(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/54 20060101AFI20221013BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20221013BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20221013BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20221013BHJP
E02B 7/22 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
E02B7/54 Z
E04H9/14 Z
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
E02B7/22
(21)【出願番号】P 2018224745
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000230940
【氏名又は名称】日本原子力発電株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】000172868
【氏名又は名称】佐藤鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室井 勇二
(72)【発明者】
【氏名】和山 朗丈
(72)【発明者】
【氏名】森 幸仁
(72)【発明者】
【氏名】前田 博司
(72)【発明者】
【氏名】羽野 聡志
(72)【発明者】
【氏名】椎名 正樹
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 昇
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223061(JP,A)
【文献】特開2016-191280(JP,A)
【文献】特開平7-310312(JP,A)
【文献】実開昭63-130532(JP,U)
【文献】実開昭63-23327(JP,U)
【文献】特開2014-37726(JP,A)
【文献】特開2017-31627(JP,A)
【文献】特開2010-84386(JP,A)
【文献】特開2000-80893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/54
E04H 9/14
E06B 5/00
E06B 7/22
E02B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に構築されると共に前後方向に延びる第1構造物と、前記第1構造物に対し左右両側において地盤上に構築される一対の柱部を含むと共に一対の前記柱部の間に前記第1構造物の上方において架設する梁部を含む第2構造物であって一対の前記柱部と前記梁部とで平面視して前側に開口する凹部が形成された前記第2構造物とに関し、一対の前記柱部の間において前記第1構造物と前記第2構造物の前記梁部との上下方向の間に形成される隙間部に前側から後側に水が浸入するのを止水する止水装置であって、
前記凹部に対し左右方向への変位を規制される状態で配置されると共に前記隙間部を前側で止水する止水板ユニットと、前記梁部に固定されると共に前記止水板ユニットをその前側において支えるように案内するガイド部であって地震時には前記第1構造物上の前記止水板ユニットを相対的に変位可能に案内する前記ガイド部とを備え、
前記止水板ユニットは、平板状の止水板と、前記止水板に対しその外周部の全周に亘って固定されると共に前記第1構造物および前記第2構造物に対し密接する水密ゴムユニットとを備えることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記水密ゴムユニットは、前記止水板の底面に固定されると共に前記第1構造物に密接する底部水密ゴムと、前記止水板の上部に固定されると共に前記梁部の前面に密接する上部水密ゴムと、前記止水板の左右の側面に固定されると共に一対の前記柱部に密接する一対の側部水密ゴムとを備えることを特徴とする請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記第1構造物は沿岸部に構築された取水部であり、
前記第2構造物は、沿岸部沿いの一対の防潮堤の間に構築されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の止水装置。
【請求項4】
