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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】救命胴衣
(51)【国際特許分類】
   B63C 9/15 20060101AFI20221013BHJP
   B63C 9/18 20060101ALI20221013BHJP
   B63C 9/13 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B63C9/15 100
B63C9/18 A
B63C9/13 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019155455
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021030969
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390006079
【氏名又は名称】東洋物産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591199741
【氏名又は名称】株式会社プロップ
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】小菅 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】宮村 信吾
(72)【発明者】
【氏名】内田 光也
(72)【発明者】
【氏名】平野 孝文
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】実公昭43-15794(JP,Y1)
【文献】特開2002-362482(JP,A)
【文献】米国特許第5494469(US,A)
【文献】登録実用新案第3087727(JP,U)
【文献】実開平6-35097(JP,U)
【文献】特開平7-329882(JP,A)
【文献】特開昭51-100594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/125
B63C 9/13
B63C 9/15
B63C 9/18
B63C 9/00
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部と下部で二又に分かれた背ベルトと、該背ベルトの上部で二又に分かれた部分に取付けたD環と、前記背ベルトの下部で二又に分かれた部分に取付けた腰ベルトと、前記背ベルトの上部で二又に分かれた部分の延伸側に連なる左右一対の縦ベルトであって前記腰ベルトと脚ベルトに連結した縦ベルトとを備えるフルハーネスを装着した着用者が着用する救命胴衣であって、
この救命胴衣が、
首を通すための首穴を有する襟部及び前記襟部の下方に配置され、着用した場合に前記着用者の胸から胴の部分に位置し、左右方向の幅の長さが、前記フルハーネスの一対の縦ベルトの間の長さより小さい胴部を有するカバーと、
前記カバーの内部に収納され、内部に空気を充填する充填部材を有する浮袋と、
を備える救命胴衣。
【請求項2】
前記胴部は、
左右方向の中間部に前記首穴に接続し、下方に向かって延び、下端において開放する間隙部を有する請求項1に記載の救命胴衣。
【請求項3】
前記カバーは、
前記首穴の縁の左右及び上部に補強部材を有する請求項1又は2に記載の救命胴衣。
【請求項4】
前記カバーは、
前記カバーに対して着脱可能な取付部材によって取り付けられるフックを有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の救命胴衣。
【請求項5】
前記浮袋は、
着用者が装着する前記フルハーネスに連結する連結ベルトをさらに備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の救命胴衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救命胴衣に関する。
【背景技術】
【0002】
工事などの作業を高所かつ下方に水面が広がっている場所において行う場合、作業者は落下防止用のフルハーネスを着用し、さらに救命胴衣を着用する必要がある。この場合、作業者が着用する救命胴衣は作業の邪魔にならないようなものである必要がある。
