(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】食品洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A23N 12/02 20060101AFI20221013BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A23N12/02 N
B08B3/08 Z
(21)【出願番号】P 2018069236
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591161829
【氏名又は名称】株式会社ネスター
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川越 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 喜智
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 麻利子
(72)【発明者】
【氏名】小山 聡
(72)【発明者】
【氏名】古川 修三
(72)【発明者】
【氏名】金森 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 邦彦
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/166862(WO,A1)
【文献】特開平09-289883(JP,A)
【文献】特開平03-297372(JP,A)
【文献】特開2017-192380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/02
B08B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌または除菌成分を有する洗浄水を用いて食品を洗浄する洗浄装置であって、
底壁部および側壁部を有し、内部に洗浄水が貯められる洗浄タンクと、
前記洗浄タンクの底壁部に設けられた排水口から取水した洗浄水を、前記洗浄タンクの側壁部に設けられた戻し口から、前記洗浄タンク内に戻す循環経路とを備え、
前記洗浄タンク内には、被洗浄物である食品を収容するカゴが配置され、
前記側壁部は、上方から見て前記排水口に近い第1領域と前記排水口から遠い第2領域とを有しており、
前記戻し口は、
前記側壁部の前記第1領域と前記カゴの側面との間に前記第1領域に沿う水流を生じさせるように、前記第2領域
であって前記カゴに対面しない位置に設けられる、食品洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄タンクの前記側壁部は、4つの側壁を有する角筒形状であり、
前記戻し口は、前記側壁部の角部に設けられる、請求項1に記載の食品洗浄装置。
【請求項3】
前記側壁部には前記戻し口が2個設けられており、
前記2個の戻し口は、前記側壁部の対角位置に配置されている、請求項2に記載の食品洗浄装置。
【請求項4】
前記戻し口の高さは、満水レベルの1/3以上1/2以下である、請求項1~
3のいずれかに記載の食品洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌または除菌成分を有する洗浄水を用いて食品を洗浄する食品洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微酸性電解水など、殺菌または除菌成分を有する洗浄水を用いて、青果などの食品を洗浄する食品洗浄装置が存在する。
【0003】
たとえば特開2016-63760号公報(特許文献1)では、洗浄タンクに水道水を供給する供給経路と、途中位置に循環ポンプを有し、洗浄タンクに両端が接続された循環経路とを備えた食品洗浄装置が開示されている。この洗浄装置では、循環経路から分岐する分岐経路に電気分解装置を設けている。
【0004】
また、洗浄タンク内の食品の洗い残しを防ぐために、特許第4567808号公報(特許文献2)には、気泡による曝気と水流が洗浄水槽の全体に亘って均一に分散するように、気泡を含んだ洗浄水を洗浄水槽の底部から噴射させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-63760号公報
