(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20221013BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G06F1/16 312S
G06F1/16 312E
H05K5/02 Z
(21)【出願番号】P 2021121894
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518133201
【氏名又は名称】富士通クライアントコンピューティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 慎孝
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-155087(JP,A)
【文献】特開2020-063627(JP,A)
【文献】特開2011-164687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16- 1/18
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された筐体と、
施解錠操作により先端部が根元部に対して回転可能で扁平なキー部を備えるセキュリティロックが取り付けられるものであって、第一方向に長く前記キー部が挿し込まれる孔が形成され前記開口部に嵌り込む主部と、前記筐体の内側に位置するフランジ部と、を有し、前記主部の外面が前記筐体の外面に一致または前記筐体の外面よりも内側に位置する第一位置と、前記主部の外面が前記筐体の外側に突出する第二位置と、の間で移動可能である浮動部材と、
前記浮動部材が前記第二位置に向かう力を受けないとき前記浮動部材を前記第一位置に位置させる位置決め部と、
前記主部の内面に前記孔を挟んで設けられて前記第一方向と交差する第二方向に並んで位置し、前記孔に挿し込まれた前記キー部が前記主部の前記孔の長手方向と前記先端部の長手方向とが交わる施錠状態にあるとき、前記先端部の前記根元部に近い側の面に接して前記キー部を支える一対の支持部と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記支持部は、前記主部の内面から突出して前記外面に平行な平面を頂部に有する突起である、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記支持部は、前記頂部を前記第一方向に挟む位置に、前記支持部の周囲の前記主部の内面から前記頂部に接続する斜面部を有する、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記位置決め部は、
前記筐体の内側に設けられて、前記浮動部材およびその移動可能範囲を囲む枠部と、
前記浮動部材とともに前記枠部の内側に収められて、前記浮動部材を前記第二位置から前記第一位置へ向かう第三方向に付勢する付勢部材と、
を備える請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記付勢部材は、
前記フランジ部の前記筐体の内面に対向する側の第一面を押圧することで前記浮動部材を前記第三方向に付勢する板バネ部と、
前記フランジ部の前記第一面の裏側の第二面と前記枠部との間に位置し、前記主部が前記第一位置に位置するときに前記開口部の縁における前記筐体の外面と内面との間の距離以上前記枠部から前記フランジ部を離すスペーサーと、
が連結されて構成され、
前記枠部には、前記浮動部材および前記付勢部材の前記第二方向に沿った挿し込みを受け付ける開口部が設けられていて、
前記フランジ部の前記第一面には、前記板バネ部の先端部が嵌り込む窪みが形成されていて、
前記板バネ部の先端および前記フランジ部の縁の少なくとも一方には、前記板バネ部が前記フランジ部に対して前記第二方向に沿って移動する際に前記板バネ部の先端を前記フランジ部の縁から前記第一面へと導く誘い面が設けられている、
請求項4に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばノート型コンピュータやディスプレイ装置など、持ち運びが可能な電子機器には、セキュリティロックを取り付けるためのセキュリティスロットが設けられている(例えば特許文献1)。セキュリティロックは、盗難を防ぐために什器のフレーム等に括りつけるためのワイヤーを備え、施解錠操作により先端部分の形状が変化する。セキュリティスロットは、電子機器の筐体に設けられた小さな孔である。このセキュリティスロットの縁に、セキュリティロックの先端部分が引っ掛けられることにより、電子機器の筐体にワイヤーが連結される。
