿ってウェーハの裏面からレーザ光を入射してウェーハの内部に改質領域を形成する改質領域形成工程と、改質領域が形成されたウェーハに対し、ウェーハの裏面を加工することによりウェーハの厚さを薄くする裏面加工工程と、ウェーハの表面にバックグラインドテープを貼着した状態で、ウェーハの裏面から切断ラインに荷重を加えて、ウェーハを切断ラインに沿って分割することによりウェーハを個々のチップに分割する分割工程と、を有する。
【0016】
本発明によれば、ウェーハの裏面を加工する際にウェーハの表面に貼付されるバックグラインドテープを、ウェーハの表面に貼着した状態で、ウェーハの裏面から切断ラインに荷重を加えて、ウェーハを切断ラインに沿って分割する。これにより、ウェーハの加工工程を簡素化することができる。また、ウェーハの分割時に発生したコンタミは、粘着力の強いバックグラインドテープに付着する。そして、ウェーハの表面からバックグラインドテープを剥離すると、コンタミはバックグラインドテープに付着したままウェーハから除去される。よって、ウェーハにコンタミが残存することに起因するチップ不良品の問題を解消できる。したがって、本発明のウェーハの加工方法によれば、ウェーハの加工工程を簡素化することができるとともに、安定した品質のチップを効率よく得ることができる。
【0017】
また、本発明によれば、ウェーハの裏面から切断ラインに荷重を加えていくと、ウェーハの切断ラインの部分がバックグラインドテープに徐々に沈み込みながら、すなわち、切断ラインの両側に位置する一対のチップが徐々に傾きながら切断ラインが切断される。よって、チップが一気に傾くことに起因するチッピング発生の問題を解消できる。
【0018】
本発明の一形態は、バックグラインドテープは、基材と中間層と糊層とが順に積層されて構成され、糊層がウェーハの表面に貼付されることが好ましい。
【0019】
本発明の一形態によれば、ウェーハの裏面から切断ラインに荷重を加えていくと、ウェーハの切断ラインの部分がバックグラインドテープの糊層に徐々に沈み込んでいくので、チップを徐々に傾かせることができる。
【0020】
本発明の一形態は、ウェーハの表面には、チップにバンプが形成され、バンプは、テープ貼着工程においてバックグラインドテープの糊層に埋没されることが好ましい。
【0021】
本発明の一形態によれば、バンプが糊層に埋没されるので、そのアンカー効果によってウェーハとバックグラインドテープとの密着力を高めることができる。これにより、押し付け荷重によってチップが一気に傾いてしまうことを防止できる。
【0022】
本発明の一形態は、裏面加工工程は、ウェーハの裏面を研削する研削工程と、裏面が研削されたウェーハの裏面を化学機械的に研磨する研磨工程と、を有することが好ましい。
【0023】
本発明の一形態によれば、ウェーハの裏面に形成された改質層を研削工程によって除去することができ、研削工程によって形成された加工変質層を研磨工程によって除去することができるので、ウェーハの裏面を鏡面に加工することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ウェーハの加工工程を簡素化することができるとともに、安定した品質のチップを効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図7】半導体基板の切断方法の処理の流れを示すフローチャート
【
図8】
図7のフローチャートに対応するウェーハの加工状態を示す説明図
【
図9】バンプが形成されたウェーハを
図5の分割装置によって分割する説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明に係るウェーハの加工方法の好ましい実施形態について説明する。
【0027】
実施形態のウェーハの加工方法は、レーザダイシング装置1(
図1参照)と、研削装置2(
図3参照)と、レーザダイシング装置1により加工されたウェーハを研削装置2へ搬送する搬送装置(不図示)と、研削装置2により研削されたウェーハをチップに分割する分割装置200(
図5参照)とで構成された加工装置によって行われる。
【0028】
<装置構成について>
(1)レーザダイシング装置1について
図1は、レーザダイシング装置1の概観構成図である。同図に示すように、レーザダイシング装置1は、ウェーハ移動部11、レーザ光学部20と観察光学部30とからなるレーザヘッド40及び制御部50等から構成されている。
【0029】
ウェーハ移動部11は、ウェーハWを吸着保持する吸着ステージ13と、レーザダイシング装置1の本体ベース16に設けられ、吸着ステージ13をXYZθ方向に精密に移動させるXYZθテーブル12等からなる。このウェーハ移動部11によって、ウェーハWが