【文献】特許第4567808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微酸性電解水などの電解水を用いることで、食品に付着した有機物(汚れ、細菌類)を除去し、食品を殺菌または除菌することができる。しかし、洗浄タンク内において電解水の動きが十分でない場合には、局所的に有効塩素成分が消費され、局所的に濃度が低下する現象が生じる。また、電解水の動きが少ない場合、食品表面(微生物等の付着物を含む)に電解水が十分に接触しない個所が生じる可能性がある。これらの要因から、洗浄タンク内での水流を確保しなければ、食品を十分に殺菌または除菌できないおそれがある。
【0007】
特許文献1の食品洗浄装置では、循環経路の戻し口が洗浄タンクの側壁の満水レベル以下の位置に設けられている。この場合、戻し口から吐出される水によって洗浄タンク内に貯められた電解水に水流を生じさせることができる。しかしながら、単に、側壁の戻し口から電解水を吐出するだけでは、電解水の動きが部分的にしか生じないケースがある。
【0008】
特許文献2の構成では、洗浄水槽の底部から気泡を含んだ洗浄水を噴射させることにより生じる曝気と水流とで食品を下から煽って上下に浮沈させることで、被洗浄物を洗浄する。しかし、このような構成では、食品を傷めてしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、食品を傷めることなく、効果的に殺菌または除菌することのできる食品洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従う食品洗浄装置は、殺菌または除菌成分を有する洗浄水を用いて食品を洗浄する洗浄装置であって、底壁部および側壁部を有し、内部に洗浄水が貯められる洗浄タンクと、洗浄タンクの底壁部に設けられた排水口から取水した洗浄水を、洗浄タンクの側壁部に設けられた戻し口から、洗浄タンク内に戻す循環経路とを備える。側壁部は、上方から見て排水口に近い第1領域と排水口から遠い第2領域とを有しており、戻し口は、側壁部の第1領域に沿う水流を生じさせるように、第2領域に設けられる。
【0011】
好ましくは、洗浄タンクの側壁部は、4つの側壁を有する角筒形状であり、戻し口は、側壁部の角部に設けられる。
【0012】
側壁部には戻し口が2個設けられていてもよい。その場合、2個の戻し口は、側壁部の対角位置に配置されていることが望ましい。
【0013】
洗浄タンク内には、被洗浄物である食品を収容するカゴが配置される。その場合、戻し口は、カゴに対面しない位置に設けられることが望ましい。
【0014】
好ましくは、戻し口の高さは、満水レベルの1/3以上1/2以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食品を傷めることなく、効果的に殺菌または除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の外観を示す図であり、(A)~(C)はそれぞれ、食品洗浄装置の正面図、側面図、上面図を示す。
【
図2】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の配管構成例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における洗浄タンクを模式的に示す外観斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の基本動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態における除菌洗浄処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態におけるすすぎ処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態における戻し口の配置位置を示す図であり、(A)~(C)はそれぞれ、洗浄タンクの上面図、縦断面図、側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
(基本構成について)
はじめに、
図1~
図3を参照して、本実施の形態に係る食品洗浄装置1の基本構成について説明する。なお、
図1(A)には食品洗浄装置1の正面図、
図1(B)には食品洗浄装置1の側面図、
図1(C)には食品洗浄装置1の上面図が示されている。
【0019】
