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  • 特許-物品検査装置および物品検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】物品検査装置および物品検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20221013BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20221013BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221013BHJP
   G06T 5/30 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01N21/956 Z
G06T1/00 300
G06T5/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018185645
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020056604
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勇輝
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-310937(JP,A)
【文献】特開2007-263899(JP,A)
【文献】特開2014-119363(JP,A)
【文献】特開2017-173919(JP,A)
【文献】特開2009-229378(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052489(WO,A1)
【文献】特開2015-4538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01、21/17-21/61
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
G06T 1/00、5/00-5/50、7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に形成された複数の平行な縦線部と複数の平行な横線部とが交差した格子状部分の画像を撮影して、多数の画素が配列された画像データを取得する撮影手段と、当該撮影手段が取得した画像データに基づいて、上記格子状部分の検査を行う検査手段とを有する物品検査装置において、
上記検査手段は、上記撮影手段により取得された画像データを二値化処理する画像処理手段と、上記撮影手段が撮影した画像データに格子状の検査範囲を設定する検査範囲設定手段とを備え、
上記画像処理手段は、二値化処理により上記画像データより格子状部分を示す画素を抽出し、上記検査範囲設定手段は、上記抽出された格子状部分を示す画素の集団からなる格子状領域に対して、縦線部の幅方向にオープニング処理を行ってからクロージング処理を行うことにより、横線部のみからなる横線部検査領域に変換し、また、上記格子状領域に対して、横線部の幅方向にオープニング処理を行ってからクロージング処理を行うことにより、縦線部のみからなる縦線部検査領域に変換し、これら横線部検査領域と縦線部検査領域とを合成して上記格子状の検査範囲として設定することを特徴とする物品検査装置。
【請求項2】
物品に形成された複数の平行な縦線部と複数の平行な横線部とが交差した格子状部分の画像を撮影して、多数の画素が配列された画像データを取得する撮影手段と、当該撮影手段が取得した画像データに基づいて、上記格子状部分の検査を行う検査手段とを有する物品検査方法において、
上記格子状部分の画像を撮影して画像データを取得し、当該画像データを二値化処理して格子状部分を示す画素を抽出し、
上記抽出された格子状部分を示す画素の集団からなる格子状領域に対して、縦線部の幅方向に所定画素分収縮させて膨張させるオープニング処理を行って、格子状領域のうち縦線部を示す画素を除外した残りの画素の集団からなる横線部領域に変換し、さらに当該横線部領域に対して縦線部の幅方向に所定画素分膨張させて収縮させるクロージング処理を行って横線部検査領域とし、
