(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 99/00 20190101AFI20221013BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20221013BHJP
【FI】
G06N99/00 180
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2022086455
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2022-06-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517255566
【氏名又は名称】株式会社エクサウィザーズ
(72)【発明者】
【氏名】小野 晃司
(72)【発明者】
【氏名】冨田 茂
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/088185(WO,A1)
【文献】特許第6842731(JP,B1)
【文献】特開2020-166749(JP,A)
【文献】特開2020-30683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 99/00
G06N 20/00
G16C 20/70
G06F 30/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
複数の原材料からなる物質における当該原材料の情報を説明変数として取得するステップと、
前記説明変数の入力に対して前記物質の予測物性を目的変数として出力するよう機械学習された学習モデルへ前記説明変数を入力するステップと、
前記学習モデルが出力する前記目的変数の情報を取得するステップと、
取得した前記目的変数のうち所定の予測物性が得られる前記目的変数に対応した前記説明変数を候補変数として複数取得するステップと、
複数の前記候補変数に対応しかつ前記目的変数を取得するために必要な情報以外の情報である関連情報を複数取得するステップと、
取得した前記関連情報の最適化解析により所定の条件に一致する前記候補変数を取得するステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項2】
前記最適化解析は、ベイズ最適化、モンテカルロ法、マルコフ連鎖モンテカルロ法及び強化学習のうち1以上のブラックボックス最適化の手法を用いる、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記関連情報は、前記原材料ごとのコスト情報とされている、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
複数の原材料からなる物質における当該原材料の情報を説明変数として取得するステップと、
前記説明変数の入力に対して前記物質の予測物性を目的変数として出力するよう機械学習された学習モデルへ前記説明変数を入力するステップと、
前記学習モデルが出力する前記目的変数の情報を取得するステップと、
取得した前記目的変数のうち所定の予測物性が得られる前記目的変数に対応した前記説明変数を候補変数として複数取得するステップと、
複数の前記候補変数に対応しかつ前記目的変数を取得するために必要な情報以外の情報である関連情報を複数取得するステップと、
取得した前記関連情報の最適化解析により所定の条件に一致する前記候補変数を取得するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、新規物質、代替物質の研究、開発などを行う際に、データマイニング等の情報処理技術を組み合わせて効率的に物質探索を行うマテリアルズ・インフォマティクスに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術文献に開示された方法の場合、作製装置が実際に作成した試料の物質を測定し、当該測定結果である所定数の試料の作製条件と物性値とを含むデータセットからベイズ最適化を行い、物性値を最適化する試料の作製条件を推定する。ところで、一般的に最適化を行う際には、データセットを多く取得することが精度を高める上で望ましい。しかしながら、最適化を行うために必要なデータセットを作製装置や実験などにより実際に作製した物質を測定した結果から得るには時間とコストが必要となる。したがって、最適化を効率良く行うには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、最適化を効率良く行うことができる情報処理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態にかかる情報処理方法は、情報処理装置が実行する情報処理方法であって、複数の原材料からなる物質における当該原材料の情報を説明変数として取得するステップと、前記説明変数の入力に対して前記物質の予測物性を目的変数として出力するよう機械学習された学習モデルへ前記説明変数を入力するステップと、前記学習モデルが出力する前記目的変数の情報を取得するステップと、取得した前記目的変数のうち所定の予測物性が得られる前記目的変数に対応した前記説明変数を候補変数として複数取得するステップと、複数の前記候補変数に対応しかつ前記目的変数を取得するために必要な情報以外の情報である関連情報を複数取得するステップと、取得した前記関連情報の最適化解析により所定の条件に一致する前記候補変数を取得するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態によれば、最適化を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るサーバ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るユーザ端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るサーバ装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】説明変数及び目的変数の一例を示す説明図である。