食品洗浄装置1は、たとえば立方体形状の筐体90と、筐体90に設けられた洗浄タンク10とを備えている。洗浄タンク10は、たとえば、平面視矩形状の水槽であり、略矩形形状の底壁部31と、底壁部31の四辺それぞれに下端が連結された4つの側壁32a~32dとを有している。これら側壁32a~32dにより角筒形状の側壁部32が構成されている。
【0020】
本実施の形態では、筐体90の上面91には蓋がなく、シンクのように洗浄タンク10が露出している。洗浄タンク10には、被洗浄物としての食品を収納するカゴ11が設置される。カゴ11も、たとえば平面視矩形状であり、略矩形形状の底面と、底面の四辺それぞれに下端が連結された4つの側面とを有している。これら側面により角筒形状の側面部が構成されている。カゴ11は、たとえば網状またはメッシュ状に形成され、各面には水を通過させるための複数の孔が設けられる。
【0021】
筐体90の上面91には、洗浄タンク10に水道水を上方から供給するための給水管25が設置されている。筐体90の前面92には開閉扉が設けられており、内部の点検等が可能となっている。筐体90の背面93側には、上面91よりも上に立ち上がる立壁部94が設けられており、立壁部94の表面に操作表示部74が設けられている。
【0022】
図2に示されるように、食品洗浄装置1は、基本の配管構成として、電解水の給水経路21と、水道水の給水経路24と、排水経路22と、循環経路23とを有している。
【0023】
電解水の給水経路21は、洗浄タンク10の給水口12に接続されている。給水経路21上には、制御装置によって開閉制御される給水バルブ21aが設けられている。給水バルブ21aが開状態のとき、殺菌作用を有する電解水が給水経路21を介して洗浄タンク10に供給される。給水経路21を介して供給される電解水は、たとえば40mg/kg程度の有効塩素濃度の微酸性電解水である。給水口12は、洗浄タンク10の側壁部32に設けられている。
【0024】
水道水の給水経路24は、洗浄タンク10に直接接続されず、給水経路24の一部(下流側端部)が、上記給水管25により構成されている。給水経路24上には、制御装置によって開閉制御される給水バルブ24aが設けられている。給水バルブ24aが開状態のとき、水道水が給水経路24を介して洗浄タンク10に給水される。給水管25の先端の給水口25aは、洗浄タンク10の上方に位置し、給水口25aから洗浄タンク10に水道水が流下する。
【0025】
排水経路22は、洗浄タンク10の排水口13に接続されている。排水経路22上には、制御装置によって開閉制御される排水バルブ22aが設けられている。排水バルブ22aが開状態のとき、洗浄タンク10内の電解水が排水経路22を介して排水される。排水口13は、洗浄タンク10の底壁部31に設けられている。
【0026】
循環経路23は、排水経路22から分岐し、洗浄タンク10の戻し口14に接続されている。循環経路23は、途中位置に循環ポンプ23aを有している。排水バルブ22aが閉状態で、かつ、循環ポンプ23aがONのとき、洗浄タンク10内の電解水が循環経路23を介して循環する。戻し口14は、側壁部32に設けられている。なお、循環経路23は、排水経路22とは独立して設けられていてもよい。つまり、排水経路22に接続される排水口と、循環経路23に接続される排水口とが、個別に設けられていてもよい。
【0027】
本実施の形態では、洗浄タンク10の側壁部32には、給水口12および戻し口14より上方に位置する、オーバーフロー水用の切欠き部34が設けられている。切欠き部34は、満水レベル付近が底辺となるように略U字状に形成されている。満水レベル付近とは、満水レベルと同じ高さか、満水レベルとの差がたとえば10mm以下の高さである。
【0028】
筐体90の上面91には、この切欠き部34に連なるように凹部が形成されている。この凹部は、オーバーフロー水を受ける受水室40として機能し、この受水室40に、オーバーフロー水を外部に排水するための排水口、すなわちオーバーフロー口15が設けられている。
図2に示されるように、オーバーフロー口15は排水経路26の一端に接続されている。排水経路26の他端は、上述の排水経路22に接続されていてもよい。
【0029】
受水室40は、切欠き部34の下端と同じ高さ(またはそれよりも下)に位置する底面41と、底面41から上方に立ち上がる立上り面42とを有している。つまり、底面41は、満水レベル付近の高さに位置する。オーバーフロー口15は、受水室40の底面41に設けられていることが望ましい。これにより、食品の洗浄期間において満水レベルを超えた電解水(オーバーフロー水)が、切欠き部34から、洗浄タンク10に隣接して配置された受水室40へ流れ、受水室40のオーバーフロー口15を介して下方へ排水される。