【0003】
セキュリティスロットは、ワイヤーを引っ張るなどによる外力が加えられても破壊されにくいことが望まれる。このため、セキュリティスロットやその周辺部は強度に配慮されて設計され、例えば剛性の高い金属製の部品で構成される等している。金属部品によりセキュリティスロットを構成するために、従来、専用の部品が用いられたり、ヒンジ部の金属部品が兼用されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
持ち運び可能な電子機器は、小型であることが望まれる都合上、筐体内部における各部品の占める空間は少しでも小さくなるように工夫される。セキュリティスロットも例外ではなく、十分な強度を満足しながらの省スペース化が求められている。
【0006】
しかしながら、従来の構成のセキュリティスロットは、専用の部品であればその部品の大きさ分だけ筐体内の一部スペースを占有し、またヒンジ部の利用であれば、設置位置がヒンジ部の近傍に限られる等、不都合がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題の一つは、電子機器の内部の省スペース化に寄与することができるセキュリティスロットの構成を提供することである。また、本発明が解決しようとする他の課題は、設置位置の自由度が高いセキュリティスロットの構成を提供することである。さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、容易に組立て可能なセキュリティスロットの構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様にかかる電子機器は、開口部が形成された筐体と、施解錠操作により先端部が根元部に対して回転可能で扁平なキー部を備えるセキュリティロックが取り付けられるものであって、第一方向に長く前記キー部が挿し込まれる孔が形成され前記開口部に嵌り込む主部と、前記筐体の内側に位置するフランジ部と、を有し、前記主部の外面が前記筐体の外面に一致または前記筐体の外面よりも内側に位置する第一位置と、前記主部の外面が前記筐体の外側に突出する第二位置と、の間で移動可能である浮動部材と、前記浮動部材が前記第二位置に向かう力を受けないとき前記浮動部材を前記第一位置に位置させる位置決め部と、前記主部の内面に前記孔を挟んで設けられて前記第一方向と交差する第二方向に並んで位置し、前記孔に挿し込まれた前記キー部が前記主部の前記孔の長手方向と前記先端部の長手方向とが交わる施錠状態にあるとき、前記先端部の前記根元部に近い側の面に接して前記キー部を支える一対の支持部と、を備える。
【0009】
また、前記支持部は、前記主部の内面から突出して前記外面に平行な平面を頂部に有する突起である。
【0010】
また、前記支持部は、前記頂部を前記第一方向に挟む位置に、前記支持部の周囲の前記主部の内面から前記頂部に接続する斜面部を有する。
【0011】
また、前記位置決め部は、前記筐体の内側に設けられて、前記浮動部材およびその移動可能範囲を囲む枠部と、前記浮動部材とともに前記枠部の内側に収められて、前記浮動部材を前記第二位置から前記第一位置へ向かう第三方向に付勢する付勢部材と、を備える。
【0012】
また、前記付勢部材は、前記フランジ部の前記筐体の内面に対向する側の第一面を押圧することで前記浮動部材を前記第三方向に付勢する板バネ部と、前記フランジ部の前記第一面の裏側の第二面と前記枠部との間に位置し、前記主部が前記第一位置に位置するときに前記開口部の縁における前記筐体の外面と内面との間の距離以上前記枠部から前記フランジ部を離すスペーサーと、が連結されて構成され、前記枠部には、前記浮動部材および前記付勢部材の前記第二方向に沿った挿し込みを受け付ける開口部が設けられていて、前記フランジ部の前記第一面には、前記板バネ部の先端部が嵌り込む窪みが形成されていて、前記板バネ部の先端および前記フランジ部の縁の少なくとも一方には、前記板バネ部が前記フランジ部に対して前記第二方向に沿って移動する際に前記板バネ部の先端を前記フランジ部の縁から前記第一面へと導く誘い面が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記態様によれば、電子機器の内部の省スペース化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態における電子機器の外観を示す図である。