前記止水板は、左右方向に並べた複数の単位板と、隣り合う前記単位板を接続すると共に隣り合う前記単位板の間を止水する単位板接続ゴムとを備えることを特徴とする請求項1、2または3に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤上に構築した構造物に対する止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、沿岸部の発電施設等では地震や津波等の災害対策の拡充が求められており、例えば沿岸部に沿って防潮堤を構築することが検討されている。このような発電施設等には、構内に海水を引き入れるための取水部が設けられている場合がある。
【0003】
防潮堤は沿岸部に沿って構築されるため、取水部に対してはその上方を横切る状態で形成される。また取水部の上面に防潮堤を直接載置することは、取水部が破損するおそれがあるので、望ましくない。このため、取水部の両側に基礎構造物を構築し、当該基礎構造物の間に防護壁を架設する構成が提案されている。
【0004】
このような防護壁を設ける場合、地震発生時に生じる振動で取水部と防護壁とが互いに干渉しないようにするため、取水部の上面と防護壁との間に隙間部分を設ける必要がある。一方、隙間部分を設ける場合、当該隙間部分から海水が構内に入り込まないように止水する必要がある。また地震発生時の振動等により、取水部と防護壁とが相対的に移動する場合がある。このため、取水部と防護壁との相対的な変位を許容しつつ隙間部分を止水することのできる止水装置が求められている。また取水部及び防護壁に限られず、2つの構造物の相対的な変位を許容しつつ2つの構造物の間に形成される隙間部分を止水することのできる止水装置が求められている。
このような止水装置としては、例えば隙間部分に止水用の膜部材を配置する構成が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膜部材は隙間部分とほぼ同等の大きさのシート材を主要なものとし、シート材はたるませた状態で隙間部分を塞いでいる。そして地震時に隙間部分が上下方向または前後方向に広がった場合には膜部材はそれに追従して隙間部分を塞ぐものである。シート材は薄い柔軟な部材であり、津波等による漂流物が衝突して破損するおそれがある。
【0007】
本発明は上記実情を考慮して創作されたものであり、その目的は、漂流物との衝突によっても破損しづらい止水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の止水装置は、地盤上に構築されると共に前後方向に延びる第1構造物と、第1構造物に対し左右両側において地盤上に構築される一対の柱部を含むと共に一対の柱部の間に第1構造物の上方において架設する梁部を含む第2構造物であって一対の柱部と梁部とで平面視して前側に開口する凹部が形成された第2構造物とに関し、一対の柱部の間において第1構造物と第2構造物の梁部との上下方向の間に形成される隙間部に前側から後側に水が浸入するのを止水するものである。
そして本発明の止水装置は、凹部に対し左右方向への変位を規制される状態で配置されると共に隙間部を前側で止水する止水板ユニットと、梁部に固定されると共に止水板ユニットをその前側において支えるように案内するガイド部であって地震時には第1構造物上の止水板ユニットを相対的に変位可能に案内するガイド部とを備えるものである。
そのうえで止水板ユニットは、平板状の止水板と、止水板に対しその外周部の全周に亘って固定されると共に第1構造物および第2構造物に対し密接する水密ゴムユニットとを備えるものである。
【0009】
また水密ゴムユニットの一例としては次のものが存在する。
すなわち水密ゴムユニットは、止水板の底面に固定されると共に第1構造物に密接する底部水密ゴムと、止水板の上部に固定されると共に梁部の前面に密接する上部水密ゴムと、止水板の左右の側面に固定されると共に一対の柱部に密接する一対の側部水密ゴムとを備えるものである。
【0010】
また本発明の止水装置は次の場所に構築されることが望ましい。
すなわち第1構造物は沿岸部に構築された取水部であり、第2構造物は、沿岸部沿いの一対の防潮堤の間に構築されたものである。
【0011】
また本発明の止水装置は上記した場所に構築された場合、止水板の左右方向の長さが長くなり、製造技術に関しては一枚の板で製造することが難しくなるし、地震時における第1構造物と第2構造物との相対的な左右方向の変位差に関してはその変位差を一枚の板で吸収することが難しくなるので、次のようにすることが望ましい。
すなわち止水板は、左右方向に並べた複数の単位板と、隣り合う単位板を接続すると共に隣り合う単位板の間を止水する単位板接続ゴムとを備えるものとすることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の止水装置は、止水板ユニットの止水板の厚みや材質に応じた強度を発揮できるので、例えば薄い柔軟な部材のシート材に比べれば、剛性を向上でき、地震等による漂流物に対して破損しづらくなる。