図1のXYZθ方向に精密に移動される。
【0030】
ウェーハWは、デバイス面である表面を保護するために、その表面に糊層を有するバックグラインドテープBが貼付される。そして、ウェーハWは、裏面が上向きとなるように吸着ステージ13に載置される。
【0031】
図2は、バックグラインドテープBの構成を示す概略断面図である。バックグラインドテープBは、ウェーハWの裏面を加工する際にウェーハWの表面に貼付されるテープであり、その構成は、基材となるベースフィルム3、厚さ300~570μmの中間吸収層4、及び前述の糊層5が積層された3層構造のテープである。この構成は一例であるが、バックグラインドテープBは既述の保護フィルムとは異なり粘着性の高いテープであることから糊層5は必要な部材である。ウェーハWの表面のデバイス面にバンプBP(
図11参照)が形成されたウェーハWの場合には、バンプBPが糊層5(
図2参照)に埋没された状態でバックグラインドテープBがウェーハWに貼付されるので、そのアンカー効果によってウェーハWに対するバックグラインドテープBの密着力が高くなる。これにより、ウェーハWからバックグラインドテープBが剥がれ難くなるので、ウェーハWの表面をバックグラインドテープBで保護した状態でレーザダイシング装置1から研削装置2にウェーハWを搬送することができ、また研削装置2から分割装置200(
図5参照)にウェーハWを搬送することができる。
【0032】
図1に示すレーザ光学部20は、レーザ発振器21、コリメートレンズ22、ハーフミラー23、コンデンスレンズ24、及びレーザ光をウェーハWに対して平行に微小移動させる駆動手段25等で構成されている。レーザ発振器21から発振されたレーザ光は、コリメートレンズ22、ハーフミラー23及びコンデンスレンズ24等の光学系を経てウェーハWの内部に集光される。
【0033】
観察光学部30は、観察用光源31、コリメートレンズ32、ハーフミラー33、コンデンスレンズ34、CCDカメラ35、画像処理部38及びテレビモニタ36等で構成されている。
【0034】
観察光学部30では、観察用光源31から出射された照明光がコリメートレンズ32、ハーフミラー33及びコンデンスレンズ24等の光学系を経てウェーハWの表面を照射する。ウェーハWの表面からの反射光はコンデンスレンズ24、ハーフミラー23、33及びコンデンスレンズ34を経由してCCDカメラ35に入射し、ウェーハWの表面画像が撮像される。
【0035】
この撮像データは画像処理部38に入力され、ウェーハWのアライメントに用いられるとともに、制御部50を経てテレビモニタ36に写し出される。
【0036】
制御部50は、CPU、メモリ及び入出力回路部等からなり、レーザダイシング装置1の各部の動作を制御する。
【0037】
レーザ発振器21から出射されたレーザ光Lは、コリメートレンズ22、ハーフミラー23及びコンデンスレンズ24等の光学系を経由してウェーハWの内部に照射される。照射されるレーザ光Lの集光点のZ方向位置は、XYZθテーブル12によるウェーハWのZ方向位置調整等によって、ウェーハWの内部の所定位置に正確に設定される。
【0038】
この状態でXYZθテーブル12がダイシング方向であるX方向に加工送りされることにより、ウェーハWの切断ラインに沿って、ウェーハWの内部に改質領域が1ライン形成される。改質領域が1ライン形成されると、XYZθテーブル12がY方向に1ピッチ割り出し送りされ、次のラインも同様に改質領域が形成される。全てのX方向と平行な切断ラインに沿って改質領域が形成されると、XYZθテーブル12が90°回転され、先程の切断ラインと直交する切断ラインにも同様にして全て改質領域が形成される。
【0039】
(2)研削装置2について
図3は、研削装置2の概観構成を示す斜視図である。研削装置2の本体112には、アライメントステージ116、粗研削ステージ118、精研削ステージ120、研磨ステージ122、ウェーハ洗浄ステージ124、研磨布洗浄ステージ123及び研磨布ドレッシングステージ127が設けられている。研削装置2は、改質領域が形成されたウェーハWに対し、ウェーハWの裏面を加工することによりウェーハWの厚さを薄くする装置である。
【0040】
粗研削ステージ118、精研削ステージ120及び研磨ステージ122は、
図4に示すように仕切板125(
図3では省略)によって仕切られ、各々のステージ118、120、122で使用する加工液が隣接するステージに飛散するのが防止されている。
【0041】
仕切板125は、
図4に示すように、インデックステーブル134に固定されるとともに、インデックステーブル134に設置された4台のチャック132、136、138、140を仕切るように十字形状に形成されている。これらのチャック132、136、138、140にウェーハWの表面がバックグラインドテープBを介して吸着保持される。