【
図2】
図2は、セキュリティロックの外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、セキュリティスロットの外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、セキュリティスロットを筐体の内側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、浮動部材の外観を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、浮動部材を
図5の反対側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、枠部を筐体の内側から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、枠部に収められる付勢部材および浮動部材の外観を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、付勢部材および浮動部材を、
図9の反対側から見た斜視図である。
【
図16】
図16は、セキュリティロックの施解錠に伴う支持部とキー部との位置関係の変化を示す図である。
【
図17】
図17は、セキュリティロックが取り付けられたセキュリティスロットの外観を示す図である。
【
図18】
図18は、セキュリティロックの施解錠に伴うセキュリティスロットの様子の変化を示す図である。
【
図19】
図19は、セキュリティロックの施解錠に伴うセキュリティスロットの様子の変化を示す図である。
【
図20】
図20は、第2の実施形態における付勢部材の外観を示す図である。
【
図21】
図21は、第2の実施形態における付勢部材の外観を示す図である。
【
図22】
図22は、セキュリティロックの施解錠に伴うセキュリティスロットの様子の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態における電子機器1の外観を示す斜視図である。本実施形態の電子機器1は、ノート型コンピュータである。電子機器1は、第一モジュール2および第二モジュール3を備えている。
【0016】
第一モジュール2は、筐体21および表示部22を備えている。筐体21は薄い直方体の箱(容器)であって、一面が、表示部22の表示画面とされている。表示部22は液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。
【0017】
第二モジュール3は、筐体31、キーボード32およびポインティングデバイス33を備えている。筐体31は薄い直方体の箱(容器)であって、広い2面のうち一方の面311には、キーボード32およびポインティングデバイス33が嵌め込まれている。キーボード32は多数のキーを有し、押下されたキーに応じた入力操作を受け付ける。ポインティングデバイス33は、表示部22が表示するポインターを移動させるなどの操作を受け付ける。
【0018】
第二モジュール3は、各種ケーブルの挿し込みを受け付ける端子34,35,36を備えている。これらの各種端子34,35,36は、筐体31の面311を囲む4側面の一つの外面312に露出させて設けられている。
【0019】
第一モジュール2と第二モジュール3とは互いの端部をヒンジ11により回動可能に連結されている。これにより、第一モジュール2は、第二モジュール3に対する回動に伴い、表示部22とキーボード32とが近接し向かい合う位置と、表示部22とキーボード32とが離れる位置と、の間で移動する。
【0020】
以下、
図1に示す状態の電子機器1のユーザが表示部22の表示画面に向かい合いキーボード32に手を添えるときの、ユーザにとっての左右方向を電子機器1の幅方向と表し、ユーザにとっての前後方向を電子機器1の奥行方向と表す。また、図中に、構造の理解を助けるための三次元座標系を示している。電子機器1の幅方向をX軸方向、奥行方向をY軸方向、厚さ方向をZ軸方向とする。
【0021】
このような電子機器1は、セキュリティスロット4を備えている。セキュリティスロット4は、各種端子34,35,36とともに、外面312に露出させて設けられている。セキュリティスロット4は、