【0013】
また本発明の止水装置は、左右方向に並べた複数枚の単位板と、単位板接続ゴムとを用いて止水板を形成するものであれば、一枚の板で止水板を形成するものに比べれば、製造しやすくなるし、地震時における第1構造物と第2構造物との相対的な左右方向の変位差を吸収しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態の止水装置を示す正面図である。
【
図5】止水装置の水密ゴムユニットを示す斜視図である。
【
図6】地震により海側と陸側との相対的な変位が生じた場合の止水装置を示す説明図である。
【
図7】地震により上下方向の相対的な変位が生じた場合の止水装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の止水装置を設置する構造物についてまず説明する。
構造物は、例えば沿岸部の発電施設に対し海側に設置される。また構造物は
図1~4に示すように、地盤に構築される第1構造物1と第2構造物2とを備える。
【0016】
第1構造物1は、発電施設に海から海水Wを取水するための取水部1である。取水部1は地盤上、より詳しくは沿岸部の海底上に構築される。また取水部1は例えばコンクリート製であり、複数の取水口1aを沿岸部沿いに並列した暗渠である。また取水部1は海から陸上の発電施設に向かって延びるものである。より詳しく言えば取水部1は海から陸に向かって延びる筒状の水路としての取水口1aを沿岸部沿いに並列したものである。また取水部1の上面は、水平面に平行な平面である。なお方向について、海に向かう方向を前方向、陸に向かう方向を後方向と言うこともある。また陸の方を向きながら沿岸部に沿う方向を左右方向と言うこともある。
【0017】
第2構造物2は、取水部1に対し海底の地盤上において左右両側に図示しない目地を介して左右方向に沿って構築される一対の基礎構造物3,3と、一対の基礎構造物3,3の上において取水部1側に構築される一対の鋼製構造物4,4と、取水部1の上方において一対の鋼製構造物4,4に対して架設される防護壁6とを備える。
基礎構造物3と鋼製構造物4とは連結されており、柱部5を構成している。そして一対の柱部5,5の上部に防護壁6が梁部6として架設されている。したがって第2構造物2は取水部1を左右・上方から包囲する形、つまり門型である。また本実施形態では、各基礎構造物3は取水部1から離れるように沿岸部に沿って形成されると共に、各基礎構造物3の上には防潮堤7が鋼製構造物4から沿岸部に沿って防護壁6とは反対側に延びる状態で構築される。ちなみに目地はシーリング材からなる伸縮物であり、基礎構造物3はコンクリート製である。
【0018】
防護壁6は
図2に示すように複数の函状物6aを上下方向に積み重ねて溶接あるいはボルト等によって一体化したものである。ちなみに函状物6aは例えば鋼製で、左右方向から見て矩形状の中空物である。
また防護壁6は
図3に示すように、一対の柱部5,5のうち鋼製構造物4の前面よりも後側に位置するものである。したがって平面視して一対の柱部5,5と防護壁6とは協働して前側に開口する凹部8を形成する。凹部8の左右両面は一対の柱部5,5のうち左右に対向する面によって形成される。また凹部8の左右両面は平行であり、左右方向に直交する平面である。
また防護壁6の下面は水平面に平行な平面である。そして防護壁6は取水部1に対して上方に間隔をあけて配置されている。したがって防護壁6と取水部1の上下間であって一対の柱部5,5の左右間には隙間部Gが形成される。隙間部Gは前後方向から見て矩形状で、例えば上下方向の寸法dは100mmである。
また防護壁6は、前後に向かって延びる取水部1の全長のうち一部の上方に配置されている。そして平面視すると、防護壁6と取水部1とは十字状に交差する状態となる。
したがって防護壁6を含む第2構造物2と取水部1である第1構造物1とは、地震時において相対的に変位可能となっている。ちなみに変位方向は主として上下・前後方向である。そして地震時においても海水Wが隙間部Gを通過して海側から陸側に浸入するのを止めるのが、凹部8に配置された本発明の第一実施形態の止水装置10である。
【0019】
本発明の第一実施形態の止水装置10は
図1~4に示すように、隙間部Gを防護壁6に対し海側(前側)で塞いで止水する止水板ユニット20と、地震時に取水部1上の止水板ユニット20を相対的に変位可能に案内するガイド部40と、止水板ユニット20を沿岸部沿いの複数個所で左右方向への相対的な変位を規制する横ぶれ規制ユニット50と、止水板ユニット20と第2構造物2(一対の柱部5,5と梁部6)との水密状態および止水板ユニット20と第1構造物1(取水部1)との水密状態を向上させるために第1構造物1と第2構造物2に固定された戸当たりユニット60とを備える。
【0020】
戸当たりユニット60は