また、上記格子状領域に対して、横線部の幅方向に所定画素分収縮させて膨張させるオープニング処理を行って、格子状領域のうち横線部を示す画素を除外した残りの画素の集団からなる縦線部領域に変換し、さらに当該縦線部領域に対して横線部の幅方向に所定画素分膨張させて収縮させるクロージング処理を行って縦線部検査領域として、
これら横線部検査領域と縦線部検査領域とを合成して格子状の検査範囲とし、上記撮影手段で撮影した格子状部分の画像に設定することを特徴とする物品検査方法。
【請求項3】
上記オープニング処理において、縦線部の幅方向に収縮させる画素数を縦線部の幅に応じて設定し、横線部の幅方向に収縮させる画素数を横線部の幅に応じて設定することを特徴とする請求項2に記載の物品検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品検査装置および物品検査方法に関し、詳しくは物品に形成された複数の縦線部と横線部とが交差した格子状部分の画像を撮影して、多数の画素が配列された画像データを取得し、当該画像データに基づいて上記格子状部分の検査を行う物品検査装置および物品検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の画像を撮影して多数の画素が配列された画像データを取得し、当該画像データに基づいて物品の検査を行う物品検査装置および物品検査方法が知られ、取得した画像データを所要のしきい値で二値化処理することにより、物品に付着した汚れや異物を認識するようになっている。
一方、例えばプラスチック製のコンテナやトレー、ケース等、底部が格子状に形成されて多数の貫通孔を有する物品があり、このような多数の貫通孔を有する格子状部分の検査においては、二値化処理では汚れや異物を貫通孔と区別することができなかった。
これに対し、物品を撮影した画像に検査対象領域を設定するとともに、該検査対象領域にマスク領域を設定して、該マスク領域を検査対象領域から除外して検査を行うようにした物品検査方法が知られている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-256222公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような格子状部分が形成された物品において、格子状部分の貫通孔の数は多く、画像中の全ての貫通孔を対象にマスク領域を設定することは煩雑であり、また全ての貫通孔を対象にマスク領域を正確に設定するためには、物品を高精度に位置決めをして撮影をする必要があった。
また、プラスチック製のコンテナやトレー、ケースの底部を一つの画像として撮影するには広範囲を撮影する必要があるが、実際の格子状部分では貫通孔が同じ形状で均等に配列されているのに対し、広範囲を撮影した画像では端部に歪が発生し、場所により貫通孔の形状や間隔が異なってしまうことがあるため、このような理由によっても画像中の全ての貫通孔を対象にマスク領域を正確に設定できないという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は物品の格子状部分を検査する場合に、正確に貫通孔を除外して格子状部分を検査することが可能な物品検査装置および物品検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる物品検査装置は、物品に形成された複数の平行な縦線部と複数の平行な横線部とが交差した格子状部分の画像を撮影して、多数の画素が配列された画像データを取得する撮影手段と、当該撮影手段が取得した画像データに基づいて、上記格子状部分の検査を行う検査手段とを有する物品検査装置において、
上記検査手段は、上記撮影手段により取得された画像データを二値化処理する画像処理手段と、上記撮影手段が撮影した画像データに格子状の検査範囲を設定する検査範囲設定手段とを備え、
上記画像処理手段は、二値化処理により上記画像データより格子状部分を示す画素を抽出し、上記検査範囲設定手段は、上記抽出された格子状部分を示す画素の集団からなる格子状領域に対して、縦線部の幅方向にオープニング処理を行ってからクロージング処理を行うことにより、横線部のみからなる横線部検査領域に変換し、また、上記格子状領域に対して、横線部の幅方向にオープニング処理を行ってからクロージング処理を行うことにより、縦線部のみからなる縦線部検査領域に変換し、これら横線部検査領域と縦線部検査領域とを合成して上記格子状の検査範囲として設定することを特徴としている。