図2に示すようなセキュリティロック8が取り付けられるものである。ここで、
図2は、セキュリティロック8の外観を示す斜視図である。
【0022】
セキュリティロック8は、鍵等を用いた施解錠操作を受け付けるシリンダ部81と、キー部82を備えている。キー部82は、扁平な形状を有し、施解錠操作により、根元部821に対して先端部822が回転する。
【0023】
図2は、矢印を挟んで上に解錠状態のセキュリティロック8を、下に施錠状態のセキュリティロック8を示す。解錠状態のキー部82においては、根元部821の長手方向と先端部822の長手方向とが一致する。施錠状態のキー部82においては、根元部821の長手方向に対して、先端部822の長手方向が、略直交する。なお、セキュリティロック8は、盗難を防ぐために什器のフレーム等に括りつけるためのワイヤー等を備える。
【0024】
図3は、セキュリティスロット4の外観を示す斜視図である。また、
図4は、セキュリティスロット4を筐体31の内側から見た斜視図である。セキュリティスロット4は、浮動部材5と、位置決め部6と、支持部7とを備え、筐体31に形成された開口部41に設けられている。
【0025】
図5は、浮動部材5の外観を示す斜視図である。また、
図6は、浮動部材5を
図5の反対側から見た斜視図である。浮動部材5は、セキュリティロック8が取り付けられるものであって、主部51とフランジ部52とを有している。主部51は、開口部41に嵌り込む部分であって、キー部82が挿し込まれる孔511が形成されている。孔511は、外面512に沿って長い長孔である。なお、孔511の長手方向(第一方向)は、本実施形態では電子機器1の奥行方向(Y軸方向)に沿っている。
【0026】
浮動部材5は、主部51の外面512が筐体31の外面312に一致する(または筐体51の外面512よりも内側に位置する)第一位置と、主部51の外面512が筐体31の外側に突出する第二位置と、の間で移動可能である。本実施形態の主部51は、外面512を開口部41からX軸方向に沿って出入させるように移動する。
【0027】
フランジ部52は、筐体31の内側に位置し、開口部41の縁の周囲に対向している。また、フランジ部52は、浮動部材5の移動により、主部51に近い側の面である第一面521(
図5参照)で、筐体31の内面に接したり離れたりする。なお、第二面522(
図6参照)は、第一面521の裏側の面である。
【0028】
位置決め部6は、浮動部材5の移動可能範囲を定め、浮動部材5が第二位置に向かう力を受けないときに浮動部材5を第一位置に位置させるものであって、
図4に示すように、枠部61と、一対の付勢部材62とを備えている。枠部61は、筐体31の内面313(外面312の裏側の面)に固定されている。
【0029】
図7は、枠部61の外観を示す斜視図である。また、
図8は、枠部61を筐体31の内側から見た斜視図である。枠部61は、筐体31の内側に設けられて、浮動部材5およびその移動可能範囲を囲む。
【0030】
また、枠部61には、開口部611が設けられている。開口部611は、浮動部材5および付勢部材62の挿し込みを受け付ける。この挿し込み方向は、主部51の外面512が開口部41から出入りする際の移動方向に対して、略直交する。
【0031】
図9は、枠部61に収められる付勢部材62および浮動部材5の外観を示す斜視図である。また、
図10は、付勢部材62および浮動部材5を、
図9の反対側から見た斜視図である。
【0032】
付勢部材62は、浮動部材5とともに枠部61の内側に収められて、浮動部材5を第二位置から第一位置へ向かう方向(第三方向)に付勢する。この付勢力により、浮動部材5は、第一位置から第二位置へ向かう力(開口部41から突出させる向きの力)を受けないときには、第一位置に位置して開口部41内に収まっている。なお、本実施形態における第三方向は、電子機器1の幅方向(X軸方向)に沿っている。
【0033】
図11~
図13は、付勢部材62の外観を示す図である。
図11は、
図9と同じ側から見た斜視図である。
図12は、
図11の反対側から見た斜視図である。また、
図11および
図13は、矢印を挟んで左側に解錠時の付勢部材62を、右に施錠時の付勢部材62を示す。付勢部材62は、板バネ部621、スペーサー622、フレーム623、平面部624を備えている。
【0034】