【
図7】情報処理システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0010】
<システム概要>
まず、本実施形態に係る情報処理システムの概要について説明する。本実施形態に係る情報処理システムは、所定の物性値を満たしかつ複数の原材料から成る錠剤を作製する場合におけるコストを最小化する原材料の組み合わせ候補を提示するためのシステムである。つまり、本システムは「物性値」に該当する変数を制約条件にした上で、「コスト」に該当する変数を最適化するシステムである。情報処理システムは、薬剤や食品等の開発において利用することができる。
【0011】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る情報処理システム10は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続された、情報処理装置としてのサーバ装置12と、ユーザ端末14と、を備える。ネットワークNは、例えば、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、インターネット、公衆回線網、モバイルデータ通信網、又はこれらの組み合わせである。
【0012】
サーバ装置12は、入力された情報に基づいて錠剤の原材料の組み合わせ候補を算出する情報処理装置(コンピュータ)の一例である。サーバ装置12は、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末、マイクロコンピュータ、又はこれらの組み合わせであってもよい。サーバ装置12について、詳しくは後述する。
【0013】
ユーザ端末14は、情報処理システム10が提示する原材料の組み合わせ候補を参照するユーザUが利用する情報処理装置の一例である。ユーザ端末14は、ユーザUによる原材料に関する情報(以下、単に「原材料情報」と称する。)、関連情報(詳細は後述する)及び所望する所定の物性値の情報の入力を受け付けかつ当該情報を、ネットワークNを介してサーバ装置12へ送信する。また、ユーザ端末14は、ネットワークNを介してサーバ装置12から原材料の組み合わせ候補に関する情報を取得する。ユーザUは、ユーザ端末14が取得した情報を、ユーザ端末14の表示装置で表示して閲覧する。ユーザ端末14は、PC、スマートフォン、又はタブレット端末であるが、これに限られない。ユーザUは、情報処理システムの管理者、情報処理システムが導入された事業所の従業者であるが、これに限られない。
【0014】
<ハードウェア構成>
次に、サーバ装置12のハードウェア構成について説明する。
図2は、サーバ装置12のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、サーバ装置12は、バスBを介して相互に接続された、プロセッサ16と、メモリ18と、ストレージ20と、通信I/F22と、を備える。
【0015】
プロセッサ16は、ストレージ20に記憶されたプログラムをメモリ18に展開して実行することにより、サーバ装置12の各構成を制御し、サーバ装置12の機能を実現する。プロセッサ16が実行するプログラムは、OS(Operating System)及びコスト最適化プログラムを含むが、これに限られない。プロセッサ16がコスト最適化プログラムを実行することにより、本実施形態に係る情報処理方法が実現される。プロセッサ16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はこれらの組み合わせである。なお、上述したコスト最適化プログラムが、請求項4に記載の「プログラム」に相当する。
【0016】
メモリ18は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はこれらの組み合わせである。ROMは、例えば、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、又はこれらの組み合わせである。RAMは、例えば、DRAM(Dynamic RAM)、SRAM(Static RAM)、MRAM(Magnetoresistive RAM)、又はこれらの組み合わせである。
【0017】
ストレージ20は、OS、コスト最適化プログラム、及び各種のデータを記憶する。ストレージ20は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、SCM(Storage Class Memories)、又はこれらの組み合わせである。
【0018】
通信I/F22は、サーバ装置12を、ネットワークNを介して、ユーザ端末14を含む外部装置に接続し、通信を制御するためのインタフェースである。通信I/F22 は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Ethernet(登録商標)、又は光通信(例えば、Fibre Channel)に準拠したアダプタであるが、これに限られない。
