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  • 特許-積層部品の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】積層部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20221013BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20221013BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
H02K15/02 E
B23K26/21 E
B21D28/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018162275
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020036485
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592240714
【氏名又は名称】吉川工業ファインテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】林 勝之
(72)【発明者】
【氏名】中山 曜
(72)【発明者】
【氏名】妻鳥 聖一
(72)【発明者】
【氏名】中井 隆一
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-050583(JP,A)
【文献】特開昭50-010406(JP,A)
【文献】特開平9-163691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B23K 26/21
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動されるパンチと、上記パンチが挿入されるダイ穴によって板状素材から所定形状の板材を打ち抜くとともに、上記ダイ穴に連設されて打ち抜かれた板材を順次積層して保持する保持部が設けられるダイと、上記保持部に形成された開口部から露出する板材にレーザ光を照射するレーザ照射装置とを備え、
上記開口部を介して板材にレーザ光を照射して隣接する板材同士を溶接することにより、所定枚数の板材からなる積層部品を製造する積層部品の製造装置において、
上記ダイの保持部の下端に下方開口部が設けられており、
上記開口部の上記板材の積層方向に沿った長さは、上記所定枚数の板材を露出可能な長さに設定されており、
上記レーザ照射装置は、上記開口部を介して保持部に保持された板材にレーザ光を照射する照射ヘッドと、当該照射ヘッドを上記板材の積層方向に沿って移動させる移動機構とから構成されており、
上記開口部を介して上記照射ヘッドから板材にレーザ光を照射させながら当該照射ヘッドを上記板材の積層方向に沿って上記開口部の一端側から他端側へと移動させることにより、上記積層部品を製造するものであり、
上記保持部は、上記開口部よりも下方に少なくとも1つの積層部品を収容可能な長さを有し、上記下方開口部から上記積層部品を排出する ことを特徴とする積層部品の製造装置。
【請求項2】
上記板材の積層方向は上下方向であり、上記レーザ照射装置は、照射ヘッドによってレーザ光を板材に照射しながら、上記移動機構により上記照射ヘッドを上記開口部の下方側から上方側へと移動させることを特徴とする請求項1に記載の積層部品の製造装置。
【請求項3】
上記開口部は、上記板材の積層方向を長手方向とするスリット状に形成されており、
上記開口部の下方側の端部から上記板材の積層方向に沿って上記開口部の上方側に向けてシールドガスを供給するガス供給機構が設けられることを特徴とする請求項2に記載の積層部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層部品の製造装置に関し、より詳しくは、金属の板材を複数枚積層させてそれらをレーザ光により溶接することにより、例えばモータの積層コアを製造する場合に好適な積層部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属の板材を積層してそれらを溶接することで積層部品を製造するようにした製造装置は公知である(例えば特許文献1)。