図3,4に示すように、一対の柱部5,5の左右に対向する面に固定された一対の側面戸当たり61,61と、取水部1の上面に固定された底面戸当たり62と、梁部6の前面に固定された前面戸当たり63とを備える。これら戸当たり61~63は、止水板ユニット20に接する面(以下、接面と言う。)を平面としたものである。より詳しく言えば、底面戸当たり62の接面は水平面とし、側面戸当たり61の接面は左右方向に直交する鉛直面とし、前面戸当たり63の接面は前後方向に直交する鉛直面としてある。
【0021】
底面戸当たり62は、左右方向に関しては取水部1の全長(一対の柱部5,5の間の全長)に亘って形成され、前後方向に関しては取水部1の一部であって防護壁6をその下方において前後に横切る状態で形成される(
図2参照)。
【0022】
側面戸当たり61は、上下方向に関しては隙間部Gに対して上側から取水部1の上面に亘って形成され、前後方向に関しては柱部5と梁部6の間から止水板ユニット20よりも前側に亘って形成される。
【0023】
前面戸当たり63は、上下方向に関しては防護壁6の下部、より詳しく言えば止水板ユニット20の上端よりも上側から止水板ユニット20の上端よりも下側であって防護壁6の下端までの範囲に形成され、左右方向に関しては防護壁6の全長(一対の側面戸当たり61,61の間)に亘って形成される。
【0024】
止水板ユニット20は、海側から見て矩形状の止水板21と、止水板21の矩形状をなす外周部の全周に亘って止水板21に固定される水密ゴムユニット22と、水密ゴムユニット22を止水板21に固定すると共に戸当たりユニット60(第1構造物1および第2構造物2)に対し地震時には摺動可能な摺動板ユニット30とを備える。
【0025】
止水板21は平板状で、且つ前述したように矩形状であり、より詳しく言えば前後方向から見て上辺と下辺が水平で、左右側辺が鉛直な形状である。そして止水板21の上部は隙間部Gよりも上側に位置し、防護壁6に対向している。また止水板21は、左右方向に隣り合わせに並べた複数枚の単位板21aと、隣り合う単位板21a,21aを接続すると共に隣り合う単位板21a,21aの間を止水する単位板接続ゴム21bと、隣り合う単位板21a,21aに単位板接続ゴム21bの左右両側部をボルトを介して取り付ける取付板21cとを備える。
【0026】
単位板21aは止水板21を恰も左右方向に複数枚に分割した形状であり、前後方向から見て矩形状である。また単位板21aは平板状の剛体であり、単位板接続ゴム21bよりも左右方向に長いものである。
【0027】
単位板接続ゴム21bは隣り合う単位板21a,21aの後面(陸側)に取付板21cを介して固定される。また単位板接続ゴム21bは隣り合う単位板21a,21aの間を上下方向の全長に亘って塞ぐ状態に配置される。なお単位板接続ゴム21bは平板状である。
【0028】
水密ゴムユニット22は
図3~5に示すように、止水板21の底面に固定されると共に取水部1に底面戸当たり62を介して密接する底部水密ゴム23と、止水板21の上部に固定されると共に防護壁6の海側の面に前面戸当たり63を介して密接する上部水密ゴム24と、止水板21の左右の側面に固定されると共に一対の柱部5,5に側面戸当たり61を介して密接する一対の側部水密ゴム25,25とを備える。また水密ゴムユニット22は、底部水密ゴム23と一対の側部水密ゴム25,25と上部水密ゴム24とが環状に連続したものである。図示の例では水密ゴムユニット22は、止水板21の下面の前側を左右方向の全長に亘って底部水密ゴム23で止水し、止水板21の左右側面の前側を上下方向の全長に亘って一対の側部水密ゴム25,25で止水し、止水板21の左右側面の上部を前後方向の全長に亘って同じく一対の側部水密ゴム25,25で止水し、止水板21の後面を左右方向の全長に亘って上部水密ゴム24で止水するものである。
【0029】
底部水密ゴム23は、止水板21の左右方向の全長に亘って延長するものである。また底部水密ゴム23は、止水板21の底面に固定される板状の固定部23aと、固定部23aに対して前側(海側)に突出すると共に下側に張り出す形状(側面視して断面円形状)の水密部23bとを備える。水密部23bは止水板21の底面と底面戸当たり62との間に挟まれて弾性変形し、止水板21と底面戸当たり62との間を止水する。
【0030】
上部水密ゴム24は止水板21の左右方向の全長に亘って延長するものである。また上部水密ゴム24は、止水板21の上面に固定される板状の固定部24aと、固定部24aに対して後側(防護壁6側(陸側))に突出すると共に上側に張り出す水密部24bとを備える。
なお固定部24aはその上に配置される取付板24cをボルトで単位板21aの上面に取り付けることによって止水板21に固定される。
また水密部24bは止水板21と前面戸当たり63の間に挟まれて弾性変形し、止水板21の後側(防護壁6側)において止水板21と前面戸当たり63との間を止水する。