平面部624は、板バネ部621、スペーサー622およびフレーム623を連結するものであって、枠部61内における開口部41に対向する面に密着する。フレーム623は、平面部624から略直交する方向に突出した腕状の部分であって、弾性を有し、枠部61内において自身の先端部を筐体31の内面313に押し当てる。これにより、付勢部材62は枠部61内に嵌り込む。
【0035】
板バネ部621は、枠部61内において、自身と平面部624との間に、浮動部材5のフランジ部52を挟む。このとき板バネ部621の先端部は、フランジ部52の第一面521に設けられた窪み523に、嵌り込む。
【0036】
以上により板バネ部621は、フランジ部52の第一面521を押圧し、浮動部材5を第三方向(X軸方向)に付勢する。なお、第一面521は、筐体31の内面313に対向する側の面である。また、第三方向は、第二位置から第一位置へ向かう方向であって、浮動部材5を開口部41内に引っ込める方向である。
【0037】
スペーサー622は、フランジ部52の第二面522(第一面521の裏側の面)と枠部61との間に位置し、主部51が第一位置に位置するとき、開口部41の縁における筐体31の外面312と内面313との間の距離以上、枠部61からフランジ部52を離す。なお、上述の距離は、第一位置における浮動部材5の主部51と筐体31とのオーバーラップ量に相当する。
【0038】
なお、
図13に示すように、解錠時の付勢部材62は、浮動部材5のフランジ部52を挟むための隙間625を、板バネ部621とスペーサー622との間に有している。
【0039】
ここで、セキュリティスロット4の組立てについて説明する。
図14は、浮動部材5および付勢部材62の斜視図である。
【0040】
セキュリティスロット4の組立てに際して作業者は、
図8に示す開口部611から枠部61内に浮動部材5を挿し込み、主部51が開口部41内に位置する第一位置に浮動部材5を位置させ、さらに開口部611から付勢部材62を挿し込む。その際の付勢部材62の挿し込み方向はZ軸方向である。そしてこのとき、板バネ部621と平面部624との間に、フランジ部52が挟まれる必要がある。
【0041】
このため、フランジ部52の第一面521の角部には、
図14に示す誘い面524が設けられている。誘い面524は、板バネ部621がフランジ部52の第一面521に沿う方向に移動する際に、板バネ部621の先端を板バネ部621の付勢に抗して移動させ、フランジ部52の縁から第一面521へと導く。誘い面524は、フランジ部52の角部を面取り加工する等により形成される。
【0042】
なお、本実施形態では、誘い面524をフランジ部52の縁に設けたが、実施にあたっては、誘い面を、板バネ部621の先端の角部626に設けてもよい。また、誘い面は、フランジ部52の縁と板バネ部621先端の角部626との少なくとも一方に設けられていればよいが、両方に設けられていてもよい。
【0043】
以上のように組立てられることにより、セキュリティスロット4を構成する浮動部材5と位置決め部6とが一体的に組み合わせられて、容易に分解不可の状態になる。
【0044】
図15は、支持部7の外観を示す図である。支持部7は、主部51の内面513から突出した一対の突起である。本実施形態の支持部7は、頂部71に、外面512に平行な平面を有する。また、支持部7は、孔511を挟んで位置し、第一方向(孔511の長手方向)と交差する第二方向に並んで位置している。
【0045】
ここで、孔511に挿し込まれたキー部82は、根元部821の長手方向と先端部822の長手方向とが交わる施錠状態にされると、先端部822の長手方向は、主部51の孔511の長手方向と交わる。このとき支持部7は、先端部822の根元部821に近い側の面に接してキー部82を支える。
【0046】
さらに、支持部7は、頂部71を第一方向(孔511の長手方向)に挟む位置に、一対の斜面部72を有している。斜面部72は、支持部7の周囲の主部51の内面513から、頂部71に接続する。
【0047】
図16は、セキュリティロック8の施解錠に伴う支持部7とキー部82との位置関係の変化を示す図である。なお、図中の矢印の上が解錠状態、下が施錠状態を示す。
【0048】
孔511は、解錠状態のキー部82の挿し込みを受け付ける。キー部82の解錠状態は、根元部821および先端部822の向きが揃っている状態である。挿し込まれたキー部82の根元部821と先端部822との境は、支持部7の斜面部72にかかっていて、頂部71に至っていない。
【0049】