この特許文献1の製造装置においては、積層状態の上下の板材(芯部材4)の双方にかかるようにレーザ光によるスポット溶接を繰り返すことにより、製品としての積層部品を製造するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-41871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の製造装置においては、スポット溶接を繰り返すことで板材への入熱と冷却を繰り返すことになり、その温度変化の繰り返しによって板材が変質し、結果として製品としての積層部品の品質が低下する恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、本発明は、往復移動されるパンチと、上記パンチが挿入されるダイ穴によって板状素材から所定形状の板材を打ち抜くとともに、上記ダイ穴に連設されて打ち抜かれた板材を順次積層して保持する保持部が設けられるダイと、上記保持部に形成された開口部から露出する板材にレーザ光を照射するレーザ照射装置とを備え、
上記開口部を介して板材にレーザ光を照射して隣接する板材同士を溶接することにより、所定枚数の板材からなる積層部品を製造する積層部品の製造装置において、
上記ダイの保持部の下端に下方開口部が設けられており、
上記開口部の上記板材の積層方向に沿った長さは、上記所定枚数の板材を露出可能な長さに設定されており、
上記レーザ照射装置は、上記開口部を介して保持部に保持された板材にレーザ光を照射する照射ヘッドと、当該照射ヘッドを上記板材の積層方向に沿って移動させる移動機構とから構成されており、
上記開口部を介して上記照射ヘッドから板材にレーザ光を照射させながら当該照射ヘッドを上記板材の積層方向に沿って上記開口部の一端側から他端側へと移動させることにより、上記積層部品を製造するものであり、
上記保持部は、上記開口部よりも下方に少なくとも1つの積層部品を収容可能な長さを有し、上記下方開口部から上記積層部品を排出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、板材に過度な温度変化を生じさせることなく、その変質を可及的に低減させ、品質の高い積層部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1において、1は積層部品2の製造装置であり、この製造装置1は、一枚の鋼板3から順次所定形状の板材3Aを打ち抜くとともに、打ち抜かれた板材3Aを一時的に積層させて保持する金型装置6と、積層状態に保持された所定数(20枚)の板材3Aに側方からレーザ光Lを照射してそれらを溶接するレーザ照射装置7と、金型装置6及びレーザ照射装置7の作動を制御する制御装置8とを備えている。
なお、本実施例では20枚積層した板材3Aを溶接して積層部品2を製造するようにしているが、この板材3Aの積層枚数は例示であって、所要に応じて積層枚数を変更しても良い。
【0009】
金型装置6は、上下方向に貫通するダイ穴11Aを有するダイ11と、このダイ11のダイ穴11Aの上端開口部の上方側に配置されて、昇降ヘッド13によって昇降されてダイ穴11Aに嵌合可能なパンチ12とを備えている。
鋼板3は図示しない間欠送り機構により左方側から供給されてから間欠的に所定寸法ずつ右方側へ送りこまれるようになっており、それに伴って鋼板3がダイ穴11A上と載置面11B上に間欠的に搬入されるようになっている。
非作動状態の昇降ヘッド13はダイ11の載置面11Bよりも上方側の上昇端に停止している。昇降ヘッド13は制御装置8によって昇降作動を制御されるようになっており、間欠送り機構による鋼板3の間欠搬入作動に合わせて昇降ヘッド13はパンチ12を上昇端と下降端とに交互に昇降させるようになっている。パンチ12が下降端まで下降されると、パンチ12の下端部12aがダイ穴11Aに鋼板3の厚さと同じ寸法だけ嵌合(挿入)されるようになっており、パンチ12が上昇端まで上昇されるとパンチ12の下端部12aは載置面11B上の鋼板3よりも少し上方側に支持されるようになっている。
昇降ヘッド13によりパンチ12が上昇端にある状態で、鋼板3が間欠送り機構により載置面11B(ダイ穴12A)に搬入されると、昇降ヘッド13によりパンチ12が下降端まで下降されるので、ダイ穴11Aを覆った鋼板3に上方側からパンチ12が降下されてその下端部12aがダイ穴11Aに嵌合される。これにより、ダイ穴11Aの形状に倣った板材3Aが打ち抜かれるようになっている。
このように、鋼板3が間欠的に所定寸法ずつダイ穴11A上に搬入されるタイミングに合わせて、昇降ヘッド13によってパンチ12が上昇端から下降端へ下降されることで、順次、同一形状の板材3Aが打ち抜かれるようになっている。