【0003】
この点に関し、上半身に装着し、平時には浮袋が折り畳まれ、水中に落下した場合にボンベの中の空気を浮袋に入れて膨らませる救命胴衣が従来用いられてきた(例えば、特許文献1及び特許文献2。)。
【0004】
しかし、従来の技術では、フルハーネスとの物理干渉が考慮されておらず、フルハーネスを装着した状態では、救命胴衣を着用することができなかったり、困難であったりした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5107326号公報
【文献】特許第5401716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、フルハーネスを着用していても容易に着用できる救命胴衣を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が提供する救命胴衣は、上部と下部で二又に分かれた背ベルトと、該背ベルトの上部で二又に分かれた部分に取付けたD環と、前記背ベルトの下部で二又に分かれた部分に取付けた腰ベルトと、前記背ベルトの上部で二又に分かれた部分の延伸側に連なる左右一対の縦ベルトであって前記腰ベルトと脚ベルトに連結した縦ベルトとを備えるフルハーネスを装着した着用者が着用する救命胴衣であって、この救命胴衣が、首を通すための首穴を有する襟部、及び前記襟部の下方に配置され、着用した場合に前記着用者の胸から胴の部分に位置し、左右方向の幅の長さが、前記フルハーネスの一対の縦ベルトの間の長さより小さい胴部を有するカバーと、
前記カバーの内部に収納され、内部に空気を充填する充填部材を有する浮袋と、
を備える救命胴衣である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フルハーネスを着用していても容易に着用できる救命胴衣を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態の救命胴衣の正面図。
図2】第1の実施形態の救命胴衣の背面図。
図3】第1の実施形態のカバーの分解斜視図。
図4】第1の実施形態の膨脹前の浮袋の正面図。
図5】第1の実施形態の膨脹前の浮袋の背面図。
図6】フルハーネスを装着した着用者が、第1の実施形態の救命胴衣を着用した状態を示す正面図。
図7】フルハーネスを装着した着用者が、第1の実施形態の救命胴衣1を着用した状態を示す背面図。
図8】第1の実施形態の浮袋が膨らんだ状態を示す正面図。
図9】第2の実施形態の救命胴衣の正面図。
図10】第2の実施形態の救命胴衣の背面図。
図11】第2の実施形態のカバーの分解斜視図。
図12】第2の実施形態の膨脹前の浮袋の正面図。
図13】第2の実施形態の膨脹前の浮袋の背面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の救命胴衣の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態の救命胴衣1の正面図、図2は救命胴衣1の背面図である。また、図3はカバー10の分解斜視図、図4は膨脹前の浮袋20の正面図、図5は膨脹前の浮袋20の背面図である。
【0012】
図1から図3に示すように、救命胴衣1はカバー10と、カバー10の内部に折りたたまれて収納される浮袋20と、を備える。
【0013】
カバー10は、着用した場合に首の周りに配置される襟部11Aと、襟部11Aの下方に配置され、着用した場合に胸から胴の部分に配置される胴部11Bとを備える。
【0014】
襟部11Aは中心部分に首を通すための首穴10Hを有する。首穴10Hは、着用者の首を通すために必要かつ十分な大きさであり、着用者の頭部より大きく胴周りより小さい。
【0015】
襟部11Aは首穴10Hの縁の左右及び上部に補強部材101を有する。補強部材101は弾力性と剛性を有し、合成繊維によって形成される。この補強部材101が取り付けられることにより、カバー10の破損を回避できるとともに、救命胴衣1を着用した場合に首周りの装着感が改善される。
【0016】