セキュリティロック8が施錠操作を受けて施錠状態になるとき、キー部82の先端部822が根元部821に対してX軸周りに約90°回転する。このとき、先端部822の根元部821側の縁は、斜面部72に摺動しながら移動する。これにより、支持部7を介して浮動部材5が、X軸方向の力を受けて移動する。施錠状態のセキュリティロック8は、先端部822の根元部821側の面によって、板バネ部621の付勢力に抗して頂部71を押えている。なおこのとき浮動部材5の主部51は開口部41から突出した状態である。
【0050】
図17は、セキュリティロック8が取り付けられたセキュリティスロット4の外観を示す図である。本図に示すように、セキュリティロック8が取り付けられた状態では、浮動部材5の主部51は、開口部41から引き出されて、突出している。この突出量は、主部51の内面513からの頂部71の突出量分に相当する。
【0051】
図18および
図19は、セキュリティロック8の施解錠に伴うセキュリティスロット4の様子の変化を示す図である。なお、図中の矢印の上が解錠状態、下が施錠状態を示す。また、
図19は、
図18に示すセキュリティスロット4の、Y軸方向中央部での断面図(Z-X平面)である。
【0052】
図18に示すように、セキュリティスロット4は、解錠状態、つまりキー部82の根元部821と先端部822が揃った状態のセキュリティロック8の挿し込みを受け付ける。このとき、セキュリティロック8は、先端部822が枠部61の開口部41に対向する面に触れるまで挿し込まれる。この状態では、根元部821は、孔511に嵌り込んでいる。
【0053】
また、
図18に示すように、キー部82は、セキュリティロック8の施解錠に伴い、先端部822が根元部821に対して回転する。これにより、
図19に示すように、セキュリティスロット4においては、支持部7と先端部822との位置関係が変化する。またこれにより、
図18および
図19に示すように、浮動部材5が、筐体31の外面312から突出しない第一位置と、筐体31の外面312から突出する第二位置との間で、移動する。そして、
図19に示すように、施錠状態において、セキュリティロック8の先端部822の根元部821に近い側の面823は、支持部7の頂部71に密着する。
【0054】
以上のように、解錠状態から施錠状態に変化する際に、浮動部材5が突出するように移動する構成としたことで、いくつかの効果を奏することができる。例えば、筐体31内におけるセキュリティスロット4が占める空間を、セキュリティロック8が装着されたときの浮動部材5の突出量分だけ、省スペース化することができる。
【0055】
また、セキュリティロック8が装着されない状態でのセキュリティスロット4の外観は、従来のまま突出部分などがない良好な状態に保つことができる。
【0056】
さらに、筐体31や浮動部材5、枠部61、付勢部材62を、例えば金属など十分な強度を有する材料により製造にする等により、小型化されていても従来の性能を維持することが可能である。
【0057】
また、本実施形態によれば、セキュリティスロット4の配置が、例えばヒンジ部の近傍に限定されるというようなことがないので、設置位置の自由度が高いセキュリティスロット4とすることができる。
【0058】
さらに、本実施形態によれば、枠部61に浮動部材5を挿し込んで第一位置に位置させてから付勢部材62を枠部61に挿し込む、という少ない工程数で容易に、強固なセキュリティスロット4を組立てることができる。
【0059】
また、一般的なセキュリティロック8においては、施錠状態での筐体31からのシリンダ部81の距離が規定されている。これは、セキュリティロック8をセキュリティスロット4に対して揺らす等することによりセキュリティロック8をがたつかせて不正にセキュリティロック8が取り外される不都合を防ぐためである。これについて、本実施形態によれば、セキュリティロック8の筐体31への挿し込み深さが従来よりも浅くなるが、開口部41から突出した浮動部材5によりキー部82の根元部821側が保持されるので、筐体31からのシリンダ部81の距離の規定を従来通り満たすことができる。これにより、セキュリティロック8をセキュリティスロット4に対して揺らす等することにより不正にセキュリティロック8が取り外されるような不都合を防止することができる。
【0060】