【0042】
粗研削ステージ118は、粗研磨を行うステージであり、本体112の側面113、天板128及び仕切板125によって囲まれている。精研削ステージ120は、精研磨を行うステージであり、粗研削ステージ118と同様に、本体112の側面113、天板129及び仕切板125によって囲まれている。天板128、129には、各ステージのヘッドが挿通される貫通孔128A、129Aが形成されている。
【0043】
図3に示す研磨ステージ122は、化学機械研磨を行うものであり、他のステージから隔離するために、
図4に示すように、天板126Aを有するケーシング126によって覆われている。なお、天板126Aには、研磨ステージ122のヘッドが挿通される貫通孔126Cが形成されている。 研磨ステージ122は、化学機械研磨を行うものであるため、研磨加工液に化学研磨剤が含有されている。
【0044】
図3に示す研磨ステージ122では、ウェーハWの裏面が研磨布156と、研磨布156から供給されるスラリとによって研磨され、粗研磨、精研磨によりウェーハWの裏面に生じている加工変質層が除去される。加工変質層とは、研削によって生じた条痕や加工歪(結晶が変質している)等の総称である。
【0045】
アライメントステージ116は、搬送装置(不図示)によりレーザダイシング装置1から搬送されたウェーハWを所定の位置に位置合わせするステージである。このアライメントステージ116で位置合わせされたウェーハWは、搬送用ロボット(不図示)に吸着保持された後、空のチャック132に向けて搬送され、このチャック132の吸着面にウェーハWの裏面がバックグラインドテープBを介して吸着保持される。
【0046】
チャック132は、インデックステーブル134に設置され、また、同機能を備えたチャック136、138、140が、インデックステーブル134の回転軸135(
図4参照)を中心とする円周上に90度の間隔をもって設置されている。回転軸135には、モータ(不図示)のスピンドル(不図示)が連結されている。
【0047】
チャック136は、
図3においては粗研削ステージ118に位置されており、吸着したウェーハWがここで粗研削される。チャック138は、
図3においては精研削ステージ120に位置され、吸着したウェーハWがここで仕上げ研削(精研削、スパークアウト)される。チャック140は、
図3においては研磨ステージ122に位置され、吸着したウェーハWがここで研磨され、研削で生じた加工変質層、及びウェーハWの厚みのバラツキ分が除去される。
【0048】
図3に示す制御部100は、CPU、メモリ及び入出力回路部等からなり、研削装置2の各部の動作を制御する。
【0049】
チャック132に吸着保持されたウェーハWは、制御部100に接続された一対の測定ゲージ(不図示)によってその厚みが測定される。これらの測定ゲージは、それぞれ接触子を有し、接触子はウェーハWの上面(裏面)に、他の接触子はチャック132の上面に接触されている。これらの測定ゲージは、チャック132の上面を基準点としてウェーハWの厚みをインプロセスゲージ読取値の差として検出することができる。
【0050】
制御部100によりインデックステーブル134が
図3の矢印R方向に90度回転されることで、厚みが測定されたウェーハWが粗研削ステージ118に位置され、粗研削ステージ118のカップ型砥石146によってウェーハWの裏面が粗研削される。このカップ型砥石146は、
図3に示すように、モータ148の出力軸(不図示)に連結され、また、モータ148のサポート用ケーシング150を介して砥石送り装置152に取り付けられている。
【0051】
砥石送り装置152は、カップ型砥石146をモータ148とともに昇降移動させるもので、この下降移動によりカップ型砥石146がウェーハWの裏面に押し付けられる。これにより、ウェーハWの裏面の粗研削が行われる。
【0052】
制御部100は、カップ型砥石146の下降移動量を設定し、モータ148を制御する。カップ型砥石46の下降移動量、すなわち、カップ型砥石146による研削量は、予め登録されているカップ型砥石146の基準位置と、測定ゲージで検出されたウェーハWの厚みとに基づいて設定される。また、制御部100は、モータ148の回転数を制御することで、カップ型砥石146の回転数を制御する。
【0053】
粗研削ステージ118で裏面が粗研削されたウェーハWは、ウェーハWからカップ型砥石146が退避移動した後、制御部100に接続された測定ゲージ(不図示)によってその厚みが測定される。制御部100によりインデックステーブル134が