胴部11Bは、左右方向の幅の長さW1が襟部11Aの左右方向の幅の長さW2より小さい。特に本実施形態の救命胴衣1は、胴部11Bの左右方向の幅の長さW1が、着用者が別途着用するフルハーネスの左右の縦ベルト30(図6参照。)の間の長さWGより小さい。
【0017】
従って、救命胴衣1は着用者が別途着用するフルハーネスに対して物理干渉を起こさず、着脱が容易となる。
【0018】
胴部11Bには反射材103が取り付けられる。
【0019】
浮袋20の連結ベルト201と胴ベルト202への連結部材202Aは、カバー10から引き出され、露出する。
【0020】
フック12は、カバー10から引き出され、露出する。
【0021】
図3に示すように、カバー10は、表材10Aと、裏材10Bと、を備える。
【0022】
表材10Aと裏材10Bとは同一形状をなす。また、表材10Aと、裏材10Bの縁には面ファスナーなどの着脱可能な縁部取付部材102が設けられる。裏材10Bには浮袋20のカバー取付部材204(図4参照。)と着脱可能に連結する取付ホック10Cが設けられる。
【0023】
表材10Aと裏材10Bとは、首穴10Hにおいて互いに縫い付けられ、さらに補強部材101が取り付けられる。
【0024】
裏材10Bの上端には、着脱可能な取り付け材によってフック12が取り付けられる。着脱可能な取り付け材としては、安全バックルや面ファスナーなどが挙げられるが、これらに限られない。安全バックルは、所定の荷重が加わると係合が外れて二つに分離する取り付け材である。安全バックルを使用する場合には、一対のバックルのうち一方のバックルにベルトを通し、ベルトと裏材10Bを縫製する。他方のバックルはフック本体12Aにベルトを介して取り付けられる。安全バックルとしては、例えば株式会社マーゼンプロダクツ製のNPS-20等を使用することができる。
【0025】
面ファスナーを使用する場合、面ファスナーのフック面12Cが取り付けられ、このフック面12Cにフック12の面ファスナーのループ面12Bが取り付けられる。フック12のフック本体部12Aはカバー10から引き出されて露出する。
【0026】
フック12は着脱可能なフック取付部材(安全バックルやループ面12B及びフック面12Cを有する面ファスナー)によってカバー10に取り付けられているため、大きな力が加わったときにも安全に外れることができる。
【0027】
図4及び図5に示すように、浮袋20は、上端の辺が曲線をなす大略四角形の形状をなし、中心部分よりやや上方に首を通すための孔部20Hを有する。
【0028】
浮袋20は、互いに同形状の2枚の布を、内部の空気が漏れないように、例えばウレタンなどの熱可塑性樹脂のシートを挟み、溶着される。浮袋20の表側には、反射材205と、カバー10の取付ホック10Cと着脱可能に連結するカバー取付部材204と、浮袋20内に空気を入れる充填部材206と、が取り付けられる。
【0029】
充填部材206には、口に咥えて息を吹き込む吹き込み口206Aや、圧縮ガスを封入したボンベ206Bと水に濡れた場合や、引き紐206Dを引くなどして手動によって操作された場合にボンベからガスを浮袋20の内部に充填する充填機構206Cなどが含まれる。206Eは前記引き紐206Dの掴み玉である。
【0030】
浮袋20の下端部の両端には、装着者が別途着用するフルハーネスの縦ベルト30と浮袋20とを連結するための連結ベルト201が設けられる。
【0031】
連結ベルト201は、端部に雌型連結具が設けられる雌型ベルト201Aと、端部に雄型連結具が設けられる雄型ベルト201Bと、を備える。
【0032】
浮袋20の下端部には、着用者の胴周りに取り付けられる胴ベルト202と、浮袋20と胴ベルト202とを連結する連結部材202Aが設けられる。
【0033】
図6はフルハーネスを装着した着用者が救命胴衣1を着用した状態を示す正面図、図7はフルハーネスを装着した着用者が救命胴衣1を着用した状態を示す背面図である。
【0034】
ここで、フルハーネスについて説明する。フルハーネスは、装着者の背中に当たる部分に配置され、上部及び下部において二股に分かれる背ベルト31と、背ベルト31が上部において二股に分かれる部分に取り付けられるD環32と、背ベルト31が下部において二股に分かれる部分に取り付けられる腰ベルト34と、背ベルト31の下端部に取り付けられる一対の脚ベルト35と、を備える。
【0035】