また請求項2の発明にかかる物品検査方法は、物品に形成された複数の平行な縦線部と複数の平行な横線部とが交差した格子状部分の画像を撮影して、多数の画素が配列された画像データを取得する撮影手段と、当該撮影手段が取得した画像データに基づいて、上記格子状部分の検査を行う検査手段とを有する物品検査方法において、
上記格子状部分の画像を撮影して画像データを取得し、当該画像データを二値化処理して格子状部分を示す画素を抽出し、
上記抽出された格子状部分を示す画素の集団からなる格子状領域に対して、縦線部の幅方向に所定画素分収縮させて膨張させるオープニング処理を行って、格子状領域のうち縦線部を示す画素を除外した残りの画素の集団からなる横線部領域に変換し、さらに当該横線部領域に対して縦線部の幅方向に所定画素分膨張させて収縮させるクロージング処理を行って横線部検査領域とし、
また、上記格子状領域に対して、横線部の幅方向に所定画素分収縮させて膨張させるオープニング処理を行って、格子状領域のうち横線部を示す画素を除外した残りの画素の集団からなる縦線部領域に変換し、さらに当該縦線部領域に対して横線部の幅方向に所定画素分膨張させて収縮させるクロージング処理を行って縦線部検査領域として、
これら横線部検査領域と縦線部検査領域とを合成して格子状の検査範囲とし、上記撮影手段で撮影した格子状部分の画像に設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記請求項1、2の発明によれば、物品に形成された複数の平行な縦線部と複数の平行な横線部とが交差した格子状部分を撮影した画像データから、格子状部分を示す画素の集団からなる格子状領域を求め、さらに当該格子状領域を横線部検査領域および縦線部検査領域に変換している。
これら横線部検査領域および縦線部検査領域は、今回検査を行うために撮影した物品の画像データに基づくものであり、これらを合成した格子状の検査範囲は今回検査を行う物品の格子状部分を正確に反映していることから、当該格子状の検査範囲を物品の格子状部分の画像に設定することで、物品の格子状部分の検査を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例にかかる物品検査装置の正面断面図
図2】コンテナの平面図
図3】コンテナの格子状部分の画像の一例を示す図
図4】格子状領域を縦線部の幅方向にオープニング処理してからクロージング処理した場合の領域の変換状況を説明する図
図5】格子状領域を横線部の幅方向にオープニング処理してからクロージング処理した場合の領域の変換状況を説明する図
図6】格子状の検査範囲を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は物品としてのプラスチック製のコンテナ1の検査を行う物品検査装置2の正面断面図を示し、特に上記コンテナ1の底部に形成された格子状部分Gに付着した汚れや異物等を検出する物品検査装置2となっている。
上記コンテナ1は全体がプラスチック製となっており、図2に示す上記コンテナ1の平面図において、当該コンテナ1の底部に形成された格子状部分Gは複数の平行な縦線部Gaと横線部Gbとが交差した構成を有し、これら複数の縦線部Gaと横線部Gbとによって格子が形成されている。また、黒色で示した部分は、これら縦線部Gaおよび横線部Gbの間に形成される貫通孔Hとなっている。
【0009】
上記物品検査装置2は、上記コンテナ1を搬送する搬送コンベヤ3と、搬送コンベヤ3を覆って設けられた暗室4と、当該暗室4の内部に設けられて上記コンテナ1に検査光を照射する照明手段5と、上記暗室4の内部に設けられて上記コンテナ1の内部を撮影する撮影手段6と、これら搬送コンベヤ3、照明手段5、撮影手段6の作動を制御する制御手段7とを備えている。
上記搬送コンベヤ3は一対の無端状の丸ベルトによって構成され、各丸ベルトによって上記コンテナ1を下方から支持するようになっている。図1に示した実施例においては、搬送コンベヤ3の図示左端部で人手によりコンテナ1が供給されると、左から右へとコンテナ1を搬送するようになっている。
また上記搬送コンベヤ3には上記コンテナ1を検出するセンサ3aが設けられており、当該センサ3aがコンテナ1を検出すると、制御手段7に検出信号が送信され、制御手段7の制御によって照明手段5を発光させるとともに、撮影手段6に撮影を指示する。
