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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 31/17 20060101AFI20221013BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
E01B31/17
B24B27/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018107997
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019210712
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】318010498
【氏名又は名称】株式会社高萩自工
(73)【特許権者】
【識別番号】500418244
【氏名又は名称】株式会社交通建設
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】緑川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】剣持 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀寿
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-135301(JP,A)
【文献】特開平11-222104(JP,A)
【文献】特開2013-091958(JP,A)
【文献】特開2006-233602(JP,A)
【文献】特開2000-073301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 31/17
B24B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車が走行するレールを削正する削正車に対し、前記レールと前記削正車との間から気体を噴射する送風装置であって、
前記レールの上を走行する走行部と、
前記走行部に取り付けられ、且つ前記走行部に対する角度を変化可能なアーム部と、
前記アーム部の先端側へアーム部に対する角度を変化可能に取り付けられ、且つ前記気体を噴射する噴射部と、
前記走行部による走行距離に、前記アーム部の前記走行部に対する角度と、前記噴射部の前記アーム部に対する角度と、を関連付けた動作パターンを記憶しているパターン記憶部と、
前記パターン記憶部が記憶している動作パターンに応じて、前記アーム部の前記走行部に対する角度と、前記噴射部の前記アーム部に対する角度と、前記気体の噴射圧と、を制御する制御部と、を備えることを特徴とする送風装置。
【請求項2】
前記アーム部は、基端側が前記走行部に取り付けられる基端アーム部と、先端側に前記噴射部が取り付けられる先端アーム部と、基端側が前記基端アーム部の先端側に取り付けられ、且つ先端側が前記先端アーム部の基端側に取り付けられる中間アーム部と、を備え、
前記基端アーム部の基端側、前記中間アーム部の基端側及び前記先端アーム部の基端側は、前記走行部が走行する方向と平行な軸の軸周りに回転することを特徴とする請求項1に記載した送風装置。
【請求項3】
前記噴射部は、前記先端アーム部の先端側に対して、前記先端アーム部の軸方向の軸周りに回転可能であることを特徴とする請求項2に記載した送風装置。
【請求項4】
前記パターン記憶部は、前記削正車の外部形状に応じた前記動作パターンを記憶していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した送風装置。
【請求項5】
前記パターン記憶部は、前記削正車の外部形状に応じた複数の前記動作パターンを記憶していることを特徴とする請求項4に記載した送風装置。
【請求項6】
前記パターン記憶部は、前記走行部による走行距離に、前記気体の噴射圧をさらに関連付けた前記動作パターンを記憶していることを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載した送風装置。
【請求項7】
前記削正車は、前記レールを削正する削正装置を備え、
前記パターン記憶部は、前記走行部による走行距離に、前記削正装置の姿勢をさらに関連付けた前記動作パターンを記憶していることを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載した送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車が走行するレールを削正車で削正することで発生し、削正車に付着した鉄粉を風力によって除去する送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電車が走行するレールを削正する削正車としては、例えば、特許文献1に記載されているように、レール表面の凹凸を砥石片によって削正するレール削正車と、レール削正車を備える車両を備える構成のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-215764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような削正車を用いてレールを削正すると、鉄粉が発生して飛散し、削正車に付着する。削正車に付着した鉄粉は錆が発生する要因となり、故障等が発生させるため、現状では、作業員が削正車に付着した鉄粉を除去している。