上部において二股に分かれた背ベルト31は、装着者の前方から胸及び胴を経て腰ベルト34に連結し、さらに脚ベルト35に連結する一対の縦ベルト30を有する。
【0036】
救命胴衣1の着用者は、最初にフック本体部12AをD環32に取り付け、救命胴衣1の首穴10Hに首を通し、胴部11Bが胸から胴に掛けて位置するように救命胴衣1を着用する。
【0037】
さらに、左右の連結ベルト201をフルハーネスの左右それぞれの縦ベルト30に掛けまわして取り付ける。そして、胴ベルト202を胴の周りに掛けまわす。
【0038】
本実施形態の救命胴衣1は、胴部11Bの左右方向の幅の長さW1が、着用者が別途着用するフルハーネスの左右の縦ベルト30の間の長さWGより小さい。
【0039】
従って、救命胴衣1は縦ベルト30の上に被さらず、縦ベルト30に安全フック33Aを端部に有するランヤード33が接続された場合にも、ランヤード33とも物理干渉を起こさない。連結ベルト201を縦ベルト30に取り付ける場合にも、救命胴衣1をまくり上げることなどをせずに、迅速に取り付けることができる。
【0040】
またさらに、救命胴衣1は作業をする場合にも両腕に当たることがないため、作業の邪魔にならない。
【0041】
図8は、浮袋20が膨らんだ状態を示す正面図である。図8に示すように、浮袋20が膨らむと膨脹する力によってカバー10の表材10Aと裏材10Bとを接続していた縁部取付部材102は引きはがされる。さらに、着用者が落下してフルハーネスが吊り上げられ、着用者の首に大きな力が加わった場合にも、フック12は着脱可能なフック取付部材(安全バックルやループ面12B及びフック面12Cを有する面ファスナー)によってカバー10に取り付けられているため、フック12も外れ、首が締め付けられることもない。
【0042】
そして、カバー10は浮袋20とは縫い合わされておらず、カバー取付部材204は着脱可能であるため、カバー10は浮袋20から分離して外すことができる。
【0043】
なお、本実施形態の救命胴衣1は、従来の救命胴衣が有していた襟部の上端部から背中を経由して着用者の背後の胴ベルトに連結する背ベルトを有していない。
【0044】
従って、この点においても本実施形態の救命胴衣1は着用がさらに容易である。
【0045】
以上述べたように、本実施形態の救命胴衣1は、首を通すための首穴10Hを有する襟部11A及び襟部11Aの下方に配置され、着用した場合に胸から胴の部分に位置し、左右方向の幅の長さW1が、着用者が別途着用するフルハーネスの一対の縦ベルト30の間の長さWGより小さい胴部11Bを有するカバー10と、カバー10の内部に収納され、縦ベルト30に連結する連結ベルト201、着用者の腰周りに掛けまわされる腰ベルト34、及び内部に空気を充填する充填部材206を有する浮袋20と、を備える。
【0046】
従って、本実施形態の救命胴衣1は、着用者が別途装着するフルハーネスの縦ベルト30と物理干渉を起こさず、フルハーネスを着用していても容易に着用できるという効果がある。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態の救命胴衣2は、第1の実施形態の救命胴衣1の胴部11Bが一つであるのに対し、胴部11Bに間隙部11Cがある点において異なる。この相違点のため、本実施形態のカバー40の形状は第1の実施形態のカバー10の形状と異なる。
【0048】
図9は本実施形態の救命胴衣2の正面図、図10は救命胴衣2の背面図である。また、図11はカバー40の分解斜視図、図12は膨脹前の浮袋50の正面図、図13は膨脹前の浮袋50の背面図である。
【0049】
図9から図13までの図に示すように、救命胴衣2はカバー40と、カバー40の内部に折りたたまれて収納される浮袋50と、を備える。
【0050】
カバー40は、着用した場合に首の周りに配置される襟部11Aと、襟部11Aの下方に配置され、着用した場合に胸から胴の部分に配置される胴部11Bとを備える。
【0051】
襟部11Aは中心部分に首を通すための首穴10Hを有する。首穴10Hは、着用者の首を通すために必要かつ十分な大きさであり、着用者の胴周りより小さい。
【0052】
襟部11Aは首穴10Hの縁の左右及び上部に補強部材101を有する。補強部材101は弾力性と剛性を有し、合成繊維によって形成される。この補強部材101が取り付けられることにより、カバー40の破損を回避できるとともに、救命胴衣2を着用した場合に首周りの装着感が改善される。