【0030】
本実施の形態の食品洗浄装置1は、側壁部32に設けられた循環経路23の戻し口14から供給される電解水によって洗浄タンク10内に水流を発生させ、その水流を利用して食品を効果的に洗浄する。戻し口14の配置形態については、後に詳述する。
【0031】
(機能構成および基本動作について)
次に、食品洗浄装置1の機能構成および基本動作について説明する。
【0032】
図4は、食品洗浄装置1の機能構成を示すブロック図である。食品洗浄装置1は、上記したバルブ21a,22a,24aおよび循環ポンプ23aに加え、水位センサ71,72と、濃度センサ73と、操作表示部74と、これらに電気的に接続された制御装置50とを備える。
【0033】
水位センサ71は、洗浄タンク10内の電解水の水位が第1水位に達したことを検知する。水位センサ72は、洗浄タンク10内の電解水の水位が第2水位に達したことを検知する。第1水位は第2水位よりも低い。以下、第1水位を「中レベル」、第2水位を「満水レベル」という。なお、満水レベルは、切欠き部34付近(つまりオーバーフロー口15付近)の高さであり、典型的には切欠き部34の底辺(下端位置)と略同じ高さである。中レベルは、典型的には満水レベルの1/2程度の高さである。
【0034】
本実施の形態では水位センサ71,72により水位レベルを検知することとするが、限定的ではなく、たとえば流量センサで水位レベルを検知してもよい。あるいは、時間制御により水位レベルを判断してもよい。
【0035】
濃度センサ73は、洗浄タンク10内の電解水の濃度を検知する。操作表示部74は、ユーザからの指示を受け付ける操作部と、洗浄モードなどの各種情報を表示するための表示部とを一体的に含む。操作表示部74には、食品の自動洗浄を開始するためのスタートボタンが含まれる。なお、操作部と表示部とが個別に設けられていてもよい。
【0036】
制御装置50は、各種演算処理を行う制御部51と、各種データおよびプログラムを記憶するための記憶部52と、計時動作を行う計時部53とを含む。制御部51は、たとえばCPU(Central Processing Unit)により実現される。
【0037】
図5は、食品洗浄装置1の基本動作を示すフローチャートである。なお、
図5に示す一連の食品洗浄処理は、制御装置50の制御部51が、記憶部52に予め記憶された食品洗浄プログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、食品洗浄処理が開始される前は、各バルブ21a,22a,24aは閉状態であり、循環ポンプ23aはOFFである。
【0038】
ユーザにより操作表示部74のスタートボタンが押下されて、自動運転開始の指示が入力されると(ステップS2にてYES)、はじめに除菌洗浄処理が実行される(ステップS3)。除菌洗浄処理については、
図6にサブルーチンを挙げて後に説明する。
【0039】
除菌洗浄処理が終わると、制御部51は、排水バルブ22aを開状態とし、排水処理を実行する(ステップS4)。これにより、洗浄タンク10内の電解水が、自重により排水口13から排水される。
【0040】
排水処理が終わると、すすぎ処理が実行される(ステップS5)。すすぎ処理については、
図7にサブルーチンを挙げて後に説明する。
【0041】
すすぎ処理が終わると、再び排水処理が実行される(ステップS6)。ここでの排水処理は、上記S4の排水処理と同様であってよい。以上で、自動洗浄処理が終了する。
【0042】
図6を参照して、除菌洗浄処理について説明する。制御部51は、給水バルブ21aを開状態とし、洗浄タンク10への電解水の給水を開始する(ステップS11)。これにより、洗浄タンク10内には、側壁部32に設けられた給水口12から電解水が供給される。
【0043】
その後、水位センサ71により洗浄タンク21内の電解水の水位が、中レベルと検知された場合(ステップS12にてYES)、制御部51は、循環ポンプ23aをONにし、循環ポンプ23aの駆動を開始する。これにより、洗浄タンク10内の電解水の循環が開始される(ステップS13)。すなわち、洗浄タンク10内の電解水が排水口13から取水され、取水された電解水が循環経路23を通過して、戻し口14から洗浄タンク10に戻される。
【0044】
さらに、水位センサ72により洗浄タンク10内の電解水の水位が、満水レベルと検知されると(ステップS15にてYES)、制御部51は、給水バルブ21aを閉状態とし、給水経路21からの電解水の給水を停止する(ステップS16)。これにより、洗浄タンク21内には、戻し口14から吐出される電解水による水流だけが生じる。