図3の矢印R方向に90度回転されることで、厚みが測定されたウェーハWが精研削ステージ120に位置され、精研削ステージ120のカップ型砥石154によって精研削、スパークアウトされる。この精研削ステージ120の構造は、粗研削ステージ118の構造と同一なので、ここではその説明を省略する。また、カップ型砥石154による研削量は制御部100により設定され、カップ型砥石154の加工移動量及び回転数は制御部100により制御される。
【0054】
精研削ステージ120で裏面が精研削されたウェーハWは、ウェーハWからカップ型砥石154が退避移動した後、制御部100に接続された測定ゲージ(不図示)によってその厚みが測定される。制御部100によりインデックステーブル134が
図3の矢印R方向に90度回転されると、厚みが測定されたウェーハWが研磨ステージ122に位置され、研磨ステージ122の研磨布156によって化学機械研磨が行われ、ウェーハWの裏面が鏡面加工される。研磨布156の上下移動距離は、制御部100により設定される。また、制御部100によりモータ182が制御されることで研磨布156の位置が制御される。更に、制御部100によりモータ158の回転数、すなわち研磨布156の回転数が制御される。
【0055】
(3)分割装置200について
図5は、分割装置200の概略構造図である。実施形態の分割装置200は、ウェーハWの表面にバックグラインドテープBを貼着した状態で、ウェーハWの裏面から切断ラインに荷重を加えて、ウェーハWを切断ラインに沿って分割する装置である。これにより、ウェーハWは、個々のチップTに分割される。
【0056】
分割装置200は、バックグラインドテープBを介してウェーハWの表面を載置する透明のゴム製のシート202と、ウェーハWの裏面(上面)から切断ラインCLを押下するブレイクバー204と、ブレイクバー204をシート202に対して昇降移動させる昇降装置206と、シート202を介してウェーハWを撮像する撮像装置208と、撮像装置208によって撮像された画像を表示する表示装置210と、昇降装置206及び撮像装置208等を制御する制御部212と、備えて構成される。
【0057】
ブレイクバー204は、ウェーハWの最長の切断ラインCLの長さよりも長く、また、その先端部は断面三角形状に構成され、
図6に示すように、その先端の頂部205が改質領域を押下する。これにより、ウェーハWは、ブレイクバー204による押し付け荷重が改質領域に加えられるので、切断ラインCLに沿って分割される。ウェーハWの分割状況は、シート202を介して撮像装置208によって撮像され、その画像が表示装置210に表示されることにより、ウェーハWの分割状況が目視にて確認される。
【0058】
<ウェーハWの加工方法>
次に、ウェーハWの加工方法について説明する。
図7は、ウェーハWの加工方法の処理の流れを示すフローチャートである。また、
図8は、
図7のフローチャートに対応したウェーハWの状態を示した説明図である。以下、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
【0059】
(1)テープ貼着工程(ステップS10)
バックグラインドテープBをウェーハWの表面に貼着する。
図8の符号8Aには、その表面にバックグラインドテープBが貼着されたウェーハWが示されている。
【0060】
(2)改質領域形成工程(ステップS20)
図1に示したように、表面にバックグラインドテープBが貼付されたウェーハWが、裏面が上向きとなるようにレーザダイシング装置1の吸着ステージ13に載置される。以下の処理はレーザダイシング装置1で行われ、制御部50により制御される。
【0061】
レーザ発振器21からレーザ光Lが出射されると、レーザ光Lはコリメートレンズ22、ハーフミラー23及びコンデンスレンズ24等の光学系を経由してウェーハWの内部に照射され、ウェーハWの内部に切断ラインに沿った改質領域が形成される。
図8の符号8Bには、その内部に改質領域Pと、改質領域Pを起点としてウェーハWの厚さ方向に形成されたクラックCが示されている。
【0062】
実施形態では、一例として、最終的に生成されるチップの厚さが50μmであるため、ウェーハWの表面から60μm~80μmの深さにレーザ光を照射する。切断ラインの全てに沿って改質領域Pを形成した後、ステップS20の処理を終了する。
【0063】
(3)研削工程(ステップS30)
改質領域形成工程(ステップS20)によって全ての切断ラインCLに沿って改質領域を形成した後、 搬送装置(不図示)によってウェーハWをレーザダイシング装置1から
図3の研削装置2へ搬送する。以下の処理は研削装置2で行われ、制御部100により制御される。
【0064】
搬送されたウェーハWは、ウェーハWの表面に貼付されたバックグラインドテープBを下側にしてチャック132(例示、チャック136、138、140でも可)に載置され、ウェーハWの表面がバックグラインドテープBを介してチャック132に真空吸着される。