【0053】
胴部11Bは、胴部11Bの左右方向の中間部に首穴10Hに接続し、下方に向かって上下方向に延び、胴部11Bの下端において開放する間隙部11Cを有する。
【0054】
本実施形態の救命胴衣2は間隙部11Cがあるため、より容易に着用できる。
【0055】
胴部11Bは、左右方向の幅の長さW3が襟部11Aの左右方向の幅の長さW4より小さい。特に本実施形態の救命胴衣1は、胴部11Bの左右方向の幅の長さW3が、着用者が別途着用するフルハーネスの左右の縦ベルト30の間の長さWGより小さい。
【0056】
従って、救命胴衣2は着用者が別途着用するフルハーネスに対して物理干渉を起こさず、着脱が容易となる。
【0057】
胴部11Bには反射材103が取り付けられる。
【0058】
浮袋50の連結ベルト201と胴ベルト202への連結部材202Aは、カバー40から引き出され、露出する。
【0059】
フック12は、カバー40から引き出され、露出する。
【0060】
図11に示すように、カバー40は、表材40Aと、裏材40Bと、を備える。
【0061】
表材40Aと裏材40Bとは同一形状をなす。また、表材40Aと、裏材40Bの縁には面ファスナーなどの着脱可能な縁部取付部材102が設けられる。裏材40Bには浮袋20のカバー取付部材204(図12参照。)と着脱可能に連結する取付ホック40Cが設けられる。
【0062】
表材40Aと裏材40Bとは、首穴10H及び間隙部11Cにおいて互いに縫い付けられ、さらに補強部材101が取り付けられる。
【0063】
裏材40Bの上端には、着脱可能な取り付け材によってフック12が取り付けられる。着脱可能な取り付け材としては、安全バックルや面ファスナーなどが挙げられるが、これらに限られない。安全バックルは、所定の荷重が加わると係合が外れて二つに分離する取り付け材である。安全バックルを使用する場合には、一対のバックルのうち一方のバックルにベルトを通し、ベルトと裏材40Bを縫製する。他方のバックルはフック本体12Aにベルトを介して取り付けられる。安全バックルとしては、例えば株式会社マーゼンプロダクツ製のNPS-20等を使用することができる。
【0064】
面ファスナーを使用する場合、面ファスナーのフック面12Cが取り付けられ、このフック面12Cにフック12の面ファスナーのループ面12Bが取り付けられる。フック12のフック本体部12Aはカバー40から引き出されて露出する。
【0065】
フック12は着脱可能なフック取付部材(安全バックルやループ面12B及びフック面12Cを有する面ファスナー)によってカバー40に取り付けられているため、大きな力が加わったときにも安全に外れることができる。
【0066】
図12及び図13に示すように、浮袋50は、上端の辺が曲線をなすほぼ矩形の形状をなし、中心部分よりやや上方に首を通すための孔部20Hを有する。
【0067】
浮袋50は、浮袋50の左右方向の中間部に孔部20Hに接続し、下方に向かって上下方向に延び、浮袋50の下端において開放する浮袋間隙部50Cを有する。
【0068】
浮袋50は、互いに同形状の2枚の布を、内部の空気が漏れないように、例えばウレタンなどの熱可塑性樹脂のシートを挟み、溶着される。浮袋50の表側には、反射材205と、カバー40の取付ホック40Cと着脱可能に連結するカバー取付部材204と、浮袋50内に空気を入れる充填部材206と、が取り付けられる。
【0069】
充填部材206には、口に咥えて息を吹き込む吹き込み口206Aや、圧縮ガスを封入したボンベ206Bと水に濡れた場合や、引き紐206Dを引くなどして手動によって操作された場合にボンベからガスを浮袋50の内部に充填する充填機構206Cなどが含まれる。
【0070】
浮袋50の下端部の両端には、装着者が別途着用するフルハーネスの縦ベルト30と浮袋50とを連結するための連結ベルト201が設けられる。
【0071】
連結ベルト201は、端部に雌型連結具が設けられる雌型ベルト201Aと、端部に雄型連結具が設けられる雄型ベルト201Bと、を備える。
【0072】
浮袋50の下端部には、着用者の胴周りに取り付けられる胴ベルト202と、浮袋20と胴ベルト202とを連結する連結部材202Aが設けられる。
【0073】