【0019】
次に、ユーザ端末14のハードウェア構成について説明する。
図3は、ユーザ端末14のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3に示すように、ユーザ端末14は、バスBを介して相互に接続された、プロセッサ16と、メモリ18と、ストレージ20と、通信I/F22と、ユーザI/F24と、を備える。
【0020】
ユーザI/F24は、ユーザ端末14における各種情報の入力及び出力を行うためのインタフェースである。具体的には、入力を行う装置として例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、マイク、スキャナ、カメラ、各種センサ、操作ボタン、又はこれらの組み合わせである。また、出力を行う装置として例えば、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、スピーカ、バイブレータ、又はこれらの組み合わせである。
【0021】
なお、本実施形態において、コスト最適化プログラムは、サーバ装置12の製造段階でメモリ18又はストレージ20に書き込まれてもよいし、ネットワークNを介してサーバ装置12に提供されてもよいし、図示しないディスクメディアなどの非一時的でコンピュータ読み取り可能な記録媒体を介してサーバ装置12に提供されてもよい。
【0022】
<機能構成>
次に、サーバ装置12の機能構成について説明する。
図4は、サーバ装置12の機能構成の一例を示す図である。
図4に示すように、サーバ装置12は、通信部30と、記憶部32と、制御部34と、を備える。
【0023】
通信部30は、通信I/F22により実現される。通信部30は、ネットワークNを介して、ユーザ端末14との間で情報の送受信を行う。通信部30は、ユーザ端末14から入力された情報を受信する。また、通信部30は、ユーザ端末14に対して原材料の組み合わせ候補等の情報を送信し、ユーザ端末14からユーザUによるリクエストを受信する。
【0024】
記憶部32は、メモリ18及びストレージ20により実現される。記憶部32には、学習モデル36と、原材料情報38と、所望処方情報40と、が格納される。
【0025】
学習モデル36は、説明変数としての原材料情報38の入力に対して、当該原材料からなる錠剤の予測物性を目的変数として出力するように予め機械学習された学習済みの学習モデルである(
図5も参照)。つまり、学習モデル36は、原材料情報38の入力に対して、これと因果関係が見出せる予測物性の出力が可能とされている。学習モデル36の学習処理及び再学習処理は、例えば、サーバ装置12により行われるが、これに限られない。学習モデル36の学習処理及び再学習処理は、サーバ装置12以外の他の装置で行われ、サーバ装置12に提供されてもよい。学習モデル36は、例えば、DNN(Deep Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、CNN(Convolutional Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)等のニューラルネットワークであるが、これに限られない。学習モデル36は、決定木、SVM(Support Vector Machine)等の学習モデルであってもよい。また、学習モデル36の学習方法は、例えば、勾配降下法、確率的勾配降下法、又は誤差逆伝播法であるが、これに限られない。
【0026】
原材料情報38は、
図5に示されるように、錠剤を構成する複数の原材料ごとの成分、物性及び構造の少なくとも一方を含む情報とされている。また、本実施形態では、説明変数として製法パラメータが含まれている。具体的には、製法パラメータでは、原材料の混合等を行う装置の機種情報、混合時の容積情報及び原材料の仕込み量の少なくとも一つが含まれている。
【0027】
予測物性は、入力された原材料情報38から生成される錠剤の硬度、崩壊時間、溶出率、純度、定量、質量偏差、含量均一性及び保存安定性の少なくとも一つについて予測された情報とされている。
【0028】
図4に示されるように、所望処方情報40は、生成された錠剤においてユーザUが所望する所定の物性値の情報とされている。本実施形態では、一例として、ユーザUが所望する硬度を所定の硬度として取得している。
【0029】
制御部34は、プロセッサ16がメモリ18からプログラムを読み出して実行し、他のハードウェア構成と協働することにより実現される。制御部34は、サーバ装置12の動作全体を制御する。制御部34は、取得部42と、算出部44と、出力部46と、を備える。
【0030】
取得部42は、ユーザ端末14に入力された情報から、原材料情報38を取得し、記憶部32に格納する。取得部42は、文字情報、画像など各種形態の原材料情報38の取得が可能とされている。
【0031】
また、取得部42は、ユーザ端末14に入力された情報から、関連情報を取得し、記憶部32に格納する。関連情報とは、学習モデル36から目的変数を取得するために必要となる説明変数以外の情報であり、具体的には、目的変数である予測物性との因果関係が見出し難い情報である原材料のコスト情報、環境負荷情報、入手難易度情報等が該当する。本実施形態では、一例として、関連情報は原材料ごとのコスト情報とされている(
図6(b)参照)。
【0032】