【0045】
給水を停止してからたとえば所定時間経過すると(ステップS17にてYES)、制御部51は、循環ポンプ23aをOFFにし、電解水の循環を停止する(ステップS18)。引き続き、排水バルブ22aを開状態とし、洗浄タンク10内の電解水を排水する(ステップS19)。なお、洗浄タンク10内の電解水は全量排水されるのではなく、一定量の電解水を残して排水されることが望ましい。
【0046】
電解水の排水が終わると、再びステップS11に戻り、除菌洗浄が完了したと判定されるまで、上記処理が繰り返される。除菌洗浄の完了は、予め設定された洗浄時間が経過したか否かにより判定されてもよい。あるいは、サイクルごとに濃度センサ73により検知される濃度の低下度合を検出し、電解水の濃度の低下度合が所定値未満となった場合に、除菌洗浄が完了したと判断してもよい。
【0047】
この場合、ステップS19で電解水を排水する前に除菌洗浄が完了したかを判定し、完了していれば(濃度の低下度合が所定値未満であれば)ステップS19に進み、完了していなければ(濃度の低下度合が所定値以上であれば)ステップS11に戻って上記処理を繰り返すようにしてもよい。一連の除菌洗浄処理が終了すると、処理はメインルーチンに戻される。
【0048】
電解水で青果を洗浄する場合、一般的には流水洗浄(かけ流し)されることが多いが、本実施の形態では循環経路23の戻り水の水流を利用して食品を洗浄するため、流水洗浄だけを行う食品洗浄装置に比べて節水効果がある。
【0049】
なお、本実施の形態では、電解水の給水のみが行われる給水期間、電解水の給水と電解水の循環とが並行して行われる並行期間、および、電解水の循環のみが行われる循環期間が、繰り返されることとしたが、繰り返されることなく1サイクルで終了してもよい。
【0050】
図7を参照して、すすぎ処理について説明する。制御部51は、給水バルブ24aを開状態とし、洗浄タンク10への水道水の給水を開始する(ステップS31)。すすぎ洗浄のための貯水運転では、水道水が、洗浄タンク10のたとえば中レベルまで供給される。
【0051】
水位センサ71により、洗浄タンク10内の洗浄水(より具体的には水道水)の水位が、中レベルに達したと検知された場合(ステップS32にてYES)、制御部51は、排水バルブ22aを開状態とし、定量排水を開始する(ステップS33)。これにより、水道水による食品の流水すすぎ洗浄が行われる。なお、すすぎ洗浄においても、洗浄水の循環処理を行ってもよい。洗浄水の循環処理は、水道水の供給とともに行われてもよいし、水道水の供給停止時に行われてもよい。
【0052】
食品のすすぎ運転は、所定時間(たとえば2分)行われる(ステップS34)。すすぎ運転が開始されてから所定時間経過したと判断された場合(ステップS34にてYES)、給水バルブ24aを閉状態とし、水道水の給水を停止する(ステップS35)。以上ですすぎ処理は終了し、処理はメインルーチンに戻される。
【0053】
なお、本実施の形態では、除菌洗浄処理の後にすすぎ処理が行われることとしたが、除菌洗浄処理とは独立して、すすぎ処理だけを実行可能としてもよい。これにより、除菌洗浄に向かない食品に対しては、水道水によるすすぎ洗浄だけを行うこともできる。
【0054】
また、本実施の形態の除菌洗浄処理では、満水レベルまで電解水を貯めて除菌洗浄を行うこととしたが、満水洗浄モードと少量洗浄モードとを設けて、少量洗浄モードにおいては、すすぎ処理と同様に中レベルまで電解水を貯めて除菌洗浄を行ってもよい。
【0055】
(戻し口の配置形態について)
図3および
図8を参照して、戻し口14の配置形態について説明する。なお、
図3において、矢印A1は洗浄タンク10の上方を示し、矢印A2は洗浄タンク10の正面方向(前方)を示している。
図8(A)は洗浄タンク10の上面図であり、
図8(A)には、洗浄タンク10内に生じる水平方向の水流が概念的に示されている。
図8(B)は洗浄タンク10を長辺方向(正面から見て左右方向)に沿って切断した縦断面図であり、
図8(B)には、洗浄タンク10内に生じる上下方向の水流が概念的に示されている。
図8(C)は洗浄タンク10の側面図である。なお、
図8(B)に示されるように、洗浄タンク10内には、2つのカゴ11(11a,11b)が左右に並んで配置されてもよい。
【0056】