上記照明手段5は上記暗室4の内部に設けられるとともに、上記搬送コンベヤ3によって位置されるコンテナ1を四方から取り囲むように上方に配置されている。
照明手段5をこのように配置することで、コンテナ1の底部に影が生じないように均等に検査光を照射することができ、上記格子状部分Gを構成する複数の縦線部Gaおよび横線部Gbに均等に検査光が照射されるようになっている。
【0010】
上記撮影手段6は上記暗室4の内部に設けられるとともに、上記搬送コンベヤ3および上記照明手段5の上方に設けられており、当該撮影手段6として従来公知のCCDやCMOSなどの光電素子(イメージセンサ)を備えたカメラを使用することができ、本実施例では静止画をカラーで撮影するようになっている。
また、コンテナ1の格子状部分Gの全体を撮影するため、撮影手段6には広角レンズ6aが装着されており、撮影手段6の撮影範囲の中心が、上記コンテナ1の底部の略中心となるように設定されている。
撮影手段6がコンテナ1の底部を撮影すると、当該撮影手段6を構成する光電素子が、当該コンテナ1の底部の画像を多数の画素が配列された画像データとして取得することとなる。
具体的には、上記撮影手段6を構成する光電素子は縦横(X-Y)に多数の画素が配列されて構成されており、撮影手段6でコンテナ1の底部を撮影すると、各画素においてそれぞれ色相と彩度と輝度からなる各種情報を電気信号に変換して、上記画像データとして取得するようになっている。
【0011】
上記制御手段7はパーソナルコンピュータ等によって構成され、また当該制御手段7に格納された制御プログラムとして、上記撮影手段6によりコンテナ1の格子状部分の画像を撮影し、取得した画像データに基づいてコンテナ1の検査を行う検査手段8が設けられている。
そして上記検査手段8は、上記撮影手段6により取得された画像データを二値化処理する画像処理手段9と、上記撮影手段6が撮影した画像に、図6に示す格子状の検査範囲Pを設定する検査範囲設定手段10と、当該検査範囲Pの設定された画像の画像データを二値化処理して汚れや異物の有無を判定する判定手段11とを備えて構成されている。
【0012】
以上のように構成される物品検査装置2において、本実施例では次のようにコンテナ1に形成された格子状部分Gの検査を行うようになっている。
すなわち、上記搬送コンベヤ3によって搬送されるコンテナ1を上記センサ3aにより検出すると、制御手段7は照明手段5を発光させるとともに、上記撮影手段6によって上方からコンテナ1の底部を撮影するようになっている。
図3は、撮影手段6で撮影したコンテナ1の底部に形成された格子状部分Gの画像を示しており、Aは縦線部Gaや横線部Gbに付着した汚れや異物等の付着物を表している。
上記検査手段8の動作指令により、上記撮影手段6によって格子状部分Gの画像データを取得すると、画像処理手段9が画像データより格子状部分Gを含む矩形をしたコンテナ1の底部の画像を切り出し、当該底部の輪郭が、直交するX-Y方向に沿うように画像の傾きを補正する。
なお、図示したコンテナ1の場合は、格子状部分Gを構成する縦線部Gaおよび横線部Gbが、矩形をした底部の輪郭に沿うように形成されているが、これに対して縦線部Gaおよび横線部Gbが、矩形をした当該底部の輪郭に対して斜めに配置された斜め格子の場合は、縦線部Gaおよび横線部GbがそれぞれX方向もしくはY方向に沿うように、画像データにおいて上記底部を回転させる。
【0013】
続いて画像処理手段9は、上記撮影手段6より取得した画像データにおける各画素の輝度について、各画素を所定のしきい値に基づいて二値化処理する。
その際、画像処理手段9は撮影手段6の光電素子の各画素から電気信号を読み出す順序を決めておくことで(例えば、左から右、上から下)、取得した画像データにおける各画素の位置情報を取得するようになっている。
その結果、上記格子状部分Gを構成する縦線部Gaおよび横線部Gbが白色(1)の画素に変換され、上記貫通孔Hや格子状部分Gに付着した付着物Aが黒色(0)の画素として除外されることとなる。
【0014】
上記二値化処理により本実施例の画像処理手段9は、画像データより格子状部分Gを示す画素を抽出し、これを格子状部分Gを示す画素の集団によって構成された格子状領域として認識する。