さらに、取得部42は、ユーザ端末14に入力された情報から、ユーザUが所望する所定の物性値の情報を取得し、記憶部32に格納する。
【0033】
取得部42は、学習モデル36を利用して錠剤の物性を予測する。すなわち、取得部42が取得した原材料情報38及び製法パラメータを学習モデル36へ入力することで、原材料からなる錠剤の物性を予測する。本実施形態では、一例として、錠剤の硬度を含む物性を予測する(
図6(a)参照)。
【0034】
また、取得部42は、学習モデル36を利用して取得した錠剤の予測される硬度の情報のうち、ユーザUが所望する所定の硬度が得られる説明変数を候補変数として複数取得する(
図6(b)参照)。すなわち、取得部42は、学習モデル36の出力により所定の硬度(目的変数)が得られると予測される錠剤に対応する原材料情報38(説明変数)を取得する。なお、当該原材料情報38が請求項1記載の「候補変数」に相当する。そして、取得部42は、当該候補変数(原材料情報38)に対応しかつ所定の硬度を得るために必要な情報(原材料情報38)以外の情報である関連情報(原材料ごとのコスト情報)を複数取得する。
【0035】
算出部44は、取得部42が取得した関連情報の最適化処理を行う。具体的には、算出部44は、ブラックボックス最適化処理におけるベイズ最適化を行い、原材料コストを最適化する錠剤の作製条件(原材料の仕込み量を含めた組み合わせ候補)を推定する。
図6(C)に、ベイズ最適化の処理内容の概念的なグラフを示す。横軸は候補変数(原材料の仕込み量を含めた組み合わせ候補)を、縦軸はコストを示す。なお、実際には3次元以上の多次元空間で探索を行うが、
図6(c)では便宜的に2次元のグラフで図示している。
【0036】
算出部44は、候補変数とこれに対応するコスト情報とがガウス分布に従うと仮定し、コストが最小となる点を探索する。すなわち、算出部44は、候補変数とこれに対応するコスト情報の分布から平均及び分散を推定し、ガウス過程を導出する。そして算出部44は、獲得関数(Acquisition function)と呼ばれる評価用の関数を用いて最適化を行い、コストが最小化する点(最適解)を探索する。 なお、算出部44は、事前に候補変数及びコスト情報の数値範囲の設定入力を受け付け、当該数値範囲で探索を行ってもよい。
【0037】
上記の処理により、算出部44は、最適と思われる候補変数、すなわちコストが最適となりかつ所定の硬度を満たす錠剤の作製条件(原材料の仕込み量を含めた組み合わせ候補)を推定する(
図6(d)参照)。換言すると、上記処理は、学習モデル36を利用して取得された予測物性を制約条件とした上でコストの最適化解析を実施することで、コストが最適となる原材料の組み合わせ候補を得ることができる。
【0038】
出力部46は、算出部44により推定された、コストが最適となりかつ所定の硬度を満たす錠剤の原材料の組み合わせ候補情報をユーザ端末14に出力する。これにより、ユーザUが当該組み合わせ候補情報を確認することが可能となる。
【0039】
以上のサーバ装置12の各機能構成は、上記の通り、ソフトウェアにより実現されてもよいし、ICチップ、SoC(System on Chip)、LSI(Large Scale Integration)、マイクロコンピュータ等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0040】
<フローチャート>
次に、本実施形態にかかる情報処理システムが実行する処理について説明する。
図7は、情報処理システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサ16がメモリ18又はストレージ20から本実施形態に係るコスト最適化プログラムを読み出し、メモリ18に展開して実行することにより、本実施形態に係るコスト最適化プログラムに基づく処理が行われる。
【0041】
プロセッサ16は、ユーザUが所望する所定の物性値の情報を取得する(ステップ100)と共に、原材料情報38を取得する(ステップ102)。そして、プロセッサ16は、原材料情報38を学習モデル36へ入力し(ステップ104)、学習モデル36から出力される予測物性情報を取得する(ステップ106)。
【0042】
プロセッサ16は、所望する所定の硬度(目的変数)が得られると予測される錠剤に対応する原材料情報38、すなわち候補変数を複数取得したか否かを判定する(ステップ108)。候補変数を複数取得していない場合(ステップ108:NO)、プロセッサ16は、ステップ106へ処理を移行する。一方、候補変数を複数取得した場合(ステップ108:YES)、プロセッサ16は、当該候補変数に対応したコスト情報を取得する(ステップ110)。
【0043】
プロセッサ16は、ベイズ最適化処理を行うことでコストが最適となりかつ所定の硬度を満たす錠剤の作製条件(原材料の仕込み量を含めた組み合わせ候補)を推定し(ステップ112)、当該推定結果がユーザ端末14に表示されるように出力する(ステップ114)。
【0044】
プロセッサ16は、ユーザ端末14から処理の終了指示を取得したか否かを判定する(ステップ116)。終了指示を取得していない場合(ステップ116:NO)、プロセッサ16は、ステップ100へ処理を移行する。一方、終了指示を取得した場合(ステップ116:YES)、プロセッサ16は、コスト最適化プログラムに基づく処理を終了する。
【0045】
<本実施形態の作用・効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0046】