しかしながら、鉄粉が付着する部分は主に削正車の下面であり、作業員は、地面と削正車との間の狭い空間において、伏せた姿勢等で作業を行う必要があるため、効率的に鉄粉を除去することが困難であるという問題点がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、削正車の下方から、削正車に付着した鉄粉を効率的に除去することが可能な送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、電車が走行するレールを削正する削正車に対し、レールと削正車との間から気体を噴射する送風装置である。送風装置は、走行部と、アーム部と、噴射部と、パターン記憶部と、制御部を備えている。走行部は、レールの上を走行する。アーム部は、走行部に取り付けられ、且つ走行部に対する角度を変化可能である。噴射部は、アーム部の先端側へ、アーム部に対する角度を変化可能に取り付けられ、且つ気体を噴射する。パターン記憶部は、走行部による走行距離に、アーム部の走行部に対する角度と、噴射部のアーム部に対する角度を関連付けたパターンである動作パターンを記憶している。制御部は、パターン記憶部が記憶している動作パターンに応じて、アーム部の走行部に対する角度と、噴射部のアーム部に対する角度と、気体の噴射圧を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、走行部をレールと削正車との間を走行させながら、予め記憶している動作パターンに応じて、アーム部の走行部に対する角度と、噴射部のアーム部に対する角度を制御して、削正車に気体を噴射することが可能となる。
これにより、地面と削正車との間の狭い空間における作業員の作業を必要とせずに、削正車の下方から、削正車に付着した鉄粉を効率的に除去することが可能な、送風装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第一実施形態における送風装置の構成を表すブロック図である。
図2】送風装置の構成を表す図である。
図3】制御部の構成を表すブロック図である。
図4】ホーム画面を表示したタッチパネルを表す図である。
図5】パターン選択画面を表示したタッチパネルを表す図である。
図6】パターン1に該当する動作パターンを表示したタッチパネルを表す図である。
図7】送風装置の車輪をレールの上に載せるための作業を表す図である。
図8】送風装置の移動経路を表す図である。
図9】送風装置を用いて、レールと削正車との間から、削正車に対して気体を噴射する状態を表す図である。
図10】本発明の第一実施形態の変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、本発明の第一実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
さらに、以下に示す第一実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0009】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から図6を用いて、第一実施形態の構成を説明する。
図1中に表すように、送風装置1は、走行部10と、アーム部20と、噴射部30と、パターン記憶部40と、制御部50と、タッチパネル60を備え、電車が走行するレールを削正する削正車に対し、レールと削正車との間から気体を噴射する装置である。
図2中に示すように、走行部10は、車輪Wを備えており、電車が走行するレール2の上を走行する。なお、図2における上方は、鉛直方向の上方である。同様に、図2における下方は、鉛直方向の下方である。
また、走行部10は、制御部50から送信された制御信号が含む速度及び走行距離に応じて、車輪Wを回転させる。さらに、走行部10は、車輪Wの回転数を含む情報信号を、制御部50へ送信する。
なお、走行部10の高さ(鉛直方向に沿った走行部10の長さ)は、例えば、200[mm]以下とする。これは、レールと削正車との間に形成され、走行部10を配置させることが可能な空間の高さに対応する。
【0010】
アーム部20は、基端アーム部20Bと、先端アーム部20Lと、中間アーム部20Mを備えている。
基端アーム部20Bは、基端側が走行部10に取り付けられている。
基端アーム部20Bの基端側は、第一モータM1によって、走行部10が走行する方向と平行な軸である第一駆動軸の軸周りに回転する。
先端アーム部20Lは、先端側に噴射部30が取り付けられている。
先端アーム部20Lの基端側は、第三モータM3によって、第一駆動軸と平行な軸である第三駆動軸の軸周りに回転する。
中間アーム部20Mは、基端側が基端アーム部20Bの先端側に取り付けられており、先端側が先端アーム部20Lの基端側に取り付けられている。
【0011】
中間アーム部20Mの基端側は、第二モータM2によって、第一駆動軸と平行な軸である第二駆動軸の軸周りに回転する。
以上により、アーム部20は、走行部10に取り付けられており、走行部10に対する角度を変化可能である。また、基端アーム部20Bの基端側、中間アーム部20Mの基端側及び先端アーム部20Lの基端側は、走行部10が走行する方向と平行な軸の軸周りに回転する。