この際に、コンテナ1の格子状部分Gに付着した付着物Aについては、格子状部分Gよりも貫通孔Hに輝度が近く、黒色の画素に変換されるため、実際には格子状部分G上にあるものの、上記格子状領域からは除外されることとなる。
【0015】
上記検査範囲設定手段10は、上記画像処理手段9により認識される格子状領域を用いて、格子状の検査範囲Pを設定する。
最初に検査範囲設定手段10は、上記画像処理手段9が抽出した画素の集団からなる上記格子状領域に対して、縦線部Gaの幅方向すなわち図3における横方向(X方向)にオープニング処理を行う。これにより、図4(a)に示す付着物Aの部分がくり抜かれた複数の横線部Gbからなる横線部領域Pa’に変換される。
その後当該横線部領域Pa’に対してクロージング処理を行って、図4(b)に示すような各横線部Gbが連続している横線部検査領域Paに変換する。
【0016】
上記オープニング処理では、検査範囲設定手段10が上記格子状領域を、X方向に所定画素分収縮させてから膨張させて、図4(a)に示す横線部領域Pa’に変換する。
オープニング処理における収縮段階では、二値化処理により得られた格子状領域を構成する白色の画素において、所定画素分領域の端からX方向に領域の内側に向けて、それまで白色であった画素を黒色の画素に変換する。
ここで収縮のために変換させる所定画素数としては、画像の歪を顧慮して縦線部Gaの幅について、画像中で最も広い幅の半分の長さを超える画素数を設定すればよく、これにより格子状領域から縦線部Gaに相当する領域が消滅する。
続いて、オープニング処理における膨張段階では、上記収縮させた画素数と同じ画素分だけ、領域の端からX方向に領域の外側に向けて、それまで黒色であった画素を白色の画素に変換する。
これにより、収縮段階で収縮した横線部Gbの領域が元に戻り、図4(a)に示すような縦線部Gaが除去された横線部Gbのみからなる横線部領域Pa’に変換することができる。
この場合、縦線部Gaについては消滅しているため、膨張処理を行っても領域が復活することはない。ただし、当該横線部領域Pa’には、依然として横線部Gbに付着した付着物Aの部分がくり抜かれた状態で残っている。
【0017】
次に、上記クロージング処理では、図4(a)に示す上記オープニング処理を行った上記横線部領域Pa’に対し、X方向に所定画素分膨張させてから収縮させて、図4(b)に示す横線部検査領域Paに変換するようになっている。
まず、図4(a)にかかるオープニング処理を行った横線部領域Pa’には、上記横線部Gbに付着した付着物Aが黒色の画素としてくり抜かれて表れている。
そこで検査範囲設定手段10は、上記クロージング処理における膨張段階として、上記横線部領域Pa’ について、所定画素分領域の端からX方向に領域の外側に向けて、それまで黒色であった画素を白色の画素に変換する。
これにより、上記横線部Gb上でくり抜かれていた付着物Aを示す黒色の画素が白色の画素に置き換えられ、上記横線部領域Pa’は途切れのない連続した直線的な領域に変換される。この場合の膨張させる所定画素数としては、想定される付着物Aの大きさに応じて決定することができる。
続いてクロージング処理における収縮段階では、検査範囲設定手段10は上記膨張させた画素数と同じ画素分だけ、領域の端からX方向に領域の内側に向けて、それまで白色であった画素を黒色の画素に変換する。
これにより、膨張段階で膨張した横線部Gbの領域が元に戻り、図4(b)に示すような、撮影した画像を反映する長さからなる連続した横線部検査領域Paが得られることとなる。この場合、付着物Aを示す黒色の画素については全て白色の画素に変換されているため、収縮処理を行っても復活することはない。
【0018】
上記横線部検査領域Paの作成に並行して、検査範囲設定手段10は上記格子状領域から、図5(b)に示す上記格子状部分Gにおける縦線部Gaについての縦線部検査領域Pbを作成する。
検査範囲設定手段10は、上記格子状領域に対して、横線部Gbの幅方向すなわち図3における縦方向(Y方向)にオープニング処理を行う。これにより、図5(a)に示す付着物Aの部分がくり抜かれた縦線部Gaからなる縦線部領域Pb’に変換される。
その後当該縦線部領域Pb’に対してクロージング処理を行って、図5(b)に示すような各縦線部Gaが連続している縦線部検査領域Pbに変換する。