洗浄タンク10の側壁部32は、正面側に位置する側壁32aと、正面から見て右側に位置する側壁32bと、背面側に位置して側壁32aに対面する側壁32cと、正面から見て左側に位置して側壁32bに対面する側壁32dとで構成される。正面および背面の側壁32a,32cの横幅の方が、左右の側壁32b,32dの横幅よりも大きい。
【0057】
図8(A)を参照して、側壁部32は、上方から見て排水口13に近い第1領域P2,P3と排水口13から遠い第2領域P1とを有している。戻し口14は、側壁部32の第1領域P2またはP3に沿う水平方向の水流を生じさせるように、第2領域P1に設けられる。
【0058】
本実施の形態では、排水口13が、底壁部31の中央部、すなわち、側壁部32から離れた位置に配置されているため、第2領域P1には、側壁部32の4つの角部C1~C4が含まれる。したがって、戻し口14は、側壁部32の角部C1~C4のいずれかに設けられることが望ましい。なお、
図1(C)に示されるように、排水口13は、いずれかの側壁に若干偏って配置されていてもよい。
【0059】
正面および背面の側壁32a,32cのうち、角部C1~C4を除く領域が、第1領域P2であり、左右の側壁32b,32dのうち、角部C1~C4を除く領域が、第1領域P3である。この場合、水平方向において、前者の第1領域P2の方が後者の第1領域P3よりも長い。この場合、戻し口14は、長い方の第1領域P2に沿って水流を生じさせるように、右側の側壁32bまたは左側の側壁32dに設けられることが望ましい。
【0060】
本実施の形態において、戻し口14は、2個設けられている。この場合、第1および第2の戻し口14a,14bは、対角位置にある角部C2,C4(またはC1,C3)に設けられる。第1の戻し口14aは、たとえば右側の側壁32bの角部C2に設けられ、第2の戻し口14bは、たとえば左側の側壁32dの角部C4に設けられている。このように、第1および第2の戻し口14a,14bは、互いに対面する側壁32b,32dに設けられることが望ましい。
【0061】
図8(B),(C)に示されるように、第1および第2の戻し口14a,14bの高さは略同じであり、中レベルL1付近、すなわち満水レベルL2の半分程度の高さである。具体的には、第1および第2の戻し口14a,14bは、中レベルL1と同じか、それよりも若干下の高さに設けられる。戻し口14a,14bの高さ(典型的には開口中心の高さ)は、満水レベルL2の1/3以上1/2以下であることが望ましい。
【0062】
なお、電解水用の給水口12は、たとえば、第1の戻し口14aと同様に、右側の側壁32bに設けられる。給水口12の高さは、戻し口14a,14bよりも高く、満水レベルL2付近である。具体的には、給水口12は、中レベルL1と満水レベルL2との間の高さに設けられてもよいし、満水レベルL2以上の高さに設けられてもよい。本実施の形態では、給水口12は側壁部32の角部C2に位置し、第1の戻し口14aの直上に配置される。
【0063】
図8(C)に示されるように、第1および第2の戻し口14a,14bは、カゴ11に対面しない位置に設けられる。言い換えると、第1および第2の戻し口14a,14bは、洗浄タンク10の内部空間のうち、カゴ11の外部領域に対面するように設けられる。これにより、戻し口14a,14bから吐出される電解水は、洗浄タンク10の側壁32a,32cとカゴ11の側面との間を流れるため、水流がカゴ11に干渉しない。したがって、戻し口14a,14bから吐出される電解水の水流の失活を防ぐことができる。
【0064】
なお、カゴ11自体の形状を単純な箱形とせず、たとえばカゴ11の側面を傾斜面にするなどして、戻し口14a,14bからの水流がカゴ11に干渉しないようにしてもよい。
【0065】
第1および第2の戻し口14a,14bが上述のような位置に配置されることにより、循環洗浄中に第1および第2の戻し口14a,14bから吐出される電解水の、洗浄タンク10内での滞留時間を長くすることができる。これにより、洗浄タンク10内の広い範囲に水流が行き渡るため、効果的に食品を洗浄することができる。
【0066】
具体的には、戻し口が、排水口13から近い第1領域P2またはP3に設けられる場合、吐出された電解水は対面する側壁に至る前に、排水口13から取水されてしまうのに対し、本実施の形態によれば、第1の戻し口14aから吐出された電解水は、
図8(A)の矢印F1で示されるように、側壁32cの際を真っ直ぐ流れて側壁32dに至った後に、円弧を描くように排水口13へと向かう。第2の戻し口14bから吐出される電解水も同様に、