【0065】
次に、回転軸135を中心にインデックステーブル134を回転させてチャック132を粗研削ステージ118に搬入し、ウェーハWを粗研磨する。
【0066】
粗研磨は、チャック132を回転させるとともにカップ型砥石146を回転させることにより行う。実施形態では、カップ型砥石146として例えば、東京精密製ビトリファイド♯325を用い、カップ型砥石146の回転数は3000rpmである。
【0067】
粗研磨後、回転軸135を中心にインデックステーブル134を回転させてチャック132を精研削ステージ120に搬入し、チャック132を回転させるとともにカップ型砥石154を回転させてウェーハWを精研磨する。実施形態では、カップ型砥石154として例えば、東京精密製レジン♯2000を用い、カップ型砥石154の回転数は2400rpmである。
【0068】
実施形態では、粗研磨と精研磨とを合わせて目標面まで、すなわちウェーハWの表面から50μmの深さまで研削を行う。実施形態では、粗研磨で700μmの研削を行い、精研磨で30~40μmの研削を行うが、厳密に設定されるものではなく、粗研磨と精研磨との時間が同一となるように研削量を決定してもよい。
【0069】
このような研削工程を備えることにより、改質領域形成工程にて形成されたウェーハWの裏面の改質層を研削工程で除去することができる。これにより、最終的な製品であるチップ断面にはレーザ光による改質領域Pは残らない。そのため、チップ断面から改質層が破砕し、破砕した部分からチップが割れたり、また破砕した部分から発塵したりということをなくすことができる。
【0070】
(4)研磨工程(ステップS40)
研磨工程は研削装置2で行われ、制御部100により制御される。
【0071】
精研磨後、回転軸135を中心にインデックステーブル134を回転させてチャック132を
図3の研磨ステージ122に搬入し、研磨ステージ122の研磨布156によって化学機械研磨を行う。これにより、研削工程においてウェーハWの裏面に形成された加工変質層を除去することができるので、ウェーハWの裏面が鏡面に加工される。
図8の符号8Cには、その裏面が研削及び研磨されて鏡面加工されたウェーハWが示されている。
【0072】
実施形態では、研磨布156としてポリウレタン含浸不繊布(例えば、東京精密製TS200L)を用い、スラリとしてコロイダルシリカを用い、研磨布156の回転数は300rpmである。
【0073】
(5)分割工程(ステップS50)
分割工程は
図5の分割装置200で行われ、制御部212により制御される。
【0074】
分割装置200では、まず、ウェーハWの表面にバックグラインドテープBを貼着した状態で、ウェーハWの表面がシート202にバックグラインドテープBを介して載置される。次に、ウェーハWの切断する1本目の切断ラインCLとブレイクバー204の位置が上下方向において一致するように相対的に位置調整される。
【0075】
次に、ウェーハWの裏面から退避位置にあるブレイクバー204が昇降装置206によって下降移動され、ブレイクバー204の頂部205によってウェーハWの裏面が押下される。これにより、ウェーハWの裏面からクラックCに荷重が加えられて、1本目の切断ラインCLが切断される。このような動作を全ての切断ラインに対して行うことにより、全ての切断ラインが切断されてウェーハWがチップTに分割される。
【0076】
ウェーハWの分割時に発生したコンタミは、粘着力の強いバックグラインドテープBの糊層5(
図2参照)に付着する。そして、ウェーハWの表面からバックグラインドテープBを剥離すると、コンタミはバックグラインドテープBの糊層5に付着したままウェーハWから除去される。これにより、ウェーハWにコンタミが残存することに起因するチップ不良品の問題を解消できる。
【0077】
このように実施形態のウェーハWの加工方法によれば、ウェーハWの裏面を研削するためにウェーハWの表面に貼着したバックグラインドテープBを剥がすことなく、そのままウェーハWの表面にバックグラインドテープBを貼着した状態で、ウェーハWの裏面から切断ラインCLに荷重を加えて、ウェーハWを切断ラインに沿って分割するので、ウェーハの加工工程を簡素化することができるとともに、安定した品質のチップを効率よく得ることができる。
【0078】
また、実施形態の分割工程では、ウェーハWの裏面から切断ラインCLにブレイクバー204によって荷重を加えていくと、
図6の如く、ウェーハWの切断ラインCLの近傍部分WAがバックグラインドテープBに徐々に沈み込みながら、すなわち、切断ラインCLの両側に位置するチップT、Tが徐々に傾きながら切断ラインCLが切断される。これにより、チップTが一気に傾くことに起因するチッピング発生の問題を解消できる。