なお上部水密ゴム24と底部水密ゴム23との間には単位板接続ゴム21bが架設された状態となっている。
【0031】
側部水密ゴム25は、上下方向に延長すると共に底部水密ゴム23に接続する第1の側部水密ゴム26と、前後方向に延長すると共に第1の側部水密ゴム26の上端部と上部水密ゴム24とに接続する第2の側部水密ゴム27とを備える。
第1の側部水密ゴム26は、止水板21の側面において上下に沿って固定される板状の固定部26aと、固定部26aに対して上下に沿って前側(海側)に突出すると共に側面戸当たり61に向かって接するように側方に張り出す水密部26bとを備える。水密部26bは止水板21の側面と側面戸当たり61との間に挟まれて弾性変形し、止水板21の前側(海側)において止水板21と側面戸当たり61との間を止水する。
第2の側部水密ゴム27は、止水板21の上部の側面に固定される板状の固定部27aと、固定部27aに対して左右に沿って上側に突出すると共に側面戸当たり61に向かって接するように側方に張り出す水密部27bとを備える。
左右の側部水密ゴム25,25が一対の柱部5に側面戸当たり61を介して密接することから、止水板ユニット20の左右側面は一対の柱部5,5に左右の側面戸当たり61,61を介して左右方向への変位を規制されている。言い換えれば止水板ユニット20は凹部8に対し左右方向への変位を規制される状態で配置されている。
【0032】
摺動板ユニット30は
図3,4に示すように、止水板21の各単位板21aの下面に対して底部水密ゴム23の固定部23aを介してボルトで固定されると共に底面戸当たり62に対して摺動可能な底面摺動板31と、止水板21の左右の側面に対して側部水密ゴム25の固定部(第1・第2の側部水密ゴム26・27の固定部26a・27a)を介してボルトで固定されると共に側面戸当たり61に対して摺動可能な一対の側面摺動板32,32と、止水板21のうち各単位板21aの後面に対して単位板接続ゴム21b以外の部分においてボルトで固定されると共に前面戸当たり63に対して摺動可能な後面摺動板33とを備える。なお底面摺動板31と後面摺動板33の枚数は、単位板21aの枚数に一致する。
【0033】
後面摺動板33は、単位板接続ゴム21bを取り付けた取付板21cよりも前後方向の厚みが厚い。したがって後面摺動板33の後面は取付板21cの後面よりも後方に位置する。そして地震等により海水Wが止水板21に衝突したときに後面摺動板33は前面戸当たり63に衝突して止水板ユニット20の水圧荷重を支える。また左右両端の単位板21a,21aに固定された左右の後面摺動板33,33は、当該左右両端の単位板21よりも左右の側面戸当たり61,61に対して離れた状態で配置されており、地震時には相対的に上下方向および前後方向に移動可能となっている。
【0034】
ガイド部40は防護壁6と協働して、止水板ユニット20を防護壁6に対し相対的に上下方向に変位可能に且つ取水部1に対し相対的に前後方向に変位可能に案内する。
またガイド部40は、防護壁6に固定され、止水板ユニット20をその前側において支えるものであり、梁部6との協働によって止水板ユニット20を挟むように案内するものである。またガイド部40は、防護壁6に固定されると共に左右方向に間隔をあけて配置された複数の止水板押さえ41を備える。
【0035】
止水板押さえ41は、各単位板21aを左右方向の複数個所で海側から支えるように配置されている。また止水板押さえ41は、止水板21の上方において防護壁6から海側に張り出す張出部41aと、張出部41aから下方に延びると共に止水板21の海側の面を支える支え部41bとを備える。
支え部41bの下端は防護壁6の下端と同じかそれよりも上側に配置してある。
【0036】
横ぶれ規制ユニット50は
図3に示すように単位板21aと支え部41bとの前後方向の隙間に配置される。また横ぶれ規制ユニット50は、支え部41bの後面に固定された第1のぶれ規制部材51と、単位板21aの前面に固定されると共に第1のぶれ規制部材51に対して側方に隣り合う状態で配置される第2のぶれ規制部材52とを備える。
第1のぶれ規制部材51と第2のぶれ規制部材52とは、いずれも上下方向に延長する板であり、地震時に止水板21を相対的に上下方向に変位可能に案内する。
また第1のぶれ規制部材51と第2のぶれ規制部材52とは、単位板21aごとに左右対称となるように配置されている。そして第1のぶれ規制部材51と第2のぶれ規制部材52とは、単位板接続ゴム21bによって接続された単位板21aが地震時に相対的に左右方向に変位しようとしても、それを規制する。
【0037】
上記した止水装置10は地震等によって取水部1と防護壁6とが相対的に変位した場合には以下のように作用する。
例えば