なお、当該縦線部検査領域Pbの作成手順は、上記横線部検査領域Paの作成手順に対して、オープニング処理およびクロージング処理を行う方向がY方向あって、オープニング処理で収縮・膨張させる画素数が横線部Gbの幅に応じて設定する点を除いては、上記横線部検査領域Paの作成手順とほぼ同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
そして検査範囲設定手段10は、横線部検査領域Paおよび縦線部検査領域Pbを作成すると、これら縦線部検査領域Pbと横線部検査領域Paとを合成して、図6に示す格子状の検査範囲Pを作成する。この格子状の検査範囲Pは、範囲内の全ての画素が白色の画素をからなる画像データとして認識されている。
上記縦線部検査領域Pbと横線部検査領域Paとは、いずれも今回検査を行うために撮影したコンテナ1の画像データに基づくものであり、これらを合成した格子状の検査範囲Pは、今回検査を行うコンテナ1の縦線部Gaと横線部Gbとが交差した格子状部分を正確に反映しており、物品の格子状部分Gの検査を正確に行うことができる。
【0020】
そして次に画像処理手段9によって、上記撮影手段6が撮影したコンテナ1の格子状部分Gの画像に、上記検査範囲設定手段10で作成した格子状の検査範囲Pを設定して、付着物Aの有無を判定するために二値化処理を行う。
画像処理手段9は、上記撮影手段6で取得したコンテナ1の格子状部分Gの画像データにおいて、上記格子状の検査範囲Pの範囲に含まれる画素を対象として、色相、彩度、輝度の各々について二値化処理を行う。
色相による二値化処理では、コンテナ1の格子状部分Gと付着物Aの色合いが異なる場合に有効で、格子状部分Gの色に基づく所定のしきい値の範囲を設定して、色相が所定範囲内であれば白色に変換する。
また、彩度については、コンテナ1の格子状部分Gと付着物Aの色合いは同じで鮮やかさが異なる場合に有効で、格子状部分Gの鮮やかさに基づく所定のしきい値の範囲を設定して、彩度が所定範囲内であれば白色に変換する。
さらに、輝度は明るさの度合いであり、格子状部分Gの明るさに基づく所定のしきい値の範囲を設定して、輝度が所定範囲内であれば白色に変換する。
【0021】
判定手段11は、色相により二値化処理された画像データ、彩度により二値化処理された画像データ、輝度により二値化処理された画像データのそれぞれについて、上記検査範囲Pにおいて対応する同じ位置の画素同士を比較し、相違する画素の集団を付着物Aとして検知することで、格子状部分における付着物Aの有無を判定する。
このとき、上記検査範囲Pは、今回検査を行うために撮影した画像と同じ画像データから抽出した格子状領域に基づいて作成したものであるため、検査範囲Pと検査対象とする画像データにおける格子状部分Gは正確に一致しており、貫通孔Hを正確に検査対象から除外することができる。
【0022】
このように、上記構成を有する本実施例の物品検査装置2では、上記撮影手段6がコンテナ1を撮影する度に、上記検査範囲設定手段10によって当該コンテナ1についての検査範囲Pを作成し、判定手段11は撮影手段6が撮影したコンテナ1の画像データと、当該画像データから作成した検査範囲Pとを用いて良否判定を行うようになっている。
上記検査範囲設定手段10は上記検査範囲Pを格子状部分Gの画像データから作成するため、検査範囲Pの各画素の位置は格子状部分Gの画像データにおける対応する画素の位置と一致し、検査範囲Pを画像データにマッチングさせる作業は不要である。
これに対し、従来のように、撮影した画像データに予め準備した比較用パターンをマッチングさせるには、コンテナを上記搬送コンベヤに正確に位置決めしたり、画像処理によって画像データの傾きや位置を調整する必要があった。
【0023】
なお、実施例では、物品として底部に格子状部分が形成されたコンテナ1について説明したが、これに限定されず、同様に底部に格子状部分が形成されたトレーやケースを対象としてもよく、さらにはこれらコンテナやトレー、ケース等の収容体に限らず様々な物品の格子状部分を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 コンテナ(物品) 2 物品検査装置
3 搬送コンベヤ 6 撮影手段
6a 広角レンズ 7 制御手段
8 検査手段 9 画像処理手段
10 検査範囲設定手段 11 判定手段
G 格子状部分 Ga 縦線部
Gb 横線部 P 検査範囲
Pa 横線部検査領域 Pb 縦線部検査領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6