噴射部30は、アーム部20の先端側へ、アーム部20に対する角度を変化可能に取り付けられており、気体(例えば、圧縮機から供給される大気圧よりも高圧の空気)を噴射する。
また、噴射部30は、第四モータM4によって、先端アーム部20Lの先端側に対して、先端アーム部20Lの軸方向の軸周りに回転する。
【0012】
パターン記憶部40は、走行部10に収容されており、予め、動作パターンを記憶している。
動作パターンは、走行部10による走行距離に、アーム部20の走行部10に対する角度と、噴射部のアーム部20に対する角度を関連付けたパターンである。
また、動作パターンは、削正車の外部形状に応じたパターンである。
削正車の外部形状に応じたパターンとは、例えば、削正車とレール2との間に形成される空間の広さに応じたパターンである。すなわち、削正車とレール2との間に形成される空間が広い場合には、アーム部20の移動範囲が大きいパターンとなり、削正車とレール2との間に形成される空間が狭い場合には、アーム部20の移動範囲が小さいパターンとなる。
【0013】
第一実施形態では、一例として、パターン記憶部40が、削正車の外部形状に応じた複数の動作パターンを記憶している場合について説明する。
さらに、第一実施形態では、一例として、パターン記憶部40が、走行部10による走行距離に、噴射部30の姿勢をさらに関連付けた動作パターンを記憶している場合について説明する。
これに加え、第一実施形態では、一例として、パターン記憶部40が、走行部10による走行距離に、気体の噴射圧をさらに関連付けた動作パターンを記憶している場合について説明する。
【0014】
また、パターン記憶部40は、タッチパネル60から送信された情報信号に応じて、予め記憶している複数の動作パターン(例えば、三通りの動作パターン)から、一つの動作パターンを選択する。そして、選択した一つの動作パターンを含む情報信号(以降の説明では、「選択パターン信号」と記載する場合がある)を、制御部50へ送信する。
制御部50は、走行部10に収容されており、図3中に示すように、第一モータ制御部51と、第二モータ制御部52と、第三モータ制御部53と、第四モータ制御部54と、噴射圧制御部55を備えている。
【0015】
第一モータ制御部51は、選択パターン信号が含む動作パターンに応じて、走行部10に対する基端アーム部20Bの角度が動作パターンに応じた角度となるように、第一モータM1の回転角度及び回転速度を制御する。
第二モータ制御部52は、選択パターン信号が含む動作パターンに応じて、走行部10に対する中間アーム部20Mの角度が動作パターンに応じた角度となるように、第二モータM2の回転角度及び回転速度を制御する。
【0016】
第三モータ制御部53は、選択パターン信号が含む動作パターンに応じて、走行部10に対する先端アーム部20Lの角度が動作パターンに応じた角度となるように、第三モータM3の回転角度及び回転速度を制御する。
第四モータ制御部54は、選択パターン信号が含む動作パターンに応じて、先端アーム部20Lに対する噴射部30の角度が動作パターンに応じた角度となるように、第四モータM4の回転角度及び回転速度を制御する。
【0017】
噴射圧制御部55は、選択パターン信号が含む動作パターンに応じて、噴射部30から噴射する気体の噴射圧を制御する。
以上により、制御部50は、パターン記憶部40が記憶している動作パターンに応じて、アーム部20の走行部10に対する角度と、噴射部30のアーム部20に対する角度と、噴射部30から噴射する気体の噴射圧を制御する。
【0018】
タッチパネル60は、走行部10に取り付けられており、送風装置1に電源(例えば、電源ケーブル(100V)を介して供給)を投入することで、図4中に示すホーム画面等が表示される。なお、送風装置1に電力を供給する構成としては、例えば、バッテリを搭載してもよい。
また、タッチパネル60により検出した操作を含む情報信号は、制御部50へ送信される。
すなわち、タッチパネル60にホーム画面が表示された状態で、例えば、ホーム画面に表示されているメニューのうち「メモリモード」をタッチすると、メモリモードを選択した操作を含む情報信号が、制御部50へ送信される。
タッチパネル60に表示されたホーム画面から、「メモリモード」を選択すると、タッチパネル60には、図5中に示すパターン選択画面が表示される。
【0019】
ここで、パターン選択画面に表示されているパターンから、例えば、「パターン1」を選択すると、タッチパネル60には、図6中に示すように、「パターン1」に該当する動作パターンが表示される。
「パターン1」に該当する動作パターンは、ステップS毎に、第一モータM1、第二モータM2、第三モータM3、第四モータM4の回転角度と、噴射部30から噴射する気体の噴射圧を関連付けたテーブルで表される。
【0020】
ステップSは、走行部10によってレール2を走行する位置であり、ホーム画面に表示されているメニューのうち、「運転」をタッチして走行を開始した地点を基準とする位置である。すなわち、動作パターンにおけるステップSは、走行部10による走行距離に対応する。なお、動作パターンには、例えば、20のステップSを記憶することが可能である。
また、第一モータM1の回転角度は、走行部10に対する基端アーム部20Bの角度に対応する。同様に、第二モータM2の回転角度は、走行部10に対する中間アーム部20Mの角度に対応し、第三モータM3の回転角度は、走行部10に対する先端アーム部20Lの角度に対応する。すなわち、動作パターンにおける、第一モータM1、第二モータM2及び第三モータM3の回転角度は、アーム部20の走行部10に対する角度に対応する。