図6に示すように防護壁6が取水部1に対して相対的に海側に変位した場合、止水板ユニット20は防護壁6の変位に追従する。より詳しく言えば、止水板ユニット20は防護壁6に押されて海側へ変位しようとしたときに、ガイド部40によって倒れずに、そのまま隙間部Gを塞いだ状態を維持している。なお各単位板21aは複数のガイド部40によって抑えられているので、隙間部Gに対して平行の状態を維持する。また上部水密ゴム24(水密部)と後面摺動板33は前面戸当たり63に密接し、底部水密ゴム23(水密部)と底面摺動板31は底面戸当たり62に対して相対的に海側に摺動する。また図示しないが、側部水密ゴム25(水密部)と側面摺動板32は側面戸当たり61に対して相対的に海側に摺動する。このようにして隙間部Gは止水板ユニット20によって塞がれ、海水Wの浸入を防止する。
【0038】
また地震による津波が発生すると止水板ユニット20は海水Wの水圧によって陸側に押し付けられる。そして例えば
図7に示すように防護壁6が取水部1に対して相対的に上方に変位した場合、止水板ユニット20はガイド部40によって倒れずに、取水部1の上の底面戸当たり62の上に載ったままである。より詳しく言えば底部水密ゴム23の水密部23bと底面摺動板31とは底面戸当たり62に密接した状態である。そして上部水密ゴム24は前面戸当たり63に対して相対的に下方に摺動し、側部水密ゴム25と止水板21の左右端面(左端の単位板21aの左端面、右端の単位板21aの右端面)は側面戸当たり61に対して相対的に下方に摺動する。このようにして隙間部Gは止水板ユニット20によって塞がれ、海水Wの浸入を防止する。
【0039】
また図示しないが、防護壁6が取水部1に対して相対的に左右に変位した場合、止水板21のうち単位板21aが左右に変位しようとするが、横ぶれ規制ユニット50によって単位板21aの変位が規制され、また隣り合う単位板21a,21aが単位板接続ゴム21bによって接続された状態が維持される。このようにして隙間部Gは止水板ユニット20によって塞がれ、海水Wの浸入を防止する。
【0040】
上記した第一実施形態の止水装置10は、隙間部Gの大部分を剛体である単位板21aによって塞いでいるので、例えば薄い柔軟なシート材で塞ぐものに比べれば、漂流物に対して破損しづらい。しかも止水装置10は、単位板接続ゴム21bを単位板21aに対して後側に固定してあるので、例えば単位板接続ゴムを単位板に対して前側に固定してあるものに比べれば、単位板接続ゴム21bに漂流物が衝突し難くなる。
また第一実施形態の止水装置10は、左右方向に並べた複数枚の単位板21aと、単位板接続ゴム21bとを用いて止水板21を形成しているので、一枚の板で止水板を形成するものに比べれば、製造しやすくなるし、地震時における第1構造物1と第2構造物2との相対的な左右方向の変位差を吸収しやすくなる。
そのうえ第一実施形態の止水装置10は、横ぶれ規制ユニット50によって止水板ユニット20(各単位板21a)を沿岸部沿いの複数個所で左右方向への相対的な変位を規制するので、地震時における第1構造物1と第2構造物2との相対的な左右方向の変位差を吸収しやすくなる。
なお各単位板21aを複数の止水板押さえ41によって押さえるので、単位板21aの姿勢が安定する。
【0041】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。たとえば本実施形態では、止水装置の対象物に関して、各基礎構造物3は取水部1から離れるように沿岸部に沿って形成されると共に、各基礎構造物3の上には防潮堤7が鋼製構造物4から沿岸部に沿って防護壁6とは反対側に延びる状態で構築されるものであったが、本発明ではこれに限らず、各基礎構造物3は取水部1の左右の近傍にのみ形成されるものであっても良いし、防潮堤7も基礎構造物の上でなく地盤上に構築されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 第1構造物(取水部)
1a 取水口
2 第2構造物
3 基礎構造物
4 鋼製構造物
5 柱部
6 防護壁(梁部)
6a 函状物
7 防潮堤
8 凹部
10 止水装置
20 止水板ユニット
21 止水板
21a 単位板
21b 単位板接続ゴム
21c 取付板
22 水密ゴムユニット
23 底部水密ゴム
23a 固定部
23b 水密部
24 上部水密ゴム
24a 固定部
24b 水密部
24c 取付板
25 側部水密ゴム
26 第1の側部水密ゴム
26a 固定部
26b 水密部
27 第2の側部水密ゴム
27a 固定部
27b 水密部
30 摺動板ユニット
31 底面摺動板
32 側面摺動板
33 後面摺動板
40 ガイド部
41 止水板押さえ
41a 張出部
41b 支え部
50 横ぶれ規制ユニット
51 第1のぶれ規制部材
52 第2のぶれ規制部材
60 戸当たりユニット
61 側面戸当たり
62 底面戸当たり
63 前面戸当たり
G 隙間部
d 上下方向の寸法
W 海水