【0079】
ところで、バンプが形成されているウェーハの表面に、従来の保護フィルムを貼付した状態でブレイクバー204をウェーハWの裏面に押し付けていくと、チップTが一気に傾いてチップTにチッピングが発生する場合がある。
【0080】
すなわち、所定の押し付け荷重までは、保護フィルムに対しバンプがチップを支えるので、チップに曲げ応力が加わらずにチップがウェーハの裏面に対して垂直方向に押圧される。そして、所定の押し付け荷重を超えると、バンプが保護フィルム上を滑り始めることでチップが一気に傾いてしまい、チップ間の間隔が過剰に開いてしまう。このような現象が生じると、チップの端部にブレイクバー204が接触したり、チップが元の位置に戻る際に隣接するチップ同士が衝突したりするので、チップにチッピングが発生し易くなる。
【0081】
これに対して、実施形態のウェーハWの加工方法によれば、表面にバンプが形成されたウェーハであっても良好に分割することができる。以下、説明する。
【0082】
図9のウェーハWは、その表面にチップT毎にバンプBPが形成されており、その表面にバックグラインドテープBが貼着されている。このようにバンプBPが形成されたウェーハWでは、バックグラインドテープBの糊層5にバンプBPが埋没された状態でバックグラインドテープBが貼付される。
【0083】
図9のウェーハWを、
図5の分割装置200によって分割すると、バンプBPが糊層5に埋没されているアンカー効果により、ウェーハW(チップT)とバックグラインドテープBとの密着力が高められているので、
図10の如く、ブレイクバー204をウェーハWの裏面に押し付けても、チップTが一気に傾いてしまうことをより一層防止することができる。よって、バンプBPが形成された
図9のウェーハWであっても良好に分割することができる。
【0084】
図11は、別実施形態の分割装置220の概略構造図である。この分割装置220と
図5に示した分割装置200との構成の違いは、シート202に代えて一対の受け板222、222を備えている点であり、その他の構成は分割装置200と同一である。一対の受け板222、222は、水平方向において間隔を開けて配置され、その間にウェーハWの切断ラインCRが配置される。
【0085】
図11の分割装置220を使用してウェーハWを分割する場合には、まず、バックグラインドテープBを介してウェーハWの表面を一対の受け板222、222に載置する。次に、切断する1本目の切断ラインCLを一対の受け板222、222の間に配置するとともに、1本目の切断ラインCLとブレイクバー204の位置を上下方向において相対的に一致させる。
【0086】
次に、
図11に示すように、ブレイクバー204を昇降装置206(
図5参照)によって下降移動させ、
図12に示すように、ブレイクバー204の頂部205によってウェーハWの裏面から切断ラインCLを押下する。これにより、ウェーハWの裏面から改質領域に荷重が加えられて、切断ラインCLが切断される。
【0087】
図11の分割装置220も
図5の分割装置200と同様に、ウェーハWの分割時に発生したコンタミは、粘着力の強いバックグラインドテープBの糊層5(
図2参照)に付着する。そして、ウェーハWの表面からバックグラインドテープBを剥離すると、コンタミはバックグラインドテープBの糊層5に付着したままウェーハWから除去される。よって、ウェーハWにコンタミが残存することに起因するチップ不良品の問題を解消できる。
【0088】
したがって、分割装置220においても、安定した品質のチップを効率よく得ることができる。
【0089】
また、ウェーハWの裏面から切断ラインCLにブレイクバー204によって荷重を加えていくと、
図12の如く、ウェーハWの切断ラインCLの近傍部分WAがバックグラインドテープBに徐々に沈み込みながら、すなわち、切断ラインCLの両側に位置するチップT、Tが徐々に傾きながら切断ラインCLが切断される。これによって、チップTが一気に傾くことに起因するチッピング発生の問題を解消できる。
【符号の説明】
【0090】
1…レーザダイシング装置、2…研削装置、W…ワーク、B…バックグラインドテープ、11…ウェーハ移動部、13…吸着ステージ、20…レーザ光学部、30…観察光学部、40…レーザヘッド、50…制御部、100…制御部、118…粗研削ステージ、120…精研削ステージ、122…研磨ステージ、132、136、138、140…チャック、146、154…カップ型砥石、156…研磨布、200…分割装置、202…シート、204…ブレイクバー、205…頂部、206…昇降装置、208…撮像装置、210…表示装置、212…制御部、220…分割装置、222…受け板