パンチ12によって打ち抜かれる板材3Aは円板状となっており、この板材3Aが20枚積層された状態でレーザ光Lにより溶接されることで積層部品2が製造されるようになっている。製品としての積層部品2はモータの心材として用いられるようになっている。
【0010】
本実施例では、ダイ穴11Aに積層された20枚の板材3Aを溶接して積層部品2を製造するようにしているので、積層される20枚の板材3A毎にスペーサ3Bを介在させるようにしている。スペーサ3Bは、板材3Aと同じ寸法の円形となっているが、スペーサ3Bとしてはレーザによる溶接性が悪い材料を採用している。
上述したように、鋼板3が間欠的にダイ穴11A上に搬入されるタイミングに合わせてパンチ12が昇降されて順次、同一形状の板材3Aが20枚打ち抜かれると、図示しない切断・挿入機構によってスペーサ3Bがダイ穴11A内の20枚毎の板材3A上に積層されるようになっている。なお、スペーサ3Bの切断・挿入技術としては、例えば特公平55-61331号公報に開示された方法で実施することができる。また、板材3Aと同一形状で異なる材料のスペーサ3Bを用いることは、例えば特公平4-80625号公報等により公知である。
【0011】
次に、ダイ11は、上下方向にダイ穴11Aが貫通した筒状に形成されて、図示しない固定フレームの所定高さ位置に固定されている。ダイ穴11Aにおける上端部よりも下方側の領域は、打ち抜かれた数十枚の板材3Aを積層状態で一時的に保持する保持部11Cとなっている。
上述したように、鋼板3が所定寸法ずつダイ穴11Aに間欠的に搬入されるタイミングに合わせて昇降ヘッド13によりパンチ12が下降端まで下降されることで板材3Aが打ち抜かれると、打ち抜かれた板材3Aは順次ダイ穴11A内の下方側へ押し下げられるので、上下位置の板材3Aが重合して積層状態となって保持部11Cに保持され、その後、積層状態における20枚の板材3Aがレーザ光Lによって溶接されると、製品としての積層部品2はダイ穴11Aの下端部11Aaの開口から下方側の図示しない回収容器内に落下するようになっている。
本実施例においては、昇降ヘッド13によりパンチ12を順次20回繰り返し昇降させて鋼板3から板材3Aを20枚打ち抜くことで、それら20枚の板材3Aをダイ穴11A内の保持部11C内に積層状態で保持させ、その後、上述したように1枚のスペーサ3Bをダイ穴11A内に挿入することで、20枚の板材3A毎にそれらの上に1枚のスペーサ3Bが介在された状態で、数十枚の板材3Aをダイ穴11Aの保持部11Cに一時的に保持するようになっている。そして、上下の20枚毎の板材3Aの境界部として、スペーサ3Bが介在されている。
なお、板材3Aの打ち抜きが終わってスクラップとなる残材部分は、間欠送り機構による搬入作動に伴って載置面11Bの隣接位置の支持部材10上を摺動して図示しない廃棄手段上に載置されるようになっている。
【0012】
しかして、本実施例のダイ11の側壁には、保持部11Cとしてのダイ穴11Aに連通させて上下方向の細長いスリットからなる開口部11Dが形成されており、この開口部11Dを介して積層状態の20枚の板材3Aにレーザ光Lを上下方向の直線状に照射できるようになっている。
開口部11Dを右方側から見た形状は、上下方向に細長い長方形となっている。開口部11Dの上下方向寸法(長さ)は、積層状態となった20枚の板材3Aの上下方向寸法に、上下位置の2枚分のスペーサ3Bの上下方向寸法を合わせた寸法よりも少し長い寸法に設定されている。また、開口部11Dの幅は、レーザ光Lが干渉することなく通過できる寸法に設定されている。
これにより、積層された20枚分の板材3Aの側部(外周部)及び上下2枚のスペーサ3Bの側部(外周部)が、開口部11Dを介してダイ1の外部に一度に露出できるようになっている。
そしで、本実施例では、このように積層状態の20枚分の板材3Aが開口部11Dから露出した状態となったら、開口部11Dを介して積層状態の20枚の板材3Aの側部(外周部)にレーザ光Lを上下方向一直線状に照射して、溶接するようになっている。
【0013】
次に、レーザ照射装置7は、レーザ光Lを発振するレーザ発振器17と、上記開口部11Dを介して積層状態の板材3Aの側部にレーザ光Lを照射する照射ヘッド18と、レーザ発振器17から照射ヘッド18にレーザ光Lを導く光ファイバ19と、下降端と上昇端とにわたって昇降ヘッド18を往復昇降させる昇降機構21と、開口部11D内にシールドガスGを供給するガス供給機構22とを備えている。上記レーザ発振器17、昇降機構21及びガス供給機構22の作動は制御装置8に制御されるようになっている。