本実施形態によれば、説明変数(原材料情報38)を学習モデル36へ入力することで出力される目的変数(物性値)から候補変数を取得して当該候補変数に対応する関連情報の最適化解析により所定の条件(コストの最適化)に一致する候補変数を取得する。つまり、最適化解析を行うに際して、学習モデル36から得られた目的変数を基に最適化解析を行うことができる。したがって、実際に作製した物質を測定してデータセットを得る場合と比べて容易にデータセットを得ることができる。これにより、最適化を効率良く行うことができる。また、実際に原材料を組み合わせて錠剤を作製した上でデータセットを得る場合と比べて、最適化解析の条件に応じてデータセットを素早く追加することができる。これにより、最適化解析を含めた処理の時間短縮を図ることができる。
【0047】
また、サーバ装置12は、最適化解析のうちベイズ最適化の手法を行うことで、簡易な処理でコストの最適化を行うことができる。また、サーバ装置12の計算量(探索回数)を削減することができる。
【0048】
さらに、関連情報は、原材料ごとのコスト情報とされていることから、物性値を目的変数とする場合において、コストが最小となる原材料情報38を推測することができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、最適化解析のうちベイズ最適化の手法が用いられているが、これに限らず、モンテカルロ法、マルコフ連鎖モンテカルロ法及び強化学習等の他の手法により最適化解析が行われてもよい。
【0050】
また、関連情報はコスト情報とされているが、これに限らず、前述したように環境負荷情報(二酸化炭素の排出量等)や入手難易度情報などであってもよく、これ以外にも特定の物質(塩分やプリン体等)の含有量など、他の情報であってもよく、これらの組み合わせでもよい。
【0051】
さらに、本実施形態の情報処理システム10は、複数の原材料から成る錠剤を作製する場合に適用されているが、これに限らず、複数の原材料から成る錠剤以外の物質を作成する場合に適用してもよい。また、所定の物性値以外の条件を満たしかつ複数の原材料から成る部室を作製する場合における所定の条件にて最適化された原材料の組み合わせ候補を提示するためのシステムであってもよい。
【0052】
<付記>
本実施形態は、以下の開示を含む。
【0053】
(付記1)
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
複数の原材料からなる物質における当該原材料の情報を説明変数として取得するステップと、
前記説明変数の入力に対して前記物質の予測物性を目的変数として出力するよう機械学習された学習モデルへ前記説明変数を入力するステップと、
前記学習モデルが出力する前記目的変数の情報を取得するステップと、
取得した前記目的変数のうち所定の予測物性が得られる前記説明変数を候補変数として複数取得するステップと、
複数の前記候補変数に対応しかつ前記目的変数を取得するために必要な情報以外の情報である関連情報を複数取得するステップと、
取得した前記関連情報の最適化解析により所定の条件に一致する前記候補変数を取得するステップと、
を有する情報処理方法。
【0054】
(付記2)
前記最適化解析は、ベイズ最適化、モンテカルロ法、マルコフ連鎖モンテカルロ法及び強化学習のうち1以上の手法によるブラックボックス最適化の手法を用いる、
付記1に記載の情報処理方法。
【0055】
(付記3)
前記関連情報は、前記原材料ごとのコスト情報とされている、
付記1又は付記2に記載の情報処理方法。
【0056】
(付記4)
複数の原材料からなる物質における当該原材料の情報を説明変数として取得するステップと、
前記説明変数の入力に対して前記物質の予測物性を目的変数として出力するよう機械学習された学習モデルへ前記説明変数を入力するステップと、
前記学習モデルが出力する前記目的変数の情報を取得するステップと、
取得した前記目的変数のうち所定の予測物性が得られる前記説明変数を候補変数として複数取得するステップと、
複数の前記候補変数における前記目的変数を取得するために必要な情報以外の情報である関連情報を複数取得するステップと、
取得した前記関連情報の最適化解析により所定の条件に一致する前記候補変数を取得するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0057】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
12 サーバ装置(情報処理装置)
36 学習モデル
38 原材料情報(原材料の情報)
【要約】 (修正有)
【課題】最適化を効率良く行う情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】ネットワークを介して接続された情報処理装置としてのサーバ装置と、ユーザ端末と、を備える情報処理システムにおいて、情報処理装置が実行する情報処理方法は、複数の原材料からなる物質における当該原材料の情報を説明変数として取得するステップと、説明変数の入力に対して物質の予測物性を目的変数として出力するよう機械学習された学習モデルへ、説明変数を入力するステップと、学習モデルが出力する目的変数の情報を取得するステップと、取得した目的変数のうち所定の予測物性が得られる目的変数に対応した説明変数を候補変数として複数取得するステップと、複数の候補変数に対応し、かつ、目的変数を取得するために必要な情報以外の関連情報を複数取得するステップと、取得した関連情報の最適化解析により所定の条件に一致する候補変数を取得するステップと、を含む。
【選択図】
図7