【0021】
さらに、第四モータM4の回転角度は、先端アーム部20Lに対する噴射部30の角度に対応する。なお、図示を省略しているが、動作パターンには、噴射部30の動作を開始する位置と、噴射部30から気体の噴射を開始する位置と、噴射部30の動作を終了する位置と、噴射部30を動作させる振幅の角度と、噴射部30を動作させる速度も含む。
なお、「パターン1」に該当する動作パターンの各パラメータは、タッチパネル60の操作によって変更が可能である。これは、「パターン2」及び「パターン3」に該当する動作パターンの各パラメータについても、同様である。
【0022】
(動作・作用)
図1から図6を参照しつつ、図7から図9を用いて、第一実施形態の送風装置1で行う動作の一例と、作用を説明する。
送風装置1の使用時には、まず、タッチパネル60に表示されたホーム画面から、「メモリモード」を選択し、さらに、パターン選択画面に表示されているパターンから、例えば、「パターン1」を選択する。
次に、削正車から離れた位置で、図7中に示すように、送風装置1の状態を、アーム部20を走行部10よりも低い位置へ移動させた状態とし、さらに、送風装置1を載せた搬送板3をレール2の上に移動させ、車輪Wをレール2の上に載せる。図7中に示す状態では、送風装置1の全高は200[mm]以下となり、レール2と削正車との間に形成された空間へ、容易に配置することが可能となる。
【0023】
そして、送風装置1を、レール2のうち、削正車に対して予め設定した距離の位置(初期位置)に移動させた後、タッチパネル60にホーム画面を表示させて「運転」を選択する。
送風装置1を初期位置に移動させてホーム画面から「運転」を選択すると、走行部10が車輪Wを回転させてレール2の上を移動し、送風装置1が初期位置から削正車TRの下方へ移動する。なお、レール2のうち、削正車が存在しない位置において、「パターン1」の動作を確認した後に、送風装置1を初期位置から削正車TRの下方へ移動させてもよい。この場合、レール2のうち、削正車が存在しない位置において、「パターン1」の動作を確認した際に、不適切な動作があれば、動作パターンを修正した後に、送風装置1を初期位置から削正車TRの下方へ移動させる。
【0024】
初期位置から削正車TRの下方へ移動する送風装置1は、図8中に示すように、ステップS1からステップS6の位置へ順に移動する。
そして、ステップS1の位置へ移動した送風装置1は、「パターン1」におけるステップS1の動作を行い、図9中に示すように、レール2と削正車TRとの間から、削正車TRに対して、噴射部30により気体を噴射する。なお、図9中に表すアーム部20及び噴射部30の動作は、一例であり、パターン1として示したパラメータにおけるステップS1の動作とは、必ずしも一致していない。
【0025】
なお、図9中に示すように、削正車TRは、レール2を削正する削正装置70を備えている。
削正装置70は、砥石71(グラインダー)と、削正モータ72を備えている。
【0026】
砥石71は、ブレード部(図示せず)を備えている。
削正モータ72は、レール2に押し付けた状態の砥石71を作動させることで、レール2の表面を切削・研磨して、レール2を削正する。このため、レール2を削正した後の削正車TRの外面、特に、レール2と対向する面である下面には、レール2を削正することで発生する鉄粉が付着している。
【0027】
ステップS1の位置へ移動した送風装置1が、削正車TRに対して噴射部30から気体を噴射することにより、削正車TRの外面のうち、ステップS1に対応する位置に付着している鉄粉は、噴射部30が噴射した気体によって除去される。なお、噴射部30が噴射した気体によって除去された鉄粉は、例えば、フィルターを備えた掃除機等を用いて吸引・回収する。また、例えば、削正車TRが集塵装置を備えている場合には、噴射部30が噴射した気体によって除去された鉄粉は、削正車TRが備える集塵装置を用いて吸引・回収してもよい。
【0028】
ステップS1の位置で削正車TRに対して気体を噴射した後、送風装置1は、ステップS2の位置へ移動し、ステップS2の位置で削正車TRに対して気体を噴射する。同様の動作をステップS6まで実施した後、送風装置1は、削正車TRから離れた位置まで移動する。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0029】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の送風装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)レール2の上を走行する走行部10と、走行部10に取り付けられ、且つ走行部10に対する角度を変化可能なアーム部20と、アーム部20の先端側へアーム部20に対する角度を変化可能に取り付けられ、且つ気体を噴射する噴射部30を備える。これに加え、走行部10による走行距離に、アーム部20の走行部10に対する角度と、噴射部30のアーム部20に対する角度を関連付けた動作パターンを記憶しているパターン記憶部40を備える。さらに、パターン記憶部40が記憶している動作パターンに応じて、アーム部20の走行部10に対する角度と、噴射部30のアーム部20に対する角度と、気体の噴射圧を制御する制御部を備える。
【0030】