レーザ発振器17はYAGレーザであり、照射スポット径が板材3Aの厚さの4~5倍程度のパルスレーザ光Lを発振するようになっている。
照射ヘッド18は、支持部材10Bに固定された鉛直方向のガイド軸23に沿って昇降可能となっており、かつ、昇降ヘッド18は昇降機構23によって破線で示した下降端と実線で示した上昇端とに往復昇降されるようになっている。これにより、開口部11Dに露出した積層状態の20枚の板材3Aの最下端の板材3Aから最上端の板材3Aにわたってレーザ光Lを照射できるようになっている。なお、レーザ発振器17はファイバーレーザやその他適宜の方式のレーザ発振器に変更しても良い。また、パルスレーザ光Lを発振する代わりに、連続波(CW)レーザ光を発振するレーザ発振器17を用いても良い。
開口部11Dにおける下端の底部には、ガス供給通路11Eの先端を上方に向けて開口させてあり、このガス供給通路11Eはパイプ24を介してガス供給機構22と連通している。レーザ光Lが照射ヘッド18から開口部11Dを介して板材3Aに照射される際には、シールドガスGとしての窒素がガス供給通路11Eを介して開口部11D内に上方に向けて供給される。その際、シールドガスGとしての窒素は空気よりも軽いため、開口部11Dの上方へとシールドガスGが噴射されて、溶接個所に供給されるようになっている。これにより、レーザ光Lにより板材3Aが溶接される際に酸化等による溶接欠陥が発生するのを防止できるようにしている。
【0014】
以上の構成において、以下のようにして積層部品2の製造が行われる。すなわち、照射ヘッド18が破線で示す下降端に位置し、かつ、レーザ発振器17及びガス供給機構22が作動されていない状態において、間欠送り機構による鋼板3の間欠搬入作動に合わせてパンチ12が上昇端と下降端とに昇降されることで、鋼板3から順次板材3Aが打ち抜かれ、打ち抜かれた板材3Aは保持部11Cに積層状態で保持される。そして、パンチ12により20枚の板材3Aが打ち抜かれると、上述したようにして1枚のスペーサ3Bが下方側の板材3A上に積層される。
このように、鋼板3が間欠送りされることに伴って、パンチ12による20枚の板材3Aの打ち抜きと、1枚のスペーサ3Bのダイ穴11Aへの挿入作動が交互に行われることにより、積層状態の20枚の板材3Aと1枚のスペーサ3Bとが交互に位置した状態で保持部11C内に保持され、それ等は徐々に下方の開口部11Aaに向けて降下されていく。
そして、ダイ11の保持部11C内に積層状態となった20枚の板材3Aが上記開口部11Dから露出すると、その時点でレーザ発振器17からレーザ光Lをパルス発振させるので、照射ヘッド18を介して積層状態の最下端の板材3Aにレーザ光Lが照射されるとともに、昇降機構23により照射ヘッド18が実線で示した上昇端まで上昇される。また、その際にはガス供給機構22を作動させて、シールドガスGを開口部11D内に供給する。
これにより、積層状態の20枚の板材3Aの側部(外周部)に対して、それらの最下端部の板材3Aから最上端の板材3Aにわたって、レーザ光Lが照射されながら上昇されることで、それら積層状態の20枚の板材3Aの側部が上下方向の一直線状に溶接されるようになっている。これにより、積層状態の20枚の板材3Aが溶接部2Aによって一体に溶接されて、製品としての最初の積層部品2が完成する。なお、レーザ光Lはスペーサ3Bに多少照射されても良く、その場合であってもスペーサ3Bは溶接性が悪い材料であるため、スペーサ3Bと製品部分とが溶接されることはない。
この後、レーザ発振器17の作動が停止されて照射ヘッド18によるレーザ光Lの照射が停止されるとともに、ガス供給機構22によるシールドガスGの供給も停止される。また、昇降機構21により照射ヘッド18は、実線で示す上昇端から破線で示す下降端まで下降して停止する。
【0015】
他方、パンチ12による板材3Aの20枚の打ち抜き作動と、1枚のスペーサ3Bのダイ穴11Aへの挿入作動とは継続して交互に行われているので、その後も積層状態の20枚の板材3Aと1枚のスペーサ3Bとが積層した状態で保持部11C内に保持され、それ等は徐々に下方の開口部11Aaに向けて降下され、製造後の最初の積層部品2も保持部11C内を下方の開口部11Aaに向けて降下されていく。
そして、ダイ11の保持部11C内に積層状態となった次の20枚の板材3Aが上記開口部11Dから露出したら、その時点でレーザ発振器17からレーザ光Lをパルス発振させて照射ヘッド18を介して積層状態の最下端の板材3Aに先ずレーザ光Lを照射するとともに、昇降機構23により照射ヘッド18を破線で示す下降端から実線で示した上昇端まで上昇させる。また、その際にはガス供給機構22を作動させて、シールドガスGをガス供給通路11Eを介して開口部11Dに上方に向けて供給する。