フルハーネスを装着した着用者が救命胴衣2を着用した状態は、胴部11Bに間隙部11Cがある以外は図6及び図7に示す状態と同様である。
【0074】
救命胴衣2の着用者は、最初にフック本体部12AをD環32に取り付け、救命胴衣2の首穴10Hに首を通し、胴部11Bが胸から胴に掛けて位置するように救命胴衣2を着用する。
【0075】
さらに、左右の連結ベルト201をフルハーネスの左右それぞれの縦ベルト30に掛けまわして取り付ける。そして、胴ベルト202を胴の周りに掛けまわす。
【0076】
本実施形態の救命胴衣2は、胴部11Bの左右方向の幅の長さW3が、着用者が別途着用するフルハーネスの左右の縦ベルト30の間の長さWGより小さい。
【0077】
従って、救命胴衣2は縦ベルト30の上に被さらず、縦ベルト30に安全フック33Aを端部に有するランヤード33が接続された場合にも、ランヤード33とも物理干渉を起こさない。連結ベルト201を縦ベルト30に取り付ける場合にも、救命胴衣2をまくり上げることなどをせずに、迅速に取り付けることができる。
【0078】
またさらに、救命胴衣2は作業をする場合にも両腕に当たることがないため、作業の邪魔にならない。
【0079】
加えて、本実施形態の救命胴衣2は間隙部11Cが設けられているため、着用がさらに容易になる。
【0080】
浮袋50が膨らんだ状態は、浮袋間隙部50Cがある以外は、図8に示す状態と同様である。
【0081】
浮袋50が膨らむと膨脹する力によってカバー40の表材40Aと裏材40Bとを接続していた縁部取付部材102は引きはがされる。さらに、着用者が落下してフルハーネスが吊り上げられ、着用者の首に大きな力が加わった場合にも、フック12は着脱可能なフック取付部材(安全バックルやループ面12B及びフック面12Cを有する面ファスナー)によってカバー10に取り付けられているため、フック12も外れ、首が締め付けられることもない。
【0082】
そして、カバー40は浮袋50とは縫い合わされておらず、カバー取付部材204は着脱可能であるため、カバー40は浮袋50から分離して外すことができる。
【0083】
なお、本実施形態の救命胴衣2は、従来の救命胴衣が有していた襟部の上端部から背中を経由して着用者の背後の胴ベルトに連結する背ベルトを有していない。
【0084】
従って、この点においても本実施形態の救命胴衣2は着用がさらに容易である。
【0085】
以上述べたように、本実施形態の救命胴衣2は、首を通すための首穴10Hを有する襟部11A及び襟部11Aの下方に配置され、着用した場合に胸から胴の部分に位置し、左右方向の幅の長さW3が、着用者が別途着用するフルハーネスの左右の縦ベルト30の間の長さWGより小さいく、左右方向の中間部に首穴10Hに接続し、下方に向かって上下方向に延び、下端において開放する間隙部11Cを有する胴部11Bを有するカバー40と、カバー40の内部に収納され、中心部分よりやや上方に首を通すための孔部20H、左右方向の中間部に孔部20Hに接続し、下方に向かって上下方向に延び、下端において開放する浮袋間隙部50C、縦ベルト30に連結する連結ベルト201、着用者の腰周りに掛けまわされる腰ベルト34、及び内部に空気を充填する充填部材206を有する浮袋50と、を備える。
【0086】
従って、本実施形態の救命胴衣2は、着用者が別途装着するフルハーネスの縦ベルト30と物理干渉を起こさず、フルハーネスを着用していてもさらに容易に着用できるという効果がある。
【符号の説明】
【0087】
1 救命胴衣
2 救命胴衣
10 カバー
10A 表材
10B 裏材
10C 取付ホック
10H 首穴
11A 襟部
11B 胴部
11C 間隙部
12 フック
12A フック本体部
12B ループ面
12C フック面
20 浮袋
20H 孔部
30 縦ベルト
31 背ベルト
32 リング
33 ランヤード
33A 安全フック
34 腰ベルト
35 脚ベルト
40 カバー
40A 表材
40B 裏材
40C 取付ホック
50 浮袋
50C 浮袋間隙部
101 補強部材
102 縁部取付部材
103 反射材
201 連結ベルト
201A 雌型ベルト
201B 雄型ベルト
202 胴ベルト
202A 連結部材
204 カバー取付部材
205 反射材
206 充填部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13