なお、本実施形態の位置決め部6は、付勢部材62を用いて構成されているが、実施にあたっては、これに限らない。実施にあたって、位置決め部6は、付勢部材62の付勢による位置決めでなく、例えば凹凸形状による弾発的な係合によって、浮動部材5を第一位置および第二位置に位置決めするようにしてもよい。この場合、浮動部材5を第二位置から第一位置に戻すに際しては、ユーザが手動で浮動部材5を開口部41内に押し込むことで、第二位置における弾発的な係合を解除することとなる。
【0061】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるので、第1の実施形態で説明したものと同じものについての説明を省略し、異なるものについて説明する。
【0062】
図20および
図21は、本実施形態における付勢部材63の外観を示す図である。なお、
図20および
図21は、矢印を挟んで左側に解錠時の付勢部材63を、右に施錠時の付勢部材63を示す。
【0063】
付勢部材63は、Y軸方向に波打った形状の板バネであって、Y軸方向中央部に設けられた平面部631と、平面部631を挟んで位置する一対の平面部632と、を有している。平面部631と平面部632とは、互いの面方向(X軸方向)にずれて位置する。また、付勢部材63の両端部633の端面は、平面部631側に向いている。
【0064】
このような付勢部材63は、中央部の平面部631をX軸の負方向に押圧されると、平面部631が平面部632と略同一面上に位置するように変形する。このとき、平面部631から両端部633までのX軸方向の距離は、変形前よりも大きくなる。つまり両端部633はX軸の正方向に移動する。
【0065】
図22は、セキュリティロック8の施解錠に伴うセキュリティスロット4の様子の変化を示す図である。セキュリティスロット4は、解錠状態、つまりキー部82の根元部821と先端部822が揃った状態のセキュリティロック8の挿し込みを受け付ける。このとき、セキュリティロック8の先端部822は、付勢部材63の付勢力に抗して、平面部631をX軸の負方向に押圧する。これにより、付勢部材63は、平面部631が平面部632と略同一平面上に位置するように変形する。また、付勢部材63の変形に伴い、両端部633が第二面522をX軸の正方向に押圧し、これにより浮動部材5が外面312から突出する第二位置に移動する。
【0066】
また、キー部82は、セキュリティロック8の施解錠に伴い、先端部822が根元部821に対して回転する。セキュリティスロット4の施錠状態においては、先端部822の根元部821に近い側の面823が、支持部7の頂部71に密着する。これにより、キー部82の根元部821が孔511に嵌り込んで先端部822が浮動部材5を第二位置へ押し出した状態が、固定される。
【0067】
このように、第2の実施形態によれば、付勢部材62に代えて付勢部材63を採用することで、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 …電子機器、11…ヒンジ、
2…第一モジュール、21…筐体、22…表示部、
3…第二モジュール、31…筐体、312…外面、313…内面、
32…キーボード、33…ポインティングデバイス、34…端子、
4 …セキュリティスロット、41…開口部、
5 …浮動部材、
51…主部、511…孔、512…外面、513…内面、
52…フランジ部、521…第一面、522…第二面、523…窪み、524…誘い面、
6 …位置決め部、
61…枠部、611…開口部、
62…付勢部材、
621…板バネ部、622…スペーサー、623…フレーム、
624…平面部、625…隙間、626…角部、
63…付勢部材、631…平面部、632…平面部、633…両端部、
7 …支持部、71…頂部、72…斜面部、
8 …セキュリティロック、
81…シリンダ部、
82…キー部、821…根元部、822…先端部、823…面。
【要約】
【課題】電子機器の内部の省スペース化に寄与することができるセキュリティスロットの構成を提供する。
【解決手段】電子機器は、開口部が形成された筐体と、浮動部材と、位置決め部と、支持部とを備える。浮動部材は、施解錠操作により先端部が根元部に対して回転可能で扁平なキー部を備えるセキュリティロックが取り付けられるものであって、開口部から突出する位置としない位置との間で移動自在な主部と、筐体内に位置するフランジ部とを有する。位置決め部は、浮動部材を、開口部から突出しない位置に位置させる。支持部は、施錠状態の先端部の根元側の面に接してキー部を支えて浮動部材を開口部から突出する位置に位置させる。
【選択図】
図19