これにより、開口部11Dに露出した積層状態の20枚の板材3Aに対して、それらの最下端部の板材3Aから最上端の板材3Aにわたってレーザ光Lが照射されながら上昇されることで、それら積層状態の20枚の板材3Aの側部が上下方向の一直線状に溶接される。これにより、積層状態の20枚の板材3Aが溶接部2Aにより一体に溶接されて、製品として第2の積層部品2が完成する。
このような作動が繰り返されることで、保持部11Cに積層状態で保持された20枚の板材3が直線状の溶接部2Aにより一体となって、製品としての積層部品2が製造されるようになっている。製造後の積層部品2は、鋼板3から打ち抜かれて順次保持部11Cに積層されてくる20枚の板材3Aとスペーサ3Bとによって降下された後にダイ穴11Aの下端の開口部11Aaから下方側の回収容器に落下して回収される。
なお、この時、相上下する積層部品2の間には、1枚のスペーサ3Bが介在しているので、相前後する積層部品2は支障なく離隔して、スペーサ3Bとともに回収容器に回収されるようになっている。
【0016】
以上のように、本実施例においては、金型装置6におけるダイ11の側壁に上下方向の開口部11Dを形成してあり、積層状態の20枚の板材3Aが開口部11Dから露出した際にレーザ光Lをそれらの板材3Aに下方から上方にわたって照射して溶接するようにしている。このような溶接を行うことにより、各板材3Aに過度な温度変化を生じさせることなく、その変質を可及的に低減させ、品質の高い積層部品2を製造することができる。
また、保持部11Cに積層状態で保持される板材3Aは、下方側に位置する板材3Aほど上方からの荷重が掛かることになるので、下方側において重合した上下の板材3Aの隙間がなく密に積層されることになる。そのため、本実施例では、そのように隙間なく密に積層された状態の板材3Aを効率的に溶接できるように、照射ヘッド18と昇降機構21により下方から上方にわたってレーザ光Lを移動させて照射するようにしている。
【0017】
なお、上記実施例においては所定枚数(20枚)の板材3Aが開口部11Dから全て露出してからレーザ溶接を開始しているが、20枚の板材3Aが全て開口部11Dから露出する前に板材3Aにレーザ光Lの照射を開始しても良い。つまり、積層状態の所定枚数(20枚)における上部に位置する数枚の板材3Aが開口部11Dの上端部から露出していない状態で、下方側の板材3Aに対してレーザ光Lの照射を開始し、レーザ光Lを照射している間に上部の数枚の板材3Aが降下されて開口部11Dから露出するのに合わせて、それらの板材3Aにレーザ光Lを照射するようにしても良い。
また、上記実施例においては、照射ヘッド18と昇降機構21を1組だけ配置した構成となっているが、ダイ11の側壁に開口部11Dを並列に2箇所形成するとともに、それらに対向するように照射ヘッド18、昇降機構21を2組配置するようにしても良い。この場合には、積層状態の板材3Aの側部(外周部)の2箇所をレーザ光Lによって上下方向直線状に溶接して積層部品2が製造されることになる。
また、上記スペーサ3Bとして板材3Aと同じ材質の鋼板を採用して、スペーサ3Bの側部におけるレーザ光Lが照射される箇所を切り欠くことにより、上下の積層部品2を分離させるようにしても良い。その場合には、特公平4-80625号公報や特開平11-69733号公報に開示された技術を用いてスペーサ3Bの形状を変更することができる。
さらに、上記実施例においては、積層状態の20枚毎の板材3Aの間に1枚のスペーサ3Bを介在させているが、スペーサ3Bは省略しても良い。この場合には、同一形状の板材3Aのみが保持部11Cに積層されることになるが、積層部品2を分離するために次のようにレーザ溶接すれば良い。つまり、所定枚数(20枚)の板材3Aにレーザ光Lを照射した後に、所要時間レーザ光Lの照射を停止させることで、上下位置の積層部品2を分離させることができる。
また、スペーサ3Bを省略する場合、製品としての積層部品2が分離しやすくするために、所定枚数(20枚)の最上部の板材3Aの形状を一部変形させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0018】
1‥積層部品の製造装置 2‥積層部品(製品)
3‥鋼板(板状素材) 3A‥板材
6‥金型装置 7‥レーザ照射装置
11‥ダイ 11A‥ダイ穴
11C‥保持部 11D‥開口部
12‥パンチ 17‥レーザ発振器
18‥照射ヘッド 21‥昇降機構(移動機構)
L‥レーザ光
図1