図8(A)の矢印F2で示されるように、側壁32aの際を真っ直ぐ流れて側壁32bまで至った後に、円弧を描くように排水口13へと向かう。矢印F1,F2で示される戻し口14a,14bからの吐出流路は、排水口13の上を通過しない。したがって、電解水のショートサーキットを防ぐことができる。
【0067】
また、第1および第2の戻し口14a,14bが、側壁部32の対角位置に配置されているため、
図8(B)に示されるように、電解水は渦を巻くようにして排水口13に吸い込まれる。したがって、洗浄タンク10の内周に沿って流れる電解水の水平方向の水流と、洗浄タンク10の中央部分に生成される垂直方向の水流とによって、カゴ11内の食品を効率良く洗浄することができる。また、本実施の形態では、洗浄タンク10の底面(底壁部31)に水勾配が設けられているため、垂直方向の水流(渦流)をより効果的に生じさせることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、オーバーフロー水のための流路(切欠き部34)が設けられた側壁32bに直交(交差)する側壁32a,32cに沿って、戻し口14a,14bからの吐出水が流動する。したがって、仮に、戻し口14a,14bの高さが中レベルL1よりも高い位置であっても、戻し口14a,14bから吐出されたばかりの電解水が、すぐにオーバーフロー口15から排水される不具合を防止できる。
【0069】
また、本実施の形態では、給水口12も側壁部32の角部C2に設けられているため、電解水の給水と電解水の循環とが並行して行われる並行期間においては、より効果的に水流を生じさせることができる。
【0070】
以上より、本実施の形態に係る食品洗浄装置1によれば、洗浄タンク10内において水の動きが十分でない場合に起こり得る、局所的な濃度低下を防止することができる。また、洗浄タンク10内の有効塩素濃度の均一化を図ることができる。また、洗浄タンク10内に爆気を与えたり、激しい水流を生じさせたりする洗浄方法ではないため、洗浄中の食品の損傷を防止または抑制することができる。つまり、食品を傷めることなく優しく洗い上げることができる。
【0071】
また、本実施の形態では戻し口14a,14bが、中レベルL1以下の高さに設けられるため、少量洗浄モードにおいても効果的に食品を洗浄することができる。
【0072】
(変形例)
本実施の形態では、戻し口14の個数が2個である例を示したが、1個でもよいし3個以上であてもよい。戻し口14が1個の場合、給水口12と戻し口14とが、側壁部32の対角位置に配置されていてもよい。これにより、電解水の給水と電解水の循環とが並行して行われる並行期間においては、2個の戻し口14を設ける場合と同様の水流を生じさせることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、平面視において洗浄タンク10が長方形状であることとしたが、限定的ではなく、たとえば正方形状や円形状であってもよい。洗浄タンク10がたとえば円形状である場合、底壁部に位置する排水口13の位置を偏心させることにより、円筒形状の側壁部が、上方から見て排水口13に近い第1領域と排水口13から遠い第2領域とを有するように構成すればよい。
【0074】
なお、洗浄タンク10の形状に関わらず、戻し口14は、排水口13から遠い第2領域P1に設けられるとともに、戻し口14からの直線状の吐出流路(
図8の矢印F1,F2で示される流路)が、排水口13の上を通過しないような位置に設けられることが望ましい。
【0075】
本実施の形態において、電解水は微酸性電解水であることとしたが、限定的ではなく、アルカリ性の電解水であってもよい。あるいは、殺菌または除菌成分を有する洗浄水であれば、電解水でなくてもよい。また、すすぎ洗浄に用いられる水道水は、冷水であってもよいし、たとえば50℃程度の温水であってもよい。また、すすぎ洗浄に用いられる洗浄水は、水道水に限定されず、たとえば野菜の鮮度向上を目的として用いられる機能水であってもよい。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1 食品洗浄装置、10 洗浄タンク、11 カゴ、12 給水口、13 排水口、14,14a,14b 戻し口、15 オーバーフロー口、21,24 給水経路、22 排水経路、23 循環経路、25 給水管、31 底壁部、32 側壁部、34 切欠き部、40 受水室、50 制御装置、51 制御部、52 記憶部、53 計時部、71,72 水位センサ、73 濃度センサ、74 操作表示部、90 筐体。