このため、走行部10をレール2と削正車TRとの間を走行させながら、予め記憶している動作パターンに応じて、アーム部20の走行部10に対する角度と、噴射部30のアーム部20に対する角度と、気体の噴射圧を制御して、削正車TRに気体を噴射する。
その結果、地面と削正車TRとの間の狭い空間における作業員の作業を必要とせずに、削正車TRの下方から、削正車TRに付着した鉄粉を効率的に除去することが可能な、送風装置1を提供することが可能となる。
また、削正車TRに付着した鉄粉を除去する際に、作業員が鉄粉を吸引する可能性を低減させることが可能となるため、作業員の健康被害を低減させることが可能となる。
【0031】
(2)アーム部20が、基端アーム部20Bと、先端アーム部20Lと、中間アーム部20Mを備える。そして、基端アーム部20Bの基端側、中間アーム部20Mの基端側及び先端アーム部20Lの基端側が、走行部10が走行する方向と平行な軸の軸周りに回転する。
その結果、削正車TRの外部形状に応じて、アーム部20に適切な動作をさせることが可能となり、噴射部30から噴射する気体を、削正車TRに対して効率的に噴射することが可能となる。
【0032】
(3)噴射部30が、先端アーム部20Lの先端側に対して、先端アーム部20Lの軸方向の軸周りに回転可能である。
その結果、削正車TRの外部形状に応じて、噴射部30に適切な動作をさせることが可能となり、噴射部30から噴射する気体を、削正車TRに対して効率的に噴射することが可能となる。
(4)パターン記憶部40が、削正車TRの外部形状に応じた動作パターンを記憶している。
その結果、削正車TRの外部形状に応じて、アーム部20及び噴射部30に適切な動作をさせることが可能となり、噴射部30から噴射する気体を、削正車TRに対して効率的に噴射することが可能となる。
【0033】
(5)パターン記憶部40が、削正車TRの形状に応じた複数の動作パターンを記憶している。
その結果、削正車TRと送風装置1との相対位置によって異なる削正車TRの外部形状に応じて、アーム部20及び噴射部30に適切な動作をさせることが可能となり、噴射部30から噴射する気体を、削正車TRに対して効率的に噴射することが可能となる。
(6)パターン記憶部40が、走行部10による走行距離に、噴射部30の姿勢をさらに関連付けた動作パターンを記憶している。
その結果、削正車TRに対する送風装置1の位置に応じて、噴射部30に適切な動作をさせることが可能となり、噴射部30から噴射する気体を、削正車TRに対して効率的に噴射することが可能となる。
【0034】
(7)パターン記憶部40が、走行部10による走行距離に、気体の噴射圧をさらに関連付けた動作パターンを記憶している。
その結果、削正車TRに対する送風装置1の位置に応じて、噴射部30から噴射する気体の噴射圧を適切に制御することが可能となり、噴射部30から噴射する気体を、削正車TRに対して効率的に噴射することが可能となる。
【0035】
(第一実施形態の変形例)
(1)第一実施形態では、削正装置70(砥石71と、削正モータ72)の姿勢が変化しない構成の削正車TRに対し、レール2と削正車TRとの間から気体を噴射する構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、削正車TRの構成を削正装置70の姿勢が変化する構成、具体的には、削正モータ72が、削正車TRが走行する方向と平行な軸回りに回転可能である構成とする。そして、例えば、図10中に示すように、削正装置70の姿勢に応じて、アーム部20の走行部10に対する角度と、アーム部20に対する噴射部30の角度と、噴射部30から噴射する気体の噴射圧を制御してもよい。
この場合、パターン記憶部40の構成を、走行部10による走行距離に、削正装置70の姿勢をさらに関連付けた動作パターンを記憶している構成とする。
この構成であれば、削正装置70の姿勢が変化しない構成と比較して、削正車TRの外面に付着している鉄粉を、効率的に除去することが可能となる。
【0036】
(2)第一実施形態では、送風装置1を操作するための構成として、タッチパネル60を備える構成としたが、これに限定するものではなく、例えば、携帯端末により、無線通信を介して、送風装置1を操作する構成としてもよい。
(3)第一実施形態では、動作パターンを、削正車TRの外部形状に応じたパターンとしたが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、動作パターンを、外部形状が異なる複数台の削正車に対して、一つの送風装置1を用いて作業を行う場合には、外部形状が異なる削正車に対し、その都度、外部形状に応じた動作パターンを設定してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…送風装置、2…レール、3…搬送板、10…走行部、20…アーム部、20B…基端アーム部、20L…先端アーム部、20M…中間アーム部、30…噴射部、40…パターン記憶部、50…制御部、51…第一モータ制御部、52…第二モータ制御部、53…第三モータ制御部、54…第四モータ制御部、55…噴射圧制御部、60…タッチパネル、70…削正装置、71…砥石、72…削正モータ、W…車輪、M1…第一モータ、M2…第二モータ、M3…第三モータ、M4…第四モータ、TR…削正車
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10